JP2010167961A - ハイブリッド車両の変速制御装置および変速制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブレーキペダルが操作されたときは、前記モータMGの回生制動時に、当該モータMGによる回生効率が所定値以上になる前記モータMGの回生目標回転数となるように前記変速機ATの変速比を制御する。その後、前記モータMGによるエンジンEのクランキング要求または再加速要求があるときには、当該クランキング時または再加速時に前記モータMGのトルクが所定値以上となる前記モータMGの力行目標回転数となるように前記変速機の変速比を制御する。これによって、回生制動後に大きなトルクでエンジンをクランキングできるため、エンジン始動の遅れを回避して加速不良を防止できる。
【選択図】 図4
Description
例えば、特許文献1では、回生制動時には運転者の要求する制動トルクと駆動軸の回転数によって定まる発電機(モータ)の運転条件(トルク、回転数)のうち、発電効率の良い条件となるようにCVT(無段変速機)の変速比を制御している。
この場合、そのエンジンを始動するためにエンジンとモータの間に位置するクラッチを接続してそのモータによってエンジンをクランキング(始動)することになる。
しかし、モータの最大トルクを発生する回転数(動作点)と回生制動時におけるモータの回生効率が最大となる回転数(動作点)は異なる。
つまり、一般的なモータではその最大力行トルク領域は、ある回転数(例えば2000rpm)よりも低い領域であるのに対し、モータの出力(回生パワー)が最大となる領域は、その回転数よりも高い領域となっている。
そこで、本発明はこのような課題に解決するために案出されたものであり、その目的は、回生制動後に大きなモータトルクでエンジンをクランキングできる新規なハイブリッド車両の変速制御装置および変速制御方法を提供するものである。
この変速制御装置は、運転者の要求制動力を算出する制動力算出手段と、駆動輪の回転数を検出する回転数検出手段と、制動回生時におけるモータの回生目標回転数を算出する目標回転数算出手段と、変速機の変速比を制御する変速機制御手段とを備える。
そして、変速機制御手段は、前記モータによるエンジンのクランキング要求または再加速要求が予想されるときは、前記モータの力行トルクが所定値以上になるモータの力行目標回転数となるように前記変速機の変速比を制御する。
これによって、直ちにエンジンを大きなトルクでクランキングできるため、瞬時にエンジンを始動することが可能となる。また、直ちに最大トルクでのモータによる再加速も可能となる。従って、モータのトルク不足により、エンジンの始動が遅れ、ドライバーの加速要求に対し、加速不良が発生するのを防止することができる。
(構成)
先ず、本発明の変速制御装置を含む駆動制御装置を適用した一般的なハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。
図1は、本発明の変速制御装置を含む駆動制御装置200を適用した後輪駆動によるハイブリッド車両100を示す全体システム図である。
図1に示すように、このハイブリッド車両100は、エンジンEと、モータジェネレータMGと、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、自動変速機AT(=トランスミッションT/M)とを有する。さらに、このハイブリッド車両100は、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、左前輪FLと、右前輪FRとを有する。
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータジェネレータなどからなる。そして、このモータジェネレータMGは、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいてインバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御する。このモータジェネレータMGのロータは、図示しないダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結する。そのため、このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて駆動輪RL、RRを回転駆動する電動機として動作する。また、制動時にロータが外力により回転しているときには、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電する(回生)。
第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装された油圧式多板クラッチなどからなる。そして、この第2クラッチCL2は、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて第2クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧によって滑り締結と滑り開放を含み締結・開放動作を行う。
この駆動(変速)制御装置200は、図1に示すようにエンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7とを備える。さらに、この駆動(変速)制御装置200は、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とを有する。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いに情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続する。
