JP2007077466A - 急速加熱焼入れ用鋼板とその製造方法 - Google Patents

急速加熱焼入れ用鋼板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 焼入れ前のプレス成形性、急速加熱焼入れ性に優れ、加熱温度が低くても焼入れ後にマルテンサイト組織が得られる鋼板とその製造方法。
【解決手段】 化学組成が、質量%で、C:0.06〜0.25%、Si:0.3%以下、Mn:0.5%〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.1%以下およびN:0.01%以下、場合により、適量のB、Ti、Cr、Mo、W、Niの1種または2種以上、残部Feおよび不純物からなり、フェライト相を主相とし第二相を含有する組織を有し、前記第二相からなるバンド状組織の面積率を6.0%以下とする。上記化学組成を有する鋼塊または鋼片を熱間圧延し、冷圧率(CR)55%以上で冷間圧延し、下記式(1)を満足する均熱温度(TA)で焼鈍することにより製造できる。
c1<(TA)<Ac1+(Ac3−Ac1)(CR−10)/100 ・・・(1)
【選択図】図4

Description

本発明は、プレス加工等により様々な形状に成形した後、焼入れを施して利用される鋼板とその製造方法、特にプレス成形性並びに急速加熱焼き入れ性に優れた鋼板とその製造方法に関する。
自動車の衝突事故の際の、車体破壊のデータが公開され、それが車の売れ行きを支配するなど、搭乗者の安全確保に対するニーズは年々高まってきており、法的規制も厳しくなる傾向にある。自動車の車体は,いわゆるクラッシャブル・ボディー構造が採用され、衝突に際し一部が適度に変形して衝撃を吸収する一方、車室は高強度の構造とし車内の搭乗者を守るように設計される。すなわち、車体には高強度が要求される部位がある。そのような部位には、必要部分に板厚の厚い成形品を用いたり、補強材を取り付けたり、あるいは高強度鋼板を用いて成形したりしている。
しかし、板厚を厚くすることは重量増加につながり、燃費改善ないしは省エネルギーの要求とは相反する。補強にはリブ材のスポット溶接や衝撃吸収用の部品を組み込むが、これも車体重量を増すことになる。また、高強度鋼板は、プレス成形性が劣るため複雑なプレス加工が困難であり、その上、加工による残留応力は強度が高くなるほど増加し、遅れ破壊の危険が増してくるので、その適用ないしは鋼板強度増大には限界がある。
この車体構造の補強に対し、強化が必要な車体の特定部所に適用する鋼板成形部品の板厚を増したり、高強度鋼板を使用したりせず、その所望部分を局所的に高周波加熱して焼入れ処理し、強度を向上させる方法の発明が特許文献1や特許文献2に開示されている。プレス成形後、焼入れし強化するのであれば、高強度鋼板を成形する場合のような、複雑な形状の成形困難とか成形後の大きな残留応力の問題は排除できる。しかしながら、上記公報には高周波焼入れの方法は示されているが、適用する鋼板の種類については具体的な記載がない。
焼入れ用の鋼板には、焼入れ前のプレス成形性が良いことや、焼入れ性が高く、焼入れ後に十分に高強度化することはもちろんのこと、低温、短時間の熱処理により高強度化することが要求される。これは、生産性の向上のみならず、スケール形成の抑制や、めっき鋼板を使用する場合にはめっき被膜の損傷を防止するためである。高周波加熱やレーザー加熱を用いた急速加熱焼入れを行う場合には、炭化物の残存や変態点の上昇が生じるため、加熱温度を低下させることは困難である。
特許文献3や特許文献4には炭化物の球状化率を上げ、平均炭化物粒径を小さくすることにより、焼入れ性及び局部延性を向上させる技術が開示されている。炭化物粒径が小さいので、低温、短時間加熱で高強度化するものと思われる。しかしこれらの技術では長時間、複数回の焼鈍が必要になるので、生産性が著しく劣化する。
また特許文献5にはMnを多量に添加した上、鉄炭化物の平均粒径を小さくすることにより、焼入れ性の安定化を図る技術が開示されている。この方法ではMnによる鋼の焼入れ性は向上し、低温加熱でも高強度化する。しかし鉄炭化物が安定化してしまうため、焼入れ処理時に長時間の加熱をする必要が生じる。
特開平6−116630号公報 特開平10−17933号公報 特開平11−80884号公報 特開平11−140544号公報 特開2003−268489号公報
