JP2005171332A - 耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材 - Google Patents

耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】船舶バラストタンクの補修再塗装寿命の延長および補修再塗装作業の軽減に寄与すべく、溶接性、溶接部靭性の劣化や製造コストの高騰を回避できる、耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材を提供する。
【解決手段】スケールを除去した鋼材の表面にジンクリッチプライマーを塗布してなるジンクリッチプライマー塗布鋼材であって、前記鋼材が、質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.06%、Ni:0.1〜1.0%、N:0.0020〜0.0065%、Ti:0.005〜0.024%、を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることにより、耐食性を向上させた。
【選択図】なし

Description

本発明は、船舶用鋼材に関し、特に、海水、高温多湿の厳しい環境下で使用されるバラストタンク用鋼材について、補修塗装寿命延長および補修塗装作業軽減の観点から、その耐食性を向上させようとするものである。
バラストタンクは、海水が出入りすることから、厳しい腐食環境下にあり、通常、その防食は、エポキシ系塗料と電気防食とが併用されている。しかし、それらの防食を講じていても、バラストタンクの腐食は激しい状態である。すなわち、バラストタンクの海水充満時においては、海水に完全に浸されている部分は、電気防食が働き、腐食の進行を抑えられる。しかし、バラストタンクの最上部付近、特にアッパーデッキの裏側は海水に完全に漬からず、海水飛沫の状態である。そのため、このような部位では、電気腐食が働かず、さらに太陽光により、鋼板が高温に曝されるため、厳しい腐食環境下となり、激しい腐食状態となる。また、バラストタンクに海水がない場合においては、海水の残留付着塩分の作用によって、厳しい腐食状態となる。このように厳しい腐食環境下にあるバラストタンクの塗膜寿命は、約10年といわれており、船の寿命(20年)の半分である。従って、残りの10年は、補修塗装で安全性を維持しなければならない。バラストタンクでは、このような厳しい腐食環境による激しい腐食状態、そして、それに起因した狭い空間での補修再塗装という悪条件下での作業が重大な問題であるため、補修塗装寿命の延長、および補修塗装作業の軽減を達成せしめる耐食性鋼材の開発が望まれている。
一方、バラストタンクの耐食化に関する鋼材側からの対策としては、以下のものが提案されている。
特許文献1には、P:0.03〜0.10%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%を添加した鋼材にエポキシ、ピュアエポキシ、ウレタン樹脂などを塗布したバラストタンクが提案されている。これは下地金属の耐食性が向上するため、樹脂皮膜の接着劣化寿命が延長し、バラストタンクの耐久化が図られるとしている。そして、20〜30年にわたって、メンテナンスを不要にすることが可能になったとある。
特許文献2には、Cr:0.2〜5%を添加することで、また、特許文献3には、Cr:0.5〜3.5%を添加することで、耐食性が向上し、船舶のメンテナンスフリー化に寄与できるとある。
特許文献4には、Ni:0.1〜4.0%を添加することで、耐塗膜損傷性が向上し、補修塗装などの保守費用を大幅に削減できるとある。
特開平7-34197号公報 特開平7-34196号公報 特開平7-310141号公報 特開平2002-266052号公報
しかし、特許文献1の技術では、下地金属の耐食性を向上させるため、P含有量が0.03〜0.10%と比較的多く添加されており、溶接性および溶接部靭性に問題があると考えられる。また、特許文献2〜3の技術ではCr含有量が比較的高く、特許文献4の技術ではNi含有量が比較的高く、いずれも製造コスト高となる問題があった。
そこで、本発明は、船舶バラストタンクの補修再塗装寿命の延長および補修再塗装作業の軽減に寄与すべく、上記のような溶接性、溶接部靭性の劣化や製造コストの高騰を回避できる、耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材を提供することを目的とする。
