以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。このワイパモータ10は車両用のワイパ装置に備えられ、ワイパに連結されたリンク機構を駆動するものである。ワイパモータ10は、電動モータ11と電動モータ11の回転を減速させてリンク機構に伝達する減速機構とを1つのユニットとした減速機構付モータであり、駆動源である電動モータ11と減速機構を備えるギヤ部12とを有している。
電動モータ11にはブラシ付直流モータが用いられ、電動モータ11に設けられる回転軸13が正逆両方向に回転可能となっている。電動モータ11は、薄板鋼板等を有底の段付筒状にプレス成形することにより形成されるヨーク14を有しており、ヨーク14の内面には径方向内側に向けてN極とS極に着磁された複数の永久磁石15が回転軸13の回転方向に交互に固着されている。
ヨーク14の内部には、微小隙間(エアギャップ)を介して各永久磁石15に対向するアーマチュア(電機子)16が収容されている。アーマチュア16は、回転方向に複数のスロットを備えるアーマチュアコア16aを有し、アーマチュアコア16aの各スロットには導線が重ね巻されて複数のアーマチュアコイル16bが装着されている。アーマチュア16の軸心には回転軸13が貫通して設けられており、この回転軸13の軸方向一端側(図1中右側)の端部は、ヨーク14の底壁に固定された軸受17によって回転自在に支持されている。また、回転軸13には、アーマチュア16の軸方向他端側に隣接して当該アーマチュア16と一体に回転するコンミテータ18が固定されている。コンミテータ18は、互いに絶縁された状態で回転軸13の回転方向に等間隔に並べて配置される複数のセグメント片を備え、各セグメント片にはそれぞれ対応するアーマチュアコイル16bのコイル端が電気的に接続されている。
電動モータ11は、ヨーク14の開口側においてギヤ部12のギヤケース20に取り付けられている。回転軸13の軸方向他端側はギヤケース20内に突出され、軸受21等によって回転自在に支持されている。ギヤケース20内には図示しない減速機構が収容されており、回転軸13の回転が減速機構により所定の減速比で減速されて、出力軸22からワイパ装置のリンク機構に出力されるようになっている。
このワイパモータ10の電動モータ11には、電動モータ11を回転駆動するために、コンミテータ18を介してアーマチュア16のアーマチュアコイル16bに給電するブラシ装置24が装着されている。ブラシ装置24は、コンミテータ18周りに位置して、ヨーク14側に開口するギヤケース20の開口部20a内に配されている。
図2はブラシ装置の平面図であり、図3はブラシ装置を一部拡大して示す概略斜視図である。図4は図3における分解斜視図であり、図5は図3におけるA−A線に沿う断面図である。図2に示すように、ブラシ装置24は、コンミテータ18の外周面に摺接される一対のブラシ25を支持するブラシホルダ26を有している。このブラシホルダ26は、樹脂製のホルダベース27と当該ホルダベース27に装着される一対のブラシケース28とを備えており、各ブラシ25がブラシケース28内に支持されている。
ホルダベース27はギヤケース20の開口部20aの形状に対応して略小判形状に形成されている。ホルダベース27の外周部には回転軸13の軸方向一端側(アーマチュア16側)に延出する外壁27aが設けられ、ホルダベース27の径方向内側には回転軸13の軸方向に貫通する円形の貫通孔27bが形成されている。図1に示すように、ブラシ装置24は、ホルダベース27をギヤケース20の開口部20aに軽圧入することにより装着され、貫通孔27bを貫通するコンミテータ18周りに配置されている。
ホルダベース27の軸方向一端側の端面には、相互に回転軸13の回転方向に90°離隔して配された一対のブラシケース28と、各ブラシケース28内に支持されたブラシ25を図示しない給電装置と電気的に接続する導電部材29とが固着されている。図4に示すように、ブラシケース28は、ホルダベース27の貫通孔27bから外壁27aにかけて回転軸13の径方向に延びる一対の側壁28aと、各側壁28aの径方向外側(外壁27a側)に設けられる後壁28bと、各側壁28aおよび後壁28bの軸方向一端側の端部を連結する天井壁28cとを備えるケース状となっており、ブラシケース28は径方向内側(貫通孔27b側)および軸方向他端側に開口している。各ブラシケース28の装着位置に対応させて、ホルダベース27の軸方向一端側の端面には略長方形状の凹部27cが形成されており、当該凹部27cに嵌め込まれたプレート30により、ブラシケース28の軸方向他端側の開口部が閉塞されるようになっている。
ブラシケース28は、各側壁28aの径方向中央部から軸方向他端側に延びる一対の挿入爪32aと、後壁28bから軸方向他端側に延びる一つの挿入爪32bとを備えている。各挿入爪32aはホルダベース27およびプレート30に形成された一対の貫通孔に挿入され、挿入爪32bはホルダベース27に形成された貫通孔に挿入される。また、ブラシケース28は、挿入爪32aを挟んで各側壁28aの径方向両側端部から軸方向他端側に延びる二対のカシメ爪33を備えており、各カシメ爪33はホルダベース27に形成された二対の貫通孔に挿入されて、当該貫通孔から軸方向他端側に突出されたカシメ爪33の先端部が曲げ加工されている。これら挿入爪32a,32bとカシメ爪33とによって、ブラシケース28はプレート30とともにホルダベース27に装着されている。また、ブラシケース28の天井壁28cにはスリット34が径方向に延びて形成され、スリット34は軸方向に貫通するとともに径方向内側に開口している。
ブラシケース28の各側壁28aに対向するように、ホルダベース27には二対(計4つ)の嵌合部としての保持壁35が軸方向一端側に突出して一体に設けられている。保持壁35は、ブラシケース28の各側壁28aに対して回転軸13の回転方向(図5中左右方向)に所定の間隔をあけて離隔した位置に、各側壁28aとほぼ平行に延びて形成されている。この保持壁35の軸方向寸法(図5における上下方向寸法)はブラシケース28の軸方向寸法の約半分程度となっている。
