JP2010064327A - フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイ吐出口から帯状に溶融押し出しする工程と、溶融押出しされた帯状の溶融物を排気手段を有するケーシング装置内を鉛直下方向に通過させて挟圧装置に供給する工程と、ケーシング装置内を通過させた帯状の溶融物を該挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程とを含むフィルムの製造方法であって、前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
【選択図】図1
Description
特に、本発明者らが特許文献4に記載の方法を検討したところ、該文献〔図2〕のようにダイから吐出された帯状の樹脂溶融物の幅方向に沿って排気した場合、帯状の樹脂溶融物付近にまで周囲の冷たい空気が入り込み、樹脂劣化物や添加剤の熱揮散成分を冷やしていくことがわかった。その結果、ロールやダイ周辺に樹脂劣化物や添加剤の熱揮散成分が冷却して液化または固化した成分由来の付着物が付着し、付着物の落下やロール汚れが発生するため、面状故障の原因となりロングラン製膜適性の観点から問題があることが判明した。さらに、幅方向の厚みムラにもつながることが判明した。
前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
[2] 前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とする[1]に記載のフィルムの製造方法。
[3] 前記ケーシング装置の排気手段による排気量が、ケーシングの体積に対し1〜50%/分であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 前記ケーシング装置が給気手段を備えた給気口を有し、該給気手段によって供給される給気ガスの相対湿度が0%以上30%未満であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[5] 前記給気ガスの温度が60〜240℃であることを特徴とする[4]に記載のフィルムの製造方法。
[6] 前記給気口に整流手段を備えることを特徴とする[4]または[5]に記載のフィルムの製造方法。
[7] 前記ケーシング装置の少なくとも内壁が断熱部材を含み、前記ケーシング装置内ガスの酸素濃度が0〜15%であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記挟圧装置の第一挟圧面がタッチロールまたは無端状のベルトであり、前記挟圧装置の第二挟圧面がキャストロールであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[9] 前記挟圧装置によって前記溶融物にかかる圧力が20〜120MPaであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[10] 前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面のうち移動速度が速い挟圧面を基準とした第一挟圧面と第二挟圧面との移動速度比が、0.75〜0.99であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[11] 前記挟圧装置の第一挟圧面がタッチロールであり、前記挟圧装置の第二挟圧面がキャストロールであることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[12] 製膜速度が5〜50m/分であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[13] 製膜幅が0.85〜2.5mであることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[14] 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系共重合体樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[15] [1]〜[14]のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
[16] 面状故障が0〜10個/m2であり、下記式(I)および式(II)を満足することを特徴とする[15]に記載のフィルム。
10nm≦Re[0°]≦500nm 式(I)
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
0nm≦γ≦400nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
(式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。)
[17] [15]または[16]に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[18] [15]もしくは[16]に記載のフィルム、または、[17]に記載の偏光板の少なくとも1つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
特に、特開2006−150806号公報の段落〔0058〕によれば、ダイから冷却ロール間において、帯状の樹脂溶融物面に対して垂直方向に排気するとフィルムの厚みムラは著しく多くなり、フィルムの厚みムラ解消の観点からは排気方向を上記帯状の樹脂溶融物の幅方向以外とすることは好ましくないことが示唆されている。しかしながら、本発明の製造方法によれば、驚くべきことにフィルムの厚みムラを顕著に解消することができる。
本明細書において、ケーシング装置の「排気口」とは、連続面からなるケーシング装置の一部を切り欠いて開けた穴の部分のことを言う。前記排気口は、通常排気口接続部材に接続しているが、該排気口接続部材は、本発明における排気口に含まれない。同様に給気口も連続面からなるケーシング装置の一部を切り欠いて開けた穴の部分のことを言い、給気口接続部材は、本発明における給気口に含まれない。また、本明細書における「排気方向」とは、前記排気口におけるケーシング装置内部のガスの進行方向のことを言う。
