JP2010132999A - エアバッグ用鋼管とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Ca:0.0005〜0.005%、Nb:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.050%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01%以上0.1%以下、B:0.0005〜0.0050%、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ下式(1)を満たす鋼組成とする。Cu+Ni≧(Cr+Mo)2+0.3・・・(1)
【選択図】図1
Description
近年、自動車産業においては、安全性を追求した装置の導入が積極的に進められているが、その中でも衝突時に乗員がハンドルやインストルメントパネルなどに衝突する前に、それらと乗員との間にガス等でエアバッグを展開させ、乗員の運動エネルギーを吸収して傷害軽減を図るエアバッグシステムが開発搭載されるに到っている。エアバッグシステムとしては、従来、爆発性薬品を使用する方式が採用されてきたが、環境リサイクル性の面から高圧充填ガスを使用するシステムが開発され、その適用が広がっている。
このような観点から、アキュムレータ用の継目無鋼管は、焼入れ焼戻しにて高強度と高靭性が付与されるようになってきた。具体的には、アキュムレータとして−60℃以下の温度域においても十分な低温靭性が求められる。
特許文献4は、耐バースト性の優れた継目無鋼管としてCr,Mo,Cu,Niを含有する鋼組成を開示しているが、その特性を評価しているのは、Cr+Mo:0.76%以上の継目無鋼管であって、そのときの引張り強度も当該文献に具体的に示されている範囲においては、高々947MPaである。
(1)C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.10〜1.0%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Ca:0.0005〜0.0050%、Nb:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.050%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0050%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ下式(1)を満たす鋼組成であることを特徴とするエアバッグシステム用継目無鋼管。
Cu+Ni≧(Cr+Mo)2+0.3 ・・・ (1)
なお、式(1)の元素記号は、それらの元素の含有量を質量%で示したときの数値を意味する。
(3)(1)または(2)に記載の鋼組成を有するビレットを用いて熱間製管によって製造された継目無鋼管素管を、冷間加工を施して所定寸法の鋼管とし、矯正を行なった後に、高周波加熱によってAc3変態点以上の温度に加熱して急冷する焼き入れを行い、次いでAc1変態点以下の温度に加熱して焼き戻しを行うことを特徴とする、エアバッグ用継目無鋼管の製造方法。
(A)鋼の化学組成
本明細書において「%」は、特段の説明が無い限り、「質量%」を意味する。
C: 0.05〜0.20%
Cは、安価に鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、その含有量が0.05%未満では所望の1000MPa以上の引張強度が得難く、又、0.20%を超えると加工性及び溶接性が低下する。したがって、Cの含有量を、0.05〜0.20%とした。なお、C含有量の好ましい範囲は、0.08〜0.20%で、より好ましい範囲は、0.12〜0.17%である。
Siは、脱酸作用を有するほか、鋼の焼入れ性を高めて強度を向上させる元素であり、0.1%以上の含有量が必要である。しかし、その含有量が0.50%を超えると靱性が低下するため、Siの含有量を0.1〜0.50%とした。なお、Si含有量の好ましい範囲は0.2〜0.5%である。
Mnは、脱酸作用があり,又,鋼の焼入れ性を高めて強度と靱性を向上させるのに有効な元素である。しかし,その含有量が0.10%未満では十分な強度と靱性が得られず,一方,1.00%を超えるとMnSの粗大化が生じて,熱間圧延時に展伸し,靱性が低下する。本発明にあっては、Mnを1.00%以下に抑えても、目的とする1000MPa以上の引張強度を確保する必要があるため、Bを配合することで焼き入れ性の改善を行なっている。
P:0.025%以下
