JP4170167B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関し、詳しくは、ヒータ付の排気センサにより空燃比を検出して空燃比フィードバック制御信号を出力する空燃比制御装置であって、特に、2輪車等に使用される排気量の小さい機関に好適な空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、排気中の酸素濃度に基づいて混合気の空燃比を検出する排気センサに、該センサを活性状態に保持するためのヒータを設け、該ヒータによる加熱で活性状態に保持される排気センサの検出信号に基づいて空燃比フィードバック制御を行う空燃比制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平09−088688号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、2輪車用の内燃機関では、4輪車用の機関に比べて排気量が小さくかつ排気管の熱容量が小さいため、特に、機関のアイドル運転時や低車速走行時などの排気からの受熱量が小さいときに、排気系の温度変化が大きく、凝縮水も発生し易い。
【0005】
このため、排気センサの素子が熱衝撃によって割れることがないように、ヒータの印加電圧を制御する必要がある。
一方、素子割れを回避すべくヒータの印加電圧を制御すると、排気センサを完暖状態に暖めることができない場合が生じ、このため排気センサの特性が変化して空燃比フィードバック制御のゲインが適合しなくなり、フィードバック制御精度が大きく低下する可能性が生じる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、2輪車用等の排気量の小さい内燃機関において、排気センサの素子割れを回避し、かつ、空燃比フィードバック制御の精度低下を防止できる空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1記載の発明では、排気センサの排気からの受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であって始動後の経過時間が所定時間内であるときに、ヒータへの通電を停止させ、かつ、空燃比フィードバック制御を停止させ、前記排気から受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であって始動後の経過時間が前記所定時間を超えているときに、熱衝撃で素子割れを発生させることがない所定の低電圧を前記ヒータに印加し、かつ、ゲインを低下させて空燃比フィードバック制御を行わせる構成とした。
【0012】
かかる構成によると、排気センサの排気からの受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であって始動後の経過時間が所定時間内であるときには、ヒータ加熱による素子割れの発生を回避すべく、ヒータへの通電を停止させ、排気熱のみによって素子温度の上昇を図ると共に、排気センサの温度が低いことから、フィードバック制御を停止させる。
一方、排気センサの排気からの受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であっても始動後の経過時間が所定時間を超え、素子温度が排気からの受熱によってある程度上昇していると見込まれるときには、熱衝撃の発生を回避できる程度の低い電圧をヒータに印加し、更に、ヒータにより排気センサを完暖状態に暖めることができない状態でフィードバック制御精度が大きく低下することがないように、ゲインを低下させておいてフィードバック制御を行わせる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、機関のアイドル運転時又は所定車速以下の低速走行時であるときに、排気センサの排気からの受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であると判断する構成とした。
かかる構成によると、機関がアイドル運転時又は所定車速以下の低速走行時であるときに、排気センサの排気からの受熱量が低く、凝縮水が発生し易い状態になっているものと推定する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における2輪車用の単気筒内燃機関のシステム構成図である。
【0014】
図1において、機関1の吸気管2には、スロットルバルブ3が介装され、該スロットルバルブ3で機関1の吸入空気量が制御される。
前記スロットルバルブ3下流の吸気管2には燃料噴射弁4が設けられ、該燃料噴射弁4から噴射された燃料と、スロットルバルブ3を通過した空気とによって混合気が形成される。
【0015】
前記混合気は、燃焼室5内で点火プラグ6による火花点火により着火燃焼し、燃焼排気は、途中に触媒コンバータ7が介装される排気管8を介して排出される。
【0016】