また、さらに、このATコントローラ7は、後に詳述するように、制動回生後にモータジェネレータMGによるエンジンEのクランキング要求が予想される場合は、そのモータトルクが最大となる回転数となるように自動変速機ATの変速比を可変制御する。なお、アクセル開度APと車速VSPの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
次に、このような駆動制御装置200を備えたハイブリッド車両100の基本動作について主に図2を参照しながら説明する。
先ず、図2(a)に示すように車両停止中においてバッテリSOC(State Of Charge)が低い状態であれば、図2(b)に示すようにエンジンEを始動して発電を行い、バッテリ4を充電する。そして、このバッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチCL1は開放で第2クラッチCL2を締結してエンジンEを停止する。
次に、図2(c)に示すように車両発進から加速時には、第1クラッチCL1は開放で第2クラッチCL2は締結のままモータジェネレータMGを駆動して駆動輪RR、RLを駆動する(モータ走行)。
このモータ走行からエンジン走行への切り替えは、図2(d)に示すように第2クラッチCL2を締結状態から滑り締結状態(半クラッチ)に制御してから第1クラッチCL1を締結することによって行う。これによって、モータジェネレータMGの駆動力(モータトルク)がエンジンEに伝わると共に、エンジン始動で消費されたモータトルク減少による減速ショックを緩和することができる。
次に、車両制動時(減速時)には、図2(f)に示すように第1クラッチCL1のみを開放状態にしてその減速エネルギーでモータジェネレータMGを駆動して発生した電力をバッテリ4に回収する(回生制動)。
そして、本発明の駆動(変速)制御装置200による特徴的な駆動制御は、これら一連の駆動制御のうち、主に図2(f)と(d)で示す回生制動からエンジン再始動時における自動変速機ATによる変速制御に関するものである。
本発明に係る変速制御は、先ず、最初のステップS100において、車両走行後にドライバーのブレーキペダル操作情報などに基づいて制動開始したか否かを判断する。制動開始していないと判断したとき(No)は、ステップS112までジャンプして通常の変速制御を継続する。反対に制動開始したと判断したとき(Yes)は、次のステップS102に移行する。
そして、この判断処理で回生要求パワーが「大」でないと判断したとき(No)は、ステップS106までジャンプする。反対に回生要求パワーが「大」であると判断したとき(Yes)はそのまま次のステップS104に移行する。
これによって、その回生制動時のモータジェネレータMGの回転数が上昇し、図4に示すように回生要求パワーが最大となる目標回転数(動作点1)で回生動作することになるため、回生効率(発電効率)を最適にできる。
そして、これらの要求が予想されない運転状態であると判断したとき(No)にはステップS112までジャンプして通常の変速制御を継続する。反対にこれらの要求が予想される運転状態であると判断したとき(Yes)は、次のステップS108に移行する。
これによって、モータジェネレータMGの回転数が図4に示すように回生トルクおよび力行トルクが最大となる目標回転数(動作点2,3)まで低下するため、最大力行トルクでエンジンEをクランキングすることができる。
その後、次のステップS110に移行してクランキングが終了したか否かを判断する。終了したと判断(Yes)したならばステップS112に移行して通常の変速制御を行って処理を終了する。
図示するように、このモータジェネレータMGは、回転数が約2000rpm以下で回生トルクおよび力行トルクのいずれも最大となる最大トルク領域となっている。また、このモータジェネレータMGは、約2000rpmを境にしてそれ以上の領域が最大出力領域となっている。
次に、この回生制動直後に、ドライバーの再加速要求やエンジンのクランキング要求が予想される運転状態となった場合、最大トルクを発生できる回転数領域(約2000rpm以下)の運転点2になるように自動変速機ATを制御する。具体的には、その変速比を「Low(ロー)」側から「Hi(ハイ)」側に移行してそのモータジェネレータMGの回転数が予め約2000rpm以下(図4の動作点2は約1000rpm)となるように自動変速機ATを制御する。
このような本発明に対して従来では、図8に示すようにモータジェネレータMGの最大出力領域にある動作点1からそのまま同じ回転数の動作点2に遷移してエンジンクランキングを開始することになっていた。このため、充分な力行トルクを発揮することができず、エンジン始動遅れや加速不良を招いていた。
図6はこのようにドライバーのブレーキ操作をトリガーとした場合の本発明の変速制御方法に係る実施例を示したものであり、図9は同じ条件の従来例を示したものである。なお、各図中の時間t1までが制動回生、時間t1〜t2がエンジンクランキング、時間t3以降がモータ+エンジンによる加速を示している。
これに対し、従来例に係る図9の例では、時間t2においてドライバーによる加速操作によりモータジェネレータMGは回生から力行でのクランキングに移行するが、変速比がLow側のままであり、回転数も最大トルクを発生できない領域となっている。そのため、モータ力行トルクが低い状態でエンジンクランキングを行うこととなり、エンジンクランキングに長時間を要する結果となる。また、エンジンクランキング中の加速Gも低いままの状態となっている。
また、ドライバーの操作以外に、減速Gの変化や要求回生パワーなどの減少によってモータジェネレータMGの動作点を最大出力領域から最大トルク領域に切り替えるようにしても良い。
