JP6991562B2 - 接着系アンカー用のアンカーボルト、接着系アンカーおよび接着系アンカーの施工方法 - Google Patents

接着系アンカー用のアンカーボルト、接着系アンカーおよび接着系アンカーの施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、あと施工アンカーにおける接着系アンカーに関し、特に接着系アンカー用のアンカーボルト、接着系アンカーおよび接着系アンカーの施工方法に関するものである。
従来、接着系アンカーとして、ロッド本体に埋込み深さを表示する表示ゲージが形成されたケミカルアンカーロッドと、ロッド本体と埋込み孔の内壁との間隙に充填された接着剤と、から成るものが知られている(特許文献1参照)。
このケミカルアンカーロッドは、母材に穿孔された埋込み孔に嵌挿された全ネジのロッド本体を備え、ロッド本体の露出部分の頭部には、最大差し渡しが多くともロッド本体の直径と同じ長さの、平面視が多角形の締結端が設けられている。また、ロッド本体の胴部には、ロッド本体の外周に亘って埋込み深さを表示する表示ゲージが切り込まれている。そして、締結端にハンマードリル等を適応させることで、ロッド本体を埋込み孔に容易に埋め込むことができ、また表示ゲージを目安にして、ロッド本体を埋込み孔に適正な埋込み深さで埋め込むことができるようになっている。
実開平5-66103号公報
あと施工アンカーにおいて、金属拡張アンカー(メカニカルアンカー)の埋込み深さ(有効埋込み長さ)がアンカーの本体径の4~5倍(確実性を担保せんとする場合には7倍)とされているのに対し、上記のような従来の接着系アンカー(ケミカルアンカーロッド)の埋込み深さは、アンカー径の10倍以上(推奨は、15倍)とされている(例えば、文献:「あと施工アンカー」、1990年6月10日発行、著者:岡田恒男等、発行所:(株)技術書院の、P53~P67)。
同文献には、接着系アンカーにおいて、埋込み深さ(有効埋込み長さ)がアンカー径の5倍程度であると、十分な引張り耐力が得られない状態でコンクリートのコーン破壊が生ずること。埋込み深さがアンカー径の7~8倍程度であると、十分な引張り耐力が得られない状態で、浅い位置におけるコンクリートのキノコ状の重畳破壊、および深い位置における接着剤とコンクリートとの間の付着破壊が生ずること。さらには、十分な引張り耐力を得るためには、埋込み深さがアンカー径の10倍以上が好ましいこと(但し、この場合もキノコ状の破壊となる)等、が記載されている。なお、有効埋込み長さ(le)=コンクリートの穿孔深さ(l)-アンカーボルトの径(de)である。この接着系アンカーにおける特有の現象(特にキノコ状の重畳破壊)は、出願人が行った引抜き試験によっても確認されている。
このように、従来の接着系アンカーは、金属拡張アンカー(メカニカルアンカー)に比してその埋込み深さが深く、施工性が劣る問題があった。
本発明は、比較的浅い埋込み深さで十分な引張り耐力を発揮させることができる接着系アンカー用のアンカーボルト、接着系アンカーおよび接着系アンカーの施工方法を提供することを課題としている。
本発明の接着系アンカー用のアンカーボルトは、定着体に形成されたアンカー穴に、接着剤を介して定着される接着系アンカー用のアンカーボルトであって、アンカー穴の穴奥部に挿入されるヘッド部と、ヘッド部に連なり、ヘッド部よりも細径に形成されたシャンク部と、シャンク部が挿通すると共に、アンカー穴の開口部から穴奥部に向かって延び、先端部がヘッド部に突き当てられるスリーブ部と、を備え、ヘッド部、シャンク部およびスリーブ部は、スチールおよびステンレスのいずれかで形成され、スリーブ部の外周面は、接着剤に固着されて引張り耐力に寄与することを特徴とする。

この構成によれば、接着剤を介してアンカーボルトがアンカー穴に定着された状態で、シャンク部に引張り力(引抜き力)が作用すると、引張り力は、ヘッド部を介してスリーブ部に圧縮力として作用する。この場合、スリーブ部は、アンカー穴との間に充填した接着剤により固着されているため、アンカーボルトは、定着体に対しヘッド部の部分でクサビ効果を発揮する。また、スリーブ部には、ヘッド部を介して先端側から引張り力(圧縮力)が作用するため、引張り力がスリーブ部の基端側(開口部側)に集中的に作用することがなく、定着体の浅い部分に破壊(キノコ状の重畳破壊)が生ずることはない。したがって、従来のものに比して浅い埋込み深さで、十分な引張り耐力を発揮させることができる。また、シャンク部は、直接接着剤に接することがなく、構造物の支持に有用なアンカーボルト(シャンク部)の靱性が損なわれることはない。