本発明のフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、面状故障が0〜10個/m2であり、下記(I)および(II)式を満足することを特徴とする。
10nm≦Re[0°]≦500nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
0nm≦γ≦400nm (II)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
(式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。)
以下、本発明のフィルムの詳細を説明する。
本発明のフィルムは、下記(I)および(II)式を満足することを特徴とする。
10nm≦Re[0°]≦500nm 式(I)
0nm≦γ≦400nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
40nm≦Re[0°]≦400nm 式(III)
40nm≦γ≦300nm 式(IV)
さらに好ましくは、下記式(V)および(VI)を満足するものである。
70nm≦Re[0°]≦300nm 式(V)
60nm≦γ≦250nm 式(VI)
本発明のフィルムは、下記数式(A)で定義される厚み方向のレターデーションRthが40〜300nmであることが好ましい。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
本発明のフィルムでは、nyはフィルム幅方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸およびRthのバラツキも同様に測定される。
本発明のフィルムは、厚みが10μm〜90μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜80μmであり、さらに好ましくは25μm〜70μmである。
本発明のフィルムは、厚みムラが2.0μm未満であることが好ましく、より好ましくは1.5μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以下である。
本発明のフィルムは、面状故障が0〜10個/m2であることが好ましく、より好ましくは0〜5個/m2であり、さらに好ましくは0〜3個/m2である。
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>0のフィルムを作成することができる。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン-アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン-アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。また、特開2007−276381号公報の段落[0078]〜[0135]に記載の可塑剤が好ましく用いられる。
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
本発明のフィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイ吐出口から帯状に溶融押し出しする工程と、溶融押出しされた帯状の溶融物(以下、メルトとも言う)を排気手段を有するケーシング装置内を鉛直下方向に通過させて挟圧装置に供給する工程と、ケーシング装置内を通過させた帯状の溶融物を該挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法であって、前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とする。このような方向に開口する排気口を有し、前記排気手段によって前記排気口からケーシング装置に囲われた内部のガスを前記方向に排気することが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。すなわち、このようなケーシング装置を用いて、フィルムを製膜することは従来検討されてこなかった。ここで、「前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有する」ことは、前記排気手段によって前記排気口からケーシング装置に囲われた内部のガスを前記帯状の溶融物に対する法線方向か鉛直上方向の少なくとも一方向の速度成分、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向か鉛直下方向の少なくとも一方向の速度成分を持たせて排気する工程を有することとほぼ同義であるが、前記ケーシング装置と挟圧装置の間に生じる隙間からケーシング装置内部のガスを排気するよりも、ケーシング装置自体に排気口をあけて該排気口からケーシング装置内部のガスを排気することが好ましい。
また、本発明の製造方法では、メルトを第一挟圧面と第二挟圧面とを有する挟圧装置で挟んで固化することにも特徴を有する。このような第一挟圧面と第二挟圧面とを有する挟圧装置を用いたフィルムの製造方法は、傾斜位相差構造を有するフィルムの製造に有利であることが知られている。しかしながら、該製造方法は、1つの冷却ロール上で製膜する場合よりもメルトから出た揮散物が篭り易く、挟圧装置の汚れが発生易いという問題が従来からあった。上記のような強制的な排気手段を有するケーシング装置を用いる本発明の製造方法によれば、挟圧装置の各挟圧面が汚れることを防止することができ、従来の問題を解決することもできる。その結果、本発明ではこのような問題を解決することでロングラン製膜適性をも改善することができる。
なお、本明細書において、溶融押出しされた熱可塑性樹脂を含有する組成物のことをメルトともいう。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、まず、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を帯状に溶融押出しする。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、帯状に溶融押出しされた帯状の溶融物を排気手段を有するケーシング装置を鉛直下方向に通過させて挟圧装置に供給し、ケーシング装置内を通過させた帯状の溶融物を該挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面とフィルム状の溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度と前記第二挟圧面の移動速度の関係に特に制限はないが、第一挟圧面の移動速度が前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることで、せん断応力をかけることができフィルムに偏光性能を付与できるため好ましい。その際、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
