JP2010131174A - ミシン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縫い針108を上下動させるミシンモータ2aと、縫製時に被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえ29と、縫い針に同期して中押さえに上下動させる中押さえ上下動機構M1と、中押さえモータ42により中押さえの下死点高さを調整する中押さえ高さ調節機構M4と、中押さえの下降接触時の押圧により中押さえが停止するように中押さえモータを制御する中押さえ高さ制御手段73と、中押さえの下降接触による中押さえモータの出力軸の状態変化時の中押さえの高さから被縫製物の厚さを求める厚さ取得処理手段73と、縫製パターンデータに針数の順番に対応づけて被縫製物の厚さを記録する厚さ記録手段73とを備えている。
【選択図】図14
Description
そこで、従来のミシンは、ミシンモータとは別に中押さえを上下動させることで中押さえの上下動の下死点高さを調節するステッピングモータを備え、非縫製時であってパターンデータの入力設定作業時において、パターンデータに従って試験動作を行って予め被縫製物に接触するか否かを確認して、接触しないように各針毎の中押さえの下死点高さの設定作業を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
また、従来のミシンは、布厚に応じた縫製を行うことができても布の硬さまでは対応することはできないという問題もあった。
本発明は、作業負担が少なく、被縫製物を保護しつつ中押さえとの干渉を回避可能とすることを、その目的とする。
そして、中押さえの停止状態により中押さえモータの出力軸が角度変化を生じるので、モータ軸角度検出手段により、中押さえと被縫製物との接触の発生を検出するができ、当該接触時における中押さえの検出角度から高さを求め、さらに、被縫製物の厚さを求めることができる。
また、上記発明は、中押さえを被縫製物に当接させて被縫製物の厚さ検出を行うので、被縫製物のふかつきを押さえた正確な布厚を検出することができる。
また、ティーチングの場合には、中押さえの上下動を中押さえモータの駆動のみにより行い、下降方向への駆動トルクを接触時に生じる押圧力に抗することができない大きさ(上昇時の中押さえモータの駆動トルクの大きさよりも小さくする)とすることで、被縫製物への接触時に中押さえモータの出力軸に回転を生じさせるようにする。 従って、厚さ取得処理手段による「出力軸の角度変化」とは、実縫製の場合には、[出力軸停止→出力軸回転]となる変化を生じた時を示し、ティーチングの場合には、[出力軸回転→出力軸停止]となる変化を生じた時を示すものとする。
なお、本願発明は、布厚検出器を不要とすることができるが、中押さえモータのモータ軸角度検出手段が必須となる。しかしながら、中押さえモータのモータ軸角度検出手段は、布厚検出に限らず、用途の汎用性が高く、例えば、中押さえモータの脱調等を防ぐための動作制御や偏差を監視してトルクの大小を切り換えるなどの省電力制御に用いるなど他の用途との併用も可能であるため、モータ軸角度検出手段をこれらの用途にも用いることにより部品点数の増加とはならない。さらに、中押さえモータの出力軸の軸角度が検出できればよいので、布厚検出器のように針棒周囲に設ける必要がなく、針棒周囲のスペースを広く作業空間として確保することが可能となると共にミシンの針棒周囲に他の機構や部材を搭載する妨げとならない。
また、高さ可変制御における中押さえモータのトルクは、中押さえによる被縫製物への接触圧を0若しくは極力低減することが望ましいが、中押さえの下降動作を安定して行うための最小限の圧力が生じていても良い。
また、上記「高さ可変制御」と「厚さ取得処理」とは、実際の縫製時において下降動作を行う中押さえに対して実施しても良いし、後述する再現動作(ティーチング)時に下降動作を行う中押さえに対して実施しても良い。
なお、中押さえ上下動機構はミシンモータを駆動源とするため、上記確認動作では、中押さえはミシンモータによる上下動を行うことができないので、中押さえモータによる下死点位置の上下移動調節機能を利用して毎針毎に中押さえを下降させる。
なお、上記制御は、実縫製の場合には、保持トルクを徐々に高め、ティーチングの場合には、下降方向の駆動トルクを徐々に高めるようにトルク制御が行われる。
なお、トルクそのものを記録しても良いし、硬さまで求めても良いが、硬さを求める場合には、トルク値と被縫製物の硬さとの関係は、予め計測等により求めてそれを記憶するテーブルを用いても良いし、対応関係を数式化し、演算により求めても良い。