前記燃料噴射弁4は、マイクロコンピュータを内蔵するコントロールユニット10からの前記噴射パルス信号(空燃比フィードバック制御信号)に応じて開弁駆動され、前記噴射パルス信号のパルス幅によって燃料噴射量が制御される。
【0017】
前記コントロールユニット10には、各種センサからの検出信号が入力され、該検出信号に基づく演算処理によって前記噴射パルス信号を出力する。
前記各種センサとしては、スロットルバルブ3上流側で吸入空気量を検出するエアフローメータ11,機関1の回転速度を検出する回転センサ12,前記触媒コンバータ7上流側の排気管8内の酸素濃度(特定成分濃度)に基づいて空燃比を検出する排気センサとしての空燃比センサ13、車速を検出する車速センサ14が設けられている。
【0018】
前記空燃比センサ13には、センサ素子を加熱するヒータ13aが設けられている。
尚、前記空燃比センサ13は、排気中の酸素濃度から空燃比を広域に検出する広域空燃比センサであっても良いし、理論空燃比に対するリッチ・リーンのみを検出するリッチ・リーンセンサであっても良い。
【0019】
ここで、前記コントロールユニット13は、前記空燃比センサ13で検出される空燃比が目標空燃比に一致するように、前記燃料噴射弁4に出力する噴射パルス信号のパルス幅、即ち、燃料噴射量をフィードバック制御する。
【0020】
更に、コントロールユニット13は、前記空燃比センサ13に備えられたヒータ13aの印加電圧を制御する。
図2のフローチャートは、前記コントロールユニット10によるヒータ印加電圧の制御、及び、フィードバックゲインの制御を示す。
【0021】
ステップS1では、車速,機関回転速度,機関吸入空気量などの各種運転条件の読み込みを行う。
ステップS2では、ヒータ制御の許可条件が成立しているか否かを判定する。
【0022】
ここでは、例えば、各部品及びシステムの故障判定がなされていないこと、また、ヒータ13aの電源電圧が所定電圧以上であることなどを、ヒータ制御の許可条件として判定する。
【0023】
ヒータ制御の許可条件が成立していないときには、ステップS3でヒータ13aへの通電を遮断してステップS1へ戻る。
一方、ヒータ制御の許可条件が成立しているときには、ステップS4へ進み、アイドル時又は所定速度以下での低速走行時であるか否か、即ち、アイドルを含む所定の低負荷・低回転領域内で機関1が運転されているか否かを判断する。
【0024】
低負荷・低回転運転時は、空燃比センサ13の排気からの受熱量が小さい条件であって、空燃比センサ13の温度が変化し易い条件であり、このときには、ステップS5へ進む。
【0025】
尚、機関負荷・回転速度又は機関負荷・車速に応じて印加電圧を記憶したマップであって、より排気量の大きい4輪車用機関に適合したマップを、前記ステップS4で参照し、該マップから検索した印加電圧が所定値以下であるときを、空燃比センサ13の排気からの受熱量が小さい条件として判断する構成とし、後述するステップS10での通常制御において、前記4輪車に適合したマップを用いて印加電圧を制御する構成とすることができる。
【0026】
即ち、排気量が大きな機関においても、排気からの受熱量が小さい条件では、排気管8及び空燃比センサ13の温度変化が大きく、凝縮水の発生によって素子割れの可能性があるので、印加電圧を低下させる必要があるためである。
【0027】
但し、排気量の違いによって温度変化の幅が異なり、本実施形態のような2輪車用の排気量の小さい機関では、より印加電圧を低く抑制する必要が生じるので、後述するように、4輪車に適合したマップに記憶される印加電圧から受熱量が小さい条件を判断したときには、マップの印加電圧を用いずに、排気量の小さい機関に適合するより低い所定電圧を用いるようにする。
【0028】
ステップS5では、機関1の始動からの経過時間が所定時間(例えば200秒)以上であるか否かを判定する。
始動後の経過時間が前記所定時間未満であるときには、ステップS6へ進み、前記ヒータ13aに対する通電を遮断すると共に、ステップS7へ進んで、空燃比フィードバック制御を停止させる。
【0029】
即ち、低負荷・低回転時で空燃比センサ13の排気からの受熱量が小さく、かつ、始動からの経過時間が短い場合には、空燃比センサ13の温度は殆ど上がっていないものと推定される。
【0030】
上記状態でヒータ13aに電圧を印加してセンサ素子を加熱させても、機関の停止中に排気管8内に溜まっていた凝縮水による熱衝撃によって素子割れを発生させる可能性がある一方、始動直後で機関の燃焼が安定しない条件であり空燃比フィードバック制御の要求も低く、また、印加電圧を低く制限してセンサ素子を加熱しても、空燃比フィードバック制御を安定して実行させることは困難である。
【0031】
そこで、始動後の経過時間が前記所定時間未満であるときには、ヒータ13aをOFFとし、かつ、空燃比フィードバック制御を停止させる。
