JP2010158103A - アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】大幅な変位量の低下を招くことなく、発生力を効果的に向上できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極20および多層電極21と、前記多層電極20と前記多層電極21とに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極20の有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合わない少なくとも1つの導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向し、前記多層電極20の有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向しているアクチュエータ。
【選択図】図1

Description

本発明は、イオン伝導性材料を用いたアクチュエータに関する。
有機材料やカーボン材料を利用したアクチュエータは、比較的軽量で、柔軟性が高いなどの特徴を有し、特にソフトアクチュエータと呼ばれることもある。ソフトアクチュエータの代表的なものとしては、パーフルオロスルホン酸系樹脂などのイオン交換膜(イオン伝導層)と接合金属電極からなる、イオン伝導性高分子アクチュエータ(以下、ICPF(Ionic Conducting Polymer Film)アクチュエータと略することがある)が報告されている(例えば非特許文献1)。
また最近では、カーボン系の導電材料と高分子材料(高分子バインダ)との複合により形成される伸縮性のある導電層で、イオン伝導性電解質膜(イオン伝導層)を挟んだ構造にしたアクチュエータが開発されている。例えば、カーボンナノチューブ(carbon nanotube、以下、CNTと略すことがある)ゲルと高分子バインダからなる導電層で、イオン伝導層を挟んだ構造にしたCNTゲルアクチュエータが提案されている(特許文献1を参照)。なおCNTゲルとは、CNTとイオン伝導性の液体であるイオン液体とから自己組織化的に形成されるゲルのことである。
これらのソフトアクチュエータの多くの部分は有機材料(高分子材料)で構成されるが、有機材料は一般にヤング率が低いため、その変位量は大きいが発生力は小さく、応用・利用が進んでいない。また、これらソフトアクチュエータは、発生力を大きくしようと電圧を大きくすれば高分子膜などが電気分解してしまう。
その解決手段として特許文献2では、CNTゲルアクチュエータにおいて、導電層中の導電材料であるCNTをランダムに分散させた場合には、発生する力の方向が互いに打ち消し合っているが、配向化したCNTを用いると、発生力の方向が揃った効率のよいアクチュエータが得られることが開示されている。
特開2005−176428号公報 特開2008−266532号公報 「ソフトアクチュエータ開発の最前線」、エヌ・ティー・エス出版(2004年)
しかしながら、ICPFアクチュエータやCNTゲルアクチュエータなどのアクチュエータの駆動は、電圧印加に基づくアクチュエータ内でのイオンの移動に基づいている。そのため、効果的にアクチュエータの発生力を向上させるためには、電極中の導電材料の配向化により発生力の方向を揃えるだけでなく、イオン伝導層から導電層へのイオンの移動量(イオンの移動速度)の向上を両立させる必要がある。また、イオンの移動量の向上は変位量の向上にも繋がる。
つまり、アクチュエータにおける導電層中の導電材料に、導電層の厚さ方向(膜厚方向)に対して垂直な方向(膜面方向)で、かつその向きが一軸方向であるように配向を持たせた場合には、ランダム配向や膜厚方向への配向を持たせた場合に比べて、発生力を屈曲変形方向へ効果的に揃えることができるが、イオン伝導層から導電層へのイオンの移動量が低下する。そのため、アクチュエータを駆動するために必要な、イオン伝導層から導電層へのイオンの移動の量が小さくなり、アクチュエータの変位量は低下してしまう。一方、導電層における導電材料に、膜厚方向への配向を持たせた場合には、ランダム配向や膜面方向への配向を持たせた場合に比べて、電圧印加に伴うイオンの移動量は向上し、アクチュエータの変位量は大きくなるが、発生力を効果的に屈曲変形方向へ揃えることができず、発生力を向上させることができない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、大幅な変位量の低下を招くことなく、発生力を効果的に向上することができるアクチュエータを提供することを目的とする。
第一の本発明は、導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極Aおよび多層電極Bと、前記多層電極Aと前記多層電極Bとに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極Aの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合わない少なくとも1つの導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向し、前記多層電極Aの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向していることを特徴とするアクチュエータである。
第二の本発明は、導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極Aおよび多層電極Bと、前記多層電極Aと前記多層電極Bとに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極A及び前記多層電極Bの有する複数の導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向していることを特徴とするアクチュエータである。
第三の本発明は、導電材料を有する複数の導電層を有する、一対の多層電極と、前記一対の多層電極に挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記一対の多層電極の有する複数の導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向していることを特徴とするアクチュエータである。
本発明によれば、大幅な変位量の低下を招くことなく、発生力を効果的に向上することができるアクチュエータを提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るアクチュエータは、導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極Aおよび多層電極Bと、前記多層電極Aと前記多層電極Bとに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極Aの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合わない少なくとも1つの導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向し、前記多層電極Aの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向していることを特徴とするアクチュエータである。その結果、大幅な変位量の低下を招くことなく、効果的に発生力を向上することができるアクチュエータの作製が可能となる。
ここで、一軸方向に配向し、とは、導電材料が膜厚方向に対して垂直な平面に対して平行に配向していて、かつ、特定の一方向に配向していることを意味する。したがって、一軸方向に配向している導電材料同士は、互いに平行な位置関係にある。
