JP2010152309A - フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶表示装置に使用した際に斜めから覗いた表示むらの発生が少ないフィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含み、下記式で表されるγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることを特徴とするフィルム。
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]|
(式中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【選択図】なし

Description

本発明はフィルムおよびその製造方法に関する。また、該フィルムを有する偏光板および液晶表示装置にも関する。
近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々なフィルムおよびその製造方法が開発されている。例えば、TNモード液晶用位相差膜の製造方法として、フィルムを2つのロールで構成される挟圧装置で挟む際に、2つのロール間に周速度差を与えること(以下、周速度差製膜とも言う)で、フィルム厚み方向に光軸が傾斜した傾斜構造を形成した後、延伸する方法が知られている。
例えば、特許文献1では溶液製膜によってあらかじめフィルムを製膜した後、周速度の異なる2本のロール間を通すことでズリを与えて光軸を傾斜させた後、延伸する方法が記載されている。一方、特許文献1は溶融物に対して適用することも示唆していなかった。
特許文献2では金属ロールと表面をゴムで被覆した金属ロールとを用いて、これらに周速度差を与えた後、延伸する方法が記載されている。
しかし、液晶ディスプレイに単に光軸が傾斜した光学フィルムを使用しただけでは、光学補償の効果は十分ではない。例えば、特許文献2ではその実施例で光軸が11.5〜18.2°傾斜した光学フィルムが開示されているが、光軸傾斜角度と液晶ディスプレイの光学補償との関係については何ら記載されていない。また、実際に、透過型のTNやECB液晶ディスプレイや、半透過型のTNやECB液晶ディスプレイの光学補償を行うには、液晶セルのレターデーションを補償できるまでもの大きな位相差を有することが必要であり、光軸が11.5〜18.2°傾斜しているだけでは不十分であった。そのため、さらに傾斜構造の大きな光学フィルムが望まれていた。
一方、近年液晶表示装置に求められる画質の要求は年々高まってきており、液晶表示装置を斜め方向から覗いた際の視野角補償を行うだけではなく、斜め方向から覗いた際の画質も良好となる光学補償フィルムの開発が望まれている。
特開平7−151915号公報 特開2007−38646号公報
本発明者らが特許文献1および2に記載の方法で調製したフィルムを液晶表示装置に用いたところ、斜めから覗いた際に表示むらが発生していることがわかった。また、前記特許文献2に記載の方法では横延伸工程を行っているものの、横延伸後のフィルムの処理方法として、熱処理を行う方法が開示されているが、このような熱処理を行った場合であっても同様に斜めから覗いた際に表示むらは改善されなかった。
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、本発明の第一の目的は、液晶表示装置に使用した際に斜めから覗いた表示むらの発生が少ないフィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、液晶表示装置を斜めから覗いた際の表示むらが、周速度差製膜により形成したγ(左右の斜めから測定した時のレターデーションの差)が、延伸した際に幅方向でばらつき、このγのバラツキが液晶表示板に組み込んだ際に斜め方向から覗いた際の表示むらを引き起こすことを見出すにいたった。また、このようなγのバラツキを抑制するという新規課題についてさらなる検討を進めた結果、横延伸工程後にフィルムを特定の範囲だけ湾曲させることにより、驚くべきことにγのバラツキが抑えられ、さらに液晶表示装置に使用した際に斜めから覗いた表示むらの発生も少なくなることを見出すに至った。すなわち、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] 熱可塑性樹脂を含み、下記(I)式で表されるγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることを特徴とするフィルム。
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (I)式
(式(I)中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[2] 遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°〜150°であることを特徴とする[1]に記載のフィルム。
[3] 下記(II)式および(III)式を満足することを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルム。
50nm≦Re[0°]≦300nm (II)式
40nm≦γ≦300nm (III)式
(式(II)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[4] 厚み方向のレターデーションRthが40nm〜300nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
[5] 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
[6] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程において前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程と、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させ、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する工程と、を含むフィルムの製造方法。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
[7] 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする[6]に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記横延伸工程が、さらにクリップをTg−80℃〜Tgに加熱する工程と、加熱後のクリップによって前記フィルムの両端を把持しながら横延伸する工程と、を含むことを特徴とする[6]または[7]に記載のフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
[9] 前記横延伸工程を、フィルム膜面温度がTg−40℃〜Tg+5℃となるように制御して行うことを特徴とする[6]〜[8]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[10] 前記挟圧工程において、前記溶融物を5〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする[6]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[11] 前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする[6]〜[10]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
[12] 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする[6]〜[11]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[13] 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする[12]に記載のフィルムの製造方法。
[14] [6]〜[13]のいずれか一項に記載の方法で製膜したことを特徴とするフィルム。
