JP2010138454A - 耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材、並びに、それを用いたバラストタンクおよび船舶 - Google Patents

耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材、並びに、それを用いたバラストタンクおよび船舶 Download PDF

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Abstract

【課題】船舶のメンテナンス費用およびドック期間延長(タイムロス)などの経済的損失の低減と、更には船舶安全性向上に寄与する耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材を提供する。
【解決手段】本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、基材表面の少なくとも一部にエポキシ樹脂系塗料から形成された防食塗膜が積層されてなるバラストタンク用塗装鋼材であって、前記基材が、所定量のC、Si、Mn、Al、S、Cu、Niを夫々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分の表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmであり、前記防食塗膜が、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、船舶の安定性向上のため船舶に付加されるバラストタンクに用いられる耐塗膜ふくれ性に優れた塗装鋼材(特に厚鋼板)に関するものである。
船舶のバラストタンクは、積荷状態などの変化に応じて海水の注入と排出を行うため、バラストタンクに用いられる鋼材は、海水の浸漬状態と塩分を含む湿潤大気の繰り返しという極めて厳しい腐食環境にさらされる。バラストタンクの腐食損傷は、鋼材の穴あきによる船舶の沈没、原油や化学物質などの積荷の海洋流出など重大な事故を招くため、バラストタンク用鋼材には何らかの防食手段を施す必要がある。一般的に、バラストタンクには重防食塗装が施され、更に安全性・信頼性向上の観点から流電陽極法などの電気防食法が併用される場合が多い。
タールエポキシ樹脂塗料に代表される塗装による防食法を用いることによって、ある程度の鋼材腐食は抑制できる。しかしながら、防食塗膜でも環境遮断性は完全ではなく、水分、塩分、酸素などの腐食を引き起こす化学物質が防食塗膜に浸透し、いずれは鋼材腐食が起こる。防食塗膜の下で鋼材腐食が起こると、腐食生成物の膨張圧によって防食塗膜にふくれが発生し、塗膜が破壊されて鋼材露出に至り、防食作用が失われる。
また、現実的には、防食塗膜には欠陥が存在する可能性が高い。すなわち、船舶建造時における鋼材同士の衝突などによって防食塗膜に傷が付き、素地鋼材が露出してしまうことがある。また、鋼材のエッジ部や施工不良部などでは、防食塗膜の膜厚が極度に薄い部分が形成される場合も少なくない。このような鋼材露出部は局部的にかつ集中的に腐食してしまうし、防食塗膜が薄い部分では腐食を引き起こす化学物質が浸透しやすく、塗膜下での腐食が早期に発生する。
電気防食法は、バラストタンク内に海水が注入されている期間(空荷時)には非常に有効な防食方法である。しかし、海水が注入されていない場合(積荷時)には、電気化学反応に必要な電解質水溶液がないため電気防食効果は作用しない。更に、バラストタンク内に海水が注入されていても、上甲板裏などの海水が接触していないタンク空間部分では、当然電気防食効果は作用しない。
更に、例えば、上甲板へ日光が照射された場合には、バラストタンク内の温度は上昇するが、船体(バラストタンク)は船外の海水によって冷却されているため、バラストタンクに形成された防食塗膜には温度差勾配が付与される。防食塗膜に温度差勾配が付与されると、温度差による浸透圧によって、水分が防食塗膜を通じて鋼材まで浸透しやすくなり、防食塗膜下の鋼材腐食が促進される。そのため、通常の大気環境に比べて、バラストタンク内は防食塗膜にとって厳しい環境となる。
以上のように、現在、一般的に用いられる防食方法では、船舶就航後、比較的早期に塗装手直しやドックでの定期検査・補修時の塗料塗替えが必要となるため、メンテナンス費用およびドック期間延長(タイムロス)などの経済的損失が発生している。
上記技術の他に、化学成分の調整などによって鋼材自体の耐食性を向上させた耐食鋼材(例えば、特許文献1)や、化学成分調整とジンクリッチプライマとの併用により耐食性を高めた鋼材(例えば、特許文献2)が提案されている。また、耐食鋼材と樹脂被覆を組み合わせた耐久性向上技術(例えば、特許文献3)や、鋼を基材とし、この鋼よりも卑なる金属を主成分とする被覆層と耐海水腐食性に優れた溶接構造用鋼を用いたバラストタンクの防食方法(例えば、特許文献4)が提案されている。
特許文献5では、ジンクリッチプライマなどのショッププライマと馴染みが良く、アルカリ基を含有するスラグ及び/又はpH8〜13の粉状塩基性化合物を含有する防錆被覆層によって、亜鉛の損耗を抑制する塗装方法ならびに耐疵性および耐食性に優れた塗装鋼材が提案されている。しかし、この技術は傷部からの錆の進展を抑制するものである。また、塗装膜厚が最大100μmと薄く、バラストタンクのような非常に厳しい腐食環境では長期間の防食効果は期待できない。