また、導電材料が膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向しているとは、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向していればよく、膜厚に対して平行な方向に配向している場合、ランダムに配向している場合などが考えられる。
このようなアクチュエータを用いてアクチュエータの素子を構成することでアクチュエータ中でのイオンの移動量の大幅な低下を抑制することができる。
またこのようにして作製されるアクチュエータは、常に大きな荷重が作用する、荷重に抗して動作させる必要がある、といった、より高い発生力が要求される可動要素にも利用でき、その適用範囲の拡大化を図ることが可能である。
また、本発明にかかるアクチュエータにおいて、前記多層電極Bの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向していることが好ましい。このような構成をとることで、電圧印加に伴いイオン伝導層から電極表面へイオンが効果的に導電層内で移動するためイオンの移動量を高くすることができ、アクチュエータの大幅な変位量の低下を招くことなくアクチュエータの発生力を向上させ得ることが可能となる。
また、本発明にかかるアクチュエータにおいて、前記多層電極Bの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合わない少なくとも1つの導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向していることが好ましい。このような構成をとることで、アクチュエータの発生力をさらに大きくすることができる。
また、本発明にかかるアクチュエータにおいて、前記多層電極Aおよび前記多層電極Bの最外層を構成する2つの導電層のうち少なくとも一方が膜厚方向に対して垂直な方向かつ一軸方向に配向が好ましい。このような構成をとることで、アクチュエータの発生力をさらに大きくすることができる。
また、本発明にかかるアクチュエータにおいて、前記多層電極Aおよび前記多層電極Bの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向していることが好ましい。このような構成をとることで、イオンの移動量をより向上させることができ、アクチュエータの変位量の大幅な低下を招くことなく、さらに効果的に発生力を向上することができるアクチュエータの作製が可能となる。
また、本発明にかかるアクチュエータにおいて、前記導電材料が、炭素ナノ粒子、ナノ炭素繊維、カーボンナノチューブのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。導電材料としてこのような材料を選択することで、導電材料の比表面積(単位質量当たりの表面積)を高くする、イオンをより貯めやすくなる、などにより、高い発生力を得ることができるアクチュエータの作製が可能となる。
また、本発明にかかるアクチュエータにおいて、前記イオン導電物質がイオン液体を含むことが好ましい。イオン導電物質がイオン液体を含む場合には、空気中でアクチュエータ駆動を行うことができるようになるため、応用が広がる。加えて、イオン液体中でのイオンの伝導は、単純な拡散だけではなくホッピング機構によっても効果的に進むため、イオン伝導効率は高く、さらにイオン液体は引火性・可燃性がなくまた熱安定性が高い、電位窓が広いという利点も有していることからも、イオン伝導層にイオン液体を含むことが好ましい。
また、本発明に係るアクチュエータは、導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極Aおよび多層電極Bと、前記多層電極Aと前記多層電極Bとに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極A及び前記多層電極Bの有する複数の導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向しているものであってもよい。
また、本発明に係るアクチュエータは、導電材料を有する複数の導電層を有する、一対の多層電極と、前記一対の多層電極に挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記一対の多層電極の有する複数の導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向しているものであってもよい。
なお、上記本発明に係るアクチュエータにおいて、導電材料を配向させる方向は、アクチュエータの屈曲変形方向(アクチュエータの寸法、材料構成、導電層の配置など)を考慮して、その屈曲変形の運動を妨げないように、適切な配向を選択することができる。
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
(アクチュエータの構成)
図1は本発明に係る多層電極20、21を有するアクチュエータの一実施態様を示す概略断面図である。アクチュエータとしてイオン伝導型アクチュエータの例を示す。このアクチュエータ1は、複数(図1では片電極につき2個の場合を示しているが、2個以上であればよい)の導電層201、202、211、212がイオン伝導物質を有するイオン伝導層30を介して積層して構成される。またここでは前記複数の導電層のうち、前記イオン伝導層30と隣り合わない少なくとも1つの導電層(図1では、202、212のうち少なくとも1つ)の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向している。かつ、前記複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向したものを用いてアクチュエータの素子を構成する。
例えば、導電層202の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向してい、かつ、導電層201の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向したものを用いてアクチュエータの素子を構成することができる。
(アクチュエータの駆動)
ここで、従来式のイオン伝導型アクチュエータは、図8に示すように、細長い矩形平板状に構成されたイオン交換樹脂成形板(イオン伝導層)300と、該イオン伝導層の表裏両面に相互に電気絶縁状態に接合し形成された電極2000、2001とを備え、電極には一対のリード線500の一端部がそれぞれ接続されている。各リード線の他端部間には電源400が接続されており、前記電極に電圧を印加して両電極間に電位差をかけることにより、イオン伝導層300の有するイオンを電極に移動させ、湾曲及び変形をさせることができる。
一方、本発明における多層電極を有するアクチュエータも、電圧印加によるイオンの移動を誘起することで屈曲運動を起こすことができる。つまり、上記のごとき構成の複数個の導電層からなる多層電極20、21を、イオン伝導物質を有するイオン伝導層30を介して積層してなるアクチュエータ1において、多層電極20、21にリード線50を介して電源40から電圧を印加することで、湾曲、変形動作を起こすことができる。具体的には、電圧を印加すると、イオン伝導物質の有するカチオンはカソード電極へ、アニオンはアノード電極へと移動し、各々の電極は膨張する。ここで、カチオンとアニオンとで分子サイズが異なると、電極の膨張の度合いが各々異なるため、屈曲変形する。
本発明に係るアクチュエータは、上記電極間に0.1から10V程度の低い電圧を印加すると、屈曲変形する。イオン液体の電位窓の点から、印加電圧は4V以下であることがさらに好ましい。なお、駆動方式は所望する駆動によって、直流および交流を用いることができる。具体的に、直流は時間によって大きさが変化しても流れる方向(正負)が変化しない電流のことで、交流は周期的に方向(正負)が変化する電流のことである。交流の場合、周期的な屈曲運動をさせることができる。屈曲変形の方向、変位量、変位速度等は、導電層・イオン伝導層の種類、電極の組成・構成、移動するイオン種等により変動する。また、通常、電位の極性を反転させると膜は反対方向に屈曲変形する。
