JP5473483B2 - アクチュエータ - Google Patents
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Description
(アクチュエータの駆動原理)
まず、アクチュエータの駆動原理について説明する。
一対の電極層でイオン伝導層を挟持した構造を有する本発明のアクチュエータの駆動原理は明確にはなっていないが、現在推測されている原理について、一対の電極層でイオン伝導層の1つの例である図6を用いて説明する。図6(a)に示すように、一対の電極層501、電極層502はイオン伝導層503の表面に相互に絶縁状態で形成されている。
本発明の第1の実施態様は、導電材を含有する一対の電極層と、前記一対の電極層に挟持されているイオン伝導層を有するアクチュエータであって、前記電極層に含まれる導電材の含有量が、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が大きいことを特徴とするアクチュエータである。
本発明の第2の実施態様は、導電材を含有する一対の電極層と、前記一対の電極層に挟持されているイオン伝導層を有するアクチュエータであって、前記電極層の厚さが、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が大きいことを特徴とするアクチュエータである。
具体的には、本発明において、前記イオン伝導層を挟持している少なくとも一対の電極層において、前記電極層の厚みが、作用部から固定部の方向に段階的にまたは連続的に増大していることが好ましい。
図3において、(a)は本発明の電極層の厚みが作用部から固定部に段階的あるいは連続的に増大している構成を示す概略図、(b)は断面EE’における断面図、(c)は断面FF’における断面図を示す。
前記電極層の厚みの算出方法は特に限定されないが、例えば次の算出方法が挙げられる。すなわち、作用部から固定部の方向に対しての垂直方向の断面を任意の場所で走査型電子顕微鏡により観察し、厚さを測定する方法などによって測定可能である。
本発明の第3の実施態様は、導電材を含有する一対の電極層と、前記一対の電極層に挟持されているイオン伝導層を有するアクチュエータであって、前記電極層の空隙率が、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が小さいことを特徴とするアクチュエータである。
すなわち、本発明における空隙率は、電極層内においてイオン性物質と導電材以外が占める体積を、電極層の面積と膜厚から幾何学的に求めた体積で割り百分率で表したもの(単位:体積%)である。電極層内で導電材およびイオン性物質以外が占める体積としては、例えば高分子の体積であり、あるいは空気・ガスあるいは真空の空間であってもよい。
本発明のアクチュエータは、一対の電極層およびイオン伝導層から構成される。
電極層には、導電材、イオン性物質が含有されている。イオン伝導層には、イオン性物質が含有されている。
本発明において用いられる好適なイオン液体としては、下記の一般式(2)から(5)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン)と、アニオン(X−)より成る化合物を例示することができる。
好ましく用いられる炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレン、黒鉛、炭素繊維などがあげられるが、これらに限定されるものではなく、これらの1種類または2種類以上を用いてもよい。
本発明の電極層におけるイオン液体の含有量は80重量%以下であるのが好ましい。含有量が80重量%より大きいと、電極層として機械的強度が弱くなる場合がある。
本発明のイオン伝導層はイオン性物質を含有しており、イオン性物質の保持および機械的強度、柔軟性の確保の点で高分子を含有するものが好ましい。
本発明に用いられる電極層の製造方法は、導電材が電極層に分散・保持されていればよく特に限定されないが、イオン液体あるいは必要に応じて高分子の存在下で、せん断を加えながら導電材を細分化し、導電材分散体を得て、それを膜化・積層化する方法が挙げられる。
(1)せん断力下における細分化処理は、カーボンナノチューブの化学的変性を引き起こすことはなく、カーボンナノチューブの相互のからみ合いを減少させて、その束を細くする物理的形状変化をもたらす。
(2)ゲルの形成は、カーボンナノチューブのからみ合いに因るものではなく、からみ合いの減少したカーボンナノチューブの表面に「カチオン−π」相互作用により結合したイオン液体の分子がイオン結合を介してカーボンナノチューブの束どうしを結びつけることにより、形成される架橋構造(三次元網目構造)に起因するものと推測される。
