JPH0657375A - 超高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

超高張力冷延鋼板およびその製造方法

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JPH0657375A
JPH0657375A JP21170792A JP21170792A JPH0657375A JP H0657375 A JPH0657375 A JP H0657375A JP 21170792 A JP21170792 A JP 21170792A JP 21170792 A JP21170792 A JP 21170792A JP H0657375 A JPH0657375 A JP H0657375A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐遅れ破壊性に優れ、例えば自動車ドアーガ
ードバーに使用される、引張強さが1180N/mm2 以上の超
高張力冷延鋼板を提供する。 【構成】 C:0.10〜0.20%、Cr:0.50超〜1.3 %以
下、Mo:0.20%以上1.0 %かつCr+Mo:0.70〜1.50%を
含有し、ベイナイト主体の組織を有する超高張力冷延鋼
板。ベイナイトを主体とする微細かつ均一な組織である
ため、破壊現象の元となる亀裂の伝播経路が増加して破
壊の吸収エネルギーが増加するとともに硬質な第2相や
鋼中析出物への水素の集中を抑制することができ、耐遅
れ破壊性に優れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば自動車ドアーガ
ードバー等に使用される、引張強さが1180N/mm2 以上の
超高張力冷延鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、交通事故の増加に伴って自動
車の安全性向上に対する要求が高まっており、特に、側
方衝突時における車体の衝突強度を確保するために、ド
アーガードバーの使用量が増加してきている。一方、自
動車の燃費や動力性能の向上を目的とした軽量化の必要
性から、自動車の車体各部を構成する鋼板の薄肉高強度
化も平行して推進されている。
【0003】例えばドアガードバーには、従来は590 〜
780 N/mm2 級の冷延鋼板が使用されていた。しかし、安
全性や軽量化に対するこのような環境の変化に伴って、
近年では980 〜1470N/mm2 級の高張力冷延鋼板が使用さ
れるようになってきており、最近では、特にTS≧1180N/
mm2 の超高張力冷延鋼板が多用されるようになってき
た。
【0004】しかし、この超高張力冷延鋼板は高張力化
に伴って成形性が低下する傾向にある。そこで、成形性
を確保する技術が種々提案されている。例えば、特開昭
63−14817 号公報には、C:0.03〜0.20% (以下、本明
細書においては特にことわりがない限り「%」は「重量
%」を意味するものとする) 、Si:0.3 〜1.5 %、Mn:
0.5 〜2.6 %を基本成分とし、さらに必要に応じてTi:
0.01〜0.25%およびNb:0.01〜0.3 %の1種または2種
に加えてB:0.0003〜0.01%を含有し、残部Feおよび不
可避的不純物からなる鋼に、特定の条件で、熱間圧延、
熱処理、冷間圧延、焼鈍、急冷および過時効処理を行う
ことにより、785〜1470N/mm2 の引張強さを有する曲げ
特性の優れた高強度薄鋼板を製造する技術が、特開平3
−277742号公報には、C:0.08〜0.20%、Mn:1.5 〜3.
5 %、Cr:0.15〜0.50%、Al:0.01〜0.10%を含み、か
つ、Mo:0.02〜0.20%、V:0.015 〜0.150 %、Ti:0.
