JP2010181635A - 同定装置および同定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 1つの信号源から発せられた信号が互いに異なる2つの経路を介して互いに異なる2つの受信手段によって受信されるシステムにおいて、当該2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を正確に同定する。
【解決手段】 信号源としての音源16から発せられた音声S(z)は、2つの受信手段としての2つのマイクロホンAおよびBによって受信される。これら2つのマイクロホンAおよびBの一方から他方に至る経路は、音響伝達関数hab(z)を有しており、この音響伝達関数hab(z)は、互いに縦続接続されたFIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52とによって、同定される。このように音響伝達関数hab(z)の同定を担う手段として、互いに縦続接続されたFIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52とを用いることで、当該音響伝達関数hab(z)を正確に同定することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、同定装置および同定方法に関し、特に、1つの信号源から発せられた信号が互いに異なる2つの経路を介して互いに異なる2つの受信手段によって受信されるシステムにおいて、当該2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を当該2つの受信手段のそれぞれによる受信信号に基づいて同定する、同定装置および同定方法に関する。
この種の同定装置および同定方法は、例えば2つの受信手段として2つのマイクロホンを備えたいわゆるマイクロホンアレイシステムに利用される。その一例が、非特許文献1に開示されている。この非特許文献1に開示された従来技術によれば、図7に示すように、2つのマイクロホン12および14が、互いに距離を置いて設けられている。そして、これら2つのマイクロホン12および14のそれぞれによって、信号源としての音源16から発せられた音声S(z)(z;z変換における遅延要素)が受信される。
ここで、音源16から一方のマイクロホン12(以下、Aという符号を用いてマイクロホンAと言う。)に至る経路は、hsa(z)という未知の音響伝達関数を有する。つまり、当該一方のマイクロホンAによって受信される音声Xa(z)は、この音響伝達関数hsa(z)を用いて、次の数1のように表される。
Figure 2010181635
同様に、音源16から他方のマイクロホン14(以下、Bという符号を用いてマイクロホンBと言う。)に至る経路もまた、hsb(z)という未知の音響伝達関数を有する。つまり、当該他方のマイクロホンBによって受信される音声Xb(z)は、この音響伝達関数hsb(z)を用いて、次の数2のように表される。
Figure 2010181635
そして、一方のマイクロホンAの出力信号Xaj(j;時刻)は、非再帰型、いわゆるFIR(Finite Impulse Response)型、の適応フィルタ18に入力される。適応フィルタ18は、この一方のマイクロホンAの出力信号Xajを参照信号とし、他方のマイクロホンBの出力信号Xbjを希望の応答として、これら一方のマイクロホンAから他方のマイクロホンBに至る音響伝達関数hab(z)を同定する。つまり、自身の伝達関数Hab(z)を当該音響伝達関数hab(z)に一致させる。
このために、適応フィルタ18の出力信号Yjは、加算器(減算器)20に入力される。併せて、加算器20には、他方のマイクロホンBの出力信号Xbjも入力される。加算器20は、この他方のマイクロホンBの出力信号Xbjから適応フィルタ18の出力信号Yjを差し引き、当該加算器20の出力信号(誤差信号)Ejは、適応フィルタ18に与えられる。適応フィルタ18は、この加算器20の出力信号Eiが極力小さくなるように、自身のフィルタ係数を更新する。これによって、適応フィルタ18による上述の音響伝達関数hab(z)の同定が実現される。
この図7に示す従来のマイクロホンアレイシステム100について、次のようなシミュレーションを行ってみた。即ち、音声S(z)として、白色雑音を代用する。そして、音源16から一方のマイクロホンAに至る経路の音響伝達関数hsa(z)を、次の数3で表される差分方程式で規定し、当該音源16から他方のマイクロホンBに至る経路の音響伝達関数hsb(z)を、数4で表される差分方程式で規定する。
Figure 2010181635
Figure 2010181635
なお、これら数3における係数a(m)と、数4における係数b(m)とは、いずれも指数減衰する正規乱数に基づいて設定され、それぞれの項番号mの最大値Mは、いずれもM=128とされる。
