JP2016056571A - ネジ部材の固定構造、ネジ部材の固定方法、及び、ネジ部材の定着強度管理方法 - Google Patents

ネジ部材の固定構造、ネジ部材の固定方法、及び、ネジ部材の定着強度管理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固定対象母材へのネジ部材の定着強度と耐久性をより高めるとともに、その定着強度の管理を容易にする。【解決手段】コンクリート等の固定対象母材Cに形成されるアンカー孔Bと、アンカー孔B内に差し入れられる本体雄ネジ部13を有するネジ部材10と、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面との間に介在する結合剤Aとを備えたネジ部材の固定構造において、前記本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部13aによってアンカー孔Bの内面に形成された螺旋状のネジ溝Dにネジ山部13aが入り込み、且つ、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間に結合剤Aが介在して、ネジ部材10が固定対象母材Cに固定されているネジ部材の固定構造とした。本体雄ネジ部13に軸方向に沿って溝部20が形成され、溝部20に結合剤Aが入り込んでいる。【選択図】図3

Description

この発明は、コンクリート構造物等の躯体に形成された孔にネジ部材を挿入し、そのネジ部材を接着剤等の結合剤を用いて固定するネジ部材の固定構造、及び、そのネジ部材の固定方法、さらには、そのネジ部材の定着強度管理方法に関するものである。
土木構造物や建築物等の基礎や柱、梁、天井等に対し、内装材や補強材、その他各種機材等の被固着物を固定するために、ボルトやスクリューネジ等の各種ネジ部材が用いられる。
このネジ部材は、コンクルートが硬化する際に躯体に埋め込み固定される場合もあるが、既に硬化しているコンクリートや既設のコンクリートの躯体、あるいは岩盤や石材等の固定対象母材に対して後から施工するものは、特に、あと施工アンカーと呼ばれている。
あと施工アンカーにおいては、まず、固定対象母材となるコンクリート等の躯体にドリル等の穿孔具を用いてアンカー孔をあけ、その孔にネジ部材を挿入することとなる。
そして、そのネジ部材とアンカー孔の内面との間に接着剤等の結合材を介在させ、その結合材を介して、ネジ部材を固定対象母材に固定するケミカル式アンカーと呼ばれるタイプがある。また、アンカー孔内でネジ部材の一部が拡径して、アンカー孔の内面に対して抜け止め機能を発揮する拡径式(打ち込み式)アンカーと呼ばれるタイプもある。
ケミカル式アンカーでは、ネジ部材の固定は、例えば、樹脂や硬化剤、添加剤等から成る結合剤を入れたカプセルをアンカー孔内に嵌め込んでおき、ネジ部材をアンカー孔内に差し入れることによりカプセルが割れて、結合剤の成分が混合して活性化し硬化するようになっているものがある。結合剤が硬化すると、ネジ部材はアンカー孔内に不動に固定される。あるいは、アンカー孔内にネジ部材を差し入れる前や差し入れた後に、結合剤を注入する手法もある(例えば、特許文献1,2参照)。
特開平8−226427号公報 特開2001−89716号公報(第6頁段落0045〜0047等)
従来のケミカル式アンカーによるネジ部材の固定構造、固定方法では、ネジ部材の周囲にはその全周に亘って結合剤が介在する。すなわち、ネジ部材とアンカー孔の内面とは直接触れることなく、そのネジ部材の定着強度は、ほぼ結合剤とネジ部材の外面、結合剤とアンカー孔の内面との間の接着結合のみに基づいている。
このため、ネジ部材の定着強度は、固定対象母材からのネジ部材の引き抜き強度でもって確認されるのが一般的である。ネジ部材の引き抜き強度の測定は、通常、油圧式の荷重負荷装置(センターホールジャッキ等)を用いて行われ、ネジ部材が、引き抜き方向への所定の負荷に耐え得る定着強度を有しているかどうかで判定される。
しかし、この引き抜き試験を行うための荷重負荷装置のセットは非常に煩雑で時間や手間がかかり、また、荷重負荷装置は非常に重いので重労働でもある。特に、トンネル内壁や天井への施工時のように、上向き姿勢での作業となる場合、荷重負荷装置を扱うのはさらに大変で時間のかかる作業となる。このため、多数のネジ部材に対して引き抜き試験を実施することは、作業工程や作業コストへの影響が大きい。この点は、アンカー孔内でネジ部材の一部が拡径する拡径式アンカーの場合も同様である。
また、一般的に、ネジ部材の固定構造として、いま以上に定着強度と耐久性を高めたいという要請もある。
そこで、この発明の課題は、固定対象母材へのネジ部材の定着強度と耐久性をより高めるとともに、その定着強度の管理を容易にすることである。
上記の課題を解決するために、この発明は、コンクリート等の固定対象母材に形成されるアンカー孔と、前記アンカー孔内に差し入れられる本体雄ネジ部を有するネジ部材と、前記ネジ部材とアンカー孔の内面との間に介在する結合剤とを備え、前記本体雄ネジ部の螺旋状のネジ山部によって前記アンカー孔の内面に形成された螺旋状のネジ溝に前記ネジ山部が入り込み、且つ、前記ネジ部材の外面とアンカー孔の内面との間に前記結合剤が介在して、前記ネジ部材が前記固定対象母材に固定されているネジ部材の固定構造を採用した。
この構成において、前記本体雄ネジ部に軸方向に沿って溝部が形成され、前記溝部に前記結合剤が入り込んでいる構成を採用することができる。
また、前記溝部は、前記本体雄ネジ部の先端から後端に向かって伸びる第一の溝部と、前記本体雄ネジ部の先端から後端に向かって伸びて前記第一の溝部の長さよりも短い第二の溝部とを備える構成を採用することができる。
さらに、前記本体雄ネジ部の軸方向に隣り合うネジ山部間の谷部の底面は、軸方向に沿って断面円弧状に形成されていることが望ましい。
これらのネジ部材の固定方法を構築するための施工方法として、以下の手法を採用することができる。
すなわち、コンクリート等の固定対象母材にアンカー孔を穿孔し、前記アンカー孔内に、本体雄ネジ部を有するネジ部材を差し入れる際に、前記本体雄ネジ部の螺旋状のネジ山部によって前記アンカー孔の内面に螺旋状のネジ溝を形成して前記ネジ山部を前記ネジ溝に入り込ませ、且つ、前記ネジ部材の外面とアンカー孔の内面との間の空間に結合剤を介在させて、前記ネジ部材を前記固定対象母材に固定するネジ部材の固定方法である。
また、これらのネジ部材の固定構造に用いられるネジ部材の定着強度管理方法として、以下の手法を採用することができる。
すなわち、前記ネジ部材は、その後端にトルク管理用操作部を備え、前記トルク管理用操作部に軸周り回転力を付与することにより、その回転トルクによって、前記ネジ部材の前記固定対象母材に対する定着強度を評価するネジ部材の定着強度管理方法である。
この発明は、固定対象母材へのネジ部材の定着強度と耐久性をより高めるとともに、その定着強度の管理を容易にすることができる。