また、被縫製物の硬さを求めるための専用のセンサなどからなる硬さ検出手段を用いることなく被縫製物の硬さを求めることができ、部品点数の低減による生産性の向上を図ることが可能となる。
なお、本願発明は、専用の硬さ検出手段は不要となるが、中押さえモータのモータ軸角度検出手段が必須となる。しかしながら、中押さえモータのモータ軸角度検出手段は、前述したように、用途の汎用性が高いので、モータ軸角度検出手段が他の用途のために必要性があるミシンにあっては部品点数の増加とはならない。さらに、中押さえモータの出力軸の軸角度が検出できればよいので、専用の硬さ検出手段のように針棒周囲に設ける必要がなく、針棒周囲のスペースを広く作業空間として確保することが可能となると共にミシンの針棒周囲に他の機構や部材を搭載する妨げとならない。
なお、本実施形態では、ミシンとして電子サイクルミシンを例に説明する。
電子サイクルミシンは、縫製を行う被縫製物である布を保持する保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布に所定の縫製パターンデータ(縫製パターン)に基づく縫い目を形成するミシンである。
ここで、後述する縫い針108が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
図1、図2に示すように、ミシン本体101は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム102を備えている。このミシンフレーム102は、ミシン本体101の上部をなし前後方向に延びるミシンアーム部102aと、ミシン本体101の下部をなし、前後方向に延びるミシンベッド部102bと、ミシンアーム部102aとミシンベッド部102bとを連結する縦胴部102cとを有している。
このミシン本体101は、ミシンフレーム102内に動力伝達機構が配され、回動自在で前後方向に延びる主軸2(図4参照)及び図示しない下軸を有している。主軸2はミシンアーム部102aの内部に配され、下軸(図示省略)はミシンベッド部102bの内部に配されている。
主軸2の前端には、主軸2の回動によりZ軸方向に上下動する針棒108aが接続されており、その針棒108aの下端には、縫い針108が交換可能に設けられている。つまり、主軸2の回動により縫い針108はZ軸方向に上下動する。
かかる主軸2とミシンモータ2aと針棒108aと主軸2から針棒108aに上下動の駆動力を付与する図示しない伝達機構により針上下動機構が構成される。
なお、ミシンモータ2a、主軸2、針棒108a、縫い針108、下軸(図示省略)、釜(図示省略)等の接続構成は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
図1、図2に示すように、ミシンベッド部102b上には、針板110が配設されており、この針板110の上方に布保持部としての保持枠111及び縫い針108が配置されるようになっている。
保持枠111は、ミシンアーム部102aの前端部に配される取付部材113に取り付けられており、その取付部材113にはミシンベッド102b内に配置された位置決めモータとしてのX軸モータ76a及びY軸モータ77aが駆動手段として連結されている(図7参照)。
保持枠111は、被縫製物である布地を保持し、X軸モータ76a及びY軸モータ77aの駆動に伴い、保持した布地を保持枠111ごと前後左右方向に移動するようになっている。そして、保持枠111の移動と、縫い針108や釜(図示省略)の動作が連動することにより、布地に所定の縫製パターンデータの縫い目データに基づく縫い目が形成される。
また、保持枠111は、布押さえ(図示省略)と下板(図示省略)とからなっており、取付部材113はミシンアーム102a内に配置された布押さえモータ79bの駆動により上下駆動が可能であり、布押さえ下降時に下板との間で布地を挟持し保持するようになっている。
そして、これら保持枠111、取付部材113、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが、縫い針と布地をX軸方向及びY軸方向に相対的に位置決めする位置決め機構として機能する。
なお、操作パネル74は、液晶表示パネルとその液晶表示パネルの表示画面上に設けられたタッチパネルとを備えて構成されており、液晶表示パネルに表示される各種操作キー等をタッチ操作することにより、タッチパネルがタッチ指示された位置を検出し、検出した位置に応じた操作信号を後述する制御装置1000に出力するようになっている。