さらに、適応フィルタ18のタップ数を、512,1024,2048および4096という4種類にする。そして、適応フィルタ18のフィルタ係数の更新法として、公知の学習同定法を採用する。このフィルタ係数の更新度合を定めるステップサイズμは、μ=0.1とする。また、各マイクロホンAおよびBに対して、外乱雑音(拡散騒音)は付与しないものとする。
このような条件下で、適応フィルタ18の同定性能を評価するべく、次の数5に基づいて、出力誤差Roを求める。なお、この数5において、pは、整数であり、Jは、一定の時間を時刻jの倍数で表したものである。つまり、この数5によれば、出力誤差Roは、マイクロホンBの出力信号Xbjに対する加算器20の出力信号Ejの比を、一定時間Jごとに平均して、デシベル表記したものである。従って、この出力誤差Roが小さいほど、適応フィルタ18による同定精度が高いことになる。
Figure 2010181635
この数5に基づいて、上述した512,1024,2048および4096というタップ数別に出力誤差Roを求めた結果を、図8に示す。なお、この図8において、G512,G1024,G2048およびG4096という個別の符号が付された曲線は、それぞれタップ数が512,1024,2048および4096のときの出力誤差Roを示す。また、この図8においては、横軸の時間をブロックという単位で表しており、1ブロックは、上述した時間Jに相当する。ここでは、出力誤差Roの変動を抑えて見易くするために、当該時間JをJ=4096としている。
この図8から分かるように、適応フィルタ18のタップ数が少ないほど、出力誤差Roは早く収束する。その一方で、当該タップ数が多いほど、出力誤差Roが小さくなることが、理想的であるが、この図8からは、そのような結果は認められない。つまり、タップ数が増大しても、出力誤差Roは、約−10[dB]という言わば不十分な程度にまでしか低減されない。このことは、残響がある環境において、FIR型の適応フィルタ18では上述の音響伝達関数habを十分に同定し得ないことを、意味する。その理由は、次の通りである、と推察される。
即ち、上述した図7の構成を端的に示すと、図9のようになる。この図9の構成によれば、音声S(z)は、hsa(z)という未知の伝達関数を有する言わば未知系22に入力され、この未知系22の出力信号Xa(z)が、適応フィルタ18に入力される。そして、適応フィルタ18の出力信号Y(z)は、加算器20に入力される。なお、この図9における適応フィルタ18の入出力信号Xa(z)およびY(z)は、それぞれ図7における適応フィルタ18の入出力信号XajおよびYjに相当し、詳しくは当該入出力信号XajおよびYjをzという遅延要素を用いて表現したものである。
さらに、音声S(z)は、hsb(z)という未知の伝達関数を有する別の未知系24に入力され、この未知系24の出力信号Xb(z)は、加算器20に入力される。なお、この図9において未知系24から加算器20に入力される当該未知系24の出力信号Xb(z)は、図7においてマイクロホンBから加算器20に入力される当該マイクロホンBの出力信号Xbjに相当する。
そして、加算器20は、未知系24の出力信号Xb(z)から適応フィルタ18の出力信号Yx(z)を差し引き、当該加算器20の出力信号E(z)に基づいて、適応フィルタ18のフィルタ係数が更新され、ひいては伝達関数Hab(z)が更新される。なお、この図9における加算器20の出力信号E(z)は、図7における加算器20の出力信号Ejに相当する。
この図9の構成によれば、適応フィルタ18の伝達関数Hab(z)と、各未知系22および24の伝達関数hsa(z)およびhsb(z)との間で、次の数6で表される関係が満足されるときに、当該適応フィルタ18によって十分な同定性能が得られることになる。
Figure 2010181635
言い換えれば、適応フィルタ18によって同定すべき伝達関数hab(z)は、次の数7で表される。
Figure 2010181635
ところが、この数7のように分数で表される伝達関数hab(z)は、一般には、割り切ることができず、いわゆる余りが生じる。特に、上述した残響がある環境下では、必ず当該余りが生じる。このように余りが生じる伝達関数hab(z)をFIR型の適応フィルタ18によって十分に同定すること、つまり当該伝達関数hab(z)と適応フィルタ18の伝達関数Hab(z)とを互いに一致させることは、たとえ適応フィルタ18のタップ数を増大させたとしても、原理的(根本的)に不可能である。それゆえに、従来技術では、上述の如く十分な同定性能を得ることができない。
中野裕文,藤井健作,棟安実治,「2マイクロホンシステムによる騒音低減法の一検討」,信学技報,社団法人電子情報通信学会,2007年1月,vol.106,No.483,EA2006−100,p.15−20