本発明における導電材の含有量は作用部から固定部の方向に段階的にまたは連続的に増大していればよく、好ましくは作用部の前記導電材の濃度と固定部の前記導電材の濃度の差は3重量%以上である。濃度の差が3重量%未満だと、作用部近傍における変位量が十分に得られない場合がある。
また、本発明の電極層の空孔率は作用部から固定部の方向に段階的にまたは連続的に減少していればよく、好ましくは作用部と固定部の空隙率の差が5体積%以上である。空隙率の差が5体積%未満だと、作用部近傍における変位量が十分に得られない場合がある。
(イオン性物質)
実施例で用いるイオン性物質は、イオン液体の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(BMIBF4)(関東化学社製)である。
実施例で用いる高分子は以下で表されるポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF(HFP))である。
実施例に用いる導電材は、単層カーボンナノチューブ(SWNT、カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレッド社製、「HiPco」)およびアセチレンブラック(「デンカブラック」、電気化学社製)である。
実施例に用いるアクチュエータは、SWNT/BMIBF4/PVdF(HFP)からなる一対の電極層が、PVdF(HFP)/BMIBF4からなるイオン伝導層を挟持しているアクチュエータである。
実施例で用いられる有機溶剤は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)である(キシダ化学社製)。
アクチュエータが屈曲している時の発生力は、ロードセル(モデルUL−10GR、ミネベア社製)を用いて測定する。幅1mm(W)×長さ12mm(L)に切り取ったアクチュエータの端2mmの部分を電極付きホルダーで挟持して、空気中で(空気中駆動)、アクチュエータの一方の電極層をカソード、他方の電極層をアノードとし、両電極層の間に2.5Vの電圧を印加し屈曲させる。その際のアクチュエータの固定端から2mmの位置の発生力を、ロードセル(モデルUL−10GR、ミネベア社製)を用いて測定する。
アクチュエータが屈曲している時の変位量は、レーザー変位計を用いて測定する。幅1mm(W)×長さ12mm(L)に切り取ったアクチュエータの端2mmの部分(固定端)を電極付きホルダーで挟持して、空気中で(空気中駆動)、2.5Vの電圧を印加し屈曲させる。その際の固定端から8mmの位置の変位量を、レーザー変位計を用いて測定する。
作用部から固定部の方向に導電材の含有量が増大している一対の電極層が、イオン伝導層を挟持してなるアクチュエータを作製する。
電極層を以下のように作製する。導電材として10mgの単層カーボンナノチューブ(SWNT)およびイオン液体として100mgのBMIBF4に有機溶剤(DMAc)を1mL加え、ジルコニアボール(粒径2mm)を用いて200rpmで30分間、ボールミル(遊星型微粒粉砕機、フリッチェ社製)により分散を行い組成物を得る。次いで、80mgのPVdF(HFP)を2mLのDMAcに溶かした溶液を、ボールミルによって得られた組成物に加え、更に500rpmで30分間、ボールミルにて分散する。その結果、高粘度で、導電材が均一に分散している導電材分散体1を得る。
上記の導電材分散体1を作製する際のSWNTの量を10mgから50mgに替え、他は同じ条件で作製することにより導電材分散体3を得る。
上記の導電材分散体1を作製する際のSWNTの量を10mgから10mgに替え、他は同じ条件で作製することにより導電材分散体5を得る。
イオン伝導層を作製するために、イオン液体と高分子を含むイオン性組成物を次のように作製する。100mgのPVdF(HFP)と、100mgのBMIBF4および1mLのDMAcを80℃にて加熱混合することによって、無色透明なイオン液体と高分子を含むイオン性組成物1を得る。
実施例1において得られる導電材分散体1〜5を用いて、作用部から固定部の方向に導電材の含有量が増大している電極層がイオン伝導層を挟持するアクチュエータを以下のように作製する。まず上記で得られたPVdF(HFP)/BMIBF4/DMAcからなるイオン性組成物1を、厚さが100μmのスペーサーを有する基板に流し込み、スペーサーをガイドに平坦にならした後、室温にて乾燥することによってイオン伝導層を得る。
得られるアクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)にて観察することによって、一対の電極層がイオン伝導層を挟持していることが確認される。
作用部から固定部の方向に導電材の含有量が同じの一対の電極層がイオン伝導層を挟持しているアクチュエータを作製する。
