JPWO2011161927A1 - 鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
鋼管の製造方法において、加熱した後に急冷する焼入れを鋼管に施すにあたり、高周波誘導加熱により下記(1)式で規定される焼入れ温度に加熱し、高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を、焼入れ温度が975℃以上の場合に6秒以下とし、焼入れ温度が975℃未満950℃以上の場合に8秒以下とし、焼入れ温度が950℃未満の場合に9秒以下とすることにより、鋼管の組織を完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒を微細化することから、高強度かつ高靱性である鋼管を得ることができる。ここで、下記(1)式におけるT1は焼入れ温度(℃)、TAc3はAc3変態点の温度(℃)とする。TAc3+40℃≦T1≦1000℃ ・・・(1)
Description
本発明は、高周波誘導加熱による焼入れを施して鋼管を製造する方法に関し、さらに詳しくは高強度かつ高靱性の鋼管を得ることができる鋼管の製造方法に関する。
自動車のエアバッグシステムでは、鋼管を用いて製作されたアキュムレータが多用される。この鋼管を用いたアキュムレータには高圧ガスが封入され、エアバッグ作動時にはアキュムレータに封入された高圧ガスが一気にエアバッグ内に噴出される。したがって、アキュムレータに用いられる鋼管は、極めて短い時間に大きな歪み速度で応力が負荷されるので、高い寸法精度、加工性および溶接性に加えて、高強度、高靱性かつ優れた耐バースト性が要求される。
このようなエアバッグに用いられる鋼管は、鋼材を熱間製管により鋼管とし、加熱した後に急冷する焼入れと、焼戻しとを鋼管に施し、その後、冷間加工により鋼管を所定の寸法に仕上げ、焼鈍により残留応力を除去することにより製造される場合がある。
焼入れと焼戻しは、エアバッグ用鋼管に要求される強度および靱性を確保するため、鋼管に施される。焼入れと焼戻しを熱間製管された後であって冷間加工される前の鋼管に施す場合、冷間加工で低下する鋼管の靱性を、鋼材に合金成分を添加して組成を調整することにより補う必要がある。鋼材に合金成分を添加すると、熱間製管で鋼管を薄肉化するのが困難になるとともに、焼入れと焼戻しが施された高強度の鋼管を冷間加工することから、冷間加工での鋼管の薄肉化が困難になる。また、合金成分の添加による原料コストの上昇も問題となる。
熱間製管および冷間加工での薄肉化が困難になる問題や合金成分の添加により原料コストが上昇する問題を解決するために、鋼材を熱間製管により鋼管とし、冷間加工により鋼管を所定の寸法に仕上げた後、鋼管を高周波誘導加熱して焼入れ、その後、鋼管に焼戻しを施すエアバッグ用鋼管の製造方法が検討されている。この場合、冷間加工の後に施される焼入れと焼戻しにより、鋼管の靱性を確保することができ、鋼材に合金成分を添加する必要がなくなる。このため、熱間製管および冷間加工での薄肉化が容易になるとともに、合金成分の添加による原料コストの上昇を抑制できる。
エアバッグ用鋼管の製造方法に関し、従来から種々の提案がなされており、例えば、特許文献1がある。特許文献1に記載のエアバッグ用鋼管の製造方法では、所定の鋼組成を有する鋼材を熱間製管により鋼管とし、鋼管に加熱した後に急冷する焼入れと、Ac1変態点以下の温度で焼戻しを施し、その後、鋼管を冷間加工により所定寸法に仕上げる。冷間加工の際に加工度(減面率)を低下させることにより、鋼管の軸方向Lに垂直な断面で測定した{110}面のX線積分強度比の、鋼管の周方向Tに垂直な断面で測定した{110}面のX線積分強度比に対する比を50以下とし、優れた耐バースト性を確保できるとしている。
特許文献1では、鋼管に施す焼入れは、焼入れ温度に急速加熱した後、短時間保持して急冷するのが好ましく、その焼入れ温度は900〜1000℃、加熱手段は高周波誘導加熱が好ましいとしている。
また、特許文献2に記載のエアバッグ用鋼管の製造方法では、所定の鋼組成を有する鋼材を熱間製管により鋼管とし、鋼管を冷間加工により所定寸法に仕上げた後、900〜960℃での焼入れと、焼戻しとを鋼管に施してオーステナイト結晶粒度を11.0以上とする。特許文献1では、オーステナイト結晶粒度を11.0以上とすることにより、エアバッグ用鋼管に要求される強度および靱性を確保できるとしている。また、焼入れの際に高周波誘導加熱を用い、900〜1000℃で保持時間を10秒以下とすることにより、得られる鋼管の結晶粒がさらに微細となるので好ましいとしている。
特許文献3に記載のエアバッグ用鋼管の製造方法では、所定の鋼組成を有する鋼材を熱間製管により鋼管とし、鋼管を冷間加工により所定寸法に仕上げた後、Ac3変態点の温度以上に加熱する焼入れと、Ac1変態点の温度以下での焼戻しとを鋼管に施す。特許文献3では、合金成分として添加されるMnとTiの含有率が関係式を満たすことにより、1000MPa以上の引張強度と高い靱性を確保することができるとしている。また、鋼管に施す焼入れは、焼入れ温度に急速加熱した後、短時間保持して急冷するのが好ましく、その焼入れ温度は900〜1000℃、加熱手段は高周波誘導加熱が好ましいとしている。