Pは、粒界偏析に起因する靱性低下をもたらし、特に、その含有量が0.025%を超えると靱性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.025%以下とした。なお、Pの含有量は0.020%以下とするのが好ましく、0.015%以下であれば一層好ましい。
Sは、特に鋼管T方向の靱性を低下させてしまう。特に、その含有量が0.005%を超えると鋼管T方向の靱性低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.005%以下とした。なお、Sの含有量は0.003%以下とするのが好ましい。
Alは、脱酸作用を有し、靱性及び加工性を高めるのに有効な元素である。しかし、0.10%を超えて含有させると、地疵の発生が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.10%以下とした。なお、Al含有量は不純物レベルであってもよいので、その下限は特に定めないが、0.005%以上とすることが好ましい。なお、本発明にいうAl含有量とは、酸可溶Al(所謂「sol.Al」)の含有量を指す。
Caは、鋼中に不可避不純物として存在するSを硫化物として固定し、靱性の異方性を改善して、鋼管のT方向靱性を高め、これによって耐バースト性を高める作用を有する。この効果は0.0003%以上、特に0.0005%以上の含有量で発現する。しかし、0.005%を超えて含有させると、介在物が増加して、かえって靭性が低下する。したがって、Caの含有量を0.0005〜0.005%とした。
Nbは、鋼中で炭化物として微細に分散し、結晶粒界を強くピン止めする効果がある。それにより、結晶粒を細粒化せしめ、鋼の靭性を向上させる効果を有する。その効果を得るためには、0.005%以上含有させることが必要であるが、0.050%を越えて含有させると、炭化物が粗大化し、かえって靭性が低下する。従って、Nbの含有量を0.005〜0.05%とした。
Tiは、鋼中でNを固定し、靭性を向上させる効果を有する。また、微細に分散したTi窒化物は、それにより、結晶粒界を強くピン止めし、結晶粒を細粒化せしめ、鋼の靭性を向上させる効果を有する。その効果を得るためには、0.005%以上含有させることが必要であるが、0.050%を越えて含有させると、窒化物が粗大化し、かえって靭性が低下する。従って、Tiの含有量を0.005〜0.05%とした。好ましい含有量は0.008〜0.035%である。
Bは、鋼中で粒界偏析し、鋼の焼き入れ性を著しく向上させる。その効果は、0.0005%以上含有させることで発現する。一方、0.0050%超含有させると、結晶粒界に硼化物が粗大に析出するため、かえって靭性が低下する。従って、Bの含有量を0.0005〜0.0050%とした。好ましくは、0.0030%以下である。
なお、Bは固溶状態で無いと、結晶粒界に偏析しない。従って、Bと化合物を造りやすいNは、Tiによって固定されていることが好ましく、Bは、Nによって固定される量以上に含有されていることが好ましい。その意味で、B含有量は、B、Ti、Nの化学両論比から、下記の式(2)の関係を満たしていると好適である。
B−(N−Ti/3.4)×(10.8/14)≧0.0005 ・・・ (2)
式(2)中のB、N、Tiはそれぞれの元素の含有量を質量%で表したときの数値である。
Cuは、鋼の焼き入れ性を高め、強度と靭性を向上させる効果がある。その効果は、0.01%以上、好ましくは0.03%以上含有されていれば発現する。しかしながら、0.50%を越えて含有させるのは合金コストの超過を招く。従って、Cuの含有量を、0.01〜0.50%とした。好ましい含有量は0.03%以上、特に0.05%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。
Niは、鋼の焼き入れ性を高め、以て強度と靭性を向上させる効果がある。その効果は、0.01%以上、好ましくは0.03%以上含有されていれば発現する。しかしながら、0.50%を越えて含有させるのは合金コストの超過を招く。従って、Niの含有量を、0.01〜0.50%とした。好ましい含有量は0.03%以上、特に0.05%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。
Crは、鋼の焼き入れ性を高め、また、焼き戻し軟化抵抗を高めて、強度と靭性を向上させる効果がある。その効果は、各々の元素が0.01%以上含有されていれば発現する。しかしながら、0.50%を越えて含有させるのは合金コストの超過を招く。従って、Crの含有量を、0.01〜0.50%とした。好ましい含有量は0.20%以上である。
