JP2010138454A - 耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材、並びに、それを用いたバラストタンクおよび船舶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、基材表面の少なくとも一部にエポキシ樹脂系塗料から形成された防食塗膜が積層されてなるバラストタンク用塗装鋼材であって、前記基材が、所定量のC、Si、Mn、Al、S、Cu、Niを夫々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分の表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmであり、前記防食塗膜が、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
まず、バラストタンク用塗装鋼材を構成する基材について、その成分範囲および表面粗さの限定理由について説明する。
C:0.01%〜0.30%
Cは、基材の強度確保のために必要な元素である。船舶の構造部材としての最低限の強度(すなわち、使用する鋼材の肉厚にもよるが、引張強度が概ね400MPa程度)を得るためには、Cを0.01%以上含有させる必要がある。しかし、C含有量が0.30%を超えると基材の靱性が劣化する。こうしたことから、C含有量は0.01%〜0.30%とした。なお、C含有量は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.04%以上であり、好ましくは0.28%以下、より好ましくは0.26%以下である。
Siは、基材の脱酸と強度確保のための必要な元素である。Si含有量が0.01%未満では、構造部材としての最低限の強度を確保できない。しかし、Si含有量が2.0%を超えると基材の溶接性が劣化する。こうしたことから、Si含有量は0.01%〜2.0%とした。なお、Si含有量は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上であり、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下である。
MnもSiと同様に、基材の脱酸および強度確保のために必要な元素である。Mn含有量が0.01%未満では、構造部材としての最低限の強度を確保できない。しかし、Mn含有量が2.0%を超えると基材の靱性が劣化する。こうしたことから、Mn含有量は0.01%〜2.0%とした。なお、Mn含有量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上であり、好ましくは1.80%以下、より好ましくは1.60%以下である。
AlもSi、Mnと同様に、基材の脱酸および強度確保のために必要な元素である。Al含有量が0.005%未満では脱酸の効果が得られない。しかし、Al含有量が0.10%を超えると基材の溶接性を害する。こうしたことから、Al含有量は0.005%〜0.10%とした。なお、Al含有量は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.015%以上であり、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.040%以下である。
Sは、基材の靭性や溶接性を劣化させる元素であり、可能な限り含有量を抑えることが好ましい。S含有量が0.010%を超えると船舶用鋼材としての溶接性を確保できない。こうしたことから、S含有量は0.010%以下とした。なお、S含有量は、好ましくは0.008%以下である。
Cuは、耐塗膜ふくれ性向上に大きく寄与する緻密な不動態皮膜を形成するのに必要な元素である。Cu含有量が0.01%未満では緻密な不動態皮膜を形成するという効果が得られない。しかし、Cu含有量が5.0%を超えると基材の溶接性や熱間加工性が劣化する。こうしたことから、Cu含有量は0.01%〜5.0%とした。なお、Cu含有量は、好ましくは0.05%以上であり、好ましくは4.5%以下である。
Niは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な不動態皮膜を安定化させるのに必要な元素であり、特に塗膜下での腐食進展を抑制して塗装耐食性を向上させる元素である。Ni含有量が0.01%未満では、塗装耐食性を向上する効果が得られない。しかし、Ni含有量が5.0%を超えると基材の溶接性や熱間加工性が劣化する。こうしたことから、Ni含有量は0.01%〜5.0%とした。Ni含有量は、好ましくは0.05%以上であり、好ましくは4.5%以下である。
CrおよびCoは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。このうちCrは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の溶接性や熱間加工性が劣化することから、Cr含有量は5.0%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは4.5%以下である。
Ti、ZrおよびHfは耐食性向上に大きく寄与する表面錆皮膜を緻密化してその環境遮断性を向上させると共に、すきま内部における腐食を抑制して、耐すきま腐食性も向上させるのに有効な元素である。こうした環境下で要求される耐食性を確保するために、Ti、ZrおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.005%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の加工性と溶接性が劣化することから、Ti、ZrおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.20%以下とすることが好ましい。これらの元素の含有量は、より好ましくは0.008%以上であり、より好ましくは0.15%以下である。
Mg、Ca、SrおよびBaは、基材から溶出することによって周辺の水系環境のpH上昇作用を示す。そのため、Feの溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。こうした効果を得るために、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の加工性と溶接性が劣化することから、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.020%以下とすることが好ましい。
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、これらの元素は基材の強度向上に有用な元素である。このうちBは、基材の焼入性を高めて強度を向上させるのに有効な元素である。このような効果を得るために、B含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の靭性が劣化するため、B含有量は、0.010%以下とすることが好ましい。なお、B含有量は、より好ましくは0.0003%以上であり、より好ましくは0.009%以下である。