即ち、本発明が解決しようとする問題点は、1つの信号源から発せられた信号が互いに異なる2つの経路を介して互いに異なる2つの受信手段によって受信されるシステムにおいて、従来技術では、当該2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を十分(正確)に同定することができない、ということである。特に、残響がある環境下では、この問題が必然的に生じる。
そこで、本発明は、残響がある環境下でも、2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を十分に同定することができる同定装置および同定方法を提供することを、目的とする。
この目的を達成するために、本発明のうちの第1発明は、上述の如く1つの信号源から発せられた信号が互いに異なる2つの経路を介して互いに異なる2つの受信手段によって受信されるシステムにおいて、当該2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を当該2つの受信手段のそれぞれによる受信信号に基づいて同定する同定装置を前提とし、この前提の下、相互伝達関数の同定を行う適応フィルタ手段を具備する。そして、この適応フィルタ手段は、互いに縦続接続されたFIRフィルタ手段と再帰型のいわゆるIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ手段とを含むものである。
即ち、本第1発明では、相互伝達関数の同定を行う適応フィルタ手段が、互いに縦続接続されたFIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段とを含んでいる。ここで、相互伝達関数を含む全ての伝達関数は、非再帰型のモデルと再帰型のモデルとの縦続接続によって表現できることが、知られている。従って、本第1発明のように、非再帰型のFIRフィルタ手段と再帰型のIIRフィルタ手段とが互いに縦続接続された適応フィルタ手段を具備することで、相互伝達関数を十分に同定することができる。平たく言えば、相互伝達関数のうち、FIRフィルタ手段によって同定し得ない部分が生じたとしても、その部分は、IIRフィルタ手段によって同定される。ゆえに、上述した残響がある環境下においても、これらFIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段とを含む適応フィルタ手段全体として、十分な同定性能が得られる。また、後述するように、比較的に少ないタップ数でも当該十分な同定性能が得られることも、実験によって確認された。
なお、本第1発明において、相互伝達関数は、一方の経路の伝達関数によって他方の経路の伝達関数を除したのと等価な場合がある。このような場合にも、本第1発明によれば、当該相互伝達関数を十分に同定することができる。
また、FIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段との縦続接続の順番は、特に限定されない。例えば、一方の受信手段による受信信号がFIRフィルタ手段に入力される場合、つまりFIRフィルタ手段がIIRフィルタ手段の前段に設けられている場合には、FIRフィルタ手段の出力信号がIIRフィルタ手段の入力信号として当該IIRフィルタ手段に入力される。これとは反対に、一方の受信手段による受信信号がIIRフィルタ手段に入力される場合、つまりIIRフィルタ手段がFIRフィルタ手段の前段に設けられている場合には、IIRフィルタ手段の出力信号がFIRフィルタの入力信号として当該FIRフィルタ手段に入力される。なお、いずれの場合にも、他方の受信手段による受信信号がIIRフィルタ手段への帰還信号として当該IIRフィルタ手段に入力される。
さらに、信号源から発せられる信号としては、音声等の音信号がある。この場合、それぞれの受信手段は、マイクロホンによって構成される。
本発明の第2発明は、第1発明に対応する方法発明であって、互いに接続されたFIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段とを含む適応フィルタ手段によって、相互伝達関数を同定するものである。
上述したように、本発明によれば、相互伝達関数の同定を担う適応フィルタ手段が、互いに縦続接続されたFIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段とを含んでいるので、当該相互伝達関数を十分に同定することができる。特に、上述した従来技術では対応不可能であった残響がある環境下でも、十分な同定性能を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るマイクロホンアレイシステムの概略構成を示すブロック図である。 図1の構成を端的に示すブロック図である。 図2におけるFIR適応フィルタの詳細な構成を示すブロック図である。 図2におけるIIR適応フィルタの詳細な構成を示すブロック図である。 同実施形態におけるシミュレーション結果を示す図解図である。 図2におけるIIR適応フィルタの図4とは別の構成例を示すブロック図である。 従来のマイクロホンアレイシステムの概略構成を示すブロック図である。 図7の従来技術におけるシミュレーション結果を示す図解図である。 図7の構成を端的に示すブロック図である。
