JP2010145536A - 静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ並びに画像形成装置 - Google Patents

静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ並びに画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】連続して使用した場合も、トナーの変形が抑制され、添加剤を併用する場合には、添加剤がトナー表面樹脂によく埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が長期に亘り維持されるトナー、及び、その製造方法、該トナーを用いた静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ並びに画像形成装置を提供することにある。を提供する。
【解決手段】樹脂と、着色剤とを含むトナー粒子を含有し、且つ、該トナー粒子をアルコールと水の体積比率1:1の混合溶液に溶解した際の溶解分率が、トナー粒子の全質量に対して0.5%以上5.0%以下である静電荷像現像用トナーである。
【選択図】なし

Description

本発明は、静電荷像現像用トナー及びその製造方法、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ並びに画像形成装置に関する。
いわゆるゼログラフィー方式の画像形成装置は、電子写真感光体(以下、場合により「感光体」という)、帯電装置、露光装置、現像装置及び転写装置を備え、これらを用いた電子写真プロセスにより画像形成が行われる。近年、ゼログラフィー方式の画像形成装置は、各部材、システムの技術進展により、一層の高速化、高画質化、長寿命化が図られている。また、トナーなどの消耗品に対しても長寿命、高機能化が求められる一方で、環境負荷の低い構造、材料などより構成されるものが求められてきている。
環境負荷の少ない材料としては、例えば、生分解性の高い材料が挙げられる。特に、近年、高機能化を達成するために、湿式製法によりトナーを作製する検討が盛んに行われているが、作製時の廃水などに流出する材料の環境への影響を低減すべく、廃水などに流出する量の少ない材料や環境負荷の少ない安全な材料が特に求められている。
これらの分解性の材料検討は、様々な検討で用いられてきている(特許文献1、2、及び3参照)。特許文献1では帯電制御剤に硫酸エステル型の界面活性剤を含有させるものである。特許文献2では低融点の生分解性樹脂を含有させるものである。特許文献3も分解性の新規樹脂よりなるトナーである。また、保護層を有する電子写真用感光体の検討によりいわゆる長寿命化を達成することで環境負荷を低減する試みも盛んである(特許文献4参照)。
また、廃トナー量削減の観点から、回収したトナーを再利用する、リサイクルシステムなどの検討も盛んである。具体的には、トナー母粒子を熱風処理する方法(特許文献7参照)、樹脂のTg(ガラス転移温度やトナー離型剤改良する検討(特許文献5参照)、添加剤動摩擦係数を改良する検討(特許文献6参照)、樹脂分子量や水分量を改良する検討(特許文献9参照)などの試みが行なわれている。
特開2000−347461号公報 特開2007−114607号公報 特開2005−154698号公報 特開平9−68826号公報 特開平7−84406号公報 特開平11−95477号公報 特開2000−181118号公報 特開2000−181119号公報 特開2001−147551号公報
本発明の目的は、連続して使用した場合も、本構成を有さない場合に比較して、トナーの変形、表面磨耗や破壊などの変化が抑制され、添加剤を併用する場合には、添加剤がトナー表面樹脂に適度に埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が維持されるトナー、さらには、その製造方法、該トナーを用いた静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ並びに画像形成装置を提供することにある。
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
樹脂と、着色剤とを含有し、且つ、アルコールと水の体積比率1:1の混合溶液に溶解した際の溶解分率が、トナーの全質量に対して0.5%以上5.0%以下である静電荷像現像用トナーである。
請求項2に係る発明は、
前記樹脂として、架橋ポリエステル樹脂及び非架橋ポリエステル樹脂を含有し、角速度6.28rad、毎分1℃の温度変化条件のもと動的粘弾測定を行った際、30℃から170℃までの昇温過程の貯蔵弾性率G’を測定した場合の、60℃から140℃までの昇温過程のG’変化幅が10以上10Pa以下であり、且つ、150℃から170℃までの常温過程のG’変化幅が10Pa以下ある請求項1記載の静電荷像現像用トナーである。
請求項3に係る発明は、
前記トナーにおける樹脂中に、生分解性の分散剤を含有する求項1又は請求項2記載の静電荷像現像用トナーである。
請求項4に係る発明は、
前記生分解性の分散剤が、前記トナーの製造工程に由来する請求項3記載の静電荷像現像用トナーである。
請求項5に係る発明は、
少なくとも一方に生分解性の分散剤を含む樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液と着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液とを混合し、樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させ、加熱して融合・合一させて得られた請求項3又は請求項4記載の静電荷像現像用トナーである。
請求項6に係る発明は、
添加剤として2種類以上の酸化物粒子を含有し、トナー表面をX線光電子分光装置により測定した時の、トナー表面における酸化物粒子の被覆率が50%以上95%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項記載の静電荷像現像用トナーである。
請求項7に係る発明は、
前記2種類以上の酸化物粒子の最大硬度と最小硬度の硬度差が4以上8以
下である請求項6記載の静電荷像現像用トナーである。
請求項8に係る発明は、
樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液を調整する樹脂粒子分散液調整工程と、
着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液を調整する着色剤粒子分散液調整工程と、
前記樹脂粒子分散液及び前記着色剤粒子分散液を混合し、前記樹脂粒子及び前記着色剤粒子を含む混合溶液を調整する混合溶液調整工程と、
前記樹脂粒子及び前記着色剤粒子が凝集した凝集粒子を調整する凝集粒子調整工程と、
前記凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程と、
前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程と、を含み、
前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程、前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程の少なくても一つの工程が、生分解性の分散剤を添加する工程と、塩基性化合物を添加することで液のpHを7以上11以下の範囲に調整する工程とを含む、静電荷像現像用トナーの製造方法である。
請求項9に係る発明は、
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む、静電荷像現像用現像剤である。
請求項10に係る発明は、
現像手段を備えた画像形成装置に脱着され、前記現像手段に供給するためのトナーが収納され、前記トナーは、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーであるトナーカートリッジである。
請求項11に係る発明は、
現像保持体を備え、請求項9に記載の静電荷像現像用現像剤が収容されたプロセスカートリッジである。
請求項12に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体上に形成された前記トナー像を記録媒体表面に転写する転写手段と、
前記潜像保持体の表面上に残留した残留トナーを除去するためのトナー除去手段と、を有し、
前記現像剤は、請求項9に記載の静電荷像現像用現像剤である画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、
前記トナー除去手段により除去された前記残留トナーを回収し、回収された前記残留トナーを前記現像手段に供給する残留トナー回収供給手段をさらに含む、請求項12に記載の画像形成装置である。
請求項14に係る発明は、
前記潜像保持体の最表面を構成する層は、三次元架橋構造を有する樹脂を含む、請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置である。
本発明の請求項1に係る発明によれば、エタノール/水混合溶液に溶解した場合の溶解度が範囲内の場合は、範囲外のものに比較して、トナー表面に溶解できる柔軟な層、あるいは架橋度合いの低い層を適切量有していることから、トナーの変形が抑制され、さらに表面磨耗や破壊などトナー表面性の変化が抑制される。添加剤を併用する場合には、添加剤がトナー表面樹脂に適度に埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が維持されるトナーが提供される。
請求項2に係る発明によれば、樹脂として架橋系及び非架橋系のポリエステル樹脂の双方を含有しないトナーに比較して、トナー内部は十分強靭ながら、表面は柔軟に維持されるため、トナー表面に存在する添加剤粒子が適度に埋め込まれ表面を移動しにくくなることから、添加剤の脱落が抑制され、添加剤の効果をより長期間維持することができる。また、動的粘弾性を本態様の範囲内に制御しない場合と比較して、粒子間表面層が柔軟に制御され、トナー粒子の形状バラツキが抑制される。
請求項3に係る発明によれば、樹脂中に分散剤を含有しない場合に比較し、トナー表面に溶解できる柔軟な層が形成され、添加剤がトナー表面によく埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が維持される。
請求項4に係る発明によれば、生分解性の分散剤を製造工程で使用しない場合に比較して、トナー表面に溶解できる柔軟な層が形成され、添加剤がトナー表面によく埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が維持される。
請求項5に係る発明によれば、生分解性の分散剤を含まない製造方法、及び、樹脂粒子と着色剤粒子とを融合、合一させる製造方法を経ない場合に比較して、トナー表面に溶解できる柔軟な層が形成され、添加剤がトナー表面によく埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が維持される。
請求項6に係る発明によれば、2種類以上の酸化物粒子を含まない場合に比較して、酸化物粒子がトナー粒子表面に埋め込まれて脱落が抑制され、添加剤の効果が長期間に亘り維持される。また、酸化物粒子のトナー粒子表面における被覆率を範囲内に制御しない場合に比較して、トナー粒子間の添加剤の存在量のバラツキが抑制された粒子が多く得られる。
請求項7に係る発明によれば、2種以上の酸化物粒子の硬度差を前記範囲内に制御しない場合に比較して、硬度の高い粒子がトナー粒子表面に適度に埋め込まれて脱落が抑制され、且つ、硬度の低い粒子がよりバラツキが抑制されて存在できるために、添加剤の効果が向上し、粒子のバラツキが一層抑制される。
請求項8に係る発明によれば、生分解性の分散剤を添加する工程、あるいは、塩基性化合物によりpH7以上11以下の範囲に調整する工程を含まない場合に比較して、トナー粒子の表面に接するように柔軟性の高い層を形成することができ、トナー表面に存在する添加剤粒子が適度に埋め込まれ脱落しにくくなることから、添加剤の効果がより長期間持続される。
請求項9に係る発明によれば、トナー粒子のアルコールと水との混合液への溶解量が範囲外の場合に比較して、静電荷像現像用現像剤中のトナー粒子形状や添加剤の効果がより長期間持続する。
請求項10に係る発明によれば、トナー粒子のアルコールと水との混合液への溶解量が範囲外の場合に比較して、静電荷像現像用現像剤中のトナー粒子形状や添加剤の効果がより長期間持続する。
請求項11に係る発明によれば、トナー粒子のアルコールと水との混合液への溶解量が範囲外の場合に比較して、トナー粒子形状や添加剤の効果がより長期間持続する。
請求項12に係る発明によれば、トナー粒子のアルコールと水との混合液への溶解量が範囲外の場合に比較して、トナー粒子形状や添加剤の効果が持続し、長期に亘って高品質の画像が形成される。
請求項13に係る発明によれば、残留トナー回収供給手段を含んだ構成であっても、トナー粒子形状や添加剤の効果が持続し、長期に亘って高品質の画像が形成される。
請求項14に係る発明によれば、表面高度の高い潜像保持体を用いても、トナー粒子形状や添加剤の効果が持続し、長期に亘って高品質の画像が形成される。
以下、本発明について詳細に説明する。
<静電荷像潜像用トナー>
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」という場合がある)におけるトナー粒子は、結着樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて離型剤等のその他の添加剤を含んでもよい。このトナー粒子をアルコールと水の体積比率1:1の混合溶液(以下、「アルコール/水混合溶液」と称することがある)に溶解した際、その溶解分率は、トナー粒子の全質量に対して0.5%以上5.0%以下となる。
本実施形態において、アルコールと水の体積比率1:1の混合溶液に溶解した際の溶解分率が上記範囲であるトナー粒子とすることは、トナー粒子表面に柔軟な層が形成されており、該柔軟な層は表面に連続して薄く、厚みのバラツキが少なく、かつ、トナー粒子の内部が十分な弾性率を有することを裏付けるものであり、トナー表面に添加した外添剤などの添加剤のうち、硬度の高い粒子は柔軟な層に適当に埋没して脱落が抑制されると共に、他の添加剤の偏在を抑制する。
特にトナーリサイクルシステムで繰り返し使用した場合や高硬度の表面層を有する感光体表面を高圧力でクリーニングする場合でも、トナー粒子の破壊や変形の発生が抑制され、ブレード磨耗を抑制する。また、トナーが定着する場合には、表面の柔軟な層から溶融するために高弾性トナーであっても用紙への接着性が十分得られる。
また、トナー粒子表面に添加した添加剤の移動や脱落がなく、添加剤がトナー粒子表面に、該柔軟な層を有しない場合に比較して、長期に亘り脱落することなく安定に維持されることから、過酷な環境で使用したトナーとストレスを受けていないトナーとの相互帯電(異常帯電ともいう)が起こりにくく、このトナー粒子を含む静電荷像現像剤を用いて画像形成した場合、画像濃度が安定する。この効果は、特に、濃度制御の難しい厚紙、凹凸の大きい用紙などで著しい。
トナー粒子の、アルコールと水の体積比率1:1の混合溶液に溶解した際の溶解分率を0.5%以上5.0%以下となるように制御できる理由は定かではないが、以下のように推測される。
溶解分率が上記特定の範囲であるためには、トナー粒子表面におけるイオン架橋度合い、化学結合度合いの精密な制御が影響しているものと考えられる。このように、トナー粒子全体のうち、0.5%以上5.0%以下の溶解分率とは、粒子表面における上記重量分が溶解可能であり、粒子を構成する残余の樹脂成分などは前記混合液に対して安定であることを示している。
前記溶解分率を達成する一つの態様としては、例えば、トナー粒子の調整に生分解性の分散剤を用いる場合がある。この態様によれば、トナー粒子を構成する樹脂の表面と接する領域に生分解性の分散剤が存在することになり、該態様をとることで、トナー粒子内部のイオン架橋を低下させず、樹脂表面及びそれに接する領域に存在する分散剤自身も分解することから、この分散剤の作用は粒子内部まで浸透することがない。従って、トナー粒子の表面及びそれに接する領域に柔軟な層が存在することになる。
更にNaOH、KOH、Ca(OH)、アンモニア、アミンなどをはじめとする塩基性化合物と生分解性の分散剤とを併用することで、該分散剤が各トナー粒子に均一に作用して、トナー粒子間の溶解分率のバラツキが抑制されるものと推測される。
このとき、添加された生分解性分散剤はトナーの製造過程において分解するため、製造されたトナー中に残存する生分解性分散剤の量は少ない。よって、他の分散剤を用いた場合のように分散剤がトナー中に多く残存する場合に比べ、トナー中の不純物が少ないことから、トナーの耐久性、電気特性、形成される画像の画質等が良好となると推測される。また逆に、他の分散剤を用いる場合に比べて多量の分散剤を添加しても、トナー中に残存する分散剤(すなわち不純物)の量が少ないため、上記トナーの特性や画質が良好となると推測される。
また、生分解性分散剤がトナー製造過程において分解するため、トナーの製造により発生した廃水には、生分解性分散剤が分解した後に生成する分解生成物が多く含まれ、生分解性分散剤そのものの含有量は少ないため、廃水処理コストが低減すると推測される。
また、環境負荷低減から、トナーを繰り返し使用するリサイクルシステムや長寿命の電子写真感光体として表面の硬度を上げた3次元架橋構造を有する感光体などを有するシステムではトナー粒子に対するストレスが大きくなる。該システムに対応するためには、トナー粒子として耐久性を向上させた弾性率の高いものが用いられるが、トナー粒子に与えられるストレスにより、弾性率の高いトナー粒子表面に添加される添加剤が偏在したり、圧力により脱離し易くなる。これに対して、本態様のトナー粒子では、表面の柔軟な層に添加剤が適度に埋没し、偏在や脱離を抑制することから長期に渡る過酷な環境でトナー粒子にストレスが与えられた場合でも粒子変化が抑制され、添加剤の効果も持続する。
さらなる態様においては、トナー粒子に添加する添加剤として互いに硬度の異なる2種類以上の酸化物粒子を用いるが、この態様では、高硬度の粒子がトナー粒子表面の柔軟な層に適度に埋没し固定化されることで、トナー表面を保護するとともに、より柔軟な他の添加剤の分散状態をバラツキのない状態に制御する。この2種以上の酸化物粒子の硬度差を範囲内に規定することで、感光体表面をクリーニングする際に感光体とブレード双方を保護しつつ、研磨する作用を兼ね備えるものとなる。
以下、本態様の構成について説明する。
−アルコールと水の体積比率1:1の混合溶液(アルコール/水混合溶液)−
本実施形態においてアルコール/水混合溶液は、アルコールと水とを体積比率1/1で混合したものを用いる。アルコール量が多い場合は、トナー粒子内部にまで溶液が浸透し、表面及びそこに接する領域における比較が困難になる、また、水の量が多い場合はトナー表面極性など濡れ性が影響してしまうことから比較が困難になる。ここでいうアルコールとは比較的アルキル鎖長の短いアルコール、より具体的には、炭素数5程度までのアルコール、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、直鎖又は分岐鎖を有するブチルアルコール、直鎖又は分岐鎖を有するプロピルアルコールなどが挙げられ、トナー表面を正確に抽出するという測定精度の観点からは、メチルアルコール、エチルアルコールなどが好適である。