(アクチュエータの構成材料)
次に、図1で示すアクチュエータ1を構成する部材について説明する。本発明に係るこの多層電極を有するアクチュエータ1を構成するイオン伝導層および導電層について代表的な材料を述べる。
<イオン伝導層>
イオン伝導層30としては、イオン伝導物質を含む柔軟材料であり、イオン伝導物質を含む非イオン性高分子化合物であってもよいし、イオン性高分子化合物であってもよい。なお、イオン性高分子化合物とは、該化合物を電場下におき、電荷が移動して電流が流れるときに、電荷の担い手がイオンである高分子化合物をいう。
上記非イオン性高分子化合物としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;熱可塑性のポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。なおこれらは、イオン伝導物質を含む限りにおいて、単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよいし、他のポリマーとの共重合体としてもよい。これにより、電圧を印加することにより、上記非イオン性高分子化合物からなるアクチュエータの屈曲変形が可能となる。
上記イオン伝導物質としては、例えば、フッ化リチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を挙げることができる。また、イオン伝導物質の代わりにイオン液体を用いてもよい。イオン液体を用いる場合には、後述の高分子バインダとして、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(poly(vinylidene fluoride−co−hexafluoropropene)、PVDF(HFP))、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidene fluoride)、PVDF)、パーフルオロスルホン酸(Nafion、ナフィオン)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−hydroxy ethyl methacrylate、HEMA)、ポリメチルメタクリレート(Poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリエチレンオキシド(poly(ethylene−oxide)、PEO)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)などが特に好適に使用できる。
本発明で用いられるイオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩であり、例えば0℃、好ましくは−20℃、さらに好ましくは−40℃で溶融状態を呈する塩である。また、本発明で使用するイオン液体はイオン伝導性が高いものが好ましい。また、本発明におけるイオン液体の有するカチオン種とアニオン種とで分子サイズが異なる必要がある。なお、一般的なイオン液体を下記に示してあるが、イオン液体の有するカチオン種とアニオン種の分子サイズはカチオン種の方が大きい傾向にある。
本発明においては、各種のイオン液体を使用することができ、特に限定されるものではないが、常温(室温)または常温に近い温度において液体状態を呈する安定なものが好ましい。本発明において用いられる好適なイオン液体としては、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。なお、上記イオン液体は、2以上のイオン液体を組み合わせて用いてもよい。
上記イオン液体としては、より具体的には、下記の一般式(I)から(IV)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン)と、アニオン(X)より成るものを例示することができる。
Figure 2010158103
上記の一般式(I)から(IV)において、Rは炭素数1から12のアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3から12のアルキル基を示す。一般式(I)において、R1は炭素数1から4のアルキル基または水素原子を示す。また、一般式(III)および(IV)において、Xは1から4の整数である。Nは窒素原子、Pはリン原子である。
アニオン(X)としては、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン、過塩素酸アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、有機カルボン酸アニオンおよびハロゲンイオンより選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明で用いるイオン伝導層におけるイオン伝導物質もしくはイオン液体と、非イオン性高分子化合物成分との質量比率は特に制限されないが、イオン伝導層のイオン伝導率及び機械的強度の観点から、イオン伝導物質に対してイオン液体が、30重量%以上80重量%以下であるのが好ましい。イオン液体の含有量が30重量%以上の場合、電圧印加した際、電極層にイオン伝導物質を十分に供給でき、また、イオン液体の含有量が80重量%より小さい場合、電解質層として十分な機械的強度を有し、アクチュエータとして屈曲・変形した際、作用力を十分に得ることができる。
上記イオン性高分子化合物としては、ポリカチオンを用いてもよいし、ポリアニオンを用いてもよい。ポリアニオンの例としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等の基本骨格を持った公知のポリマーにアニオン性官能基として、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基等を導入したもの;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基などのアニオン性官能基を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー等を挙げることができる。中でも、上記ポリアニオンとしては、パーフルオロスルホン酸/PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)共重合体をより好適に用いることができる。ここで、パーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体としては、市販されているものでもよく、例えば、フレミオンTM(旭硝子)、ナフィオンTM(デュポン社製)等を好適に用いることができる。また、ポリカチオンの例としても、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等の公知のポリマーにカチオン性官能基として、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したものを挙げることができる。
なお、上記イオン性高分子化合物は、電圧を印加して屈曲変形させる時点で、含水状態である必要がある。イオン伝導性高分子化合物に水を含ませる方法としては、例えば、上記イオン伝導性高分子化合物を水、好ましくはイオン交換水に含浸させればよい。また、上記イオン性高分子化合物は、水に加えて、あるいは、水に代えてイオン液体を含んでいてもよい。また、上記イオン性高分子化合物が、ポリアニオンである場合は、アニオン性官能基のカウンターカチオンを、Li、Na、K、アルキルアンモニウムイオン等に交換したものを用いることが好ましい。また、上記イオン性高分子化合物が、ポリカチオンである場合は、カチオン性官能基のカウンターアニオンを、F、Cl、Br、芳香族または脂肪族のスルホン酸類、芳香族または脂肪族のカルボン酸類、芳香族または脂肪族のリン酸類等に交換したものを用いることが好ましい。これにより、高分子アクチュエータの屈曲度、屈曲速度を向上させることができる。なお、上記イオン伝導性高分子化合物のカウンターイオンを交換する方法としては、例えば、上記イオン伝導性高分子化合物を、交換するイオンを含む塩の溶液中に含浸させればよい。ここで、溶液は、水溶液でもよいし、有機溶媒でもよいし、これらの混合溶媒でもよい。