なお、ヘッド部とシャンク部とは、一体であってもよいし、別体(ネジ接合等)であってもよい。また、定着体には、コンクリートの他、接着系アンカーが一般的に採用される石材等をも含むものである。言うまでもないが、カプセル型の接着剤を用いる場合には、ヘッド部の先端部を45°カット等の形状とすることが好ましい。
この場合、スリーブ部の先端部は、ヘッド部に固定されていることが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部とヘッド部とが一体化されるため、施工等において、ヘッド部からスリーブ部が離脱或いは位置ズレすることが無く、取扱い性や施工性を向上させることができる。
なお、スリーブ部のヘッド部への固定は、溶着或いは接着とすることが好ましい。
これらの場合、スリーブ部は、接着剤に接する外周面が凹凸形状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部とアンカー穴との間に充填した接着剤において、そのせん断抵抗(引抜き抵抗)を十分に発揮させることができる。
また、アンカー穴は、開口部から穴奥部に向かって延びるストレート穴部を有し、ヘッド部は、挿入に際し、接着剤を先端側から基端側に相対的に流通させるための流通部を有していることが好ましい。
この構成によれば、アンカーボルトのアンカー穴への挿入に際し、流通部内を接着剤が相対的に流れることにより、接着剤の粘性抵抗を抑えることができる。これにより、アンカーボルトのアンカー穴への挿入を円滑に行うことができる。また、カプセル型の接着剤においては、流通部により接着剤の撹拌を促進することができる。
なお、流通部は、ヘッド部の外周面に形成された溝、或いはヘッド部を貫通する孔であることが好ましい。すなわち、流通部は、軸線に対し平行な縦溝或いは縦孔の他、軸線に対し斜めの傾斜溝或いは傾斜孔であることが好ましい。また、流通部は、1つでもよいが、周方向に複数設けることがより好ましい。
同様に、アンカー穴は、ヘッド部が挿入される穴奥部に拡径部を有し、拡径部は、穴底側に向かって広がるテーパー穴部を有し、ヘッド部は、テーパー穴部に対峙するテーパー面部を有していることが好ましい。
この構成によれば、ヘッド部に加わる引張り力(引抜き力)を、テーパー面部により、接着剤のみならず、テーパー穴部を介して定着体にも分散して作用させることができる。これにより、全体として引張り耐力を向上させることができる。
本発明の接着系アンカーは、上記した接着系アンカー用のアンカーボルトと、アンカー穴とアンカーボルトとの間隙に充填される接着剤と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、接着剤を介してアンカー穴に固着したアンカーボルトにおいて、従来のものに比して浅い埋込み深さで、十分な引張り耐力を発揮させることができる。
本発明の接着系アンカーの施工方法は、上記した接着系アンカーの施工方法であって、定着体に対しアンカー穴を穿孔すると共に、アンカー穴の穴内清掃を行う穿孔・清掃工程と、アンカー穴に接着剤を注入する注入工程と、アンカーボルトをアンカー穴に挿入する挿入工程と、接着剤が硬化するまで、アンカーボルトのアンカー穴内での姿勢を維持する養生工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、養生工程を経て接着剤が硬化すると、引張り力に対しアンカーボルトは、クサビ効果を発揮することになる。したがって、従来のものに比して浅い埋込み深さで、十分な引張り耐力を発揮する接着系アンカーを構成することができる。
第1実施形態に係る接着系アンカーの構造図である。 第1実施形態に係る接着系アンカーの施工方法(注入型)の説明図である。 第1実施形態に係る接着系アンカーの施工方法(カプセル型)の説明図である。 第1実施形態の変形例に係るヘッド部廻りの構造図である。 第2実施形態に係る接着系アンカーの構造図である。 第3実施形態に係る接着系アンカーの構造図である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る接着系アンカーについて説明する。接着系アンカーは、コンクリート(定着体)に穿孔したアンカー穴の穴壁に接着剤を食い込ませ、硬化した接着剤のせん断抵抗により、アンカーボルトをコンクリートに固着するものである。