この発明の一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底図、(d)は(b)のD−D断面図 同実施形態のネジ部材の先端を示す要部拡大斜視図 ネジ部材の固定構造を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)の要部拡大図 ネジ部材の詳細を示し、(a)は要部拡大断面図、(b)は(a)のさらなる拡大図、(c)は(a)の変形例を示す要部拡大断面図 他の実施形態のネジ部材の先端を示す要部拡大斜視図 さらに他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底図 図6の実施形態のネジ部材の先端を示す要部拡大斜視図 (a)(b)は実験例で採用したアンカーの固定構造の断面図 実験例で使用する固定対象母材の試験体を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は正面図 試験体と施工内容を示す図表 試験結果を示す図表 試験結果を示す図表 試験結果を示す図表
この発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。この実施形態は、固定対象母材となるコンクリート等の躯体(以下、「固定対象母材C」と称する。)に、ドリル等の穿孔具を用いてアンカー孔Bをあけ、そのアンカー孔Bに軸状のネジ部材10を差し入れて固定する「あと施工アンカー」、特に、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面との間に接着剤等の結合材Aを介在させるケミカル式アンカーの固定構造、固定方法、及び定着強度管理方法に関するものである。
この実施形態に用いられるネジ部材10を、図1及び図2に示す。
この実施形態のネジ部材10は、固定対象母材Cのアンカー孔B内に入り込む先端側から後端側に向かって順に、本体雄ネジ部13、後端雄ネジ部12、ピンテール部11を備えるスクリューネジである。
本体雄ネジ部13は、相対的にネジ山の高さが高いネジ山部13a(以下、「第一のネジ山部13a」と称する。)と、相対的にネジ山の高さが低い第二のネジ山部13c(以下、「第二のネジ山部13c」と称する。)とを交互に備える二条ネジである。すなわち、ネジ山を構成する螺旋部が二組あり、ネジ部材10が軸周り一回転する間に、軸方向に沿って高低合わせて二つ分のネジ山の距離だけ進む形状である。
第一のネジ山部13aと第二のネジ山部13cとの間の谷部13bの底面は、図4(a)(b)に示すように、軸方向に沿って断面円弧状に形成されている。すなわち、本体雄ネジ部13の軸方向に隣り合うネジ山部13a,13c間の谷部13bの底面は、その全域に亘って軸方向に沿って断面円弧状に形成されている。図4(b)に示す符号Rは、その円弧の半径である。また、図中の符号xは、第一のネジ山部13aのピッチであり、これは、第二のネジ山部13bと同じである。図中の符号yは、第一のネジ山部13aの高さを、符号zは、第二のネジ山部13bの高さを示す。符号αは、第一のネジ山部13aの頂部付近のフランク同士が成す角度を、βは、第一のネジ山部13aの中腹付近のフランク同士が成す角度を示す。符号γは、第二のネジ山部13cの頂部付近のフランク同士が成す角度を示す。
本体雄ネジ部13の先端側は、ネジ部材10の先端部14である。先端部14は、先細りの円錐台状となっている。先端部14の側面14aは、先端に向かうにつれて徐々に細くなる円錐面であり、先端部14の端面14bは、軸方向に直交する面方向を有するフラット面である。この先端部14の形状は変更することができ、例えば、円筒状、円錐状、角筒状、角錐台状、角錐状などとしてもよい。
後端雄ネジ部12は、雄ネジからなるネジ山部12aを備えている。このネジ山部12aにナット(図示せず)をネジ込むことにより、そのナットと固定対象母材Cの表面との間、または、後端雄ネジ部12に直接、各種の被固定物(図示せず)を固定することができる。後端雄ネジ部12は所定の荷重を受けることができる構造であればよく、雄ネジに限定されず、雌ネジや断面六角形、断面円形の頭部など、他の構造であってもよい。
ピンテール部11は、軸方向に伸びる山部11aと谷部11bとを、軸周り周方向に沿って一定の間隔で備えるスプラインで構成されている。
本体雄ネジ部13には、軸方向に沿って溝部20が形成されている。この溝部20に結合剤Bが入り込むようになっている。この実施形態では、同じ長さの合計四本の溝部20が、軸周り90°毎の方位に等分方位で設けられているが、溝部20の配置や本数は、自由に設定できる。
この実施形態においては、溝部20は、第一のネジ山部13aの頂部から内径側に向かって所定の深さで形成され、その深さは、第一のネジ山部13aの山の高さよりも浅く設定されて、第二のネジ山部13bの頂部には至らない深さとなっている。したがって、溝部20は第一のネジ山部13aの頂部にのみ形成され、第二のネジ山部13bや谷部13bには、溝部20は形成されていない。ただし、この溝部20の深さは、アンカーに求められる性能に応じて自由に設定できるので、例えば、第二のネジ山部13bや谷部13bに至る溝部20としてもよい。この溝部20は、例えば、プレス加工により形成することができる。
なお、ネジ部材10は全体が炭素鋼からなり、特に、本体雄ネジ部13では焼き入れを施している。ネジ部材10の素材は炭素鋼には限定されず、ステンレス鋼や他の素材からなる金属を採用することもできる。
ただし、本体雄ネジ部13のネジ山部には、固定対象母材Cのアンカー孔B内面に食い込むセルフタッピング機能が要求される。このため、少なくとも、そのセルフタッピング機能が要求されるネジ山部(この実施形態では、相対的にネジ山の高さが高いネジ山部である第一のネジ山部13aが該当)の素材は、固定対象母材Cよりも相対的に硬い素材とすることが望ましい。
ネジ部材10が、固定対象母材Cのアンカー孔B内に固定された構造を図3に示す。
この実施形態のネジ部材10の固定構造は、図3に示すように、固定対象母材Cに形成されるアンカー孔Bと、前述のネジ部材10と、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面との間に介在する結合剤Aとを備えた構造である。
ネジ部材10の本体雄ネジ部13が、固定対象母材Cに穿孔されたアンカー孔B内にねじ込まれ、本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部のセルフタッピング機能により、アンカー孔Bの内面に螺旋状のネジ溝Dが形成される。
螺旋状のネジ溝Dは、図3に示すように、そのネジ溝Dの内面と本体雄ネジ部13のネジ山部の外面との間に隙間を介在する状態に形成される。セルフタッピングの過程で、本体雄ネジ部13の軸周り回転とともに、ネジ溝Dの断面がネジ山部の断面よりもやや大きくなるように形成される。図では、ネジ溝Dの断面が等脚台形状に、ネジ山部13aの断面が三角形状になっている。第一のネジ山部13aの頂部と、それに対向する台形状のネジ溝Dの底面との間は、当接状態あるいはやや隙間をもって対向している状態である。また、第一のネジ山部13aのフランクと、それに対向する台形状のネジ溝Dの斜面との間も、隙間をもって対向している状態である。
このネジ溝Dに本体雄ネジ部13のネジ山部が入り込み、ネジ溝Dの内面と本体雄ネジ部13のネジ山部13aの外面との間の空間には、結合剤Aが介在している。また、ネジ溝Dとネジ山部13a以外の箇所にも、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間に、結合剤Aが介在している。
この実施形態では、第一のネジ山部13aのネジ山の高さy、アンカー孔Bの内径dに対して、そのネジ山のネジ溝Dへの入り込み深さをhとしている。この高さyや内径dと深さhとの比率は、求められる固定対象母材の種別や求められる定着強度等によって適宜決定される。