ミシンアーム102aには、縫い針108の上下動による布の浮き上がりを防止するために、針棒108aの上下動と連動して上下動し、縫い針108の周囲の布を下方に押圧する中押さえ29を有する中押さえ装置1(図3参照)が設けられている。なお、中押さえ装置1の本体はミシンアーム部102aの内部に配設されており、縫い針108は、中押さえ29の先端側に形成されている貫通孔に挿入されている。
中押さえ装置1は、図3〜図5に示すように、縫製時に布を針板110側に押さえ付ける中押さえ29と、主軸2の回転により上下動する縫い針108に合わせて中押さえ29を上下動させる中押さえ上下動機構M1と、中押さえ29の下降動作阻害時に行われる逃げ動作を可能とすると共に逃げ動作の際に中押さえ29を針板110側に付勢する付勢機構M2と、中押さえ29を縫製終了後に退避高さ位置に上昇させる中押さえ退避機構M3と、中押さえ29の高さを調節する中押さえ高さ調節機構M4とを備えている。
図4に示すように、主軸2には偏心カム3が固定され、その偏心カム3には接続リンク4が連結されている。接続リンク4には揺動軸抱き5が連結され、揺動軸抱き5には揺動軸6の一端部が連結されている。
揺動軸6の他端部には、図5に示すように、中押さえの上下方向D1の移動量を調節する中押さえ調節腕7の基端部が固定されている。中押さえ調節腕7には溝カム7aが形成されている。この溝カム7aは弧状の長孔になっており、この溝カム7aの所望の位置で第1リンク8の一端部が調節ナット9と段ねじ10により軸支されている。第1リンク8の一端部の固定位置は揺動軸6の中心に対して接離移動調節可能であり、中心からの距離に比例して第1リンク8に付与する往復動作量を増減調節することができる。
但し、ミシン10は、後述するように、被縫製物に接触したときの中押さえ29の高さから被縫製物の厚さを算出する処理を行うため、当該算出には上記のストロークが関係することから調節はみだりに行わない。また、調節する際には被縫製物の厚さを算出するためのパラメータとしての上記ストローク値を制御装置1000に設定入力して更新する必要がある。
第4リンク22の他端部には、リンク中継板25が段ねじ26により連結されている。リンク中継板25には中押さえ棒抱き27が固定されており、中押さえ棒抱き27には上下方向に延びる中押さえ棒28が保持されている。中押さえ棒28の下端部には、縫製時に布地を針板110側に押さえ付ける中押さえ29が取り付けられている。中押さえ棒28の上端部には押圧バネ30が設けられており、ボルト31及びナット32により中押さえ棒抱き27に取り付けられている。押圧バネ30は、中押さえ29が縫製時に縫い針108と同期して上下動を行う際に、中押さえ29を常時下方に押圧している。
そして、本実施形態では、第1リンク8、第2リンク11、第3リンク20、第4リンク22等により、中押さえ上下動機構M1が構成されている。
可変軸39の他端部は、図4に示すように、ベアリング40、かさ歯車41を介して中押さえモータ42に連結されている。つまり、中押さえモータ42の駆動が、可変軸39、偏心カム38、移動リンク36の順に伝達され、移動リンク36が案内部材34の回転角度の傾きを変化・調整させるようになっている。
中押さえモータ42は、正逆方向に回動自在であるとともに、その回動量及び駆動のタイミングが制御装置1000により制御可能となっている。
そして、移動リンク36と案内部材34と角駒33等が中押さえ上下動機構の動作伝達部材として構成され、中押さえモータによりこの動作伝達部材の傾きを変化させることで、後述する中押さえ29の下死点高さを調節し、調整後は中押さえモータのトルクを保持トルクとすることで前記中押さえ上下動機構による中押えモータの回転軸の角度が変更しないように調節した前記下死点高さを維持する中押さえ高さ調節機構M4として機能する。
位置決めリンク13の一端部は、ミシン面部側に向かって略コ字状に折り返されており、折り返された先端部にはばね掛13aが形成されている。本実施形態における位置決めリンク13は、その一端のばね掛け13aが、当該位置決めリンク13の回動中心である段ねじ14付近まで折り返されており、回動中心からばね掛け13aまでの距離が短くなるように形成されている。ばね掛け13aには引っ張りばね16の一端(上端)が連結されており、引っ張りばね16の他端(下端)は、ミシンフレームに固定されているばね掛15に連結されている。
