JP2010138616A - 鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造 - Google Patents

鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 半円形フックを適用できない箇所であっても適用することができ、また、適用対象の制約が少なく、さらに、施工作業が容易な鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を提供する。
【解決手段】 鉄筋コンクリート構造物60の一側から他側へ向かって穿孔された補強部材挿入孔10と、補強部材挿入孔10内に挿入するせん断補強部材20と、補強部材挿入孔10内へ充填する充填材30とを備える。補強部材挿入孔10は、鉄筋コンクリート構造物60の他側に位置する主鉄筋40に付帯した配力筋50の手前側まで穿孔され、入口側から奥側まで一様の内径を有している。せん断補強部材20の先端部は、奥側の主鉄筋40に付帯した配力筋50の手前側まで挿入される。充填材30は、補強部材挿入孔10内へのせん断補強部材20の挿入前あるいは挿入後のいずれかの時点で、補強部材挿入孔10内に注入される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造に関するものであり、特に、既設鉄筋コンクリート構造物の補強工事に適したせん断補強構造に関するものである。
近年、大規模地震の発生が懸念される中、既設の鉄筋コンクリート構造物に対する耐震補強のニーズが高まっている。既設の鉄筋コンクリート構造物のせん断耐荷力が不足する場合には、主鉄筋と交差する方向に補強鋼材を追加することで、構造物のせん断耐荷力を増加させなければならない。このような補強工事では、せん断補強部材が確実に定着することが必要であると共に、既設構造物の損傷を最小限とし、さらに容易に施工できることが要求される。
従来の一般的なせん断補強は、半円形のフックからなるせん断定着部材を構造物中に埋め込むようになっている。しかし、このような半円形フック構造は、補強工事において構造物に設けられた挿入孔内に挿入することが困難であった。そこで、鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造が種々提案されている。
例えば、せん断力が作用する既設の鉄筋コンクリート構造物に対するせん断補強構造に関する技術が開示されている(特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1に記載された技術は、既設の鉄筋コンクリート構造物と、この鉄筋コンクリート構造物を貫通するように形成した補強部材挿入孔の内部に配設されるせん断補強部材と、補強部材挿入孔に充填されてなる充填材とからなる。この技術において、せん断補強部材は、線材と、この線材の基端部及び先端部にそれぞれ固定された基端定着部材及び先端定着部材とから構成され、かつせん断補強部材の両端が既設の鉄筋コンクリート構造物の主鉄筋と同等の被りコンクリート厚を確保した状態で配置されている。また、補強部材挿入孔は、線材の直径よりも太く、かつ基端定着部材の幅寸法よりも小さい内径の一般部と、補強部材挿入孔の基端部に形成されて、基端定着部材の幅寸法よりも大きい内径の拡幅部とから構成されている。
特許文献2に記載された技術は、既設の鉄筋コンクリート構造物と、この鉄筋コンクリート構造物に形成された有底の補強部材挿入孔の内部に配設されるせん断補強部材と、補強部材挿入孔に充填される充填材とからなる。この技術において、せん断補強部材は、線材と、線材の基端部に固定された基端定着部材とから構成されて、かつせん断補強部材の両端が主鉄筋の位置と同じ深さに配置されている。また、補強部材挿入孔は、線材の直径よりも大きく、かつ基端定着部材の外径又は幅よりも小さい内径の一般部と、補強部材挿入孔の基端部に形成されて、基端定着部材の外径又は幅よりも大きい内径の基端拡幅部とから構成されている。
特許第3700980号公報 特許第3668490号公報
しかし、従来の半円形フック構造からなる定着構造は、半円形フックを有しているため、補強工事において構造物に設けられた挿入孔内に半円形フックを挿入できない場合があり、耐震補強工事への適用が難しい。
また、特許文献1に記載された技術は、補強部材挿入孔が鉄筋コンクリート構造物を貫通するように形成されているため、このような貫通孔を形成することができない鉄筋コンクリート構造物に適用することができない。