図3に示すように、各保持壁35の径方向略中央部には、ブラシ25側の端面から当該ブラシ25から離反する方向へ切り欠かれた断面略矩形状の凹部36が形成されており、凹部36はホルダベース27を軸方向に貫通して軸方向両端側に開口している。また、保持壁35の径方向略中央部つまり凹部36の形成位置の軸方向他端側には、回転軸13の回転方向に保持壁35を貫通する嵌合孔(嵌合溝)37が形成されており、嵌合孔37はホルダベース27を貫通して軸方向他端側に開口している。凹部36はその軸方向他端側において嵌合孔37に連通しており、これら凹部36と嵌合孔37とにより、保持壁35の径方向略中央部の軸方向一端側には断面略矩形状の嵌合壁部35aが形成されている。図5に示すように、嵌合壁部35aは、ブラシ25側において凹部36に対向するとともに、軸方向他端側において嵌合孔37に対向している。
この嵌合壁部35aは、ブラシ25側の軸方向両端の角部において、当該角部が切り欠かれて形成された傾斜面(傾斜部)38a,38bを備えている。嵌合壁部35aの軸方向一端側の傾斜面38aは軸方向一端側の端面から軸方向他端側に向かうにつれてブラシ25側に傾斜され、嵌合壁部35aの軸方向他端側の傾斜面38bは軸方向他端側の端面から軸方向一端側に向かうにつれてブラシ25側に傾斜されている。
ブラシケース28の内部にはブラシ25が摺動自在に支持されている。ブラシ25は導電材料により回転軸13の径方向つまりブラシ25の摺動方向に延びるブロック状に形成されており、その径方向内側(摺動方向前方側)の端面においてコンミテータ18の外周面に摺接されるようになっている。ブラシ25の径方向外側(摺動方向後方側)の端面とブラシケース28の後壁28bとの間には、付勢手段としてのコイルばね40が組付けられ、コイルばね40の付勢力によりブラシ25は径方向内側に向けて付勢されている。このコイルばね40の付勢力により、ブラシ25は径方向内側に前進移動され、ブラシ25の径方向内側の端面がブラシホルダ26から径方向内側に突出してコンミテータ18の外周面に摺接する前進位置(図7(B)に示す)と、コイルばね40の付勢力に抗して径方向外側に後退移動され、ブラシ25の径方向内側の端面がブラシホルダ26内に収められてコンミテータ18と非接触となる後退位置(図7(A)に示す)との間で摺動自在となっている。なお、図2〜図5においては後退位置のもとでのブラシ25が図示されている。
また、ブラシ25には、ピグテール(導線)41の一端がブラシ25の軸方向一端側の端面から突出して組付けられている。ピグテール41はブラシケース28のスリット34を介して導電部材29に連結され、ピグテール41および導電部材29等を介して、ブラシ25は図示しない給電装置に電気的に接続されている。このピグテール41の一端部は、ブラシ25がブラシケース28内を摺動移動すると、ブラシケース28のスリット34内をブラシ25の摺動方向に移動するようになっている。ブラシ25が前進位置のもとで、ピグテール41からブラシ25に電流が供給されると、コンミテータ18を介してアーマチュア16に給電されて電動モータ11が駆動される。一方、ブラシ25が後退位置のもとでは、ブラシ25がコンミテータ18と非接触であるため、電動モータ11は不作動状態となる。
このブラシ装置24では、コンミテータ18をホルダベース27の貫通孔27bに挿通してコンミテータ18をブラシ装置24に組付ける際に、ブラシ25とコンミテータ18との干渉を防止してコンミテータ18の組付け作業の作業性を向上させるために、ブラシ25を後退位置に保持するための仮止め部材43がブラシホルダ26の保持壁35に着脱自在に取り付けられるようになっている。
図6は径方向外側から見た仮止め部材を示す斜視図である。仮止め部材43は金属材料により形成され、回転軸13の軸方向に延びて一対の保持壁35の凹部36に挿入される一対の挿入部44と、一対の挿入部44の軸方向一端部を連結する連結部45と、当該連結部45から軸方向一端側に延びる操作部46とを備えている。操作部46は、径方向外側に傾斜させた状態で連結部45から軸方向一端側に延びるとともに、その軸方向一端部から径方向外側に向けて曲折して形成されている。
一対の挿入部44は、一対の保持壁35の凹部36の形成位置に対応して、相互に回転軸13の回転方向に所定の間隔をあけて設けられている。挿入部44は凹部36に挿入可能な断面矩形状となっており、凹部36の径方向寸法は挿入部44の径方向寸法よりも僅かに大きく形成されている。挿入部44の軸方向中央部には、図5に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で嵌合壁部35aの軸方向他端側に隣接するように、ブラシ25から離反する側つまり嵌合孔37内に突出する断面半円形状の突起44aが設けられている。
連結部45は、一対の保持壁35の嵌合壁部35aの形成位置に対応して、軸方向他端側に延びる一対の延伸部45aを備えており、当該延伸部45aの軸方向他端側の端部において挿入部44の軸方向一端側の端部と連結されている。延伸部45aと挿入部44との連結部分は、延伸部45aよりも挿入部44がブラシ25側にずれて連結された段付き形状となっており、この段差部において、延伸部45aの軸方向他端側の端面には、嵌合壁部35aの軸方向一端側の端面に突き当てられる当接面43aが形成されている。また、図6に示すように、連結部45の径方向外側の端面には、回転方向略中央部つまりブラシケース28のスリット34の形成位置に対応して、所定の曲率を持って径方向内側に向けて湾曲する円弧状端面45bが形成されるとともに、回転方向両側の端部に位置して、所定の曲率を持って切り欠かれた円弧状角部45cが形成されている。
この仮止め部材43は嵌合部としての一対の保持壁35に軸方向一端側(装着方向基端側)から着脱自在に装着される。ブラシ25が後退位置のもとで仮止め部材43が保持壁35に装着されると仮止め部材43によりブラシ25が後退位置に保持され(仮止め状態)、仮止め部材43が保持壁35から取り外されるとブラシ25の後退位置への保持が解除される(通常状態)。