後端雄ネジ部12は、固定対象母材Cの表面から突出した状態である。後端雄ネジ部12のネジ山部12aが突出しているので、この部位を用いて、前述のように、被固定物を固定することができる。
図3において、ピンテール部11は後端雄ネジ部12と一体の部材であり、両部位は繋がった状態で記載されているが、後述のように、施工後は、ピンテール部11と後端雄ネジ部12とは切断されることとなる。
これらのネジ部材の固定方法を構築するための施工方法を、以下説明する。
まず、固定対象母材Cにアンカー孔Bを穿孔する。穿孔は、電動のドリル等の穿孔具を用いる。アンカー孔Bの内径は、本体雄ネジ部13のネジ山部がアンカー孔Bの内面にネジ溝Dを形成し、そのネジ溝Dに本体雄ネジ部13のネジ山部が入り込むことができるよう、本体雄ネジ部13のネジ山部の最大外径よりも、前述の深さhに相当する分だけ小径とする。
つぎに、アンカー孔Bにネジ部材10をネジ込んでいく。このネジ込みは、例えば、ネジ部材10の後端の後端雄ネジ部12にナットをネジ込み、そのナットにホルダー、ソケット等の接続手段を嵌め込んで、電動のインパクトレンチ等を用いて軸周り回転させることにより締め付けることができる。あるいは、ピンテール部11に嵌め込むことができるホルダー、ソケット等の接続手段を用いて、電動のインパクトレンチ等を用いて締め付けることも可能である。
ネジ部材10の本体雄ネジ部13をアンカー孔Bにネジ込むことにより、本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部13aをアンカー孔Bの内面に食い込ませ、セルフタッピング機能によりアンカー孔Bの内面を削り、その内面に螺旋状のネジ溝Dを形成する。このとき、ネジ山部13aは、ネジ溝Dに入り込んだ状態となる。また、同時に、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に結合剤Aを行き渡らせる。
本体雄ネジ部13のネジ山部13aをアンカー孔Bの内面のネジ溝Dに入り込ませ、且つ、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に結合剤Aを介在させたので、結合剤Aによるネジ部材10と固定対象母材Cとの接着力と、ネジ山部13aのアンカー孔B内面への食い込みによるネジ部材10と固定対象母材Cとの摩擦力とが合わせて作用することとなり、固定対象母材Cへのネジ部材10の定着強度と耐久性をより高めることができる。
また、本体雄ネジ部13の軸方向に隣り合うネジ山部13a,13c間の谷部13bの底面が、その全域に亘って軸方向に沿って断面円弧状に形成されているので、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間の内面に折れ点が少なく、全体に結合剤Aが行き渡りやすいという効果も期待できる。
なお、谷部13bの底面を断面円弧状にする効果を期待しなくても所定の定着強度を発揮できる仕様の場合は、例えば、図4(c)のように、谷部13bの底面のうち軸方向中央寄りの部分をフラット面としてもよい。図4(a)の鎖線で示すラインは、図4(c)の谷部13bの底面に相当する。
また、本体雄ネジ部13に軸方向に沿う溝部20を形成したので、結合剤Aはさらに円滑に行き渡るようになっている。ここで、本体雄ネジ部13をネジ山の高さが異なる二つのネジ山部を有する二条ネジとしている点も、結合剤Aの円滑な充填に効果を発揮している。
結合剤Aとしては、固化後に所定の強度、耐久性を発揮できる素材であれば自由に採用できる。例えば、未硬化の樹脂とその樹脂を硬化させる作用を持つ硬化剤等とを用いた二液混合型の有機系固着剤や、未硬化のセメント系材料とそのセメント系材料の硬化を促進させる作用を持つ硬化促進剤等とを用いた二液混合型の無機系固着剤を用いることができる。あるいは、コンクリート等の石材や金属材料に対応する周知の接着剤を用いることもできる。
実施形態では、結合剤Aとして、二液混合型の有機系固着剤を使用している。固定対象母材Cにアンカー孔Bを穿孔した後、ネジ部材10をアンカー孔Bにネジ込む前に、二液を混合させた状態の固着剤をアンカー孔B内に注入しておく。あるいは、ネジ部材10をアンカー孔Bにある程度ねじ込んだ後に、固着剤を注入してもよい。
また、結合剤Aは、ガラスや樹脂製のカプセルに封入されたものを使用することもできる。カプセル(図示せず)を予めアンカー孔B内に挿入しておき、その状態でネジ部材10をネジ込むことにより、先端部14でパクセルを破壊して、内部の結合剤Aを、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間に充填させる。結合剤Aが硬化すると、ネジ部材10はアンカー孔B内に不動に固定され、図3の状態となる。
ここで、先端部14の形状が上述のように先細りであれば、アンカー孔B内にネジ部材10をネジ込む際の抵抗が減少するとともに、特に、結合剤Aとしてカプセルに封入されたものを用いる際には、カプセルの破壊が円滑である。
また、ピンテール部11と後端雄ネジ部12との間は、やや小径の首部11cとなっている。ネジ部材10がアンカー孔B内に固着された後、ピンテール部11に所定の回転トルクが加われば、その首部11cを介してそれよりも先端側の部材からピンテール部11が切断されるようになっている。
このため、固着剤が完全に硬化してネジ部材10がアンカー孔B内に固着された後、電動のトルクレンチ等の工具を用いて、ネジ部材10にネジ込み時と逆方向の回転トルクを加える。このとき、ピンテール部11が切断されれば、所定のトルクが作用して要求される所定の強度が発揮されていることを確認することができる。すなわち、ここでは、いわゆるトルシア型ボルトの形態を採用しており、ネジ部材10の後端のピンテール部11に専用の締結機械を嵌めて軸周り回転させると、所定のトルクが作用した時点でピンテール部11が破断してそれを知らせることができる。このため、施工後、ピンテール部11が残っているか否かの外観によって、ネジ部材10が固定対象母材Cに対して所定の定着強度を有しているかどうか検査の結果が確認できる。この検査は、上記のような電動の工具等を用いて行ってもよいし、手動のトルクレンチ等の工具を用いて手作業で行ってもよい。
従来のケミカル系アンカーでは、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面とは直接触れることなく、そのネジ部材10の固定対象母材Cへの定着強度は、ほぼ結合剤Aとネジ部材10の外面、結合剤Aとアンカー孔Bの内面との間の接着結合のみに基づいていた。このため、ネジ部材10の固定対象母材Cに対する定着強度を確認するには、引き抜き試験を実施する以外に方法がなかった。
しかし、この発明によれば、煩雑な引き抜き試験を行うことなく、ネジ部材10のトルク管理により容易に定着強度を確認できる。トルク管理による定着強度の確認であれば、容易に、短時間で全数調査も可能である。また、この実施形態では、ピンテール部11の切断によってトルク管理が可能であるので、ネジ部材10の打設と同時にトルク管理が完了し、別途の定着検査を不要とすることもできる。
