JP5284769B2 - 耐食性に優れた原油タンク天井用鋼材、原油タンクおよび原油タンカーの上甲板 - Google Patents
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但し、上式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
Cは、材料の強度を確保するために必要な元素である。原油タンク用の構造部材として必要な最低強度は概ね400MPa程度であり、その強度を得るためには、少なくとも0.01%以上は含有させる必要がある。一方で、0.30%を超えて過剰に含有させると靭性が劣化すると共に、所望のパーライト面積率を得ることができない。こうしたことから、Cの含有量は、0.01〜0.30%の範囲とした。尚、Cの含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましい下限は0.04%である。一方、Cの含有量の好ましい上限は0.28%であり、より好ましい上限は0.26%である。
Siは、製鋼時の脱酸元素として有用であり、鋼材の強度確保にも寄与する元素である。その含有量が0.01%に満たないと、原油タンク用の構造部材としての最低強度を確保することができない。一方で、2.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。こうしたことから、Siの含有量は、0.01〜2.0%の範囲とした。尚、Siの含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましい下限は0.05%である。一方、Siの含有量の好ましい上限は1.5%であり、より好ましい上限は1.0%である。
MnもSiと同様に、製鋼時の脱酸元素として有用であり、鋼材の強度確保にも寄与する元素である。その含有量が0.01%に満たないと、原油タンク用の構造部材としての最低強度を確保することができない。一方で、2.0%を超えて過剰に含有させると靭性が劣化する。こうしたことから、Mnの含有量は、0.01〜2.0%の範囲とした。尚、Mnの含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましい下限は0.10%である。一方、Mnの含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましい下限は1.60%である。
AlもSi、Mnと同様に、製鋼時の脱酸元素として有用であり、強度確保にも寄与する元素である。その含有量が0.005%に満たないと、製鋼時の脱酸に効果がない。一方で、0.1%を超えて過剰に含有させると溶接性を害してしまう。従って、Alの含有量は、0.005〜0.1%の範囲とした。尚、Alの含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましい下限は0.015%である。一方、Alの含有量の好ましい上限は0.040%であり、より好ましい上限は0.050%である。
Sは、溶解原料中に不可避的に存在する元素であるが、鋼材の靭性や溶接性を劣化させる元素であり、可能な限りその含有量を抑えることが好ましい。Sの含有量の許容される上限は、最高でも0.010%であり、含有量が0.010%を超えると、原油タンク天井用鋼材としての溶接性を確保することができない。従って、Sの含有量の上限を0.010%とした。Sの含有量の好ましい上限は0.008%である。
Cuは、耐食性の向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を形成するために有用な元素であり、錆層中の硫黄量の増加を抑え、錆層の脱落を抑制する効果がある。こうした効果を発現させるためには、0.05%以上含有させることが必要である。しかしながら、0.5%を超えて過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化する。従って、Cuの含有量は、0.05〜0.5%の範囲とした。尚、Cuの含有量の好ましい下限は0.07%であり、好ましい上限は0.48%である。
Niは、耐食性の向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を安定させるために有用な元素である。こうした効果を発現させるためには、0.05%以上含有させることが必要である。しかしながら、0.5%を超えて過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化する。従って、Niの含有量は、0.05〜0.5%の範囲とした。尚、Niの含有量の好ましい下限は0.07%であり、好ましい上限は0.48%である。
Tiは、耐食性の向上に大きく寄与する表面錆皮膜を緻密化して、その環境遮断性を向上させる元素である。こうした環境下で要求される耐食性を確保するためには、0.005%以上含有させることが必要である。しかしながら、0.20%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性を劣化させる。従って、Tiの含有量は、0.005〜0.20%の範囲とした。尚、Tiの含有量の好ましい下限は0.008%であり、好ましい上限は0.15%である。
Crは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するために有用な元素である。こうした効果を発現させるためには、0.01%以上含有させることが必要である。しかしながら、5.0%を超えて過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化する。従って、Crの含有量は、0.01〜5.0%の範囲とした。尚、Crの含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は4.50%である。
Caは、溶解することによってpH上昇作用を示すことから、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。その効果は、Caを0.0005%以上含有させることで発現される。しかしながら、0.020%を超えて含有させると加工性と溶接性を劣化させる。このような理由で、Caの含有量は、0.005〜0.20%の範囲とした。