一般に船舶に供される鋼材は、タールエポキシ塗料などによる塗装が施されている。塗装前には鋼材に表面処理が施される。表面処理は、一次表面処理と二次表面処理に分けられる。一次表面処理は、鋼材の加工、組み立て工程の期間中に鉄錆発生を防止することを目的とし、製鉄所や造船所などにおいて、鋼材の黒皮や鉄錆の除去を行い、その後、プライマーが塗布される。二次表面処理とは、鋼材の加工、組み立て期間中に、母材部のプライマーホールに起因して発生した鉄錆や、鋼材切断部および溶接部のプライマー損傷に起因して発生した鉄錆を除去し、再びプライマーを塗布する処理である。
上記組み立てに関して、小組み段階においては、本塗装(タールエポキシ塗装)までの期間が長いために、本塗装までの防錆を目的として、小組み後、プライマー処理がなされる。一方、大組み段階においては、本塗装までの期間が短いために、プライマー処理はなされない。また、本塗装直前には、錆除去を目的として、全体的にブラスト処理がなされるが、プライマーが完全に除去されるわけでなく、残存している。なお、錆を除去する手段としては、サンドブラスト処理、パワーツール(グラインダー等)処理が主に行われており、プライマーとしては、ウオッシュプライマー、ジンクリッチプライマーがあるが、耐食性の観点から、ジンクリッチプライマーがよく使用されている。
したがって、造船完了時の鋼材表面の状態は、母材部および小組溶接部では、鋼材〜ジンクリッチプライマー〜タールエポキシ塗料の構造であり、大組溶接部では、鋼材〜タールエポキシ塗料の構造である。大部分は、ジンクリッチプライマーが存在する状態にある。
一方、これまでの、船舶用鋼材の耐食化の研究は、鋼材自身を耐食化することで、錆発生を抑制し、塗膜の剥離寿命を延長させようとするものであった。観点は、鋼材自身のみの耐食化であった。一方、実際に船舶に供用される材料は、上記のとおり、ジンクリッチプライマーが併用されている。船舶竣工後、供用されてからも腐食に対してジンクリッチプライマーが影響していると考えられる。そこで、本発明では、鋼材の溶接性や溶接部靭性の劣化、製造コストの高騰を回避するという観点から、ジンクリッチプライマーと鋼材の相互作用を利用した鋼材成分の検討を行った。
ジンクリッチプライマーの一般的な防食機能は、
1)ジンクリッチプライマー膜による鋼表面への水、酸素、塩化物などの腐食因子の透過を抑制する作用、
2)鋼が腐食する環境下に置かれたときに、ジンクリッリプライマー中に含まれるZnが鋼を犠牲防食する作用、
3)Znの腐食生成物膜による鋼への環境からの水、酸素、塩化物などの腐食因子の透過を抑制する作用、
である。
そこで、ジンクリッチプライマーの防食効果を向上させる観点から、特に、上記3)のZn腐食生成物膜の腐食因子の透過を抑制する作用を向上させる鋼材の化学成分の検討を行った。
一般的に、腐食性生物のイオン透過抵抗は、腐食生成物粒子の大きさと関係があり、腐食生成物粒子が微細であるほど、イオン透過抵抗は高くなる。したがって、Znの腐食生成物粒子を微細にできる元素の検討を行った。ここでいうZnの腐食生成物は、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性塩化亜鉛などである。Ni、Cu、Cr、Moなどの合金元素を添加した鋼を溶製し、凝固させた鋼片を熱間圧延して鋼板となし、スケール除去後、ジンリッチプライマーを塗布して、小型暴露試験片を作製した。この試験片を、バラストタンクの上部環境を模擬した腐食環境(40℃海水浸漬⇔40℃湿度100%大気、1サイクル7日)に、半年間暴露した。その後、形成されたZnの腐食生成物の粒子の大きさを、X線回折による半価幅および電子顕微鏡観察により、評価した。その結果、いずれの合金元素についても、腐食生成物を微細にする効果が認められた。合金元素(X)を添加した鋼材に形成されたZn腐食生成物は、XとFe、そしてZnが混合した酸化物、水酸化物、塩化物となっていたことから、XとFeが、Zn腐食生成物結晶に含まれることが、粒子を微細にしたものと考えられる。ただし、検討した合金元素の中で、腐食生成物を最も微細にしたのは、Niであった。
以上の検討より、鋼へのNi添加が、Zn腐食生成物のイオン透過抵抗を最も上昇させ、ジンクリッチプライマーによる腐食効果を、より向上させることがわかった。