特に、本実施形態の接着系アンカーは、アンカーボルトの先端側に引張り力を集中されることにより、コンクリートに適切な支圧強度を発揮させんとするものである。なお、「アンカーボルト」の語は、以下、接着系アンカーにおいて、構造物を支持するためにコンクリートに埋め込まれる部材の総称(ボルトに限定されない)として用いるものとする。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る接着系アンカーの構造図である。同図に示すように、接着系アンカー10Aは、コンクリートC(定着体)に形成されたアンカー穴AHに挿入されるアンカーボルト11A(接着系アンカー用のアンカーボルト)と、アンカー穴AHとアンカーボルト11Aとの間隙に充填される接着剤12と、を備えている。アンカーボルト11Aは、スチールやステンレス等で形成されており、アンカー穴AHの穴奥部に挿入されるヘッド部14と、ヘッド部14に連なるシャンク部15とで一体に形成されている。また、シャンク部15には、先端部をヘッド部14に突き当てるように挿通したスリーブ部16が設けられている。
ヘッド部14は、略円柱状に形成されており、先端側には、アンカー穴AHへの挿入をガイドするガイド面21aが形成されている。ヘッド部14の基端側は、軸線直交する平坦面となっており、この部分にスリーブ部16が突き当てられている。すなわち、ヘッド部14は、軸方向において、主体を為す円柱状部22と、ガイド面21aを有する先端側のガイド面部21と、で一体に形成されている。
アンカー穴AHは、開口部Haから穴底Hbに向かってストレート形状に形成されており、ヘッド部14の径(外径)は、アンカー穴AH(ストレート穴部)の径よりも0.5~1.0mm細径に形成されている。この場合のアンカー穴AHは、振動ドリルやハンマードリルで穿孔されるため、アンカー穴AHの径は、これらドリルのビット径に相当するものとなる。穿孔されたアンカー穴AHは、使用するドリルの性質上、その真円度や直線性に高い精度は期待できない。したがって、この「0.5から1.0mm」の目安は、アンカー穴AHに対し、アンカーボルト11Aを軽く打ち込むことで挿入可能となる値、或いはアンカーボルト11Aを強く押し込むことで挿入可能となる値である。
シャンク部15は、ヘッド部14よりも十分に細径に形成されている。シャンク部15は、ヘッド部14に連なり、アンカー穴AHに埋め込まれる埋込み部31と、埋込み部31に連なり、アンカー穴AHの外部に突出する支持ネジ部32と、で棒状に一体に形成されている。支持ネジ部32は、対象物を支持する部分であり、外周面に雄ネジが形成されている。支持ネジ部32に支持される対象物(構造物)は、この支持ネジ部32にボルト止めされることになる(図示省略)。なお、アンカーボルト11Aの径(呼び径)は、このシャンク部15の径となる。
埋込み部31は、外周面に凹凸のない丸棒状に形成されている。本実施形態では、ヘッド部14とシャンク部15とは、一体に形成されるが、丸棒を切削加工したもの、転造したもの、ヘッド部14をシャンク部15に溶着したもの等、であることが好ましい。
もっとも、ヘッド部14とシャンク部15とは、別体であってもよい。かかる場合には、シャンク部15の先端部に雄ネジを形成すると共にヘッド部14に雌ネジを形成し、シャンク部15にヘッド部14をネジ接合する形態とすることが好ましい。また、接着剤12がカプセル型(後述する)である場合には、ヘッド部14の先端を斜め45°にカットする等の加工を施すことが好ましい。
接着剤12は、アンカーボルト11AおよびコンクリートCに強い接着力を有するエポキシ系接着剤で構成されている。この場合、接着剤12(エポキシ系接着剤)には、2液タイプのものが用いられる。また、2液タイプの接着剤12には、2液をカプセルに封入しこれをアンカー穴AH内で砕き、2液を撹拌・混合させるカプセル型と、予め2液を撹拌・混合しておいて、アンカー穴AHに注入する注入型とがある(詳細は後述する)。
なお、接着剤12は、エポキシ系接着剤の他、ポリエステル系接着剤やエポキシアクリレート系接着剤等の有機系接着剤であってもよいし、セメント系の無機系接着剤であってもよい。特に、近年の無機系接着剤は、コンクリートCよりも強度があり、且つ劣化に強いことから、接着系アンカー10Aの接着剤12として有用である。
スリーブ部16は、シャンク部15の埋込み部31に対応するように、すなわちアンカー穴AHの開口部Haから穴奥部に向かって延びている。スリーブ部16は、シャンク部15等と同様に、スチールやステンレス等で形成されている。この場合、アンカー穴AHの深さ精度を考慮し、スリーブ部16は、アンカー穴AHの開口部Haから数ミリ程度露出するようにしている。
