JP2009090898A - 駆動力制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 制御のハンチングを抑制することができる駆動力制御装置を提供すること。
【解決手段】 駆動輪にスリップが発生したときに、原動機の出力トルクを駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御をするフィードバック制御部と、駆動輪にスリップが発生したときに、発進摩擦要素の締結トルクを要求駆動トルクに応じてフィードフォワード制御をするフィードフォワード制御部と、を有する駆動力制御手段とを設けた。
【選択図】 図3

Description

本願発明は、駆動輪にスリップが発生したときに、駆動輪に伝達される駆動力を調節して、駆動輪のスリップを抑制する制御を行う駆動力制御装置に関する。
この種の技術としては、特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報では、エンジンを駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御し、エンジンの回転数に応じて変化する発進クラッチのクラッチ伝達トルクを設定するものが開示されている。
特開2007−45208号公報
上記従来技術では、発進クラッチもフィードバック制御されることとなる。しかしながら、発進クラッチの制御応答速度が原動機の出力トルクの制御応答速度と比べて遅いため追従することができず、制御のハンチングが生じるおそれがあった。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、制御のハンチングを抑制することができる駆動力制御装置を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明の駆動力制御装置においては、駆動輪にスリップが発生したときに、原動機の出力トルクを駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御をするフィードバック制御部と、駆動輪にスリップが発生したときに、発進摩擦要素の締結トルクを要求駆動トルクに応じてフィードフォワード制御をするフィードフォワード制御部と、を有する駆動力制御手段とを設けた。
そのため、制御のハンチングを防ぎ目標の駆動トルクに早く収束させることができる。
以下、本発明の駆動力制御装置を実現する最良の形態を、実施例1に基づいて説明する。
まず、本願発明の駆動力制御装置を搭載したハイブリッド車両の構成について説明する。
[ハイブリッド車両の駆動系構成]
ハイブリッド車両の駆動系の構成を説明する。
図1は実施例1の減速制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、原動機としてのエンジンEおよびモータMと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、発進摩擦要素としての第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、左前輪FLと、右前輪FRと、を有する。なお、以下では駆動輪が駆動するトルクを駆動トルク、エンジンEまたはモータMが出力するトルクを出力トルク、第2クラッチCL2が締結するトルクを締結トルクと称する。
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。なお、エンジンEの出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
前記モータMは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータMは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータMのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEとモータMとの間に介装された油圧式単板クラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により、滑り締結と滑り開放を含み締結・開放が制御される。
前記第2クラッチCL2は、前記モータMと左右後輪RL,RRとの間に介装された油圧式多板クラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、滑り締結と滑り開放を含み締結・開放が制御される。
前記自動変速機ATは、例えば、前進5速後退1速や前進6速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
[ハイブリッド車両の制御系構成]
次に、ハイブリッド車両の制御系の攻勢を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力し、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(エンジン回転数Ne、エンジン出力トルクTe)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Ne、エンジン出力トルクTeの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記モータコントローラ2は、モータMのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータトルク指令等に応じ、モータMのモータ動作点(モータ回転数Nm、モータ出力トルクTm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、モータ回転数Nm、モータ出力トルクTmの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。