特許文献1〜3に記載の高周波誘導加熱による焼入れを施すエアバッグ用鋼管の製造方法では、高周波誘導加熱された鋼管の温度を保持する時間について記載されているものもあるが、加熱された鋼管の温度を一定に保持するのは、高周波誘導加熱の原理から困難である。このため、鋼管に焼入れを施す際、高周波誘導加熱した後に鋼管を高温に保持する温度および時間について、十分に検討されているとはいえない。
また、特許文献1〜3に記載の高周波誘導加熱による焼入れを施すエアバッグ用鋼管の製造方法では、これらに記載されている条件を満たして鋼管に焼入れと焼戻しを施しても、エアバッグ用鋼管で要求される強度および靱性を確保することができない場合がある。
前述の通り、従来の高周波誘導加熱による焼入れを施すエアバッグ用鋼管の製造方法では、高周波誘導加熱した後に鋼管を高温に保持する温度および時間について、十分に検討されていない。また、従来の高周波誘導加熱による焼入れと焼戻しを鋼管に施しても、エアバッグ用鋼管で要求される強度および靱性を確保することができない場合がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、焼入れと焼戻しにより鋼管の組織を完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒を微細化することにより、高強度かつ高靱性である鋼管を得ることができる鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ね、後述する実施例に示す試験を行った結果、高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間と、焼入れの際に高周波誘導加熱する温度とを規定する。これにより、焼入れと焼戻しが施された鋼管の組織が完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒が微細化することにより、高強度かつ高靱性である鋼管を得られることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)〜(3)の鋼管の製造方法を要旨としている:
(1)加熱した後に急冷する焼入れを鋼管に施すにあたり、高周波誘導加熱により下記(1)式で規定される焼入れ温度に加熱し、高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を、前記焼入れ温度が975℃以上の場合に6秒以下とし、前記焼入れ温度が975℃未満950℃以上の場合に8秒以下とし、前記焼入れ温度が950℃未満の場合に9秒以下とすることを特徴とする鋼管の製造方法。
TAc3+40℃≦T1≦1000℃ ・・・(1)
ただし、T1は焼入れ温度(℃)、TAc3はAc3変態点の温度(℃)とする。
TAc3+40℃≦T1≦1000℃ ・・・(1)
ただし、T1は焼入れ温度(℃)、TAc3はAc3変態点の温度(℃)とする。
(2)上記(1)に記載の鋼管の製造方法において、熱間製管により得られた素管を冷間加工により所定寸法に仕上げて鋼管とし、当該鋼管に前記焼入れを施し、その後、Ac1変態点以下の温度で焼戻しを鋼管に施すことを特徴とする鋼管の製造方法。
(3)得られる鋼管がエアバッグ用鋼管であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の鋼管の製造方法。
本発明において、「鋼管の温度」は、高周波誘導加熱装置(加熱コイル)の出側(下流側)で放射温度計により測定される外面温度に基づき決定される温度を意味する。具体的には、焼入れ温度T1は高周波誘導加熱装置の出側で放射温度計により測定された温度とし、高周波誘導加熱される過程の鋼管の温度は、焼入れ温度T1(すなわち出側で放射温度計により測定された温度)および加熱速度から推定するものとする。
本発明の鋼管の製造方法は、下記の顕著な効果を有する。
(1)鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間および焼入れ温度を規定することにより、得られる鋼管の組織を完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒を微細化することから、高強度かつ高靱性の鋼管を得ることができる。
(2)冷間加工の後に焼入れと焼戻しを施すことにより、熱間製管および冷間加工での薄肉化が容易になるとともに、合金成分の添加による原料コストの上昇を抑制できる。
(1)鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間および焼入れ温度を規定することにより、得られる鋼管の組織を完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒を微細化することから、高強度かつ高靱性の鋼管を得ることができる。