スリーブ部16の内周面は、シャンク部15が挿通するようにシャンク部15とほぼ同径に形成されている。また、スリーブ部16の内周面およびシャンク部15(埋込み部31)の外周面は、凹凸のない平滑な面で形成されている。スリーブ部16の内周面およびシャンク部15(埋込み部31)の外周面は、相互に接着或いは固着されておらず、引張り力によるシャンク部15の伸びが許容されるようになっている。一方、ヘッド部14に対しスリーブ部16は、溶着、接着或いはネジ接合により固定しておくことが好ましい。
ここで、図2および図3を参照して、接着系アンカー10Aの施工方法について説明する。上述のように、接着系アンカー10Aの接着剤12には、カプセル型と注入型とがあり、図2は、注入型の接着剤12を用いた場合の説明図であり、図3は、カプセル型の接着剤12を用いた場合の説明図である。いずれの施工方法も、コンクリートCに対しアンカー穴AHを穿孔すると共に、アンカー穴AHの穴内清掃を行う穿孔・清掃工程と、アンカー穴AHに接着剤12を注入する注入工程と、アンカーボルト11Aをアンカー穴AHに挿入する挿入工程と、接着剤12が硬化するまで、アンカーボルト11Aのアンカー穴AH内での姿勢を維持する養生工程と、を備えている。
穿孔・清掃工程の詳細は、カプセル型および注入型を問わず、同じ作業工程となる。アンカー穴AHの穿孔では、振動ドリルやハンマードリルを用い、コンクリートCに所定の径および深さの穿孔を行う。この場合、アンカー穴AHの穿孔径は、細径のアンカーボルト11Aにおいては、スリーブ部16の径よりも3~5mm程度大きい径に、太径のアンカーボルト11Aにおいては、10mm程度大きい径とする。アンカー穴AHの穴内清掃では、例えばエアー吸引等によるコンクリート粉(切粉)の吸引・除去と共に穴壁Hcのブラッシングにより、穴内のコンクリート粉を入念に除去する。実際の清掃工程は、吸引、ブラッシング、吸引の手順となる。
図2の注入型における接着剤12の注入工程では、予め接着剤12を構成する2液を撹拌・混合しておいて、注入器等によりアンカー穴AHに注入する。この場合、注入される接着剤12は、ほぼアンカー穴AHの容積からアンカーボルト11Aの埋め込まれる部分の体積を減算した量(幾分多め)とすることが好ましい。
アンカー穴AHに接着剤12を注入したら、アンカーボルト11Aをそのヘッド部14が穴底Hbに達するようにアンカー穴AHに挿入する(挿入工程)。具体的には、スリーブ部16の先端をヘッド部14に突当て固定した状態で、アンカーボルト11Aをアンカー穴AHに挿入する。そして、アンカーボルト11Aをアンカー穴AHに挿入したら、余剰の接着剤12を拭き取り、接着剤12が硬化するまでアンカーボルト11Aが動かないように養生を行う(養生工程)。
一方、図3のカプセル型における接着剤12の注入工程では、アンカー穴AHの径および穿孔深さに対応するカプセルK(実際には、グラム表示)を用意し、これをアンカー穴AHに投入する。これと相前後して、アンカーボルト11Aの支持ネジ部32にカプラーを取り付け、カプラーを介してアンカーボルト11Aをドリル(例えば振動ドリル)にセットする。
ここで、アンカーボルト11Aをドリルにセットした状態で、アンカーボルト11Aをアンカー穴AHに挿入し、回転させながらカプセルKを砕くと共に2液を撹拌・混合させる。そして、スリーブ部16の基端を埋込み深さの目安として、接着剤12を撹拌・混合させながらアンカーボルト11Aを埋め込む(挿入工程)。このようにして、アンカーボルト11Aを埋め込んだら、ドリルを外す。そして、接着剤12が硬化するまでアンカーボルト11Aが動かないように養生を行う(養生工程)。
[第1実施形態の変形例]
次に、図4を参照して、第1実施形態とヘッド部14の形態が異なるアンカーボルト11Aの変形例について説明する。この変形例のヘッド部14には、その外周面に、アンカー穴AHへの挿入に際し、接着剤12を流通させるための複数の流通溝41(流通部)が形成されている。
上述のように、ヘッド部14の径は、アンカー穴AHの径よりも0.5~1.0mm細径に形成されている。このため、アンカー穴AHにアンカーボルト11Aを挿入するときに、ヘッド部14に対し接着剤12の粘性抵抗が強く作用することとなる。そこで、この変形例では、ヘッド部14の外周面に複数(実施形態のものは、6つ)の流通溝41を設けている。各流通溝41は、軸方向に平行に延びた断面半円状の、いわゆる縦溝で構成されている。そして、6つの流通溝41は、周方向に均等配置されている。なお、流通溝41の断面形状は、矩形や台形等であってもよい。