このような定着強度管理の簡略化の効果は、アンカー孔B内でネジ部材10の一部が拡径して、アンカー孔Bの内面に対して抜け止め機能を発揮する拡径式(打ち込み式)アンカーでは期待できるものではない。また、ネジ部材10のネジ山部が、固定対象母材Cに食い込まない従来のケミカル式アンカーでも期待できるものではない。
ところで、上記の実施形態では、これらのネジ部材の固定構造に用いられるネジ部材として、ピンテール部11を備えたものを採用したが、ピンテール部11を備えないネジ部材10を採用してもよい。
このとき、ネジ部材10の定着強度管理方法として、例えば、以下の手法を採用することができる。
すなわち、ネジ部材10は、その後端にトルク管理用操作部を備えたものとする。トルク管理用操作部としては、例えば、前述のピンテール部11と同様のスプラインで構成してもよいし、本体雄ネジ部13とは逆ネジとなる雄ネジ部または雌ネジ部で構成してもよい。
ネジ部材10の打設後、結合剤Aの硬化後において、トルク管理用操作部に、トルクレンチ等によって、本体雄ネジ部13のネジ込みの際とは逆方向の軸周り回転力を付与することにより、その回転トルクによって、ネジ部材10の固定対象母材Cに対する定着強度を評価することができる。すなわち、ネジ部材10が、一定の回転トルクに耐え得る(回らない)ことを確認することにより、適正な定着強度を発揮していると確認できる定着強度管理方法である。
上記の実施形態では、ネジ部材10として、固定対象母材Cのアンカー孔B内に入り込む先端側から順に、本体雄ネジ部13、後端雄ネジ部12、ピンテール部11を備えるスクリューネジとしたが、アンカー孔Bの内面にネジ山が食い込む本体雄ネジ部13を備えている限りにおいて、この実施形態には限定されない。ネジ部材10として、例えば、後端雄ネジ部12に代えて別の形状、機能からなる軸部を備えたアンカーボルト等であってもよい。
他の実施形態を図5(a)(b)に示す。この実施形態は、溝部20として、本体雄ネジ部13の先端から後端に向かって伸びる第一の溝部20aと、前記本体雄ネジ部の前端から後端に向かって伸びて前記第一の溝部20aの長さよりも短い第二の溝部20bとを備えたものを採用している。この例では、第一の溝部20aと第二の溝部20bとを四本ずつ、45°毎に交互に等分配置としている。
図5(a)は、溝部20の深さが第一のネジ山部13aの山の高さよりも浅く設定されて、第二のネジ山部13bの頂部には至らない深さとなっている例である。溝部20の第一の溝部20aと第二の溝部20bは、第一のネジ山部13aの頂部にのみ形成され、第二のネジ山部13bや谷部13bには、溝部20は形成されていない。図5(b)は、第二のネジ山部13bや谷部13bに至る溝部20とした例である。溝部20の第一の溝部20aと第二の溝部20bは、第一のネジ山部13aだけでなく、第二のネジ山部13bや谷部13bにも形成されている。
これらの例では、特に先端寄りの部分において、第一の溝部20aと第二の溝部20bとが軸周り方向に交互に並列する構成としたので、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に対する結合剤Aの充填がさらに円滑である。
さらに他の実施形態を、図6及び図7に示す。この実施形態は、溝部20の形成を省略したものである。溝部20の効果を期待しなくても、所定の定着強度を発揮できる仕様の場合は、このような実施形態を採用することも可能である。
実験例
実験例を図8〜図11に示す。この実験例は、上記の構成からなるネジ部材の固定構造において、実際にネジ部材10が、固定対象母材Cに対して所定の定着強度を有しているかを引き抜き試験により確認したものである。
試験片となるネジ部材10は、呼び長さ160mm、本体外径ds=16.55mm、本体軸径dk=12.6mmのアンカーボルトHUS−H14×60/70/80/90を使用した。材質は、炭素鋼DIN EN 10263−4,1.5523(亜鉛メッキ5μm)である。
試験片No.1〜30は、アンカー孔Bの深さ80mmにて、試験片No.31〜60は、アンカー孔Bの深さ110mmにて実験を行った。試験片No.61〜70は、図8(a)に示すように、入口付近に角度約15度の傾斜した内面を有する拡径部(傾斜孔)を設けたアンカー孔Bにて実験を行った。試験片No.71〜80は、図8(b)に示すように、隣接する浅い穿孔部が連なって一体の孔(拡大孔)となったアンカー孔Bにて実験を行った。
図9に、実験例で使用する固定対象母材Cの試験体を示す。平面視800mm四方の底面、高さ250mmからなる正四角柱の底面に、4箇所のアンカー孔Bを穿孔し、その4箇所のアンカー孔Bに結合材Aを注入後、ネジ部材10のねじ込みを行った。コンクリートの目標基準強度は24N/mm、スランプ値は12cm、粗骨材最大寸法は25cm。内部には、鉄筋を配筋している。結合材Aは、HIT−RE500エポキシ系接着剤、穿孔機械は、ハンマードリルTE30−M、ドリルビットはホロービットΦ14、締め付け機械は、インパクトレンチSIW 22T−Aである。
ネジ部材10のアンカー孔Bへのねじ込み深さは、図10の通りである。試験片No.1〜10、No.21〜30、No.41〜50、No.61〜80のネジ部材10の埋め込み深さは、70mmである。試験片No.11〜20、No.31〜40、No.51〜60のネジ部材10の埋め込み深さは、100mmである。試験片No.1〜20は下向き施工、試験片No.21〜40は横向き施工、試験片No.41〜80は上向き施工である。
図11a〜図11cに、その試験結果を示す。引き抜き試験には、ネジ部材10の頭部を保持し、そのネジ部材10に対して固定対象母材Cから引き抜く方向への力を付与する油圧試験機を用いた。試験開始からネジ部材10が固定対象母材Cから抜けるまで、あるいは、固定対象母材Cのコンクリートが割れる時点まで載荷を続け、その荷重のメータ値を記録した。
下向き施工の試験片No.1〜20、横向き施工のNo.21〜40、上向き施工のNo.41〜60、傾斜孔施工の試験片No.61〜70、拡大孔施工の試験片No.61〜70のいずれの試験体においても、ネジ部材10と固定対象母材Cとの定着部ではなく、ネジ部材10から一定距離離れた部分で固定対象母材C自身が破断するコーン破壊に至って実験を終了している。このため、ネジ部材10と固定対象母材Cとの定着部の強度は、固定対象母材C自身の強度よりも上回っていることが確認できた。
なお、図11cに示す試験片No.短1〜短10は、アンカー孔Bの穿孔深さを80mmとし、そのうち深い部分40mmの区間にのみ結合材Aを充填したものである。この実験においても、求められる所定の引き抜き強度は満たしていることが確認できた。
10 ネジ部材(スクリューネジ)
11 ピンテール部
11a 山部
11b 谷部
12 後端雄ネジ部
12a ネジ山部
13 本体雄ネジ部
13a ネジ山部(第一のネジ山部)
13b 谷部
13c ネジ山部(第二のネジ山部)
14 先端部
14b 側面
14b 端面
20 溝部
20a 第一の溝部
20b 第二の溝部
A 結合剤
B アンカー孔
C 固定対象母材(コンクリート)
この発明は、コンクリート構造物等の躯体に形成された孔にネジ部材を挿入し、そのネジ部材を接着剤等の結合剤を用いて固定するネジ部材の固定構造、及び、そのネジ部材の固定方法、さらには、そのネジ部材の定着強度管理方法に関するものである。
土木構造物や建築物等の基礎や柱、梁、天井等に対し、内装材や補強材、その他各種機材等の被固着物を固定するために、ボルトやスクリューネジ等の各種ネジ部材が用いられる。
