JP5185712B2 - バラストタンク用鋼材、バラストタンクおよび船舶 - Google Patents
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(1)C:0.01〜0.30質量%(以下、%と略記。)、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.01%以下、S:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、Cu:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%を含有し、残部が鉄および不可避の不純物から成る鋼材の表面に、亜鉛粉末および無機化合物の粒子状骨材を含有するジンクリッチプライマーが塗布され、鋼材と同プライマーとの界面粗さの最大高さRz:20〜90μm、上記亜鉛粉末の平均粒径が1〜10μmであり、また上記無機化合物の粒子状骨材の最大長径が10μm以上で上記プライマーの平均膜厚の2倍以下であるバラストタンク用鋼材。
バラストタンクの構造部材として要求される最低強度すなわち400MPa程度(但し、鋼材の肉厚による。)を得るために、0.01%以上のCを必要とするが、0.30%を超えると鋼の靭性が劣化する。こうしたことから、C含有量の範囲は0.01〜0.30%とする。尚、C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とするのが良い。また、C含有量の好ましい上限は0.28%であり、より好ましくは0.26%以下とするのが良い。
Siは脱酸と強度確保に必要な元素であり、構造部材の最低強度を確保するために0.01%以上を必要とするが、2.0%を超えると溶接性が劣化するので、Siの含有量は0.01〜2.0%とする。尚、Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.05%以上とするのが良い。また、Si含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
Mnも脱酸と強度確保に必要な元素であり、構造部材の最低強度を確保するために0.01%以上を必要とするが、2.0%を超えると靭性が劣化する。従って、Mnの含有量0.01〜2.0%とする。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とするのが良い。また、Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
本発明は、鋼材の靭性および溶接性を重視するので、これらの性質を劣化させるPは可能な限りその含有量を低減させることが必要であり、0.01%以下とする。なお、Pは鋼材の耐海水性を向上するために0.02%以上を添加させる場合があるが、本発明はこの機能を利用する必要はないから、0.01%以下とする。
SもPと同様に鋼材の靭性および溶接性を劣化させるので、できるだけ含有量を低減させることが必要であり、許容限は0.01%であり、これを超えるとバラストタンク用の鋼材として必要な溶接性が確保できないので、本発明では0.005%以下とする。
AlもSiおよびMnと同じく脱酸および強度確保に必要な元素であり、とくに脱酸のためには0.005%以上を要するが、0.10%を超えると溶接性を阻害する。従って、Alは0.005〜0.10%とする。尚、Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.015%以上とするのが良い。また、Al含有量の好ましい上限は0.080%であり、より好ましくは0.090%以下とするのが良い。
Cuは耐食性向上に有効な元素である。Cuは防食塗膜下で発生する腐食反応を抑制する作用を有しており、塗装の薄膜部分などで発生しやすい塗幕下腐食による塗膜膨れを抑制する効果を有する元素である。また、塗膜欠陥部において、鋼材が腐食を受けた場合に生成錆を緻密化する作用も有しており、塗膜傷部の腐食進展を抑制する効果を発現するのに有効な元素である。これらの作用効果を十分に発揮させるためには、0.01%以上含有させることが必要であるが、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化することから、5.0%を上限とする。Cuを含有させるときのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限は0.90%である。
Niは耐食性向上に有効である。NiもCuと同様に防食塗膜下で発生する腐食反応を抑制する作用を有しており、塗装の薄膜部分などで発生しやすい塗幕下腐食による塗膜膨れを抑制する効果を有する元素である。また、塗膜欠陥部において、鋼材が腐食を受けた場合に生成錆を緻密化する作用も有しており、塗膜傷部の腐食進展を抑制する効果を発現するのに有効な元素である。また、Niは、Cu添加による赤熱脆性を防止するのに必要な元素である。こうした作用効果を十分に発揮させるためには0.01%以上含有させることが必要である。しかしながら、添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性が劣化することから、5.0%以下に抑制しなければならない。尚、Niのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限は0.90%である。