また、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータMの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。なお、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令に応じ、変速制御における第2クラッチ制御に優先し、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。なお、アクセル開度APと車速VSPの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチトルクTCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ23からの情報、減速モード選択スイッチ24からの選択情報、およびCAN通信線11を介して得られた情報を入力する。そして、前記エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジンEの動作制御を行い、前記モータコントローラ2への制御指令によりモータMの動作制御を行い、前記第1クラッチコントローラ5への制御指令により第1クラッチCL1の締結・開放制御を行い、前記ATコントローラ7への制御指令により第2クラッチCL2の締結・開放制御を行う。
図2は、統合コントローラ10内の駆動力制御手段としてのトラクションコントロールシステム部100の制御ブロック図である。トラクションコントロールシステム(Traction Control System、以下TCSと称する)は発進・加速時に駆動輪にスリップが発生した場合、駆動輪の駆動トルクを制御してスリップを抑制するように制御する。
TCS部100は、走行状態判定部101と、車輪速演算部102と、目標値設定部103と、目標駆動トルク演算部104と、を有して構成されている。
走行状態判定部101では、従動輪速から前後加速度と路面μを演算し、演算結果を目標値設定部103に出力している。車輪速演算部では、従動輪速から車体速を求め、車体速と駆動輪速から駆動輪のスリップ量を演算し、演算結果を目標値設定部103に出力している。
目標値設定部103では、前後加速度から目標前後加速度を演算し、演算結果を後述の目標駆動トルク演算部104内のフィードフォワード制御部104aに出力する。また、路面μと駆動輪のスリップ量から駆動輪目標スリップ量を演算し、この演算結果と駆動輪のスリップ量を後述の目標駆動トルク演算部104内のフィードバック制御部104bに出力する。
フィードフォワード制御部104aでは、駆動トルクと目標前後加速度から要求駆動トルクに応じた目標駆動トルクのフィードフォワード項を演算する。目標駆動トルクのフィードフォワード項とは、車両の加速度が目標前後加速度となる設定した要求駆動トルクに対して、定常的な走行抵抗等を考慮して目標駆動トルクを演算したものである。
フィードバック制御部104bでは、駆動輪の目標スリップ量と現在のスリップ量との差分に基づいて、目標駆動トルクのフィードバック項を演算する。目標駆動トルクのフィードバック項とは、駆動輪のスリップ量が目標スリップ量に収束するように目標駆動トルクを演算したものである。
[ハイブリッド車両の基本動作]
次に、第1実施例のハイブリッド車両の基本動作について説明する。
停止中において、バッテリSOCの低下時であれば、エンジンEを始動して発電を行い、バッテリ4を充電する。そして、バッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチCL1は締結で第2クラッチCL2は開放のままでエンジンEを停止する。
エンジン発進時には、アクセル開度APとバッテリSOC状態によって、モータMを連れ回し、力行/発電に切り替える。
モータ発進時で、ロールバックにより自動変速機ATの出力回転が負回転となったら、第2クラッチCL2の滑り制御を行い、モータMの回転を正回転に維持する。次に、駆動力を車両が前進するまで上昇させ、第2クラッチCL2を滑り制御から締結に移行させる。
モータ走行は、エンジン始動に必要なモータトルクとバッテリ出力を確保し、不足する場合はエンジン走行に移行する。
燃費向上のために、モータ走行と発電上乗せ充電はセットで行う(モータトルクとバッテリ出力の制約により、走行可能範囲は、低負荷に限定される)。
発電上乗せ充電は、エンジン燃料消費の最小点を狙い、走行に必要なトルクに発電トルクを上乗せして行う(但し、バッテリSOC上昇時は、発電を行わない)。
アクセル踏み込み時のレスポンス向上のために、エンジントルク遅れ分をモータMによりアシストする。
ブレーキON減速時には、ドライバーのブレーキ操作に応じた減速力を回生協調ブレーキ制御にて得る。
エンジン走行やモータ走行中における変速時には、加減速中の変速に伴う回転数合わせのために、モータMを回生/力行させ、トルクコンバータ無しでのスムーズな変速を行う。
[TCS制御の処理]
次に、TCS制御の処理について説明する。
図3は、統合コントローラ10において行われるTCS制御の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、TCSが作動中であるか否かを判定し、TCSが作動中である場合にはステップS2へ移行し、TCSが作動中でなければ処理を終了する。TCSが作動中であるとは、駆動輪のスリップ量が設定値以上となり駆動輪がスリップしていると判定されているときのことを示す。
ステップS2では、目標駆動トルクのフィードフォワード項を演算し、ステップS3へ移行する。
ステップS3では、目標駆動トルクのフィードバック項を演算し、ステップS4へ移行する。
ステップS4では、目標駆動トルクのフィードフォワード項から第2クラッチCL2の目標締結トルクを演算し、ステップS5へ移行する。
ステップS5では、目標駆動トルクのフィードバック項からエンジンEの目標出力トルクを演算し、ステップS6へ移行する。