上記イオン伝導層の厚みは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、更には10μm以上400μm以下であることが好ましい。膜厚が500μm以下である場合、膜の弾性率が大きくなりすぎず、アクチュエータの屈曲運動が抑制されづらくなる。また10μm以上では、屈曲運動が十分に得られる程度のイオン伝導物質を保持することができるので好ましい。
また、上記イオン伝導層の形状としては、例えば、図1に示すように矩形平板状を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、円形、三角形、楕円形、棒状等の平板状であってもよいし、膜状であってもよいし、円筒状、螺旋状、コイル状等であってもよい。また、本発明のアクチュエータは、さらに、前記電極間に印加する電圧を制御する制御装置などを備えていてもよい。
なお駆動メカニズムは基本的に電圧印加によるイオン伝導層からのイオンの移動に由来するが、イオン伝導層がイオン伝導物質を含む非イオン性高分子化合物の場合と、イオン性高分子化合物の場合とでは若干異なり、大まかに以下のように考えられる。
つまり、例えばイオン性高分子化合物である場合には、高分子アクチュエータの駆動メカニズムは、例えば、イオン性高分子化合物がポリマーにアニオン性官能基が導入されたポリアニオンである場合を例に挙げて説明すると以下のように考えられる。電圧の印加により、アクチュエータ内で自由に移動できるカチオンがカソード側に移動し、このカチオンに伴われて、アクチュエータ内に含まれる水分子もカソード側に移動するため、カソード側の浸透圧が上昇し、膜が膨張する。これに対し、イオン伝導性高分子化合物に固定されているアニオンは、対極のアノード側に引き寄せられにくいため、アノード側のカチオンの濃度が下がり、浸透圧が低下して膜が収縮する。カソード側の膨張と、アノード側の収縮により、結果としてアクチュエータ内が屈曲変形する。なお、イオン性高分子化合物が、後述するイオン液体を含有している場合は、移動種がイオン液体を構成するイオンとなる。この場合、浸透圧の効果については不明であるが、イオン伝導層が高分子化合物からなるアクチュエータ内は屈曲変形する。
また、非イオン性高分子化合物を用いる場合は、その駆動メカニズムは不明であるが、酢酸ナトリウム等のイオン導電物質を加えた非イオン性高分子化合物からなる高分子膜に電圧を印加することにより、高分子膜を屈曲変形させる方法が知られている。また、非イオン性高分子化合物が、後述するイオン液体を含有している場合は、電圧を印加すると、イオン液体を構成するアニオンはアノードに、カチオンはカソードに引き寄せられる。イオン液体を構成するアニオンとカチオンとはイオンの大きさが異なるので、イオンのサイズの違いからフィルムの極率に差が生じ、フィルムが屈曲変形すると主に考えられる。
<導電層>
本発明にかかるアクチュエータにおいては、多層電極は導電材料と高分子材料(高分子バインダ)の複合体からなる柔軟電極であっても良いし、例えばCNTを押し固めた自立性フィルムのように高分子材料を含まない柔軟電極であっても良い。
導電層が有する導電材料としては、アクチュエータ性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば何でも良い。通常、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー(気相成長炭素)、炭素(ナノ)繊維、活性炭素繊維、ナノ炭素粒子や金属(例えば白金、パラジウム、ルテニウム、銀、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、インジウム、イリジウム、チタン、アルミニウム等が挙げられるが特にこれに限定したものではない)粉(微粒子)、金属化合物(酸化すず、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化第二すず、ITO等が挙げられるが特にこれに限定したものではない)、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、導電性及び比表面積の観点より、ナノ炭素材料が好ましく、特に好ましくは、炭素ナノ粒子、ナノ炭素繊維、カーボンナノチューブである。また、カーボンナノチューブとイオン液体とのCNTゲルはCNTのバンドルがイオン液体との自己組織化により解けてCNTが効果的に分散しているなどの利点があり、電極材料として極めて好適である。
ここで、カーボンナノチューブとは、グラファイトのシートが円筒状に丸まって構成されたものであり、その円筒径が1から10nmのものである。本発明に用いられるカーボンナノチューブは、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT(single−wall carbon nanotube))と多層ナノチューブ(MWCNT(multi−wall carbon nanotube))とに大別され、様々のものが知られている。本発明には、このような所謂カーボンナノチューブと称されるものであれば、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができる。またさらに、SWCNTは炭素原子の並び方によって、金属的な性質のものと半導体的な性質のものが存在するが、電気泳動法などによって分離した金属型SWCNTだけを使用することもできる。
本発明で用いられるナノ炭素粒子とは、カーボンナノチューブ以外の、カーボンナノホーン、アモルファス状炭素、フラーレン等の炭素を主成分とするナノスケール(10−6から10−9m)の粒子を言う。またカーボンナノホーンとは、グラファイトシートを円錐状に丸めた形状を持ち、先端が円錐状に閉じているカーボンナノ粒子をいう。
本発明で用いられるナノ炭素繊維とは、グラファイトのシートが円筒状に丸まって構成されたものであり、その円筒径が10から1000nmのものであり、カーボンナノファイバとも呼ばれる。カーボンナノファイバとは、繊維径が75nm以上で中空構造を有し、分岐構造の多い炭素系繊維である。市販品では、昭和電工(株)のVGCF、VGNF等が挙げられる。
上記導電材料の添加量は、本発明に用いられる多層電極における前記導電材料の添加量は電極の重量に対して1重量%以上が好ましい。電極の重量に対して1重量%以上であると、アクチュエータの電極として機能しうる電気伝導性を付与することができるため好ましい。
導電層が、高分子バインダと、その中に分散されている上記導電材料とを含んでいる場合には、上記導電材料は均一に分散されていることがより好ましい。これにより、電位が均一にかかるためより好ましい。そのため、ボールミリング(ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等)、サンドミリング、コロイドミリング、ジェットミリング、ローラーミリング、V型混合機、S型混合機、擂かい機、あるいは攪拌器、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、ディゾルバー、超音波装置によって処理することによっても分散することができる。また、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等の分散機を用いることも出来る。