このネジ部材は、コンクートが硬化する際に躯体に埋め込み固定される場合もあるが、既に硬化しているコンクリートや既設のコンクリートの躯体、あるいは岩盤や石材等の固定対象母材に対して後から施工するものは、特に、あと施工アンカーと呼ばれている。
あと施工アンカーにおいては、まず、固定対象母材となるコンクリート等の躯体にドリル等の穿孔具を用いてアンカー孔をあけ、その孔にネジ部材を挿入することとなる。
そして、そのネジ部材とアンカー孔の内面との間に接着剤等の結合材を介在させ、その結合材を介して、ネジ部材を固定対象母材に固定するケミカル式アンカーと呼ばれるタイプがある。また、アンカー孔内でネジ部材の一部が拡径して、アンカー孔の内面に対して抜け止め機能を発揮する拡径式(打ち込み式)アンカーと呼ばれるタイプもある。
ケミカル式アンカーでは、ネジ部材の固定は、例えば、樹脂や硬化剤、添加剤等から成る結合剤を入れたカプセルをアンカー孔内に嵌め込んでおき、ネジ部材をアンカー孔内に差し入れることによりカプセルが割れて、結合剤の成分が混合して活性化し硬化するようになっているものがある。結合剤が硬化すると、ネジ部材はアンカー孔内に不動に固定される。あるいは、アンカー孔内にネジ部材を差し入れる前や差し入れた後に、結合剤を注入する手法もある(例えば、特許文献1,2参照)。
特開平8−226427号公報 特開2001−89716号公報(第6頁段落0045〜0047等)
従来のケミカル式アンカーによるネジ部材の固定構造、固定方法では、ネジ部材の周囲にはその全周に亘って結合剤が介在する。すなわち、ネジ部材とアンカー孔の内面とは直接触れることなく、そのネジ部材の定着強度は、ほぼ結合剤とネジ部材の外面、結合剤とアンカー孔の内面との間の接着結合のみに基づいている。
このため、ネジ部材の定着強度は、固定対象母材からのネジ部材の引き抜き強度でもって確認されるのが一般的である。ネジ部材の引き抜き強度の測定は、通常、油圧式の荷重負荷装置(センターホールジャッキ等)を用いて行われ、ネジ部材が、引き抜き方向への所定の負荷に耐え得る定着強度を有しているかどうかで判定される。
しかし、この引き抜き試験を行うための荷重負荷装置のセットは非常に煩雑で時間や手間がかかり、また、荷重負荷装置は非常に重いので重労働でもある。特に、トンネル内壁や天井への施工時のように、上向き姿勢での作業となる場合、荷重負荷装置を扱うのはさらに大変で時間のかかる作業となる。このため、多数のネジ部材に対して引き抜き試験を実施することは、作業工程や作業コストへの影響が大きい。この点は、アンカー孔内でネジ部材の一部が拡径する拡径式アンカーの場合も同様である。
また、一般的に、ネジ部材の固定構造として、いま以上に定着強度と耐久性を高めたいという要請もある。
そこで、この発明の課題は、固定対象母材へのネジ部材の定着強度と耐久性をより高めるとともに、その定着強度の管理を容易にすることである。
上記の課題を解決するために、この発明は、コンクリート等の固定対象母材に形成されるアンカー孔と、前記アンカー孔内に差し入れられる本体雄ネジ部を有するネジ部材と、前記ネジ部材とアンカー孔の内面との間に介在する結合剤とを備え、前記本体雄ネジ部の螺旋状のネジ山部によって前記アンカー孔の内面に形成された螺旋状のネジ溝に前記ネジ山部が入り込み、且つ、前記ネジ部材の外面とアンカー孔の内面との間に前記結合剤が介在して、前記ネジ部材が前記固定対象母材に固定されているネジ部材の固定構造を採用した。
この構成において、前記本体雄ネジ部に軸方向に沿って溝部が形成され、前記溝部に前記結合剤が入り込んでいる構成を採用することができる。
また、前記溝部は、前記本体雄ネジ部の先端から後端に向かって伸びる第一の溝部と、前記本体雄ネジ部の先端から後端に向かって伸びて前記第一の溝部の長さよりも短い第二の溝部とを備える構成を採用することができる。
さらに、前記本体雄ネジ部の軸方向に隣り合うネジ山部間の谷部の底面は、軸方向に沿って断面円弧状に形成されていることが望ましい。
これらのネジ部材の固定方法を構築するための施工方法として、以下の手法を採用することができる。
すなわち、コンクリート等の固定対象母材にアンカー孔を穿孔し、前記アンカー孔内に、本体雄ネジ部を有するネジ部材を差し入れる際に、前記本体雄ネジ部の螺旋状のネジ山部によって前記アンカー孔の内面に螺旋状のネジ溝を形成して前記ネジ山部を前記ネジ溝に入り込ませ、且つ、前記ネジ部材の外面とアンカー孔の内面との間の空間に結合剤を介在させて、前記ネジ部材を前記固定対象母材に固定するネジ部材の固定方法である。
また、これらのネジ部材の固定構造に用いられるネジ部材の定着強度管理方法として、以下の手法を採用することができる。
すなわち、前記ネジ部材は、その後端にトルク管理用操作部を備え、前記トルク管理用操作部に軸周り回転力を付与することにより、その回転トルクによって、前記ネジ部材の前記固定対象母材に対する定着強度を評価するネジ部材の定着強度管理方法である。
この発明は、固定対象母材へのネジ部材の定着強度と耐久性をより高めるとともに、その定着強度の管理を容易にすることができる。
この発明の一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底図、(d)は(b)の断面図 同実施形態のネジ部材の先端を示す要部拡大斜視図 ネジ部材の固定構造を示し、(a)は正面断面図、(b)は(a)の要部拡大図 ネジ部材の詳細を示し、(a)は要部拡大断面図、(b)は(a)のさらなる拡大図、(c)は(a)の変形例を示す要部拡大断面図 他の実施形態のネジ部材の先端を示す要部拡大斜視図 さらに他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底図 図6の実施形態のネジ部材の先端を示す要部拡大斜視図 (a)(b)は実験例で採用したアンカーの固定構造の断面図 実験例で使用する固定対象母材の試験体を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は正面図 試験体と施工内容を示す図表 試験結果を示す図表 試験結果を示す図表 試験結果を示す図表
この発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。この実施形態は、固定対象母材となるコンクリート等の躯体(以下、「固定対象母材C」と称する。)に、ドリル等の穿孔具を用いてアンカー孔Bをあけ、そのアンカー孔Bに軸状のネジ部材10を差し入れて固定する「あと施工アンカー」、特に、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面との間に接着剤等の結合材Aを介在させるケミカル式アンカーの固定構造、固定方法、及び定着強度管理方法に関するものである。
この実施形態に用いられるネジ部材10を、図1及び図2に示す。
この実施形態のネジ部材10は、固定対象母材Cのアンカー孔B内に入り込む先端側から後端側に向かって順に、本体雄ネジ部13、後端雄ネジ部12、ピンテール部11を備えるスクリューネジである。
本体雄ネジ部13は、相対的にネジ山の高さが高いネジ山部13a(以下、「第一のネジ山部13a」と称する。)と、相対的にネジ山の高さが低い第二のネジ山部13c(以下、「第二のネジ山部13c」と称する。)とを交互に備える二条ネジである。すなわち、ネジ山を構成する螺旋部が二組あり、ネジ部材10が軸周り一回転する間に、軸方向に沿って高低合わせて二つ分のネジ山の距離だけ進む形状である。