Moは、鋼の焼き入れ性を高め、また、焼き戻し軟化抵抗を高めて、強度と靭性を向上させる効果がある。その効果は、各々の元素が0.01%以上含有されていれば発現する。しかしながら、0.10%超含有させるのは合金コストの超過を招く。また、Mo含有量が高いと、継目無鋼管の熱間製管後の空冷においても、強度が高くなる傾向があり、冷間抽伸加工前に軟化熱処理が必要となり、製造コストの上昇を招く。従って、Moの含有量を、0.01%以上0.10%以下とした。
さらに、Cu、Ni、Cr、Moについては、その含有バランスを下記のように限定する。
Cr、Moは、焼き戻し時に析出するセメンタイトの球状化を妨げ、また、本発明のようにBが含有されている鋼では、Bと化合物(硼化物)を結晶粒界に形成しやすく、特に高強度材では靭性が低下しやすい。そこで、Cr、MoよりもCu、Niの含有による高強度化のほうが、本発明で対象とする高強度且つ高靭性のエアバッグ鋼管としては適している。具体的には、Cr、Mo、Cu、Niの含有バランスについて下式(1)を満足させることが肝要である。
Cu+Ni≧(Cr+Mo)2+0.3 ・・・ (1)
式(1)の元素記号は、それぞれの元素の含有量を質量%で表したときの数値である。
V:0.02〜0.2%
Vは、析出強化により強度を高める作用がある。これらVの作用は0.02%以上含有させると効果を発揮するが,0.2%を超えると靭性が低下する。したがって,添加する場合のVの含有量は0.02〜0.2%とするのがよい。V含有量の好ましい範囲は,0.03〜0.10%である。
(B)素材
本発明においては、鋼管の素材となる鋼塊について、特に限定しない。円柱型の鋳型を有する連続鋳造機にて鋳込まれた鋳片でも良いし、矩形型に鋳込んだ後に、熱間鍛造により円柱状に成形した物でも良い。本発明に係る鋼は、CrおよびMoといったフェライト安定化元素の添加を抑制し、CuおよびNiといったオーステナイト安定化元素を添加している関係から、ラウンドCCビレットとして丸形状に連続鋳造鋳込を行った場合にも中心割れが防止できる効果が大きく、ラウンドCCへの適合性も十分高い。
ラウンドCCビレット中心部の割れが多い場合、継目無鋼管素管を冷間加工、特に冷間抽伸を行った後、矯正加工を施すと、割れが拡張し、高周波焼入れ焼戻しを施して、最終的に縮径加工したところ、内面から割れが生じることがある。従って、特にラウンドCCビレットを素材とする場合、本発明の鋼組成は、エアバッグアキュムレータ用継目無し鋼管に好適である。
本発明においては、上記のように化学組成を調整した(B)に記載の鋳片を素材として、鋼管を製造しさえすればよく、鋼管の製管法としては特に限定するものではない。例えば、マンネスマン-マンドレル法が採用される。
上記のようにして継目無鋼管として製管された鋼管は、所定の寸法精度、表面性状が得られる条件下で冷間加工される。冷間加工は、所定の寸法精度と表面性状が得られさえすればよいので、冷間加工、すなわち冷間抽伸、冷間圧延等の方法や加工度に関しては、特に規定しなくてもよいが、加工度は減面率で3%以上とするのが好ましいが、50%を越えると、一般的に内面しわ疵の発達が著しいことから、50%未満とすることが好ましい。
なお、(A)で限定した化学成分の鋼を採用することにより、冷間加工前の軟化熱処理が省略できるので好適である。
本発明の対象は、引張強度が1000MPaを越え、エアバッグシステム用として必要な寸法精度、表面性状および低温靭性を具備した継目無鋼管であることから、冷間抽伸後、強度が従来鋼よりも高くなる傾向があり、スプリングバックなどで鋼管に曲がりが生じる可能性がある。鋼管に曲がりがあると、下記の高周波加熱による焼き入れ時に、高周波コイルに真直に鋼管が通過しない問題が懸念される。従って、好ましい態様においては、高周波加熱による焼き入れのために、冷間加工(例:冷間抽伸)後に矯正加工を行う。
上記(E)の矯正加工の後、鋼管には所要の引張強度を確保するとともに、T方向靱性を高めて耐バースト性をも確保するための熱処理が施される。鋼管に引張強度で1000MPa以上の高強度と、耐バースト性とを具備させるためには、少なくともAc3 変態点以上の温度に加熱してから急冷し、次いで、Ac1 変態点以下の温度で焼戻しする処理を行う。
(A)に記載の鋼組成の素管を用いても、焼入段階の加熱速度や、冷却速度が不十分であると本発明の目的とする強度や靭性を安定して確保することができない場合がある。
表1に示す6鋼種の化学組成の鋼を真空溶解にて溶製し、熱間圧延後に冷間圧延を施して5mm厚の板材とした。その後、高周波加熱により、平均昇温速度300℃/秒にて920℃まで加熱し、920℃×5秒の保持後、水冷で焼き入れ処理を行い、次いで、焼き戻しを実施した。この熱処理を施した板材から、JIS Z2201の14A号の引張試験片(平行部径4mm、平行部長20mm)を圧延方向に垂直に採取し、JIS Z2241に準拠して引張試験を行った。また、同様に圧延方向に垂直に、JIS Z2242に準拠して、2.5mm幅のサブサイズのVノッチシャルピー試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行った。