引っ張りばね16は、ばね掛13aが形成されている位置決めリンク13の一端部を下方に引き下げるように付勢する。すなわち、引っ張りばね16は、第2リンク11における第3リンク20との接続部位が反力を受けた場合に、中押さえ29による踏みつけの発生により上方への反力を受けた場合に、その接続部位を下方に引き下げるように付勢する。つまり、引っ張りばね16と位置決めリンク13とが、中押さえ29の下降動作阻害時に中押さえ上下動機構M1に対する過剰負荷回避用の逃げ動作を可能とすると共に逃げ動作の際に中押さえ29を針板110側に付勢する付勢機構M2として機能する。そして、引っ張りバネ16は過剰負荷回避用の押さえバネとして機能する。
なお、付勢機構M2は、位置決めリンク13が第2リンク11に連結されることによって中押さえ上下動機構M1に接続されている。
中押さえ昇降カム45は、その溝がカム部となっており、当該中押さえ昇降カム45の回動範囲の半分は、回動中心から溝までの距離がほぼ同一の円弧状に形成され(以下、維持部という)、残る半分は、回動中心から溝までの距離が、その維持部における回動中心から溝までの距離よりも大きく、かつ、滑らかに変化する形状(以下、変化部という)となっている。
この中押さえ昇降カム45は、中押さえ29を縫製終了後の退避位置に上昇させる中押さえ上げ部材46の一端部46aを上下に昇降させるものであり、当該中押さえ昇降カム45の溝の内部には、中押さえ上げ部材46の他端部に設けられた円筒状のコロ47が摺動自在に嵌合されている。そして、コロ47が中押さえ昇降カム45の維持部に沿って移動する際には、中押さえ上げ部材46の一端部46aは昇降しないが、コロ47が中押さえ昇降カム45の変化部に沿って移動する際には、中押さえ上げ部材46の一端部46aが昇降するようになっている。
このような溝カムである中押さえ昇降カム45の図示しない溝の内側にはコロ47を介して押さえ上げ部材46の他端部が係合しているので、中押さえ昇降カム45が回転を行わない限り中押さえ上げ部材46は揺動を行うことがなく、一定の状態を維持することが可能となっている。そして、中押さえ昇降カム45、中押さえ上げ部材46及びコロ47により、中押さえ退避機構M3が構成されている。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ上下動機構M1の動作について説明する。
ミシンモータ2aの駆動により主軸2を回転させて偏心カム3を回動させると、接続リンク4の先端は主軸2の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動し、接続リンク4に連結された揺動軸抱き5も同方向に揺動する。その揺動軸抱き5が揺動することにより、揺動軸6も揺動するため、第1リンク8の一端部が揺動支点となって第1リンク8の他端部が揺動軸6の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。第1リンク8の他端部の揺動に伴い、第2リンク11の他端部は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に揺動し、第2リンク11の他端部に連結された第3リンク20及び第4リンク22は、その直列方向(上下方向)D2に揺動する。第3リンク20及び第4リンク22の揺動に伴い、第4リンク22に連結された中押さえ棒28は上下方向D1に沿って下方に移動するため、中押さえ29が上下方向に移動する。また、主軸2の回転により縫い針108が上下動するので、その縫い針108の上下動と連動するように中押さえ29は上下動する。
なお、以下の説明では主軸2の角度が0°のときに縫い針108及び中押さえ29が上死点に位置し、主軸2の角度が180°のときに縫い針108及び中押さえ29が下死点に位置するものとする。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ高さ調節機構M4による中押さえ29の高さの調節動作について説明する。
中押さえモータ42の駆動は、かさ歯車41、ベアリング40を介して可動軸39に伝達され、可動軸39は回動を始める。可動軸39の回動により、偏心カム38も回動し、移動リンク36は、可動軸39の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。移動リンク36の揺動により、案内部材34は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3に揺動する。