ステップS6では、第2クラッチCL2の下限締結トルクを演算し、ステップS7へ移行する。図4は、第2クラッチCL2の指令締結トルクに対する実際の締結トルクを示すグラフである。図4のグラフの点線は指令締結トルクに対応して実際の締結トルクの誤差がないときの状態を示し、一点鎖線は指令締結トルクに対する実際の締結トルクの最大値を示し、二点鎖線は指令締結トルクに対する実際の締結トルクの最低値を示す。
図4に示すように、締結トルクが比較的小さくなると、指令締結トルクに対して実際の締結トルクのずれ幅が大きくなり、精度が著しく低くなる。そこで、指令締結トルクに対する実際の締結トルクの精度が著しく低くなる締結トルクを下限締結トルクとして設定している。
ステップS7では、エンジンEの下限出力トルクを演算し、ステップS8へ移行する。下限出力トルクとは、エンジンEのエンジンストップ回避や、冷機中や、モータMによる発電中に必要な最低限のエンジン出力トルクを示す。
ステップS8では、ステップS4で演算した目標締結トルクが、ステップS6で演算した下限締結トルクよりも小さいか否かを判定する。そして、目標締結トルクが下限締結トルク以上である場合にはステップS9へ移行し、目標締結トルクが下限締結トルクより小さい場合にはステップS12へ移行する。
ステップS9では、ステップS5で演算した目標出力トルクが、ステップS7で演算した下限出力トルクよりも小さいか否かを判定する。そして、目標出力トルクが下限出力トルク以上である場合にはステップS10は移行し、目標出力トルクが下限出力トルクより小さい場合にはステップS16へ移行する。
ステップS10では、ステップS4で演算した目標締結トルクをATコントローラ7へ出力し、ステップS11へ移行する。
ステップS11では、ステップS5で演算した目標出力トルクをエンジンコントローラ1に出力し、処理を終了する。
ステップS12では、目標駆動トルクのフィードバック項とフィードフォワード項からエンジンEの目標出力トルクを演算する。
ステップS13では、ステップS12で演算した目標出力トルクが下限出力トルクよりも小さいか否かを判定する。目標出力トルクが下限出力トルク以上である場合にはステップS14へ移行し、目標締結トルクが下限締結トルクより小さい場合にはステップS20へ移行する。
ステップS14では、ステップS6で演算した下限締結トルクをATコントローラ7へ出力し、ステップS15へ移行する。
ステップS15では、ステップS12で演算した目標出力トルクをエンジンコントローラ1に出力し、処理を終了する。
ステップS16では、目標駆動トルクのフィードバック項とフィードフォワード項から第2クラッチCL2の目標締結トルクを演算する。
ステップS17では、ステップS16で演算した目標締結トルクが下限締結トルクよりも小さいか否かを判定する。目標締結トルクが下限締結トルク以上である場合には、ステップS18へ移行し、目標締結トルクが下限締結トルクより小さい場合にはステップS20へ移行する。
ステップS18では、ステップS16で演算した目標締結トルクをATコントローラ7へ出力し、ステップS19へ移行する。
ステップS19では、ステップS7で演算した下限出力トルクをエンジンコントローラ1に出力し、処理を終了する。
ステップS20では、ステップS6で演算した下限締結トルクをATコントローラ7へ出力し、ステップS21へ移行する。
ステップS21では、ステップS7で演算した下限出力トルクをエンジンコントローラ1に出力し、ステップS22へ移行する。
ステップS22では、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項からモータMの目標出力トルクを演算して、このモータMの目標出力トルクをモータコントローラ2に出力し、処理を終了する。
[TCS制御の作用]
次に、実施例1のTCS制御の作用について説明する。
TCS作動時には、駆動トルクを制御して駆動輪のスリップを低減するように、エンジンEの出力トルクと、第2クラッチCL2の締結トルクとを制御している。このTCS作動時には目標スリップ量と実際のスリップ量の差分に応じてフィードバック制御を行う。このとき、エンジンEの出力トルクの制御応答はフィードバック制御の制御周期に追従できるが、第2クラッチCL2の締結トルクの制御応答はフィードバック制御の周期に追従できない。
そのため、制御のハンチングを生じて目標の駆動トルクへの収束が遅くなるといった問題があった。特にTCSの作動が行われやすい発進時には、油温が低いため第2クラッチCL2の制御応答の悪化は顕著なものとなり、制御ハンチングが生じやすく、目標の駆動トルクへの収束が遅くなる。
このことを考慮して、第2クラッチCL2の締結トルクを高くして一定に保ち、エンジンEの出力トルクのみでTCSの制御を行うことも考えられる。しかしながら、エンジンEの出力が急増した場合に、駆動輪に出力トルクがそのまま伝達されショックが発生するおそれがある。逆に路面負荷が急増した場合に、エンジンストップを生じるおそれがある。また、冷機中や発電中には、エンジンEの出力トルクを十分に落とすことができず、第2クラッチCL2の締結トルクによって、駆動トルクを制御しなければならないことがある。
そこで実施例1では、エンジンEの出力トルクを目標駆動トルクのフィードバック項によって制御し、第2クラッチCL2を目標駆動トルクのフィードフォワード項によって制御するようにした。
図3のフローチャートにおいて、TCSが作動中であって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルク以上であって、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルク以上である場合には、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ENDと移行する。
図5は、TCSが作動したときの目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項の時間変位を示す図である。
目標駆動トルクのフィードフォワード項は、車両の加速度が目標前後加速度となるように、定常的な走行抵抗等を考慮して演算したものであるため、変位速度は比較的小さい。