01〜0.10%およびNb:0.01〜0.10%のうちから選んだ1
種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物の鋼組成からなるとともにベイナイト主体の組織を有
する、TS≧1176N/mm2 であって伸びフランジ性に優れた
超高張力冷延鋼板が、さらに特開平3−277743号公報に
は、C:0.08〜0.20%、Si:0.1 〜1.5 %、Mn:1.5 〜
3.5 %、Cr:0.15〜0.50%、Al:0.01〜0.10%を含み、
かつ、Mo:0.02〜0.20%、V:0.015 〜0.150 %、Ti:
0.01〜0.10%およびNb:0.01〜0.10%のうちから選んだ
1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不
純物の鋼組成からなるとともに残留オーステナイトを含
むマルテンサイトとフェライトとの複合組織を有する、
TS≧1176N/mm2 、El:14%以上で伸び・強度バランスに
優れ、YR≦60%、BH≧167N/mm2で加工性、BH性に富み、
優れた溶接性を備えた超高張力冷延鋼板が、それぞれ提
案されている。
【0005】しかし、これらの提案は、いずれも曲げ特
性や延性といった成形性の向上を主目的としたものであ
り、遅れ破壊の抑制については全く考慮されていない。
特にTS≧1180N/mm2 の超高張力冷延鋼板では、これらの
提案によっても成形性を充分に確保できるものではなく
所定の形状のドアガードバーを製造することは容易では
ない。
【0006】そこで、従来は冷延鋼板をハット状に成形
していたものを、最近では冷延鋼板を曲げ成形によりパ
イプ状にし、端部をアーク溶接してパイプ形状にするド
アガードバーが提案されている。さらに防錆力向上の観
点から電気亜鉛メッキ鋼板を使用することも検討されて
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者の検
討結果によれば、TS≧1180N/mm2 の超高張力鋼からなる
パイプ状部材にアーク溶接や電気亜鉛メッキを行うと、
アーク溶接時または電気亜鉛メッキ時に、パイプ状部材
の内部に水素が侵入して遅れ破壊が発生し易く、補強部
材たるドアーガードバーとしては早急に改善する必要が
あることがわかった。
【0008】ここに、本発明の目的は、アーク溶接や電
気亜鉛メッキが行われる超高張力冷延鋼板において発生
する遅れ破壊を防止することにあり、より具体的には耐
遅れ破壊性に優れ、例えば自動車ドアーガードバーに使
用される、引張強さが1180N/mm2 以上の超高張力冷延鋼
板およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】周知のように、遅れ破壊
は、高張力鋼において水素が転位、空孔、粒界などの欠
陥部へ拡散して材料を脆化させ、応力が付与された状態
で破壊を生じる現象である。例えば、残留応力が材料に
存在すると、硬質なマルテンサイトを主体とする硬質な
第2相や鋼中析出物に応力が集中するが、これらへ鋼中
の水素が集中することにより、遅れ破壊が発生する。高
張力鋼では、材料の強度を上昇させるために硬質な第2
相や析出物を多量に含有するため、高張力鋼ほど遅れ破
壊が発生し易いとされている。
【0010】本発明者は、このような基礎的事項に基づ
き鋭意検討を重ねた結果、C:0.10〜0.20%、Cr:0.50
超〜1.3 %、Mo:0.20〜1.0 %、Cr+Mo:0.70〜1.50%
を含有する超高張力冷延鋼板用鋼に、熱間圧延、巻取
り、冷間圧延、連続焼鈍、急冷および過時効処理を特定
の条件で行うことによりベイナイトを主体とする微細か
つ均一な組織とすることができ、破壊現象の元となる亀
裂の伝播経路が増加して破壊の吸収エネルギーが増加す
るとともに硬質な第2相や鋼中析出物への水素の集中を
抑制することができ、耐遅れ破壊性に優れた超高張力冷
延鋼板を製造できることを知見して、本発明を完成し
た。
【0011】ここに、本発明の要旨とするところは、
C:0.10〜0.20%、Si:0.50%以下、 Mn:1.50〜3.00
%、P:0.030 %以下、S:0.003 %以下、Al:0.01〜
0.10%、Cr:0.50超〜1.3 %以下、Mo:0.20〜1.0 %か
つ、Cr+Mo:0.70〜1.50%、残部Feおよび不可避的不純
物からなる鋼組成を有し、ベイナイト主体の組織を有す
ることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた超高張力冷延
鋼板である。
【0012】この超高張力冷延鋼板は、C:0.10〜0.20
%、Si:0.50%以下、 Mn:1.50〜3.00%、P:0.030
%以下、S:0.003 %以下、Al:0.01〜0.10%、Cr:0.
50超〜1.3 %以下、Mo:0.20〜1.0 %かつ、Cr+Mo:0.