また、特許文献2に記載された技術は、補強部材挿入孔が基端部から先端部まで一様ではない。すなわち、特許文献2に記載されたせん断補強構造では、補強部材挿入孔の基端部が一般部よりも拡幅しているため、穿孔作業に手間を要するという不都合がある。
本発明は、上述した種々の問題点に鑑み提案されたもので、半円形フックを適用できない箇所であっても適用することができ、また、適用対象の制約が少なく、さらに、作業が容易な鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を提供することを目的とする。
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造は、鉄筋コンクリート構造物の一側から他側へ向かって穿孔された補強部材挿入孔と、補強部材挿入孔内に挿入するせん断補強部材と、補強部材挿入孔内へ充填する充填材とからなる。そして、補強部材挿入孔は、鉄筋コンクリート構造物の他側に位置する主鉄筋に付帯する配力筋の手前側まで穿孔されると共に、入口側から奥側まで一様の内径を有している。また、せん断補強部材は、本体部と、当該本体部の先端側又は基端側の少なくとも一方に設けた定着体とからなると共に、その先端部が、鉄筋コンクリート構造物の他側に位置する主鉄筋に付帯する配力筋の手前側まで挿入される。さらに、充填材は、補強部材挿入孔内へのせん断補強部材の挿入前あるいは挿入後のいずれかの時点で、補強部材挿入孔内に注入される。
上述した構成に加えて、定着体は、高強度鋼材からなる芯材の軸方向に沿って複数の凹凸部を形成したものを用いることが可能である。また、定着体は、引抜側に向かって縮径したテーパー部を備えて形成することが可能である。また、補強部材挿入孔は、少なくとも入口側の内壁面に、目粗し処理を施すことが可能である。さらに、せん断補強部材は、少なくとも基端側に防錆処理を施すことが可能である。
本発明の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造によれば、鉄筋コンクリート構造物の一側から、他側に位置する主鉄筋に付帯する配力筋の手前側まで、内径が一様である補強部材挿入孔を穿孔する。そして、この補強部材挿入孔内にせん断補強部材を挿入すると共に、充填材を注入する。このように、本発明の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造では、半円形フックを適用できない箇所であっても施工を行うことができる。また、貫通孔を穿孔する必要がないので、補強工事の汎用性を高めることができる。さらに、補強部材挿入孔は内径が一様であるため、穿孔作業が容易であり、作業効率を高めることができる。
また、せん断補強部材の先端部が、鉄筋コンクリート構造物の他側に位置する主鉄筋に付帯する配力筋の手前側まで挿入されているので、十分な被り厚を確保して耐久性及び安全性を向上させると共に、高い定着性能を得ることが可能となる。
また、定着体に複数の凹凸部を形成したり、引抜側に向かって縮径したテーパー部を設けたり、補強部材挿入孔の内壁面に目粗し処理を施したりすることにより、さらに定着性能を高めることができる。
また、せん断補強部材の基端側に防錆処理を施すことにより、せん断補強部材の腐食を効果的に防止することができる。この防請処理は、特に、せん断補強部材の基端側において被り厚が小さい場合に有効となる。
以下、図面を参照して、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造の実施形態を説明する。図1は、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造の基本実施形態(実施形態1)を示す模式図である。また図2は、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造の基本実施形態(実施形態1)のせん断補強構造に用いるせん断補強部材を示す模式図である。
<概要>
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造は、基本的な構成として、鉄筋コンクリート構造物60に穿孔された補強部材挿入孔10と、補強部材挿入孔10内に挿入するせん断補強部材20と、補強部材挿入孔10内へ充填する充填材30とからなる。
補強部材挿入孔10は、非貫通孔であり、補強対象となる鉄筋コンクリート構造物60の一側から他側へ向かって穿孔される。さらに詳しくは、補強部材挿入孔10の先端部は、奥側の配力筋50の手前側に位置している。なお、奥側の配力筋50とは、鉄筋コンクリート構造物60の他側に位置する主鉄筋40に付帯して配筋されている配力筋50のことである。また、補強部材挿入孔10の穿孔径は、入口側から奥側まで一様となっている。