導電層の厚みは、上記アクチュエータの屈曲変形を阻害しない限り特に限定されるものではないが、それぞれの導電層は、1μm以上5mm以下であることが好ましく、5μm以上2mm以下であることがより好ましく、10μm以上500μm以下であることがさらに好ましい。各導電層の厚みが、1μm以上であれば、アクチュエータの電極として電気電導性が十分に得られ好ましい。また、導電層の厚みが、5mm以下であれば、導電層が導電材料を含むことにより固くなったり、割れづらくなり、また屈曲変形をスムーズに行うことができ、好ましい。
導電層を構成する上記高分子バインダは、上記アクチュエータの屈曲変形に伴って変形可能な柔軟性を有する高分子バインダであれば特に限定されるものではないが、加水分解性が少なく、大気中で安定であることが好ましい。かかる高分子バインダとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキサイド、ポリ(2、6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリパラフェニレンスルフィド等のポリアリーレン類(芳香族系ポリマー);ポリオレフィン系ポリマー、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等に、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したもの;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系のポリマー;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー等;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート;ナイロン;ポリアリレート等を挙げることができる。また、導電性を有する高分子を用いることもでき、かかる高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン等を挙げることができる。なおこれらは単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよいし、他のポリマーとの共重合体としてもよい。
これらの高分子バインダの中でも、特に好ましいポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP)]、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロスルホン酸(Nafion、ナフィオン)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。また、上記高分子バインダは、イオン伝導層と相溶性の高いポリマーであることが好ましい。これにより、イオン伝導層との、相溶性および接合性がより高いため、より強固な電極を構成することが可能となる。このためには、上記高分子バインダは、上記イオン伝導層を構成する高分子化合物と、同種、類似または同一のポリマー構造を有するポリマー、または、同種、類似または同一の官能基を有するポリマーであることが好ましい。
さらに、上記高分子バインダとしては、ゾル・ゲル法などで得られる高分子構造をもつ金属酸化物も用いることができる。かかる金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、五酸化バナジウム系の金属酸化物を用いることができる。
本発明にかかるアクチュエータの多層電極は、上述したように、高分子バインダと、その中に分散されている上記導電材料とを含むことにより導電性が付与される。また用いられる電極の電気抵抗値は、1000Ω・cm以下であることが好ましく、100Ω・cm以下であることがより好ましい。上記電極の電気抵抗値が1000Ω・cm以下であることにより、電極に低い電圧を印加したときに、本発明のアクチュエータを屈曲させることができる。また、上記電極は、ソフトアクチュエータの機能に好ましくない影響を与えるものでない限り、高分子バインダおよび上記導電材料の他の成分を含有していてもよい。
(導電層における導電材料の配向方法)
導電層における導電材料の配向方法に関しては、特に限定されるものではなく、公知の技術を適宜、また場合によっては組み合わせて用いることができる。
例えば、本発明における導電性材料において、導電性材料を分散させた導電層の両端を固定し、機械的に延伸することによって配向させる方法がある。特に、CNTを高分子中に分散して延伸する方法としては、フラーレンナノチューブネットワーク・ニュースレター1999)pp.41から43に記載されている手法などを適宜利用できる。延伸倍率は特に制限されないが、通常、2から50倍程度、さらには3から30倍にするのが好ましい。また電場や磁場などの外場を用いて導電層における導電材料を配向させることもできる。特に、CNT類の電場あるいは磁場を用いた配向は、膜の膜厚方向や膜面方向への配向を電場や磁場の印加方向を変えるだけで簡便に行えることが出来るなどの利点から幅広く検討されており、例えば、CNTゲルの電場配向手法は、特開2004−323342号公報に開示されている方法が挙げられる。
またこれら電場・磁場配向方法は、延伸方法と組み合わせることができる。また、ラングミュア・ブロジェット(LB)法や、押出し成形技術や射出成形技術などによるせん断・流動配向法も好適に用いることもできる。さらに、せん断・流動配向手法の一つとして、マイクロ流路(数〜数百μmの微細流路)内を流すことでも導電材料に配向性をもたせることができる。なお、これらの配向手法は配向の度合いを上げるために、適宜組み合わせて用いても良い。
(配向性および配向度について)
導電材料の配向性は、X線散乱測定や偏光分光測定により評価することができる。
X線散乱測定による配向評価は、導電層の導電材料に由来する散乱X線の散乱方位角分布の異方性によって判定できる。導電材料が繊維軸方向に高度に配向している場合は、導電材料に由来する散乱X線は繊維赤道方向に集中したストリーク状の散乱パターンとなる。一方、導電材料の配向が低い場合には、導電材料の散乱パターンの赤道方向異方性は小さくなり、無配向においては完全に等方的な散乱パターンを画く。このように、X線散乱パターンの方位角異方性から、導電材料の配向を評価することができる。
偏光分光測定とは偏光吸収スペクトルや偏光ラマンスペクトルなどから配向性および配向度を評価する手法のことである。例えば、偏光ラマンスペクトル測定でのCNTの配向度(配向の度合い)測定を例にして説明する。
つまり偏光ラマン分光測定とは、入射レーザーを導電層における導電材料を配向させたい方向(膜厚方向に対して垂直な方向でかつ屈曲方向への配向もしくは膜厚方向への配向方向)、A軸とそれとは直交する方向、B軸から照射したときのCNT由来のラマンスペクトルにおいて、下記式(1)
Figure 2010158103
(Pは配向度、Xはレーザー偏光面をA軸と平行に配置した場合のGバンド強度、Yはレーザー偏光面をそれとは直交する方向(B軸)配置した場合のGバンド強度を示す。)
で表される配向度Pにて配向性を評価する方法である。
本発明では配向度Pが0以上0.6以下を満たすことが好ましい。なお、配向度Pはナノチューブを配向させたい方向にすべて並ばせられた場合にはP=0に漸近し、ランダムな配向ではP=1となる。Pの値の上限としてより好ましくは0.2、さらに好ましくは0.1であり、0に近いほど好ましい。Pの値が0.6を超えると配向が不十分であるため好ましくない。
(アクチュエータの作製方法)
本発明で用いるイオン伝導層の作製方法については特に制限はない。イオン伝導層が、非イオン性高分子化合物とイオン液体から構成される場合を例にとって示せば、例えば加熱下においてイオン液体と高分子成分を機械的に混練し、ついで成形する方法;イオン液体及び高分子成分を適当な溶媒に溶解させた後に溶媒を除去し、ついで成形する方法;高分子成分にイオン液体を含浸させ、ついで成形する方法;イオン液体中で高分子成分の製造に用いるモノマーを重合開始剤の存在下に反応させ、ついで成形する方法等が挙げられる。これらは目的に応じ、適宜選択することができる。上記で、イオン液体及び高分子成分を適当な溶媒に溶解させた後に溶媒を除去する方法における溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(tetrahydrofran、THF)、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)等を用いることができる。