[15] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[16] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、液晶ディスプレイに使用した場合に液晶表示装置を斜めから覗いた際の表示むらが少ないフィルムおよびその製造方法を提供することができる。また、本発明の好ましい態様ではロール経時後でも斜めから覗いた表示むらの発生が少ないフィルムおよびその製造方法を提供することができる。さらに、本発明のより好ましい態様では十分な光学補償を実現できるフィルムおよびその製造方法をも提供することができる。詳しくは、上記光学特性を有するフィルムは、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を実現できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルムが偏光子に積層されて使用されるが、本発明のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。また、本発明のフィルムの製造方法により、本発明のフィルムを提供することができる。
本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム幅方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向に直交する方向を意味する。本明細書において傾斜方位とは、後述する測定方法において、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を表す。
[フィルム]
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、下記式(I)で表されるγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることを特徴とする。
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (I)式
(式(I)中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度(θ)の符号の正負を考慮しない場合、傾斜角度90°の方向である。傾斜角度(θ)の符号の正負を考慮する場合、Re[+40°]を測定する方向とRe[−40°]を測定する方向は、フィルム法線に対して、線対称な位置となる。
(γの遅相軸方向の分布)
本発明のフィルムは、γの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であり、好ましくは0%〜7%、さらに好ましくは0%〜5%である。γの遅相軸方向の分布が10.5%以下であれば、場所によりγが異なることが実用上問題になりにくい程度となるため、液晶表示板に使用した際に斜めから覗いた際の表示むらが視認され難い。ここで、フィルムの光学特性の中でもγは左右から測定した際の複屈折の差を示すものであるため、左右の斜め方向から覗いた際に表示むらとなり易い。
このようなγの遅相軸方向の分布はどこをとっても上記範囲に入ることが好ましく、例えば遅相軸方向に任意に取った遅相軸方向30cm中のばらつきがこの範囲に入っていることが好ましい。
また、γの遅相軸方向の分布は、以下の方法により測定することができる。延伸後のフィルムの任意の箇所の遅相軸方向30cmを10等分し、後述する測定方法でγを計る。得られた10点のγの測定値のうち、最大点と最小点の差を10点の平均値で割り百分率で表したものをγの遅相軸方向の分布(%)とした。
なお、Re[0°]、遅相軸およびRthのバラツキも同様に測定される。
(遅相軸と傾斜方位のなす角度)
本発明のフィルムは、遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°〜150°であることが好ましく、より好ましくは40°〜140°、さらに好ましくは50°〜130°である。このように遅相軸が傾斜方位から傾いていることが、フィルムをロールに巻き取った後に経時させ、その後液晶表示板に使用した場合に斜めから覗いた際の表示むらを視認され難くする観点から好ましい。詳しくは、本発明のフィルムをロールに巻き取った際の寸法変化の絶対値(長さ×寸法変化率)が大きいほど大きな応力が発生し、このようにロールに巻き取った際の寸法変化が生じると、仮に延伸直後においてはγの遅相軸方向の分布が前記の範囲であったとしても、ロール経時後のγの遅相軸方向の分布が好ましい範囲を外れる程度まで増加することがある。すなわち、本発明のフィルムは、このようなロール経時後のγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることが好ましく、0%〜7%であることがより好ましく、0%〜5%であることが特に好ましい。
本発明のフィルムをロールに巻き取った際の寸法変化の絶対値が最も大きな場合は、傾斜方位に遅相軸が存在する場合であり、遅相軸が傾斜方位から傾くにつれ(この角をφとすると)cosφを掛けた長さに減少してゆく。なお、例えば遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°の場合と150°(=180°−30°)の場合とは、傾斜方位を軸に左右対称であることを示し、傾斜方位を軸に30°と−30°を示し、実質的に同じものである。
(面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、下記(II)式および(III)式を満足することが好ましい。
50nm≦Re[0°]≦300nm (II)式
40nm≦γ≦300nm (III)式
(式(II)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
より好ましくは、70nm≦Re[0°]≦250nm、60nm≦γ≦250nmを満たす場合であり、
さらに好ましくは、100nm≦Re[0°]≦200nm、80nm≦γ≦180nm場合である。
正面方向のレターデーションRe[0°]が前記(II)式の範囲であると、液晶表示装置に組み込んだ場合に液晶補償能が改善され、僅かなむらが視認され難くなり、特に液晶表示板の光学特性を補償しにくい斜めから覗いた場合の表示むらが実質的に減少する。
前記γが大きいことは、斜めから測定したReが例えば左側と右側とで異なることを意味し、フィルム中に厚み方向から見た際に傾斜構造が形成されたことを意味する。この傾斜構造が液晶表示装置中の液晶配向を相補し視野角を改善する効果を有する。
γが前記(III)式の範囲であると、液晶表示装置に組み込んだ場合に液晶補償能が改善され、僅かなむらが視認され難くなり、特に液晶表示板の光学特性を補償しにくい斜めから覗いた場合の表示むらが実質的に減少する。
本発明のフィルムは、厚み方向のレターデーションRthが40nm〜300nmであることが好ましく、より好ましくは50nm〜200nm、さらに好ましくは50nm〜150nmである。Rthは厚み方向と面内方向の屈折率の差であり、斜め方向から見た際の表示むらに影響する。Rthが40nm〜300nmの範囲であれば顕著に斜め方向の表示むらが減少する。
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
本発明のフィルムの膜厚は、100μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることが好ましい。本発明のフィルムの製造方法では、このような薄手のフィルムを作成できる。
Re[0°]のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
本明細書において、ReおよびRthは、光学異方性層、フィルム、積層体等の、フィルム状の測定対象物の、面内のレターデーション(nm)、及び厚み方向のレターデーション(nm)を表す。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 2010152309
なお、式中、Re[θ]は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