図7(A)、(B)はブラシの仮止め状態と通常状態を示す断面図であり、図7(A)は図5におけるB−B線に沿う断面図を示している。図5に示すように、仮止め部材43は、一対の挿入部44がブラシケース28を挟んで一対の保持壁35の凹部36に挿入され、各突起44aが嵌合孔37内に突出されて突起44aと嵌合孔37とが嵌合することにより保持壁35に装着される。図7(A)に示すように、ブラシ25が後退位置のもとで仮止め部材43が保持壁35に装着されると、ブラシ25に接続されたピグテール41の一端部が仮止め部材43の連結部45の径方向外側端面に当接される。これにより、ピグテール41を介してブラシ25の前進移動が規制されてブラシ25が後退位置に保持される。つまり、ブラシ25がブラシホルダ26内に収められる後退位置で仮止めされるため、コンミテータ18がブラシ25に干渉することなく、コンミテータ18をブラシホルダ26の貫通孔27bに挿通して、ブラシ装置24とコンミテータ18との組付けを容易に行うことが可能となる。
この仮止め状態のもとでは、ピグテール41の一端部が仮止め部材43の円弧状端面45bおよび円弧状角部45cに当接されるようになっており、ピグテール41の一端部が仮止め部材43に当接することによりピグテール41がほつれたり、断線したりすることが抑制されている。また、図5に示すように、一対の保持壁35は、ブラシケース28の各側壁28aに対して回転軸13の回転方向に所定の間隔をあけて離隔して設けられているため、仮止め部材43の挿入部44や延伸部45aがブラシケース28の側壁28aに接触しないようになっており、仮止め部材43がブラシケース28に当接することによってブラシケース28が変形することが防止されている。さらに、仮止め部材43の突起44aと保持壁35の嵌合孔37とが嵌合されることで仮止め部材43が保持壁35に装着されているので、仮止め部材43を保持壁35から取り外す場合には、各挿入部44をブラシ25側に撓ませた状態で仮止め部材43を引き抜く必要があり、仮止め部材43の保持壁35からの抜けが抑制されている。
さらに、仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で、仮止め部材43の軸方向他端側(装着方向先端側)に面する当接面43aが保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てられることで、仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制され、仮止め部材43が図5に示す装着位置に位置決めされるようになっている。なお、仮止め部材42の軸方向他端側への移動が規制された装着位置のもとで、仮止め部材43の連結部45がブラシケース28の軸方向他端側の端面つまり天井壁28cに接触しないように、仮止め部材45aの延伸部45aの軸方向寸法が設定されており、仮止め部材43がブラシケース28に当接することによってブラシケース28が変形することが防止されている。
一方、図7(B)に示すように仮止め部材43が保持壁35から取り外されると、仮止め部材43によるブラシ25の後退位置への保持が解除される。つまり、ピグテール41の一端部がスリット34内をブラシ25の摺動方向に移動自在となるため、ブラシ25はコイルばね40により前進位置に移動されて電動モータ11が作動状態となる。
次に、電動モータ11の組付け工程について説明する。ブラシ装置24にコンミテータ18を組付ける際には、ブラシ25が後退位置に保持された状態でコンミテータ18の組付け作業が行われる。まず、ブラシ25を後退位置に保持するために、ブラシ25を後退移動させた状態で、仮止め部材43の操作部46を把持して一対の挿入部44を一対の保持壁35の凹部36に挿入する。このとき、各突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38aに案内されてブラシ25側に移動されることにより、挿入部44はブラシ25側に撓んだ状態で凹部36に挿入される。
図5に示すように、仮止め部材43の当接面43aが嵌合壁部35aの軸方向一端側の端面に当接するまで挿入部44を凹部36に挿入して、仮止め部材43が装着位置に位置決めされると、突起44aは嵌合孔37の形成位置に位置決めされて挿入部44の撓みが解除される。つまり、突起44aは嵌合孔37内に突出されて突起44aと嵌合孔37とが嵌合され、仮止め部材43が保持壁35に装着される。図7(A)に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着されると、仮止め部材43によりピグテール41の一端部が固定されてブラシ25の径方向内側への前進移動が規制され、ブラシ25が後退位置に保持される。この仮止め状態のもとでは、ブラシ25がブラシホルダ26よりも径方向内側に突出されていないため、コンミテータ18を組み付ける際にブラシ25とコンミテータ18とが干渉することがなく、コンミテータ18の組付け作業をスムーズに行うことができる。
コンミテータ18の組付け作業が完了すると、仮止め部材43の操作部46を把持して挿入部44が凹部36から取り外される。このとき、突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38bに案内されてブラシ25側に移動されることにより、挿入部44はブラシ25側に撓んだ状態で凹部36から引き抜かれる。図7(B)に示すように仮止め部材43が保持壁35から取り外されると、仮止め部材43によるブラシ25の後退位置への保持が解除され、ブラシ25はコイルばね40により前進位置に移動されて電動モータ11が作動状態となる。