本発明に用いられる基材は、その表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmである。基材の表面粗さが、10点平均粗さ(RzJIS)で15μm未満の場合には、平滑すぎるため基材の実質的な表面積が少なく、塗膜密着性の改善効果が得られない。一方、表面粗さが、10点平均粗さ(RzJIS)で80μmを超える場合は、防食塗料と基材との界面に気泡を巻き込みやすく、防食塗膜に欠陥が入りやすくなり、防食塗膜の防食性能が発揮されない。また、塗料の乾燥時に凹凸を起点とした残留応力が生じやすく、塗膜密着性を低下させる原因にもなる。前記基材の表面粗さは、10点平均粗さ(RzJIS)で、好ましくは20μm以上であり、好ましくは60μm以下である。
次に、本発明のバラストタンク用塗装鋼材に用いられるエポキシ系樹脂塗料について説明する。
本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、前記基材の下地処理として、該基材と防食塗膜との間にジンクリッチプライマが塗布されていることも好ましい態様である。ジンクリッチプライマを塗布して下地処理することより、防食塗膜下環境でジンクリッチプライマの亜鉛の犠牲防食効果が得られる、更に、基材の成分調整と表面粗さの制御によって、ジンクリッチプライマ中の亜鉛の損耗速度を抑え、防食塗膜下の腐食をより抑制することができ、耐塗膜ふくれ性が一層良好となる。
本発明のバラストタンクは、前記した本発明のバラストタンク用塗装鋼材により構成されたことを特徴とする。前記バラストタンクは、主に船舶に用いられるものであり、積荷の状態に応じて、バラストとしての海水が漲排水されるタンクである。前記バラストタンクは、前記バラストタンク用塗装鋼材により構成されていればよく、その形状および大きさは特に限定されない。また、本発明のバラストタンクは、流電陽極法などの電気防食法が併用されていてもよい。
本発明の船舶は、前記した本発明のバラストタンクを有することを特徴とする。本発明の船舶の具体例としては、例えば、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦などを挙げることができる。
転炉より出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、Arガスによるバブリングを施して、溶鋼を撹拌しながら表1に示す組成に成分調整を行い、連続鋳造法により鋼塊とした。Alにより脱酸を行い、Alキルド鋼を得た。得られた鋼塊を1150℃に加熱した後、熱間圧延を行って、厚さ19mmの鋼板を作製した。
試験片の試験面の表面粗さは、触針式三次元形状測定装置(小坂研究所製、「SE3500」)を用いて測定した。
塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合し、25℃で1時間撹拌して混合液を調製した。この混合液のpHを、pHメーター(堀場製作所製、「B−212」)を用いて測定した。
バラストタンク内を模擬したラボ評価試験方法は以下の通りである。図2に示すように、試験槽内に試験片を垂直に設置して、試験片全体が水没するように試験液の人工海水(八洲薬品社製、「アクアマリン」)を注入した。そして、試験片の試験面側の水温を40℃に、他方の水温を20℃に調整し、防食塗膜に温度差勾配を付与した。なお、防食塗膜に温度差勾配を付与した場合には、温度の高い側から低い側へ塗膜の水分浸透が促進される。従って、塗膜下腐食が顕著となる高温側(40℃)を試験面とした。
そして、試験面の塗膜/基材界面に、塗膜ふくれが発生するまでの時間を測定して、耐塗膜ふくれ性を評価した。塗膜ふくれが発生するまでの時間は、1日1回(約24時間毎)の目視による外観観察を行って、試験片の塗膜ふくれが認められるまでの日数を数え、下記の評価基準で評価した。なお、試験に供した試験片の個数はそれぞれ5個ずつとし、5個の試験片の塗膜ふくれ発生日の最短日と最長日で評価した。評価結果を表2に記載する。
評価基準
◎:42日目まで塗膜ふくれが発生しなかった場合。
○:21日目から41日目までに塗膜ふくれが発生した場合。
△:7日目から20日目までに塗膜ふくれが発生した場合。
×:6日目までに塗膜ふくれが発生した場合。
Claims (9)
- 基材表面の少なくとも一部にエポキシ樹脂系塗料から形成された防食塗膜が積層されてなるバラストタンク用塗装鋼材であって、前記基材が、
C:0.01%〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.01%〜2.0%、
Mn:0.01%〜2.0%、
Al:0.005%〜0.10%、
S:0.010%以下(0%を含まない)、
Cu:0.01%〜5.0%、
Ni:0.01%〜5.0%、
を夫々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分の表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmであり、
前記防食塗膜が、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有することを特徴とする耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材。 - 前記塩基性化合物は、該塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合した混合液のpHが、8以上12.5以下を示すものである請求項1に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
- 前記基材の下地処理として、該基材と前記防食塗膜との間にジンクリッチプライマが塗布されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
- 前記基材が、更に、
Cr:0.01%〜5.0%、および、
Co:0.01%〜5.0%、
よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。 - 前記基材が、更に、
Ti:0.005%〜0.20%、
Zr:0.005%〜0.20%、および、
Hf:0.005%〜0.20%、
よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。 - 前記基材が、更に、
Mg:0.0005%〜0.020%、
Ca:0.0005%〜0.020%、
Sr:0.0005%〜0.020%、および、
Ba:0.0005%〜0.020%、
よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。 - 前記基材が、更に、
B:0.0001%〜0.010%、
V:0.01%〜0.50%、および、
Nb:0.003%〜0.50%、
よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材により構成されたことを特徴とするバラストタンク。
- 請求項8に記載のバラストタンクを有することを特徴とする船舶。
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