すなわち、図7に示すように回生要求パワーが大きい場合は、動作点1〜2の最大トルクを発生可能な最高モータ回転数(2000rpm)の線(破線)と、回生要求パワーに応じた等パワー線の交点である動作点1で運転する。なお、回生要求パワーが小さい場合は、従来と同様にモータジェネレータMGの回生効率が最高となる動作点2〜3で運転しても力行時には直ちに最大力行トルク(150Nm)を発生できる。
なお、前記課題を解決するための手段に開示した本願発明の変速制御装置を構成する「制動力算出手段」は、例えば図1に示すブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10などに対応する。また、同じく「回転数検出手段」は、車速センサ17に対応し、また、同じく「目標回転数算出手段」は、統合コントローラ10やATコントローラ7およびモータコントローラ2などに対応する。また、同じく「変速機制御手段」は、ATコントローラ7などに対応し、また、同じく「モータ」は、モータジェネレータMGに対応する。
次に、本発明の効果を説明する。
本発明のハイブリッド車両100の変速制御装置200にあっては、以下のような効果を発揮する。
(1)本発明の変速制御装置200は、回生制動時には、モータジェネレータMGによる回生効率が最大になる回生目標回転数となるように変速機ATの変速比を制御する。その後、エンジンEのクランキング要求または再加速要求が予想される運転状態になったときには、そのクランキング時または再加速時にモータジェネレータMGの力行トルクが最大になる力行目標回転数となるように自動変速機ATの変速比を制御する。
これによって、直ちにエンジンを大きなトルクでクランキングできるため、瞬時にエンジンを始動することが可能となる。また、直ちに最大トルクでのモータによる再加速も可能となる。従って、モータのトルク不足により、エンジンの始動が遅れ、ドライバーの加速要求に対し、加速不良が発生するのを防止することができる。
これによって、クランキングトルクを大きくする場合の遅れを少なくすることができる。さらに、変速比も最大トルクを出力できる領域までHi側へ移行するので再加速要求があってエンジンEをクランキングするときであってもモータジェネレータMGのクランキングトルクを最大限に発揮できる。この結果、前記のようにモータジェネレータMGのトルク不足によるエンジン始動の遅れを回避してドライバーの加速要求に対する加速不良を防止することができる。
MG…モータジェネレータ
CL1…第1クラッチ
CL2…第2クラッチ
AT…自動変速機
PS…プロペラシャフト
DF…ディファレンシャル
DSL…左ドライブシャフト
DSR…右ドライブシャフト
RL…左後輪(駆動輪)
RR…右後輪(駆動輪)
FL…左前輪
FR…右前輪
1…エンジンコントローラ
2…モータコントローラ
3…インバータ
4…バッテリ
5…第1クラッチコントローラ
6…第1クラッチ油圧ユニット
7…ATコントローラ
8…第2クラッチ油圧ユニット
9…ブレーキコントローラ
10…統合コントローラ
100…ハイブリッド車両
200…変速制御装置(駆動制御装置)
Claims (3)
- エンジンとモータとをクラッチを介して接続すると共に、当該モータに変速機を介して駆動輪の駆動軸を接続してなるハイブリッド車両の変速制御装置であって、
ブレーキペダルの操作量に基づいて運転者の要求制動力を算出する制動力算出手段と、
前記駆動輪の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記ブレーキペダルが操作されたときに、前記回転数検出手段で検出した前記駆動輪の回転数と前記制動力算出手段で算出した要求制動力とに基づいて回生制動時の前記モータの回生目標回転数を算出する目標回転数算出手段と、
前記モータの回生制動時に、前記モータの回転数が前記目標回転数算出手段で算出された目標回転数となるように前記変速機の変速比を制御する変速機制御手段とを備え、
さらに前記目標回転数算出手段は、前記モータトルクが所定値以上になる前記モータの力行目標回転数を算出し、
前記変速機制御手段は、前記モータによるエンジンのクランキング要求または再加速要求が予想されるときに、前記モータの回転数が前記力行目標回転数となるように前記変速機の変速比を制御することを特徴とするハイブリッド車両の変速制御装置。 - 請求項1に記載のハイブリッド車両の変速制御装置において、
前記力行目標回転数を前記回生制動時の回転数よりも低く設定し、
前記変速機制御手段は、前記モータによるエンジンのクランキング要求または再加速要求が予想されるときに、前記モータの回転数を前記力行目標回転数にすべく前記変速機の変速比を前記モータの回生制動時の変速比よりも高い方に移行することを特徴とするハイブリッド車両の変速制御装置。 - 制動時には駆動輪の回転力を変速機を介してモータに伝達して回生制動を行い、再加速時には前記モータでエンジンをクランキングして当該エンジンの駆動力を前記変速機を介して前記駆動輪に伝達するようにしたハイブリッド車両の変速制御方法であって、
ブレーキペダルが操作されたときは、前記モータの回生制動時に、当該モータによる回生効率が所定値以上になる前記モータの回生目標回転数となるように前記変速機の変速比を制御し、
その後、前記モータによるエンジンのクランキング要求または再加速要求が予想されるときには、当該クランキング時または再加速時に前記モータのトルクが所定値以上となる前記モータの力行目標回転数にすべく前記変速機の変速比を、前記要求がある前に制御することを特徴とするハイブリッド車両の変速制御方法。
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