特許文献6では、鋼材表面の粗度をSn2+イオンを含有する水溶液が保持しやすいように表面粗度を調整した鋼材に、Sn2+イオンを含有する水溶液を塗布して、Sn2+イオンと析出した金属Snの効果により、濃厚塩分環境における優れた長期耐久性を示すようにした樹脂被覆鋼材が提案されている。この場合の鋼材の表面粗さの調整は、垂直壁のような場所でもSn2+イオンを含有する水溶液を保持できるように着眼されたことによる。この技術も傷部からの錆の進展を抑制したものである。また、鋼材表面にpH3以下の酸性水溶液を塗布するので、塗布時に鋼材表面が腐食し、錆の上から塗布するために開発された専用の塗料を用いない場合、初期密着性は期待できず、早期に塗膜ふくれが発生すると予想される。
上記のように、これらの従来技術によりある程度、耐食性は向上しているが、まだ、検討の余地がある。特に耐塗膜ふくれ性は不十分であり、上記経済損失の低減への寄与は小さく、更に効果的な防食方法が要求されている。
特開2000−17381号公報 特開2005−171332号公報 特開平7−34196号公報 特開2007−191730号公報 特開平10−137683号公報 特開2007−230088号公報
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、船舶のメンテナンス費用およびドック期間延長(タイムロス)などの経済的損失の低減と、更には船舶安全性向上に寄与する耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材及びその塗装鋼材により構成されたバラストタンクを有する船舶を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係るバラストタンク用塗装鋼材は、基材表面の少なくとも一部にエポキシ樹脂系塗料から形成された防食塗膜が積層されてなるバラストタンク用塗装鋼材であって、前記基材が、C:0.01%〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01%〜2.0%、Mn:0.01%〜2.0%、Al:0.005%〜0.10%、S:0.010%以下(0%を含まない)、Cu:0.01%〜5.0%、Ni:0.01%〜5.0%、を夫々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分の表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmであり、前記防食塗膜が、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有するところに要旨が存在する。
前記防食塗膜に含有される前記塩基性化合物としては、該塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合した混合液のpHが、8以上12.5以下を示すものが好ましい。本発明のバラストタンクを構成する前記基材には、下地処理として、該基材と前記防食塗膜との間にジンクリッチプライマが塗布されていることが好ましい。
本発明のバラストタンク用塗装鋼材を構成する前記基材は、更に、Cr:0.01%〜5.0%およびCo:0.01%〜5.0%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。前記基材は、更に、Ti:0.005%〜0.20%、Zr:0.005%〜0.20%およびHf:0.005%〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することも好ましい。前記基材が、更に、Mg:0.0005%〜0.020%、Ca:0.0005%〜0.020%、Sr:0.0005%〜0.020%およびBa:0.0005%〜0.020%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することも好ましい。前記基材が、更に、B:0.0001%〜0.010%、V:0.01%〜0.50%およびNb:0.003%〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することも好ましい。
本発明には、前記バラストタンク用塗装鋼材により構成されたバラストタンク、および、該バラストタンクを有する船舶も含まれる。
本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、基材に適切な量のCu、Niを含有させたため、基材が緻密な不動態皮膜を安定して形成できる。また、防食塗膜に塩基性化合物を含有させることにより、防食塗膜を透過してきた水分が塩基性になるため、基材に到達する水分によっても基材表面に緻密な不動態皮膜が形成される。更に、基材の表面粗さが適切に調節されているため、形成される不動態皮膜が安定なものとなる。その結果、従来鋼に比べ腐食速度が抑制され、腐食生成物の膨張圧が小さくなって防食塗膜のふくれが発生し難くなり、耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材が得られる。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、基材の成分組成について、C、Si、Mn、Alなどの基本成分に加えてCu、Niなどの添加量を適切に調整し、基材の表面粗さを調整することに加えて、水分に接触することで塩基性を示す塩基性化合物を含有するエポキシ樹脂系塗料を塗装した場合に、防食塗膜の耐塗膜ふくれ性がより一層向上することを見出し、本発明を完成した。