このように、ヘッド部14に複数の流通溝41が形成されているため、アンカー穴AHとヘッド部14との間隙が狭くても、アンカーボルト11Aをアンカー穴AHに円滑に挿入することができる。また、カプセル型の接着剤12においては、この流通溝41により接着剤12の撹拌・混合を促進することができる。
なお、この変形例では、流通溝41の数を6つとしたが、これに限定されるものではなく1つ以上であればよい。また、流通溝41は、軸方向に対し傾いた傾斜溝であってもよい(接着剤12の撹拌・混合を促進)。もっとも、流通溝41に代えて流通孔とすることも可能である。そして、本変形例のヘッド部14は、以降の他の実施形態のヘッド部14にも適用できることは、言うまでもない。
以上のように、第1実施形態の接着系アンカー10Aによれば、シャンク部15に引張り力(引抜き力)が作用すると、引張り力は、ヘッド部14を介してスリーブ部16に圧縮力として作用する。この場合、スリーブ部16は、アンカー穴AHとの間に充填した接着剤12により固着されているため、アンカーボルト11Aは、コンクリートCに対しヘッド部14の部分でクサビ効果を発揮する。
また、スリーブ部16には、ヘッド部14を介して先端側から引張り力(スリーブ部16にとっては圧縮力)が作用するため、引張り力がスリーブ部16の基端側(開口部Ha側)に集中的に作用することがなく、コンクリートCの浅い部分に破壊(キノコ状の重畳破壊)が生ずることはない。したがって、従来のものに比して浅い埋込み深さで、十分な引張り耐力を発揮させることができる。また、シャンク部15は、接着剤12の影響を受け難いため、その伸び(靱性)を、対象物(構造物)の支持に生かすことができる。
[第2実施形態]
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る接着系アンカー10Bについて説明する。なお、第2実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる部分について説明を進める。この実施形態では、アンカーボルト11Bにおいて、接着剤12に接するスリーブ部16の外周面16aが、凹凸形状に形成されている。
具体的には、スリーブ部16の外周面16aは、異形鉄筋の外周面のような凹凸形状に形成されている。この場合の凹凸形状は、アンカーボルト11Bの引張り耐力に寄与するものであればよく、例えば全ネジのような凹凸であったてもよい。そして、この場合も、スリーブ部16は、ヘッド部14に対し溶着等により固定しておくことが好ましい。
以上のような第2実施形態の接着系アンカー10Bによれば、第1実施形態と同様に、従来のものに比して浅い埋込み深さで、十分な引張り耐力を発揮させることができ、且つシャンク部15の伸び(靱性)を、対象物(構造物)の支持に生かすことができる。また、スリーブ部16における外周面16aの凹凸形状により、接着剤12において、そのせん断抵抗を十分に発揮させることができ、より一層引張り耐力を向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、図6を参照して、第3実施形態に係る接着系アンカー10Cについて説明する。なお、第3実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる部分について説明を進める。この実施形態では、アンカー穴AHに拡径部Hd(拡底部)が形成されており、アンカーボルト11Cのヘッド部14がこの拡径部Hdに対応した形態を有している。
アンカー穴AHは、ストレート形状の下穴部Hと、下穴部Hの奥部に形成された拡径部Hdとを有している。拡径部Hdは、テーパー形状に形成され開口部Ha側のテーパー穴部Hdaと、ストレート形状に形成された穴底Hb側の拡底穴部Hdbと、を有している。一方、アンカーボルト11Cは、第1実施形態と同様に、ヘッド部14とシャンク部15とスリーブ部16とを有している。
この場合のヘッド部14は、軸方向において、テーパー面23aを有する基端側のテーパー面部23と、中間の円柱状部22と、ガイド面21aを有する先端側のガイド面部21と、を有している。そして、このテーパー面部23は、接着剤12を挟んでアンカー穴AHのテーパー穴部Hdaに対峙すると共に、テーパー穴部Hdaと同一のテーパー角を有している。なお、テーパー面部23は、必ずしもテーパー穴部Hdaと同一のテーパー角であることを要しない。