また、式(A)において、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の任意に設定した方位(KOBRA 21ADH又はWRに設定できる)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルム法線方向から測定した(傾斜角度0°での)波長550nmにおけるレターデーション値、該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度40度での)レターデーション値および該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した(傾斜角度−40度での)レターデーション値を表す。なお、Re[+40°]を測定する方向とRe[−40°]を測定する方向は、フィルム法線に対して、線対称な位置となる。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)フィルム法線に対して各仮傾斜方位側へ40°又は−40°傾いた方向からRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、各仮傾斜方位の|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
すなわち、本明細書において、「傾斜方位を有する」とは、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位が存在することを言う。
また、本明細書において、フィルムのRthは傾斜方位を傾斜軸(回転軸)として、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、γ≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位でγを測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向いたフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向いたフィルムを作成することができる。
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(ポリプラスチックス(株)社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)および(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度は2.1〜3.0が好ましく、アセチル基の置換度は0.05〜2.5が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5あるいは1.5〜2.5である。プロピオニル置換度は0.1〜2.8が好ましく、より好ましくは0.1〜1.2あるいは2.3〜2.8である。
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン−アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 2010152309
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メ
タ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(添加剤)
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(以下、メルトとも言う)を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程において前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程と、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させ、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する工程と、を含むことを特徴とする。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
このように横延伸工程後のフィルムを特定の範囲だけ湾曲させることが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速度が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、挟圧装置によって圧力を均一にかけられることから、互いに周速度が異なる2つのロールであることが好ましい。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
<熱可塑性樹脂組成物の溶融物の供給>
本発明の製造方法では、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程(以下、挟圧工程とも言う)を含むが、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(メルト)を供給する手段に特に制限はない。例えば、メルトの具体的な供給手段として、熱可塑性樹脂組成物を溶融してフィルム状に押出す押出機を用いる態様でもよく、押出機およびダイを用いる態様でもよく、熱可塑性樹脂を一度固化してフィルム状とした後に加熱手段により溶融してメルトを形成し、製膜工程に供給する態様でもよい。
本発明のフィルムの製造方法は、前記熱可塑性樹脂を含有する組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物とも言う)をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことが、より得られるフィルムの光学特性のムラを抑える観点から好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融押出しする場合、溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。前記熱可塑性樹脂としては本発明のフィルムに含まれる熱可塑性樹脂として説明したものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
押出機を用いて溶融押出しを行う場合、次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成されることが好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機と前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の間にギアポンプを設けることが好ましい。これにより前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂が前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)に連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
ダイ出口部分のクリアランス(以下、リップギャップとも言う)は一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。具体的には、0.04〜3mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることがより好ましく、0.4〜1.5mmであることが特に好ましい。本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってから前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<挟圧工程>
次に、熱可塑性樹脂の溶融物を前記供給手段から供給し、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂の溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、前記挟圧工程において、前記溶融物を幅方向で5MPa〜500MPaの圧力で挟圧することが好ましく、より好ましくは20MPa〜300MPa、さらに好ましくは30MPa〜200MPaである。通常のタッチロール製膜の押圧は30MPa未満であるが、30MPa以上であれば本発明の前記好ましい範囲のRe[0°]、γを発現できる上、フィルム内に強固な傾斜構造を形成することができ、後述する横延伸工程中の収縮応力により配向がより変化し難くなるため、γの遅相軸方向の分布が減少する。一方、500MPaであれば挟圧面が適度に変形するため、挟圧面幅方向で均一に変形でき、横延伸工程後にγの遅相軸方向の分布が顕在化しにくい。
ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フイルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