本発明の製造方法では、吐出温度(ダイ出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
本発明の製造方法では、製膜幅(溶融物の幅)は0.85〜2.5mであることが、揮散物の排出効果を高める観点から好ましく、1.0〜2.3mであることがより好ましく、1.2〜2.0mであることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、エアーギャップ(ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は200mm以下であることが外部の空気の流れ(上昇気流を含む)の影響を受け難くする観点から、好ましく、より好ましくは、30〜120mm、特に好ましくは、40〜100mmである。
本発明の製造方法は、溶融押出しされた帯状の溶融物を、排気手段を有するケーシング装置内を鉛直下方向に通過させて挟圧装置に供給する。特に、前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とする。
前記排気口の開口方向は前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有する限り特に制限はないが、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向に開口していることが、揮散物の排出効果を高める観点や、幅方向の厚みムラを低減する観点や、ケーシング装置の構成を簡略化する観点からより好ましく、鉛直上方向に開口していることがさらに揮散物の排出効果を高める観点や、さらにメルト流れ方向の厚みムラを低減する観点から最も好ましい。より詳しくは、ケーシングの排気口の開口方向は、前記帯状の溶融物の法線方向を基準として、鉛直下90°〜鉛直上90°であり、鉛直下30°〜鉛直上90°が好ましく、鉛直上0°〜鉛直上90°がより好ましく、鉛直上45°〜鉛直上90°が特に好ましく、鉛直上90°が最も好ましい。
前記ケーシング装置の形状としては本発明の趣旨に反しない限り特に制限はないが、例えば直方体状にすることができる。ケーシング装置の形状を直方体とすると、ケーシング内のガスの流れをメルト近傍において鉛直上方向にしつつ、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口からスムーズに排気できるため好ましい。一方、ケーシング装置は直方体以外の形状、例えば球体状とすると、ケーシング内のガスの流れをメルト近傍において鉛直上方向にしつつ、排気口からの排気方向を前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口からスムーズに排気できるため好ましい。更に、ケーシング装置内部の角部にはガスが滞留し、樹脂劣化物や添加剤の揮発成分が付着やすい場所であるため、ケーシング装置内部は角部が少ない形状とすることが好ましい。
また、前記排気口の数も特に制限はないが、挟圧装置を鉛直下方向に通過しているメルトを基準として、挟圧装置の第一挟圧面側に少なくとも1つ以上、挟圧装置の第二挟圧面側に少なくとも1つ以上設けることがケーシング内におけるガスの循環の関係上好ましい。前記排気口は挟圧装置の第一挟圧面側に二つ以上、挟圧装置の第二挟圧面側に二つ以上設けることがより好ましい。
なお、本明細書中、「ケーシングの体積」とは、ケーシング装置外壁、挟圧装置の挟圧面、ダイ等とによって囲われる空間内の空間の体積のことをいい、ケーシング装置内に囲われているダイの体積部分は、除外することとなる。また、ケーシング装置の体積は、挟圧装置間を鉛直下方向に向けて通過しているメルトを基準として便宜上挟圧装置の第一挟圧面側と第二挟圧面側との2つに分けて考えることができ、それぞれの挟圧面の大きさに応じて、それぞれ挟圧装置の第一挟圧面側と第二挟圧面側のケーシング体積を調節することが好ましい。
前記給気ガスの相対湿度は0〜20%であることが好ましく、0〜10%であることがより好ましく、0〜5%であることが特に好ましい。
前記給気手段としては特に制限はなく、公知の給気手段を用いることができる。
前記給気口の開口方向は特に制限はない。また、前記給気口の数も特に制限はないが、挟圧装置を鉛直下方向に通過している帯状のメルトを基準としてケーシング装置内部を2つに便宜的に分けた場合に、挟圧装置の第一挟圧面側に少なくとも1つ以上、挟圧装置の第二挟圧面側に少なくとも1つ以上設けることがケーシング装置内におけるガスの循環の関係上好ましい。前記給気口は挟圧装置の第一挟圧面側に二つ以上、挟圧装置の第二挟圧面側に二つ以上設けることがより好ましい。
前記給気ガスの温度は110〜220℃であることがより好ましく、150〜230℃であることが特に好ましく、180〜230℃であることが最も好ましい。
前記ケーシング装置内ガスの酸素濃度は0〜10%であることがより好ましく、0〜5%であることが特に好ましく、0〜3%であることが最も好ましい。
さらに、本発明のケーシングを用いると、帯状の溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、挟圧装置間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、帯状のメルトの温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
図1は、本発明に用いられるケーシング装置の構成の一例を示している。ダイ20の吐出口とチルロール30の表面およびタッチロール31の表面との間には、フィルムを囲うケーシングが設けられている。ダイ20から吐出された帯状のメルトを覆うケーシング40には排気口42が設けられており、さらに給気口43が設けられていることが好ましい。また、排気口42には排気口接続部材42aが接続しており、排気装置(排気ファンなど)につながる。排気口接続部材42aと排気装置の間は、ダクトなどを介して接続されていてもよい。同様に給気口43には給気口接続部材43aが接続しており、給気装置につながる。給気口接続部材43aと給気装置の間は、他の配管を介して接続されていてもよい。