70〜1.50%を含有する鋼組成を有する鋼に、Ar3 変態点
以上の仕上げ温度で熱間圧延を行い、600 〜700 ℃の温
度域で巻取った後、酸洗および冷間圧延を行い、800 〜
900℃の温度域に20〜200 秒間保持する条件で連続焼鈍
を行い、600 〜700 ℃の温度域から60〜250 ℃/秒の冷
却速度で急冷を行い、さらに、250 〜350 ℃の温度域に
60〜600 秒間保持する条件で過時効処理を行うことによ
り提供される。
【0013】
【作用】以下、本発明を作用効果とともに詳述する。ま
ず、本発明にかかる超高張力冷延鋼板の組成を限定する
理由を説明する。
【0014】C:Cは、強度の確保に有効な元素であ
り、C含有量が0.10%未満であると強度の目標値である
TS≧1180N/mm2 を確保するのに必要なマルテンサイト量
やベイトナイト量が不足する。一方、C含有量が0.20%
超であると、パイプ状のドアーガードバーを溶接により
組立てる場合の溶接部の強度が不足する。そこで、C含
有量は、0.10%以上0.20%以下と限定する。
【0015】Si:Siは、材料の焼入れ性を向上させる元
素であり超高張力冷延鋼板の製造には有効である。しか
し、0.50%超添加すると、フェライトの生成も促進する
ために組織の2相化が促進され、マルテンサイトを主体
とする硬質な第2相への水素の集中が起こり、遅れ破壊
の発生を助長する。そこで、Si含有量は、0.50%以下に
限定する。
【0016】Mn:Mnは、強度確保に有効な元素であり、
Mn含有量が1.50%未満であると所望の強度が得られな
い。一方、Mn含有量が3.00%超であると展伸状のMnS が
生成され易くなり、遅れ破壊の発生原因の一つとなる。
そこで、Mn含有量は、1.50%以上3.00%以下と限定す
る。
【0017】P:Pは、特に高強度材では靱性の低下を
招き、冷間圧延の際に脆性破壊を生じる恐れがある元素
であるため、可及的少ないことが望ましい。しかし、そ
の低減にはコストを要し、また0.030 %程度の含有は許
容される。そこで、P含有量は0.030 %以下に限定す
る。
【0018】S:遅れ破壊の発生防止には、展伸状のMn
Sを可及的低減することが重要であり、S含有量が0.00
3 %超になるとMnSが発生する。そこで、S含有量は0.
003 %以下と限定する。
【0019】Al:Alは、鋼の清浄度向上を目的とする脱
酸のために0.01%以上添加するが、0.10%程度含有すれ
ば脱酸効果は充分に確保され、0.10%を越えて添加して
もコスト増になるだけである。そこで、Al含有量は0.01
%以上0.10%以下と限定する。
【0020】Cr、Mo、Cr+Mo:Cr、Moは、ともに本発明
の作用効果を奏するために極めて重要な元素であり、特
にこれらの元素を複合添加する。遅れ破壊は、前述のよ
うに、素地に比較して硬質な第2相や析出物が存在する
場合に発生し易い。一方、一般的に結晶粒界に沿って破
壊 (クラック) は進行し易い。CrやMoを添加すると、ベ
イトナイトを主体とする微細かつ均一な組織が得られる
ため、水素の集中源がなくなるとともに破壊の進行経路
となる粒界面積が増加するため、破壊の吸収エネルギー
が増加し、遅れ破壊の発生が抑制される。さらにその機
構は不明であるが、Moは鋼中への水素の侵入を防止す
る。
【0021】このように遅れ破壊の発生を抑制するため
には、Cr+Moで0.70%以上の添加が必要であるが、1.50