本発明の製造方法では、前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することが好ましい。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
挟圧装置の挟圧面どうしの移動速度差は1%〜15%であることがより好ましく、さらに好ましくは2%〜10%である。
移動速度差が20%以下であればメルトが挟圧装置の挟圧面間でスリップを引き起こさず、挟圧装置間の圧力にムラが発生しがたい。このムラが発生しなければ、横延伸工程時にムラが増幅されることもなく、γの遅相軸方向分布が減少する。一方、移動速度差が0.5%以上であれば、強固な傾斜構造を作ることができ、横延伸工程中の収縮応力により傾斜構造が低下することを抑制できるため、γの遅相軸方向分布が減少することとなる。
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(前記供給手段出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、エアーギャップ間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
(ライン速度)
本発明の製造方法では、エアーギャップでのメルトの保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
(製膜幅)
本発明の製造方法では、製膜幅は1m〜3mが好ましく、より好ましくは1.2m〜2.5m、さらに好ましくは1.4m〜2mである。
(2つのロールを用いたキャスト)
前記挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に溶融押出しされた溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の前記熱可塑性樹脂組成物供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
本発明のフィルムの製造方法では、前記供給手段から押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該供給手段から押出されたメルトの着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。 前記メルトの着地点とは、供給手段から押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャスティングロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明の製造方法では、前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
互いに異なる周速度で回転している2つのロール間のロール圧力は5〜500MPaであることが好ましく、20MPa〜300MPaであることがより好ましく、30MPa〜200MPaであることが特に好ましく、さらに好ましくは、40〜200MPaである。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記2つのロールの材質は、金属であることが前記ショア硬さを達成する観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、前記ロール圧力を達成できれば特に制限なく用いることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
本発明ではダイから出た直後のメルトをタッチロールとチルロールで挟み、これらに周速度差を与えることで傾斜構造を形成することが好ましいが、本発明の製造方法では、前記挟圧装置を構成する2つのロールの少なくとも一方に外筒厚み6mm〜45mmの金属製ロールを用いることが好ましく、タッチロールに外筒厚み6mm〜45mmの金属製タッチロールを用いることが好ましい。より好ましくは10mm〜40mm、さらに好ましくは15mm〜35mmの金属製ロールである。本発明は通常のタッチロールより肉厚の厚いものを使用することが好ましい。金属製外筒厚みが6mm以上であればチルロールに圧着した際にタッチロールの変形が大きくなり難く、変形量即ち押し付け圧の幅方向の均一性が十分となり、延伸後もγの遅相軸方向分布が小さくなり好ましい。一方金属製外筒厚みが45mm以下であればタッチロールの変形量が小さすぎず、タッチロールとチルロールの接触長さが十分長くなり、十分に接触面積をとれるため大きな面圧がフィルムにかかることがない。この結果、ロール幅方向で僅かに押圧が変化しても、押圧に大きな幅方向むらが生じにくい。
従来金属製のタッチロールは特開平11−235747号公報のように金属製外筒厚みが2〜5mmと薄いものか、カレンダーロールのように金属製外筒厚みが50mm以上のものが主流であり、本発明ではこの間の新規な厚みのロールを用いたことで顕著にγの遅相軸方向分布を小さくできたことが特徴の一つである。
本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロールの周速度差を制御することで、溶融樹脂が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。なおここでいう周速度差とはタッチロール、それと対峙する冷却(チル)ロールの周速度について下記式で表される。
周速度差(%)=100×[(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)]
/(速い方のロールの周速度)
2つのロールの周速度差の好ましい範囲は、前記挟圧装置における移動速度差における好ましい範囲と同様である。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が200〜1500mm、より好ましくは、300mm〜1000mm、特に好ましくは350mm〜800mm、より特に好ましくは350〜600mm、さらにより好ましくは350〜500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、γが大きなフィルムを、しかもRe[0°]のバラツキ、γの遅相軸方向の分布を抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速度で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]のバラツキ、γの遅相軸方向の分布を抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
さらにγの発現量を大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、はTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
また、本発明の製造方法では、供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を、2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、前記エアーギャップの少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つ熱可塑性樹脂組成物の供給手段(例えば、ダイ)の幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、供給手段の側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、供給手段の放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、供給手段側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、ダイの側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりRe[0°]のバラツキ、γの遅相軸方向の分布をなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
このようにして製膜した後、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(熱可塑性樹脂組成物の供給手段、例えばダイ、に近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。厚みだし加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/m幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/m幅である。