ケーシング40は、チルロール30とタッチロール31の両端部よりも内側に設けられていることが好ましく、且つケーシング40と両ロールの表面との間に隙間を介して設けられていることが好ましい。ケーシング40の横幅を冷却ロールの両端部よりも内側とすることで、ダイ20の放熱による上昇気流を効率的に遮断し、かつ、ケーシング40内の樹脂揮発分の濃度を低くすることができる。ケーシング40はダイ20に直接固定されてもよいし、図示しない支持部材によって支持固定されてもよい。ダイ20とケーシング40の隙間は、設けてもよいが、ケーシング外部の温度の低い空気とケーシング内部の樹脂揮発分を含んだ温度の高い空気が混ざり合うことによる樹脂揮発分の結露、及び、それに伴う設備の汚染、及び、作業環境の悪化を生じさせない程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。ロールの傷付き防止の観点から、ロールと接近するケーシング部には緩衝材を設けることが好ましい。
ダイ20の吐出口は、タッチロールの頂点P、及びチルロールの頂点Qのいずれよりも低い位置に設けられることが好ましい。これにより、ダイ20の吐出口がチルロール30とタッチロール31との間で外部から遮蔽されるので、ダイ20から帯状に吐出されるメルト50が上昇気流等の影響を受け難くすることができる。
ダイ20の吐出口からチルロール30の表面およびタッチロール31の表面との間のエアギャップLは、外部の空気の流れ(上昇気流を含む)の影響を受け難くする上で、200mm以下にすることが好ましい。
前記整流装置付き熱風発生装置62は送風機、電気式ヒーター、空気中の塵埃を取り除くフィルターなどから構成されることが好ましい。前記整流装置付き熱風発生装置62のヒーター能力はケーシング40のサイズ、及びダクトの長さによって異なるが、給気口43における空気温度をダイの設定温度と同等まで加熱できる出力があることが望ましい。また、整流装置付き熱風発生装置62の送風機は、フィルターの圧損、ダクト長さによって異なるが、約1分間でケーシング40内の空気の半分を置き換えることが出来る能力を有することが好ましい。
また、給気口43には給気口接続部材が接続されており、該給気口接続部材と整流装置付き熱風発生装置62の間には、給気ガス用の風量、温度、湿度の測定装置63が設置されている。排気口42には排気口接続部材が接続されており、該排気口接続部材と排気ファン65の間には、排気ガス用の風量、温度の測定装置64が設置されている。
前記排気ファン65によって排気口42から排気ガスを排気する際、前記帯状のメルト50に対する法線方向か鉛直上方向の少なくとも一方向の速度成分を持たせて排気できるように、排気ファン65と排気口42は接続される。特に、排気口42の鉛直上方向の延長線上に排気ファン65がダクトを介して接続されていることが好ましい。
本発明の製造方法では、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する際、挟圧装置間に圧力を20〜120MPaかけることで、挟圧装置の挟圧面への汚れ蓄積を抑制でき、よりロングラン製膜適性が得られる観点から好ましい。好ましい圧力は25〜110MPaであり、より好ましい圧力は30〜100MPaであり、最も好ましい圧力は30MPa〜90MPaである。
また、挟圧装置間に圧力を20〜120MPaかけることが傾斜位相差構造の光学特性を有するフィルムを作製する観点からも好ましい。
本発明の製造方法では、下記式(1)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.75〜0.99とすることが、好ましい。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (1)
このように前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度に差をつけることによりケーシング装置内に循環気流を生じ易くし、吐出されたメルトからの揮散物の排出効果を高めることができる。さらに、製膜時に挟圧面に移動速度差を与えると、ここで発生するズリ(せん断応力)によって挟圧面表面の分解物を除去し、蓄積するのを防ぐことができる。これらの結果、長尺製膜した時に挟圧面表面に蓄積した分解物が挟圧面からフィルムへ転写されることを防ぐことができ、ロングラン製膜適性を向上することができる。また、同時に、挟圧面表面に蓄積した分解物のフィルムへの転写を防ぐことで、フィルムの厚みムラを低減できる。
前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比は、0.75〜0.98とすることがより好ましい。
また、挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.75以上であれば、得られるフィルムのγを大きくすることができ、前記式(II)を満たすことができる。
本発明の製造方法では、ケーシング装置内に生じる気流の循環速度を向上させることでメルトからの揮散物の排出効果を高める観点から、製膜(ライン)速度が5〜50m/分であることが好ましい。前記製膜速度は、10〜40m/分であることがより好ましく、10〜30m/分であることが特に好ましい。さらに、製膜速度が速くなるとエアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記製膜速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、前記挟圧装置の第一挟圧面がタッチロールであり、前記挟圧装置の第二挟圧面がキャストロールである態様、すなわち2つのロール間にメルトを通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
