JP2010174668A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の始動直後であっても精度よく空燃比のフィードバック制御を行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ECU4は、第1酸素センサ64によって検出されたエンジン2の排気ガスの検出空燃比が目標空燃比に収束するように実空燃比をフィードバック制御する空燃比制御部と、エンジン2の始動直後であって、実空燃比よりも検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記継続期間に基づいてフィードバックゲインを変更する変更部と、を備えている。
【選択図】図3
【解決手段】ECU4は、第1酸素センサ64によって検出されたエンジン2の排気ガスの検出空燃比が目標空燃比に収束するように実空燃比をフィードバック制御する空燃比制御部と、エンジン2の始動直後であって、実空燃比よりも検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記継続期間に基づいてフィードバックゲインを変更する変更部と、を備えている。
【選択図】図3
Description
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関の停止中で排気ガスの空燃比がリッチであるときに、ガスセンサへの印加電圧を高くしてガスセンサの活性化を図る技術が知られている(特許文献1参照)。
ところで内燃機関の停止中において、リッチガスがガスセンサに付着し、内燃機関の始動直後においてはガスセンサによって検出された検出空燃比が実空燃比よりもリッチ側にずれる場合がある。リッチ側にずれたまま、ガスセンサによって検出された検出空燃比が目標空燃比に収束するように実空燃比をフィードバック制御すると、精度よくフィードバック制御を行うことができない恐れがある。フィードバック制御を精度よく行えないとエミッションが悪化する恐れがある。
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の始動直後であっても精度よく空燃比のフィードバック制御を行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的は、ガスセンサによって検出された内燃機関の排気ガスの検出空燃比が目標空燃比に収束するように実空燃比をフィードバック制御する空燃比制御部と、内燃機関の始動直後であって、前記実空燃比よりも前記検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記継続期間に基づいてフィードバックゲインを変更する変更部と、を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置によって達成できる。
実空燃比よりも検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間に基づいてフィードバックゲインを変更することにより、継続期間を考慮したフィードバック制御を行うことができる。これにより内燃機関の始動直後であっても精度よく空燃比のフィードバック制御を行うことができる。
上記構成において、前記推定部は、前記内燃機関が前回停止されてから今回始動されるまでのソーク期間に基づいて前記継続期間を推定する、構成を採用できる。ソーク期間が長いほど継続期間が長くなる傾向があるからである。
上記構成において、前記ガスセンサは、センサ素子と、前記センサ素子を加熱するヒータとを含み、前記センサ素子が被水によって破損する破損温度未満に前記ヒータを制御するヒータ制御部を備え、前記推定部は、前記センサ素子が破損温度未満に制御される期間に基づいて前記継続期間を推定する、構成を採用できる。センサ素子が破損温度未満に制御される期間が長いほど継続期間が短くなる傾向があるからである。
前記推定部は、吸入空気量と燃料噴射量とに基づいて空燃比を推定し、推定された空燃比に基づいて前記継続期間を推定する、構成を採用できる。推定空燃比がリーン側であればあるほど継続期間が短くなる傾向があるからである。
前記推定部は、前記検出空燃比がリッチ側からリーン側へと変位する時の前記検出空燃比に基づいて前記継続期間を推定する、構成を採用できる。リッチ側からリーン側へと変位する時の検出空燃比がリッチ側であればあるほど、継続期間が長くなる傾向があるからである。
前記推定部は、前記検出空燃比の変動が所定値以上となってから前記検出空燃比がリッチ側からリーン側へと変位する時までの間の、単位時間当たりの前記検出空燃比の変化割合の最大値に基づいて前記継続期間を推定する、構成を採用できる。単位時間当たりの前記検出空燃比の変動の最大値が大きいほど継続期間が長くなる傾向があるからである。