Crも耐食性の向上に有効な元素であるが、とくに防食塗膜下でのジンクリッチプライマー消耗を抑制する作用があり、さらには塗膜傷部の鋼材腐食の進展を抑制する効果も期待できる。また、Crの添加は鋼材の靭性を高めるので、バラストタンクの構成材として必要な機械特性を得るのに有効である。 これらの作用効果を発揮させるには、0.01%以上のCrが必要であるが、過剰のCrは鋼材の溶接性や熱間加工性を低下するので、5.0%をその上限とする。尚、Crを含有させるときのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限は0.45%である。
さらに、本発明では、上記粒子状骨材の最大長径を10μm以上から、塗布されたジンクリッチプライマーの乾燥膜厚の2倍以下の範囲に調整することを特徴とする。粒子状骨材の最大長径が10μm以下の細粒になると、素地鋼材および防食樹脂塗装に対してジンクリッチプライマーの塗装密着性が不良化することが確認される。
また、上記したように、ジンクリッチプライマーは、通常、10〜30μmの厚さに塗布され、乾燥膜厚は一般的には15μm前後となるが、無機化合物の粒子状骨材の最大長径が同乾燥膜厚の2倍に相応する30μmを超えるほどの粗粒子であると、その部分に浸透した水分等が滞留しやすくなり、かえって耐食性を阻害することが確認される。
(実施例)
本発明の実施例ならびに比較例として、表1〜4に示すAlキルド鋼を準備した。すなわち、転炉より出鋼した溶鋼を、RH真空脱ガス装置を用いてArガスによるバブリング処理をし、撹拌しながら所定の成分調整を行い、連続鋳造法により鋼塊とした。得られた鋼塊を1150℃に加熱し、熱間圧延して厚さ19mmの鋼板を作製した。
[腐食試験方法]
39種の試験片について、バラストタンク内を模擬したラボ評価試験方法により、実機バラストタンクと同様の使用条件下に相当する腐食の程度を検証した。
腐食試験結果は表2および表4に示すように、塗膜膨れ発生までの時間を下記6段階に分けて評価した。
7日未満:×、7日以上14日未満:、△14日以上35日未満:○
35日以上56日未満:◎、56日以上77日未満:◎◎
77日以上:◎◎◎
以下、個別に評価結果を考察する。さきに比較例について:
・No,1は塗装の規定値は満たすものの、鋼材にCu,NiおよびCrが含有されておらず、鋼材の耐食性そのものが非常に劣るため、バラストタンクとしての耐食性が不十分である。
・No.2は粒子状無機化合物の粒子状骨材の最大長径が30μmを超えており、×の評価で非常に劣る。
・No.3およびNo.4は、それぞれCu含有量およびCr含有量が不足するため、鋼材の耐食性改善が不十分であり、バラストタンク用鋼材としては不適である。
・No.5は各添加元素の成分範囲は規定値を満たすが、鋼材の表面粗さの最大高さRzが非常に大きく、塗装耐食性改善が不十分であり、×である。
・No.6は樹脂塗膜が薄くなった部分を想定したもので、×となり非常に劣る。
・No.8は無機化合物骨材の最大長径が非常に細かく健闘しているが、塗装密着性が悪く、膨れが生じているため、△となり劣る。亜鉛末の平均粒径が大きい。
・No.10ではジンクリッチプライマー膜からはみ出している亜鉛末もあり、耐食性が悪く×であり、いずれも耐食性に優れるバラストタンクとしては満足できるものではない。
Claims (6)
- C:0.01〜0.30質量%(以下、%と略記。)、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.01%以下、S:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、Cu:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%を含有し、残部が鉄および不可避の不純物から成る鋼材の表面に、亜鉛粉末および無機化合物の粒子状骨材を含有するジンクリッチプライマーが塗布され、鋼材と同プライマーとの界面粗さの最大高さRz:20〜90μm、上記亜鉛粉末の平均粒径が1〜10μmであり、また上記無機化合物の粒子状骨材の最大長径が10μm以上で上記プライマーの平均膜厚の2倍以下であることを特徴とするバラストタンク用鋼材。
- Mg、CaまたはSrの1種以上をそれぞれ0.0001〜0.005%含有する請求項1に記載されたバラストタンク用鋼材。
- Co、TiまたはZrの1種以上をそれぞれ0.005〜0.20%含有する請求項1または2に記載されたバラストタンク用鋼材。
- B:0.0001〜0.010%、V:0.01〜0.50%またはNb:0.003〜0.50%の1種以上を含有する請求項1、2または3に記載されたバラストタンク用鋼材。
- 請求項1、2、3または4に記載された鋼材から構成され、ジンクリッチプライマーの表面に、厚さが100〜800μmの防食樹脂皮膜を塗布したことを特徴とするバラストタンク。
- 請求項5に記載されたバラストタンクが搭載された船舶。
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