実施例1において得られる導電材分散体1だけを用いて、他は実施例1と同じ条件で作製した電極層を用いて、実施例1と同様の方法でアクチュエータを得る。
得られるアクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)にて観察することによって、一対の電極層がイオン伝導層を挟持していることが確認される。
作用部から固定部の方向に導電材の含有量が同じの一対の電極層がイオン伝導層を挟持しているアクチュエータを作製する。
実施例1において得られる導電材分散体5だけを用いて、他は実施例1と同じ条件で作製した電極層を用いて、実施例1と同様の方法でアクチュエータを得る。
得られるアクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)にて観察することによって、一対の電極層がイオン伝導層を挟持していることが確認される。
(電極層に含有されている導電材の含有量)
実施例1および比較例1、2の電極層に含有されている導電材の含有量(A)を次のように評価する。
電極層の厚さは、アクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察した。
アクチュエータの導電材の含有量が大きい端を電極付き固定部で固定し、一方の電極層をカソード、他方の電極層をアノードとし、両電極層の間に2.5Vの電圧を印加すると、アクチュエータはカソード電極層がアノード電極層に比べより伸びる方向への屈曲する。この屈曲時において、固定部端から2mmの位置の固定部近傍の発生力をロードセルによって測定する。
上記の固定部近傍の発生力の測定において、カソード電極層がアノード電極層に比べより伸びる方向へのアクチュエータの屈曲時において、固定部端から8mmの位置である作用部の変位量をレーザー変位計によって測定する。
実施例1のアクチュエータの任意の場所の断面を観察すると、導電材の含有量は、作用部から固定部の方向へ段階的にまたは連続的に増大している。
実施例2に用いる電極層を以下のように作製する。導電材として800mgのSWNT、およびイオン液体として100mgのBMIBF4に有機溶剤であるDMAcを10mL加え、ジルコニアボール(粒径2mm)を用いて200rpmで30分間、ボールミル(遊星型微粒粉砕機、フリッチェ社製)により分散を行い組成物を得る。次いで、800mgのPVdF(HFP)を20mLのDMAcに溶かした溶液を、ボールミルによって得られた組成物に加え、更に500rpmで30分間、ボールミルにて分散する。その結果、高粘度で、導電材が均一に分散している導電材分散体6が得られる。
得られるアクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、一対の電極層がイオン伝導層を挟持していることが確認される。
作用部から固定部の方向に電極層の厚みが同じ一対の電極層がイオン伝導層を挟持しているアクチュエータを作製する。
実施例2において得られる導電材分散体6を用いて、作用部から固定部の方向に電極層の厚みが同じ電極層がイオン伝導層を挟持しているアクチュエータを以下のように作製する。
作用部から固定部の方向に電極層の厚みが同じの一対の電極層がイオン伝導層を挟持しているアクチュエータを作製する。
実施例2において得られる導電材分散体6を用いて、作用部から固定部の方向に電極層の厚みが同じ電極層がイオン伝導層を挟持しているアクチュエータを以下のように作製する。
アクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察し、電極層の厚さを測定する。
(注2)固定部近傍の発生力および作用部での変位量は、電極層の膜厚が厚い端を電極付き固定部で固定して測定した。
また、実施例2および比較例3、4で得られるアクチュエータについて、固定部端から8mmの位置に被作用部を設置し、2.5Vの電圧印加を0.1Hzで12000回、ON・OFFを繰り返し行ったところ、実施例2および比較例4のアクチュエータにおいては、亀裂・破壊等は見られなかった。一方、比較例3のアクチュエータにおいては、固定部近傍で一部、亀裂・破壊等が見られた。
実施例1において導電材分散体1を作製する際に用いられるSWMTの重量を10mgから20mg、PVdF(HFP)の重量を80mgから160mgに替え、他は実施例1と同じ条件で作製することにより導電材分散体7を得る。
同様に、SWMTの重量を10mgから35mg、PVdF(HFP)の重量を80mgから140mgに替え、他は実施例1と同じ条件で作製することにより導電材分散体8を得る。
同様に、SWMTの重量を10mgから50mg、PVdF(HFP)の重量を80mgから120mgに替え、他は実施例1と同じ条件で作製することにより導電材分散体9を得る。