第一のネジ山部13aと第二のネジ山部13cとの間の谷部13bの底面は、図4(a)(b)に示すように、軸方向に沿って断面円弧状に形成されている。すなわち、本体雄ネジ部13の軸方向に隣り合うネジ山部13a,13c間の谷部13bの底面は、その全域に亘って軸方向に沿って断面円弧状に形成されている。図4(b)に示す符号Rは、その円弧の半径である。また、図中の符号xは、第一のネジ山部13aのピッチであり、これは、第二のネジ山部13bと同じである。図中の符号yは、第一のネジ山部13aの高さを、符号zは、第二のネジ山部13bの高さを示す。符号αは、第一のネジ山部13aの頂部付近のフランク同士が成す角度を、βは、第一のネジ山部13aの中腹付近のフランク同士が成す角度を示す。符号γは、第二のネジ山部13cの頂部付近のフランク同士が成す角度を示す。
本体雄ネジ部13の先端側は、ネジ部材10の先端部14である。先端部14は、先細りの円錐台状となっている。先端部14の側面14aは、先端に向かうにつれて徐々に細くなる円錐面であり、先端部14の端面14bは、軸方向に直交する面方向を有するフラット面である。この先端部14の形状は変更することができ、例えば、円筒状、円錐状、角筒状、角錐台状、角錐状などとしてもよい。
後端雄ネジ部12は、雄ネジからなるネジ山部12aを備えている。このネジ山部12aにナット(図示せず)をネジ込むことにより、そのナットと固定対象母材Cの表面との間、または、後端雄ネジ部12に直接、各種の被固定物(図示せず)を固定することができる。後端雄ネジ部12は所定の荷重を受けることができる構造であればよく、雄ネジに限定されず、雌ネジや断面六角形、断面円形の頭部など、他の構造であってもよい。
ピンテール部11は、軸方向に伸びる山部11aと谷部11bとを、軸周り周方向に沿って一定の間隔で備えるスプラインで構成されている。
本体雄ネジ部13には、軸方向に沿って溝部20が形成されている。この溝部20に結合剤Bが入り込むようになっている。この実施形態では、同じ長さの合計四本の溝部20が、軸周り90°毎の方位に等分方位で設けられているが、溝部20の配置や本数は、自由に設定できる。
この実施形態においては、溝部20は、第一のネジ山部13aの頂部から内径側に向かって所定の深さで形成され、その深さは、第一のネジ山部13aの山の高さよりも浅く設定されて、第二のネジ山部13bの頂部には至らない深さとなっている。したがって、溝部20は第一のネジ山部13aの頂部にのみ形成され、第二のネジ山部13bや谷部13bには、溝部20は形成されていない。ただし、この溝部20の深さは、アンカーに求められる性能に応じて自由に設定できるので、例えば、第二のネジ山部13bや谷部13bに至る溝部20としてもよい。この溝部20は、例えば、プレス加工により形成することができる。
なお、ネジ部材10は全体が炭素鋼からなり、特に、本体雄ネジ部13では焼き入れを施している。ネジ部材10の素材は炭素鋼には限定されず、ステンレス鋼や他の素材からなる金属を採用することもできる。
ただし、本体雄ネジ部13のネジ山部には、固定対象母材Cのアンカー孔B内面に食い込むセルフタッピング機能が要求される。このため、少なくとも、そのセルフタッピング機能が要求されるネジ山部(この実施形態では、相対的にネジ山の高さが高いネジ山部である第一のネジ山部13aが該当)の素材は、固定対象母材Cよりも相対的に硬い素材とすることが望ましい。
ネジ部材10が、固定対象母材Cのアンカー孔B内に固定された構造を図3に示す。
この実施形態のネジ部材10の固定構造は、図3に示すように、固定対象母材Cに形成されるアンカー孔Bと、前述のネジ部材10と、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面との間に介在する結合剤Aとを備えた構造である。
ネジ部材10の本体雄ネジ部13が、固定対象母材Cに穿孔されたアンカー孔B内にねじ込まれ、本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部のセルフタッピング機能により、アンカー孔Bの内面に螺旋状のネジ溝Dが形成される。
螺旋状のネジ溝Dは、図3に示すように、そのネジ溝Dの内面と本体雄ネジ部13のネジ山部の外面との間に隙間を介在する状態に形成される。セルフタッピングの過程で、本体雄ネジ部13の軸周り回転とともに、ネジ溝Dの断面がネジ山部の断面よりもやや大きくなるように形成される。図では、ネジ溝Dの断面が等脚台形状に、ネジ山部13aの断面が三角形状になっている。第一のネジ山部13aの頂部と、それに対向する台形状のネジ溝Dの底面との間は、当接状態あるいはやや隙間をもって対向している状態である。また、第一のネジ山部13aのフランクと、それに対向する台形状のネジ溝Dの斜面との間も、隙間をもって対向している状態である。
このネジ溝Dに本体雄ネジ部13のネジ山部が入り込み、ネジ溝Dの内面と本体雄ネジ部13のネジ山部13aの外面との間の空間には、結合剤Aが介在している。また、ネジ溝Dとネジ山部13a以外の箇所にも、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間に、結合剤Aが介在している。
この実施形態では、第一のネジ山部13aのネジ山の高さy、アンカー孔Bの内径dに対して、そのネジ山のネジ溝Dへの入り込み深さをhとしている。この高さyや内径dと深さhとの比率は、求められる固定対象母材の種別や求められる定着強度等によって適宜決定される。
後端雄ネジ部12は、固定対象母材Cの表面から突出した状態である。後端雄ネジ部12のネジ山部12aが突出しているので、この部位を用いて、前述のように、被固定物を固定することができる。
図3において、ピンテール部11は後端雄ネジ部12と一体の部材であり、両部位は繋がった状態で記載されているが、後述のように、施工後は、ピンテール部11と後端雄ネジ部12とは切断されることとなる。
これらのネジ部材の固定方法を構築するための施工方法を、以下説明する。
まず、固定対象母材Cにアンカー孔Bを穿孔する。穿孔は、電動のドリル等の穿孔具を用いる。アンカー孔Bの内径は、本体雄ネジ部13のネジ山部がアンカー孔Bの内面にネジ溝Dを形成し、そのネジ溝Dに本体雄ネジ部13のネジ山部が入り込むことができるよう、本体雄ネジ部13のネジ山部の最大外径よりも、前述の深さhに相当する分だけ小径とする。
つぎに、アンカー孔Bにネジ部材10をネジ込んでいく。このネジ込みは、例えば、ネジ部材10の後端の後端雄ネジ部12にナットをネジ込み、そのナットにホルダー、ソケット等の接続手段を嵌め込んで、電動のインパクトレンチ等を用いて軸周り回転させることにより締め付けることができる。あるいは、ピンテール部11に嵌め込むことができるホルダー、ソケット等の接続手段を用いて、電動のインパクトレンチ等を用いて締め付けることも可能である。
ネジ部材10の本体雄ネジ部13をアンカー孔Bにネジ込むことにより、本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部13aをアンカー孔Bの内面に食い込ませ、セルフタッピング機能によりアンカー孔Bの内面を削り、その内面に螺旋状のネジ溝Dを形成する。このとき、ネジ山部13aは、ネジ溝Dに入り込んだ状態となる。また、同時に、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に結合剤Aを行き渡らせる。