本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、基材表面の少なくとも一部にエポキシ樹脂系塗料から形成された防食塗膜が積層されてなるバラストタンク用塗装鋼材であって、前記基材が、C:0.01%〜0.30%、Si:0.01%〜2.0%、Mn:0.01%〜2.0%、Al:0.005%〜0.10%、S:0.010%以下(0%を含まない)、Cu:0.01%〜5.0%、Ni:0.01%〜5.0%、を夫々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分の表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmであり、前記エポキシ樹脂系塗料が、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有することを特徴とする。
なお、本発明のバラストタンク用塗装鋼材において、エポキシ樹脂系塗料による塗装は、前記基材の少なくとも一部に積層されていればよいが、バラストタンクを構成する際に、海水に触れる部分全ての表面(バラストタンクの内表面)に、防食塗膜が積層されていることが好ましい。また、基材の表面粗さは、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分が調整されていればよいが、基材の表面全ての表面粗さが調整されていてもよい。
基材
まず、バラストタンク用塗装鋼材を構成する基材について、その成分範囲および表面粗さの限定理由について説明する。
成分範囲
C:0.01%〜0.30%
Cは、基材の強度確保のために必要な元素である。船舶の構造部材としての最低限の強度(すなわち、使用する鋼材の肉厚にもよるが、引張強度が概ね400MPa程度)を得るためには、Cを0.01%以上含有させる必要がある。しかし、C含有量が0.30%を超えると基材の靱性が劣化する。こうしたことから、C含有量は0.01%〜0.30%とした。なお、C含有量は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.04%以上であり、好ましくは0.28%以下、より好ましくは0.26%以下である。
Si:0.01%〜2.0%
Siは、基材の脱酸と強度確保のための必要な元素である。Si含有量が0.01%未満では、構造部材としての最低限の強度を確保できない。しかし、Si含有量が2.0%を超えると基材の溶接性が劣化する。こうしたことから、Si含有量は0.01%〜2.0%とした。なお、Si含有量は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上であり、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下である。
Mn:0.01%〜2.0%
MnもSiと同様に、基材の脱酸および強度確保のために必要な元素である。Mn含有量が0.01%未満では、構造部材としての最低限の強度を確保できない。しかし、Mn含有量が2.0%を超えると基材の靱性が劣化する。こうしたことから、Mn含有量は0.01%〜2.0%とした。なお、Mn含有量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上であり、好ましくは1.80%以下、より好ましくは1.60%以下である。
Al:0.005%〜0.10%
AlもSi、Mnと同様に、基材の脱酸および強度確保のために必要な元素である。Al含有量が0.005%未満では脱酸の効果が得られない。しかし、Al含有量が0.10%を超えると基材の溶接性を害する。こうしたことから、Al含有量は0.005%〜0.10%とした。なお、Al含有量は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.015%以上であり、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.040%以下である。
S:0.010%以下(0%を含まない)
Sは、基材の靭性や溶接性を劣化させる元素であり、可能な限り含有量を抑えることが好ましい。S含有量が0.010%を超えると船舶用鋼材としての溶接性を確保できない。こうしたことから、S含有量は0.010%以下とした。なお、S含有量は、好ましくは0.008%以下である。
Cu:0.01%〜5.0%
Cuは、耐塗膜ふくれ性向上に大きく寄与する緻密な不動態皮膜を形成するのに必要な元素である。Cu含有量が0.01%未満では緻密な不動態皮膜を形成するという効果が得られない。しかし、Cu含有量が5.0%を超えると基材の溶接性や熱間加工性が劣化する。こうしたことから、Cu含有量は0.01%〜5.0%とした。なお、Cu含有量は、好ましくは0.05%以上であり、好ましくは4.5%以下である。