このように、仮止め部材43が着脱自在に取り付けられる保持壁35をホルダベース27に設け、コンミテータ18の組付け時に仮止め部材43を保持壁35に装着してブラシ25を後退位置に保持し、コンミテータ18の組付け完了後に仮止め部材43を保持壁35から取り外すようにしたので、電動モータ11の組付け後に外部から衝撃が加わっても、仮止め部材43によりブラシ25が後退位置に仮止めされることがなく、電動モータ11が不作動状態となることを防止することができる。また、ブラシ25に組付けられたピグテール41の一端部を仮止め部材43に当接させることによりブラシ25を後退位置に保持するようにしたので、ブラシ25を仮止めした状態で外部から衝撃が加わった場合にブラシ25が破損することが防止され、破損したブラシ断片等がブラシ25とコンミテータ18との摺動面に混入することでブラシ25の摺動性に影響を及ぼすことを抑制することができる。さらに、コンミテータ18の組付け時に仮止め部材43を保持壁35に装着し、コンミテータ18の組付け完了後に仮止め部材43を保持壁35から取り外すようにしたので、仮止め部材43をコンミテータ18の組付け工程で再利用することが可能であり、コストを低減することができる。
さらに、ピグテール41の一端部が当接する部分において、曲率を備える円弧状端面45bや円弧状角部45cを仮止め部材43に設けるようにしたので、ピグテール41の一端部に仮止め部材43を当接させることによりピグテール41がほつれたり、断線したりすることを抑制することができる。
さらに、保持壁35に装着された仮止め部材43がブラシケース28の側壁28aと非接触となるように、一対の保持壁35をブラシケース28の各側壁28aからアーマチュア16の回転方向に間隔をあけて設けたので、仮止め部材43がブラシケース28に当接することによってブラシケース28が変形することが防止される。これにより、ブラシケース28が変形してブラシ25の摺動性に影響を及ぼすことを抑制することができる。
さらに、仮止め部材43に軸方向他端側(装着方向先端側)に面する当接面43aを形成し、仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てることにより、仮止め部材43の軸方向他端側への移動を規制するようにしたので、仮止め部材43の挿入部44を保持壁35の凹部36に差し込みすぎることを防止し、仮止め部材43を装着位置に位置決め可能となる。また、仮止め部材43が装着位置のもとで、つまり仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制された位置のもとで、仮止め部材43の連結部45とブラシケース28の天井壁28cとを非接触としたので、仮止め部材43がブラシケース28に当接することによってブラシケース28が変形することが防止される。これにより、ブラシケース28が変形してブラシ25の摺動性に影響を及ぼすことを抑制することができる。
さらに、保持壁35に嵌合孔37を形成するとともに仮止め部材43に当該嵌合孔37に嵌合する突起44aを形成し、これら嵌合孔37と突起44aとの嵌合により仮止め部材43を保持壁35に装着するようにしたので、仮止め部材43の挿入部44が撓んだ状態で保持壁35への着脱が行われ、仮止め部材43の保持壁35からの抜けが抑制される。これにより、仮止め部材43によってブラシ25を後退位置に仮止めした状態でブラシ装置24を搬送するような場合でも、搬送時の衝撃や振動によって仮止め部材43が保持壁35から外れるのを防止することができる。また、突起44aを断面半円形状に形成するとともに、保持壁35に突起44aを案内する傾斜面38a,38bを設けたので、仮止め部材43の突起44aが撓み方向に案内され、仮止め部材43の着脱作業を容易に行うことができる。
図8は図5に示すブラシ装置の他の実施形態を示す断面図であり、上記の部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。このブラシ装置24に設けられた保持壁35は、ブラシケース28の各側壁28aに対して回転軸13の回転方向に所定の間隔をあけて離隔した位置に、各側壁28aとほぼ平行に延びて形成されており、保持壁35の軸方向寸法はブラシケース28の軸方向寸法よりも大きく形成されている。保持壁35の径方向略中央部に形成された凹部36は、保持壁35のブラシ25から離反する側の端面からブラシ25側へ切りかかれた断面略矩形状となっており、その軸方向他端側においてブラシ25側へ切りかかれた嵌合溝37に連通している。
保持壁35の嵌合壁部35aは、ブラシ25から離反する側において凹部36に対向するとともに、軸方向他端側において嵌合孔37に対向している。この嵌合壁部35aは、ブラシ25から離反する側の軸方向両端の角部において、当該角部が切り欠かれて形成された傾斜面(傾斜部)38a,38bを備えている。嵌合壁部35aの軸方向一端側の傾斜面38aは軸方向一端側の端面から軸方向他端側に向かうにつれてブラシ25から離反する側に傾斜され、嵌合壁部35aの軸方向他端側の傾斜面38bは軸方向他端側の端面から軸方向一端側に向かうにつれてブラシ25から離反する側に傾斜されている。
仮止め部材43の一対の挿入部44は、一対の保持壁35の凹部36の形成位置に対応して、相互に回転軸13の回転方向に所定の間隔をあけて設けられている。挿入部44の軸方向他端側には、図8に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で嵌合壁部35aの軸方向他端側に隣接するように、ブラシ25側つまり嵌合溝37内に突出する断面半円形状の突起44aが設けられている。仮止め部材43の連結部45には、延伸部45aが設けられておらず、仮止め部材43が保持壁35に装着された状態では、連結部45の軸方向他端側に面する当接面43aが嵌合壁部35aの軸方向一端側の端面に突き当てられて、仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制され、仮止め部材43が装着位置に位置決めされるとともに、仮止め部材43の連結部45がブラシケース28の天壁28cに接触しないようになっている。また、連結部45の径方向外側の端面には、図5に示す仮止め部材43と同様に、ピグテール41の一端部が当接する部分において円弧状端面45bや円弧状角部45cが形成されている。