本発明の一実施形態について、マイクロホンアレイシステムを例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るマイクロホンアレイシステム10は、図7に示した従来のマイクロホンアレイシステム100における適応フィルタ18に代えて、互いに縦続接続されたFIRフィルタ手段としてのFIR適応フィルタ50とIIRフィルタ手段としてのIIR適応フィルタ52とを備えると共に、後述するようにIIR適応フィルタ52への帰還信号としてマイクロホンBの出力信号Xbjを用いたものである。なお、これ以外の構成は、図7に示した構成と同様であるので、これら同様の部分については、同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
即ち、この図1の構成では、FIR適応フィルタ50に、マイクロホンAの出力信号Xajが入力される。そして、このFIR適応フィルタ50の出力信号Yfjが、IIR適応フィルタ52に入力される。さらに、IIR適応フィルタ52には、その帰還信号として、マイクロホンBの出力信号Xbjが入力される。そして、このIIR適応フィルタ52の出力信号Yijが、加算器20に入力される。加算器20は、マイクロホンBの出力信号XbjからIIR適応フィルタ52の出力信号Yijを差し引く。そして、この加算器20の出力信号Ejが極力小さくなるように、FIR適応フィルタ50およびIIR適応フィルタ52それぞれのフィルタ係数αj(n)およびβj(n)(n;タップ番号)が更新され、ひいてはそれぞれの伝達関数Hf(z)およびHi(z)が更新される。
具体的には、FIR適応フィルタ50のフィルタ係数αj(n)は、次の数8に基づいて更新され、つまり更新後のフィルタ係数αj+1(n)が求められる。そして、IIR適応フィルタ52のフィルタ係数βj(n)は、数9に基づいて更新され、つまり更新後のフィルタ係数βj+1(n)が求められる。なお、これら数8および数9において、μは、上述したステップサイズと呼ばれる定数であり、このステップサイズμによって、それぞれのフィルタ係数αj(n)およびβj(n)の更新度合が制御される。
Figure 2010181635
Figure 2010181635
さらに、図1の構成を端的に示すと、図2のようになる。なお、この図2においても、上述した図9と同様に、FIR適応フィルタ50の入出力信号Xa(z)およびYf(z)は、zという遅延要素を用いて表現されている。そして、この図2の表現に倣ってFIR適応フィルタ50の構成を詳細に示すと、図3のようになる。
即ち、図3に示すように、FIR適応フィルタ50は、タップ数N分の遅延素子60,60,…と、当該タップ数Nよりも1つ多い数の乗算器62,62,…と、当該タップ数N分の加算器64,64,…と、を備えたいわゆる直接(Direct)型と呼ばれるものである。そして、それぞれの乗算器62に、フィルタ係数αj(n)が設定される。このフィルタ係数αj(n)は、上述したように、数8に基づいて更新される。そして、最終段(図3において最も右側)の加算器64の出力信号Yf(z)が、IIR適応フィルタ52に入力される。
図2においては、IIR適応フィルタ52の入出力信号Yf(z)およびYi(z)もまた、zという遅延要素を用いて表現されている。そして、この図2の表現に倣ってIIR適応フィルタ52の構成を詳細に示すと、図4のようになる。
この図4に示すように、IIR適応フィルタ52は、タップ数N分の加算器70,70,…と、当該タップ数N分の乗算器72,72,…と、当該タップ数N分の遅延素子74,74,…と、を備えた直接型のものである。ただし、上述したように、帰還信号としてマイクロホンBの出力信号Xb(z)が用いられており、詳しくは、帰還部を構成する(図4において最も右側の)遅延素子74に当該帰還信号としてのマイクロホンBの出力信号Xb(z)が入力される。このようにマイクロホンBの出力信号Xb(z)が帰還信号として用いられることで、このIIR適応フィルタ52の動作が安定化される。そして、それぞれの乗算器72に、フィルタ係数βj(n)が設定され、このフィルタ係数βj(n)は、上述の数9に基づいて更新される。そして、最終段(図4において最も右側)の加算器70の出力信号Yi(z)が、図2における加算器20に入力される。