ZrとHfは、共に耐食性の向上に大きく寄与する表面錆皮膜を緻密化して、その環境遮断性を向上させる元素であって、また、隙間内部における腐食を抑制して、耐隙間腐食性を向上させる元素である。こうした環境下で要求される耐食性を確保するためには、合計で0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、合計で0.20%を超えて含有させると加工性と溶接性を劣化させてしまう。こうしたことから、Zrおよび/またはHfを含有させる場合は、合計で0.005〜0.20%の範囲とする。尚、Zrおよび/またはHfを含有させる場合の好ましい下限は合計で0.008%であり、好ましい上限は合計で0.15%である。
Mg、Sr、およびBaは、溶解することによってpH上昇作用を示すことから、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。その効果は、合計で0.0005%以上含有させることで発現される。しかしながら、合計で0.020%を超えて含有させると加工性と溶接性を劣化させる。このような理由で、Mg、Sr、およびBaを含有させる場合は、合計で0.005〜0.20%の範囲とした。
原油タンク天井用鋼材は高強度化が必要であるが、これらの元素は強度向上に寄与する元素である。これらのうち、Bは、0.0001%以上含有させることによって焼入れ性が向上するため、強度向上に有効であるが、0.010%を超えて過剰に含有させると母材靭性の劣化を招くことになる。Vは、0.01以上含有させることによって、強度向上に有効であるが、0.50%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化を招くことになる。また、Nbは、0.003以上含有させることによって、強度向上に有効であるが、0.50%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化を招くことになる。尚、これら元素のより好ましい下限は、Bについては0.0003%、Vについては0.02%、Nbについては0.005%である。一方、これら元素のより好ましい上限は、Bについては0.0090%、Vについては0.45%、Nbについては0.45%である。
原油を積載した実船の原油タンカーの上甲板(原油タンクの天井)の下面(タンク内側)に、試験片Aを各々5個ずつ取り付け、2年半の期間で暴露試験を実施した。腐食量は暴露試験前後の試験片Aの質量測定の差から算出し、暴露試験後の質量測定は、クエン酸水素二アンモニウム水溶液中での陰極電解法(JIS K 8284)によって鉄錆等の腐食生成物を試験片Aから除去した後に実施した。
図1に示す試験装置を用いて、原油タンクの気相部の模擬環境として試験を行った。具体的には、原油タンクを模擬した恒温槽1の上面に試験片Bを各々5個ずつ取り付け、その恒温槽1内の純水2中に、通気管3を介してガス(13%CO2−5%O2−0.01%SO2−0.3%H2S−bal.N2)を通気し、図2に示す温度サイクルで、実船における昼夜の温度変化を模擬して試験を実施した。尚、試験期間は90日間とした。剥離錆量については、試験片Bを試験後に取り出し、ワイヤブラシ等で固着していない錆層を脱落させた後の試験片Bの質量測定を行い、試験前に測定した試験片Bの質量との差から求めた。また、腐食量は試験前後の試験片Bの質量測定の差から算出し、試験後の質量測定は、クエン酸水素二アンモニウム水溶液中での陰極電解法(JIS K 8284)によって鉄錆等の腐食生成物を試験片Bから除去した後に実施した。
試験結果を表3に示す。従来鋼であるNo.1や、S,Cu,Niの含有量が適正に調整されておらず、本発明で規定する範囲から外れるNo.2〜4、([Cu]+[Ni])/[S]が100〜800でないNo.5(同様にNo.2〜4も外れる)、表面粗さが、十点平均粗さRzで20μm〜60μmでないNo.6,7では、各試験結果(腐食量、剥離錆量)が全て△或いは×で不合格であったのに対し、本発明で規定する要件を全て満たすNo.8〜29は、耐食性を表す各試験結果が全て◎或いは○で合格であった。
2…純水
3…通気管
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.01〜0.30%、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:0.01〜2.0%、
Al:0.005〜0.10%、
S:0.010%以下(0%を含まない)、
Cu:0.05〜0.5%、
Ni:0.05〜0.5%、
Ti:0.005〜0.20%、
Cr:0.01〜5.0%、
Ca:0.0005〜0.20%、
を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物であって、
([Cu]+[Ni])/[S]=100〜800という要件を満足すると共に、
表面粗さが、十点平均粗さRzで、20μm〜60μmであり、
且つ、表面に、有機ジンクリッチプライマー、無機ジンクリッチプライマー、ジンクリッチペイント、亜鉛溶射皮膜、亜鉛合金溶射皮膜、亜鉛メッキ、亜鉛合金メッキのいずれかからなる被覆層が膜厚:10μm〜80μmで形成されていることを特徴とする耐食性に優れた原油タンク天井用鋼材。
但し、上式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。 - 更に、質量%で、Zrおよび/またはHfを0.005〜0.20%含有することを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた原油タンク天井用鋼材。
- 更に、質量%で、Mg、Sr、Baの中から選ばれる1種以上を0.0005〜0.020%含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐食性に優れた原油タンク天井用鋼材。
- 更に、質量%で、B:0.0001〜0.010%、V:0.01〜0.50%、およびNb:0.003〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の耐食性に優れた原油タンク天井用鋼材。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の原油タンク天井用鋼材を用いて形成された天井を備えた原油タンク。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の原油タンク天井用鋼材を用いて形成された原油タンカーの上甲板。
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