仮止め部材43を保持壁35に装着する際には、挿入部44の突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38aに案内されてブラシ25から離反する側へ移動されることにより、挿入部44はブラシ25から離反する側へ撓んだ状態で凹部36に挿入される。一方、仮止め部材43を保持壁35から取り外す際には、挿入部44の突起44aが嵌合部35aの傾斜面38bに案内されてブラシ25から離反する側へ移動されることにより、挿入部44はブラシ25から離反する側へ撓んだ状態で凹部36から引き抜かれる。
このように、仮止め部材43を保持壁35に装着するための構造は、図5に示すように仮止め部材43の挿入部44を嵌合壁部35aよりも内側つまりブラシ25側に挿入するようにした内止め形態に限定されず、図8に示すように仮止め部材43の挿入部44を嵌合壁部35aよりも外側つまりブラシ25から離反する側に挿入するようにした外止め形態としてもよい。なお、本実施の形態においては、連結部45の軸方向他端側の端面に当接面43aを形成し、当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てることで仮止め部材43を位置決めするようにしたが、延伸部45aよりも挿入部44がブラシ25から離反する側にずれて連結された段付き形状とし、当該段差部において、延伸部45aの軸方向他端側に面する当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てることにより仮止め部材43を位置決めするようにしてもよい。
図9は仮止め部材の変形例を示す斜視図であり、図10は図9に示す仮止め部材を用いたブラシ装置の断面図であり、図11は図10におけるC−C線に沿う断面図である。なお、図9〜図11において、上記の部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。このブラシ装置24に設けられた保持壁35は、図5に示す保持壁35と略同形状の内止め形態となっており、保持壁35の軸方向寸法はブラシケース28の軸方向寸法よりも小さく形成されている。
図9に示すように、仮止め部材43は、金属プレートを曲げ加工することにより、回転軸13の軸方向に伸びて一対の保持壁35の凹部36に挿入される一対の挿入部44と、一対の挿入部44の軸方向一端部を連結する連結部45と、当該連結部45から軸方向一端側に伸びる操作部46とが一体に形成されている。操作部46は、連結部45から軸方向一端側に伸びるとともに、その軸方向一端部から径方向外側に向けて曲折して形成されている。
一対の挿入部44は、一対の保持壁35の凹部36の形成位置に対応して、相互に回転軸13の回転方向に所定の間隔をあけて設けられている。挿入部44の軸方向略中央部には、図10に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で嵌合壁部35aよりも軸方向他端側に隣接するように、ブラシ25から離反する側つまり嵌合孔37内に突出する断面半円形状の突起44aが曲げ加工により設けられている。仮止め部材43の連結部45には、延伸部45aが設けられておらず、仮止め部材43が保持壁35に装着された状態では、連結部45の軸方向他端側の端面がブラシケース28の天井壁28cに当接されることにより、仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制され、仮止め部材43が位置決めされるようになっている。また、連結部45の回転方向中央部には、径方向外側端面から径方向内側へ向けて切り欠かれた切り欠き部45dが形成され、当該切り欠き部45dの形成位置から軸方向一端側に操作部46が延びている。連結部45と操作部46との連結部分は所定の曲率を持って曲げ加工され、円弧状角部45eが形成されている。
図11に示すように、ブラシ25が後退位置のもとで仮止め部材43が保持壁35に装着されると、ブラシ25に接続されたピグテール41の一端部が仮止め部材43の連結部45に当接される。これにより、ピグテール41を介してブラシ25の前進移動が規制されてブラシ25が後退位置に保持される。この仮止め状態のもとでは、ピグテール41の一端部が連結部45の切り欠き部45dに挿通されて円弧状角部45eに当接されるようになっており、ピグテール41の一端部が仮止め部材43に当接することによりピグテール41がほつれたり、断線したりすることが抑制されている。
このように、仮止め部材43の形状は種々変更可能であり、図9に示すように金属プレートを曲げ加工することにより形成することで、仮止め部材43をより安価に製造することができる。なお、本実施の形態においては、連結部45の軸方向他端側の端面をブラシケース28の天壁28cに当接させることで仮止め部材43を位置決めするようにしたが、延伸部45aよりも挿入部44がブラシ25側にずれて連結された段付き形状とし、当該段差部において、延伸部45aの軸方向他端側に面する当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てることにより、仮止め部材43を位置決めするとともに仮止め部材43の連結部45がブラシケース28の天井壁28cに接触しないようにしてもよい。
図12は図10に示すブラシ装置の他の実施形態を示す断面図であり、上記の部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。このブラシ装置24に設けられた保持壁35は、図8に示す保持壁35と略同形状の外止め形態となっており、保持壁35の軸方向寸法はブラシケース28の軸方向寸法よりも小さく形成されている。
仮止め部材43の一対の挿入部44は、一対の保持壁35の凹部36の形成位置に対応して、相互に回転軸13の回転方向に所定の間隔をあけて設けられている。挿入部44の軸方向中央部には、図12に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で嵌合壁部35aの軸方向他端側に隣接するように、ブラシ25側つまり嵌合溝37内に突出する断面半円形状の突起44aが曲げ加工により設けられている。仮止め部材43の連結部45には、延伸部45aが設けられておらず、仮止め部材43が保持壁35に装着された状態では、連結部45の軸方向他端側の端面がブラシケース28の天井壁28cに当接されることにより、仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制され、仮止め部材43が位置決めされるようになっている。また、連結部45の回転方向中央部には、図9に示す仮止め部材43と同様に、ピグテール41の一端部が当接する部分において円弧状角部45eが形成されている。