(2)冷間加工の後に焼入れと焼戻しを施すことにより、熱間製管および冷間加工での薄肉化が容易になるとともに、合金成分の添加による原料コストの上昇を抑制できる。
以下に、本発明の鋼管の製造方法について説明する。
本発明の鋼管の製造方法は、加熱した後に急冷する焼入れを鋼管に施すにあたり、高周波誘導加熱により下記(1)式で規定される焼入れ温度に加熱し、高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を、焼入れ温度が975℃以上の場合に6秒以下とし、焼入れ温度が975℃未満950℃以上の場合に8秒以下とし、焼入れ温度が950℃未満の場合に9秒以下とすることを特徴とする。
TAc3+40℃≦T1≦1000℃ ・・・(1)
ただし、T1は焼入れ温度(℃)、TAc3はAc3変態点の温度(℃)とする。
TAc3+40℃≦T1≦1000℃ ・・・(1)
ただし、T1は焼入れ温度(℃)、TAc3はAc3変態点の温度(℃)とする。
図1は、本発明で規定する鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を説明する図であり、本発明の鋼管の製造方法により鋼管に焼入れを施した際の時間と鋼管の温度との関係を示す図である。同図に示すように、本発明の鋼管の製造方法では、高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を管理する。
前述の通り、高周波誘導加熱された鋼管の温度を一定に保持することは、高周波誘導加熱の原理から困難であることから、焼入れ温度に加熱されてから急冷するまでの間に鋼管の温度が低下または上昇し、加熱された鋼管の組織を完全にオーステナイト化するための時間を十分に確保することができない場合がある。本発明では加熱された鋼管の組織がオーステナイト化を始めるAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を管理する。鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を本発明で規定する範囲内として鋼管に熱処理を行うことにより、加熱された鋼管の組織が完全にオーステナイト化し、得られる鋼管の組織を完全にマルテンサイト化することができる。
焼入れ温度が前記(1)式に規定する範囲を外れてAc3変態点の温度に40℃を加えた温度未満となる場合、後述する実施例の図2で示すように、得られる鋼管の組織が完全にマルテンサイト化せず、強度および靱性が不足する場合がある。一方、焼入れ温度が前記(1)式に規定する範囲を外れて1000℃を超える場合、加熱により鋼管の結晶粒径が粗大化し、得られる鋼管のオーステナイト結晶粒度が低下し、靱性が不足する。
鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間については、焼入れ温度が975℃以上の場合に6秒以下とし、焼入れ温度が975℃未満950℃以上の場合に8秒以下とし、焼入れ温度が950℃未満の場合に9秒以下とする。これは、後述する実施例の図2で示すように、得られる鋼管のオーステナイト結晶粒度が低下し、靱性が不足するのを防止するためである。
高周波誘導加熱を用いた焼入れは、一般的に、鋼管を高周波誘導加熱するコイルと、加熱された鋼管を冷却する冷却帯とを順に配置し、鋼管をローラー等の搬送装置により送り、コイルの中心を通過させて鋼管を焼入れ温度に高周波誘導加熱し、冷却帯を通過させる際に冷却水等を噴射して鋼管を急冷させることにより行われる。なお、鋼管の温度は、高周波誘導加熱装置(加熱コイル)の出側(下流側)に配置した放射温度計を用いて測定される。
この放射温度計により測定される温度は、高周波誘導加熱装置から出た直後の鋼管の温度であって焼入れにおける最高温度であり、焼入れ温度T1に相当する。加熱装置内を通過させて鋼管を高周波誘導加熱すると、鋼管は加熱装置の中でAc3変態点の温度に到達するが、加熱装置の中で鋼管の温度を測定するのは困難である。ここで、鋼管を同一条件で高周波誘導加熱する場合、一般的に、加熱速度は同じパターンとなる。したがって、事前に加熱速度を確認しておけば、高周波誘導加熱される過程の鋼管の温度を焼入れ温度T1(すなわち出側で放射温度計により測定された温度)および加熱速度から推定することができ、鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達した時点を把握することができる。
加熱速度(℃/s)は、直接確認するのが難しいことから、例えば、高周波誘導加熱中の加熱速度を一定であると仮定し、出側で放射温度計により測定された鋼管の温度(℃)と加熱前(入側)の鋼管の温度(℃)との差を、加熱時間(s)で除して導き出すことができる。また、加熱時間は、鋼管の搬送速度と加熱装置の長さから算出できる。