本発明で用いる導電層の作製方法についても特に制限はなく、例えば、イオン伝導層を作製する場合と同様の手法などで対応するフィルムやペーストを作製し、それを上述した配向手法により適宜、配向させることで行うことができる。
本発明にかかるアクチュエータの作製方法は、上記アクチュエータを作製することができる方法であればどのような方法であってもよいが、上記で得られた導電層を複数重ね、さらに上記イオン伝導層を挟んで加熱プレス(ホットプレス、熱圧着)する方法を好適に用いることができる。なお、ここで、「加熱プレスする」とは、加熱しながらプレスすること、及び、プレスした状態で昇温することの両方法を含む。
加熱プレスの温度やプレス圧、時間は、上記高分子バインダの分解温度以下であれば特に限定されるものではなく、用いる高分子バインダ、アクチュエータを構成する高分子化合物、移動するイオン種等に応じて適宜選択すればよい。例えば、加熱プレスの温度は、30から150℃であることが好ましい。また、プレス圧は1から100kg/cmであることが好ましく、10から50kg/cmであることがより好ましい。
アクチュエータ膜に、水、上記イオン導電物質、上記イオン液体、またはこれらの混合物をアクチュエータ素子作製後に含ませる場合には、これらの溶液にアクチュエータ膜を含浸させればよい。ここで、含浸させる溶液の濃度、含浸させる時間は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。
なお、イオン伝導層表面への導電層の形成は少なくとも2層必要であるが、平面状のイオン伝導層の表面に多数の導電層を配置することにより、複雑な動きをさせることも可能である。このような素子により、蠕動運動による運搬や、マイクロマニピュレータなどを実現可能である。また、本発明のアクチュエータの形状は、平面状とは限らず、任意の形状の素子が容易に製造可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(アクチュエータの変位量・発生力の測定)
図2に示すように、アクチュエータを幅1mm(W)×長さ15mm(L)×所定の膜厚(D)の短冊状に切断し、端3mmの部分を、固定器具6の白金電極付きホルダーでつかんで、空気中で(空気中駆動)、電圧を印加する。アクチュエータの駆動に関しては、レーザー変位計を用いて固定端から10mmの位置(MP)の変位を測定する(L1が10mm)。発生力の測定は、前記アクチュエータの先端部の動作を、ロードセルで計測することで行う。
実施例1
<図1における導電層201、211がランダム配向、導電層202、212が膜面方向に配向>
イオン伝導層は、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、PVDF−HFP(100mg、高分子バインダ)を、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)/アセトニトリル(5/1)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、BMIBF(100mg、イオン液体)と80℃で加熱混合した後キャストし、続いて乾燥することで成膜する。
導電層201、211は、まず直径約1nm、長さ1μmのSWCNT(50mg、導電材料、Unidym社製「HiPco」)とBMIBF(100mg)と、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)1mLとをボールミル処理を30分間行い、PVDF−HFP 80mgを添加後さらに30分間ボールミル処理することでCNTゲルの黒色のペーストを得る。この黒色ペーストをテフロン(登録商標)シートの上にキャスト続いて乾燥して導電層を得る。対応する導電層を半分に切断することで導電層201、211を用意する。
導電層202、212は同様に、上記黒色ペーストを作製した後、このペーストを図3に示すようなガラス製治具9の凹部8に一様に塗布し、次に電場印加用電極を、CNTゲルペーストの膜面方向の両端に配置した状態で10V/cmの直流電場を10秒から300秒間印加することで、膜面方向への配向異方性を付与する(図4参照)。この時、ペーストはバインダーポリマーのガラス転移点以上に暖めてから電圧を印加する。
CNTの配向変化は、電気抵抗値の変化としてモニターすることができる。つまり、4端子法により電気抵抗値を測定するために、ガラス基板上に、金を蒸着により、電極の幅1mm、電極間の間隔幅2mm、中央の間隔幅は1mmとなるように4本の線状の電極を形成した。これら4本の電極全てをまたがるように上記黒色ペーストを塗布する。その結果を図6に示すが、上記黒色ペーストの両端から電場を印加するにつれて電気抵抗値が大きく低下することが確認され、電場印加時にはCNTゲルペースト中のCNTが電場印加方向と同じ方向に配向することが確認される。電圧印加後は0℃に急冷しながら、素早く溶媒を乾燥し、その後、電場印加方向が長尺方向となるように膜を裁断することで、膜面方向でかつ屈曲方向にCNTの配向異方性を持たせた導電層202、212を得ることができる。なお、上記電場配向した層の偏光ラマンスペクトル測定での膜面方向でかつ屈曲方向へのCNTの配向度Pは0.3である。
上記で得られた導電層201、211でイオン伝導層を挟み、また最外層にさらに導電層202、212を積層させた後、この積層物を40℃に加熱した加熱プレスを用いて、加圧力0.4MPaで1分間熱圧着させ、さらに得られたアクチュエータを真空乾燥することで図1に示すような多層電極アクチュエータを作製することができる。なお、厚みは115μm(イオン伝導層の厚みは15μmでそれぞれの導電層の厚みは25μm)である。
比較例1
<図8における電極(導電層)2つが膜面でかつ屈曲方向に配向>
イオン伝導層は、実施例1と同様に作製する。また導電層は、実施例1において導電層202、212を作製した手法と同様に作製する。ただし、膜厚は二倍になるように調整する。この場合においても、電場印加により膜面方向で実施例1の導電層202、212と同様の抵抗の低下が観察でき、導電層202、212と同様に導電材料を膜面方向に異方配向性させた電極を作製することができる。なお、上記電場配向した層の偏光ラマンスペクトル測定での膜面方向でかつ屈曲方向へのCNTの配向度Pは0.3である。
上記で得られた導電層のフィルムを半分に切断した後、イオン伝導層の上下に一層ずつ配置し、この積層物を90℃に加熱したホットプレスを用いて、加圧力0.4MPaで1分間熱圧着させ、さらに真空乾燥することで対応するアクチュエータが得られる。なお、厚みは115μm(イオン伝導層と導電層の厚みはそれぞれ15μm、100μm)になるように作製する。
(実施例1および比較例1のアクチュエータ性能比較)
実施例1および比較例1のアクチュエータの両側電極間に±3.0V、0.1Hzの交流電位を印加し、上記したような測定方法及び測定装置を用いてそれぞれについての性能を測定すると、次の表1に示すような結果が得られる。
Figure 2010158103
表1から、電極が多層構造にしていない電極層で構成され、またその導電層が膜面でかつ屈曲方向に配向させて作製した比較例1のアクチュエータに比べ、電極を多層構造にし、図1における導電層201、211がランダム配向、導電層202、212(最外層)が膜面でかつ屈曲方向に配向させて作製した実施例1のアクチュエータは、比較例1に比べはるかに大きな発生力が得られ、また、変位量に関しても、比較例1よりも低下することはないことが確認される。
実施例2
<図1における導電層201、211が膜厚方向に配向、導電層202、212が膜面でかつ屈曲方向に配向>