このように、図9に示す仮止め部材43の突起44aをブラシ25側に突出するように曲げ加工することで、当該仮止め部材43を外止め形態のブラシ装置24にも適用することができる。なお、本実施の形態においては、連結部45の軸方向他端側の端面をブラシケース28の天井壁28cに当接させることで仮止め部材43を位置決めするようにしたが、保持壁35の軸方向寸法をブラシケース28の軸方向寸法よりも大きく形成し、連結部45の軸方向他端側に面する当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てることで、仮止め部材43の軸方向他端側への移動を規制して仮止め部材43を位置決めするとともに、仮止め部材43の連結部45がブラシケース28の天井壁28cに接触しないようにしてもよい。また、延伸部45aよりも挿入部44がブラシ25から離反する側にずれて連結された段付き形状とし、当該段差部において、延伸部45aの軸方向他端側に面する当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てるようにしてもよい。
図13は仮止め部材の変形例を示す斜視図であり、図14は図13に示す仮止め部材を用いたブラシ装置の断面図である。図15は図14におけるD−D線に沿う断面図であり、図16は図14におけるE−E線に沿う断面図である。図17はブラシの仮止め状態においてブラシがブラシケース内で傾斜した状態を示す参考図であり、図18は仮止め部材を保持壁から取り外す際の仮止め部材の動きを示す説明図である。なお、図13〜図18において、上記の部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
このブラシ装置24に設けられた保持壁35は、図5に示す保持壁35と略同形状の内止め形態となっており、保持壁35の軸方向寸法はブラシケース28の軸方向寸法の約半分程度となっている。図15に示すように、保持壁35の径方向略中央部に形成された凹部36は、その径方向寸法(図15における上下方向寸法)が仮止め部材43の挿入部44の径方向寸法よりも大きく形成されており、これにより、仮止め部材43を保持壁35に装着する際に仮止め部材43が保持壁35に対して径方向に多少ずれたとしても、挿入部44を凹部36へスムーズに挿入可能となっている。
凹部36の軸方向他端側の端部に位置させて、ホルダベース27には、ブラシ25から離反する側において凹部36に対向する規制部50が設けられている。規制部50は、図14に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で、挿入部44の軸方向他端側の端部に対して嵌合孔(嵌合溝)37とは反対側つまりブラシ25側に配され、挿入部44の軸方向他端側の端部に所定の隙間を介して対向するようになっている。この規制部50は、軸方向一端側の角部において、当該角部が切り欠かれて形成された傾斜面(傾斜部)50aを備えており、傾斜面50aは軸方向一端側の端面から軸方向他端側に向かうにつれてブラシ25から離反する側に傾斜されている。
図13に示すように、仮止め部材43は、図6に示す仮止め部材43と略同形状の内止め形態となっている。仮止め部材43の一対の挿入部44は、その軸方向他端側の端部のブラシ25側に傾斜面(傾斜部)44bを備えており、傾斜面44bは軸方向他端側の端面から軸方向一端側に向かうにつれてブラシ25側に傾斜されている。この傾斜面44bにおいて、仮止め部材43は保持壁35に装着された状態で、ホルダベース27の規制部50に所定の隙間を介して対向するようになっている。
仮止め部材43には、回転方向中央部つまりブラシケース28のスリット34の形成位置に対応させて、連結部45の軸方向他端側の端面から操作部46の軸方向略中央部にかけて、相互に平行な一対の溝51が回転軸13の軸方向に沿って形成されている。この一対の溝51により、仮止め部材43には、操作部46と連結された軸方向一端側の端部を中心として弾性的に撓む板ばね部(弾性部)52が設けられている。板ばね部52の軸方向他端側の端部に設けられた当接部52aには、径方向外側の角部において所定の曲率を持って切り欠かれた円弧状角部52bが形成されている。また、連結部45の径方向外側の端面には、回転方向両側の端部に位置して、所定の曲率を持って切り欠かれた円弧状角部45cが形成されている。
図16に示すように、ブラシ25が後退位置のもとで仮止め部材43が保持壁35に装着されると、板ばね部52の当接部52aがブラシケース28のスリット34内に挿通され、ブラシ25に接続されたピグテール41の一端部が当接部52aの径方向外側の端面に当接される。これにより、ピグテール41を介してブラシ25の前進移動が規制されてブラシ25が後退位置に保持される。この仮止め状態のもとでは、ピグテール41の一端部が当接部52aの円弧状角部52bおよび連結部45の円弧状角部45cに当接されるようになっており、ピグテール41の一端部が仮止め部材43に当接することによりピグテール41がほつれたり、断線したりすることが抑制されている。