鋼1〜3については、テンパー温度調整にてTSを1000MPa付近に調整したが、vTrs100が−80℃よりも高温になり、このままの材料としては十分な靭性を有するものの、ボトル加工により靭性が低下すると、十分な低温バースト性能が得られない可能性がある。
なお、式(1)の元素記号は、それらの元素の含有量を質量%で示したときの数値を意味する。
表3に示す化学組成を有する鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造によって外径191mmの円柱状ビレットを製造した。このラウンドCCビレットを所望の長さに切断し、1250℃に加熱した後、通常のマンネスマン−マンドレルミル方式による穿孔、圧延により外径が70mmで肉厚が4.0mmに仕上げた継目無鋼管を、通常の方法で冷間抽伸加工(冷間引抜き加工)し、外径を60.3mm、肉厚を3.6mmに仕上げた。これを鋼管サイズ1とする。これら冷間抽伸加工を施した鋼管を、ストレートナーによって矯正した後、高周波誘導加熱装置を用いて平均昇温速度300℃/秒にて920℃まで加熱し、920℃×5秒の保持後、水焼入れを行ない、次いで通常のウォーキングビーム炉で焼き戻しの為の30分の均熱処理を行った。
また、同様に穿孔、圧延により外径が51.0mmで肉厚が3.0mmに仕上げた継目無鋼管を、通常の方法で冷間抽伸加工(冷間引抜き加工)し、外径を40.0mm、肉厚を2.6mmに仕上げた。これを鋼管サイズ2とする。これら冷間抽伸加工を施した鋼管を、ストレートナーによって矯正した後、高周波誘導加熱装置を用いて920℃まで加熱し5秒保持した後、水焼入れし、次いで通常のウォーキングビーム炉で焼き戻しの為の30分の均熱処理を行った。
また、高周波焼入れと焼戻しを行った鋼管を、300mm長さにそれぞれ6本切断し、両管端にプレス加工を施して、縮径部の直径/未縮径部の直径の比が0.6になるような縮径部を25mm長さで設けて、アキュムレータボトル部の形状とした。その後、片端を溶接して封じ、もう一方の端部を高圧ホースが貫通する閉鎖部材を溶接した。
その結果、鋼A〜鋼Bを用いた鋼管サイズ1および2の試験体の各6本中全てが、開口部の脆性破面面積率が5%未満であり、十分なバースト性能を満足することが確認された。一方、鋼Cを用いた鋼管サイズ1および2の試験体の各6本中の、各3本が縮径部から早期破壊し、バースト圧が著しく低下した。また、鋼Dおよび鋼Eを用いた試験体6本全てが、開口部の脆性破面面積率が5%以上であり、性能を満足しなかった。
表4における鋼A〜鋼Bは、成分が本発明で規定する条件を満たす鋼である。鋼C〜鋼Eは、本発明で満足すべき、Cu、Ni、Cr、Mo含有量の関係式(1)を満たさない鋼、または、それ以外の成分の範囲を満たさない鋼である。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.05〜0.20%,
Si:0.10〜0.50%,
Mn:0.10〜1.00%,
P:0.025%以下,
S:0.005%以下,
Al:0.005〜0.10%,
Ca:0.0005〜0.0050%,
Nb:0.005〜0.050%,
Ti:0.005〜0.050%,
Cu:0.01〜0.50%,
Ni:0.01〜0.50%,
Cr:0.01〜0.50%
Mo:0.01%以上0.10%以下、
B:0.0005〜0.0050%、
残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ下式(1)を満たす鋼組成を有し、引張強度が1000MPa以上であることを特徴とするエアバッグ用継目無鋼管。
Cu+Ni≧(Cr+Mo)2+0.3 ・・・ (1)
なお、式(1)の元素記号は、それらの元素の含有量を質量%で示したときの数値を意味する。 - 質量%で、Feの一部に代えて、さらに
V:0.02〜0.20%
を含有する鋼組成を有することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ用継目無鋼管。 - 請求項1または2に記載の鋼組成を有するビレットを用いて熱間製管によって製造された継目無鋼管素管に、冷間加工を施して所定寸法の鋼管とし、矯正を行なった後に、高周波加熱によってAc3変態点以上に加熱して急冷する焼き入れを行い、次いでAc1変態点以下の温度に加熱して焼き戻しを行うことを特徴とする、エアバッグ用継目無鋼管の製造方法。
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