前記変更部は、目標空燃比よりも前記検出空燃比がリーン側であるか又はリッチ側であるかによってフィードバックゲインを変更する、構成を採用できる。目標空燃比よりも検出空燃比がリーン側にある場合とリッチ側にある場合とでは、目標空燃比と実空燃比との差が違うからである。
前記変更部は、目標空燃比よりも前記検出空燃比がリーン側の場合には、通常時のフィードバックゲインよりも大きな値にフィードバックゲインを変更し、目標空燃比よりも前記検出空燃比がリッチ側の場合には、通常時のフィードバックゲインよりも小さい値にフィードバックゲインを変更する、構成を採用できる。
前記変更部は、前記継続期間が長いほど通常時のフィードバックゲインとの差が大きくなるようにフィードバックゲインを変更する、構成を採用できる。これにより、継続期間を考慮して、精度よく空燃比のフィードバック制御をすることができる。
前記変更部は、前記継続期間中でのフィードバックゲインを前記継続期間の終了時期に近づくにつれて通常時のフィードバックゲインに収束するように変更する、構成を採用できる。継続期間の終了時期に近づくにつれて、検出空燃比は実空燃比に収束するからである。
本発明によれば、内燃機関の始動直後であっても精度よく空燃比のフィードバック制御を行うことができる内燃機関の制御装置を提供できる。
以下、実施形態を図面と共に詳細に説明する。
図1は、エンジンシステムの構成を示した模式図である。図1には、自動車に搭載された多気筒の筒内噴射型ガソリンエンジン(以下「エンジン」と略す)2及びその電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)4の概略構成が示されている。図1では1つの気筒の構成を中心として示している。
ECU4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成され、エンジンシステム全体の作動を制御する。ECU4は、内燃機関の制御装置に相当する。ECU4は、フィードバック制御部、空燃比制御部、推定部、変更部に相当する。詳しくは後述する。エンジン2には、燃焼室10内に燃料を直接噴射する燃料噴射バルブ12と、この噴射された燃料に点火する点火プラグ14とがそれぞれ設けられている。
燃焼室10に接続している吸気ポート16は吸気バルブ(図示略)の駆動により開閉される。吸気ポート16に接続された吸気通路20の途中にはサージタンク22が設けられ、サージタンク22の上流側にはスロットルモータ24によって開度が調節されるスロットルバルブ26が設けられている。
このスロットルバルブ26の開度により吸気量が調整される。スロットル開度はスロットル開度センサ28により検出され、サージタンク22内の吸気圧は、吸気圧センサ30により検出される。また、吸気通路20にはエアフロメータ21が配置されて、吸入空気量に応じた検出値をECU4に出力する。
燃焼室10に接続している排気ポート32は排気バルブ(図示略)の駆動により開閉される。排気ポート32に接続された排気通路36には、排気ガス中の未燃成分(HC,CO)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを行い、酸素吸蔵、放出機能を有する三元触媒であるスタートキャタリスト38が設けられている。また、排気通路36には、スタートキャタリスト(以下、単に「触媒」という。)38の下流に三元触媒40が設けられている。
また、排気通路36には、触媒38の上流側に、第1酸素センサ64が、触媒38と三元触媒40との間に第2酸素センサ70が配置されている。
スロットル開度センサ28及び吸気圧センサ30以外に、エンジン2の冷却水の温度を検出する水温センサ41、アクセルペダル44の踏み込み量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ56、クランク軸54の回転からエンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ58、第1酸素センサ64、第2酸素センサ70は、それぞれの検出値をECU4へ出力する。
ECU4は、上述した各種センサからの検出内容に基づいて、エンジン2の燃料噴射時期、燃料噴射量、及びスロットル開度TAを適宜制御する。
ECU4は、触媒38の酸化・還元能力を高めるために、触媒38に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比になるように、燃料噴射量を、第1酸素センサ64の出力、或いはその出力と第2酸素センサ70の出力とに基づいて空燃比フィードバック制御する。空燃比フィードバック制御とは、排気ガスの空燃比が目標空燃比になるように、第1酸素センサ64により検出された検出空燃比と目標空燃比との偏差をなくするように、燃料噴射量等を調整する制御である。この空燃比フィードバック制御としてPI(またはPID)制御が用いられる。P成分(比例項、比例ゲイン)は、応答性に影響を与え、D成分(積分項、積分ゲイン)は、定常偏差に影響を与える。比例ゲイン、積分ゲインは、フィードバックゲインに相当する。