本体雄ネジ部13のネジ山部13aをアンカー孔Bの内面のネジ溝Dに入り込ませ、且つ、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に結合剤Aを介在させたので、結合剤Aによるネジ部材10と固定対象母材Cとの接着力と、ネジ山部13aのアンカー孔B内面への食い込みによるネジ部材10と固定対象母材Cとの摩擦力とが合わせて作用することとなり、固定対象母材Cへのネジ部材10の定着強度と耐久性をより高めることができる。
また、本体雄ネジ部13の軸方向に隣り合うネジ山部13a,13c間の谷部13bの底面が、その全域に亘って軸方向に沿って断面円弧状に形成されているので、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間の内面に折れ点が少なく、全体に結合剤Aが行き渡りやすいという効果も期待できる。
なお、谷部13bの底面を断面円弧状にする効果を期待しなくても所定の定着強度を発揮できる仕様の場合は、例えば、図4(c)のように、谷部13bの底面のうち軸方向中央寄りの部分をフラット面としてもよい。図4(a)の鎖線で示すラインは、図4(c)の谷部13bの底面に相当する。
また、本体雄ネジ部13に軸方向に沿う溝部20を形成したので、結合剤Aはさらに円滑に行き渡るようになっている。ここで、本体雄ネジ部13をネジ山の高さが異なる二つのネジ山部を有する二条ネジとしている点も、結合剤Aの円滑な充填に効果を発揮している。
結合剤Aとしては、固化後に所定の強度、耐久性を発揮できる素材であれば自由に採用できる。例えば、未硬化の樹脂とその樹脂を硬化させる作用を持つ硬化剤等とを用いた二液混合型の有機系固着剤や、未硬化のセメント系材料とそのセメント系材料の硬化を促進させる作用を持つ硬化促進剤等とを用いた二液混合型の無機系固着剤を用いることができる。あるいは、コンクリート等の石材や金属材料に対応する周知の接着剤を用いることもできる。
実施形態では、結合剤Aとして、二液混合型の有機系固着剤を使用している。固定対象母材Cにアンカー孔Bを穿孔した後、ネジ部材10をアンカー孔Bにネジ込む前に、二液を混合させた状態の固着剤をアンカー孔B内に注入しておく。あるいは、ネジ部材10をアンカー孔Bにある程度ねじ込んだ後に、固着剤を注入してもよい。
また、結合剤Aは、ガラスや樹脂製のカプセルに封入されたものを使用することもできる。カプセル(図示せず)を予めアンカー孔B内に挿入しておき、その状態でネジ部材10をネジ込むことにより、先端部14でプセルを破壊して、内部の結合剤Aを、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間に充填させる。結合剤Aが硬化すると、ネジ部材10はアンカー孔B内に不動に固定され、図3の状態となる。
ここで、先端部14の形状が上述のように先細りであれば、アンカー孔B内にネジ部材10をネジ込む際の抵抗が減少するとともに、特に、結合剤Aとしてカプセルに封入されたものを用いる際には、カプセルの破壊が円滑である。
また、ピンテール部11と後端雄ネジ部12との間は、やや小径の首部11cとなっている。ネジ部材10がアンカー孔B内に固着された後、ピンテール部11に所定の回転トルクが加われば、その首部11cを介してそれよりも先端側の部材からピンテール部11が切断されるようになっている。
このため、固着剤が完全に硬化してネジ部材10がアンカー孔B内に固着された後、電動のトルクレンチ等の工具を用いて、ネジ部材10にネジ込み時と逆方向の回転トルクを加える。このとき、ピンテール部11が切断されれば、所定のトルクが作用して要求される所定の強度が発揮されていることを確認することができる。すなわち、ここでは、いわゆるトルシア型ボルトの形態を採用しており、ネジ部材10の後端のピンテール部11に専用の締結機械を嵌めて軸周り回転させると、所定のトルクが作用した時点でピンテール部11が破断してそれを知らせることができる。このため、施工後、ピンテール部11が残っているか否かの外観によって、ネジ部材10が固定対象母材Cに対して所定の定着強度を有しているかどうか検査の結果が確認できる。この検査は、上記のような電動の工具等を用いて行ってもよいし、手動のトルクレンチ等の工具を用いて手作業で行ってもよい。
従来のケミカル系アンカーでは、ネジ部材10とアンカー孔Bの内面とは直接触れることなく、そのネジ部材10の固定対象母材Cへの定着強度は、ほぼ結合剤Aとネジ部材10の外面、結合剤Aとアンカー孔Bの内面との間の接着結合のみに基づいていた。このため、ネジ部材10の固定対象母材Cに対する定着強度を確認するには、引き抜き試験を実施する以外に方法がなかった。
しかし、この発明によれば、煩雑な引き抜き試験を行うことなく、ネジ部材10のトルク管理により容易に定着強度を確認できる。トルク管理による定着強度の確認であれば、容易に、短時間で全数調査も可能である。また、この実施形態では、ピンテール部11の切断によってトルク管理が可能であるので、ネジ部材10の打設と同時にトルク管理が完了し、別途の定着検査を不要とすることもできる。
このような定着強度管理の簡略化の効果は、アンカー孔B内でネジ部材10の一部が拡径して、アンカー孔Bの内面に対して抜け止め機能を発揮する拡径式(打ち込み式)アンカーでは期待できるものではない。また、ネジ部材10のネジ山部が、固定対象母材Cに食い込まない従来のケミカル式アンカーでも期待できるものではない。
ところで、上記の実施形態では、これらのネジ部材の固定構造に用いられるネジ部材として、ピンテール部11を備えたものを採用したが、ピンテール部11を備えないネジ部材10を採用してもよい。
このとき、ネジ部材10の定着強度管理方法として、例えば、以下の手法を採用することができる。
すなわち、ネジ部材10は、その後端にトルク管理用操作部を備えたものとする。トルク管理用操作部としては、例えば、前述のピンテール部11と同様のスプラインで構成してもよいし、本体雄ネジ部13とは逆ネジとなる雄ネジ部または雌ネジ部で構成してもよい。
ネジ部材10の打設後、結合剤Aの硬化後において、トルク管理用操作部に、トルクレンチ等によって、本体雄ネジ部13のネジ込みの際とは逆方向の軸周り回転力を付与することにより、その回転トルクによって、ネジ部材10の固定対象母材Cに対する定着強度を評価することができる。すなわち、ネジ部材10が、一定の回転トルクに耐え得る(回らない)ことを確認することにより、適正な定着強度を発揮していると確認できる定着強度管理方法である。
上記の実施形態では、ネジ部材10として、固定対象母材Cのアンカー孔B内に入り込む先端側から順に、本体雄ネジ部13、後端雄ネジ部12、ピンテール部11を備えるスクリューネジとしたが、アンカー孔Bの内面にネジ山が食い込む本体雄ネジ部13を備えている限りにおいて、この実施形態には限定されない。ネジ部材10として、例えば、後端雄ネジ部12に代えて別の形状、機能からなる軸部を備えたアンカーボルト等であってもよい。
他の実施形態を図5(a)(b)に示す。この実施形態は、溝部20として、本体雄ネジ部13の先端から後端に向かって伸びる第一の溝部20aと、前記本体雄ネジ部の前端から後端に向かって伸びて前記第一の溝部20aの長さよりも短い第二の溝部20bとを備えたものを採用している。この例では、第一の溝部20aと第二の溝部20bとを四本ずつ、45°毎に交互に等分配置としている。