一方、目標駆動トルクのフィードバック項は、駆動輪の目標スリップ量と現在のスリップ量との差分に基づいて、駆動輪のスリップ量が目標スリップ量に収束するように目標駆動トルクを演算したものである。TCSが作動するのは駆動輪にスリップが発生している状態であり、TCS作動時は駆動トルクの制御により刻々と目標スリップ量と実際のスリップ量との差が変化している。そのため、目標駆動トルクのフィードバック項の変位速度は、フィードフォワード項の変位速度に対して速くなる。
実施例1では、TCS制御時には、変位速度の遅い目標駆動トルクのフィードフォワード項に基づいて第2クラッチCL2を制御し、変位速度の速い目標駆動トルクのフィードバック項に基づいてエンジンEを制御ため、制御のハンチングを防ぎ目標の駆動トルクに早く収束させることができる。
また第2クラッチCL2は、締結トルクが比較的小さい範囲においては、指令締結トルクに対する実際の締結トルクの精度が著しく低くなる。
そこで実施例1では、第2クラッチCL2の下限締結トルクを設定し、目標締結トルクが下限締結トルクより小さくなるときには、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項とに応じてエンジンEの目標出力トルクを設定するようにした。
図3のフローチャートにおいて、TCSが作動中であって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクより小さく、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルク以上である場合には、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15→ENDと移行する。
図6は、目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。図6において、太実線はエンジンEの目標出力トルクを示し、細実線は第2クラッチCL2の目標締結トルクを示し、点線は目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項をそれぞれ示し、一点差線はエンジンEの下限出力トルクを示し、二点鎖線は第2クラッチCL2の下限締結トルクを示す。
なお、図6は目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力トルクの関係を模式的に示したものであって、正確な関係を示したものではない。
図6に示すように、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項が下限締結トルク以上である範囲においては、目標駆動トルクのフィードフォワード項に応じて目標締結トルクが求められ(図6中のA)、目標駆動トルクのフィードバック項に応じて目標出力トルクが求められる(図6中のB)。
目標駆動トルクのフィードフォワード項が下限締結トルクより小さい範囲においては、目標締結トルクは下限締結トルクに設定される(図6中のC)。また、目標出力トルクは、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項に応じて求められる(図6中のD)。
よって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクより小さい範囲においても、TCS制御を行うことができ、駆動輪のスリップを抑制して加速を行うことができる。
またエンジンEは、冷機中や発電中には十分に出力トルクを小さくすることができないことがある。
そこで実施例1では、エンジンEの下限出力トルクを設定し、目標出力トルクが下限出力トルクより小さくなるときには、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項とに応じて第2クラッチCL2の目標締結トルクを設定するようにした。
図3のフローチャートにおいて、TCSが作動中であって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルク以上であって、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクより小さい場合には、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS16→ステップS17→ステップS18→ステップS19→ENDと移行する。
図7は、目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。図7において、太実線はエンジンEの目標出力トルクを示し、細実線は第2クラッチCL2の目標締結トルクを示し、点線は目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項をそれぞれ示し、一点差線はエンジンEの下限出力トルクを示し、二点鎖線は第2クラッチCL2の下限締結トルクを示す。
なお、図7は目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力トルクの関係を模式的に示したものであって、正確な関係を示したものではない。
図7に示すように、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項が下限出力トルク以上である範囲においては、目標駆動トルクのフィードフォワード項に応じて目標締結トルクが求められ(図7中のA)、目標駆動トルクのフィードバック項に応じて目標出力トルクが求められる(図7中のB)。
目標駆動トルクのフィードバック項が下限出力トルクより小さい範囲においては、目標出力トルクは下限出力トルクに設定される(図7中のC)。また、目標締結トルクは、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項に応じて求められる(図7中のD)。