次に、第1酸素センサ64の構成について簡単に説明する。図2は、第1酸素センサ64の模式図である。尚、第2酸素センサ70も基本的な構造は第1酸素センサ64と同様である。
図2に示すように、ハウジング69と、積層型のセンサ素子65と、ハウジング69の先端側に設けた2重構造となるアウタカバー66a及びインナカバー66bとを有する。また、図2においては図示されていないが、センサ素子65には、センサ素子65を活性化温度まで昇温させるためのヒータが内蔵されている。このヒータの作動は、ECU4によって制御されている。尚、第1酸素センサ64は、積層型以外のものであってもよい。第1酸素センサ64の代わりに、空燃比センサを採用してもよい。
アウタカバー66aには、通気孔67a、68aが形成され、インナカバー66bには、通気孔67b、68bが形成されている。通気孔67a、67bは、それぞれアウタカバー66a、インナカバー66bの外周側面に形成され、通気孔68a、68bは、それぞれアウタカバー66a、インナカバー66bの下面に形成されている。排気ガスは、通気孔67a、通気孔67bを介して、インナカバー66b内に流れ込んでセンサ素子65と接触し、通気孔68b、68aを介して、排出されるように流動する。アウタカバー66a、インナカバー66bにより2重管構造とすることにより、センサ素子65への凝縮水の被水を防止している。
次に、エンジン2の始動直後に空燃比をフィードバック制御する際の問題点について説明する。図3は、エンジン2の始動直後での、実空燃比、検出空燃比、フィードバック制御フラグ、などを示したグラフである。
実空燃比は、実際の排気ガスの空燃比である。検出空燃比は、第1酸素センサ64により検出された空燃比である。尚、図3の横軸は、エンジン2の始動からの経過時間を示しており、縦軸は、空燃比、フィードバック制御フラグを示している。
図3に示すように、エンジン2の始動から約8秒間までは、第1酸素センサ64によって検出される検出空燃比は一定値を示している。この理由は、センサ素子65がヒータによってある程度活性化するまでの間は、第1酸素センサ64の出力値が一定だからである。センサ素子65が300度程度になると活性化して出力を開始する。
実空燃比は、実際の排気ガスの空燃比である。検出空燃比は、第1酸素センサ64により検出された空燃比である。尚、図3の横軸は、エンジン2の始動からの経過時間を示しており、縦軸は、空燃比、フィードバック制御フラグを示している。
図3に示すように、エンジン2の始動から約8秒間までは、第1酸素センサ64によって検出される検出空燃比は一定値を示している。この理由は、センサ素子65がヒータによってある程度活性化するまでの間は、第1酸素センサ64の出力値が一定だからである。センサ素子65が300度程度になると活性化して出力を開始する。
第1酸素センサ64が出力を開始した直後、エンジン2の始動時からは約10秒後に、検出空燃比は、実空燃比とは大幅にリッチ側にずれる。この理由は以下のように考えられる。エンジン2の停止中に未燃ガス成分がセンサ素子65に付着し、エンジン2の始動後にセンサ素子65がヒータにより加熱される過程で、未燃ガス成分が脱離、酸化する。これにより、センサ素子65周囲の酸素濃度が、実際の排気ガスの雰囲気での酸素濃度よりも減少する。これにより、第1酸素センサ64によって検出された検出空燃比は、実空燃比よりもリッチ側にずれる。
従って、実空燃比よりも検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間は、センサ素子65に付着している未燃ガス成分の量や、実空燃比、センサ素子65の温度の制御方法等によって変化する。ECU4は、実空燃比よりも検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間を推定し、継続期間に基づいてフィードバックゲインを変更する。以下に詳細に説明する。
次に、ECU4が実行するフィードバック制御の一例について説明する。図4は、ECU4が実行するフィードバック制御の一例を示したフローチャートである。ECU4は、エンジン2が始動されたか否かを判定する(ステップS1)。例えば、イグニッションスイッチ(不図示)のオン、オフ信号に基づいてエンジン2の始動を判定する。エンジン2が始動していない場合には、ECU4はこの一連のフィードバック制御を終了する。
次に、ECU4は、水温センサ41からの出力に基づいて冷却水の温度が所定温度Th未満であるか否かを判定する(ステップS2)。所定温度Thとは、例えば80度である。冷却水の温度が所定温度Th以上の場合、即ち、冷却水の温度が比較的高温の場合には、ECU4は、継続期間Tfをゼロとして推定する(ステップS3)。