本発明の製造方法で得られるフィルムの未延伸時の膜厚は、100μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが特に好ましく、40μm以下であることがより特に好ましい。
<延伸、緩和処理、湾曲>
さらに、上記方法により製膜した後、本発明の製造方法では、得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程を行い、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させる工程を行い、前記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する。
また、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、その他の延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(f)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 横延伸→横延伸
(d) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(f) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)の工程である。以下、延伸工程について説明する。
(横延伸)
イ)通常の横延伸
本発明の製造方法では、横延伸工程として、通常の横延伸を採用することができる。すなわち、通常の横延伸とは、フィルムの両端をクリップで把持し、テンターを用いオーブン内で加熱しながらクリップを拡幅する横延伸法であり、例えば下記のような方法を使用できる。
実開昭62−35817号、特開2001−138394号、特開平10−249934号、特開平6−270246号、実開平4−30922号、特開昭62−152721号各公報。
本発明の製造方法は、横延伸工程においてクリップをTg−80℃〜Tgに加熱する工程と、加熱後のクリップによって前記フィルムの両端を把持しながら横延伸する工程とを含むことが好ましい。但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。
本発明では、テンター内でのγの遅相軸方向の分布の増加が、クリップ近傍のフィルムが固定されており、フィルム幅方向中央部に比べて、横延伸に伴う収縮応力で変形し難いことに起因して生じていることを見出した。したがって、γの遅相軸方向の分布を低下させるためにクリップ近傍のフィルムを柔らかくして変形し易くすることが有効であることを見出した。
具体的な対策として、クリップを上記温度に加熱する工程の後に、加熱後のクリップによってフィルムの両端を把持しながら横延伸することが好ましい。これにより特に変形し易くする必要のある(クリップで固定され変形し難い)クリップ近傍のフィルムを選択的に加温できる。
前記クリップの加熱温度は、Tg−80℃〜Tgであることが好ましく、より好ましくはTg−60℃〜Tg−5℃、さらに好ましくはTg−50℃〜Tg−10℃である。
前記クリップの加熱温度がTg以下であれば把持部のフィルムが柔らかくなりすぎず、延伸中に逆に延伸され易くなってしまうことがなく、γの遅相軸方向の分布を抑えることができる。一方、Tg−80℃以上であれば、上記効果(端部の加熱による効果)が十分に現れ、γの追走軸方向の分布が十分に抑制でき好ましい。
このような把持前のクリップの加熱工程には、特に制限なく公知の加熱装置を用いることができるが、例えばクリップに熱風を当ててもよく、クリップをIRヒーターやハロゲンヒーターなどで加熱してもよい。具体的には、延伸終了点に一度到達したクリップがフィルムを把持しない状態で延伸開始点に戻るまでの間に、クリップの通る上部、下部、側面などに赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を設置することで達成できる。前記赤外線ヒーターとしては、例えば特開平5−36469号、特開平6−84586号、特開平7−288175号、特開平8−153572号、特開平11−86804号、特開2001−6850号、特開2006−294337号各公報に記載のものが使用でき、またHeraeus社性の赤外線ヒーター(例えば、BSG500/300、BSG1200/600、BSG2200/1100、BSG3750/1500)、SIGMA社製の赤外線ヒーター(例えばIRK120V、IRK230、IRK350、IRK480)を使用できる。前記ハロゲンヒーターとしては特開平7−306604号、特開平10−149871号各公報等に記載のものを使用できる。前記パネルヒーターとしては実開平5−23486号、実開平7−42906号、特開平7−243656号各公報等に記載のものを使用できる。これらの加熱装置の中にクリップの温度計測装置を設置し、計測した温度をもとに前記加熱装置の出力を調整することで、好ましい範囲にクリップを温度調整できる。
上記で加熱装置として例示した方法以外に、クリップの通路にパイプ状の鋳込みヒーターやバンドヒーターを巻いた管を設置し、温度調節しながらクリップの加熱工程を行ってもよい。また、クリップの通路の途中に管を設置し、その中に熱風発生装置から熱風を導入して温度調節しながらクリップの加熱工程を行ってもよい。
本発明の製造方法では、前記横延伸工程を、フィルム膜面温度(以下、横延伸温度とも言う。また、本明細書中、横延伸以外の各延伸工程においても、フィルム膜面温度を各延伸工程における延伸温度と言う。)がTg−40℃〜Tg+5℃となるように制御して行うことが好ましい。すなわち、前記横延伸工程の横延伸温度はTg−40℃〜Tg+5℃が好ましく、より好ましくはTg−30℃〜Tg℃、さらに好ましくはTg−20℃〜Tg−3℃である。ここで、横延伸工程における横延伸温度とは、延伸開始点から延伸終了点までの間の平均温度を表す。横延伸工程の延伸時間が1秒〜10分が好ましく、より好ましくは2秒〜5分、さらに好ましくは5秒〜3分である。延伸温度および延伸時間を上記の範囲内に制御することにより、溶融挟圧工程で形成されるフィルム中に厚み方向の傾斜構造が緩和し難く、延伸後のフィルムの傾斜構造を大きく維持することができるとともに、本発明の好ましい範囲内のγを形成することができる。また、延伸温度および延伸時間を上記の範囲に制御することで、延伸後のフィルムの遅相軸と傾斜方位のなす角度を前記好ましい範囲内に制御することができる。前記横延伸工程の延伸温度はテンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。
横延伸工程の延伸倍率は1.05倍〜3倍、より好ましくは1.1倍〜2.6倍、さらに好ましくは1.2倍〜2.3倍である。
このような横延伸工程により本発明のγの遅相軸方向分布の範囲(0%〜10.5%)に制御することができる。
なお、γの遅相軸方向分布を0%にしたい場合は、例えばテンターの温度調整用熱風吹き出し口の端部と中央に温度分布を与え、両端の吹き出し口の温度を中央より15〜40℃高くすることで達成できる。
また、本発明の製造方法において横延伸工程は1段階で実施しても多段階で実施してもよいが、1段階で実施することが好ましい。
このような横延伸は、テンター内でクリップを幅方向に拡幅する通常の横延伸以外に、これらと同様にクリップで把持して拡幅する下記のような延伸方法も適用できる。
ロ)同時2軸延伸
通常の横延伸と同様、横方向にクリップを拡幅するが、それと同時に縦方向に延伸、収縮するものであり、具体的には下記のような方法を使用できる。
実開昭55−93520号、特開昭63−247021号、特開平6−210726号、特開平6−278204号、特開2000−334832号、特開2004−106434号、特開2004−195712号、特開2006−142595号、特開2007−210306号、特開2005−22087号、特表2006−517608号、特開2007−210306号各公報。
ハ)斜め延伸
通常の横延伸と同様、横方向にクリップを拡幅するが、左右のクリップの搬送速度を変えることで斜め方向に延伸できる。これによりMD方向から30°〜150°、より好ましくは40°〜140°、さらに好ましくは50°〜130°にすることができ、具体的には下記のような方法を使用できる。