また、ロール圧力を20〜120MPaかけることが傾斜位相差構造の光学特性を有するフィルムを作製する観点からも好ましい。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、前記挟圧装置の第一挟圧面が無端状のベルトであり、前記挟圧装置の第二挟圧面がキャストロールであるような態様、すなわち少なくとも1つのロールとベルト(例えば、タッチベルトおよびチルロール)間に帯状のメルトを通過させることも好ましい。以下、少なくとも1つのロールとベルトを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明するが、該ロールの好ましい範囲については、前記2つのロールを用いたキャストの場合におけるロールの好ましい範囲と同様である。
また、前記圧力を20〜120MPaかけることが傾斜位相差構造の光学特性を有するフィルムを作製する観点からも好ましい。
前記ベルトについては、例えば特開平2007−237495号公報記載のものを利用できる。
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
延伸温度は、Tg−30℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−20℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
環状オレフィン共重合体として、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は136℃であった。
非晶性環状オレフィンとして日本ゼオン(株)製の「ゼオノア1420R」ペレットを用いた。なお、「ゼオノア1420R」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は138℃であった。
ポリカーボネートとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)を特開2006−348123号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAPの組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.60、全アシル置換度2.75、数平均重合度DPn=118で、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は137℃であった。
アクリル系樹脂として、スチレン-アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ(株)製の「デルペット980N」のペレットを用いた。なお、「デルペット980N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は123℃であった。
図1のケーシング装置を用い、溶融製膜工程において、ダイと、タッチロール方式の冷却ロールとの間のエアギャップを該ケーシングにより遮蔽し、さらにケーシング内の排気を行うことによって、製造されたフィルムの厚みムラ、面状、および、長時間での製膜適性がどのように改善されるかを検討した。
環状オレフィン共重合体TOPAS#6013のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥した。安定剤IRGANOX−1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を樹脂100重量部に対して1.0重量部を添加し、1軸混練押出し機を用い265℃で溶融押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、ろ過精度5μmを有するリーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。
この後、キャストロール上にメルト(溶融樹脂)を帯状に鉛直下向きに押出し、ケーシング内を通過させた。この時、最上流側のキャストロール(チルロール)に、下記表1に記載の押圧体(本実施例ではタッチロール)を下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、タッチロールを接触させた。これらのロールを用い、タッチロールおよびチルロール間の周速比を下記表1に記載の条件に設定して製膜した。なお、タッチロールの温度はTg−10℃、チルロールの温度はTg−5℃とし、ダイとメルト着地点の距離を100mmと設定した。
ケーシングのロール上部の水平面に排気口を設け、ケーシングの鉛直面(ケーシング側部の壁面)に給気口を設け、ケーシング内部の換気が行える構造とし、すなわち、排気口を給気口よりも上部に設置した。本実施例においては給気口の開口方向は鉛直上方向である。給気口はケーシング内部に給気するガスの温度・湿度・風量を調節するための整流装置付き熱風発生装置とつながっており、下記表1に記載の湿度および温度のガスを給気した。また、整流装置により、安定した給気が行える構造とした。さらに、ケーシング内部にメルト近傍に給気ガスが供給されるように導風板を設置した。排気口はフレキシブルダクトにより排気ファンへとつながり、排ガス処理装置へケーシング内部の空気を送る構造となっている。排気ガスは鉛直上方向90°(吐出帯状メルトの法線方向となす角度が90°)に排気された。この際、排気口から排気ファンによって排気されるガスの量(排気量)が下記表1に記載の排気量となるように排気を行った。
これら、給気口、排気口は冷却ロール側とタッチロール側の両方に設置され、それぞれ独立な排気ファン、排ガス処理装置、熱風発生装置を有している。
また、給気の雰囲気温度が200℃、湿度が0%であり、ケーシング内の酸素濃度は、下記表1に記載の値であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各15cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅は2mとし、製膜速度20m/分(チルロール速度)で巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは60μmとし、実施例1のフィルムを作製した。
得られた実施例1のフィルムの光学特性を表1に記載した。なお、本発明のフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向である。
給気口及び排気口に熱電対を差込み、給気ガス温度および排気ガス温度の測定を行った。その結果を下記表1に記載した。