Ni:0.01%〜5.0%
Niは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な不動態皮膜を安定化させるのに必要な元素であり、特に塗膜下での腐食進展を抑制して塗装耐食性を向上させる元素である。Ni含有量が0.01%未満では、塗装耐食性を向上する効果が得られない。しかし、Ni含有量が5.0%を超えると基材の溶接性や熱間加工性が劣化する。こうしたことから、Ni含有量は0.01%〜5.0%とした。Ni含有量は、好ましくは0.05%以上であり、好ましくは4.5%以下である。
Cr:0.01%〜5.0%およびCo:0.01%〜5.0%よりなる群から選ばれる1種以上
CrおよびCoは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。このうちCrは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の溶接性や熱間加工性が劣化することから、Cr含有量は5.0%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは4.5%以下である。
Coは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を安定化させるのに有効な元素であり、特に塗膜下での腐食進展を抑制して塗装耐食性を向上させる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Co含有量を0.01%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の溶接性や熱間加工性が劣化することから、Co含有量は5.0%以下とすることが好ましい。Co含有量は、より好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは4.5%以下である。
前記基材の化学成分は上記の通りであり、残部はFeおよび不可避的不純物(例えば、P、O、W、Moなど)からなるものであるが、これら以外にも基材の特性を阻害しない程度の成分(例えば、Nなど)も許容できる。ただし、これら不可避的不純物は、その量が過剰になると基材の靭性が劣化するので、0.5%程度、好ましくは0.1%程度以下に抑えるべきである。
本発明では、更に他の元素として次に示すような元素を積極的に含有させることで、一層の物性改善を図ることができる。以下、それらの元素と添加効果について補足する。
Ti:0.005%〜0.20%、Zr:0.005%〜0.20%およびHf:0.005%〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上
Ti、ZrおよびHfは耐食性向上に大きく寄与する表面錆皮膜を緻密化してその環境遮断性を向上させると共に、すきま内部における腐食を抑制して、耐すきま腐食性も向上させるのに有効な元素である。こうした環境下で要求される耐食性を確保するために、Ti、ZrおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.005%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の加工性と溶接性が劣化することから、Ti、ZrおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.20%以下とすることが好ましい。これらの元素の含有量は、より好ましくは0.008%以上であり、より好ましくは0.15%以下である。
Mg:0.0005%〜0.020%、Ca:0.0005%〜0.020%、Sr:0.0005%〜0.020%およびBa:0.0005%〜0.020%よりなる群から選ばれる1種以上
Mg、Ca、SrおよびBaは、基材から溶出することによって周辺の水系環境のpH上昇作用を示す。そのため、Feの溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。こうした効果を得るために、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の加工性と溶接性が劣化することから、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上の元素の含有量を0.020%以下とすることが好ましい。
B:0.0001%〜0.010%、V:0.01%〜0.50%およびNb:0.003%〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、これらの元素は基材の強度向上に有用な元素である。このうちBは、基材の焼入性を高めて強度を向上させるのに有効な元素である。このような効果を得るために、B含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の靭性が劣化するため、B含有量は、0.010%以下とすることが好ましい。なお、B含有量は、より好ましくは0.0003%以上であり、より好ましくは0.009%以下である。