実施例1と同様にして、対応するイオン伝導層および膜面でかつ屈曲方向に配向異方性を有する導電層202、212を得る。
また、膜厚方向への配向異方性の付与した導電層の作製には、実施例1と同様の電場印加手法を用いるが、次に図5に示す、電場印加方向を電気抵抗値測定方法と直交方向に印加して行う以外は同じ方法で行う。
電界印加前後でのCNTゲルの電気抵抗値を測定すると、図7に示す通り電気抵抗値が電界印加前より大きく上がることから、電気抵抗値の測定方向と直交した方向にCNTの配向異方性が行えることが確認され、膜厚方向に配向異方性を有する導電層201、211が得られる。なお、上記電場配向した層の偏光ラマンスペクトル測定での膜厚方向へのCNTの配向度Pは、0.4である。
上記で得られた導電層201、211でイオン伝導層を挟み、またその導電層201、211の最外層にさらに導電層202、212を積層させた後、この積層物を40℃に加熱したホットプレスを用いて、加圧力0.2MPaで2分間熱圧着させ、さらに得られたアクチュエータを真空乾燥することで図1に示すような多層電極アクチュエータを作製することができる。なお、厚みは115μm(イオン伝導層の厚みは15μmでそれぞれの導電層の厚みは25μm)になるように作製する。
比較例2
<図8における電極(導電層)2つがランダム配向>
イオン伝導層は、実施例1と同様に作製する。また導電層に関しても、実施例1において導電層201、211を作製した手法と同様に作製する。ただし、膜厚は二倍になるように調整する。なお、上記電場配向した層の偏光ラマンスペクトル測定でのCNTの配向度Pは1である。
(実施例2および比較例2のアクチュエータ性能比較)
実施例2および比較例2の供試サンプルに、アクチュエータの両側電極間に±3.0V、0.1Hzの交流電位を印加し、上記したような測定方法及び測定装置を用いてそれぞれについての性能を測定すると、次の表2に示すような結果が得られる。
Figure 2010158103
表2から、電極が多層構造にしていない電極層で構成され、またその導電層がランダム方向に配向させて作製した比較例2のアクチュエータに比べ、電極を多層構造にし、図1における導電層201、211が膜厚方向に配向、導電層202、212が膜面でかつ屈曲方向に配向させて作製した実施例2のアクチュエータは、比較例2に比べはるかに大きな発生力が得られ、また、変位量に関しても、いずれの比較例よりも低下することはないことが確認される。
またさらに、表1に示す実施例1で作製したアクチュエータと実施例2のアクチュエータの性能を比較すると、実施例2のアクチュエータの方が大きな発生力が得られ、また、変位量に関しても、比較例1,2よりも低下することはないことから、イオン伝導層の隣に配置させた導電層202、212がランダムではなく、膜面でかつ屈曲方向に配向させた構成にすることで、その性能が向上することが確認される。なお、比較例2と比較例1の結果から、導電層の配向をランダム(RUN3)ではなく、膜面でかつ屈曲方向に配向させた場合(RUN4)には、発生力は若干向上するが、実施例1、2のようにアクチュエータを構成した場合に比べるとその効果は低く、また、変位量の大きな低下を伴うことが確認できる。
実施例3
<図1における導電層201、211、202、212がランダム配向、さらに導電層202、212の外側に膜面でかつ屈曲方向に配向した導電層2C、2cを配置>
イオン伝導層として陽イオン交換樹脂を用いた。膜状フッ素樹脂系イオン交換樹脂(パーフルオロスルホン酸樹脂、イオン交換容量1.4meq/g)を、この陽イオン交換樹脂を良溶媒であるメタノール中に20℃で1時間以上浸漬し、その後、酢酸ナトリウム溶液および純水で洗浄を行った。
導電層として、導電性高分子ポリアニリン(パニポール製)のトルエン溶液100mLにVGCF(昭和電工製)と活性炭(クラレケミカル製)、第四級アンモニウムヘキサフルオロホスフェート塩(東洋合成製)および白金ナノ粒子(平均粒度分布5nm/動的光散乱法)をそれぞれの配合割合が10:5:3:3:0.3になるように加え、超音波攪拌を30分行う。その後、得られたペーストの一部をキャストし乾燥することで、ランダム配向の導電層201、211および導電層202、212を得る。また残りのペーストを、射出成形機を用いて射出し、得られた成形物を真空乾燥した後に、小型延伸機を用いて80℃で一軸延伸した。その結果、延伸前の2.5倍に引き伸ばされた導電層2C、2c(膜面方向でかつ屈曲方向への配向度Pは0.5)が得られる。
得られたイオン伝導層と導電層201、211、202、212を実施例1のように積層した後、さらに導電層202、212の外側に膜面でかつ屈曲方向に配向した導電層2C、2cを積層し、この積層物を30℃に加熱したホットプレスを用いて、熱圧着させ、さらに真空乾燥し、その後純水を浸すことで片側3層の導電層で電極を形成した多層電極アクチュエータを作製することができる。なお、厚みは120μm(イオン伝導層の厚みは20μmで導電層の厚みは導電層201、211、202、212がそれぞれの15μm、導電層2C、2cが20μm)になるように作製する。
比較例3
<図1における導電層201、211がランダム配向、導電層202、212が膜面でかつ屈曲方向に配向、さらに導電層202、212の外側にランダム配向した導電層2C、2cを配置>
実施例3と同様にイオン伝導層および導電層を作製する。ただし、導電層に関しては、実施例3における導電層201、211と同様に作製したランダム配向した導電層201、211を比較例3においても図1におけるイオン伝導層の隣に配置した。また実施例3における導電層202、212と同様に作製したランダム配向した導電層2C、2cは比較例3においては、最外の導電層とした。さらに実施例3における導電層2C、2cと同様に作製したランダム配向した導電層202、212は比較例3においては、導電層201、211と導電層2C、2cの間に配置させて対応するアクチュエータを作製する。なお、厚みは120μm(イオン伝導層の厚みは20μmで導電層の厚みは導電層201、211、2C、2cがそれぞれの15μm、導電層202、212が20μm)になるように作製する。
(実施例3および比較例3のアクチュエータ性能比較)
実施例3および比較例3の供試サンプルに、アクチュエータの両側電極間に±3.0V、0.1Hzの交流電位を印加し、上記したような測定方法及び測定装置を用いてそれぞれについての性能を測定した。変位量増加割合および発生力増加割合を、それぞれ、変位量増加割合=実施例の測定値(mm)÷比較例の測定値(mm)および、発生力増加割合=実施例の測定値(N)÷比較例の測定値(N)で算出する。その結果表3に示す結果が得られる。
Figure 2010158103
表3から、図1における導電層201、211、202、212がランダム配向、さらに導電層202、212の外側に膜面でかつ屈曲方向に配向した導電層2C、2cを配置作製した実施例3の、片側3層の導電層で電極を形成した多層電極アクチュエータ(最外層に膜面でかつ屈曲方向に配向した導電層)の性能は、図1における導電層201、211がランダム配向、導電層202、212が膜面でかつ屈曲方向に配向、さらに導電層202、212の外側にランダム配向した導電層2C、2cを配置させた比較例(3層導電層のうちの中間層に膜面でかつ屈曲方向に配向した導電層)のアクチュエータに比べ大きな発生力が得られ、また、変位量に関しても、比較例よりも向上することが確認される。つまり、膜面でかつ屈曲方向に配向した導電層は最外層に配置させるのが効果的であることが確認される。
実施例4
<図1における導電層201、211、212がランダム配向、導電層202が膜面でかつ屈曲方向に配向>