特開2002−22944号、特開2002−86554号、特開2004−325561号、特開2008−23775号、特開2008−110573号、特開2000−9912号、特開2003−342384号、特開2004−20701号、特開2004−258508号、特開2006−224618号、特開2006−255892号、特開2008−221834号、特開2003−342384号、国際公開WO2003/102639号各公報。
このようにして横延伸した後のフィルムの厚みは10μm〜90μm、より好ましくは20μm〜80μm、さらに好ましくは25μm〜70μmである。横延伸した後のフィルムの厚みが90μm以下であれば傾斜構造フィルムの調製において強固な傾斜構造を作成できる。これは厚みがある程度薄ければズリ(せん断応力)をフィルムの表裏に与えやすく、γの遅相軸方向の分布を抑制することができる。一方、10μm以上であればフィルムの曲げ弾性が十分に強く、横延伸工程中のテンターで温度調節のために吹き込む風でフィルムがばたついたりせず、均一な横延伸工程が達成できγの遅相軸方向分布を抑制することができる。
(予熱、熱固定)
このような横延伸工程の前に予熱を行ったり、横延伸工程の後に熱固定を行ったりすることで横延伸後のフィルムのRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
(横延伸後の湾曲)
本発明の製造方法では、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させる工程を含み、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する。ここで、前記湾曲量は好ましくはフィルム全幅の0.3%〜8%であり、さらに好ましくは0.5%〜6%である。前記湾曲量が0.1〜10%であると、γの遅相軸方向の分布が抑制され、フィルムを液晶表示装置に組み込んだ際の斜め方向の表示むらが顕著に改善されるため好ましい。なお、このようなフィルムを湾曲させる工程は(横延伸温度)〜(横延伸温度−80℃)において実施するのが好ましく、より好ましくは(横延伸温度−10℃)〜(横延伸温度−50℃)である。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
ここで、前記湾曲とは、具体的には、横延伸工程後にフィルムをクリップに把持したまま、クリップ間を結ぶ直線(すなわち、幅方向両端部の高さを表す)から、フィルムの幅方向中央部が、上記高さだけ湾曲していることを示す。また、フィルムが湾曲しているとは、フィルムが途中で折れ曲がったり、複数回大きく波打ったりすることがなく、アーチ状に滑らかな曲線を描いて幅方向中央部が頂点となるように膨らんでいる状態を表す。このような横延伸工程後の湾曲は、前記熱固定を兼ねてもよい。
本発明において横延伸工程後の湾曲は、フィルムが膨らんでおればよく、上に凸でも下に凸でもかまわない。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、一般的にフィルムは横延伸で幅方向に伸張する分、物質収支を合わせるためにフィルム搬送方向(MD)、厚み方向に収縮しようとする。このため厚み方向、MD方向に収縮応力が働く。このうち厚み方向の収縮応力はフィルム面方向に押し潰す作用をし、本発明のγで示される厚み方向の配向を減少させる。このような厚み方向の収縮応力は幅方向中央部においてとくに発現し易い。これは両端がクリップで固定され収縮を受けにくいのに対し、中央部はクリップから遠く収縮し易く収縮応力が発現し易いためである。したがって、従来横延伸工程を実施して得られたフィルムでは、フィルム幅方向中央部に選択的に大きく働く収縮応力によりγがフィルム幅方向中央部で減少されやすく、γがフィルムの幅方向において分布を有していた。そのため、γの遅相軸方向の分布が発生していた。
本発明では、このような横延伸工程でフィルム幅方向中央部に大きく働く収縮応力を低減させることを検討した結果、上記のように横延伸工程後にフィルムを湾曲させることが有効であることを見出した。いかなる理論に拘泥するものでもないが、横延伸ゾーンでフィルム幅方向中央部に大きく発生する収縮応力のため、横延伸工程後のフィルムは幅方向中央部を強く延伸部(両端部)に向かって引っ張られる。これに対し、フィルムを湾曲させる(膨らませる)と、物理学上、把持されている両端に対して、中央部がより膨らもうとする力を受けることとなる。このフィルムを湾曲させた際に中央部に選択的に大きく働く力と、横延伸工程で発生した収縮応力が綱引きすることとなり、横延伸工程による収縮応力の履歴を低減できる。すなわち、このような湾曲による効果は、横延伸工程時において収縮応力の大きい中央部で大きく、収縮応力の弱い両端で小さい。したがって、本発明の製造方法で規定する湾曲量に制御しながらフィルムを横延伸後に湾曲させることで、フィルム全幅にわたり横延伸工程で発生した収縮応力を均等に相殺でき、γの遅相軸方向の分布を抑制できる。このように本発明ではフィルムを湾曲させるという容易かつ簡便な方法によって、中央部に選択的に応力を掛けることが特徴であり、張力を掛け引っ張るような方法に比べて幅方向に均一な応力が加えられる観点から、顕著に好ましい効果を奏する。
このようなフィルムの湾曲を行う方法としては、本発明の趣旨に反しない限り特に制限はなく、例えば、フィルムの温度調節のために導入する吹き込み風の量を上下で調整することで達成できる。
前記吹き込み風の量を調整する方法の具体例としては、延伸ゾーンの後のフィルムの通過面の上下両方あるいは下方に空気吹き出し口を設置する。前記吹き出し口は多孔板であってもよく、スリットであってもよい。前記吹き出し口が多孔板の場合、孔の直径は1mm〜100mmが好ましく、前記吹き出し口がスリットの場合、スリットの幅は1mm〜100mmが好ましい。上下に吹き出し口を設けた場合は上下の風量を調整することで、下方のみに吹き出し口を設けた場合は下方の風量を調整することで、上記の本発明の湾曲量に制御した湾曲を達成できる。前記吹き込み風の風量の調整は、送風機のファンの回転数を調整してもよく、前記送風機から前記吹き出し口までの間に設けたダンパーを調整することでも達成できる。さらに、前記吹き出し口を幅方向に分割し、中央部の風速と端部の風速を調整することでも達成できる。
前記吹き込み風の温度は、(横延伸温度)〜(横延伸温度−80℃)が好ましく、より好ましくは(横延伸温度−10℃)〜(横延伸温度−50℃)である。前記吹き込み風の温度が(横延伸温度−80℃)以下であればフィルムが柔らかくなり過ぎず、湾曲時にフィルムが伸びたりすることがなく、好ましい。一方前記吹き込み風の温度が横延伸温度以上であれば、横延伸工程後のフィルムの収縮量が大きくなりにくく、これに由来する皺が発生しにくく、好ましい。
また、吹き出し口をフィルム通過面の左右に設置し、フィルムの端部、中央部に邪魔板を設け風の向きを上部に変えることでフィルムを湾曲させてもよい。この時、上述のような風量の調整以外に邪魔板の角度を調整することで湾曲量を調整できる。
さらにフィルムの中央部の上部或いは下部に吸引ダクトを設け、その吸い込み風量を調整することでも湾曲量を調整できる。
このような横延伸工程後の湾曲は、横延伸工程の直後に連続して行うことが好ましい。
(縦延伸)
さらに、縦延伸を行ってもよい。縦延伸は、前記横延伸工程の後に行っても、前に行ってもよい。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速度を入口側の周速度より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
延伸温度は、Tg−40℃〜Tg+5℃が好ましく、Tg−30℃〜Tg℃がより好ましく、Tg−20℃〜Tg-3℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
(緩和処理)
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行ってもよい。緩和処理は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
緩和処理は(Tg−40)℃〜(Tg+5)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg)℃、さらに好ましくは(Tg−20)℃〜(Tg−3)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フイルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
[光学補償フィルム]
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
<積層フィルム>
本発明のフィルムにさらに光学異方性層を付与することで積層フィルムとすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