同様に、SWMTの重量を10mgから65mg、PVdF(HFP)の重量を80mgから100mgに替え、他は実施例1と同じ条件で作製することにより導電材分散体10を得る。
まず、実施例1で得られたPVdF(HFP)/BMIBF4/DMAcからなるイオン性組成物1を100μmのスペーサーを有する基板に流し込み、スペーサーをガイドに平坦にならした後、室温にて乾燥することによってイオン伝導層を得る。
得られるアクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、一対の電極層がイオン伝導層を挟持していることが確認される。
作用部から固定部の方向に空隙率が同じの一対の電極層が、イオン伝導層を挟持しているアクチュエータを作製する。
実施例3において得られる導電材分散体7だけを用いて電極層を形成し、他は実施例3と同じ条件でアクチュエータを作製する。
得られるアクチュエータの断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製S−4800)にて観察することによって、一対の電極層がイオン伝導層を挟持していることが確認される。
空隙率は、前述の式(1)により得る。
実施例3および比較例5、比較例2についての結果を表3に示す。
(注2)固定部近傍の発生力および作用部での変位量は、電極層の空隙率の小さい端を電極付き固定部で固定して測定した。
また、実施例3および比較例5、2で得られるアクチュエータについて、固定部端から8mmの位置に被作用部を設置し、2.5Vの電圧印加を0.1Hzで12000回、ON・OFFを繰り返し行ったところ、実施例3および比較例2のアクチュエータにおいては、亀裂・破壊等は見られなかった。一方、比較例5のアクチュエータにおいては、固定部近傍で一部、亀裂・破壊等が見られた。
4 イオン性物質のカチオン
5 イオン性物質のアニオン
7 カソード電極層
8 アノード電極層
20 固定部
30 作用部
Claims (10)
- 導電材を含有する一対の電極層と、前記一対の電極層に挟持されているイオン伝導層を有するアクチュエータであって、前記一対の電極層の両方の層に含まれるそれぞれの導電材の含有量が、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が大きいことを特徴とするアクチュエータ。
- 前記電極層に含まれる導電材の含有量が、前記アクチュエータの作用部から固定部に向かうにしたがって大きいことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
- 前記導電材の含有量は、前記電極層に対する重量割合で1重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
- 導電材を含有する一対の電極層と、前記一対の電極層に挟持されているイオン伝導層を有するアクチュエータであって、前記電極層の厚さが、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が大きく、前記固定部における厚みと前記作用部における厚みの差が1μm以上であることを特徴とするアクチュエータ。
- 前記電極層の厚さが、前記アクチュエータの作用部から固定部に向かうにしたがって大きいことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
- 前記一対の電極層の両方の層のそれぞれの厚さが、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が大きく、前記固定部における厚みと前記作用部における厚みの差がそれぞれ1μm以上である請求項4または5に記載のアクチュエータ。
- 導電材を含有する一対の電極層と、前記一対の電極層に挟持されているイオン伝導層を有するアクチュエータであって、前記電極層の空隙率が、アクチュエータの作用部よりも固定部の方が小さいことを特徴とするアクチュエータ。
- 前記電極層の空隙率が、前記アクチュエータの作用部から固定部に向かうにしたがって小さいことを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータ。
- 前記イオン伝導層がイオン液体を含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
- 前記導電材が炭素材料からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかの項に記載のアクチュエータ。
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