また、ブラシケース28のスリット34内に挿通された板ばね部52の当接部52aは、ブラシ25の軸方向一端側の端面に弾性的に当接されており、ブラシ25は板ばね部52によって軸方向他端側つまりホルダベース27側へ押し付けられ、弾性保持されている。この押付力によって、ブラシ25がブラシケース28内で傾斜することが規制されるため、ブラシ25がブラシホルダ26よりも径方向内側に突出することを確実に防止することができる。すなわち、図17に示すように、ブラシ25が軸方向他端側へ押し付けられていない場合には、仮止め部材43により後退位置に保持された状態でブラシ25がブラシケース28内で傾斜しブラシ25の径方向内側の軸方向他端側の端部が浮き上がることで、ブラシ25の径方向内側の端面がブラシホルダ26よりも径方向内側に突出し、コンミテータ18の組付けの際にコンミテータ18がブラシ25と干渉するおそれがある。一方、本実施の形態のように、仮止め部材43によってブラシ25を軸方向他端側へ押し付けることで、仮止め部材43により後退位置に保持された状態でブラシ25がブラシケース28内で傾斜することが規制され、ブラシ25がブラシホルダ26内に確実に保持されるので、コンミテータ18の組付け作業を容易に行うことが可能となる。
仮止め部材43を保持壁35に装着する際には、挿入部44の突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38aに案内されてブラシ25側に移動されることにより、挿入部44はブラシ25側に撓んだ状態で凹部36に挿入される。このとき、挿入部44の軸方向他端側の端部に形成された傾斜面44bが規制部50の傾斜面50aに当接され、挿入部44の軸方向他端側の端部が傾斜面50aに案内されてブラシ25から離反する方向へ移動される。これにより、挿入部44の軸方向他端側の端部がホルダベース27の軸方向一端側の端面に当接されて仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制されることなく、仮止め部材43を保持壁35へスムーズに装着することができるようになっている。
一方、仮止め部材43を保持壁35から取り外す際には、挿入部44の突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38bに案内されてブラシ25側に移動されることにより、挿入部44はブラシ25側に撓んだ状態で凹部26から引き抜かれる。このとき、図18に示すように、挿入部44の軸方向他端側の端部に形成された傾斜面44bが規制部50の回転方向側面に当接され、挿入部44の軸方向他端側の端部がブラシ25側へ撓むことが規制される。これにより、突起44と嵌合孔37との外れが抑制されるため、仮止め部材43が保持壁35から抜けづらくなっており、仮止め部材43によりブラシ25を後退位置に保持した状態でブラシ装置24を搬送する場合などに、搬送時の衝撃や振動によって仮止め部材43が保持壁35から外れることが確実に防止されている。なお、当該ロック機構は、搬送時の衝撃や振動によって仮止め部材43が保持壁35から外れることを抑制する構造であり、作業者により仮止め部材43を保持壁35から取り外す際の作業性を悪化させることはない。
このように、保持壁35に装着された仮止め部材43によってブラシ25を軸方向他端側に押し付けるようにしたので、後退位置に保持された状態でブラシ25がブラシケース28内で傾斜してブラシ25がブラシホルダ26よりも径方向内側に突出することを確実に防止することができる。したがって、コンミテータ18の組付け作業の際にコンミテータ18がブラシ25と干渉することがなく、組付け作業の作業性が向上される。また、仮止め部材43に設けられた板ばね部52により、ピグテール41の一端部に当接するとともにブラシ25を軸方向他端側に押し付けるようにしたので、板ばね部52がピグテール41の一端部およびブラシ25の軸方向一端側の端面に弾性的に当接され、ピグテール41のほつれや断線およびブラシ25の破損が抑制される。
さらに、仮止め部材43が保持壁35に装着された状態のもとで挿入部44の軸方向他端側の端部に対して嵌合孔37とは反対側に、挿入部44の軸方向他端側の端部に所定の間隔をあけて対向する規制部50を設け、仮止め部材43を保持壁35から取り外す際に、挿入部44の軸方向他端側の端部を規制部50に当接させることにより突起44と嵌合孔37との外れを抑制するようにしたので、仮止め部材43によりブラシ25を後退位置に保持した状態でブラシ装置24を搬送する場合などに、搬送時の衝撃や振動によって仮止め部材43が保持壁35から外れることを確実に防止することができる。
図19は図14に示すブラシ装置の他の実施形態を示す断面図であり、上記の部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。このブラシ装置24に設けられた保持壁35は、図8に示す保持壁35と略同形状の外止め形態となっており、保持壁35の軸方向寸法はブラシケース28の軸方向寸法よりも大きく形成されている。
保持壁35の径方向略中央部に形成された凹部36の軸方向他端側の端部に位置させて、ホルダベース27には、ブラシ25側において凹部36に対向する規制部50が設けられている。規制部50は、図19に示すように仮止め部材43が保持壁35に装着された状態で、挿入部44の軸方向他端側の端部に対して嵌合溝37とは反対側つまりブラシ25から離反する側に配され、挿入部44の軸方向他端側の端部に所定の隙間を介して対向するようになっている。この規制部50は、軸方向一端側の角部において、当該角部が切り欠かれて形成された傾斜面(傾斜部)50aを備えており、傾斜面50aは軸方向一端側の端面から軸方向他端側に向かうにつれてブラシ25側に傾斜されている。
仮止め部材43は、図8に示す仮止め部材43と略同形状の外止め形態となっている。仮止め部材43の一対の挿入部44は、その軸方向他端側の端部のブラシ25から離反する側に傾斜面(傾斜部)44bを備えており、傾斜面44bは軸方向他端側の端面から軸方向一端側に向かうにつれてブラシ25から離反する側に傾斜されている。この傾斜面44bにおいて、仮止め部材43は保持壁35に装着された状態で、ホルダベース27の規制部50に所定の隙間を介して対向するようになっている。
仮止め部材43には、図13に示す仮止め部材43と同様に、保持壁35に装着された状態で、ピグテール41の一端部に当接されるとともにブラシ25を軸方向他端側へ押し付ける板ばね部(弾性部)52が設けられている。板ばね部52の軸方向他端側の端部に設けられた当接部52aには、径方向外側の角部において所定の曲率を持って切り欠かれた円弧状角部52bが形成されている。また、連結部45の径方向外側の端面には、回転方向両側の端部に位置して、所定の曲率を持って切り欠かれた円弧状角部45cが形成されている。