−アルコール/水混合溶液に溶解した際の溶解分率−
本実施形態においてアルコール/水混合溶液に溶解した際の溶解分率とは、上記混合溶液を調整後、トナー粒子を10wt%量添加し、室温(25℃)にてボールミルなどの回転装置により10分間から30分間混合攪拌した後、固液分離を行なう。液中の溶解分を風乾して重量を測定しトナー投入量に対する比率を計算する。
溶解分率が上記範囲を下回る場合は、トナー粒子全体が硬い場合、あるいは内部は柔軟で表面は固い、即ち表面に混合溶液に可溶な、柔軟な層が少ないことが推測される。上記範囲を上回る場合は、トナー粒子全体が柔軟な場合、或いは、表面の柔軟な層が目的とする厚みよりも厚い場合が推測される。
本実施態様の物性値で規定される、表面にアルコール/水混合溶液で溶解する柔軟な層を規定された量で有するトナー粒子を得る方法には特に制限はなく、例えば、トナー粒子を調整する工程において、前述した生分解性分散剤を用いる方法、粒子の中心部に比較して表面及びそれに接する領域を構成する樹脂を変更して、表面の架橋密度、分子量、ガラス転移温度を低くする方法、或いは、トナー表面を高アルカリ洗浄水などで洗浄して、該洗浄水が接する粒子表面樹脂の架橋密度などを低下させる方法などがある。
以下、本実施形態のトナー粒子を得る代表的な方法である、トナー粒子の調整に生分解性分散剤を用いる方法を例に挙げて詳細を説明する。
−生分解性分散剤及びその添加方法−
本実施形態において生分解性分散剤とは、官能基の結合が切断されて、その切断部位に水分子がHとOHに分かれて付加する反応がおきる加水分解、微生物など生物学的な反応により二酸化炭素や水などに変換される生分解などを起こすものを指す。
本実施形態に用いうる生分解性分散剤及び製造方法については、以下に詳述する。
本実施形態のトナー粒子は、好ましくは、樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液を調整する樹脂粒子分散液調整工程と、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液を調整する着色剤粒子分散液調整工程と、前記樹脂粒子分散液及び前記着色剤粒子分散液を混合し、前記樹脂粒子及び前記着色剤粒子を含む混合溶液を調整する混合溶液調整工程と、前記樹脂粒子及び前記着色剤粒子が凝集した凝集粒子を調整する凝集粒子調整工程と、前記凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程と、前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程と、を含む製造方法により得られるが、ここで、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程、前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程の少なくても一つの工程として、生分解性分散剤を添加する工程と、塩基性化合物を添加することで液のpHを7以上11以下の範囲に調整する工程とを含むことが重要である。
生分解性分散剤の投入方法、即ち、生分解性分散剤を添加する工程を実施する態様としては、トナー粒子全体の弾性率が低下する、樹脂ガラス転移温度以上に加熱する融合・合一工程で投入することが好ましいが、融合・合一後ガラス転移温度以下まで冷却する工程で添加する場合も用いることができる。
生分解性分散剤を添加する際は、分散剤をバラツキなく作用させるため水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミンなど塩基性化合物で系内のpHを7以上11以下の範囲に調整しながら行なうことが好ましく、系内のpHを上記範囲に調整することで生分解性分散剤の溶解度が向上することから、トナー粒子間にバラツキなく、いずれのトナー粒子にも均一に生分解性分散剤を作用させることが可能となる。
上記工程が生分解性分散剤を添加する工程を含むことにより、トナー表面に厚みのバラツキのない柔軟な層が形成される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
生分解性分散剤は樹脂ガラス転移温度まで加熱させる工程で添加されることで、加熱により分解する、融合工程において粒子が融合する際に、その分解生成物のうちの酸成分が粒子表面及びそれに接する領域に集中し、粒子安定化に寄与し、アルコール成分がゆるやかにトナー表面の架橋度合いの低下や表面の極性に寄与する。そのため、トナー内部に比較して表面層に低イオン橋度合いや樹脂絡み合い密度の低い柔軟な層が形成される。
本実施形態に用いられる生分解性分散剤の中でも、エーテルカルボン酸、その誘導体、及びそれらの塩(以下、「エーテルカルボン酸化合物」と称する場合がある)が好ましく挙げられる。
生分解性分散剤としてエーテルカルボン酸化合物を用いた場合、よりトナー構成成分が均一に配合され、かつ、不純物が少なくなるという副次的な効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
エーテルカルボン酸化合物は混合溶液中のイオン性不純物(特に陽イオン性不純物)を配位させながら溶媒中に溶解する。つまりエーテルカルボン酸化合物は、イオン性不純物が凝集粒子に取り込まれるのを抑制し、イオン性不純物を選択的にトナー表面に偏在させつつ水系溶媒中に溶解するため、トナー製造工程においてトナーの表面や外部に排出させ、トナー中の不純物が少なくなると推測される。
一方、生分解性分散剤としてエーテルカルボン酸化合物のほかにモノアミン、ジアミン錯化剤を併用した場合、表面に作用するエーテルカルボン酸の分散性が向上する。更に錯化剤自身の作用により粒子表面のイオン架橋、樹脂架橋度合い低減させることから更に表面が柔軟になる。
さらに、エーテルカルボン酸化合物は加水分解性を示すため、例えば湿式でトナーを作製した場合、トナー作製中の条件を適正化することにより、エーテルカルボン酸化合物が徐々に分解してトナー表面から水相側に移行し、トナー洗浄工程において簡略化した場合や生分解性分散剤を多く含有させた場合においても、エーテルカルボン酸化合物がトナー内部に残留しにくく、長期に亘って電気特性などを維持するトナーが得られる。
エーテルカルボン酸化合物としては、具体的には、例えば、アルキルエーテルカルボン酸化合物(アルキルエーテルカルボン酸、その誘導体、及びそれらの塩)、並びにヒドロキシエーテルカルボン酸化合物(ヒドロキシエーテルカルボン酸、その誘導体、及びそれらの塩)などが挙げられ、これらのなかでも、トナー表面により選択的に存在させて作用させる点からヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸化合物が好ましい。
アルキルエーテルカルボン酸としては、炭素数が4から22までの直鎖、あるいは分岐アルキル基を含むエーテルカルボン酸が好ましく、さらに具体的には、例えば、プロピルエーテル酢酸、オクチルエーテル酢酸、デシルエーテル酢酸、ラウリルエーテル酢酸、ミリスチルエーテル酢酸などが挙げられる。
アルキルエーテルカルボン酸の誘導体としては、具体的には、例えば、プロピルエーテル酢酸エステル、プロピルエーテル酢酸アミド、オクチルエーテル酢酸エステル、オクチルエーテル酢酸アミド、デシルエーテル酢酸エステル、デシルエーテル酢酸アミド、ラウリルエーテル酢酸エステル、ラウリルエーテル酢酸アミド、ミリスチルエーテル酢酸エステル、ミリスチルエーテル酢酸アミドなどが挙げられる。
ヒドロキシエーテルカルボン酸は、顔料や離型剤の分散性をより向上させるために好ましく用いられるエーテルカルボン酸であり、炭素数が4から22までのアルキル基を含むヒドロキシエーテルカルボン酸が好ましく用いられる。
ヒドロキシエーテルカルボン酸としてさらに具体的には、例えば、ヒドロキシエチルエーテル酢酸、ヒドロキシプロピルエーテル酢酸、ヒドロキシオクチルエーテル酢酸、ヒドロキシデシルエーテル酢酸、ヒドロキシラウリルエーテル酢酸、ヒドロキミリスチルエーテル酢酸などが挙げられる。
ヒドロキシエーテルカルボン酸の誘導体としては、具体的には、例えば、炭素数が4から22までの直鎖あるいは分岐のアルキル基、アルケニル基を含むヒドロキシエーテルカルボン酸エステル、ヒドロキシエーテルカルボン酸アミドが好ましく、ヒドロキシエチルエーテル酢酸エステル、ヒドロキシエチルエーテル酢酸アミド、ヒドロキシプロピルエーテル酢酸エステル、ヒドロキシプロピルエーテル酢酸アミド、ヒドロキシオクチルエーテル酢酸エステル、ヒドロキシオクチルエーテル酢酸アミド、ヒドロキシデシルエーテル酢酸エステル、ヒドロキシラウリルエーテル酢酸エステル、ヒドロキシラウリルエーテル酢酸エステル、ヒドロキミリスチルエーテル酢酸エステルなどが挙げられる。
アルキルエーテルカルボン酸、ヒドロキシエーテルカルボン酸、又はこれらの誘導体の塩としては、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、低級アルカノールアミン(モノ、ジ、トリエタノールアミン)塩などが挙げられる。
また、生分解性分散剤を用いる場合、これに加えて、モノアミン型、ジアミン型の錯化剤を併用することが好ましい。錯化剤を併用することで、分散剤の作用をバラツキなく均一にすることができ、錯化剤自身の作用でトナー表面を更に柔軟にしたり、トナー粒子自身の帯電性変動を抑制する作用が向上したりする。錯化剤はトナー内部に残留し難いこと、処理しやすいことなどの観点から、生分解性を有する錯化剤を用いることが好ましい。
モノアミン型の錯化剤としては、具体的には、例えば、アスパラギン酸一酢酸(ASMA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、アスパラギン酸一プロピオン酸(ASMP)、イミノジコハク酸(IDSA)、2−スルホメチルアスパラギン酸(SMAS)、2−スルホエチルアスパラギン酸(SEAS)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、2−スルホメチルグルタミン酸(SMGL)、2−スルホエチルグルタミン酸(SEGL)、メチルイミノ二酢酸(MIDA)、α−アラニン二酢酸(α−ALDA)、β−アラニン二酢酸(β−ALDA)、セリン二酢酸(SEDA)、イソセリン二酢酸(ISDA)、フェニルアラニン二酢酸(PHDA)、アントラニル酸二酢酸(ANDA)、スルファニル酸二酢酸(SLDA)、タウリン二酢酸(TUDA)、スルホメチル二酢酸(SMDA)あるいはこれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などが挙げられる。分子内に不斉炭素を有する場合は、(S)−アスパラギン酸一酢酸、(S)−アスパラギン酸二酢酸、(S)−アスパラギン酸一プロピオン酸、(S,S)−イミノジコハク酸、(S,R)−イミノジコハク酸、(S)−2−スルホメチルアスパラギン酸、(S)−2−スルホエチルアスパラギン酸、(S)−グルタミン酸二酢酸、(S)−2−スルホメチルグルタミン酸、(S)−2−スルホエチルグルタミン酸、(S)−α−アラニン二酢酸、(S)−セリン二酢酸、(S)−フェニルアラニン二酢酸あるいはこれらのアルカリ金属塩などが分解性の観点から好ましい。
ジアミン型の錯化剤としては、(S,S)−エチレンジアミンジグルタル酸、1,3−プロパンジアミンジグルタル酸、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミンジコハク酸、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミンジグルタル酸あるいはこれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が挙げられる。
上記工程を経て得られた本実施形態のトナー粒子は、樹脂中に生分解性分散剤を含有する。トナー粒子中における生分解性分散剤の含有量の合計は、トナー粒子に対して、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、0.7質量%以上4質量%以下がより好ましく、1質量%以上3.5質量%以下がさらに好ましい。トナー製造工程の途上においても生分解性分散剤が徐々に分解するため、トナー粒子中に残留した生分解性分散剤の含有量は低く抑えられる。そのため、残留した分散剤によるトナーの特性や画質の低下が抑制される。
生分解性分散剤とモノアミン型、ジアミン型の錯化剤を併用する場合、トナー中における生分解性分散剤の含有量は、トナー中における錯化剤の含有量の0.5倍以上2倍以下が好ましく、0.5倍以上1.7倍以下がより好ましく、0.7倍以上1.5倍以下がさらに好ましい。
トナー中に含まれる生分解性分散剤の同定及び含有量の測定は、以下のようにして行われる。
具体的には、まず、以下のようにしてトナーのトリメチルシリル化を行う。トナー1gをアセトン(溶媒)中5mlに分散させ、イオン交換水25mlを添加し混合、固液分離を行う。得られた溶液にトリメチルクロロシランを10ml添加、室温(25℃)で3時間攪拌し、カップリング反応(トリメチルシリル化処理)を行い、これを測定試料として用いる。
次に、下記熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置を用いて、下記条件により上記測定試料を測定し、生分解性分散剤の同定及び含有量の測定を行なう。
・機種:日立製作所 N−5000(四重極型)
・カラム:GLscience DB−1(0.25mm×30m×0.25μm)
・Curie Point Pyrolyzer測定法(400℃)
・昇温プログラム:60℃で5分保持後、5℃/分で昇温し、200℃で5分保持
なお、錯化剤の同定及び含有量の測定は、HPLC分析、NMRスペクトル分析などにより確認、定量することができる。
高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析は、分析装置:日本分析工業(株)製 LC−08、カラム:Inertsil ODS3(Φ4.6×250mm)、検出器:示差屈折計、紫外線吸収検出器(254nm)を用い、測定条件は、溶出液:クロロホルム、流量1.0mL/minとし、測定サンプルとして、トナー1gをクロロホルム10mLに溶解させて不要分を除去したものを用いる。
NMRスペクトル分析は、H−NMR装置:JNM−AL400(日本電子株式会社製)を用い、測定条件は、5mmガラス管、3重量%重水溶液、測定温度:25℃にて行う。また、測定サンプルは、現像剤からキャリアを脱離させ、トナーから有機溶媒などで溶解し、ろ過などにより結着樹脂を分離したものを用いる。
本実施形態のトナー粒子の好ましい物性としては、角速度6.28rad、毎分1℃の温度変化条件のもと動的粘弾測定を行った際、30℃から170℃までの昇温過程の貯蔵弾性率G’を測定した場合の、60℃から140℃までの昇温過程のG’変化幅が10以上10Pa以下であり、且つ、150℃から170℃までの昇温過程のG’変化幅が10Pa以下ある。これは比較的低温の領域では、変化幅が大きく、150℃以上の高温領域では変化幅が小さいことを表し、トナー粒子が、低温定着性に優れ、高温領域ではそれ以上の所望されない変形を起こしにくいことを表す。
本実施形態のトナー粒子の貯蔵弾性率は、正弦波振動法により測定した動的粘弾性から求めた。動的粘弾性の測定にはレオメトリックサイエンティフィック社製ARES測定装置を用いた。動的粘弾性の測定は、トナーを錠剤に成形した後、8mm径のパラレルプレートにセットし、ノーマルフォースを0とした後に6.28rad/secの振動周波数で正弦波振動を与えた。測定は30℃から開始し、200℃まで継続した。
また、測定時間インターバルは30秒、昇温は1℃/minとした。また、測定を行う前に、20℃から100℃まで10℃間隔で、歪量の応力依存性を確認し、各温度における応力と歪量が線形関係である歪量範囲を求めた。測定中は各測定温度における歪量を0.01%以上0.5%以下の範囲に維持し、全ての温度において応力と歪量が線形関係になるように制御し、これらの測定の結果から貯蔵弾性率を求めた。
−結着樹脂−
本実施形態のトナーには結着樹脂として結晶性樹脂を用いることが好ましい。また、必要に応じて非結晶性樹脂を併用することが特に好ましい。
なお、本実施形態において「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピーク(吸熱ピークの半値幅が10℃以下であるピーク)を有するものを意味し、「非結晶性樹脂」とは、上記の明確なピークを有さないものを意味する。また、結晶性樹脂、非結晶性樹脂を問わず、結着樹脂の重量平均分子量は10000以上であることが特に好ましく、重量平均分子量は、通常、15000以上50000以下の範囲であることが好ましい。
なお、結晶性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂等が利用でき、非結晶性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂等が利用される。以下、本発明で用いられる結着樹脂について、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とに分けて説明する。
(結晶性樹脂)
トナー粒子に含有される結晶性樹脂の含有量としては、2質量%以上30質量%以下
の範囲内が好ましく、3質量%以上15質量%以下の範囲内がより好ましい。結晶性樹脂の含有量が2量%未満では、低温域での定着が困難となる場合がある。また、結晶性樹脂の含有量が30質量%を超えると、特に中温域や高温域で定着を実施する場合に光沢ムラが発生しやすくなったり、フィルミングが発生しやすくなったりする場合がある。尚、本実施形態のトナーは、後述するように外添剤が添加されていることが好ましく、本明細書において、外添剤が添加される前のトナーを「トナー粒子」という場合がある。
結晶性樹脂の融解温度としては、45℃以上110℃以下の範囲が好ましく、50℃以上100℃以下の範囲がより好ましく、55℃以上90℃以下の範囲が更に好ましい。
融解温度が45℃を下回ると、トナーの保存が困難になり、110℃を超えると低温域での定着(以下、「低温定着性」と称する場合がある)が困難となる場合がある。なお結晶性樹脂の融解温度は、ASTMD3418−8に準拠した方法で求めたものを意味する。
また、結晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、5000以上であることが好ましく、7000以上であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)が、7000未満であると、定着時にトナーが紙等の記録媒体の表面へしみ込んで定着ムラを生じたり、定着された画像の折り曲げに対する耐性が低下したりする場合がある。
結晶性樹脂としては、既述したように結晶性ポリエステル樹脂や結晶性ビニル系樹脂等が利用されるが、定着時の紙への接着性や帯電性、上述した範囲を満たす融解温度が容易に得られる観点から結晶性ポリエステル樹脂を利用することが好ましく、特に所望の融解温度を有する樹脂が得られ易いことから脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