給気ダクト及び排気ダクトに熱線式風速計(日本カノマックス(株)製姉もマスター風速計、本体MODEL6162、プローブMODEL0204)を差込み、給気ガスの風速と排気ガスの風速を測定した。各風速とダクト断面積との積を計算し、給気ガス量及び排気ガス量とした。なお、本実施例を含む各実施例および比較例において、給気ガス量と排気ガス量は同一であり、これらを排気量として下記表1に記載した。
フィルムの厚みは、接触式膜厚測定計(アンリツ製)を用いて行い、フィルムの厚みムラを調べるために、フィルムの幅方向に20mmピッチ全点の測定を、押出方向に100mmピッチで5回繰り返し、全測定値の最大値と最小値の差を厚みバラツキとした。結果は表1および表2に記載した。
巻き取ったフィルムを全幅で長手方向に0.5mの長さに切り出し、黒塗りの平面台に置き、反射光で直径50μmを超えるロール汚れの転写異物、傷状欠陥、異物欠陥など面状故障を観察し、不良回数をカウントした。フィルム評価単位面積の面状故障数を換算した。なお、この作業はフィルム流れ方向の任意5箇所にフィルムをサンプリングし、5回行い平均値を求め、結果を表1および表2に記載した。
24時間製膜を続けた後、チルロール、タッチロール、タッチベルトの表面汚れ、及び得られたフィルムの表面汚れを複数人で目視評価し、つぎのレベルにランク分けして、結果を表1および表2に記載した。
○:汚れが認められない
△:汚れが部分的に僅かに認められる
×:汚れがひどく清掃が必要な場合
なお、上記ランク○〜△は生産が続けられるレベルである。×は生産を中断してロールを清掃するレベルである。
用いた樹脂、ケーシングの各パラメーター、フィルム製膜工程条件を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。各実施例および比較例のフィルム特性およびロングラン製膜適性を下記表1および表2に示す。ここで、比較例1では、図4のケーシングを用いて鉛直下向きに帯状に流れている樹脂メルトの幅方向、すなわちロール軸に平行な方向に(図4ではy−z面に向けて水平方向)に排気した。すなわち、図4の給気口43からケーシング内に給気されたガスを、排気口42から排気した。比較例2および4では、ケーシングに排気手段を有する排気口を設けず、給気・排気を行わずに製膜した。比較例3では、特開2006−15086号公報の実施例2に従い、流れている樹脂メルトの幅方向に排気した。
なお、製膜前の溶融に際し、環状オレフィン樹脂は265℃、ポリカーボネート樹脂は275℃、アクリル樹脂は265℃、セルロースアシレート樹脂は240℃でそれぞれ溶融した。また、表1に記載の「鉛直上45°」排気方向は、吐出された帯状のメルトの法線方向となす角度が上向きの45°であることを表す。表1に記載の「鉛直上0°」の排気方向は、吐出された帯状のメルトの法線方向となす角度が0°であることを表す。表1に記載の「鉛直下30°」排気方向は、吐出された帯状のメルトの法線方向となす角度が下向きの30°であることを表す。
一方、比較例3は、特開2006−15086号公報の実施例2に従い排気方向が帯状の溶融物の幅方向に通過させる方向となっており給気手段がないケーシングを用いたものであり、得られたフィルムは厚みムラが大きく、面状故障が多く、ロングラン製膜特性も悪かった。比較例1は、図4の排気口および給気口から帯状の溶融物の幅方向に排気を行い、さらにタッチロール製膜を行ったものであるが、得られたフィルムは厚みムラが大きく、面状故障が多く、ロングラン製膜特性も悪かった。比較例2および4は、ケーシング装置で排気を行わなかったものであり、得られたフィルムは厚みムラが大きく、面状故障が多く、ロングラン製膜特性も悪かった。
以上より、本発明の製造方法によれば、特定のケーシング装置を用いることで、厚みムラが小さく、面状故障が少ないフィルムを、ロングラン製膜特性よく製造できることがわかった。
また、実施例1〜34より、本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。
(TNモード用偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%、KI濃度3質量%のヨウ素水溶液(30℃)中に60秒浸漬して染色し、次にホウ酸濃度4質量%、KI濃度3.5質量%の水溶液(55℃)中に60秒浸漬している間に元の長さの5.5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
これとは別に、セルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックT60)を濃度2.0モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬ケン化処理した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流し、105℃で乾燥した。
実施例1および比較例3のフィルム表面にコロナ放電処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、偏光子の片側に貼り付けた。また、上記ケン化処理したフジタックT60を、ポリビニルアルコール系接着剤を用い、偏光子の反対側に貼り付け、偏光板を得た。
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC−20C1−S 、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに本発明の実施例1のフィルムを用いて作製した偏光板を、本発明に作製したフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置した。作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D 、ELDIM社製)を用いて、白黒コントラスト比が10を超える視野角特性(コントラスト視野角特性)を評価し、上下左右視野角が全て40°以上であることを確認した。
一方、前記比較例3のフィルムを用いて作製した偏光板を、比較例3のフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置した。白黒コントラスト比が10を超える視野角特性を測定したところ、上下左右視野角40°未満の視野角方位が存在することを確認した。
このように、本発明のフィルムを用いると、TN液晶表示装置に組み込んだ場合、視野角補償を行うことができる。
(半透過型ECBモード用偏光板の作製)