本発明は上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その課題は焼入れ前のプレス成形性並びに急速加熱焼入れ性に優れた鋼板、具体的には低温焼入れ性、すなわち加熱温度が低くても焼入れ後にマルテンサイトから成る組織が得られ、高強度化する性質に優れた鋼板とその製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題の解決に向けて、焼入れ前の鋼板のミクロ組織と焼入れ処理における鋼板の加熱温度と焼入れ後の鋼板の硬さの関係を明確にするために、以下のような実験を行った。なお、本明細書において、鋼成分の含有量はすべて質量%で表示する。
供試鋼は、質量%で、C:0.10%、Si:0.04%、Mn:1.0%、P:0.011%、S:0.007%、sol. Al:0.021%、N:0.002%、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するものであった。
このような化学組成を有する鋼板を、1240℃に加熱した後、850℃以上の温度範囲で熱間圧延し、550℃で巻き取り、得られた熱延鋼板を酸洗し、45〜90%の冷圧率で冷間圧延した。得られた鋼板を連続焼鈍シミュレーターで、加熱温度650℃から900℃まで加熱し60秒間保持した後、60℃/sで450℃まで冷却し、240s保持した後、室温まで冷却した。
得られた焼鈍板のミクロ組織観察及び急速加熱試験を行った。急速加熱試験は、焼鈍板を通電加熱装置で、加熱速度100℃/sで650〜950℃の温度まで加熱し、目標温度に達した直後に水焼入れを行い、焼入れ後の硬さ測定及びミクロ組織観察を行った。
ミクロ組織観察は圧延方向に沿う断面によって行った。ナイタールで腐食した後、倍率500倍で3視野顕微鏡撮影を行い、画像処理によりバンド状組織の面積率を測定した。ここで圧延方向に平均フェライト粒径の2倍以上にわたり、バンド状に連結した第二相をバンド状組織とみなした。
鋼板の低温焼入れ性は、最高硬さを得るための加熱温度で評価し、Ae3点+30℃以下の加熱温度で最高硬さが得られた場合を良好とした。なおAe3点は下記式から求められる。
ここに、Ae3点はA点の平衡点であって、平衡状態においては当該温度よりも高温であればオーステナイト単相となる温度であり、その後急速冷却することで全面マルテンサイトとなり最高硬さが得られる。しかしながら、実際には、オーステナイト単相となる温度は加熱速度によって平衡点よりも高温側にシフトし、特に急速加熱焼入れの場合にはその傾向が顕著となるため、最高硬さを得るにはAe3点よりも相当高温に加熱する必要が生じる。したがって、最高硬さを得ることが可能な最低加熱温度がAe3点に近いほど急速焼入れ性に優れ好ましいということになる。
e3(℃)=910-203[C%]1/2+45[Si%]-30[Mn%]-20[Cu%]-15[Ni%]-11[Cr%]+32[Mo%]+104[V%]+400[Ti%]+460[Al%]+13[W%]+120[As%]-700[P%]
これらの予備試験の結果、次の(A)ないし(D)のような結果を得て、本発明を完成させた。
(A)図1、2は焼入れ後の硬さと鋼板の加熱温度の関係を示すグラフである。焼入れ後の硬さは、鋼板の加熱温度に伴い上昇し、臨界温度(Tc)でC含有量に応じた最高焼入れ硬さが得られる。
(B)図3はTcとバンド状組織の面積率の関係を示すグラフである。Tcは焼入れ前の鋼板のミクロ組織によって変化し、バンド状組織の面積率(V)が小さい程Tcは低下し、Vを6.0%以下にすれば、TcはAe3点+30℃以下になる。
なおVは、平均フェライト粒径の2倍以上にわたり、圧延方向にバンド状に連結した第二相が組織全体に占める面積率、と定義した。
(C)図4は冷圧率(CR)、均熱温度(TA)とVの関係を示すグラフである。図中、「×」はV>6.0%の場合を、「○」はV≦6.0%の場合を示す。VはCRとTAと相関関係を有し、Vを小さくするためには、Ac1点以上であり、かつ冷圧率に応じた下記式(1)に示す温度範囲内で焼鈍する必要がある。この原因は明らかではないが、以下の理由のためと考えられる。
c1<(TA)<Ac1+(Ac3−Ac1)(CR−10)/100 ・・・(1)
1.焼鈍中にオーステナイト化した部分には冷却後、第二相が生成する。
2.オーステナイトの核生成サイトはCRが高いほど多くなる。