冷却水の温度が所定温度Th未満の場合、即ち、冷却水の温度が比較的低温の場合には、ECU4は、ソーク期間が所定期間Ts未満であるか否かを判定する(ステップS4)。ソーク期間とは、エンジン2が前回停止されてから今回始動されるまでの期間である。ECU4には、ソーク期間を測定するソークタイマが内蔵されている。図5は、ソーク期間と継続期間Tfとの関係を示したグラフである。ソーク期間が短いほど、継続期間Tfも短くなる。この理由は、ソーク期間が比較的短い場合には、センサ素子65への未燃ガス成分の付着量が少ないので、継続期間Tfも短くなるからである。ソーク期間が所定期間Ts未満の場合には、ECU4は、継続期間Tfをゼロとして推定する(ステップS3)。尚、継続期間Tfがゼロとして推定された場合には、通常のフィードバック制御が実行される。詳しくは後述する。
ソーク期間が所定期間Ts以上の場合には、ECU4は、センサ素子65を破損温度未満に保持している期間が所定期間Tc未満であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、破損温度未満とは、センサ素子65が被水した場合にセンサ素子65が破損しない温度を意味している。ECU4は、エンジン2の始動時から所定期間は、ヒータを制御することによりセンサ素子65を破損温度未満に制御する。破損温度未満とは、およそ300度未満である。センサ素子65を所定期間、破損温度未満に制御する理由は、センサ素子65周辺に付着した水が蒸発するまでの期間、センサ素子65を低温に制御することにより、この間にセンサ素子65が被水したとしてもセンサ素子65が破損することを防ぐためである。尚、ECU4は、所定期間経過後、即ちセンサ素子65が被水する恐れが無くなった後は、ヒータを制御してセンサ素子65を500〜600度程度まで加熱する。
センサ素子65を破損温度未満に保持している期間が所定期間Tc以上の場合、即ち、比較的長期にわたってセンサ素子65を破損温度未満に保持している場合には、ECU4は、継続時間Tfをゼロとして推定する(ステップS3)。比較的長期にわたってセンサ素子65を破損温度未満に保持している場合には、その間に、センサ素子65に付着していた未燃ガス成分が離脱していると考えられるからである。尚所定期間Tcは、例えば20秒程度である。
センサ素子65を破損温度未満に保持している期間が所定期間Tc未満の場合、即ち、比較的短期間センサ素子65を破損温度未満に保持している場合には、ECU4は、継続期間Tfを推定する(ステップS6)。詳細には、ECU4は、吸入空気量と燃料噴射量とに基づいて、空燃比を推定する。吸入空気量は、エアフロメータ21により検出する。燃料噴射量は、エンジン2の運転状態に応じて予め燃料噴射量を規定したマップに基づいて検出することができる。以上により、ECU4は、排気ガスの空燃比を推定することができる。尚、ステップS6での空燃比の推定は、第1酸素センサ64が出力を開始後であってフィードバック制御開始前の間での空燃比を推定する。ここで第1酸素センサ64の出力開始時とはセンサ素子65の温度がおよそ300度程度に至ってから出力を開始する。第1酸素センサ64の出力開始時期は、ECU4がセンサ素子65のアドミタンス又はインピーダンスに基づいてセンサ素子65の温度を推定してもよい。また、ECU4は、第1酸素センサ64からの出力の変動値が所定以上に大きくなった場合に第1酸素センサ64から出力が開始されたと判定してもよい。
図6Aは、エンジン2の始動直後での空燃比とリッチずれが収束する時間との関係を示したグラフである。リッチずれ収束期間は、フィードバック制御が開始されてから、検出空燃比が実空燃比よりもリッチ側にずれるリッチずれが収束するまでの期間を意味している。図6Aに示すように、空燃比がリーン側であるほど、リッチずれの収束期間が短い。図6Aは、実験により算出した。この実験結果により、空燃比がリーン側であるほど、継続期間Tfは短くなると推定できる。図6Bは、推定された空燃比と継続期間Tfとの関係を示したマップである。図6Bのマップは予めECU4のROMに記憶されている。図6Bに示すように、推定された空燃比がリーン側であるほど、継続期間Tfは短くなる。
従って、ステップS6においてECU4は、図6Bに示したマップに基づいて、推定された空燃比から継続期間Tfを推定する。次に、ECU4は、フィードバック制御開始から経過期間が、ステップS3又はステップS6において推定された継続期間Tfを超えているか否かを判定する(ステップS7)。肯定判定の場合、即ち、フィードバック制御開始からの経過期間が既に継続期間Tfを過ぎている場合には、ECU4は、通常のフィードバック制御を実行する(ステップS8)。通常のフィードバック制御とは、予め定められた通常時でのフィードバックゲインに基づいてフィードバック制御を行うことを意味している。ステップS3において継続期間Tfがゼロと推定された場合には、通常のフィードバック制御が実行される。