このように構成された本実施形態のマイクロホンアレイシステム10について、次のようなシミュレーションを行った。即ち、FIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52とのそれぞれのタップ数Nを、N=128とする。そして、音声S(z)として、白色雑音を代用すると共に、各マイクロホンAおよびBに対する外乱雑音Na(z)およびNb(z)として、互いに相関のない白色雑音を付与する。なお、これら音声S(z)としての白色雑音と、外乱雑音Na(z)およびNb(z)としての白色雑音と、のパワー比は、−40[dB]とする。これ以外の条件は、上述した従来技術におけるシミュレーションと同じとする。そして、上述の数5に基づいて出力誤差Roを求めた。ただし、出力誤差Roの算出に当たっては、当該数5の分子および分母から外乱雑音(拡散騒音)を除いた。また、参照用として、上述した従来技術についても、同じ条件で出力誤差Roを求めた。その結果を、図5に示す。
この図5において、G1という符号が付された曲線が、本実施形態についてのシミュレーション結果を示し、G2という符号が付された曲線が、従来技術についてのシミュレーション結果を示す。この図5から明らかなように、本実施形態(曲線G1)によれば、出力誤差Roが約―40[dB]という十分な程度にまで低減される。これに対して、従来技術(曲線G2)によれば、やはり約―10[dB]という不十分な程度にまでしか低減されない。つまり、本実施形態によれば、従来技術に比べて、一方のマイクロホンAから他方のマイクロホンBに至る伝達関数hab(z)を極めて高い精度で同定できることが、証明された。また、このことは、本実施形態によれば、残響がある環境下でも、十分な同定性能が得られることをも、意味する。しかも、このような高精度な同定を、N=128という比較的に少ないタップ数Nで実現することができる。なお、ここでは詳しく説明しないが、音声S(z)として人間の肉声を用いた場合にも、この図5に示すのと同様の結果が得られた。
以上のように、本実施形態によれば、一方のマイクロホンAから他方のマイクロホンBに至る伝達関数hab(z)を同定する手段として、互いに縦続接続されたFIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52とを具備するので、従来よりも極めて高い精度で当該伝達関数hab(z)を同定することができる。特に、残響が存在する環境下でも、高精度な同定性能を得ることができる。そして、このことは、実験結果からも確認された。
このような本実施形態は、例えば一方のマイクロホンAによって受信された音声Xa(z)と他方のマイクロホンBによって受信された音声Xb(z)とを分離する、いわゆる音声分離技術に、応用することができる。勿論、音声分離以外の技術への応用も、期待することができる。
なお、本実施形態においては、FIR適応フィルタ50を、図3に示した直接型の構成としたが、これに限らない。例えば、縦続(Cascade)型や並列(Parallel)型、或いは格子(Lattice)型等、当該直接型以外の構成ものを採用してもよい。
IIR適応フィルタ52についても、同様に、図4に示した直接型に限らず、縦続型や並列型、或いは格子型等の当該直接型以外のものを採用してもよい。特に、このIIR適応フィルタ52として、例えば図6に示すような格子型のものを採用すれば、フィルタ係数の更新に係る演算量を低減することができると共に、その適応動作のさらなる安定化を図ることができる、と期待される。
この図6の格子型のフィルタ52について、少し詳しく説明すると、当該フィルタ52は、2乗算器構造と呼ばれるものであり、即ち、1タップごとに、順方向側に設けられた加算器80と、帰還側に設けられた加算器82と、帰還側から順方向側へフィルタ係数βj(n)に従う乗算を施す乗算器84と、これとは逆の方向へ逆符号のフィルタ係数−βj(n)に従う乗算を施す乗算器86と、帰還側に設けられた遅延素子88と、を有している。そして、この格子型のフィルタ52においても、帰還部を構成する(図6において最も右側の)遅延素子88に、帰還信号としてのマイクロホンBの出力信号Xb(z)が入力される。さらに、フィルタ係数βj(n)は、上述した数9に基づいて更新され、これと相補して、逆符号のフィルタ係数−βj(n)が更新される。なお、帰還側の最終段(図6において最も左側)の加算器82の出力信号Xb’(z)は、特には使用されない。また、この2乗算器構造に代えて、図には示さないが、1乗算器構造のものを採用してもよい。
また、本実施形態においては、IIR適応フィルタ52への帰還信号として、マイクロホンBの出力信号Xb(z)(Xbj)を採用したが、これに限らない。例えば、一般に知られているように、当該帰還信号として、IIR適応フィルタ52自身の出力信号Yi(z)(Yij)を採用してもよい。ただし、上述したように、マイクロホンBの出力信号Xb(z)を当該帰還信号として採用することによって、IIR適応フィルタ52の動作の安定化が図られる。