3.TAが高くなるとオーステナイトがバンド状に連結する。
(D)したがって冷圧率を高め、低温で焼鈍することによって、バンド状第二相の生成が抑制され、焼入れ処理における鋼板の加熱温度を低下させることができる。
本発明は以上の知見に基づき、完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.06%以上0.25%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.5%以上1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.1%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライト相を主相とし、第二相を含有する組織を有し、前記第二相からなるバンド状組織の面積率が6.0%以下であることを特徴とする急速加熱焼入れ用鋼板。
(2)前記化学組成が、質量%で、さらに、B:0.003%以下およびTi:0.03%以下からなる群から選ばれる一種または二種を含有することを特徴とする上記(1)に記載の急速加熱焼入れ用鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、さらに、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、W:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれる一種または二種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の急速加熱焼入れ用鋼板。
(4)上記(1)〜(3)の何れかに記載の化学組成を有する鋼塊または鋼片を熱間圧延し、冷圧率(CR)55%以上で冷間圧延し、下記式(1)を満足する均熱温度(TA)で焼鈍することによって、フェライト相を主相とし第二相を含む組織を有し、第二相から成るバンド状組織の面積率を6.0%以下とすることを特徴とする、急速加熱焼入れ用鋼板の製造方法。
c1<(TA)<Ac1+(Ac3−Ac1)(CR−10)/100 ・・・(1)
本発明によれば、プレス成形性に優れ、かつ急速加熱焼入れ時の加熱温度がAe3+30℃以下であっても、焼入れ最高硬さが得られる鋼板およびその製造方法が提供される。
本発明のミクロ組織、鋼成分の化学組成、及び製造条件の限定理由について詳述する。
(1)鋼のミクロ組織
本発明に係る鋼板は、フェライト相を主相とし、第二相を含む組織を有し、組織全体に占めるバンド状組織の面積率を6.0%以下とする。これはバンド状組織の形成を抑制することにより、急速加熱、焼入れによって最高硬さを得るのに必要な加熱温度を、Ae3+30℃以下にできるからである。
第二相としては、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、セメンタイト等を挙げることができるが、焼入れ前の成形性を向上させるために、パーライトまたはセメンタイトであることが望ましい。なお、ここに「主相」とは、体積率が最大である相のことであり、また第二相は、例えばパーライトとセメンタイトの様に二種以上の相または組織を含んでいても良い。また焼入れ前のプレス成形性を向上させるために、第二相全体の面積率を10%以下とすることが好ましい。
(2)鋼の化学組成
C:Cは、焼入れ後の鋼の強度を決定する重要な元素であり、C含有量が低すぎると焼入れ後に十分な強度が得られない。一方、C含有量が高すぎると、焼入れ後の靱性や耐遅れ破壊性が劣化するばかりか、焼入れ前の延性が低下しプレス成形性が損なわれる。したがって、Cの含有量を0.06%以上0.25%以下と定める。好ましい含有量は0.09%超え、0.12%未満である。
Si:Siは、不純物として含有されるが、鋼の焼入れ性を高める作用を有するので、当該作用による効果を目的として含有させることができる。ただし、過剰に含有させると化成処理性やめっき性を劣化させるため、Si含有量は0.3%以下とする。好ましくは0.1%以下である。上記作用による効果を確実に得るには、Si含有量を0.01%以上含有させることが好ましい。