よって、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクより小さい範囲においても、TCS制御を行うことができ、駆動輪のスリップを抑制して加速を行うことができる。
また、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクよりも小さく、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクよりも小さくなるときには、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項とに応じてモータMの目標出力トルクを設定するようにした。
図3のフローチャートにおいて、TCSが作動中であって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクより小さく、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクより小さい場合には、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS12→ステップS13→ステップS20→ステップS21→ステップS22→END、または、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS16→ステップS17→ステップS20→ステップS21→ステップS22→ENDと移行する。
図8、図9は、目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。図8は下限出力トルクが下限締結トルクよりも大きい場合を示し、図9は下限出力トルクが下限締結トルクよりも小さい場合を示している。
図8、図9において、太実線はエンジンEの目標出力トルクを示し、中太実線はモータMの目標出力トルクを示し、細実線は第2クラッチCL2の目標締結トルクを示し、点線は目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項をそれぞれ示し、一点差線はエンジンEの下限出力トルクを示し、二点鎖線は第2クラッチCL2の下限締結トルクを示す。
なお、図8、図9は目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力トルクの関係を模式的に示したものであって、正確な関係を示したものではない。
図8に示すように、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項が下限出力トルク以上である範囲においては、目標駆動トルクのフィードフォワード項に応じて目標締結トルクが求められ(図8中のA)、目標駆動トルクのフィードバック項に応じて目標出力トルクが求められる(図8中のB)。
目標駆動トルクのフィードバック項が下限出力トルクより小さい範囲においては、目標出力トルクは下限出力トルクに設定される(図8中のC)。また、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項が下限出力トルクより小さく、下限締結トルク以上である範囲においては、目標締結トルクは目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項に応じて求められる(図8中のD)。
また、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項が下限締結トルクより小さい範囲においては、モータMの目標出力トルクが目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項に応じて求められる(図8中のE)。
また、図9に示すように、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項が下限締結トルク以上である範囲においては、目標駆動トルクのフィードフォワード項に応じて目標締結トルクが求められ(図9中のA)、目標駆動トルクのフィードバック項に応じて目標出力トルクが求められる(図9中のB)。
目標駆動トルクのフィードフォワード項が下限締結トルクより小さい範囲においては、目標締結トルクは下限締結トルクに設定される(図9中のC)。また、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項が下限締結トルクより小さく、下限出力トルク以上である範囲においては、目標出力トルクは目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項に応じて求められる(図9中のD)。
また、目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項が下限出力トルクより小さい範囲においては、モータMの目標出力トルクが目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項に応じて求められる(図9中のE)。
よって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクよりも小さく、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクよりも小さい範囲においても、TCS制御を行うことができ、駆動輪のスリップを抑制して加速を行うことができる。
[実施例1の効果]
次に、実施例1の効果を以下に列記する。
(1)エンジンEと、エンジンEと駆動輪との間に断続可能に設けた第2クラッチCL2と、駆動輪にスリップが発生したときに、エンジンEの出力トルクを駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御をするフィードバック制御部104bと、駆動輪にスリップが発生したときに、第2クラッチCL2の締結トルクを要求駆動トルクに応じてフィードフォワード制御をするフィードフォワード制御部104aとを有するTCS部を設けた。