なお、第3実施形態に係る接着系アンカー10Cの施工方法は、第1実施形態と同様であるが、穿孔・清掃工程において、アンカー穴AHの穿孔した後、アンカー穴AHの穴奥部に拡径部Hdを形成する(図示省略)。すなわち、穿孔した上記のアンカー穴AH(ストレート穴)は、いわゆる下穴であり、この下穴に、電動ドリルに装着した拡径用ドリルビットを挿入し、穴奥部の穴壁Hcを研削して拡径部Hdを形成する。
以上のように、第3実施形態の接着系アンカー10Cによれば、アンカー穴AHに拡径部Hdが形成されているため、拡径部Hd内のヘッド部14に加わる引張り力(引抜き力)を、テーパー面部23により、接着剤12のみならず、テーパー穴部Hdaを介してコンクリートCにも分散して作用させることができる。これにより、全体として引張り耐力を向上させることができる。
特にこの場合には、ヘッド部14に加わる引張り力のほとんどが、接着剤12を介してテーパー穴部Hdaで受けられるため、引張り耐力を十分に得ることができる。また、拡底された接着剤12とアンカーボルト11Cとが一体化するため、例えばアンカーボルト11Cを跨いでコンクリートCにひび割れが生ずることがあっても、アンカーボルト11Cの引張り耐力を維持することができる。
10A,10B,10C…接着系アンカー、11A,11B,11C…アンカーボルト、12…接着剤、14…ヘッド部、15…シャンク部、16…スリーブ部、16a…外周面、21…ガイド面部、23…テーパー面部、31…埋込み部、41…流通溝、AH…アンカー穴、C…コンクリート、Ha…開口部、Hb…穴底、Hc…穴壁、Hd…拡径部、Hda…テーパー穴部

Claims (7)

  1. 定着体に形成されたアンカー穴に、接着剤を介して定着される接着系アンカー用のアンカーボルトであって、
    前記アンカー穴の穴奥部に挿入されるヘッド部と、
    前記ヘッド部に連なり、前記ヘッド部よりも細径に形成されたシャンク部と、
    前記シャンク部が挿通すると共に、前記アンカー穴の開口部から穴奥部に向かって延び、先端部が前記ヘッド部に突き当てられるスリーブ部と、を備え、
    前記ヘッド部、前記シャンク部および前記スリーブ部は、スチールおよびステンレスのいずれかで形成され、
    前記スリーブ部の外周面は、前記接着剤に固着されて引張り耐力に寄与することを特徴とする接着系アンカー用のアンカーボルト。
  2. 前記スリーブ部の先端部は、前記ヘッド部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の接着系アンカー用のアンカーボルト。
  3. 前記スリーブ部は、前記接着剤に接する外周面が凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の接着系アンカー用のアンカーボルト。
  4. 前記アンカー穴は、開口部から穴奥部に向かって延びるストレート穴部を有し、
    前記ヘッド部は、前記挿入に際し、前記接着剤を先端側から基端側に相対的に流通させるための流通部を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の接着系アンカー用のアンカーボルト。
  5. 前記アンカー穴は、前記ヘッド部が挿入される穴奥部に拡径部を有し、
    前記拡径部は、穴底側に向かって広がるテーパー穴部を有し、
    前記ヘッド部は、前記テーパー穴部に対峙するテーパー面部を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の接着系アンカー用のアンカーボルト。
  6. 請求項1ないし5のいずれか一項に記載された接着系アンカー用のアンカーボルトと、
    前記アンカー穴と前記アンカーボルトとの間隙に充填される接着剤と、を備えたことを特徴とする接着系アンカー。
  7. 請求項6に記載された接着系アンカーの施工方法であって、
    前記定着体に対し前記アンカー穴を穿孔すると共に、前記アンカー穴の穴内清掃を行う穿孔・清掃工程と、
    前記アンカー穴に前記接着剤を注入する注入工程と、
    前記アンカーボルトを前記アンカー穴に挿入する挿入工程と、
    前記接着剤が硬化するまで、前記アンカーボルトの前記アンカー穴内での姿勢を維持する養生工程と、を備えたことを特徴とする接着系アンカーの施工方法。
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