前記結晶性ビニル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。尚、本明細書において、“(メタ)アクリル”なる記述は、“アクリル”および“メタクリル”のいずれをも含むことを意味するものである。
一方、前記結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸(ジカルボン酸)成分と、アルコール(ジオール)成分とから合成されたものが利用される。
以下、カルボン酸成分、およびアルコール成分について、さらに詳しく説明する。尚、本明細書において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、結晶性ポリエステル樹脂の主鎖に対して、他成分を50質量%以下の割合で共重合した共重合体も意味する。
上記カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。
前記カルボン酸成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸成分の構成成分が含まれていることが好ましい。尚、前記二重結合を持つジカルボン酸成分には、二重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
前記二重結合を持つジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いられる。このジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
これらの脂肪族ジカルボン酸成分以外のカルボン酸成分(二重結合を持つジカルボン酸成分および/またはスルホン酸基を持つジカルボン酸成分)の、カルボン酸成分における含有量としては、1構成モル%以上20構成モル%が好ましく、2構成モル%以上10構成モル%がより好ましい。
前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、着色剤として顔料を用いるとトナー母粒子中の顔料の分散性が悪化する場合がある。
また、乳化重合凝集法を利用してトナーを作製する場合に、分散液中の乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となる場合がある。一方、20構成モル%を超えると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下して、画像の保存性が悪くなる場合がある。また、乳化重合凝集法を利用してトナーを作製する場合に、分散液中の乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じない場合がある。尚、本発明において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(カルボン酸成分、アルコール成分)を1単位(モル)したときの百分率を指す。
一方、前記アルコール構成成分としては脂肪族ジオールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、この限りではない。
前記アルコール成分は、脂肪族ジオール成分の含有量が80構成モル%以上であることが好ましく、必要に応じてその他の成分を含む。前記アルコール成分としては、前記脂肪族ジオール成分の含有量が90構成モル%以上であることがより好ましい。
前記含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。一方、必要に応じて含まれるその他の成分としては、二重結合を持つジオール成分、スルホン酸基を持つジオール成分等の構成成分が挙げられる。
前記二重結合を持つジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。一方、前記スルホン酸基を持つジオールとしては、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
これらの直鎖型脂肪族ジオール成分以外のアルコール成分を加える場合(二重結合を持つジオール成分、および/または、スルホン酸基を持つジオール成分)の、アルコール成分における含有量としては、1構成モル%以上20構成モル%が好ましく、2構成モル%以上10構成モル%がより好ましい。前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が不良となったり、乳化粒子径が大きくなったり、凝集によるトナー径の調整が困難となる場合がある。一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下して、画像の保存性が悪くなる場合や、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じない場合がある。
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としてはとくに制限はなくカルボン酸成分とアルコール成分を反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180℃以上230℃以下の範囲で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合はあらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定のカルボン酸成分またはアルコール成分とを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用されるな触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
なお、低温定着性と、光沢ムラ抑制効果とを高いレベルで両立することがより容易となる観点から、以上に列挙した2価以上の価数を取りうる金属元素を含む触媒の中でも、酢酸カルシウム、酢酸マンガンを用いることが好適である。
また、結晶性樹脂の融解温度、分子量等の調整の目的で上記の重合性単量体以外に、より短鎖のアルキル基、アルケニル基、芳香環等を有する化合物も使用される。
具体例としては、例えば、ジカルボン酸の場合、コハク酸、マロン酸、シュウ酸等のアルキルジカルボン酸類、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、4,4’−ビ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、ジピコリン酸、ジニコチン酸、キノリン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸等の含窒素芳香族ジカルボン酸類が挙げられ、ジオール類の場合、コハク酸、マロン酸、アセトンジカルボン酸、ジグリコール酸等の短鎖アルキルのジオール類が挙げられ、短鎖アルキルのビニル系重合性単量体の場合、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の短鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン類、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類等が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(非結晶性樹脂)
本実施形態のトナーには、結着樹脂として結晶性樹脂と共に非結晶性樹脂も併用してもよい。
使用される非結晶性樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、トナーを後述する乳化重合凝集法を利用して製造する場合は、重量平均分子量(Mw)の高い非結晶性樹脂(高分子量成分)および重量平均分子量の低い非結晶性樹脂(低分子量成分)とを用いることが好ましい。
この場合、高分子量成分のMwは30000以上300000以下であることが好ましく、30000以上200000以下であることが更に好ましく、35000以上150000以下であることが特に好ましい。高分子量成分のMwを上記範囲に制御することで、結晶性樹脂とより効率的に相溶する上に、一旦相溶した結晶性樹脂との分離を抑制する。
一方、低分子量成分のMwは、8000以上25000以下であることが好ましく、8000以上22000以下であることが更に好ましく、9000以上20000以下であることが特に好ましい。
高分子量成分のMwを上記範囲に制御することで、乳化重合凝集法により原料成分を凝集させた凝集粒子を加熱して融合する際にトナー粒子中への高分子量成分の包含性が良好になり、結晶性樹脂のトナー粒子表面への露出を防止する。
なお、上述したように高分子量成分と低分子量成分を混合して使用する場合、両者の配合比率は、高分子量成分/低分子量成分=35/65乃至95/5の範囲が好ましく、40/60乃至90/10の範囲がより好ましく、50/50乃至85/15の範囲が更に好ましい。
高分子量成分は、その構成モノマーとしてアルケニルコハク酸もしくはその無水物とトリメリット酸もしくはその無水物を含有することが好ましい。アルケニルコハク酸もしくはその無水物は、疎水性の高いアルケニル基が存在することにより、より容易に結晶性ポリエステル樹脂と相溶する。
本実施形態において、分子量分布は、東ソー(株)HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSK gei, SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定した。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、検量線はA−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
アルケニルコハク酸成分としては、例えば、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸ならびにこれらの酸無水物、酸塩化物および炭素数1以上3の低級アルキルエステルが挙げられる。3価以上の多価カルボン酸を含有することにより、高分子鎖は架橋構造を取る。架橋構造を取ることにより、一旦相溶した結晶性ポリエステル樹脂を固定化し分離しにくくする効果が得られる。3価以上の多価カルボン酸の例としては、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸およびこれらの酸無水物、酸塩化物および炭素数1以上3以下の低級アルキルエステルが挙げられる。
非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、特に制限はなく、前述の一般的なポリエステル重合法で製造される。非結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いるカルボン酸成分としては、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた種々のジカルボン酸が用いられる。
前記アルコール成分としても、非結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる種々のジオールが用いられるが、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた脂肪族ジオールに加えて、例えばビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物や水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物等が用いられる。さらに、トナー製造性・耐熱性・透明性の観点から、ビスフェノールS、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールS誘導体を用いることが特に好ましい。また、カルボン酸成分、アルコール成分とも複数の成分を含んでもよく、特に、ビスフェノールSは耐熱性を高める効果をもつ。
(結着樹脂の架橋処理等)
次に、結着樹脂として用いられる非結晶性樹脂や、必要に応じて用いられる結晶性樹脂の架橋処理や、結着樹脂の合成に際して用いられる共重合成分等について説明する。
結着樹脂の合成に際しては、他の成分を共重合させることができ、親水性極性基を有する化合物が用いられる。具体例としては、結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、例えば、スルホニル−テレフタル酸ナトリウム塩、3−スルホニルイソフタル酸ナトリウム塩等の芳香環に直接スルホニル基が置換したジカルボン酸化合物が挙げられる。また結着樹脂がビニル系樹脂の場合は、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、脂肪酸変性グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸とアルコール類等とのエステル類、オルト、メタ、パラ位のいずれかにスルホニル基を有するスチレンの誘導体、スルホニル基含有ビニルナフタレン等のスルホニル基置換芳香族ビニル等が挙げられる。
また、結着樹脂には、高温度領域における定着時の光沢むら、発色むら、ホットオフセット等を防止する目的で、必要に応じて架橋剤を添加してもよい。
架橋剤の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル/トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類、ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類、ピロール、チオフェン等の不飽和複素環化合物類、ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール−2−カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類、ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ、1,3−ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル/ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル/ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’−チオジプロピオン酸ジビニル、trans−アコニット酸ジビニル/トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸の多ビニルエステル類等が挙げられる。
また、特に結晶性ポリエステル樹脂においては、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸、trans−アコニット酸等の不飽和の多カルボン酸類を、ポリエステル中に共重合させ、その後樹脂中の多重結合部分同士、または他のビニル系化合物を用いて架橋させる方法を用いてもよい。なお、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
これら架橋剤により架橋させる方法としては、重合性単量体(モノマー)を重合する工程において架橋剤と共に重合し架橋させる方法でもよいし、不飽和部分は結着樹脂中に残留させ、結着樹脂を重合させた後、あるいはトナー作製の後、不飽和部分を架橋反応により架橋させる方法でもよい。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、重合性単量体は、縮重合により重合する。縮重合用の触媒としては、公知のものを使用することができ、具体例としては、チタンテトラブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモン、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ等が挙げられる。結着樹脂が、ビニル系樹脂である場合、重合性単量体は、ラジカル重合により重合する。
ラジカル重合用開始剤としては、乳化重合するものであれば、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピルテトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等の過酸化物類、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、2−(4−ブロモフェニルアゾ)−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロへプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物類、1,4−ビス(ペンタエチレン)−2−テトラゼン、1,4−ジメトキシカルボニル−1,4−ジフェニル−2−テトラゼン等が挙げられる。これらの重合開始剤は、架橋反応時の開始剤としても、使用される。
なお、結着樹脂としては、主に結晶性ポリエステル樹脂および非結晶性ポリエステル樹脂を中心に上述したが、その他にも必要に応じて、例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル系単量体;さらにアクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルフォン酸ナトリウム等のエチレン系不飽和酸単量体;さらにアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類単量体の単独重合体、それらの単量体を2種以上組み合せた共重合体、又はそれらの混合物、さらには、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、又は、それらと前記ビニル系樹脂との混合物、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等が用いられる。
なお後述するように、本実施形態のトナーを乳化重合凝集法により作製する場合(すなわち、凝集・合一法によりトナーを作製する過程において樹脂粒子分散液を乳化重合法により調整する場合)、結着樹脂は樹脂粒子分散液として調製される。樹脂粒子分散液は、乳化重合法及びそれに類似する不均一分散系における重合法で容易に得られる。また樹脂粒子分散液は、予め溶液重合法や隗状重合法等により重合した重合体をその重合体が溶解しない溶媒中へ安定剤とともに添加して機械的に混合分散する方法などにより得られる。
例えば、ビニル系樹脂を合成する場合、イオン性界面活性剤などを用い、好適にはイオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を併用して乳化重合法やシード重合法により、樹脂粒子分散液を作製する。
ここで用いる界面活性剤は、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、アルキルアルコールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤、及び、種々のグラフトポリマー等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