Vは、基材の強度向上に有効な元素である。基材の強度向上効果を得るために、V含有量は0.01%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の靭性劣化を招くことになるので、V含有量は0.50%以下とすることが好ましい。なお、V含有量は、より好ましくは0.02%以上であり、より好ましくは0.45%以下である。
Nbも、基材の強度向上に有効な元素である。基材の強度向上効果を得るために、Nb含有量は0.003%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると基材の靭性劣化を招くことになるので、Nb含有量は0.50%以下とすることが好ましい。なお、Nb含有量は、より好ましくは0.005%以上であり、より好ましくは0.45%以下である。
表面粗さ
本発明に用いられる基材は、その表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmである。基材の表面粗さが、10点平均粗さ(RzJIS)で15μm未満の場合には、平滑すぎるため基材の実質的な表面積が少なく、塗膜密着性の改善効果が得られない。一方、表面粗さが、10点平均粗さ(RzJIS)で80μmを超える場合は、防食塗料と基材との界面に気泡を巻き込みやすく、防食塗膜に欠陥が入りやすくなり、防食塗膜の防食性能が発揮されない。また、塗料の乾燥時に凹凸を起点とした残留応力が生じやすく、塗膜密着性を低下させる原因にもなる。前記基材の表面粗さは、10点平均粗さ(RzJIS)で、好ましくは20μm以上であり、好ましくは60μm以下である。
また、基材の表面粗さは、基材表面に安定な不動態皮膜を形成させるためにも重要である。すなわち、表面粗さが小さい場合には、基材表面に均一な不動態皮膜が形成される。しかし、基材の表面粗さが大きすぎると、基材へと到達してきた水分によって初期に形成される山部(凸部)の不動態皮膜と、遅れて形成される谷部(凹部)の不動態皮膜の厚さに差が生じる。その結果、形成された不動態皮膜に応力がかかってしまうため、クラックが入りやすくなり、耐塗膜ふくれ性に必要な不動態皮膜の耐食性が不十分となる。
本願において10点平均粗さ(RzJIS)とは、JIS B 0601:2001に準じて測定される表面粗さである。なお、基材の表面粗さは、例えば、表面粗さを調整した後の基材より切り出したものや、同じ鋼種の小試験片を同じ条件で処理したものを測定することで確認することができる。また、既に基材上に防食塗膜が形成されている場合は、例えば、防食塗膜を有機溶剤中で加温するなどして基材から剥離した後、表面粗さを測定する方法;防食塗膜が固着して剥がれない場合には、基材−塗料の界面を断面観察して、基材の凹凸線の数値解析で求める方法;により確認することができる。測定には、例えば、小坂研究所製の触針式三次元形状測定装置「SE3500」などを用いればよい。
前記基材は、例えば以下の方法により、製造することができる。
転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、成分調整・温度調整を含む二次精錬を行う。二次精錬時にはArなどの不活性ガスによるバブリングを施して、溶鋼を十分に撹拌する必要がある。その後、連続鋳造法、造塊法等の通常の鋳造方法で鋼塊とする。なお、基材としては、機械特性や溶接性の観点でキルド鋼を用いることが好ましく、更に好ましくはAlキルド鋼が推奨される。
次いで得られた鋼塊を、例えば、1100℃〜1200℃の温度域に加熱した後、熱間圧延を行うことにより、所望の寸法形状にすることができる。また、このとき熱間圧延終了温度を、680℃〜850℃に制御し、熱間圧延終了後から500℃までの冷却速度を0.1℃/秒〜15℃/秒の範囲に制御することが好ましい。本願に用いられる基材の厚みは、特に限定されないが、0.6cm〜4cmが好ましい。
所望の寸法形状とした後、基材表面に、スチールショットなどの直径3mm程度以下の金属球やスチールグリットのような2.5mm程度以下の金属小片を、圧縮空気を用いたり、機械的に撃ちつけることにより、基材の表面粗さを調節することができる。
エポキシ系樹脂塗料
次に、本発明のバラストタンク用塗装鋼材に用いられるエポキシ系樹脂塗料について説明する。
本発明に用いられるエポキシ系樹脂塗料は、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有することを特徴とする。Cu、Niなどの基材成分の調整と共に、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物をエポキシ系樹脂塗料に含有させることにより、防食塗膜に浸透してきた水分が塩基性を示し、塗膜下環境において、熱力学的に安定な酸化物・不動態皮膜が、基材上に緻密に形成される環境となる。その結果、基材の腐食速度が低減し、バラストタンク用塗装鋼材の耐塗膜ふくれ性が更に向上する。
前記エポキシ系樹脂塗料としては、防食塗料として用いられるものであれば、特に限定されず、ビヒクルとしてエポキシ樹脂を含むものであればよい。前記エポキシ樹脂系塗料としては、例えば、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料などが挙げられ、具体的には、JIS K 5551:2008やJIS K 5664:2002の規格に適合するものが好ましい。