否定判定の場合、即ち、フィードバック制御開始からの経過期間がまだ継続期間Tfを過ぎていない場合には、ECU4は、リッチずれ発生時でのフィードバック制御を実行する(ステップS9)。リッチずれ発生時でのフィードバック制御とは、通常時でのフィードバックゲインを変更してフィードバック制御を実効することを意味している。ステップS6において継続期間Tfが推定された場合には、少なくともフィードバック制御開始時においてはステップS9によるフィードバック制御が実行される。また、ステップS9によるフィードバック制御実行中は、ECU4は、再度ステップS7の処理を実行し、フィードバック制御開始からの経過期間が既に継続期間Tfを過ぎている場合には、通常のフィードバック制御を実行する(ステップS8)。以下に、フィードバックゲインの変更について説明する。
図7は、継続期間Tfとフィードバック制御開始時でのリッチずれ量との関係を示したグラフである。継続期間Tfが長いほど、フィードバック制御開始時でのリッチずれ量は大きくなる。図8は、フィードバックゲイン初期値と、推定された継続期間Tfとの関係を示したマップである。このマップは、ECU4のROMに予め記憶されている。フィードバックゲイン初期値とは、フィードバック制御開始時に採用されるフィードバックゲインの値を意味している。推定された継続期間Tfが長いほど、フィードバックゲインの初期値は、通常時でのフィードバックゲインとの差が大きくなるように設定される。図7で示したように、継続期間Tfが長いほどリッチずれ量も大きくなるため、これに応じてフィードバックゲインの初期値も大きく変更する必要があるからである。
図8に示すように、第1酸素センサ64によって検出された検出空燃比が目標空燃比よりも大きい場合、即ち検出空燃比が目標空燃比よりもリーン側の場合には、通常時のフィードバックゲイン初期値よりも大きな値にフィードバックゲイン初期値が設定される。また、検出空燃比が目標空燃比よりも小さい場合、即ち検出空燃比が目標空燃比よりもリッチ側にある場合には、通常時のフィードバックゲイン初期値よりも小さな値にフィードバックゲイン初期値が設定される。この理由について説明する。
図9は、検出空燃比が目標空燃比よりもリッチ側とリーン側である場合とで、検出空燃比と実空燃比との差を示した図である。検出空燃比が目標空燃比よりもリッチ側にある又はリーン側にあることに関わり無く、検出空燃比は、実空燃比よりもリッチ側にずれる。このため、目標空燃比よりも検出空燃比がリーン側にある場合、実空燃比と目標空燃比との差は、検出空燃比と目標空燃比との差よりも大きくなる。目標空燃比よりも検出空燃比がリッチ側にある場合には、実空燃比と目標空燃比との差は、検出空燃比と目標空燃比との差よりも小さくなる。このように、検出空燃比が目標空燃比に対してリーン側、リッチ側にあることにより、実空燃比と目標空燃比との差が異なる。この差を考慮して、フィードバックゲイン初期値が設定されている。
次に、継続期間中であってフィードバック制御実行中でのフィードバックゲインの変更について説明する。図10は、継続期間中でのフィードバックゲインの変更のマップである。図10に示したマップは、ECU4のROMに予め記憶されている。図10に示すように、ECU4は、リッチずれが発生している期間中でのフィードバックゲインを、継続期間Tfの終了時期に近づくにつれて通常時のフィードバックゲインに収束するように変更する。これにより、ECU4は、継続期間Tf終了後はスムーズに通常のフィードバック制御を実行することができる。
以上のように、ECU4はステップS9においてフィードバックゲインを変更する。これにより継続期間Tfを考慮したフィードバック制御を行うことができる。従ってエンジン2の始動直後であっても精度よく空燃比のフィードバック制御を行うことができる。
特開2005−55279号公報には、空燃比センサの電極に負電圧を印加することで、電極の大気側から強制的にO2を排気側へポンピングし、そのO2を用いてリッチガスの燃焼を早める技術が開示されている。しかしながら、通常の空燃比センサは正電圧しか印加しておらず、負電圧を印加するためには特別な構成が必要になる。
また、ガスセンサに付着したリッチガスを早期に放出するために、センサ素子を早期に高温にすることが考えられる。しかしながら、エンジン始動後直ちにセンサ素子温度を高温にすると、被水によってセンサ素子が破損する恐れがある。
また、ガスセンサの出力が実空燃比からずれている場合にガスセンサの出力を補正又はマスクすることにより、ガスセンサの出力精度を向上させることが考えられる。しかしながら、補正量及びマスク時間の推定が困難であり、補正量及びマスク時間を誤った値に設定したままフィードバック制御が実行される恐れがある。しかしながら、本実施例で説明したフィードバック制御は上記のような問題は発生しない。
次に、図4で示したステップS6での継続期間Tfの推定の変形例について説明する。前述したステップS6においては、空燃比を推定することにより継続期間Tfを推定した。しかしながら、以下の方法を組み合わせて継続期間Tfを推定してもよい。