乳化重合で樹脂粒子分散液を作製する場合は、少量の不飽和酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、スチレンスルフォン酸等を単量体成分の1部として添加することにより、粒子表面に保護コロイド層を形成することができ、ソープフリー重合となるため特に好ましい。
−離型剤−
本実施形態のトナーは、離型剤を含有することが好ましく、該離型剤としては、公知のトナー用の離型剤が利用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;シリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウのごとき動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系、石油系のワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。
トナー粒子中の離型剤含有量は、0.5質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上30質量%以下の範囲内がより好ましく、5質量%以上15質量%以下の範囲が更に好ましい。含有量が0.5質量%を下回ると、オイルレス定着が困難となる場合があり、50質量%を超えると、定着する際に画像表面への離型剤の染み出しが不足し易く、画像中に離型剤が在留しやすくなり、画像の透明性を悪化する場合がある。
また、トナー中に分散含有される離型剤の平均分散径は、0.3μm以上0.8μm以下の範囲内であることが好ましく、0.4μm以上0.8μm以下の範囲内であることがより好ましい。
離型剤の平均分散径が0.3μm未満の場合には離型性が不十分となる場合があり、特にプロセススピ−ドが速い場合にはこの傾向がより顕著になりやすい。また、0.8μmを超える場合には、OHPシート使用時の透明性の低下や、トナー表面への離型剤成分の露出が顕著になる場合がある。
また、離型剤の分散径の標準偏差は0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましい。離型剤の分散径の標準偏差が0.05を超えると、離型性、OHPシート使用時の透明性、トナー表面への離型剤の露出に悪影響する場合がある。
なお、トナー中に分散含有される離型剤の平均分散径は、トナー粒子断面のTEM(透過型電子顕微鏡)写真を、画像解析装置(ニレコ社製、Luzex画像解析装置)で解析し、100個のトナー粒子中の離型剤の分散径(=(長径+短径)/2)の平均値を計算することで求められ、標準偏差はこのとき得られた個々の分散径を元に求めた。
また、トナー粒子表面の離型剤の露出率は、5atom%以上12atom%以下の範囲内が好ましく、6atom%以上11atom%以下の範囲内が更に好ましい。
露出率が5atom%未満の場合は、特にプロセススピードが200mm/s以上の高速な画像形成を実施する場合において高温域で定着する場合の定着性が悪化する場合があり、12atom%を超える場合には長期に渡る使用において、外添剤の偏在やトナー粒子への埋没による現像性や転写性の低下が生じる場合がある。
ここでトナー粒子表面の離型剤の露出率は露出率はXPS(X線光電子分光)測定により求めた。
XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施した。
そして上記条件で得られたC1Sスペクトルから、トナー表面の離型剤に起因する成分をピーク分離することによってトナー表面の離型剤量を定量した。ピーク分離は、測定されたC1Sスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。分離のベースとなる成分スペクトルには、トナーの作製に用いた離型剤、結着樹脂、結晶性樹脂を単独に測定して得られたC1Sスペクトルを用いた。
−着色剤−
本実施形態のトナーは着色剤を含有する。
本実施形態に用いられる着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレートなどの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などを1種又は2種以上を併せて使用してもよい。
また、着色剤は、ロジン、ポリマー等により表面改質処理したものも利用される。表面改質処理がなされた着色剤は、着色剤分散液中で安定化されており、着色剤が着色剤分散液中で所望の平均粒径に分散された後、樹脂粒子分散液との混合時、凝集粒子形成工程等においても着色剤同士が凝集することがなく、良好な分散状態を維持される点で有利である。一方、過剰な表面改質処理がなされた着色剤は、凝集粒子形成工程において樹脂粒子と凝集せずに遊離してしまうことがある。このため、前記表面改質処理は、選択した最適な条件下で行われる。
なお着色剤の表面処理に用いるポリマーとしては、例えばアクリロニトリル重合体、メチルメタクリレート重合体等が挙げられる。
表面改質の条件としては、一般に、着色剤(顔料)存在下にモノマーを重合させる重合法、ポリマー溶液中に着色剤(顔料)を分散させ、該ポリマーの溶解度を低下させて着色剤(顔料)表面に析出させる相分離法等が用いられる。
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対し、1質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましい。
−その他の添加成分−
本実施形態のトナーを磁性トナーとして用いる場合は、磁性粉を含有させるが、ここで
使用する磁性粉としては、例えばフェライトやマグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケ
ル、マンガン等の金属、合金又はこれら金属を含む化合物などが挙げられる。さ
らに必要に応じて、4級アンモニウム塩、ニグロシン系化合物やトリフェニルメタン系顔
料など、通常使用される種々の帯電制御剤を添加してもよい。
本実施形態のトナーには、必要に応じて無機粒子を内添させてもよい。中心粒子が5nm以上30nm以下の無機粒子と、中心粒子径が30nm以上100nm以下である無機粒子とが、トナーに対して0.5質量%以上10質量%以下の範囲で含有されることが、耐久性の点でより好ましい。
前記無機粒子は、例えばシリカ、疎水化処理シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、コロイダルシリカ、カチオン表面処理コロイダルシリカ、アニオン表面処理コロイダルシリカ等が用いられる。これらの無機粒子は、予め超音波分散機などを用いてイオン性界面活性剤の存在下分散処理されるが、この分散処理が不要なコロイダルシリカの使用がより好ましい。
前記無機粒子の添加量が、0.5質量%未満では、該無機粒子の添加によってもトナー溶融時に十分なタフネスが得られず、オイルレス定着における剥離性を改善できないばかりでなく、トナー溶融時の粒子のトナー中での粗な分散が粘性のみを増加させ、結果として曳糸性を悪化させることにより、オイルレス定着における剥離性を損なう場合がある。また、10質量%を超えると十分なタフネスは得られるものの、トナー溶融時の流動性を大きく低下させ、画像の光沢が損なわれる場合がある。
−添加剤(外添剤)−
本実施形態の静電荷像現像用トナーには、公知の添加剤(外添剤)を外添してもよい。外添剤としては例えばシリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなどの無機粒子が利用される。例えば、流動性助剤やクリーニング助剤としてはシリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子が利用される。外添剤の添加方法は特に限定されないが、乾燥状態で剪断力を加えてトナー粒子表面に添加してもよい。
本実施形態のトナーは、モース硬度が異なる二種類以上の外添剤、特に、モース硬度が異なる二種類以上の酸化物粒子を含有することが好ましい。モース硬度が異なる二種類以上の外添剤を含有することにより、モース硬度が低い外添剤(低硬度外添剤)が電子写真用感光体(像保持体)、クリーニングブレード等の表面を保護し、放電生成物などの付着を緩和する。モース硬度が高い外添剤(高硬度外添剤)は、本実施形態のトナー粒子表面の柔軟な層に適度に埋没して粒子表面に固定化され、電子写真用感光体表面に付着した放電生成物などを均一に研磨する。このとき、高硬度の添加剤がトナー粒子表面から離脱しにくいために、ブレードなどへのダメージも抑制される。更に、画像欠陥の原因になる表面傷・偏磨耗を抑制しながらクリーニングされる。
本実施形態のトナーは、モース硬度が異なる三種類以上の外添剤を含有することがより好ましい。即ち、上記の高硬度添加剤、低硬度添加剤の利点に加え、さらに中程度のモース硬度の添加剤を添加すると、トナー表面に埋没している高硬度の外添剤の影響で中硬度の添加剤はトナー粒子には埋没しにくく、外添剤としての構造維持が達成されるため、長期に亘りかつ過酷な環境下で繰り返し使用してもストレストナーとフレッシュトナーの帯電差が抑制され異常帯電などが起こりにくい。
なお、前記モース硬度は、モース硬度で1から10までで表わされる値である。
上記低硬度外添剤のモース硬度は、電子写真用感光体表面を保護するという効果が発揮される点で、2以上6以下が好ましく、3以上5以下がより好ましい。
また、上記高硬度外添剤のモース硬度は、電子写真用感光体表面に付着した放電生成物などを強く研磨するという効果が発揮される点で、7以上9以下が好ましく、7.5以上8.5以下がより好ましい。
さらに中硬度外添剤を用いる場合、そのモース硬度は、構造が維持される観点から4.6以上7.0以下が好ましく、5.0以上6.5以下が好ましい。
ここで、2種類以上の酸化物粒子を添加剤として含む場合、含まれる酸化物粒子の最大硬度と最小硬度の硬度差を4以上8以下とすることで、前記した複数種の硬度の異なる添加剤による効果がより向上する。
モース硬度が異なる外添剤を二種類含有する場合の低硬度外添剤と高硬度外添剤との好ましい組み合わせとしては、炭酸カルシウムとアルミナ、硫酸カルシウムとジルコニア、フッ化カルシウムと窒化ケイ素等が挙げられる。
モース硬度が異なる外添剤を三種類含有する場合の低硬度外添剤と高硬度外添剤との好ましい組み合わせとしては、炭酸カルシウムと、シリカとアルミナ、硫酸カルシウムと チタニアとジルコニア、等の組み合わせが挙げられる。
上記低硬度外添、高硬度外添剤の含有比率(低硬度外添剤:高硬度外添剤、質量比)は、20:80から80:20であるが好ましく、30:70から70:30であることがより好ましい。また、低硬度外添剤、中硬度外添剤、高硬度外添剤の含有比率は、10:10:80から45:45:10であることが好ましく、15:15:70から42.5:42.5:15であることがより好ましい。
本実施形態のトナーにおける外添剤の総含有量は、トナー100質量部に対して、0.8質量部以上3.5質量部以下が好ましく、1質量部以上2.5質量部以下がより好ましい。
添加剤として2種類以上の酸化物粒子を含有する場合、トナー表面をX線光電子分光装置(XPS)により測定した時の、トナー表面における酸化物粒子の被覆率は50%以上95%以下であことが好ましく、55%以上90%以下であることがより好ましい。XPS(X線光電子分光)による酸化物粒子の被覆率の測定方法は、以下に示すとおりである。
XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施した。被覆率は酸化物微粒子単体の測定値を100%として予め測定をしておき、トナー粒子の測定結果を換算して算出した。この測定条件は、外添剤として用いられる酸化物粒子の種類に係わらず適用することができる。
−トナーの特性−
本実施形態のトナー粒子の体積平均粒径D50vは3μm以上7μm以下の範囲が好ましい。3μmを下回ると帯電性が不十分となり周囲への飛散が起こって画像かぶりを引き起こす場合があり、7μmを超えると画像の解像度が低下し、高画質を達成することが困難となる場合がある。体積平均粒径D50vは5μm以上6.5μm以下の範囲がより好ましい。
また、トナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.28以下が好ましい。GSDvが、1.28を超えると画像の鮮明度、解像度が低下する場合がある。一方、個数平均粒度分布指標GSDpは1.30以下であることが好ましい。GSDpが1.30を超えると小粒径トナーの比率が高くなるため、初期性能の他に信頼性の点からも極めて大きな影響を有する場合がある。即ち、従来知られているように、小径トナーの付着力が大きいため、静電気的制御が困難となりやすく、2成分現像剤を用いる場合はキャリア上に残留しやすくなる場合がある。この場合、繰り返し機械力を与えられると、キャリア汚染を招き、結果としてキャリアの劣化を促進する場合がある。
特に転写工程では、像保持体上に現像されたトナーのうち、小径成分の転写が困難になりやすく、結果的に転写効率が悪くなり、排トナーの増加や、画質不良などが生じる場合がある。これらの問題が生じた結果、静電気的に制御されないトナーや逆極トナーが増加しこれらが周囲を汚染してしまうこともある。とりわけ帯電ロールには像保持体等を介してこれらの制御されないトナーが蓄積されるため、帯電不良を引き起こす場合もある。
また、小径成分のトナーは結晶性樹脂の内包性が不十分となりやすい傾向があるために、像保持体へのフィルミングなどを招く場合がある。一方、大粒径成分のトナーにおいても、現像機内でのトナー割れ、現像機からのふきだし、帯電不良による画質低下などを招く場合がある。
なお、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25以下であることがより好ましく、個数平均粒度分布指標GSDpは1.25以下であることがより好ましい。
ここで、トナーの体積平均粒径D50vや各種の粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用して測定する。
測定に際しては、分散剤として界面活性剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下の範囲で加える。これを電解液100ml乃至150mlの中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、前記マルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2μm以上50μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
このようにして測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を累積体積平均粒径D16v、累積数平均粒径D16p、累積50%となる粒径を累積体積平均粒径50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を累積体積平均粒径D84v、累積数平均粒径D84pと定義する。
ここで、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として規定される。
さらに、トナーの平均円形度は0.940以上0.980以下の範囲であることが好ましい。平均円形度が前記範囲より下回ると形状が不定形側になり、転写性、耐久性、流動性などが低下する場合がある。また前記範囲を超えると、球形粒子の割合が多くなりクリーニング性が困難となる場合がある。平均円形度は0.950以上0.970以下の範囲であることがより好ましい。
結晶性樹脂を含有するトナーの場合、平均円形度が球形側(平均円形度が1により近い場合)、結晶性樹脂成分の多い球形トナーが増加することがあり、クリーニング部材との接触部への蓄積によるフィルミング、トルク上昇による部材劣化、像保持体へのフィルミングが発生してしまう場合がある。一方、不定形側(平均円形度が0により近い場合)であると、現像機内のトナー割れの原因となり、割れた界面には結晶性樹脂成分が露出する場合があり、帯電性などを損ねる場合がある。
なお、トナーの平均円形度はフロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製)により計測する。具体的な測定方法としては、予め不純固形物を除去した水100乃至150ml中に、分散剤として界面活性剤、例えば、アルキルベンゼスルホン酸塩を0.1ml乃至0.5ml加え、更に測定試料を0.1g乃至0.5g程度加える。
測定試料を分散した懸濁液は越音波分散器で1分乃至3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000乃至1万個/μlとして前記装置によりトナーの平均円形度を測定する。
本実施形態のトナーのガラス転移温度Tgは、特に制限はないが、45℃以上60℃の範囲が好適に選択される。上記範囲より下回るとトナー保存性、定着画像保存性、実機内での耐久性などに問題が生じる場合がある。上記範囲より高い場合には、定着温度が高くなる、造粒時に必要な温度が高くなるなどの問題が生じる場合がある。
なお、TgはDSC測定機(示差熱分析装置DSC60A、島津製作所社製)を用いてASTMD3418−8に準拠して測定される。装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。
本実施形態の静電荷像現像用トナーの帯電量は、絶対値で10μC/g以上40μC/g以下の範囲が好ましく、15μC/g以上35μC/g以下の範囲がより好ましい。10μC/gを下回ると、背景部汚れが発生し易くなり、40μC/gを超えると、画像濃度が低下し易くなる場合がある。
また、静電荷像現像用トナーの夏場(28℃、85%RH)における帯電量と、冬場(10℃、30%RH)における帯電量との比率は0.5以上1.5以下が好ましく、0.7以上1.3以下がより好ましい。この比率が、前記の範囲を外れると、トナーの環境依存性が強くなり、帯電性の安定性に欠け、実用上好ましくない場合がある。
−トナーの製造方法−
トナーの製造方法としては、例えば、凝集・合一法(乳化重合・強制乳化・転相乳化法等により樹脂粒子分散液を作製し、溶媒に着色剤を分散した着色剤分散液を作製した後、これらを混合し、トナー粒径に相当する凝集体を形成し、加熱することによって融合・合一させトナーとする製造方法)の他に、懸濁重合法(離型剤、着色剤など必要に応じて用いられる成分を、結晶性樹脂等の結着樹脂を形成する重合性単量体とともに懸濁させ、重合性単量体を重合してトナーとする製造方法)、溶解懸濁法(イオン性解離基を有する化合物、結晶性樹脂等の結着樹脂、離型剤等のトナー構成材料を有機溶媒に溶解させ、水系溶媒中に懸濁状態で分散させた後に有機溶媒を除去してトナーとする製造方法)等の湿式製法が挙げられる。
以下、本実施形態におけるトナーの製造方法の一例として、凝集・合一法について説明する。