前記エポキシ樹脂系塗料の具体例を商品名で例示すると、例えば、中国塗料製の「ノバ1000」、「ノバ2000」、NKMコーティングス製の「エポマリン EX21」(いずれも塩基性化合物入り)などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂系塗料に含有される塩基性化合物は、水分と接触すると塩基性を示すものであれば、特に限定されないが、常温で固体のものが好適である。
前記塩基性化合物は、該塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合した混合液のpHが、8以上12.5以下を示すものが好ましい。前記混合液のpHが8〜12.5を示す塩基性化合物を用いることにより、防食塗膜を浸透してきた水分がアルカリ性となり、基材表面に酸化物不動態を形成し、基材の腐食がより抑制される。前記塩基性化合物としては、該塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合した混合液のpHが、8.5以上12以下を示すものがより好ましい。なお、前記混合液のpHは、例えば、pHガラス電極で測定することが出来る。
前記塩基性化合物の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、マイカなどが挙げられる。これらの塩基性化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性化合物の使用量は、乾燥塗膜中の塩基性化合物の含有量が20質量%〜50質量%となるように調整することが好ましい。乾燥塗膜中の塩基性化合物の含有量が上記範囲内であれば、防食塗膜下のpHをアルカリ性に制御することができ、塗膜の耐食性をより向上することができ、基材の腐食をより抑制することができる。なお、乾燥塗膜中の塩基性化合物の含有量は、より好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは45質量%以下である。
なお、乾燥塗膜中の塩基性化合物の含有量は、含有させた塩基性化合物に含まれる特徴的な元素(マグネシウム、カルシウムなど)を、EPMA(電子線マイクロアナライザ)などで定量し、化合物量に換算することにより求めることができる。
前記塩基性化合物を含有するエポキシ樹脂系塗料の塗装方法は、特に限定されないが、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、ロール塗装、刷毛塗装などで塗装すること出来る。また、塗装後の塗料の乾燥温度および乾燥時間は、塗料ごとに適宜調整すればよく、例えば、15℃〜30℃で、24時間〜48時間乾燥すればよい。これにより基材表面に防食塗膜が形成された本発明のバラストタンク用塗装鋼材が得られる。基材に形成される塗膜の膜厚は、要求される耐久性の観点より150μm以上が好ましく、より好ましくは250μm以上である。塗膜の厚みの上限は、特に限定されないが、経済性の観点より500μmである。塗膜の厚みが500μmを超えても、耐久性は飽和するので経済的でない。
ジンクリッチプライマ
本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、前記基材の下地処理として、該基材と防食塗膜との間にジンクリッチプライマが塗布されていることも好ましい態様である。ジンクリッチプライマを塗布して下地処理することより、防食塗膜下環境でジンクリッチプライマの亜鉛の犠牲防食効果が得られる、更に、基材の成分調整と表面粗さの制御によって、ジンクリッチプライマ中の亜鉛の損耗速度を抑え、防食塗膜下の腐食をより抑制することができ、耐塗膜ふくれ性が一層良好となる。
本願において、ジンクリッチプライマとは、亜鉛粉末、アルキルシリケートまたはエポキシ樹脂、顔料および溶剤を主な原料としたものであり、JIS K 5552:2002に規定されているものをいう。
ジンクリッチプライマは無機ジンクリッチプライマ、有機ジンクリッチプライマのどちらでも有効である。
前記ジンクリッチプライマの具体例を商品名で例示すると、中国塗料社製の「セラボンド2000」、神東塗料社製の「シントーウェルド#1000」などが挙げられる。
前記ジンクリッチプライマの塗装方法は、特に限定されないが、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、ロール塗装、刷毛塗装などで塗装すること出来る。また、塗装後の塗料は、例えば、15℃〜30℃で、24時間〜48時間乾燥すればよい。基材に形成されるジンクリッチプライマ塗膜の膜厚は、10μm以上が好ましく、より好ましくは13μm以上であり、30μm以下が好ましく、より好ましくは25μmである。
ここで、前述した基材の表面粗さは、下地処理として、ジンクリッチプライマを塗布する場合にも重要となる。すなわち、本発明で用いられる基材は、基材成分の調整により、緻密な不動態皮膜が形成され、基材の腐食反応が抑制されるので、犠牲陽極の損耗速度を抑えることが可能である。しかし、基材の表面粗さが、10点平均粗さ(RzJIS)で15μm未満では、基材表面が平滑すぎるので、ジンクリッチプライマの密着性に乏しく剥離しやすいため、耐塗膜ふくれ性の向上効果が小さくなる。また、基材の表面粗さが、10点平均粗さ(RzJIS)で80μmを超える場合は、基材表面の谷部にプライマがたまるようになり、山部のプライマ塗布量が不十分となるため、耐塗膜ふくれ性の向上効果が不十分小さくなる。