Mn: Mnは、鋼の焼入れ性を確保するために重要な元素であるので0.5%以上含有させる。一方、過剰に含有させると焼入れ前のプレス成形性を劣化させるうえに、炭化物が安定化して焼入れ処理時の加熱時に溶け残りやすくなり、低温焼入れ性が損なわれる場合がある。したがって、Mnの含有量を0.5%以上1.5%以下とする。好ましくは、1.0%以上1.3%以下である。
P:Pは不可避不純物であり、焼入れ前の成形性および焼入れ後の靱性を劣化させる。したがって、含有量は少ないほど好ましく、P含有量を0.03%以下とした。好ましくは0.015%以下である。
S:Sも不可避不純物であり、焼入れ前の成形性および焼入れ後の靱性を劣化させる。したがって、含有量は少ないほど好ましく、S含有量を0.02%以下とした。好ましくは0.01%以下である。
Al:Alは、不純物として含有されるが、製鋼工程で脱酸を目的として添加することもできる。しかし含有量が多すぎると製造コストの上昇を招く。したがってAl含有量を0.1%以下と定めた。好ましくは0.03%以下である。なお、上記脱酸の効果を確実に得るには、Al含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
N:Nは不可避不純物であり、N含有量の増加は焼入れ前の成形性を劣化させる。そのためN含有量を0.01%以下と定めた。好ましくは0.005%以下である。
本発明においては上記元素に加えてさらに次の元素を含有させても良い。
B:Bは焼入れ性を向上させる作用を有するので、当該作用による効果を目的として含有させることができる。しかし、過剰に含有させると焼入れ前の成形性を劣化させる場合があるので、Bの含有量を0.003%以下とすることが好ましい。前記効果はB含有量によらずほぼ一定であるが、前記効果をより確実に得るには0.0003%以上含有させることが好ましい。
Ti:Tiは焼入れ性を向上させる作用を有するとともに、鋼中の固溶Nを析出固定して成形性を向上させる作用を有するので、当該作用による効果を目的として含有させることができる。しかし、過剰に含有させるとTiCの析出量が増し、焼入れ後の強度が低下する場合があるので、Ti含有量を0.03%以下とすることが好ましい。前記効果を確実に得るには0.003%以上含有させることが好ましい。また、TiはBNの析出を抑制する作用を有し、その結果Bによる焼入れ性を高める効果を奏するので、TiとBとを共に含有させることが好ましい。
Cr、Mo、W、Ni
Cr、Mo、W、Niは焼入れ性を向上させる作用を有するので、当該作用による効果を目的として含有させることができる。しかし、過剰に含有させると焼入れ前の成形性を劣化させる場合がある。したがって、各元素の含有量を1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.60%以下である。前記効果を確実に得るには何れかの元素の含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.06%以上とすることがさらに好ましい。
(3)製造条件
前記化学組成を有する鋼は、常法により溶製後、連続鋳造により鋼塊、或いは、鋳造後に分塊圧延して鋼片とする。生産性の観点からは連続鋳造法を用いることが好ましい。
連続鋳造の場合には、鋳造速度が2.0m/min以上では、Mnの中心偏析あるいはV字状偏析が生じやすくなるが、これらの偏析はバンド状組織の形成基点となるため抑制するのがよく、鋳造速度を2.0m/min未満とすることが好ましい。一方、鋳造速度が1.2m/min未満では、鋳片表面部の清浄度が劣化し、さらに生産性も低下するので、鋳造速度を1.2m/min以上とするのが好ましい。
連続鋳造等によって製造された鋼塊また鋼片は、常法にて熱間圧延する。熱間圧延条件は特に限定しないが、熱間圧延工程において炭化物を均一に生成させた方が有利である。そこでバンド状組織の形成を抑制するために、1000〜1300℃として圧延を開始し、仕上げ圧延を850℃以上で行うことが好ましい。また巻取温度は、冷延、焼鈍後の成形性を向上させるためには高い方が望ましいが、高すぎるとスケール生成により歩留まりが低下するので、500℃以上600℃以下で巻き取るのが好ましい。
冷間圧延は、前記熱間圧延により得られた熱延鋼板を酸洗等により脱スケールした後、常法に従って行われる。再結晶焼鈍により良好なプレス成形性を得るために、冷圧率は55%以上とする。