すなわち、本発明は、スケールを除去した鋼材の表面にジンクリッチプライマーを塗布してなるジンクリッチプライマー塗布鋼材であって、前記鋼材が、質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.06%、Ni:0.1〜1.0%、N:0.0020〜0.0065%、Ti:0.005〜0.024%、を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材である。
本発明では、前記鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:0.1〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種、および/または、
Nb:0.03%以下、V:0.2%以下、B:0.002%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、
Ca:0.01%以下、REM:0.015%以下のうちから選ばれた1種または2種、
を含有するものであってもよい。
本発明によれば、鋼材への比較的少ないNi添加とジンクリッチプライマーの併用により、バラストタンク内の防食環境で優れた耐食性を示すので、製造コストの高騰を抑え、溶接性、溶接部靭性を確保しつつ、船舶バラストタンクの補修再塗装寿命の延長および補修再塗装作業の軽減に大きく寄与することができる。
まず、本発明の鋼材の組成限定理由について説明する。なお、以下、質量%は単に%と記す。
C:0.03〜0.2%
Cは、鋼材の強度を増加させる元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.2%を超える含有は、HAZ(:溶接熱影響部)の靭性を劣化させる。このため、Cは0.03〜0.2%の範囲に限定した。なお、強度、靭性の観点から、好ましくは0.05〜0.18%である。
Si:0.5%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼材の強度を増加させる元素であり、本発明では、0.1%以上の含有が好ましいが、0.5%を超える含有は、鋼の靭性を劣化させる。このため、Siは0.5%以下の範囲に限定した。
Mn:2.0%以下
Mnは、鋼材の強度を増加させる元素であるが、2.0%を超える含有は、鋼の靭性および溶接性を低下させる。このため、Mnは2.0%以下に限定した。好ましくは、0.8〜1.8%である。
P:0.03%以下
Pは、耐食性向上に有効な元素であるが、鋼の母材靭性、さらに溶接性および溶接部靭性を劣化させる。したがって、できるだけ低減するのが好ましいが、0.03%までは許容できる。0.03%を超えて含有すると母材靭性、溶接性および溶接部靭性が顕著に低下する。このため、Pは0.03%以下に限定した。
S:0.01%以下
Sは、靭性および溶接性を劣化する有害な元素であることから、可能な限り低減する必要がある。したがって、0.01%以下に限定した。
Al:0.005〜0.06%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.06%を超えて含有すると、鋼の靭性が劣化する。このため、Alは0.005〜0.06%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.05%である。
Ni:0.1〜1.0%
Niは、本発明で最も重要な元素である。前述のようにZn腐食生成物を微細にし、Zn腐食生成物による腐食因子の鋼への透過抵抗を高め、鋼の腐食を制御する働きがある。また、Fe腐食生成物を微細にする働きや、Fe腐食生成物の電荷を負化する作用で、塩化物イオンの地鉄表面への透過を抑制し、地鉄近傍のpHを高め、鋼の腐食を抑制する。この効果は、0.1%以上で発現する。1.0%を超えても、この効果は認められるが、経済的に不利となるため、0.1〜1.0%の範囲に限定した。
N:0.0020〜0.0065%
Nは、鋼材の腐食とともに溶出し、NH3を形成して、地鉄近傍のpHを高め、その後の鋼の腐食を抑制する。このような効果は0.0020%以上の含有で認められる。一方、0.0065%を超えて含有すると、溶鋼鋳込み時にスラブの割れ発生や、HAZの靭性が劣化する。そのため、0.0020〜0.0065%の範囲に限定した。
Ti:0.005〜0.024%
Tiは、Nと結合し、TiNとして析出し、結晶粒の微細化に寄与する元素である。TiNは、とくに溶接時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する効果を有する。このような効果は、0.005%以上のTi含有で顕著に認められる。一方、0.024%を超える含有は、固溶Ti量の増大や、TiN粒の粗大化をもたらし、溶接時のオーステナイト粒粗大化を抑制する効果が低減し、HAZの靭性の劣化をもたらす。このため、Tiは0.005〜0.024%の範囲に限定した。