図11、12は、継続期間Tfの推定方法の変形例の説明図である。尚、図11は、実空燃比が比較的リーン側の場合を示し、図12は、実空燃比が比較的リッチ側の場合を示している。ECU4は、検出空燃比がリッチ側からリーン側へと変位する時の検出空燃比に基づいて継続期間Tfを推定してもよい。リッチ側からリーン側へと変位する時の検出空燃比は、継続期間Tf中でのリッチ側の最大出力値に相当する。検出空燃比がリッチ側であればあるほど、実空燃比もリッチ側となる。このため、検出空燃比に基づいて空燃比を推定できる。推定された空燃比に基づいて継続期間Tfを推定することができる。
また、次のような方法により空燃比を推定することができる。ECU4は、検出空燃比がリッチ側からリーン側へと変位する時までの間の、単位時間当たりの検出空燃比の変化割合の最大値に基づいて継続期間Tfを推定してもよい。単位時間当たりの検出空燃比の変化割合の最大値とは、図11、12に示すように、縦軸に空燃比、横軸に時間としたグラフにおいて、検出空燃比の傾きの絶対値の最大値を意味している。このように検出空燃比の変化割合の最大値が大きいほど、実空燃比は、リッチ側となる。従って、検出空燃比の変化割合の最大値に基づいて空燃比を推定でき、これにより継続期間Tfを推定できる。
尚、以上説明した空燃比の推定方法を複数組み合わせて、空燃比を推定し、推定された空燃比に基づいて継続期間Tfを推定してもよい。これにより継続期間Tfの推定精度が向上する。
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
2 エンジン(内燃機関)
4 ECU(内燃機関の制御装置、空燃比制御部、推定部、変更部)
64 第1酸素センサ(ガスセンサ)
4 ECU(内燃機関の制御装置、空燃比制御部、推定部、変更部)
64 第1酸素センサ(ガスセンサ)
Claims (10)
- ガスセンサによって検出された内燃機関の排気ガスの検出空燃比が目標空燃比に収束するように実空燃比をフィードバック制御する空燃比制御部と、
内燃機関の始動直後であって、前記実空燃比よりも前記検出空燃比がリッチ側にずれる継続期間を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記継続期間に基づいてフィードバックゲインを変更する変更部と、を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記推定部は、前記内燃機関が前回停止されてから今回始動されるまでのソーク期間に基づいて前記継続期間を推定する、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記ガスセンサは、センサ素子と、前記センサ素子を加熱するヒータとを含み、
前記センサ素子が被水によって破損する破損温度未満に前記ヒータを制御するヒータ制御部を備え、
前記推定部は、前記センサ素子が破損温度未満に制御される期間に基づいて前記継続期間を推定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記推定部は、吸入空気量と燃料噴射量とに基づいて空燃比を推定し、推定された空燃比に基づいて前記継続期間を推定する、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記推定部は、前記検出空燃比がリッチ側からリーン側へと変位する時の前記検出空燃比に基づいて前記継続期間を推定する、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記推定部は、前記検出空燃比の変動が所定値以上となってから前記検出空燃比がリッチ側からリーン側へと変位する時までの間の、単位時間当たりの前記検出空燃比の変化割合の最大値に基づいて前記継続期間を推定する、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記変更部は、目標空燃比よりも前記検出空燃比がリーン側であるか又はリッチ側であるかによってフィードバックゲインを変更する、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記変更部は、目標空燃比よりも前記検出空燃比がリーン側の場合には、通常時のフィードバックゲインよりも大きな値にフィードバックゲインを変更し、目標空燃比よりも前記検出空燃比がリッチ側の場合には、通常時のフィードバックゲインよりも小さい値にフィードバックゲインを変更する、ことを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記変更部は、前記継続期間が長いほど通常時のフィードバックゲインとの差が大きくなるようにフィードバックゲインを変更する、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記変更部は、前記継続期間中でのフィードバックゲインを前記継続期間の終了時期に近づくにつれて通常時のフィードバックゲインに収束するように変更する、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
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