冷間圧延された鋼板は、必要に応じて常法に従って脱脂などの処理が施され、再結晶焼鈍される。この時の均熱温度(TA)は下記式(1)を満足させることとする。これはバンド状組織の形成を防止し、鋼板の低温焼入れ性を向上させるためである。CRは冷圧率(単位:%)である。例えば、650℃〜900℃の温度領域に5s以上保持する。
c1<(TA)<Ac1+(Ac3−Ac1)(CR−10)/100 ・・・(1)
均熱温度以外は特に規定しないが、生産性を向上させるためには、連続焼鈍ラインで焼鈍し、均熱時間は2分未満とすることが好ましく、また焼鈍後の冷却時にバンド状組織が生成することを防ぐために、均熱後650℃から450℃までの平均冷却速度を60℃/s以上とすることが好ましい。
本発明の方法に従って製造される鋼板は、これを母材として電気めっきを施したり、塗装鋼板にして用いることもできる。また、冷間圧延後の鋼板を、溶融めっき装置に装備されている加熱炉で焼鈍し、溶融めっきして、めっき鋼板にしてもかまわない。
このようにして得られた本発明にかかる鋼板は、必要によりさらに小片に分割され、プレス成形などにより所定の形状が付与されてから、急速加熱焼入れが行われ、さらに必要により焼鈍処理を経て、最終製品とする。このときの「急速加熱焼入れ」は、具体的には、高周波焼入れ、レーザ加熱焼入れ、通電加熱焼入れなどを指し示すが、一般には高周波焼入れの条件での焼入れ処理を示す。
そのような急速加熱焼入れを行う車体部位としては、高強度化を図ることで車体軽量化を図ることができる部位であればいずれであってもよく、例えば、ピラー、ドアビーム、ルーフやバンパのレインフォースなどがある。このときの焼入れは、成形前の鋼板に局部焼入れの形態で行ってもよく、組立て前の部品に全体または局部焼入れの形態で行ってもよく、あるいは組立て後に局部焼入れの形態で行ってもよい。
本発明によれば、急速加熱焼入れ性、つまり低温焼入れが可能となり、実用上の利益は大きい。そのような効果を実現する機構について明らかでないが、次のように推測される。
焼入れ可能な加熱温度は、加熱中のオーステナイト変態完了温度によって決定される。オーステナイト変態は、加熱温度がA点に達した段階で炭化物からオーステナイト核が生成し、加熱温度の上昇に伴ってオーステナイトが成長することによって完了する。バンド状組織の形成は、オーステナイト核生成サイトが偏在していることを意味するため、バンド状組織の面積率が高い程、オーステナイト変態完了が遅延する。従って、本発明の様にバンド状組織の形成を抑制すれば、加熱中のオーステナイト核生成が均一分散して生じ、オーステナイト変態が速やかに完了するため、焼入れ可能温度も低温化すると考えられる。
本発明の実施例について以下に説明する。
(実施例1)
実験用真空溶解炉を用い、表1に示す組成の鋼を溶製した。鋼組成としては、C:0.1%、Mn:1.0%、Si:0.04%、P:0.012%、S:0.005%、Al:0.02%、N:0.002%を目標基準組成とし、成分量の影響を見るため、C、Mn、B、Ti、Cr、Mo、W、およびNiのそれぞれについて、他の成分を一定として変化させた。
これらの鋳塊を鍛造して20mm厚の熱間圧延用スラブとし、1200℃に均熱後、熱間圧延をおこなって4mm厚に仕上げ、強制空冷あるいは水スプレーによるホットストリップミルを想定した冷却条件にて600℃まで冷却し、直ちに得られた鋼板をそれぞれこの温度に保定した炉に投入して、巻取り後のコイルを想定した条件にて冷却した。これらの熱延鋼板を、表面の脱スケール後に冷間圧延を行って1mm厚に仕上げ、連続焼鈍シミュレーターによって焼鈍温度750℃にて連続焼鈍を模擬した焼鈍を行った。
各鋼板から、厚さ1mm、幅100mm、長さ490mmの試験片を採取し、出力200kW、周波数10kHzの高周波焼入れ装置により、加熱温度950℃、2秒間保持後水冷の条件にて焼入れ処理をおこなった。その後、JIS5号引張試験片に成形し、引張試験に供した。
本発明において、「プレス成形性」は引張強さをもって評価し、それが500MPa以下である場合に、「プレス成形性に優れている」とした。また、「急速加熱焼入れ性」は、急速加熱焼入れ試験において最高硬さを得ることができる最低加熱温度でもって評価し、それがAe3+30℃以下である場合に、「急速加熱焼入れ性に優れている」とした。
焼入れ前後の引張試験結果を表2にそれぞれ示す。
Figure 2007077466
Figure 2007077466
鋼種No.1〜4の結果から、C含有量が少ないと焼入れ後に十分な強度が得られず、多すぎると靱性が劣化するが、本発明の範囲内とすれば、加工前に十分な成形性を有し、焼入れ後の強度と靱性を満足することがわかる。