%を超えるとその効果は飽和し、コスト上昇を招く。そ
こで、Cr+Moは、0.70%以上1.50%以下と限定する。
【0022】また、Moは、Crに比較すると少量であって
も遅れ破壊の抑制効果を示し、0.20%程度の含有量であ
っても、Cr+Mo:0.70〜1.50%の範囲であれば遅れ破壊
は抑制される。したがって、Mo含有量の下限は0.20%と
する。一方、Moは高価な合金元素であり、1.0 %超含有
してもコスト増となるだけである。そこで、Mo含有量は
0.20%以上1.0 %以下と限定する。
【0023】Crは、0.50%以下の含有量であると均一な
組織が得にくくなり、一方1.3 %超の含有量であるとそ
の効果が飽和し、かえってコスト上昇をまねくだけであ
る。そこで、Cr含有量は、0.50%超1.3 %以下と限定す
る。上記以外の組成は、Feおよび不可避的不純物であ
る。
【0024】また、本発明にかかる超高張力冷延鋼板
は、ベイトナイトを主体とする微細かつ均一な組織を有
する。ベイナイト量は、面積率で50%以上である。ま
た、微細とは本発明により得られる程度をいうが、これ
は結晶粒度番号では11番以上に相当する。さらに、均一
とは本発明により得られる程度の均一さを意味し、これ
は板厚・板幅方向の組織差 (ベイナイト比率) がほとん
どないということを意味する。ベイナイト以外には、マ
ルテンサイト、フェライトを有するが、それぞれの量は
面積率で10〜40%、0〜5%である。次に、以上の鋼組
成および組織を有する本発明にかかる超高張力冷延鋼板
の製造方法を説明する。
【0025】C:0.10〜0.20%、Si:0.50%以下、 M
n:1.50〜3.00%、P:0.030 %以下、S:0.003 %以
下、Al:0.01〜0.10%、Cr:0.50超〜1.3 %以下、Mo:
0.20%以上1.0 %かつ、Cr+Mo:0.70〜1.50%を含有す
る鋼組成を有する鋼、例えばC:0.10〜0.20%、Si:0.
50%以下、 Mn:1.50〜3.00%、P:0.030 %以下、
S:0.003 %以下、Al:0.01〜0.10%、Cr:0.50超〜1.
3 %以下、Mo:0.20%以上1.0 %かつ、Cr+Mo:0.70〜
1.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を
有する鋼に、Ar3 変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延を
行う。熱間圧延の仕上げ温度をAr3 変態点以上と限定す
るのは、超高張力鋼は熱間圧延時に変形抵抗が大きく、
特に仕上げ温度がAr3 変態点未満になると急激に変形抵
抗が増加し、熱間圧延を行うことが困難となるからであ
る。望ましくは870 ℃以上950 ℃以下である。
【0026】熱間圧延を終了した後、600 〜700 ℃の温
度域で巻取る。巻取温度が600 ℃未満であると熱延鋼板
が硬質化し、後続する冷間圧延が困難になる。一方、70
0 ℃を超える巻取り温度ではバンド組織が発生して、冷
間圧延−焼鈍後も板厚方向に不均一な組織ができ、遅れ
破壊を助長する。そこで、巻取り温度は、600 ℃以上70
0 ℃以下と限定する。巻取り後は、通常の工程にしたが
って酸洗および冷間圧延を行う。これらの条件は本発明
では特に限定を要さない。
【0027】冷間圧延後には、800 〜900 ℃の温度域に
20〜200 秒間保持する条件で連続焼鈍を行う。本発明で