また、加熱装置と冷却帯が順に配置された設備を焼入れに用いる場合、鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間は加熱装置と冷却帯とを配置する際の間隔や搬送装置の送り速度の変更により調整することができる。
本発明の鋼管の製造方法は、熱間製管により得られた素管を冷間加工により所定寸法に仕上げて鋼管とし、当該鋼管に上述の焼入れを施し、その後、Ac1変態点以下の温度で焼戻しを鋼管に施すのが好ましい。前述の通り、冷間加工の後に施される焼入れと焼戻しにより、要求される靱性を確保できることから、鋼材に合金成分を添加する必要がなくなり、熱間製管および冷間加工での薄肉化が容易になるとともに、合金成分の添加による原料コストの上昇を抑制できるからである。
このように本発明の鋼管の製造方法では、高周波誘導加熱を用いて焼入れを鋼管に施すにあたり、焼入れ温度と鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を規定する。これにより、得られる鋼管の組織が完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒が微細化する。このため、得られた鋼管は高強度かつ高靱性であることから、自動車のエアバッグシステムでアキュムレータに用いられるエアバッグ用鋼管に好適である。
試験片に熱処理を施す試験を行い、本発明の鋼管の製造方法による効果を検証した。
[試験方法]
試験は、焼入れ温度に高周波誘導加熱した後に急冷して焼入れ、その後、Ac1変態点以下の温度で焼戻しする熱処理を中実丸棒の試験片に施して行った。熱処理の際に高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を調整し、各試験で0.2〜9秒の範囲でそれぞれ変化させた。また、焼入れ温度は各試験で830〜1050℃の範囲でそれぞれ変化させた。
試験は、焼入れ温度に高周波誘導加熱した後に急冷して焼入れ、その後、Ac1変態点以下の温度で焼戻しする熱処理を中実丸棒の試験片に施して行った。熱処理の際に高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を調整し、各試験で0.2〜9秒の範囲でそれぞれ変化させた。また、焼入れ温度は各試験で830〜1050℃の範囲でそれぞれ変化させた。
本試験での試験条件は下記の通りとした。
試験片:
外径3mm、長さ6mm
材質 C:0.16質量%、Mo:0.01質量%、Cr:0.30質量%、Ni:0.26質量%およびCu:0.25質量%を含有する炭素鋼
Ac3変態点の温度832℃
試験片:
外径3mm、長さ6mm
材質 C:0.16質量%、Mo:0.01質量%、Cr:0.30質量%、Ni:0.26質量%およびCu:0.25質量%を含有する炭素鋼
Ac3変態点の温度832℃
[評価指標]
評価指標として、熱処理を施した試験片の硬度とオーステナイト結晶粒度を測定した。硬度は、JIS Z2244に規定された方法にしたがって、試験力98.07NにてHV10の値を測定した。オーステナイト結晶粒度は、JIS G 0551に記載のBechet−Beaujard法により、上述の熱処理を施した試験片をビクリン酸飽和水溶液で腐食させることで、オーステナイト結晶粒を顕出させ、オーステナイト結晶粒度を評価した。
評価指標として、熱処理を施した試験片の硬度とオーステナイト結晶粒度を測定した。硬度は、JIS Z2244に規定された方法にしたがって、試験力98.07NにてHV10の値を測定した。オーステナイト結晶粒度は、JIS G 0551に記載のBechet−Beaujard法により、上述の熱処理を施した試験片をビクリン酸飽和水溶液で腐食させることで、オーステナイト結晶粒を顕出させ、オーステナイト結晶粒度を評価した。
各試験片では、硬度が380HV以上、オーステナイト結晶粒度が11以上を基準に合否を判定した。硬度の判定基準は、Cを0.16質量%含有する鋼材の組織が95質量%以上マルテンサイト化した場合の硬度である380HVとした。すなわち、硬度が判定基準以上である場合、試験片の組織は完全にマルテンサイト化していると考えられる。
[試験結果]
図2は、焼入れの際の鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間と焼入れ温度が、熱処理が施された試験片の硬度およびオーステナイト結晶粒度に及ぼす影響を示す図である。同図では焼入れの際の鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間(秒)を対数目盛により横軸に、焼入れ温度(℃)を縦軸に示す。また、熱処理が施された試験片の硬度およびオーステナイト結晶粒度がともに基準値以上のものを黒塗りの丸印で、硬度が基準値以上であってオーステナイト結晶粒度が基準値未満のものを白抜きの三角印で、硬度およびオーステナイト結晶粒度がともに基準値未満のものを×印でそれぞれ示す。