バラストタンク
本発明のバラストタンクは、前記した本発明のバラストタンク用塗装鋼材により構成されたことを特徴とする。前記バラストタンクは、主に船舶に用いられるものであり、積荷の状態に応じて、バラストとしての海水が漲排水されるタンクである。前記バラストタンクは、前記バラストタンク用塗装鋼材により構成されていればよく、その形状および大きさは特に限定されない。また、本発明のバラストタンクは、流電陽極法などの電気防食法が併用されていてもよい。
船舶
本発明の船舶は、前記した本発明のバラストタンクを有することを特徴とする。本発明の船舶の具体例としては、例えば、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦などを挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含されるものである。なお下記実施例において「%」とあるのは、特記しない限り「質量%」を意味するものとする。
[試験片の作製]
転炉より出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、Arガスによるバブリングを施して、溶鋼を撹拌しながら表1に示す組成に成分調整を行い、連続鋳造法により鋼塊とした。Alにより脱酸を行い、Alキルド鋼を得た。得られた鋼塊を1150℃に加熱した後、熱間圧延を行って、厚さ19mmの鋼板を作製した。
得られた鋼板より、100×100×10(mm)の大きさの供試材を切り出した。なお、供試材の100×100(mm)の一方の面を試験面とした。得られた供試材の試験面について、スチールショットおよびスチールグリッドを用いてショットブラスト処理を施し、表2に示す表面粗さに調整し基材を得た。
得られた基材を水洗およびアセトン洗浄した後、表面粗さを調整した試験面に、表2に示す塩基性化合物を含むエポキシ樹脂系塗料を塗装して試験片No.1〜31を作製した。なお、試験片No.1〜4,6〜31に用いたエポキシ樹脂系塗料は、いずれも塗膜中の塩基性化合物の含有量が20質量%〜50質量%となるように、塩基性化合物の使用量が調整されている。塗装は、エアレススプレーを用いて行い、乾燥膜厚が320μmとなるように塗料塗布量を調整した。また、エポキシ樹脂系塗料を塗装する前に、試験面に、下地処理として、ジンクリッチプライマ(中国塗料社製、「セラボンド2000」)を乾燥膜厚で15μmとなるように塗装した試験片も合わせて作製した。なお、いずれの試験片についても、エポキシ樹脂系塗料が塗装された試験面以外の表面には、すべてマスキング剤によるマスキングを施した。こうして得られた試験片の外観形状は図1に示す通りである。
試験片の表面粗さ、塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合した混合液のpH、および、乾燥塗膜中の塩基性化合物の含有量は、以下の方法で測定した。
[表面粗さ]
試験片の試験面の表面粗さは、触針式三次元形状測定装置(小坂研究所製、「SE3500」)を用いて測定した。
[混合液のpH]
塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合し、25℃で1時間撹拌して混合液を調製した。この混合液のpHを、pHメーター(堀場製作所製、「B−212」)を用いて測定した。
[腐食試験]
バラストタンク内を模擬したラボ評価試験方法は以下の通りである。図2に示すように、試験槽内に試験片を垂直に設置して、試験片全体が水没するように試験液の人工海水(八洲薬品社製、「アクアマリン」)を注入した。そして、試験片の試験面側の水温を40℃に、他方の水温を20℃に調整し、防食塗膜に温度差勾配を付与した。なお、防食塗膜に温度差勾配を付与した場合には、温度の高い側から低い側へ塗膜の水分浸透が促進される。従って、塗膜下腐食が顕著となる高温側(40℃)を試験面とした。
そして、試験面の塗膜/基材界面に、塗膜ふくれが発生するまでの時間を測定して、耐塗膜ふくれ性を評価した。塗膜ふくれが発生するまでの時間は、1日1回(約24時間毎)の目視による外観観察を行って、試験片の塗膜ふくれが認められるまでの日数を数え、下記の評価基準で評価した。なお、試験に供した試験片の個数はそれぞれ5個ずつとし、5個の試験片の塗膜ふくれ発生日の最短日と最長日で評価した。評価結果を表2に記載する。
評価基準
◎:42日目まで塗膜ふくれが発生しなかった場合。
○:21日目から41日目までに塗膜ふくれが発生した場合。
△:7日目から20日目までに塗膜ふくれが発生した場合。
×:6日目までに塗膜ふくれが発生した場合。
基材として、従来鋼(試験片No.1)、Cu量が0.01%未満のもの(試験片No.2)や表面粗さが適正に調整されていないもの(試験片No.3,4)を用いた場合、および、エポキシ樹脂系塗料が、水分との接触で塩基性を示さないカオリンを含有する場合(試験片No.5)は、ジンクリッチプライマを塗装していない試験片もジンクリッチプライマを塗装した試験片も、耐塗膜ふくれ性の評価が×または×〜△であった。