本実施形態におけるトナーの製造方法は、例えば、樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液を調整する樹脂粒子分散液調整工程と、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液を調整する着色剤粒子分散液調整工程と、樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を混合し、樹脂粒子及び着色剤粒子を含む混合溶液を調整する混合溶液調整工程と、樹脂粒子及び着色剤粒子が凝集した凝集粒子を調整する凝集粒子調整工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程と、を含む。
また、必要に応じて、離型剤粒子を分散した離型剤粒子分散液を調整する離型剤粒子分散液調整工程等のその他の工程を含んでもよい。
また本実施形態のトナー粒子がアルコール/水混合溶液に規定された溶解分率で溶解するという物性を満たす目的においては、ガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程、前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程の少なくても一つの工程が、生分解性の分散剤を添加する工程と塩基性化合物添加によりpHを7以上11以下の範囲に調整する工程を含むことが好適であることは前述の通りである。
添加される生分解性分散剤の添加量は、樹脂粒子(結着樹脂)100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましく、2質量部以上18質量部以下がより好ましく、3質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。生分解性分散剤は、トナーの製造過程(例えば、凝集工程、融合・合一工程等)において分解し、製造されたトナーに残留しにくいため、他の分散剤の場合に比べて添加量が多くても、トナーの特性や画質が良好となる。
生分解性分散剤としてヒドロキシエーテルカルボン酸化合物を用いる場合、ヒドロキシエーテルカルボン酸化合物の添加量は、樹脂粒子100質量部に対し、0.5質量部以上15質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
また生分解性分散剤としてヒドロキシエーテルカルボン酸化合物と錯化剤とを併用する場合、添加量の合計は、樹脂粒子100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上9質量部以下がより好ましく、3質量部以上8質量部以下がさらに好ましい。
ヒドロキシエーテルカルボン酸化合物の添加量及び錯化合物の添加量が上記範囲よりも低いと、トナー表面の柔軟性が低下する場合があり、結果として、トナー表面の添加剤の付着バラツキが大きくなるため、例えば、トナー使用初期において電気特性が悪化したり、かぶりが発生したり、感光体傷へのフィルミングなどが発生したりする場合がある。
一方、エーテルカルボン酸化合物の添加量及び錯化剤の添加量が上記範囲を超える場合、表面の柔軟性は得られるものの、分散剤自身のトナー中残留量が多くなる場合があり、分散剤を除去するために工程が煩雑になったり、除去しきれずにトナー中に分散剤が残留したりすることにより長期に亘る使用の結果かぶりなどの画質への影響が出たりする場合がある。
また生分解性分散剤としてヒドロキシエーテルカルボン酸化合物と錯化剤とを併用する場合、エーテルカルボン酸化合物の添加量は、錯化剤の添加量の2倍以上7倍以下が好ましく、2.5倍以上6倍以下がより好ましく、3倍以上5.5倍以下がさらに好ましい。
なお生分解性分散剤を複数の工程において添加した場合、それぞれの工程における添加量の合計が上記範囲であることが好ましい。
以下、各工程について具体的に説明する。なお、前述の生分解性分散剤に関する記載のうち重複する部分は、省略する場合がある。
(樹脂粒子分散液調整工程)
樹脂粒子分散液は、上記の通り、結着樹脂の合成において乳化重合法等を用いる場合は、結着樹脂が樹脂粒子分散液の状態で得られる。
一方、予め溶液重合法や塊状重合法等により重合して結着樹脂を得る場合は、上記の通り、得られた結着樹脂及び前記安定剤等を溶媒中に添加して、機械的に混合分散することにより樹脂粒子分散液が得られる。すなわち、例えば、水系媒体と結着樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより行われる。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げて粒子を形成してもよい。また分散した樹脂粒子の安定化のため、分散剤を使用してもよい。
さらに、結着樹脂が油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製してもよい。
上記分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水のみであることが望ましい。
、分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
分散剤としては、上記の中でも生分解性分散剤を用いることが好ましいが、混合溶液に生分解性分散剤が含まれていれば、生分解性分散剤以外の分散剤のみを用いてもよく、また生分解性分散剤及び生分解性分散剤以外の分散剤を併用してもよい。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、10質量%から50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは20質量%から40質量%の範囲である。前記含有量が10質量%より少ないと粒度分布が広がり、トナー特性が悪化する場合がある。また50質量%を超えるとばらつきのない撹拌が困難となり、粒度分布が狭く特性の揃ったトナーを得ることが困難となる場合がある。
樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は、1μm以下であることが望ましく、より望ましくは0.01μm以上1μm以下である。樹脂粒子の平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナーの粒度分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招いたりする場合がある。
一方、樹脂粒子の平均粒径が前記範囲内にあると、前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中での分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点が有利である。なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD2000A)等を用い測定される。
(着色剤粒子分散液調整工程)
着色剤を溶媒へ分散する方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなど、任意の方法が採用される。
溶媒としては、上記樹脂粒子分散液において用いられる水系溶媒と同じ溶媒が挙げられる
着色剤粒子の体積平均粒径は、0.8μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
着色剤粒子の体積平均粒径が0.8μmを越えると、最終的に得られるトナーの粒度分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招いたりする場合がある。また、着色剤粒子の平均粒径が0.05μmより小さいと、トナー中での着色性が低下するだけでなく、凝集・合一法の特徴の一つである形状制御性が損なわれ、真球に近い形状のトナーが得られなくなる場合がある。
また、着色剤粒子分散液中の体積平均粒径0.8μm以上の粗大粒子の存在割合は、10個数%未満が好ましく、0個数%に近い程好ましい。この粗大粒子の存在は、凝集粒子形成工程において、形成された凝集粒子の安定性を損なわせてしまう場合がある。加えて、粗大な着色粒子が遊離したり、粒度分布を広化させたりする場合もある。
さらに、着色剤粒子分散液中の体積平均粒径0.05μm以下の微小粒子の存在割合は、5個数%以下が好ましい。この微小粒子の存在は、融合・合一工程において、トナー粒子の形状制御性を損なわせ、平均円形度0.940以下のものが得られなくなる場合がある。
これに対して、着色剤の平均粒径、粗大粒子、微小粒子が前記範囲内にあると、前記欠点がない上、トナー間における成分の偏在が減少し、トナー中における成分の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点が有利である。
なお、着色剤粒子の体積平均粒径も、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD2000A)等を用い測定される。
(離型剤粒子分散液調整工程)
離型剤粒子分散液の調整は、上記水系溶媒中に、イオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融解温度以上に加熱するとともに、強い剪断力を付与するホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて粒子化する。
(混合溶液調整工程)
混合溶液の調整は、上記樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、及び必要に応じて離型剤粒子分散液等のその他の分散液を混合する。このとき、離型剤粒子分散液は、混合溶液調整工程において一度に添加してもよいし、分割して多段に添加してもよい。
(凝集粒子調整工程)
凝集粒子調整工程においては、上記混合溶液を加熱し、混合溶液中の粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。なお、加熱は、結晶性樹脂の融解温度を下回る温度域(結晶性樹脂の融解温度に対して20℃乃至10℃下回る温度)で実施することが望ましい。
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、具体的には、例えば20℃乃至30℃で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性(例えば、pH=2.8)にすることによってなされる。
前記凝集粒子形成工程に用いられる凝集剤は、原料分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、すなわち無機金属塩の他、2価以上の価数を取りうる金属元素を含む金属錯体を好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
2価以上の価数を取りうる金属元素を含む金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩などがある。具体的にはエチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸などの公知のキレートをベースにした、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩などが挙げられる。
前記無機金属塩は、溶媒に分散させて無機粒子分散液とし、混合溶液調整工程においてあらかじめ混合溶液に加え、同時に凝集させることが好ましい。これにより、結着樹脂の分子鎖末端に無機金属塩が有効に作用し、架橋構造の形成に寄与する。
無機粒子分散液は任意の方法、例えばボールミル、サンドミル、超音波分散機回転せん断型ホモジナイザーなどを用いて作製され、無機粒子の分散平均粒径は100nm以上500nm以下の範囲とすることが好ましい。
無機粒子分散液は、凝集粒子形成工程において段階的に添加してもよく、また、連続的に投入してもよい。これらの方法は、無機粒子分散液中の金属イオン成分をトナー表面から内部にかけて分散させる上で有効である。段階的に添加する場合は、3段階以上、連続的に添加する場合は、分散液を0.1g/m程度以下のゆっくりとした速度で添加していくことが特に好ましい。
また、無機粒子分散液の添加量は、必要とされる金属の種類や架橋構造形成の程度により異なるが、結着樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下の範囲とすることが好ましく、1質量部以上5質量部以下の範囲とすることがより好ましい。
なお、凝集粒子形成工程において、凝集粒子の形成に影響の無い範囲で2価以上の価数を取りうる金属元素を含む無機金属塩や金属錯体の種類や使用量を調製することにより、トナー粒子中に含まれる2価以上の価数を取りうる金属元素の含有量を制御してもよい。
なお、低温定着性と、光沢ムラ抑制効果とを高いレベルで両立することがより容易となる観点から、以上に列挙した凝集剤の中でも、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウムを用いることが好適である。
凝集粒子形成工程は、必要に応じて付着工程を含んでもよい。付着工程では、上記した凝集粒子形成工程を経て形成された凝集粒子(コア粒子)の表面に、樹脂粒子を付着させ
ることにより被覆層を形成する。これにより、いわゆるコア層とこのコア層を被覆するコ
ア/シェル構造を有するトナーが得られる。
被覆層の形成は、凝集粒子形成工程において凝集粒子(コア粒子)を形成した分散液中に、通常、非結晶性樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液を追添加することにより行われる。なお、コア粒子を形成する工程において結晶性樹脂の他に非結晶性樹脂も併用する場合、付着工程で利用する非結晶性樹脂は、凝集粒子形成工程で利用するものと同一であっても異なっていてもよい。
なお、一般的に付着工程は、離型剤と共に結着樹脂として結晶性樹脂が主成分として含まれる所謂コア/シェル構造を有するトナーを作製する場合に用いられ、その主たる目的は、コア層に含まれる離型剤や結晶性樹脂のトナー表面への露出の抑制や、コア層単体では不十分なトナー粒子の強度を補うことにある。
(融合・合一工程)
凝集粒子形成工程を経た後に実施される融合・合一工程は、これらの工程を経て形成された凝集粒子を含む懸濁液のpHを所望の範囲(pHが2.5以上pH5.5以下)にすることにより、凝集の進行を止めた後、加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。
pHの調整は、酸及び/またはアルカリを添加することによって行なわれる。酸は特に限定されないが、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸を0.1質量%以上50質量%以下の範囲で含む水溶液が好ましい。アルカリは特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を0.1質量%以上50質量%以下の範囲で水溶液が好ましい。
なお、pHの調整に於いて、局所的なpHの変化が起こると、局所的な凝集粒子自体の破壊や局所的な過剰凝集を引き起こし、また、形状分布の悪化をも招く場合がある。特にスケールが大きくなる程、酸及び/またはアルカリ量は多くなる。一般的には酸及びアルカリの投入箇所は1箇所であるので、同一時間で処理するならば投入箇所の酸及びアルカリの濃度はスケールが大きくなる程高くなる。
上述した組成コントロールを行った後、凝集粒子を加熱して融合させる。なお、融合は、結晶性樹脂の融解温度(非結晶性樹脂を用いている場合は非結晶性樹脂のガラス転移温度)より10℃から30℃以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。
融合時の加熱に際して、あるいは融合が終了した後に、その他の成分により架橋反応を行わせてもよい。また、融合と同時に架橋反応を行わせてもよい。架橋反応を行わせる場合には、トナーの作製に際して、上述した架橋剤や重合開始剤を用いる。
重合開始剤は、原料分散液を作製する段階であらかじめこの分散液に混合しておいてもよいし、凝集粒子形成工程で凝集粒子に取り込ませてもよい。さらには、融合・合一工程、或いは、融合・合一工程の後に導入してもよい。凝集粒子形成工程、付着工程、融合・合一工程、あるいは融合・合一工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化した液を、分散液に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
(洗浄、乾燥工程等)
凝集粒子の融合・合一工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で置換洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。また、乾燥後のトナー粒子には、既述した種々の外添剤を必要に応じて添加する。
<静電荷像現像用現像剤>
本実施形態の静電荷像現像用現像剤(以下、「現像剤」と称す場合がある)は、本実施形態のトナーを含むものであり、目的に応じて他の成分を配合してもよい。
具体的には、本実施形態のトナーを単独で用いると一成分系の静電荷像現像用現像剤となり、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像用現像剤となる。現像剤中におけるトナーの濃度は1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。
ここでキャリアには特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された芯材が樹脂層で被覆されたキャリア(樹脂被覆キャリア)等の公知のキャリアが使用される。
樹脂被覆キャリアの芯材としては、鉄粉、フェライト、マグネタイトなどの造型物が挙げられ、その平均径は30μm以上200μm以下程度である。
被覆層を形成する被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー等の単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合体、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。
被覆樹脂量は、芯材100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲がより好ましい。キャリアの製造には、例えば加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用することができ、被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用してもよい。電子写真用現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比には特に制限はなく、目的に応じて選択する。
<画像形成方法>
次に、本実施形態の現像剤を用いた画像形成方法について説明する。
本実施形態のトナーを用いた画像の形成方法としては、公知の電子写真法が利用されるが、具体的には潜像保持体(以下、「像保持体」と称する場合がある)の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着工程とを含むものであることが好ましい。