導電層201、211を、SWCNTの活性剤水溶液を吸引ろ過しながら押し固めた自立フィルムに1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレートを含浸させることでランダム配向の導電層を作成した。一方、導電層202として、ケブラー(ハミロン製)にケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル製)およびMWCNTと第四級アンモニウムヘキサフルオロホスフェート塩(東洋合成製)をそれぞれの配合割合が10:3:3:9になるように加え、ボールミリング攪拌を90分行う。そのペーストの一部をキャスト成型し、ランダム配向の導電層212を得る。また残りのペーストを、市販のテフロン(登録商標)チューブ(口径100μの流路)中で8時間循環させて得られたペーストを素早く押出し成形機を用いて押出し、得られた成形物を真空乾燥した。その結果、導電層202(膜面方向でかつ屈曲方向への配向度Pは0.3)が得られる。
得られたイオン伝導層と導電層を実施例1のように積層し、この積層物を40℃に加熱したホットプレスを用いて、熱圧着させ、さらに得られたアクチュエータを真空乾燥することで図1に示すような多層電極アクチュエータを作製することができる。なお、厚みは100μm(イオン伝導層の厚みは20μmで導電層の厚みは導電層201、211がそれぞれの25μm、導電層202、212が15μm)になるように作製する。
比較例4
<図1における導電層201、211、202、212がランダム配向>
実施例4において導電層201、211、212を作製した手法と同様に4層の導電層(201、211、202、212)を作製する以外は実施例4と同様に行い、対応するアクチュエータを作製する。なお、導電層の厚みは導電層201、211がそれぞれの25μm、導電層202、212が15μmになるように作製する。
(実施例4および比較例4のアクチュエータ性能比較)
実施例4および比較例4の供試サンプルに、アクチュエータの両側電極間に±3.0V、0.1Hzの交流電位を印加し、上記したような測定方法及び測定装置を用いてそれぞれについての性能を測定した。変位量増加割合および発生力増加割合を、それぞれ、変位量増加割合=実施例の測定値(mm)÷比較例の測定値(mm)および、発生力増加割合=実施例の測定値(N)÷比較例の測定値(N)で算出する。その結果表4に示す結果が得られる。
Figure 2010158103
表4から、比較例4のアクチュエータに対し、実施例4のアクチュエータは、比較例4に比べはるかに大きな発生力が得られ、また、変位量に関しても、比較例4よりも低下することはない。つまり、図1における導電層201、211、212がランダム配向、導電層202が膜面でかつ屈曲方向に配向させ、片側の電極の最外導電層に膜面でかつ屈曲方向に配向させた導電層を配置させることでも効果が得られることが確認できる。
以上に示した表1から表4の結果より、本発明は、大幅な変位量の低下を招くことなく、発生力を効果的に向上することができるアクチュエータを提供することができ、これらアクチュエータは有用に利用できる。
本発明のアクチュエータは、変位量の低下を伴うことなく、ソフトアクチュエータに大きな発生力を付与することができるため、柔軟性や安全性が必要な人と接するロボットのアクチュエータ(例えば、ホームロボット、ペットロボット、アミューズメントロボットなどのパーソナルロボットのアクチュエータ)、や各種機械類の駆動源、さらには、手術デバイスやマッスルスーツなどの医療、福祉用ロボット、さらにはマイクロマシーンなどのためのアクチュエータとして最適である。
本発明に係るアクチュエータの一実施態様を示す概略断面図である。 本発明に係るアクチュエータの実施例及び比較例それぞれに関して行った各供試サンプルの性能測定装置を説明する概略斜視図である。 実施例1のCNT(カーボンナノチューブ)を配向させるガラス製治具を説明する図である。 実施例1のCNTの電圧印加方向への配向(膜面方向)を説明する図である。 実施例2のCNTの電圧印加方向への配向(膜厚方向)を説明する図である。 実施例1のCNTの電圧印加方向への配向(膜面方向)させるように電場を印加した場合の結果を表すグラフである。 実施例2のCNTの電圧印加方向への配向(膜厚方向)させるように電場を印加した場合の結果を表すグラフである。 従来のイオン伝導型ソフトアクチュエータの断面図である。
符号の説明
1 多層電極ソフトアクチュエータ
20、21 多層電極
2000、2001 電極
201、202、211、212 導電層
30、300 イオン伝導層
40、400 電源
50、500 リード線
6 固定器具
7 直流電源付金属電極
8 凹部
9 ガラス製治具
10 電界印加に伴って揃っているカーボンナノチューブ

Claims (9)

  1. 導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極Aおよび多層電極Bと、前記多層電極Aと前記多層電極Bとに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極Aの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合わない少なくとも1つの導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向し、前記多層電極Aの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向していることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 前記多層電極Bの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向以外の方向に配向していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 前記多層電極Bの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合わない少なくとも1つの導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して垂直な方向でかつ一軸方向に配向していることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
  4. 前記多層電極Aおよび前記多層電極Bの最外層を構成する2つの導電層のうち、少なくとも一方が膜厚方向に対して垂直な方向かつ一軸方向に配向していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアクチュエータ。
  5. 前記多層電極Aおよび前記多層電極Bの有する複数の導電層のうち、前記イオン伝導層と隣り合う導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のアクチュエータ。
  6. 前記導電材料が、炭素ナノ粒子、ナノ炭素繊維、カーボンナノチューブのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のアクチュエータ。
  7. 前記イオン導電物質がイオン液体を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のアクチュエータ。
  8. 導電材料を有する複数の導電層を有する、多層電極Aおよび多層電極Bと、前記多層電極Aと前記多層電極Bとに挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記多層電極A及び前記多層電極Bの有する複数の導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向していることを特徴とするアクチュエータ。
  9. 導電材料を有する複数の導電層を有する、一対の多層電極と、前記一対の多層電極に挟まれて存在する、イオン導電物質を有するイオン伝導層とからなるアクチュエータであって、前記一対の多層電極の有する複数の導電層の有する導電材料が、膜厚方向に対して平行な方向に配向していることを特徴とするアクチュエータ。
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