さらに、FIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52との縦続接続の順番は、本実施形態で説明したのとは逆であってもよい。即ち、FIR適応フィルタ50の前段にIIR適応フィルタ52を位置させることで、当該IIR適応フィルタ52に、マイクロホンAの出力信号Xa(z)(Xaj)が入力されるようにしてもよい。この場合、IIR適応フィルタ52の出力信号Yi(z)(Yij)が、FIR適応フィルタ50に入力される。そして、このFIR適応フィルタ50の出力信号Yf(z)(Yfj)が、加算器20に入力される。なお、IIR適応フィルタ52には、その帰還信号として、マイクロホンBの出力信号Xb(z)(Xbj)が入力される。これに代えて、上述の如くIIR適応フィルタ52自身の出力信号Yi(z)が当該帰還信号とされてもよい。
そして、FIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52との縦続接続に対して、これらとは別の1以上のFIR適応フィルタまたは1以上のIIR適応フィルタを、さらに縦続接続してもよい。ただし、基本的には、当該FIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52とのみの縦続接続によって、上述した伝達関数hab(z)を含む全ての伝達関数を十分に同定することができる。
なお、FIR適応フィルタ50とIIR適応フィルタ52とは、例えばCPU(Central
Process Unit)やDSP(Digital Signal Processor)によって構成することができる。加算器20もまた、同様である。
そして、本実施形態では、音声S(z)を取り扱うマイクロホンアレイシステム10に、本発明を適用する場合について説明したが、これに限らない。例えば、電波や各種電気信号等の信号を取り扱うシステムにも、本発明を適用することができる。
要するに、2つの受信手段を備え、これら2つの受信手段のそれぞれと信号源との間に未知の伝達関数が存在し、言い換えれば信号源から発せられた信号をそれぞれの受信手段によって直接的に受信することができない構成であり、このような構成において、一方の受信手段から他方の受信手段に至る伝達関数を同定する用途に、本発明を適用することができる。
10 マイクロホンアレイシステム
12,14 マイクロホン
16 音源
20 加算器
50 FIR適応フィルタ
52 IIR適応フィルタ

Claims (6)

  1. 1つの信号源から発せられた信号が互いに異なる2つの経路を介して互いに異なる2つの受信手段によって受信されるシステムにおいて該2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を該2つの受信手段のそれぞれによる受信信号に基づいて同定する同定装置であって、
    上記相互伝達関数の同定を行う適応フィルタ手段を具備し、
    上記適応フィルタ手段は互いに縦続接続されたFIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段とを含む、
    同定装置。
  2. 上記相互伝達関数は上記2つの経路の一方の伝達関数によって該2つの経路の他方の伝達関数を除したのと等価である、
    請求項1に記載の同定装置。
  3. 上記2つの受信手段の一方による上記受信信号または上記FIRフィルタ手段の出力信号が上記IIRフィルタ手段の入力信号として該IIRフィルタ手段に入力され、
    上記2つの受信手段の他方による上記受信信号が上記IIRフィルタ手段への帰還信号として該IIRフィルタ手段に入力される、
    請求項1または2に記載の同定装置。
  4. 上記IIRフィルタ手段は格子型のフィルタである、
    請求項1ないし3のいずれかに記載の同定装置。
  5. 上記信号は音信号であり、
    上記2つの受信手段のそれぞれはマイクロホンである、
    請求項1ないし4のいずれかに記載の同定装置。
  6. 1つの信号源から発せられた信号が互いに異なる2つの経路を介して互いに異なる2つの受信手段によって受信されるシステムにおいて該2つの受信手段の一方から他方に至る相互伝達関数を該2つの受信手段のそれぞれによる受信信号に基づいて同定する同定方法であって、
    互いに縦続接続されたFIRフィルタ手段とIIRフィルタ手段とを含む適応フィルタ手段によって上記相互伝達関数の同定を行う、
    同定方法。
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