なお、これらの工程以外にも電子写真法による画像形成方法に利用される公知の工程を組み合わせてもよく、例えば、転写工程を終えた後の像保持体表面に残留する残留トナーを除去するトナー除去工程や、トナー除去工程で除去された残留トナーを回収し、回収された前記残留トナーを現像手段に供給する残留トナー回収供給工程を含んでもよい。なお、現像手段に供給された残留トナーは、現像剤用のトナーとして再利用(リサイクル)させる。
ここで、静電潜像形成工程とは、像保持体の表面を、帯電手段により帯電した後、レーザー光学系やLEDアレイなどで像保持体に露光し、静電潜像を形成する工程である。前記帯電手段としては、例えば、コロトロン、スコロトロンなどの非接触方式の帯電器、及び、像保持体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより、像保持体表面を帯電させる接触方式の帯電器が挙げられ、いかなる方式の帯電器でもよい。しかし、オゾンの発生量が少なく、環境に優しく、かつ耐刷性に優れるという効果を発揮するという観点から、接触帯電方式の帯電器が好ましい。前記接触帯電方式の帯電器においては、導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、ローラー状等の何れでもよく制限を受けるものではない。なお、潜像形成工程は上述した態様のみに限定されるものではない。
前記現像工程とは、像保持体表面に、少なくともトナーを含む現像剤層を表面に形成させた現像剤保持体を接触若しくは近接させて、前記像保持体表面の静電潜像にトナーの粒子を付着させ、像保持体表面にトナー像を形成する工程である。現像方式は、既知の方式を用いて行うが、現像剤が二成分現像剤である場合の現像方式としては、例えばカスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。なお、現像方式は上述した態様のみに限定されるものではない。
前記転写工程とは、像保持体表面に形成されたトナー像を、記録媒体に転写する工程である。なお、転写工程は、紙等の記録媒体にトナー像を直接転写する方式の他に、ドラム状やベルト状の中間転写体に転写後、紙等の記録媒体に転写する方式でもよい。なお、転写方式は上述した態様のみに限定されるものではない。
像保持体からのトナー像を紙等に転写する転写装置(転写手段)としては、例えばコロトロンが利用される。コロトロンは用紙を帯電する手段としては有効であるが、記録媒体である用紙に目的とするの電荷を与えるために、数kVという高圧を印加しなければならず、高圧電源を必要とする。また、コロナ放電によってオゾンが発生するため、ゴム部品や像保持体の劣化を引き起こすので、弾性材料を有する導電性の転写ロールを像保持体に圧接して、用紙にトナー像を転写する接触転写方式が好ましい。なお、転写装置は上述した態様のみに限定されるものではない。
前記トナー除去工程(クリーニング工程)とは、ブレード、ブラシ、ロール等を像保持体表面に直接接触させ、像保持体表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する工程である。
最も一般的に採用されている方式として、ポリウレタン等のゴム製のブレードを像保持体に圧接させるブレードクリーニング方式である。これに対し、内部に磁石を固定配置し、その外周に回転する円筒状の非磁性体のスリーブを設け、そのスリ−ブ表面に磁性キャリアを保持させてトナーを回収する磁気ブラシ方式や、半導電性の樹脂繊維や動物の毛をロール状に回転されるように配置し、トナーと反対極性のバイアスをそのロールに印加してトナーを除去する方式でもよい。前者の磁気ブラシ方式では、クリーニングの前処理用コロトロンを設置してもよい。なお、クリーニング方式については上述した態様のみに限定されるものではない。
前記定着工程とは、記録媒体表面に転写されたトナー像を定着手段にて定着する工程である。定着手段としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好ましく用いられる。加熱定着装置は、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層あるいは耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し圧接して配置され、円筒状芯金の外周面あるいはベルト状基材表面に耐熱性の弾性材料を含む層を形成した加圧ローラあるいは加圧ベルトと、で構成される。トナー像の定着プロセスは、定着ローラと加圧ローラあるいは加圧ベルトとにより形成される接触部にトナー像が形成された記録媒体を通過させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。但し、定着方式については上述した態様のみに限定されるものではない。
なお、フルカラー画像を作製する場合には、複数の像保持体がそれぞれ各色の現像剤保持体を有しており、その複数の像保持体及び現像剤保持体それぞれによる潜像形成工程、トナー像形成工程、転写工程及びクリーニング工程からなる一連の工程により、同一の記録媒体表面に前記工程ごとの各色トナー像が順次積層形成され、その積層されたフルカラーのトナー像を、定着工程で熱定着する画像形成方法が好ましく用いられる。
そして、本実施形態の現像剤を、上記画像形成方法に用いることにより、例えば、小型、カラー高速化に適したタンデム方式においても、安定した現像、転写、定着性能が得られる。
<画像形成装置、トナーカートリッジ>
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、該像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を前記現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体表面に転写する転写手段と、前記記録媒体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、転写後の前記像保持体表面に残存するトナーを除去するトナー除去手段と、を少なくとも備え、前記現像剤が既述の本実施形態の現像剤であることを特徴とする。本実施形態の画像形成装置は本実施形態の現像剤を用いるため、長期に亘って高品質の画像が形成される。
また本実施形態の画像形成装置は、トナー除去手段により除去された残留トナーを回収し、回収された残留トナーを現像手段に供給する残留トナー回収供給手段をさらに含んでもよい。本実施形態では、現像剤として本実施形態の現像剤を用いているため、トナーの耐久性が高く、トナーを再利用する構成でも長期に亘って高品質の画像が形成される。
以下、本実施形態の画像形成装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略することがある
−第1実施形態−
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置を示す構成図である。図1に示す画像形成装置は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置であり、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1から第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め決められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着されるなプロセスカートリッジであってもよい。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に必要な張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含む現像剤が収容されている。また、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが、それぞれ、現像装置4Y、4M、4C、4Kに供給される。
上述した第1から第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2から第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Y(潜像保持体)を有している。なお、像保持体の詳細については後述する。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3(静電潜像形成手段)、帯電したトナーを静電潜像に供給して静電潜像を現像する現像装置4Y(現像手段)、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写(一時転写)する1次転写ローラ5Y、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去するクリーニング装置(トナー除去手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600Vから−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って所定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像化(現像)される。
現像装置4Y内には、イエロートナーを含む現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き所定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が所定の1次転写位置へ搬送される。
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに所定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2から第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
第1から第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録媒体P(被転写体)が供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に所定のタイミングで給紙され、所定の2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
この後、記録媒体Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録媒体P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録媒体Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kが着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換してもよい。
−第2実施形態−
図2は、他の好適な一実施形態(第2実施形態)における画像形成装置の基本構成を概略的に示す断面図である。
図2に示す画像形成装置は、本実施形態の現像剤を、現像手段内にある現像剤収容容器へ現像剤供給手段により必要に応じて供給する方式を採用した構成となっている。
また図2に示す画像形成装置は、クリーニング手段(トナー除去手段)のクリーニングブレードにより潜像保持体表面から除去された残留トナーを回収し、現像手段へ供給することにより、残留トナーが再利用されるトナーリクレイム方式を採用した構成となっている。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、矢印aで示すように、時計回り方向に回転する静電潜像保持体110(潜像保持体)と、静電潜像保持体110の上方に、静電潜像保持体110に相対して設けられ、静電潜像保持体110の表面を負に帯電させる帯電手段120と、帯電手段120により帯電した静電潜像保持体110の表面に、現像剤(トナー)で形成しようとする画像を書き込んで静電潜像を形成する静電潜像形成手段130と、静電潜像形成手段130の下流側に設けられ、静電潜像形成手段130で形成された静電潜像にトナーを付着させて静電潜像保持体110の表面にトナー像を形成する現像手段140と、静電潜像保持体110に接触しつつ矢印bで示す方向に走行するとともに、静電潜像保持体110の表面に形成されたトナー像を転写するエンドレスベルト状の中間転写ベルト150と、中間転写ベルト150にトナー像を転写した後の静電潜像保持体110の表面を除電して、表面に残った転写残トナーを除去し易くする除電手段160と、静電潜像保持体110の表面を清掃して前記転写残トナーを除去するクリーニング手段170(トナー除去手段)と、を備える。
帯電手段120、静電潜像形成手段130、現像手段140、中間転写ベルト150、除電手段160、及びクリーニング手段170は、静電潜像保持体110を囲む円周上に、時計周り方向に配設されている。
中間転写ベルト150は、内側から、張架ローラ150A、150B、バックアップローラ150C、及び駆動ローラ150Dによって緊張され、保持されるとともに、駆動ローラ150Dの回転に伴い矢印bの方向に駆動される。中間転写ベルト150の内側における静電潜像保持体110に相対する位置には、中間転写ベルト150を正に帯電させて中間転写ベルト150の外側の面に静電潜像保持体110上のトナーを吸着させる1次転写ローラ151が設けられている。中間転写ベルト150の下方における外側には、記録媒体Pを正に帯電させて中間転写ベルト150に押圧することにより、中間転写ベルト150に形成されたトナー像を記録媒体P上に転写する2次転写ローラ152がバックアップローラ150Cに対向して設けられている。
中間転写ベルト150の下方には、さらに、2次転写ローラ152に記録媒体Pを供給する記録媒体供給装置153と、2次転写ローラ152においてトナー像が形成された記録媒体Pを搬送しつつ、前記トナー像を定着させる定着手段180とが設けられている。
記録媒体供給装置153は、1対の搬送ローラ153Aと、搬送ローラ153Aで搬送される記録媒体Pを2次転写ローラ152に向かって誘導する誘導スロープ153Bと、を備える。一方、定着手段180は、2次転写ローラ152によってトナー像が転写された記録媒体Pを加熱・押圧することにより、前記トナー像の定着を行う1対の熱ローラである定着ローラ181と、定着ローラ181に向かって記録媒体Pを搬送する搬送コンベア182とを有する。
記録媒体Pは、記録媒体供給装置153と2次転写ローラ152と定着手段180とにより、矢印cで示す方向に搬送される。
中間転写ベルト150の近傍には、さらに、2次転写ローラ152において記録媒体Pにトナー像を転写した後に中間転写ベルト150に残ったトナーを除去するクリーニングブレードを有する中間転写体クリーニング手段154が設けられている。
以下、現像手段140について詳細に説明する。現像手段140は、現像領域で静電潜像保持体110に対向して配置されており、例えば、負(−)極性に帯電するトナー及び正(+)極性に帯電するキャリアで構成される2成分現像剤を収容する現像剤収容容器141を有している。現像剤収容容器141は、現像剤収容容器本体141Aとその上端を塞ぐ現像剤収容容器カバー141Bとを有している。
現像剤収容容器本体141Aはその内側に、現像ロール142を収容する現像ロール室142Aを有しており、現像ロール室142Aに隣接して、第1攪拌室143Aと第1攪拌室143Aに隣接する第2攪拌室144Aとを有している。また、現像ロール室142A内には、現像剤収容容器カバー141Bが現像剤収容容器本体141Aに装着されたときに現像ロール142表面の現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材145が設けられている。
第1攪拌室143Aと第2攪拌室144Aとの間には仕切り壁141Cにより仕切られており、図示しないが、第1攪拌室143A及び第2攪拌室144Aの仕切り壁141Cの長手方向(現像装置長手方向)両端部には通路が設けられており、第1攪拌室143A及び第2攪拌室144Aによって循環攪拌室(143A+144A)を構成している。
そして、現像ロール室142Aには、静電潜像保持体110と対向するように現像ロール142が配置されている。現像ロール142は、図示しないが磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1攪拌室143Aの現像剤は磁性ロールの磁力によって現像ロール142の表面上に吸着されて、現像領域に搬送される。また、現像ロール142はそのロール軸が現像剤収容容器本体141Aに回転自由に支持されている。ここで、現像ロール142と静電潜像保持体110とは、逆方向に回転し、対向部において、現像ロール142の表面上に吸着された現像剤は、静電潜像保持体110の進行方向と同方向から現像領域に搬送するようにしている。
また、現像ロール142のスリーブには、不図示のバイアス電源が接続され、所定の現像バイアスが印加されるようになっている(本実施の形態では、現像領域に交番電界が印加されるように、直流成分(DC)に交流成分(AC)を重畳したバイアスを印加)。
第1攪拌室143A及び第2攪拌室144Aには現像剤を攪拌しながら搬送する第1攪拌部材143(攪拌・搬送部材)及び第2攪拌部材144(攪拌・搬送部材)が配置されている。第1攪拌部材143は、現像ロール142の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第1攪拌部材143と同様に、第2攪拌部材144も、第2回転軸及び攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。なお、攪拌部材は現像剤収容容器本体141Aに回転自由に支持されている。そして、第1攪拌部材143及び第2攪拌部材144は、その回転によって、第1攪拌室143A及び第2攪拌室144Aの中の現像剤は互いに逆方向に搬送されるように配設されている。
そして、第2攪拌室144Aの長手方向一端側には、供給用トナー及び供給用キャリアを含む供給用現像剤を第2攪拌室144Aへ適宜供給するための現像剤供給手段146の一端が連結されており、現像剤供給手段146の他端には、供給用現像剤を収容している現像剤カートリッジ147が連結されている。
このように現像手段140は、現像剤カートリッジ147から現像剤供給手段146を経て供給用現像剤を現像手段140(第2攪拌室144A)へ適宜供給する。
ここで本実施の形態では、本発明の供給用現像剤を収容している現像剤カートリッジ147を用いる構成を一例として挙げたが、現像剤カートリッジ147は、供給用トナーを単独で収納するカートリッジと供給用キャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものであっても良い。
次に、クリーニング手段170について詳細に説明する。クリーニング手段170は、ハウジング171と、ハウジング171から突出するように配設されるクリーニングブレード172を含んで構成されている。クリーニングブレード172は、静電潜像保持体110の回転軸の延在方向に延びる板状のものであって、静電潜像保持体110における1次転写ローラ151による転写位置より回転方向(矢印a方向)下流側で且つ、除電手段160によって除電される位置より回転方向下流側に、先端部(以下、エッジ部という)が圧接されるように設けられている。