せん断補強部材20は、本体部として機能する鉄筋70と、当該鉄筋70の先端側又は基端側の少なくとも一方に設けた定着体80とからなる。すなわち、せん断補強部材20は、鉄筋70の先端側及び基端側の双方に設けてもよいし、鉄筋70の先端側あるいは基端側のいずれか一方のみに設けてもよいが、特に鉄筋70の先端側及び基端側の双方にせん断補強部材20を設けることにより、強固な定着性能を発揮することができる。また、上述した補強部材挿入孔10の穿孔状態に対応させて、せん断補強部材20の先端部は、奥側の配力筋50の手前側まで挿入される。
充填材30は、せん断補強部材20が挿入された補強部材挿入孔10を充填するための部材であり、注入時期は、補強部材挿入孔10内へせん断補強部材20を挿入する前、あるいは挿入した後のいずれの時点であってもよい。充填材30としては、モルタルや樹脂系の接着剤を使用することができる。
次に、本発明に係るせん断補強構造の具体的な実施形態を説明する。
<実施形態1>
実施形態1のせん断補強構造は、図1に示す基本実施形態を採用したものである。
実施形態1のせん断補強構造は、図1に示すように、非貫通孔である補強部材挿入孔10と、補強部材挿入孔10内に挿入するせん断補強部材20と、補強部材挿入孔10内へ充填する充填材30とからなることは上述したとおりである。
実施形態1のせん断補強部材20は、図2に示すように、本体部として機能する鉄筋70と、鉄筋70の両端部に設けた定着体80とからなる。各定着体80は、図2に示すように、鉄筋70への連結部材90と、連結部材90から軸方向に突出して設けた芯材81と、芯材81の軸方向に沿って所定間隔で設けた凸部82とを備えており、芯材81と凸部82とにより、凹凸部が形成される。そして、各凸部82は、連結部材90側に向かって縮径したテーパー面83を有している。なお、テーパー面83の角度は、定着体80の定着力を高めるという点で、軸方向に対して45度程度であることが好ましい。
連結部材90に取り付ける鉄筋70は、先端部が先細り状に加工され、さらに外周面にテーパーネジ部71が形成されている。なお、鉄筋70は、少なくともテーパーネジ部71の基端部分において塑性硬化処理が施されていることが好ましい。このように、鉄筋70の端部に塑性硬化処理を施すことにより、加工前と比較して見かけ上の降伏点が増大して、鉄筋70の端部の強度を増加させることができる。連結部材90は、鉄筋70の先端部を接続する部分で、テーパーネジ部71を螺着するための雌ネジ部91が設けられている。本実施形態では、高強度鋼材を用いて、連結部材90と芯材81と凸部82とを一体に形成している。なお、図2に示す例では、2つの凸部82を設けているが、凸部82の数は1つ又は3つ以上であってもよい。
本実施形態では、基端部から先端部まで一様の径となった補強部材挿入孔10が穿孔されており、補強部材挿入孔10の先端部は、奥側の配力筋50の手前側に位置している。この補強部材挿入孔10内において、先端側の定着体80が奥側の配力筋50の手前側に位置し、基端側の定着体80が手前側の主鉄筋40と略同一の位置となるように、せん断補強部材20が挿入されている。これにより、せん断補強部材20の先端側において、被り厚が主鉄筋40の被り厚以上となり、せん断補強部材20の基端側において、被り厚が主鉄筋40の被り厚と略同等となる。また、補強部材挿入孔10内には、せん断補強部材20の挿入前あるいは挿入後のいずれかの時点で、充填材30が充填される。
なお、芯材81の軸方向の長さ、凸部82の軸方向の幅は、施工対象となる鉄筋コンクリート構造物60の状態に応じて適宜変更して実施することができる。また、本実施形態において、補強部材挿入孔10の穿孔径は、28mm〜45mm程度、鉄筋70の直径は16mm〜19mm程度、定着体80の最大直径(凸部82の直径)は、鉄筋70の直径の1.3倍程度となっている。
実施形態1では、定着体80の最大直径(凸部82の直径)が、鉄筋70の直径の1.3倍程度となっているため、補強部材挿入孔10の基端側に定着体80を挿入するための拡幅部を設ける必要がない。すなわち、補強部材挿入孔10の内径が一様であっても、定着体80にテーパー面83を有していることにより定着性能が向上し、従来のせん断補強構造と同様の定着性能を得ることができる。
<実施形態2>
図3は、本発明の実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図、図4は、本発明の実施形態2に係るせん断補強構造に用いるせん断補強部材を示す模式図である。