鋼種No.5〜8の結果から、Mn含有量の増加とともに、焼入れ前の素材の状態では伸びが低下し加工性が悪くなるが、本発明範囲内とすれば、加工前の伸びは十分大きく、焼入れ後の強度も大きいことがわかる。
鋼種No.9〜14の結果からB、Ti、Cr、Mo、W、Niを添加しても、焼入れ前強度及び焼入れ後強度、靱性に悪影響を与えないことが分かる。
(実施例2)
表1の鋼種No.2または3の組成を持つ鋼を、鋳造速度1.5m/minで連続鋳造してスラブとした後、850℃以上の温度範囲で熱間圧延を行い、冷却して600℃で巻き取り、熱延板を得た。得られた熱延板を板厚2〜12mmまで研削し冷延して、圧下率が異なる板厚1.2mmの鋼板を作成した。
作成した鋼板を連続焼鈍シミュレーターによって、表3の条件で焼鈍し、室温まで冷却した後、断面ミクロ組織写真を撮影し、画像解析ソフトを用いてバンド状炭化物の面積率Vを測定した。Vを測定した鋼板を、種々の温度まで急速加熱、急冷した後、断面硬さ測定を行った。バンド状炭化物率Vと冷圧率、均熱温度の関係を表3に示す。
Figure 2007077466
本発明の範囲内で製造された鋼板(試番5、6、9、10、11、13、14、15、21、25、26、29、30)は、バンド状炭化物の面積率(パーライト率、V)が6.0%以下であった。
これらの鋼板を、種々の温度まで急速加熱、急冷し、焼入れ後の硬さ測定を行った。Vと各加熱温度での焼入れ後の硬さを表4に示す。Vが6.0%以下の鋼板はAe3+30℃の加熱で最高硬さが得られるが、6.0%以上の鋼板は、Ae3+30℃の加熱では最高硬さに到達しなかった。
Figure 2007077466
焼入れ後の硬さに及ぼす加熱温度の影響(V:1.8%)を示すグラフである。 焼入れ後の硬さに及ぼす加熱温度の影響(V:7.9%)を示すグラフである。 バンド状炭化物率Vと、焼入れ後に最高硬さを得るための必要加熱温度Tcの関係を示すグラフである。 バンド状炭化物率Vが6.0%以下になる、冷圧率と焼鈍温度の範囲を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.06%以上0.25%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.5%以上1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.1%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライト相を主相とし、第二相を含有する組織を有し、前記第二相からなるバンド状組織の面積率が6.0%以下であることを特徴とする急速加熱焼入れ用鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、さらに、B:0.003%以下およびTi:0.03%以下からなる群から選ばれる一種または二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の急速加熱焼入れ用鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、さらに、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、W:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれる一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の急速加熱焼入れ用鋼板。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の化学組成を有する鋼塊または鋼片を熱間圧延し、冷圧率(CR)55%以上で冷間圧延し、下記式(1)を満足する均熱温度(TA)で焼鈍することによって、フェライト相を主相とし第二相を含む組織を有し、第二相から成るバンド状組織の面積率を6.0%以下とすることを特徴とする、急速加熱焼入れ用鋼板の製造方法。
    c1<(TA)<Ac1+(Ac3−Ac1)(CR−10)/100 ・・・(1)
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