作成した実施例1および比較例3のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを用いて、図5に示すような配置で、60μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、本発明1または比較例1のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1のフィルムを用いた偏光板PL1および比較例3のフィルムを用いたPL2をそれぞれ2枚ずつ作製した。
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した2種の偏光板を、図5に示すように配置した。偏光板P1およびP2中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
このように、本発明のフィルムを用いると、液晶表示装置に組み込んだ場合、大きな視野角補償を行うことができる。
21 リップ調整ボルト
30 チルロール
30a チルロール軸
31 タッチロール
31a タッチロール軸
40 ケーシング
42 排気口
42a 排気口接続部材
43 給気口
43a 給気口接続部材
50 メルト(帯状の溶融物)
61 窒素発生装置
62 整流装置付き熱風発生装置
63 給気ガス用の風量、温度、湿度の測定装置
64 排気ガス用の風量、温度の測定装置
65 排気ファン
66 排気処理装置
W ケーシング幅
Wd ダイ幅
Dt タッチロール直径
Dc チルロール直径
P タッチロールの頂点
Q チルロールの頂点
L エアーギャップ
Claims (18)
- 熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイ吐出口から帯状に溶融押し出しする工程と、溶融押出しされた帯状の溶融物を排気手段を有するケーシング装置内を鉛直下方向に通過させて挟圧装置に供給する工程と、ケーシング装置内を通過させた帯状の溶融物を該挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法であって、
前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向、または、前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直下方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とするフィルムの製造方法。 - 前記ケーシング装置が前記帯状の溶融物に対する法線方向から鉛直上方向までの間のいずれかの方向に開口する排気口を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
- 前記ケーシング装置の排気手段による排気量が、ケーシングの体積に対し1〜50%/分であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
- 前記ケーシング装置が給気手段を備えた給気口を有し、該給気手段によって供給される給気ガスの相対湿度が0%以上30%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記給気ガスの温度が60〜240℃であることを特徴とする請求項4に記載のフィルムの製造方法。
- 前記給気口に整流手段を備えることを特徴とする請求項4または5に記載のフィルムの製造方法。
- 前記ケーシング装置の少なくとも内壁が断熱部材を含み、前記ケーシング装置内ガスの酸素濃度が0〜15%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧装置の第一挟圧面がタッチロールまたは無端状のベルトであり、前記挟圧装置の第二挟圧面がキャストロールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧装置によって前記溶融物にかかる圧力が20〜120MPaであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面のうち移動速度が速い挟圧面を基準とした第一挟圧面と第二挟圧面との移動速度比が、0.75〜0.99であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧装置の第一挟圧面がタッチロールであり、前記挟圧装置の第二挟圧面がキャストロールであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 製膜速度が5〜50m/分であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 製膜幅が0.85〜2.5mであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系共重合体樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
- 面状故障が0〜10個/m2であり、下記式(I)および式(II)を満足することを特徴とする請求項15に記載のフィルム。
10nm≦Re[0°]≦500nm 式(I)
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおける正面方向のレターデーションを表す。)
0nm≦γ≦400nm 式(II)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II’)
(式(II)および(II’)中、Re[+40°]は該法線に対して+40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して−40°傾いた方向から測定した正面方向のレターデーションを表す。ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である。) - 請求項15または16に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
- 請求項15もしくは16に記載のフィルム、または、請求項17に記載の偏光板の少なくとも1つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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