《測定法》
(1)Re[0°]、γ、Rth
明細書中に記載した方法に従い、これらの光学特性を測定した。
(2)γの遅相軸方向分布
延伸後のフィルムの任意の遅相軸方向30cmについて10等分し、上記方法でγを求める。10点の測定値のうち、最大点と最小点の差を10点の平均値で割り百分率で表したものを遅相軸方向分布(%)とした。
(3)湾曲量
横延伸工程に使用するテンターの出口にカメラを設置し、延伸されたフィルムが搬送されるところを望遠撮影する。この写真の両端のクリップ間を直線で結び、この線から、フィルムが最も高く湾曲した高さを読む。この高さをフィルムの全幅で割り、百分率で示したものを湾曲量(%)とした。
[製造例1] 付加重合型ノルボルネン樹脂のペレットの製造
付加重合型ノルボルネン樹脂(COC)として、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は130℃であった。
[製造例2] 開環重合型ノルボルネン樹脂のペレットの製造
開環重合型ノルボルネン樹脂(COP)を国際公開WO98/14499号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のガラス転移点は136℃であった。
[製造例3] ポリカーボネートのペレットの製造
ポリカーボネートとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
[製造例4] アクリル系樹脂のペレットの製造
アクリル系を特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、ガラス転移点134℃のアクリル系化合物を得た。
[製造例5] セルロースアシレート系樹脂のペレットの製造
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP−1)を2008−87398号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAP−1の組成は、アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.7、全アシル置換度2.65であった。また、当該樹脂のガラス転移点は174℃であった。
[製造例6] セルロースアシレート系樹脂のペレットの製造
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP−2)を2008−50562号公報の実施例101に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAP−2の組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.55、全アシル置換度2.70であった。また、当該樹脂のガラス転移点は137℃であった。
[実施例1]
(フィルムの作製)
(製膜)
熱可塑性樹脂として下記表1に記載の環状オレフィン共重合体TOPAS#6013(COC)のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを下記表1に記載の押出し温度(吐出温度)で幅1300mm、リップギャップ0.8mmのダイから押出した。
この後、キャストロールとタッチロールで挟圧した部分の中央にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅1500mm、直径300mmのハードクロムメッキしたステンレス製キャストロール(チルロール)に下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅1500mm、直径200mmの下記表1に記載の材質のタッチロールを接触させた。また、タッチロールの外筒厚みを下記表1に記載した。なお、タッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フイルム社製)を、メルトのない状態で、等周速度(5m/分)でともに25℃に制御した二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。タッチロールおよびチルロールはショア硬度70HSのものを用いた。また、メルトはキャストロールとタッチロールで挟まれる中央部分に落とした。これらのロールを用い、タッチロール周速度をチルロール周速度よりも速くし、これらのロール間の周速度差を下記表1に記載の条件に設定し、ダイとメルト着地点の距離を50mmに設定し、搬送速度(チルロール速度)15m/分で製膜した。なお、タッチロールの温度をTg−5℃、チルロールの温度をTg−10℃とした。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。またトリミング後の製膜幅は1mとし、450m巻き取り、実施例1のフィルムを作製した。
(延伸)
上記製膜フィルムを表1記載の条件で延伸した。延伸はテンター両端の吹き込み温度をTg+5℃の設定温度として下記表1に記載のフィルムの膜面温度になるようにし、下記表1に記載の倍率で延伸した。延伸後の厚みは80μmであった。
この時、延伸後のテンター内に設置した矩形の形状の吹き出し口からの風量のバランスを調整することで表1記載の湾曲量を調整した。吹き出し口はテンターの上、下側に設置し、風量はダンパーによって調節した。また、フィルムは上に凸に湾曲させた。なお、吹き込み風の温度は延伸時のテンター両端の吹き込み温度−30℃で実施した。
クリップの温度は、延伸終了後にフィルムを把持せずに延伸開始点に戻ってくる途中の延伸開始点直前に設置した赤外線ヒーターにより表1記載の温度に調整した。
延伸には、下記のように通常の横延伸のほか、同時2軸延伸、斜め延伸を実施した。
横延伸:特開平10−249934号公報に記載の方法。
同時2軸延伸:特表2006−517608号公報に記載の方法。
斜め延伸:特開2008−110573号公報に記載の方法。
(フィルムの光学特性)
上記方法でγ、Re[0°]、Rth、遅相軸と傾斜方位のなす角度およびγの遅相軸方向の分布を測定した。
斜め方向の表示むらは、クロスニコルに配置した偏光板の間に上記延伸フィルムを挟み、MD方向から左右に45度ずつ傾いた方向から見た際に視認されるむらの領域を計測した。これは、液晶表示板に組み込んだ際の斜め方向の表示むらを反映する。そのため、「斜め方向の表示むら」は小さいほど好ましく、例えば20%未満であれば実用上問題がなく、5%以下であることが好ましい。
さらに上記延伸フィルムを両端5cmずつスリットし、ナーリングを付与したあと、張力20kg/mで3000m巻取り、50℃で24時間加温した。このような工程は、室温で半年経時した程度に相当する。24時間加湿後のフィルムの収縮応力による巻き締まりを最も受け易い巻き芯部からサンプリングし、上記の方法で斜め方向の表示むらを計測した。これをロール経時後の斜め方向の表示むらとした。ロール経時後の斜め方向の表示むらは小さいほど好ましく、例えば20%未満であれば実用上より好ましく、10%未満であることが特に好ましい。
これらの実施例1のフィルムの光学特性の測定結果を下記表1に示した。
[実施例2〜41、比較例1および2]
用いた樹脂と製膜条件を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。各実施例および比較例のフィルムの光学特性を下記表1および表2に示す。なお、実施例15では、テンター両端の吹き込み温度を実施例1に比べて20℃高くしたため、横延伸工程時のフィルム膜面温度はTg+6℃となった。実施例17における同時2軸延伸は、下記表1に記載の倍率での横延伸と同時に、縦方向に20%収縮させた。なお、同時2軸延伸機は特開2007−210306号公報に記載の設備を用いた。実施例18〜21は、特開2008−110573号公報に記載の装置を用い、表1記載の条件で斜め延伸を行った。実施例37においてアクリル樹脂は230℃にて溶融した。
[実施例42、比較例3]
比較例3では特開平7−151915号公報の実施例1のFS−4に準じて溶液製膜し、乾燥、巻き取り後、フィルムに2本のロール間でせん断応力(ズリ)を付与し、横延伸を行った。さらに、本発明の実施例の方法にて横延伸後のフィルムを湾曲させた。該文献実施例の条件および湾曲量を下記表2に示す。
実施例42は、比較例3を本発明の製造方法に準じて実施したものであり、溶融製膜にて、ダイから押出されたメルトに周速度の異なるタッチロールおよびチルロールでズリを与えた後、横延伸を行い、横延伸後のフィルムを湾曲させた。実施例42の条件を下記表2に示す。