制御周期が遅いフィードフォワード制御により、制御応答が遅い第2クラッチCL2の締結トルクを制御し、制御周期が速いフィードバック制御により、制御応答の速いにエンジンEの出力トルクを制御するため、制御のハンチングを防ぎ目標の駆動トルクに早く収束させることができる。
(2)第2クラッチCL2の下限締結トルクを設定し、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルク未満となるときには、エンジンEの出力トルクをフィードフォワード制御するようにした。
よって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクより小さい範囲においても、TCS制御を行うことができ、駆動輪のスリップを抑制して加速を行うことができる。
(3)エンジンEの下限出力トルクを設定し、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルク未満となるときには、第2クラッチCL2の締結トルクをフィードバック制御するようにした。
よって、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクより小さい範囲においても、TCS制御を行うことができ、駆動輪のスリップを抑制して加速を行うことができる。
(4)エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルク未満であって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルク未満となるときには、モータMの出力トルクをフィードフォワード制御とフィードバック制御をするようにした。
よって、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクよりも小さく、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクよりも小さい範囲においても、TCS制御を行うことができ、駆動輪のスリップを抑制して加速を行うことができる。
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1では原動機としてエンジンEとモータMを有するハイブリッド車両について説明したが、原動機としてエンジンEのみを有す車両であっても良い。但しこの場合には、第2クラッチCL2の目標締結トルクが下限締結トルクよりも小さく、エンジンEの目標出力トルクが下限出力トルクよりも小さくなるときに、モータMによってTCS制御を行うことはできない。
実施例1のハイブリッド車両を示す全体システム図である。 実施例1のTCS部の制御ブロック図である。 実施例1の統合コントローラにおいて行われるTCS制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1の第2クラッチの指令締結トルクに対する実際の締結トルクを示すグラフである。 実施例1のTCSが作動したときの目標駆動トルクのフィードフォワード項とフィードバック項の時間変位を示す図である。 実施例1の目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。 実施例1の目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。 実施例1の目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。 実施例1の目標出力トルク、目標締結トルク、目標駆動トルクのフィードフォワード項、フィードバック項、下限締結トルク、下限出力の関係を示す模式図である。
符号の説明
E エンジン
CL2 第2クラッチ
100 トラクションコントロールシステム部
104 目標駆動力演算部
104a フィードフォワード制御部
104b フィードバック制御部

Claims (4)

  1. 原動機と、
    前記原動機と駆動輪との間に断続可能に設けた発進摩擦要素と、
    前記駆動輪にスリップが発生したときに、前記原動機の出力トルクを前記駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御をするフィードバック制御部と、前記駆動輪にスリップが発生したときに、前記発進摩擦要素の締結トルクを要求駆動トルクに応じてフィードフォワード制御をするフィードフォワード制御部と、を有する駆動力制御手段と、
    を設けたことを特徴とする駆動力制御装置。
  2. 請求項1に記載の駆動力制御装置において、
    前記発進摩擦要素の下限締結トルクを設定し、
    前記駆動力制御手段は、前記締結トルクが前記下限締結トルク未満となるときには、フィードフォワード制御部により前記出力トルクを要求駆動トルクに応じてフィードフォワード制御をすることを特徴とする駆動力制御装置。
  3. 請求項1に記載の駆動力制御装置において、
    前記原動機の下限出力トルクを設定し、
    前記駆動力制御手段は、前記出力トルクが前記下限出力トルク未満となるときには、フィードバック制御部により前記締結トルクを前記駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御をすることを特徴とする駆動力制御装置。
  4. 請求項2に記載の駆動力制御装置において、
    前記原動機はエンジンとモータであって、
    前記エンジンのエンジン下限出力トルクを設定し、
    前記駆動力制御手段は、前記出力トルクが前記エンジン下限出力トルク未満であって、前記締結トルクが前記下限締結トルク未満となるときには、フィードバック制御部により前記モータの出力トルクを前記駆動輪のスリップを抑制するようにフィードバック制御するとともに、フィードフォワード制御部により前記モータの出力トルクを要求駆動トルクに応じてフィードフォワード制御をすることを特徴とする駆動力制御装置。
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