は、耐遅れ破壊性の改善のため微細かつ均一な組織とす
ることが重要であり、連続焼鈍はできるだけオーステナ
イト単相域で行うことが望ましい。しかし、焼鈍温度が
高過ぎると、または焼鈍時間が長過ぎると、オーステナ
イト結晶粒の一部が粗大化し均一な組織が得られなくな
る。そこで、微細で均一な組織を得るために、連続焼鈍
温度:800 ℃以上900 ℃以下、保持時間:20秒以上200
秒以下の条件で連続焼鈍を行う。
【0028】このような条件で連続焼鈍を行った後、60
0 〜700 ℃の温度域から60〜250 ℃/秒の冷却速度で急
冷を行う。連続焼鈍後の冷却は、600 ℃以上700 ℃以下
の温度域から急冷を開始する。冷却速度は60〜250 ℃/
秒である。冷却条件をこのように限定したのは、本発明
の特徴であるCr、Moが冷却中に炭化物を形成し、これが
水素の集中源となることを避けるためである。これらの
炭化物は500 〜600 ℃の温度域で形成され易いため、炭
化物の形成を防止するためには500 〜600 ℃の温度域を
できるだけ短時間で冷却する。このためには、600 ℃以
上の温度域から60℃/秒以上の冷却速度で冷却する必要
がある。一方、700 ℃超の温度域から急冷すると、冷却
中にコイルの平坦度が低下し連続焼鈍工程での通板が困
難になる。そこで、本発明では、600 ℃以上700 ℃以下
の温度域から60℃/秒以上の冷却速度で冷却する。な
お、冷却速度の上限を250 ℃/秒以下としたのは、冷却
速度が250 ℃/秒超であると冷却手段として水冷を行う
ことになるが、これでは冷却終了温度の制御が困難とな
るからである。
【0029】急冷の終了温度は、その後に続く過時効処
理において、微細なベイトナイト組織を得るために、25
0 ℃以上350 ℃以下の温度域とすることが望ましい。急
冷終了後に、250 〜350 ℃の温度域に60〜600 秒間保持
する条件で過時効処理を行う。耐遅れ破壊性の改善のた
めに非常に微細で均一な組織とするが、そのためには急
冷後に過時効処理を続けて行う必要がある。
【0030】処理温度を250 ℃以上350 ℃以下と限定す
るのは、350 ℃を超える保持温度では組織が粗大になり
過ぎ、一方250 ℃未満の温度域ではマルテンサイトの比
率が増加するために組織が不均一になる。また、過時効
処理を安定に行うためには60秒間以上の保持時間が必要
であり、一方600 秒間を超えて保持すると、連続焼鈍の
通板速度が低下することになり、工程全体としての能率
が低下してしまう。そこで、本発明では、過時効処理時
間は60秒以上600 秒以下と限定する。
【0031】このようにして、本発明にかかる超高張力
冷延鋼板は製造される。以下、本発明を実施例を参照し
ながら詳述するが、これは本発明の例示であり、これに
より本発明が限定されるものではない。
【0032】
【実施例1】真空溶解炉を用いて、C:0.12 %、Si:0.4
7 %、Mn:2.04 %、P:0.010%、S:0.001%、Al:0.03
%の鋼をベースに、Crを0.01〜1.45%の範囲で、Moを0.
005〜1.05%の範囲でそれぞれ変化させたインゴットを
鋳込み、厚さ50mmまで鍛造し、最終圧延温度 (仕上げ温
度):920 ℃で4.0 mmの板厚まで熱間圧延した後、630℃
までスプレー冷却して急冷しその後箱型炉にて660 ℃×
4h の条件で均熱後炉冷を行うという巻き取り相当の熱
処理を行った。
【0033】得られた試片の表・裏面を研削し、板厚2.