得られた実施例42および比較例3のフィルムの光学特性を下記表2に示す。
[実施例42〜49]
製膜条件と横延伸温度(横延伸工程におけるフィルム膜面温度)を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例のフィルムを得た。なお、実施例43〜47における横延伸温度の調整は、テンター両端からの吹込み風温度を実施例43ではTg+22℃、実施例44、実施例48および49ではTg+8℃、実施例45ではTg−2℃、実施例46ではTg−32℃、実施例47ではTg+38℃に設定することにより調節した。
Figure 2010152309
Figure 2010152309
なお、実施例1〜16、22〜49、比較例1〜3において、遅相軸は幅(TD)方向であり、傾斜方位は長手(MD)方向であった。また、実施例17〜21において、遅相軸は長手方向から表1の「遅相軸と傾斜角のなす角」だけ傾斜した方向であり、傾斜方位は長手方向であった。
表1および表2中、比較例1、2、実施例1〜5は延伸後の湾曲量の効果を比較した。実施例6〜12は延伸前のクリップ温度の効果を検討した。実施例13〜15は異なる樹脂を用い、さらに条件を変えて検討した。実施例16〜21は延伸方式および遅相軸の角度の効果を比較した。実施例22〜25は周速度差の効果を検討した。実施例26〜29はタッチロール厚みの効果を検討した。実施例30〜33はタッチ圧の効果を検討した。実施例34〜39は樹脂の効果を検討した。実施例40および41はタッチロールの材質の効果を検討した。比較例3および実施例42は公知例である特開平7−151915号公報の実施例1との比較を示す。実施例43〜47では横延伸時のフィルム膜面温度をさらに検討したものである。実施例48および49はタッチ圧を低下させた場合の影響をさらに検討したものである。以上より、本発明の製造方法によれば、γの遅相軸方向の分布が本発明の範囲である本発明のフィルムを製造できることがわかった。
次に、本発明のフィルムは、斜め方向の表示むらが少ないことがわかった。また、本発明のより好ましい態様では、ロール経時後の斜め方向の表示むらも少なかった。詳しくは、比較例1〜3ではいずれもγの遅相軸方向の分布が本発明の範囲外であった。さらに、斜め方向の表示むらもロール経時後の斜め方向の表示むらも悪かった。
また、実施例1〜49より、γ、Re[0°]およびRthが良好な範囲で発現しており、さらにγの遅相軸方向分布も小さかった。そのため本発明のフィルムは本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。横延伸時のフィルム膜面温度を本発明のより好ましい範囲であるTg−40℃〜Tg+5℃で行った実施例1〜14、16〜46、48および49では、γが大きく形成されることが分った。
(偏光板の作製)
作成した実施例1〜49のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて各偏光フィルムを作製した。これらの偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フイルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、実施例1〜49のフィルムを貼合わせた。このようにして、実施例1〜49のフィルムを用いた偏光板をそれぞれ2枚ずつ作製した。
(液晶表示板)
実施例1〜49のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶セルの間に設置した。また、実施例1〜49のフィルムを用いた偏光板を液晶セルの上下に配置した。液晶表示装置としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードのものを使用したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。

Claims (16)

  1. 熱可塑性樹脂を含み、下記(I)式で表されるγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることを特徴とするフィルム。
    γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (I)式
    (式(I)中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
  2. 遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°〜150°であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
  3. 下記(II)式および(III)式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
    50nm≦Re[0°]≦300nm (II)式
    40nm≦γ≦300nm (III)式
    (式(II)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
  4. 厚み方向のレターデーションRthが40nm〜300nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
  5. 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
  6. 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程において前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、
    フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、
    得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程と、
    前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させ、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する工程と、
    を含むフィルムの製造方法。
    式(IV)
    湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
  7. 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする請求項6に記載のフィルムの製造方法。
  8. 前記横延伸工程が、さらにクリップをTg−80℃〜Tgに加熱する工程と、加熱後のクリップによって前記フィルムの両端を把持しながら横延伸する工程と、を含むことを特徴とする請求項6または7に記載のフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
  9. 前記横延伸工程を、フィルム膜面温度がTg−40℃〜Tg+5℃となるように制御して行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  10. 前記挟圧工程において、前記溶融物を5〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  11. 前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
    式(V)
    移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
    /(第一挟圧面の移動速度)
  12. 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  13. 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする請求項12に記載のフィルムの製造方法。
  14. 請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法で製膜したことを特徴とするフィルム。
  15. 請求項1〜5および14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
  16. 請求項1〜5および14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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