実施形態2のせん断補強構造は、実施形態1のせん断補強構造と比較して、せん断補強部材220の基端側にのみ定着体180を取り付けた点と、定着体180の構造とが相違している。すなわち、実施形態2のせん断補強構造に用いるせん断補強部材220は、図3及び図4に示すように、せん断補強部材220の基端側にのみ取り付けられている。このせん断補強部材220は、鉄筋70への連結部材90と、連結部材90から軸方向に突出して設けた芯材181と、芯材181の軸方向に沿って所定間隔で設けた凸部182とを備えており、芯材181と凸部182とにより、凹凸部が形成される。
実施形態2においても、芯材181の軸方向の長さ、凸部182の軸方向の幅、凸部182の数は、施工対象となる鉄筋コンクリート構造物60の状態に応じて適宜変更して実施することができる。また、連結部材90及び鉄筋70の構造、形状等は、実施形態1と同様である。すなわち、連結部材90に取り付ける鉄筋70は、先端部が先細り状に加工され、さらに外周面にテーパーネジ部71が形成されている。また、連結部材90には、テーパーネジ部71を螺着するための雌ネジ部91が設けられている。
本実施形態において、補強部材挿入孔10の穿孔径は、28mm〜45mm程度、鉄筋70の直径は16mm〜19mm程度、定着体180の最大直径(凸部182の直径)は、鉄筋70の直径の1.3倍程度となっている。
実施形態2では、定着体180の最大直径(凸部182の直径)が、鉄筋70の直径の1.3倍程度となっているため、補強部材挿入孔10の基端側に定着体180を挿入するための拡幅部を設ける必要がない。すなわち、補強部材挿入孔10の内径が一様であっても、定着体180に凹凸部を設けることにより定着性能が向上し、従来のせん断補強構造と同様の定着性能を得ることができる。
なお、図3及び図4に示す例では、せん断補強部材220の基端側にのみ定着体180を取り付けているが、せん断補強部材220の先端側にのみ定着体180を取り付けてもよいし、せん断補強部材220の先端側及び基端側の双方に定着体180を取り付けてもよい。
<実施形態3>
図5は、本発明の実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図である。
実施形態3のせん断補強構造は、図5に示すように、補強部材挿入孔10の入口側の内壁面に、目粗し処理が施されて粗面110が形成されている点に特徴がある。なお、目粗し処理は、ショットブラスト、ウォータジェット等、公知の方法を用いることができる。
このように、実施形態3では、補強部材挿入孔10の入口側の内壁面が粗面110となっているため、補強部材挿入孔10の基端側に定着体180を挿入するための拡幅部を設ける必要がない。すなわち、補強部材挿入孔10の内径が一様であり、せん断補強部材20の先端側にのみ定着体180を取り付けた場合であっても、補強部材挿入孔10の入口側の内壁面を粗面110とすることにより定着性能が向上し、従来のせん断補強構造と同様の定着性能を得ることができる。
なお、図5に示す例では、実施例2と同様のせん断補強部材220を用いると共に、せん断補強部材220の先端側にのみ定着体180を取り付けているが、せん断補強部材220の基端側にのみ定着体180を取り付けてもよいし、せん断補強部材220の先端側及び基端側の双方に定着体180を取り付けてもよいし、実施例1と同様のせん断補強部材20を用いてもよい。
<実施形態4>
図6は、本発明の実施形態4に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図である。
実施形態4のせん断補強構造は、図6に示すように、せん断補強部材220の基端側の被り厚を確保できない場合に好適に用いられるもので、せん断補強部材220の基端側に防錆処理が施されている点に特徴がある。
実施形態4のせん断補強構造では、補強部材挿入孔10が奥側の配力筋50の手前側まで穿孔されており、せん断補強部材220の先端部は、奥側の配力筋50の手前側に位置する。したがって、せん断補強部材220の先端側では、十分な被り厚を確保することができる。
一方、補強部材挿入孔10の手前側では、せん断補強構造として十分な定着性能を確保するため、せん断補強部材220の基端部が手前側の主鉄筋40の位置よりも手前側に位置する場合も考えられる(図6参照)。この場合には、せん断補強部材220の基端において被り厚が減少するため、せん断補強部材220に錆が発生するおそれがある。このため、実施形態4では、せん断補強部材220の基端側に防錆処理を施すことにより、せん断補強部材220の腐食を防止している。防錆処理は、例えば、せん断補強部材220の外面にエポキシ樹脂を塗布して、エポキシ樹脂層120を形成すればよい。