4 mmとした後、冷間圧延でさらに1.2 mmの板厚の冷延鋼
板とした。冷間圧延した試片は、連続焼鈍シミュレータ
ーにより、図1に示すヒートサイクル (連続焼鈍:850
℃×40秒、急冷:700 ℃から100 ℃/秒で、過時効処
理:300 ℃×120 秒) で熱処理を行って超高張力冷延鋼
板とし、その耐遅れ破壊性を調査した。
【0034】なお、耐遅れ破壊性は、図2に示す4点曲
げ試験を行うことにより、破壊発生までの時間を測定す
ることによって評価した。すなわち、図2(a)に示すよう
に全長68mm、幅6.0 mmの試験片を切り出し、長手方向中
央に板厚方向側面 (曲げ時凸側) から、幅0.2 mm×深さ
1.0 mm×先端R 0.1mmのノッチを作成し、これを55℃に
加熱した水道水中に保持し、ノッチを中央として上方か
ら10mm間隔、下方から60mm間隔の4点荷重を250 N/mm2
で付加し (図2(b)参照) 、ボルトを固定した。このと
き、試験片ノッチ近傍では曲げ凸側で歪み率0.24%の伸
び歪みが付与されていることになる。
【0035】試験結果を図3にグラフで示す。図3か
ら、遅れ破壊の改善にはCrおよびMoの特定量での複合添
加が有効であることがわかる。なお、本試験方法におい
て遅れ破壊発生時間が200 時間以上であれば、自動車の
ドアーガードバーとして使用しても実用上問題ないと考
えられ、これを達成するには、Cr+Mo≧0.7 %でよいこ
とがわかる。特に、MoはCrに比較して少量の添加量で遅
れ破壊を改善でき、0.2%以上の微量添加でも効果があ
ることがわかる。
【0036】
【実施例2】表1に示す鋼組成を有する鋼片1〜12に、
下記の製造条件により、熱間圧延、巻取り、酸洗、冷間
圧延、連続焼鈍、急冷、過時効処理および調質圧延を行
って、超高張力冷延鋼板を製造した。
【0037】〔製鋼〕 転炉→真空脱ガス(RH): 成分調整→連続鋳造: 鋳込み→
スラブ製造 240t(mm) 〔熱間圧延〕 加熱:1200〜1220℃、仕上げ: 870〜 900℃、巻取り:
630〜 660℃、板厚:2.4 mm 〔酸洗、冷間圧延〕従来通りの工程、板厚:1.2mm 〔連続焼鈍、急冷、過時効処理〕条件は表1参照 〔調質圧延〕 圧下率: 0.3〜0.5 % このようにして製造した超高張力冷延鋼板1ないし12か
ら、JIS 5 号試片を切り出し、引張試験を行ってYP、TS
およびElを測定するとともに、前述の実施例1と全く同
様にして耐遅れ破壊性を測定した。結果を表2にまとめ
て示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】表2から、本発明により製造された試料の
すべてが、遅れ破壊発生時間:200時間超となってい
る。これに対し、本発明の範囲を満足しない比較例であ
る試料No.7〜12は遅れ破壊発生時間:200 時間未満であ
る。したがって、本発明により、超高張力冷延鋼板の耐
遅れ破壊性が大幅に改善され、自動車ドアーガードバー
として使用できることがわかる。
【0041】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明により、超
高張力冷延鋼板の耐遅れ破壊性を改善することが可能と
なる。したがって、ドアーインナーパネルに接合される
ドアーガードバーの遅れ破壊の発生を抑制ないしは解消
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における熱処理条件を示すヒートサイ
クルである。
【図2】実施例における耐遅れ破壊性の測定試験法の説
明図であり、図2(a)は荷重負荷位置を、図2(b)は荷重負
荷時をそれぞれ示す。
【図3】実施例1の結果を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.50
    %以下、 Mn:1.50〜3.00%、P:0.030 %以下、S:
    0.003 %以下、Al:0.01〜0.10%、Cr:0.50超〜1.3 %
    以下、Mo:0.20〜1.0 %かつ、Cr+Mo:0.70〜1.50%、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、ベ
    イナイト主体の組織を有することを特徴とする耐遅れ破
    壊性に優れた超高張力冷延鋼板。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.50
    %以下、 Mn:1.50〜3.00%、P:0.030 %以下、S:
    0.003 %以下、Al:0.01〜0.10%、Cr:0.50超〜1.3 %
    以下、Mo:0.20〜1.0 %かつ、Cr+Mo:0.70〜1.50%を
    含有する鋼組成を有する鋼に、Ar3 変態点以上の仕上げ
    温度で熱間圧延を行い、600 〜700 ℃の温度域で巻取っ
    た後、酸洗および冷間圧延を行い、800 〜900℃の温度
    域に20〜200 秒間保持する条件で連続焼鈍を行い、600
    〜700 ℃の温度域から60〜250 ℃/秒の冷却速度で急冷
    を行い、さらに、250 〜350 ℃の温度域に60〜600 秒間
    保持する条件で過時効処理を行うことを特徴とする耐遅
    れ破壊性に優れた超高張力冷延鋼板の製造方法。
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