仮止め部材43を保持壁35に装着する際には、挿入部44の突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38aに案内されてブラシ25から離反する側に移動されることにより、挿入部44はブラシ25から離反する側に撓んだ状態で凹部36に挿入される。このとき、挿入部44の軸方向他端側の端部に形成された傾斜面44bが規制部50の傾斜面50aに当接され、挿入部44の軸方向他端側の端部が傾斜面50aに案内されてブラシ25側へ移動される。これにより、挿入部44の軸方向他端側の端部がホルダベース27の軸方向一端側の端面に当接されて仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制されることなく、仮止め部材43を保持壁35へスムーズに装着することができるようになっている。
一方、仮止め部材43を保持壁35から取り外す際には、挿入部44の突起44aが嵌合壁部35aの傾斜面38bに案内されてブラシ25から離反する側に移動されることにより、挿入部44はブラシ25から離反する側に撓んだ状態で凹部36から引き抜かれる。このとき、挿入部44の軸方向他端側の端部に形成された傾斜面44bが規制部50に回転方向側面に当接され、挿入部44の軸方向他端側の端部がブラシ25から離反する側への撓むことが規制される。これにより、突起44と嵌合溝37との外れが抑制されるため、仮止め部材43が保持壁35から抜けづらくなっており、仮止め部材43によりブラシ25を後退位置に保持した状態でブラシ装置24を搬送する場合などに、搬送時の衝撃や振動によって仮止め部材43が保持壁35から外れることが確実に防止されている。
このように、突起44と嵌合溝37との外れを抑制するロック機構は、外止め形態のブラシ装置24にも適用することができる。なお、図2〜12に示すブラシ装置24においても同様のロック機構を設けるようにしてもよい。また、図2〜12に示すブラシ装置24においても仮止め部材43に板ばね部52を設け、当該板ばね部52によりピグテール41の一端部を当接させるとともにブラシ25を軸方向他端側へ押し付けるようにしてもよい。
図20は仮止め部材の変形例を示すブラシ装置の断面図であり、上記の部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。これまで説明したように、内止め形態の仮止め部材43では、挿入部44と延伸部45aとの段差部において軸方向他端側に面する当接面43aを形成し、当該当接面43aを保持壁35の嵌合壁部35aに突き当てることにより、仮止め部材43の軸方向他端側への移動を規制して仮止め部材43を装着位置に位置決めするようにしている。この位置決めを確実に行うために、図20に示すように、段差部に位置して延伸部45aの軸方向他端側の端部に、ブラシ25から離反する側に突出する突起部53を一体に設けるようにしてもよい。
突起部53の軸方向他端側の端面は、延伸部45aの軸方向他端側の端面と同一平面上に形成され、延伸部45aの軸方向他端側の端面とともに当接面43aを形成している。突起部53の回転方向寸法(図20において左右方向寸法)は嵌合壁部35aの回転方向寸法とほぼ同じ寸法となっている。この突起部53を設けることにより、軸方向他端側に面する当接面43aが保持壁35の嵌合壁部35aに確実に突き当てられ、仮止め部材43の軸方向他端側への移動が規制されて仮止め部材43が装着位置に位置決めされる。すなわち、図20に示すように、仮止め部材43の挿入部44および延伸部45aがブラシ25側へ撓んだ状態に変形した場合でも、突起部53を設けることで当接面43aが嵌合壁部35aに確実に突き当てられるため、挿入部44が凹部36に挿入しすぎることが防止される。また、このとき、挿入部44の軸方向他端側の端部は、規制部50の傾斜面50aに案内されてブラシ25から離反する側へ移動されるので、仮止め部材43の挿入部44および延伸部45aがブラシ25側へ撓んだ状態に変形した場合でも、突起44と嵌合孔37とを確実に嵌合させることができるようになっている。
なお、本実施の形態においては、図13に示す仮止め部材43に突起53を設けるようにしたが、他の実施形態の仮止め部材43に突起部53を設けるようにしてもよい。また、本実施の形態においては、段差部に位置して延伸部45aの軸方向他端側の端部に、ブラシ25から離反する側に突出する突起部53を設けるようにしたが、挿入部44と延伸部45aとを連結する段差部を回転方向に延伸した形状としてもよい。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、本発明の電動モータのブラシ装置をワイパモータ10に設けられる電動モータ11のブラシ装置24に適用したが、これに限定されず、他の電動モータのブラシ装置に適用できることはもちろんである。
また、前記実施の形態においては、ブラシ装置24に一対のブラシ25を設けるようにしたが、ブラシ装置24に設けられるブラシ25の数や位置は任意に設定可能である。例えば、ワイパを低速と高速との二段階で駆動するような場合には、3つのブラシ25を設けるようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、仮止め部材43を金属材料により形成するようにしたが、これに限らず、例えば樹脂材料により形成することで金属材料により形成する場合に比べて仮止め部材43をより安価に製造することができる。
さらに、前記実施の形態においては、保持壁35に嵌合孔37を形成するとともに仮止め部材43に突起44aを設けるようにしたが、保持壁35に突起を設けるとともに仮止め部材43に嵌合孔を形成するようにしてもよい。また、前記実施の形態においては、ホルダベース27に保持壁35を設けて当該保持壁35に仮止め部材43を装着するようにしたが、その他の構造により仮止め部材43をホルダベース27に着脱自在に装着するようにしてもよい。