一方、ステップS5で始動後所定時間以上経過していると判断されたときには、空燃比センサ13の温度が排気熱である程度上昇しているものと推定されるが、依然として、低回転・低負荷時で空燃比センサ13の排気からの受熱量が小さいから、排気管8及び空燃比センサ13の温度が変動し易く、凝縮水が発生し易い条件である。
【0032】
このため、ステップS8へ進んで、凝縮水がセンサ素子に当たることによる熱衝撃で素子割れを発生させることがない程度の低い固定電圧をヒータ13aに印加する。
【0033】
また、ステップS8へ進んでヒータ13aに電圧を印加したときには、空燃比センサ13の応答性は始動直後よりも改善された状態となっているが、完暖時のゲインのままフィードバック制御を実行させると、空燃比センサ13の応答遅れによってオーバーシュートが発生することになる。
【0034】
そこで、ステップS9では、フィードバックゲインを通常時(空燃比センサ13の完暖時)よりも低下させて、空燃比フィードバック制御を行わせる。
従って、素子割れの発生を回避しつつ、早期に空燃比フィードバック制御を開始させることができ、排気性状・機関運転性を改善できる。
【0035】
また、ステップS4で、アイドル時又は低速走行時のいずれでもないと判定されたときには、排気からの受熱により排気管8及び空燃比センサ13が比較的高い温度に安定し、凝縮水の発生がなくなるので、通常にセンサ素子を完暖状態に保持すべくヒータ13aに電圧を印加させても、素子割れの可能性は低いと判断し、ステップS10へ進む。
【0036】
ステップS10では、通常のヒータ制御を実行させる。
前記通常のヒータ制御とは、例えば、機関負荷・回転速度又は機関負荷・車速に応じて印加電圧を記憶したマップを参照し、そのときの機関負荷・回転速度又は機関負荷・車速に対応する電圧をヒータ13aに印加する制御や、空燃比センサ13の内部抵抗からセンサ温度を推定し、該温度と目標温度との偏差に基づいて印加電圧をフィードバック制御するヒータ制御などである。
【0037】
また、印加電圧を比較的高い値に固定する構成であっても良い。
このとき、空燃比センサ13は必要充分な応答性を示すので、ステップS11では、フィードバックゲインを、ステップS9で設定されるゲインよりも高い通常ゲインとして、空燃比フィードバック制御を行わせる。
【0038】
尚、上記実施形態では、ステップS4,ステップS5の判別結果に基づいてヒータ印加電圧がステップ的に変化することになるが、切り換え後の印加電圧まで徐々に変化させる構成とすることができる。
【0039】
また、ステップS4で、アイドル運転又は低速走行状態(低負荷・低回転運転)が所定時間以上継続していることを条件にステップS5に進むよう構成し、中・高速運転で排気管8及び空燃比センサ13が充分に暖められている状態からアイドル又は低速走行に移行した直後は、通常にヒータ制御及び空燃比フィードバック制御を行わせ、アイドル運転又は低速走行状態に所定時間以上放置されたときに、ヒータ印加電圧及びゲインの低下を行わせるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】実施形態におけるヒータ制御及び空燃比フィードバックゲインの設定を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…吸気管、3…スロットルバルブ、4…燃料噴射弁、5…燃焼室、6…点火プラグ、7…触媒コンバータ、8…排気管、10…コントロールユニット、11…エアフローメータ、12…回転センサ、13…空燃比センサ(排気センサ)、13a…ヒータ、14…車速センサ

Claims (2)

  1. 内燃機関の排気中の特定成分濃度を検出するヒータ付の排気センサを備え、該排気センサで検出される特定成分濃度に基づいて空燃比フィードバック制御信号を出力する内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記排気センサの排気からの受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であって始動後の経過時間が所定時間内であるときに、前記ヒータへの通電を停止させ、かつ、空燃比フィードバック制御を停止させ、
    前記排気から受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であって始動後の経過時間が前記所定時間を超えているときに、熱衝撃で素子割れを発生させることがない所定の低電圧を前記ヒータに印加し、かつ、ゲインを低下させて空燃比フィードバック制御を行わせることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 機関のアイドル運転時又は所定車速以下の低速走行時であるときに、前記排気センサの排気からの受熱量が低く凝縮水が発生し易い条件であると判断することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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