これに対し、本発明の規定を満たす場合(試験片No.6〜31)は、ジンクリッチプライマを塗装していない試験片でも、耐塗膜ふくれ性がいずれも△以上のレベルに向上した。また、これらの試験片No.6〜31において、ジンクリッチプライマを下地処理として施した試験片は、耐塗膜ふくれ性がいずれも△〜○以上のレベルに向上した。この結果より、ジンクリッチプライマを塗装することにより、耐塗膜ふくれ性が更に向上することがわかる。
また、試験片No.6〜31のジンクリッチプライマ有りの試験片について、基材の成分を比較する。基材がTi、ZrおよびHfのいずれも含有しない試験片No.6〜9の耐塗膜ふくれ性評価が△〜○であるのに対し、基材がTi、ZrおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上を含有する試験片No.10〜17,20〜31の耐塗膜ふくれ性評価は○以上に向上した。更に、基材がMg、Ca、SrおよびBaのいずれも含有しない試験片No.6〜13の耐塗膜ふくれ性評価が△〜○または○であるのに対し、基材がMg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選ばれる1種以上を含有する試験片No.14〜31の耐塗膜ふくれ性評価は○〜◎以上に向上した。なお、試験片No.14〜31の中でも、Cr、Ti、Caを含むもの(試験片No.15〜17,25,27〜31)が、特に耐塗膜ふくれ性に優れることが分かる。
以上のように、本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、耐塗膜ふくれ性に優れており、塗膜ふくれから始まる塗膜劣化を遅延させることができ、バラストタンク用の鋼材として好ましいことがわかる。従って、本発明のバラストタンク用塗装鋼材により構成されたバラストタンクは、優れた耐久性を具備するものであることも容易に判明する。
本発明のバラストタンク用塗装鋼材は、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦などの船舶におけるバラストタンクの材料として有用である。
実施例に用いられた試験片の外観形状を示す概略平面図である。 実施例の腐食試験方法を説明するための模式図である。

Claims (9)

  1. 基材表面の少なくとも一部にエポキシ樹脂系塗料から形成された防食塗膜が積層されてなるバラストタンク用塗装鋼材であって、前記基材が、
    C:0.01%〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、
    Si:0.01%〜2.0%、
    Mn:0.01%〜2.0%、
    Al:0.005%〜0.10%、
    S:0.010%以下(0%を含まない)、
    Cu:0.01%〜5.0%、
    Ni:0.01%〜5.0%、
    を夫々含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、少なくとも前記防食塗膜が積層される部分の表面粗さが10点平均粗さ(RzJIS)で15μm〜80μmであり、
    前記防食塗膜が、水分と接触すると塩基性を示す塩基性化合物を含有することを特徴とする耐塗膜ふくれ性に優れたバラストタンク用塗装鋼材。
  2. 前記塩基性化合物は、該塩基性化合物と純水とを質量比で1対10となるように混合した混合液のpHが、8以上12.5以下を示すものである請求項1に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
  3. 前記基材の下地処理として、該基材と前記防食塗膜との間にジンクリッチプライマが塗布されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
  4. 前記基材が、更に、
    Cr:0.01%〜5.0%、および、
    Co:0.01%〜5.0%、
    よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
  5. 前記基材が、更に、
    Ti:0.005%〜0.20%、
    Zr:0.005%〜0.20%、および、
    Hf:0.005%〜0.20%、
    よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
  6. 前記基材が、更に、
    Mg:0.0005%〜0.020%、
    Ca:0.0005%〜0.020%、
    Sr:0.0005%〜0.020%、および、
    Ba:0.0005%〜0.020%、
    よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
  7. 前記基材が、更に、
    B:0.0001%〜0.010%、
    V:0.01%〜0.50%、および、
    Nb:0.003%〜0.50%、
    よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のバラストタンク用塗装鋼材により構成されたことを特徴とするバラストタンク。
  9. 請求項8に記載のバラストタンクを有することを特徴とする船舶。
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