上記した基本成分に加えて、Cu、Moのうちの1種または2種、および/または、Nb、V、Bのうちの1種または2種以上、および/または、Ca、REMのうちの1種または2種を、おのおの次の量で含有することができる。
Cu:0.1〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%のうちの1種または2種
CuはNiと同様、Zn腐食生成物を微細にし、Zn腐食生成物による腐食因子の鋼への透過抵抗を高め、鋼の腐食を抑制する働きがあるが、その効果はNiほど大きくない。ただし、Niのように高価な金属でないことに鑑みて、補助的に添加することができる。0.1%未満では、効果が小さく、0.5%以上では効果が飽和する。したがって、Cuは、0.1〜0.5%の範囲とするのがよい。
また、MoもNiと同様、Zn腐食生成物を微細にし、Zn腐食生成物による腐食因子の鋼への透過抵抗を高め、鋼の腐食を抑制する働きがあるが、その効果はNiほど大きくない。しかし、腐食生成物中において、MoO4 2-を形成し、塩化物イオンの地鉄表面への透過を抑制し、地鉄近傍のpHを高め、鋼の腐食を抑制する。この効果は、0.005%以上で発現する。一方、0.5%を超えると経済的に不利となるので、Moは、0.005〜0.5%の範囲とするのがよい。
Nb:0.03%以下、V:0.2%以下、B:0.002%以下のうちの1種または2種以上
Nb、V、Bはいずれも、鋼材の強度を増加させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには、Nb:0.005%、V:0.05%、B:0.0003%以上をそれぞれ含有することが好ましい。一方、Nb:0.03%、V:0.2%、B:0.002%を超えてそれぞれ含有すると靭性が劣化する。このため、Nb:0.03%以下、V:0.2%以下、B:0.002%以下の範囲とするのがよい。
Ca:0.01%以下、REM:0.015%以下のうちの1種または2種
Ca、REMは、いずれもHAZの靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果は、Ca:0.0005%、REM:0.001%以上の含有で顕著となるが、Ca:0.01%、REM:0.015%を超えて含有すると靭性が劣化する。このため、Ca:0.1%以下、REM:0.015%以下の範囲とするのがよい。
本発明の鋼材では、上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、O:0.008%以下が許容できる。
つぎに、本発明の鋼材の好ましい製造方法について説明する。
まず、上記した組成の溶鋼を転炉、電気炉等の通常の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法等の通常公知の鋳造方法で鋼素材とすることが好ましい。なお、溶鋼に取鍋精錬、真空脱ガス等の処理を付加しても良いことは言うまでもない。
ついで、得られた鋼素材を、結晶粒粗大化防止の観点から好ましくは1050〜1250℃の温度に加熱したのち、所望の寸法形状に熱間圧延するか、あるいは鋼素材の温度が熱間圧延可能な程度に高温である場合には、加熱することなく、あるいは均熱する程度で、ただちに所望の寸法形状の鋼材に熱間圧延することが好ましい。
本発明では、強度確保の観点から、熱間圧延では、熱間仕上圧延終了温度および熱間仕上圧延終了後の冷却速度を適正範囲とすることが好ましい。ここで、熱間仕上圧延終了温度は700℃以上とするのが好ましく、また、熱間仕上圧延終了後は空冷、または冷却速度50℃/s以下の加速冷却を行うことができる。
このように製造した鋼材の表面にジンクリッチプライマー膜を形成するにあたっては、該膜の形成に先立って、鋼材の製造工程で発生した鋼材表面のスケールを除去する。これにより、ジンクリッチプライマー膜と鋼材の密着性が向上する。スケールを除去する手段は特に限定されず、ショットブラスト、サンドブラスト、ブラシケレンなどの慣用技術のいずれも用いうる。スケール除去後の鋼材表面に、Znを含有するジンクリッチプライマーを塗布して塗膜を形成する。形成されたジンクリッチプライマー膜中には、Znが質量%で20%以上含有されることが好ましい。その限りにおいて、塗布の方法は、特に限定されず、スプレー、刷毛塗り、ロールコーター等の慣用技術のいずれを用いても良い。