図5(a)は、溝部20の深さが第一のネジ山部13aの山の高さよりも浅く設定されて、第二のネジ山部13の頂部には至らない深さとなっている例である。溝部20の第一の溝部20aと第二の溝部20bは、第一のネジ山部13aの頂部にのみ形成され、第二のネジ山部13や谷部13bには、溝部20は形成されていない。図5(b)は、第二のネジ山部13や谷部13bに至る溝部20とした例である。溝部20の第一の溝部20aと第二の溝部20bは、第一のネジ山部13aだけでなく、第二のネジ山部13や谷部13bにも形成されている。
これらの例では、特に先端寄りの部分において、第一の溝部20aと第二の溝部20bとが軸周り方向に交互に並列する構成としたので、ネジ部材10の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に対する結合剤Aの充填がさらに円滑である。
さらに他の実施形態を、図6及び図7に示す。この実施形態は、溝部20の形成を省略したものである。溝部20の効果を期待しなくても、所定の定着強度を発揮できる仕様の場合は、このような実施形態を採用することも可能である。
実験例
実験例を図8〜図11に示す。この実験例は、上記の構成からなるネジ部材の固定構造において、実際にネジ部材10が、固定対象母材Cに対して所定の定着強度を有しているかを引き抜き試験により確認したものである。
試験片となるネジ部材10は、呼び長さ160mm、本体外径ds=16.55mm、本体軸径dk=12.6mmのアンカーボルトHUS−H14×60/70/80/90を使用した。材質は、炭素鋼DIN EN 10263−4,1.5523(亜鉛メッキ5μm)である。
試験片No.1〜30は、アンカー孔Bの深さ80mmにて、試験片No.31〜60は、アンカー孔Bの深さ110mmにて実験を行った。試験片No.61〜70は、図8(a)に示すように、入口付近に角度約15度の傾斜した内面を有する拡径部(傾斜孔)を設けたアンカー孔Bにて実験を行った。試験片No.71〜80は、図8(b)に示すように、隣接する浅い穿孔部が連なって一体の孔(拡大孔)となったアンカー孔Bにて実験を行った。
図9に、実験例で使用する固定対象母材Cの試験体を示す。平面視800mm四方の底面、高さ250mmからなる正四角柱の底面に、4箇所のアンカー孔Bを穿孔し、その4箇所のアンカー孔Bに結合材Aを注入後、ネジ部材10のねじ込みを行った。コンクリートの目標基準強度は24N/mm、スランプ値は12cm、粗骨材最大寸法は25cm。内部には、鉄筋を配筋している。結合材Aは、HIT−RE500エポキシ系接着剤、穿孔機械は、ハンマードリルTE30−M、ドリルビットはホロービットΦ14、締め付け機械は、インパクトレンチSIW 22T−Aである。
ネジ部材10のアンカー孔Bへのねじ込み深さは、図10の通りである。試験片No.1〜10、No.21〜30、No.41〜50、No.61〜80のネジ部材10の埋め込み深さは、70mmである。試験片No.11〜20、No.31〜40、No.51〜60のネジ部材10の埋め込み深さは、100mmである。試験片No.1〜20は下向き施工、試験片No.21〜40は横向き施工、試験片No.41〜80は上向き施工である。
図11a〜図11cに、その試験結果を示す。引き抜き試験には、ネジ部材10の頭部を保持し、そのネジ部材10に対して固定対象母材Cから引き抜く方向への力を付与する油圧試験機を用いた。試験開始からネジ部材10が固定対象母材Cから抜けるまで、あるいは、固定対象母材Cのコンクリートが割れる時点まで載荷を続け、その荷重のメータ値を記録した。
下向き施工の試験片No.1〜20、横向き施工のNo.21〜40、上向き施工のNo.41〜60、傾斜孔施工の試験片No.61〜70、拡大孔施工の試験片No.61〜70のいずれの試験体においても、ネジ部材10と固定対象母材Cとの定着部ではなく、ネジ部材10から一定距離離れた部分で固定対象母材C自身が破断するコーン破壊に至って実験を終了している。このため、ネジ部材10と固定対象母材Cとの定着部の強度は、固定対象母材C自身の強度よりも上回っていることが確認できた。
なお、図11cに示す試験片No.短1〜短10は、アンカー孔Bの穿孔深さを80mmとし、そのうち深い部分40mmの区間にのみ結合材Aを充填したものである。この実験においても、求められる所定の引き抜き強度は満たしていることが確認できた。
10 ネジ部材(スクリューネジ)
11 ピンテール部
11a 山部
11b 谷部
12 後端雄ネジ部
12a ネジ山部
13 本体雄ネジ部
13a ネジ山部(第一のネジ山部)
13b 谷部
13c ネジ山部(第二のネジ山部)
14 先端部
14 側面
14b 端面
20 溝部
20a 第一の溝部
20b 第二の溝部
A 結合剤
B アンカー孔
C 固定対象母材(コンクリート)
ネジ溝

Claims (6)

  1. コンクリート等の固定対象母材(C)に形成されるアンカー孔(B)と、前記アンカー孔(B)内に差し入れられる本体雄ネジ部(13)を有するネジ部材(10)と、前記ネジ部材(10)とアンカー孔(B)の内面との間に介在する結合剤(A)とを備え、
    前記本体雄ネジ部(13)の螺旋状のネジ山部(13a)によって前記アンカー孔(B)の内面に形成された螺旋状のネジ溝(D)に前記ネジ山部(13a)が入り込み、且つ、前記ネジ部材(10)の外面とアンカー孔(B)の内面との間に前記結合剤(A)が介在して、前記ネジ部材(10)が前記固定対象母材(C)に固定されているネジ部材の固定構造。
  2. 前記本体雄ネジ部(13)に軸方向に沿って溝部(20)が形成され、前記溝部(20)に前記結合剤(A)が入り込んでいる請求項1に記載のネジ部材の固定構造。
  3. 前記溝部(20)は、前記本体雄ネジ部(13)の先端から後端に向かって伸びる第一の溝(20a)と、前記本体雄ネジ部(13)の先端から後端に向かって伸びて前記第一の溝(20a)の長さよりも短い第二の溝(20b)とを備える請求項1又は2に記載のネジ部材の固定構造。
  4. 前記本体雄ネジ部(13)の軸方向に隣り合うネジ山部(13a、13c)間の谷部(13b)の底面は、軸方向に沿って断面円弧状に形成されている請求項1から3のいずれか一つに記載のネジ部材の固定構造。
  5. コンクリート等の固定対象母材(C)にアンカー孔(B)を穿孔し、前記アンカー孔(B)内に、本体雄ネジ部(13)を有するネジ部材(10)を差し入れる際に、前記本体雄ネジ部(13)の螺旋状のネジ山部(13a)によって前記アンカー孔(B)の内面に螺旋状のネジ溝(D)を形成して前記ネジ山部(13a)を前記ネジ溝(D)に入り込ませ、且つ、前記ネジ部材(10)の外面とアンカー孔(B)の内面との間の空間に結合剤(A)を介在させて、前記ネジ部材(10)を前記固定対象母材(C)に固定するネジ部材の固定方法。
  6. 請求項1から4のいずれか一つに記載のネジ部材の固定構造に用いられるネジ部材の定着強度管理方法であって、
    前記ネジ部材(10)は、その後端にトルク管理用操作部を備え、前記トルク管理用操作部に軸周り回転力を付与することにより、その回転トルクによって、前記ネジ部材(10)の前記固定対象母材(C)に対する定着強度を評価するネジ部材の定着強度管理方法。
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