クリーニングブレード172は、静電潜像保持体110が所定方向(矢印a方向)に回転することによって、1次転写ローラ151により中間転写ベルト150に転写されずに静電潜像保持体110上に保持されている未転写残留トナーや記録媒体Pの紙粉等の異物を、堰き止めて静電潜像保持体110から除去する。
また、ハウジング171内の底部には、搬送部材173が配設されており、ハウジング171における搬送部材173の搬送方向下流側にはクリーニングブレード172により除去されたトナー粒子(現像剤)を現像手段140へ供給するための供給搬送手段174の一端が連結されている。そして、供給搬送手段174の他端は現像剤供給手段146へ合流するように連結されている。
このようにクリーニング手段170は、ハウジング171の底部に設けられた搬送部材173の回転に伴い、供給搬送手段174を通じて未転写残留トナー粒子を現像手段140(第2攪拌室144A)へと搬送し、収容されている現像剤(トナー)とともに攪拌搬送して再利用するトナーリクレイム方式を採用している。
−潜像保持体−
次に、本実施形態における画像形成装置を構成する潜像保持体(像保持体)について説明する。
像保持体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を設けた公知の感光体(電子写真用感光体)が利用されるが、有機感光体を用いることが好ましい。この場合、像保持体の最表面を構成する層、例えば保護層が、架橋構造を有する樹脂を含むものであることが好ましい。架橋構造を有する樹脂としては例えばフェノール樹脂、ウレタン樹脂、シロキサン系樹脂が利用されるが、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が最も好ましい。
また本実施形態においては、像保持体の最表面を構成する層が、三次元架橋構造を有する樹脂を含むことが好ましい。三次元架橋構造を有する樹脂を含む最表面を構成する層は、その強度が高いため、磨耗や傷に対する耐久性が高く、像保持体が長寿命となる。しかしながら、保持体表面が磨耗しくいため、付着したトナー成分を除去しにくくなる欠点を合わせもつ。
これに対して、クリーニング性を確保するために、例えばクリーニングブレードを像保持体に対して高い接触圧で接触させた場合、クリーニングブレードと像保持体との接触部において、トルクが上昇し像保持体表面に残留したトナーが破壊され易くなる場合がある。またトナーが破壊されると、トナー構成材料が像保持体表面へ付着し、帯電変動が生じやすくなる場合がある。しかし本実施形態のトナーは表面の柔軟性が高く、内部は十分な弾性力を有するため耐久性が高く、優れた強度を有するため、トナー表面に添加される外添剤の埋没状態、分散状態が良好であることからトナーの構造変化によるトナー同士の異常帯電や、添加剤が離脱することによる感光体表面の偏磨耗が抑制される。更に、トナーをリサイクルして再利用する方式と組み合わせても、トナーの耐久性、構造維持性が高いことから、長期に渡って画質の良好な画像が形成される。
なお、表面保護層に含まれる樹脂の三次元架橋構造は、以下のようにして観測される。
表面層特有の元素に関して、Ar雰囲気下、加速電圧400±10V、真空度(3±1)×10−2Paの条件で180秒間イオンエッチングし、その表面をX線光電子分析し、エッチング前後の該特定元素の存在量(Atom%)の差より判断できる。その差が小さいほど表面保護層の架橋構造が強固で均一であると判断できる。特有の元素としては例えば、Si、Ti、Alなどが挙げられる、また、架橋構造を有することで保護層を形成する他元素C,O、Nなども深さ方向に対して均一化されるため、値の変動がちいさくなる。
一般的に、イオンエッチング前の存在量に対して、前後の差が10%以内であれば架橋構造を有していると考えられる
<プロセスカートリッジ>
本実施形態のプロセスカートリッジは、少なくとも現像剤保持体を備え、現像剤として本実施形態の現像剤を用いている。またそのほかに、像保持体、帯電手段、トナー除去手段等を備えてもよい。
図3は、本実施形態の現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107(潜像保持体)とともに、帯電ローラ108、現像剤保持体111Aを備えた現像装置111、感光体クリーニング装置113(トナー除去手段)、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を、取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。なお、300は記録紙(記録媒体)である。
図3で示すプロセスカートリッジでは、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像剤保持体111Aを備えていれば、感光体107、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
<トナーカートリッジ>
本実施形態のトナーカートリッジは、現像手段を少なくとも備えた画像形成装置に対して脱着され、前記トナー像形成手段に供給するためのトナーを含む現像剤を収納し、前記トナーが既述の本実施形態のトナーであることを特徴とする。なお、本実施形態のトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
従って、トナーカートリッジの着脱が自在な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態のトナーを収めたトナーカートリッジを利用することにより、特に容器が小型化されたトナーカートリッジにおいても保存性を保つことができ、高画質を維持しつつ低温定着化される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
なお、実施例中において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いたトナー等の物性測定方法について説明する。
(樹脂の分子量)
樹脂の分子量分布は以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
(樹脂粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径)
樹脂粒子(樹脂粒子)、着色剤粒子等の体積平均粒径は、レーザー回折粒度測定器(島津製作所製、SALD2000A)で測定した。
(樹脂の融解温度、ガラス転移温度)
トナー、結晶性ポリエステル樹脂の融解温度、トナー及び非結晶性樹脂のガラス転移温度は、ASTMD3418−8に準拠して測定された各極大ピークより求めた。なお、ガラス転移温度は吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度とし、融解温度は吸熱ピークの頂点の温度とした。
なお、測定には示差走査熱量計(DSC−60A 自動冷却器付、島津製作所社製)を用いた。
<現像剤の調製>
現像剤は、先ずトナー及びキャリアを製造し、そして、それらを用いて製造した。また、トナーを製造する際には、先ず、樹脂粒子分散液、着色剤分散液及び離型剤分散液を製造し、それらを用いてトナー粒子を製造した。次に、それを用いてトナーおよび現像剤を製造した。
−非結晶性ポリエステル樹脂(A1)及び非結晶性樹脂粒子分散液(a1)の調製−
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン20モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン80モル部と、テレフタル酸15モル部と、フマル酸67モル部と、n−ドデセニルコハク酸3モル部と、トリメリット酸25モル部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、フマル酸の合計モル数)に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150℃乃至230℃で12時間から20時間共縮重合反応させ、その後、210℃乃至250℃で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂(A1)を合成した。この樹脂の重量平均分子量Mwは70000、ガラス転移温度Tgは65℃であった。
高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)の乳化タンクに、得られた非結晶性ポリエステル樹脂3000部、イオン交換水10000部、界面活性剤ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム90部を投入した後、130℃に加熱溶融後、110℃で流量3L/mにて10000回転で30分間分散させ、冷却タンクを通過させて非結晶性樹脂粒子分散液(高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010 スリット0.4mm)を回収し、非結晶性樹脂粒子分散液(a1)を得た。
加熱乾燥した二口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン65モル部と、テレフタル酸80モル部と、n−ドデセニルコハク酸15モル部と、トリメリット酸10モル部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸の合計モル数)に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150℃以上230℃以下で約12時間共縮重合反応させ、その後、210℃以上250℃以下で徐々に減圧して、非晶性ポリエステル樹脂(B1)を合成した。
この樹脂の重量平均分子量(Mw)は16000であり、ガラス転移温度Tgは60℃であった
その後、非結晶性樹脂分散液(A1)の作製と同じ条件にて高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)を用い、結晶性樹脂粒子分散液(b1)を得た。
−結晶性ポリエステル樹脂(C1)及び結晶性樹脂粒子分散液(c1)の調製−
加熱乾燥した3口フラスコに、1、9−ノナンジオール40モル部と、ドデカンジカルボン酸60モル部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.05モル部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で2時間攪拌を行った。その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い5時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(B1)を合成した。この樹脂の重量平均分子量Mwは23000、融解温度Tmは74℃であった。
その後、非結晶性樹脂分散液(A1)の作製と同じ条件にて高温・高圧乳化装置(キャビトロンCD1010、スリット:0.4mm)を用い、結晶性樹脂粒子分散液(c1)を得た。
−着色剤粒子分散液(1)の調製−
・シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)):1000部
・アニオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム 和光純薬社製):150部
・イオン交換水:4000部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散して着色剤(シアン顔料)粒子を分散させてなる着色剤粒子分散液(1)を調製した。着色剤粒子分散液における着色剤(シアン顔料)粒子の体積平均粒径は0.15μm、着色剤粒子濃度は20%であった。
−離型剤粒子分散液(1)の調製−
・フィッシャートロプシュワックス(日本精鑞社製、HNP51100部
・アニオン界面活性剤(日本油脂社製、ニューレックスR):2部
・イオン交換水:300部
以上の成分を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径が200nmである離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液(1)(離型剤濃度:20質量%)を調製した。
[トナーの作製]
−トナーA1の作製−
(トナー粒子の作製)
・非結晶性樹脂粒子分散液(a1):180部
・非結晶性樹脂粒子分散液(b1):140部
・結晶性樹脂粒子分散液(c1):80部
・着色剤粒子分散液(1):50部
・離型剤粒子分散液:60部
・硫酸アルミニウム(和光純薬社製):5部
・0.3M硝酸水溶液:50部
・イオン交換水:500部
上記成分のうち非結晶性樹脂粒子分散液(a1)、(b1)及び結晶性樹脂粒子分散液(c1)を最初に丸型ステンレスフラスコ内に収容し、生分解性を有する活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬社製)20%水溶液10部と混合攪拌する。その後、上記他の成分を投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで攪拌しながら加熱した。48℃で保持した後、平均粒径が5.2μm程度である凝集粒子が形成されていることが確認した段階で、追加の非結晶性樹脂粒子分散液(a1):50部,(b1):50部混合液を添加後、更に30分保持した。
続いて、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpH7.0に到達するまで穏やかに添加した後、生分解性分散剤として、ドデカン−1,12−ジオール酢酸エーテルナトリウム(三洋化成製 ビューライトSHAA ヒドロキシエーテルカルボン酸)を5部添加、錯化剤として、キレスト社製キレストE20(ヒドロキシイミノジ酢酸2Na)5部を添加、攪拌を継続しながら、非結晶性樹脂のガラス転移温度および結晶性樹脂のガラ融解温度以上である90℃まで加熱し、その温度で2時間保持した。その後、非結晶性樹脂のガラス転移温度および結晶性樹脂の融解温度以下である35℃に冷却し、反応生成物をろ過し、イオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥してトナー粒子を得た。
(外添剤処理)
その後、得られたトナー母粒子100部に対して、外添剤として、炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社(SL1500)モース硬度:2.0)1.0部、アルミナ(住友化学社、AKP30、モース硬度:9.0)0.5部、シリカ( AEROSIL R 812 アエロジル社、モース硬度:7.0)0.5部をヘンシェルミキサーで混合して外添し、トナーA1を得た。
−トナーA2の作製−
トナーA1の作製において、生分解性分散剤として、ドデカン−1,12−ジオール酢酸エーテルナトリウムに代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(三洋化成社製 ビューライトLCA)を等量用いた以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA2を得た。
−トナーA3の作製−
トナーA1の作製において、生分解性分散剤として、ドデカン−1,12−ジオール酢酸エーテルナトリウムに代えて、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(ビューライトECA)を等量用いた以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA3を得た。
−トナーA4の作製−
トナーA1の作製において、生分解性分散剤(ドデカン−1,12−ジオール酢酸エーテルナトリウム)の添加量5部を7部に変更した以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA4を得た。
−トナーA5の作製−
トナーA1の作製において、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpH5.0とする条件として添加し、更に、生分解性分散剤(ドデカン−1,12−ジオール酢酸エーテルナトリウム)の添加量を5部から1部に変更した以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA5を得た。
−トナーA6の作製−
トナーA1の作製において、着色剤粒子分散液(1)とともに添加する非結晶性樹脂粒子分散液(a1)の添加量を180部から120部に、非結晶性樹脂粒子分散液(b1)の添加量を140部から200部に、それぞれ変更した以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA6を作製した。
−トナーA7の作製−
トナーA1の作製において、着色剤粒子分散液(1)とともに添加する非結晶性樹脂粒子分散液(a1)の添加量を180部から200部に、非結晶性樹脂粒子分散液(b1)の添加量を140部から120部に、それぞれ変更した以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA7を得た。
−トナーA8の作製−
トナーA1の作製において、着色剤粒子分散液(1)とともに添加する非結晶性樹脂粒子分散液(a1)の添加量を180部から80部に、非結晶性樹脂粒子分散液(b1)の添加量を140部から240部に、それぞれ変更した以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA8を得た。
−トナーA9の作製−
トナーA1作製において、着色剤粒子分散液(1)とともに添加する非結晶性樹脂粒子分散液(a1)の添加量を180部から240部に、非結晶性樹脂粒子分散液(b1)の添加量を140部から80部に、それぞれ変更した以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA9を得た。
−トナーA10(比較トナー)の作製−
トナーA1の作製において、生分解性分散剤として、ドデカン−1,12−ジオール酢酸エーテルナトリウム5部に代えて、生分解性を有しない分散剤であるアルキルベンゼンスルフォン酸(ネオゲンRK)5部を用いた以外は、トナーA1の作製と同様にしてトナーA10を得た。
−トナーA11の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として、炭酸カルシウム1.0部、アルミナ0.5部、及び、シリカ0.5部の混合物に代えて、炭酸カルシウム0.3部、アルミナ0.2部、シリカ0.3部をヘンシェルミキサーで混合したものを外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA11を得た。
−トナーA12の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として、炭酸カルシウム1.0部、アルミナ0.5部、及び、シリカ0.5部の混合物に代えて、炭酸カルシウム0.7部、アルミナ0.6部、シリカ0.6部をヘンシェルミキサーで混合したものを外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA12を得た。