なお、図6に示す例では、実施例2と同様のせん断補強部材220を用いると共に、せん断補強部材220の先端側にのみ定着体180を取り付けているが、せん断補強部材220の基端側にのみ定着体180を取り付けてもよいし、せん断補強部材220の先端側及び基端側の双方に定着体180を取り付けてもよいし、実施例1と同様のせん断補強部材20を用いてもよい。
<他の実施形態>
本発明の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。例えば、連結部材と芯材を螺着するのではなく、摩擦圧接等の技術を用いて接続してもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、施工対象となる鉄筋コンクリート構造物の構成や状態、予定する補強強度等、種々の要因に応じて最適な定着体の構成を選択して実施することができる。
<従来技術との比較>
以上説明したように、本発明の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造では、鉄筋直径の1.3倍程度の直径を有する定着体を用いているため、定着体を挿入するための挿入孔の径を小さくすることができる。このため、補強部材挿入孔の基端側に拡幅部を設けることなく、一様の内径を有する補強部材挿入孔とすることができるので、穿孔作業が容易であり、作業効率を高めることができる。また、補強部材挿入孔の径が小さく一様であるため、充填材の使用量を低減することができる。
さらに、補強部材挿入孔内に目粗し処理を施すことにより、基端側に定着部材を設けない場合であっても、せん断補強構造として十分な定着性能を引き出すことができる。
本発明の実施形態1に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図。 本発明の実施形態1に係るせん断補強構造に用いるせん断補強部材を示す模式図。 本発明の実施形態2に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図。 本発明の実施形態2に係るせん断補強構造に用いるせん断補強部材を示す模式図。 本発明の実施形態3に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図。 本発明の実施形態4に係る鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造を示す模式図。
符号の説明
10 補強部材挿入孔
20 せん断補強部材
30 充填材
40 主鉄筋
50 配力筋
60 鉄筋コンクリート構造物
70 鉄筋
71 テーパーネジ部
80 定着体
81 芯材
82 凸部
83 テーパー面
90 連結部材
91 雌ネジ部
110 粗面
120 エポキシ樹脂層
180 定着体
181 芯材
182 凸部
220 せん断補強部材

Claims (5)

  1. 鉄筋コンクリート構造物の一側から他側へ向かって穿孔された補強部材挿入孔と、前記補強部材挿入孔内に挿入するせん断補強部材と、前記補強部材挿入孔内へ充填する充填材とからなり、
    前記補強部材挿入孔は、鉄筋コンクリート構造物の他側に位置する主鉄筋に付帯する配力筋の手前側まで穿孔されると共に、入口側から奥側まで一様の内径を有し、
    前記せん断補強部材は、本体部と、当該本体部の先端側又は基端側の少なくとも一方に設けた定着体とからなると共に、その先端部が、鉄筋コンクリート構造物の他側に位置する主鉄筋に付帯する配力筋の手前側まで挿入され、
    前記充填材は、前記補強部材挿入孔内への前記せん断補強部材の挿入前あるいは挿入後のいずれかの時点で、前記補強部材挿入孔内に注入される、
    ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造。
  2. 前記定着体は、高強度鋼材からなる芯材の軸方向に沿って複数の凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造。
  3. 前記定着体は、引抜側に向かって縮径したテーパー部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造。
  4. 前記補強部材挿入孔は、少なくとも入口側の内壁面に、目粗し処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造。
  5. 前記せん断補強部材は、少なくとも基端側に防錆処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強構造。
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