図2は、焼入れの際の鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間と焼入れ温度が、熱処理が施された試験片の硬度およびオーステナイト結晶粒度に及ぼす影響を示す図である。同図では焼入れの際の鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間(秒)を対数目盛により横軸に、焼入れ温度(℃)を縦軸に示す。また、熱処理が施された試験片の硬度およびオーステナイト結晶粒度がともに基準値以上のものを黒塗りの丸印で、硬度が基準値以上であってオーステナイト結晶粒度が基準値未満のものを白抜きの三角印で、硬度およびオーステナイト結晶粒度がともに基準値未満のものを×印でそれぞれ示す。
試験片のAc3変態点は温度832℃であることから、焼入れ温度を872℃未満として前記(1)式で規定する範囲外となった場合、図2に示すように、大部分が硬度およびオーステナイト結晶粒度がともに基準値未満となった。一方、焼入れ温度が1000℃を超えて前記(1)式で規定する範囲外となった場合、いずれもオーステナイト結晶粒度が基準値未満となり、一部では硬度も基準値未満となった。
焼入れ温度を1000℃以下975℃以上とし、鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間が6秒を超えた場合と、焼入れ温度を975℃未満950℃以上とし、鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間が8秒を超えた場合とでは、いずれもオーステナイト結晶粒度が基準値未満となった。
一方、焼入れ温度を前記(1)式で規定される範囲内とし、鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を、焼入れ温度が975℃以上の場合に6秒以下とし、焼入れ温度が975℃未満950℃以上の場合に8秒以下とし、焼入れ温度が950℃未満の場合に9秒以下とし、本発明で規定する条件により熱処理が施された試験片は、いずれも硬度およびオーステナイト結晶粒度が基準値以上であった。
これらから、前記(1)式で規定される焼入れ温度に鋼管を加熱し、鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を本発明で規定される範囲にして焼入れを施すことにより、熱処理が施された試験片が基準値以上の硬度およびオーステナイト結晶粒度となることが確認できた。したがって、本発明の鋼管の製造方法により、得られる鋼管の組織を完全にマルテンサイト化でき、結晶粒を微細化できることが明らかになった。
本発明の鋼管の製造方法は、下記の顕著な効果を有する。
(1)鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間および焼入れ温度を規定することにより、得られる鋼管の組織を完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒を微細化することから、高強度かつ高靱性の鋼管を得ることができる。
(2)冷間加工の後に焼入れと焼戻しを施すことにより、熱間製管および冷間加工での薄肉化が容易になるとともに、合金成分の添加による原料コストの上昇を抑制できる。
(1)鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間および焼入れ温度を規定することにより、得られる鋼管の組織を完全にマルテンサイト化するとともに、結晶粒を微細化することから、高強度かつ高靱性の鋼管を得ることができる。
(2)冷間加工の後に焼入れと焼戻しを施すことにより、熱間製管および冷間加工での薄肉化が容易になるとともに、合金成分の添加による原料コストの上昇を抑制できる。
本発明の鋼管の製造方法により、高強度かつ高靱性の鋼管を得ることができるので、自動車のエアバッグシステムでアキュムレータに用いられるエアバッグ用鋼管の製造に有用である。
Claims (3)
- 加熱した後に急冷する焼入れを鋼管に施すにあたり、高周波誘導加熱により下記(1)式で規定される焼入れ温度に加熱し、高周波誘導加熱された鋼管の温度がAc3変態点の温度に到達してから急冷を開始するまでに要する時間を、前記焼入れ温度が975℃以上の場合に6秒以下とし、前記焼入れ温度が975℃未満950℃以上の場合に8秒以下とし、前記焼入れ温度が950℃未満の場合に9秒以下とすることを特徴とする鋼管の製造方法。
TAc3+40℃≦T1≦1000℃ ・・・(1)
ただし、T1は焼入れ温度(℃)、TAc3はAc3変態点の温度(℃)とする。 - 請求項1に記載の鋼管の製造方法において、熱間製管により得られた素管を冷間加工により所定寸法に仕上げて鋼管とし、当該鋼管に前記焼入れを施し、その後、Ac1変態点以下の温度で焼戻しを鋼管に施すことを特徴とする鋼管の製造方法。
- 得られる鋼管がエアバッグ用鋼管であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管の製造方法。
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