−トナーA13の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として、炭酸カルシウム1.0部、アルミナ0.5部、及び、シリカ0.5部の混合物に代えて、炭酸カルシウム0.1部、アルミナ0.2部、シリカ0.1部をヘンシェルミキサーで混合したものを外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA12を得た。
−トナーA14の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として、炭酸カルシウム1.0部、アルミナ0.5部、及び、シリカ0.5部の混合物に代えて、炭酸カルシウム0.9部、アルミナ1部、及びシリカ0.9部をヘンシェルミキサーで混合したものを外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA14を得た。
−トナーA15の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として用いた炭酸カルシウムの代わりにヒドロキシアパタイト(純正化学製 モース硬度5)を混合して外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA15を得た。
−トナー16の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として用いた炭酸カルシウムの代わりに硫酸カルシウム2水和物(純正化学製 モース硬度2)を混合して外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA16を得た。
−トナー17の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として、炭酸カルシウムに代えてフッ化カルシウムを用い、アルミナを添加しないように変更して混合したものを外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA17を得た。
−トナー18の作製−
トナーA1の作製において、外添剤として、炭酸カルシウムのかわりにタルク(純正化学製)用い、アルミナの代わりに炭化ホウ素(純正化学製)変更して混合して外添した以外は、トナーA1と同様にしてトナーA18を得た。
トナーA1からトナーA18までに含まれる生分解性分散剤の種類及び含有量を表1に示す。
−トナー粒子の評価−
また、得られたトナー粒子をメタノール/水の1:1混合溶液に10質量%添加し、室温(25℃)にてボールミルなどの回転装置により20分間混合攪拌した後、固液分離を行ない、液中の溶解分を風乾して重量を測定しトナー投入量に対する比率を計算し、溶解分率を求めた結果を下記表1に併記する。この結果より、生分解性分散剤を用いることなく調整したトナーA10は、溶解分率が6.1であり、本発明の範囲外の比較トナー粒子であることがわかる。
さらに、トナー表面をX線光電子分光装置により上記条件にて測定し、トナー表面における外添剤(酸化物粒子)の被覆率を求めた。結果を下記表1に併記する。
Figure 2010145536
[キャリアの調製]
フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径:50μm)100部とメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン社製、重量平均分子量:95000)2.5部とを、トルエン500部と共に加圧式ニーダーに入れ、室温(25℃)で15分間攪拌混合した後、減圧混合しながら70℃まで昇温し、トルエンを留去した後、冷却し、目開き105μmの篩を用いて分級することにより、フェライトキャリア(樹脂被覆キャリア)を作製した。
[現像剤の調製]
フェライトキャリアと、上記トナーA1からトナーA18の各々のトナーとを混合して、トナー濃度が7質量%である二成分系の現像剤(現像剤1から現像剤18)をそれぞれ作製した。
<感光体の作製>
(感光体−1)
円筒状のAl基板をセンタレス研磨装置により研磨し、十点平均表面粗さRzを0.6μmとした。洗浄工程としてこのシリンダーを脱脂処理、2質量%水酸化ナトリウム溶液で1分間エッチング処理、中和処理、更に純水洗浄を順に行った。次に、陽極酸化処理工程として10質量%硫酸溶液によりシリンダー表面に陽極酸化膜(電流密度1.0A/dm)を形成した。水洗後、1質量%酢酸ニッケル溶液80℃に20分間浸漬して封孔処理を行った。更に純水洗浄、乾燥処理を行った。このようにして、アルミニウムシリンダー表面に7μmの陽極酸化膜を形成した。
このアルミニウム基材上にX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.2°に強い回折ピークを持つチタニルフタロシアニンの1部をポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学)1部、および酢酸n−ブチル100部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を前記下引き層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記構造のベンジジン化合物(下記化合物1)2部、および、高分子化合物(下記化合物2、粘度平均分子量:39,000、nは繰り返し数を示す。)2.5部をクロロベンゼン20部に溶解させた塗布液を前記電荷発生層上に浸漬コ−ティング法で塗布し、110℃、40分の加熱を行なって膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 2010145536
更に下記化合物4を5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03部、及びイソプロパノールを20部混合して溶解し、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬コーティング法で前記像保持体の電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分乾燥させ、膜厚3μmの保護層(最表面層)を形成し感光体を得た。
Figure 2010145536
(感光体2の作製)
酸化亜鉛(テイカ社製、SMZ‐017N)100部とトルエン500部とを攪拌混合し、シランカップリング剤(日本ユニカー社製、A1100)2部を添加し、5時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付け、表面処理酸化亜鉛を得た。
この表面処理酸化亜鉛35部と硬化剤ブロック化イソシアネート(住友バイエルンウレタン社製、スミジュール3175)15部とブチラール樹脂(積水化学社製、BM−1)6部トメチルエチルケトン44部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーン樹脂(GE東芝シリコーン社製、トスパール130)17部を添加し、下引き層用塗布液を得た。
この塗布液を湿漬塗布法にてJISA3003合金よりなる84mmの引き抜き管基材上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い、厚さ20μmの下引き層を得た。
この下引き層上にX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.4°、16.6°、25.5°、28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニン1部をポリブチラール樹脂(積水化学社製、BM−S)1部および酢酸ブチル100部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、得られた塗布液を前記下引き層上に湿漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥し、膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、高分子化合物(前記化合物2)3部と、ベンジジン化合物(前記化合物1)2部とをテトラヒドロフラン20部に溶解させた電荷輸送用塗布液を前記電荷発生層上に湿漬コートし、電荷輸送層を得、電子写真感光体2を得た。
(感光体3の作製)
特開2006−0330278号公報の[0238]に記載の化合物3、前記化合物4をそれぞれ2部とテトラメトキシシラン0.05部を、イソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部、蒸留水0.3部に溶解させ、これにイオン交換樹脂(アンバーリスト15E)0.05部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。
得られた液体から、イオン交換樹脂を濾過分離し、得られた濾液2部に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04部、3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン0.02部を加え得られた液体を表面保護層形成用塗布液Aとした。この表面保護層形成用塗布液Aを湿漬コーティング法により、前記感光体1における保護層を形成する前の前記像保持体の電荷輸送層上に塗布し、室温で30分乾燥させた後、150℃で1時間加熱処理して硬化させた。こうして膜厚約3μmの表面保護層を形成し、これを感光体3とした。
感光体1から感光体3における保護層が、三次元架橋構造を有する樹脂を含むか否かを上記方法により確認し、その結果を表2に示す。
<実施例1から実施例17、比較例1>
(評価)
富士ゼロックス製プリンターDocuCentre Color 400CP改造機(プロセススピード350mm/s、表1に示す感光体を装着し、帯電手段、潜像形成手段、トナー像形成手段、転写手段、定着手段、クリーニング手段、残留トナー回収供給手段を備える。)を用い、表1に示すトナーを含む現像剤を用いて、高温高湿(28℃、85%RH)の環境下で100000枚の画像形成テスト(画像カバレッジ濃度5%)し、ついで低温低湿(10℃、15%RH)の環境下にて100000枚の画像形成テストを実施した。更に、高温高湿環境と低温低湿環境にて同条件で行い計400000枚の画像形成テスト後に回収された残留トナーの異常帯電性、変形トナー率、形成された画像の画質、感光体の表面状態、及びクリーニングブレードの変化を以下の基準で評価した。
−異常帯電レベルの判定−
400000枚走行後、クリーニング回収トナーを採取、200μ網にて紙粉など異物を除去した後、実機走行に使用した現像剤と同条件にて現像剤を作製した。作製した現像剤と、実機評価使用前の現像剤の帯電性能を現像機の空回し評価(3m)で比較した。結果を表に示す。
◎:空回し10秒以降、実機走行後と評価使用前の帯電レベルの差が2μc以内で大変良好
○:空回し10秒以降、実機走行後と評価使用前の帯電レベルの差が3μc以上5μc以下で良好
○−:空回し20秒まで実機走行後と評価使用前の帯電レベルの差が5μc以上10μc以下あるが、以降3μc以上5μc以下にまで回復
△:空回し30秒でも帯電レベル差5μc以上10μc以下、60秒で5μc以上10μ以下に回復。
×:60秒以降も10μc以上の差があり回復しない
−画質の評価−
形成された画像の画質を目視で評価した。結果を表2に示す。
◎:画像に筋及び抜けがなく良好、細線及びハーフトーンの再現性良好
○:画像に筋及び抜けがなく良好、細線再現良好、ハーフトーンで諧調低下するが実使用上問題ない
○-:画像に筋及び抜けがなく良好、細線再現やや低下、ハーフトーン諧調低下するがいずれも実使用上問題ない
△:画像に僅かに白点抜けが見られるが、数枚で回復するレベル。許容範囲内。
×:画像に白筋及び白点抜けが顕著に発生し、回復するまで50枚以上必要
−クリーニングブレードの変化−
クリーニングブレードの変化は100倍のレーザー顕微鏡で観察した。評価基準は以下の通りであり、結果を表2に示す。
◎:画像・非画像部とも磨耗なく良好である。
○:画像部・非画像部の差があるが、実使用上問題ない。
○−:画像部に磨耗見られるが画像への影響無し、あるいは、濃度低下部分ありものの現像機から回しにより即時に回復する軽微なレベル。
△+:画像濃度が高い領域で磨耗大きいが、許容範囲である。
△:画像部で磨耗大きく、画像濃度によっては問題になる場合がある。
×:クリーニング不良が発生、画像上も筋となり問題である。
Figure 2010145536
表2より、実施例1から実施例17は、比較例1に比べ、画像形成テスト後のトナー異常帯電率が小さく、クリーニングブレードの変化、及び形成された画像の画質が、何れも良好であり、画像形成テストを経た後も、トナーの変形や外添剤の脱落に起因するトナーの物性劣化が抑制されていることがわかる。
また、これらのなかでも、トナーの溶解分率、貯蔵弾性率の変化幅、及び、トナー表面における酸化物粒子の被覆率のいずれもが好ましい範囲にある実施例1及び実施例2において、その効果が良好であることがわかる。
本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。 本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1Y、1M、1C、1K、107、110 感光体(潜像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108、120 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K、130 レーザ光線(静電潜像形成手段)
3、110 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111、140 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113、170 感光体クリーニング装置(トナー除去手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
100 画像形成装置
112 転写装置
147 現像剤カートリッジ(トナーカートリッジ)
200 プロセスカートリッジ、
P 記録紙(被転写体)

Claims (14)

  1. 樹脂と、着色剤とを含むトナー粒子を含有し、且つ、該トナー粒子をアルコールと水の体積比率1:1の混合溶液に溶解した際の溶解分率が、トナー粒子の全質量に対して0.5%以上5.0%以下である静電荷像現像用トナー。
  2. 前記樹脂として、架橋ポリエステル樹脂及び非架橋ポリエステル樹脂を含有し、角速度6.28rad、毎分1℃の温度変化条件のもと動的粘弾測定を行った際、30℃から170℃までの昇温過程の貯蔵弾性率G’を測定した場合の、60℃から140℃までの昇温過程のG’変化幅が10以上10Pa以下であり、且つ、150℃から170℃までの昇温過程のG’変化幅が10Pa以下ある請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 前記トナーにおける樹脂中に、生分解性の分散剤を含有する請求項1又は請求項2記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 前記生分解性の分散剤が、前記トナーの製造工程に由来する請求項3記載の静電荷像現像用トナー。
  5. 少なくとも一方に生分解性の分散剤を含む樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液と着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液とを混合し、樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集させ、加熱して融合・合一させて得られた請求項3又は請求項4記載の静電荷像現像用トナー。
  6. 添加剤として2種類以上の酸化物粒子を含有し、トナー表面をX線光電子分光装置により測定した時の、トナー表面における酸化物粒子の被覆率が50%以上95%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項記載の静電荷像現像用トナー。
  7. 前記2種類以上の酸化物粒子の最大硬度と最小硬度の硬度差が4以上8以下である請求項6記載の静電荷像現像用トナー。
  8. 樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液を調整する樹脂粒子分散液調整工程と、
    着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液を調整する着色剤粒子分散液調整工程と、
    前記樹脂粒子分散液及び前記着色剤粒子分散液を混合し、前記樹脂粒子及び前記着色剤粒子を含む混合溶液を調整する混合溶液調整工程と、
    前記樹脂粒子及び前記着色剤粒子が凝集した凝集粒子を調整する凝集粒子調整工程と、
    前記凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程と、
    前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程と、を含み、
    前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して融合・合一する融合・合一工程、前記樹脂粒子のガラス転移温度以下まで冷却する工程の少なくても一つの工程が、生分解性の分散剤を添加する工程と、塩基性化合物を添加することで液のpHを7以上11以下の範囲に調整する工程とを含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
  9. 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む、静電荷像現像用現像剤。
  10. 現像手段を備えた画像形成装置に脱着され、前記現像手段に供給するためのトナーが収納され、前記トナーは、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーである、トナーカートリッジ。
  11. 現像保持体を備え、請求項9に記載の静電荷像現像用現像剤が収容されたプロセスカートリッジ。
  12. 潜像保持体と、
    前記潜像保持体の表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
    トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記潜像保持体上に形成された前記トナー像を記録媒体表面に転写する転写手段と、
    前記潜像保持体の表面上に残留した残留トナーを除去するためのトナー除去手段と、を有し、
    前記現像剤は、請求項9に記載の静電荷像現像用現像剤である画像形成装置。
  13. 前記トナー除去手段により除去された前記残留トナーを回収し、回収された前記残留トナーを前記現像手段に供給する残留トナー回収供給手段をさらに含む、請求項12に記載の画像形成装置。
  14. 前記潜像保持体の最表面を構成する層は、三次元架橋構造を有する樹脂を含む、請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
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