そして、造船後、本塗装を行うが、塗装は通常使用される防食塗料が使用できる。すなわち、これまで主流であったタールエポキシ塗料や、最近増加してきているタールフリーエポキシ塗料など、またウレタン塗料などが例示される。
なお、造船大組み溶接段階においては、本塗装までの期間が短いため、溶接部へのジンクリッチプライマーの再塗装は行われないことが多いが、竣工後の溶接部の耐食性を向上させるために、その部分へのジンクリッチプライマーの再塗布を行うことが望ましい。
転炉を用いて、表1に示す組成になる鋼を溶製し、連続鋳造によりスラブとなし、このスラブを加熱炉に装入して1150℃に加熱した後、熱間圧延し、厚鋼板(厚さ20mm、幅3000mm)からなる鋼材を得た。鋼A〜Jは鋼材の組成が本発明を満たす例、鋼K〜Nは鋼材の組成が本発明を満たさない例である。
かくして得られた鋼材について母材引張特性、衝撃特性を調査した。また、サブマージドアーク溶接での入熱50kJ/cm相当の熱サイクルを付与して再現したHAZの衝撃特性(再現HAZ衝撃特性)を評価した。その結果、P含有量が本発明範囲を超える鋼Mでは、母材衝撃特性および再現HAZ衝撃特性が劣化した。
次に、それぞれの鋼材から試験片(厚さ20mm、幅100mm、長さ300mm)を切り出し、その表面にショットブラスト処理を施してスケールを除去した。そして、該スケール除去後の表面にジンクリッチプライマーを塗布(膜厚:約15μm)した試験片と、前記表面にジンクリッチプライマーを塗布しない試験片とを作製した。ついで、これらすべての試験片に、タールエポキシ塗料を塗布(膜厚:約200μm)し、サンプルとした。サンプルAP〜JPは本発明例であり、サンプルAN〜NN、およびサンプルKP〜NPは比較例である。
その後、カッターナイフで、サンプルの地鉄表面まで達する150mm長さのスクラッチを付加した。そして、これらのサンプルを、実船のバラストタンク内(アッパーデッキ裏)に装着し、暴露試験に供した。暴露期間は2年間である。暴露試験後、スクラッチ周囲のさび、および、さびに起因した塗膜膨れ、これらを合わせた面積(さび面積と称す。)を測定した。測定結果を表1に、ベース(サンプルNN)に対する比であるさび面積率で示す。
表1に示したとおり、ベースとした現行材(サンプルNN)に対し、鋼材に主にNiを添加した鋼A〜Jのプライマー無塗布材(サンプルAN〜JN)は、さび面積を減少させるが、その効果は顕著ではない。一方、同鋼A〜Jのプライマー塗布材(サンプルAP〜JP)は、現行材に対し、さび面積率が50%以下となり、顕著な効果が認められる。なお、鋼材のP含有量が高すぎる鋼Mのプライマー塗布材(サンプルMP)は、さび面積率が29%と優れた耐食性を示すが、母材衝撃特性および再現HAZ衝撃特性が劣化している。以上のことから、鋼材へのNi添加とプライマーの併用が、機械的特性を損なうことなく、耐食性を向上させるのに極めて有効であることがわかる。
Figure 2005171332
Figure 2005171332

Claims (4)

  1. スケールを除去した鋼材の表面にジンクリッチプライマーを塗布してなるジンクリッチプライマー塗布鋼材であって、前記鋼材が、質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.06%、Ni:0.1〜1.0%、N:0.0020〜0.0065%、Ti:0.005〜0.024%、を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材。
  2. 前記鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.1〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材。
  3. 前記鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.03%以下、V:0.2%以下、B:0.002%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材。
  4. 前記鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性に優れた船舶バラストタンク用鋼材。
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