このとき、図6(a)、(b)に示すように、案内部材34の長孔34aで連結された第3リンク20と第4リンク22の連結部Pの段ねじ23(角駒33)は、そのねじ部分が長孔34aによって、第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3への移動が規制されているため(図5、図6(a)参照)、揺動により伝達される力を逃がす場所が無くなり、段ねじ23(角駒33)は長孔34aに沿って上方に移動し、段ねじ23(角駒33)の案内部材34に追随した移動に伴って、直列に並んで連結されていた第3リンク20と第4リンク22同士がなす角度が変化し、中押さえリンク部材24は、略く字状になる(図6(b)参照)。中押さえリンク部材24が略く字状になると、中押さえ29は上下方向D1に沿って上方に移動する。これにより、中押さえ29の針板110からの中押さえ29の下死点高さを調節することができる。
また、ミシン100は、図7に示すように、上述した各部、各部材の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置1000を備えている。そして、制御装置1000は、縫製プログラム70a,枠位置ティーチングプログラム70b,中押さえ高さティーチングプログラム70cが格納されたプログラムメモリ70と、縫製パターンデータ71a及び各種の設定情報(図示略)を記憶した記憶手段としてのデータメモリ71と、プログラムメモリ70内の各プログラム70a,70b,70cを実行するCPU73とを備えている。
なお、ミシンモータ2aはエンコーダ2bを備えており、ミシンモータ2aを駆動するミシンモータ駆動回路75bにおいて、エンコーダ2bからミシンモータ2aの一回転ごとに出力されるZ相信号が、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、この信号によって、CPU73は主軸2の一回転における原点(0°位置)を認識できる。また、エンコーダ2bからは、ミシンモータ2aの回転角度における1°ごとに出力されるA相信号が、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、前述したZ相信号を基準にA相信号のパルス数をカウントして、CPU73は主軸2の現在回転角度を認識することができる。
なお、ミシンモータ2aには、例えば、サーボモータを適用することができる。
なお、中押さえモータ42の出力軸にはモータ軸角度検出手段としてのエンコーダ81が設けられており、中押さえモータ42を駆動する中押さえモータ駆動回路79bにおいて、エンコーダ81から中押さえモータ42の一回転ごとに出力されるZ相信号が、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、この信号によって、CPU73は中押さえモータ42の出力軸の一回転における原点(0°位置)を認識できる。また、エンコーダ81からは、中押さえモータ42の回転角度における1°ごとに出力されるA相信号が、インターフェイス78を介してCPU73に入力され、前述したZ相信号を基準にA相信号のパルス数をカウントして、CPU73は中押さえモータの出力軸の現在回転角度を認識できる。
布押さえモータ79aは、カム機構を介して布押さえの上下動機構と図示しない糸切り装置とに接続されており、その1周360°の回転範囲の一部の区間を布押さえの上下動動作の駆動に割り当てられ、他の区間を糸切り装置の糸切り動作の駆動に割り当てられている。従って、布押さえモータ79aを制御することにより、布押さえの上下動動作のみならず、糸切り動作の制御も可能となっている。
なお、X軸モータ76a及びY軸モータ77a、中押さえモータ42、布押さえモータ79aには、例えば、ステッピングモータを適用することができる。
そして、並び順に従って各種コマンドが実行されることで任意のパターン(模様)による縫いが実行される。
図8に示す縫製パターンデータにおいて、「縫い」のコマンドでは、保持枠111を移動させる際のX方向移動量、Y方向移動量のデータ(パラメータ)が第一設定値と第二設定値とに記録され、X軸モータ76aとY軸モータ77aの回転駆動量がこれらにより決定される。
また、「中押さえ高さ」のコマンドでは、中押さえモータ42により定められる中押さえ29の下死点高さが第一設定値に記録され、中押さえモータ42の回転駆動量がこれにより決定される。
また、「糸張力」のコマンドでは、糸調子装置が縫い糸に付与すべき糸張力が第一設定値に記録され、糸張子ソレノイド82aの出力がこれにより決定される。
また、「糸切り」は糸切り装置(図示省略)を作動させるコマンド、「終了」はミシン100の布押さえモータ79aを駆動させて布を解放させるコマンドである。
なお、図8のX移動量、Y移動量、中押さえ高さの数値データにおける表記は10倍表記であり、例えば、「15」は、「1.5mm」を示している。
また、縫製パターンデータ71aには、図示しないが、後述する中押さえ高さティーチングプログラム70cの実行により取得される被縫製物の硬さも記録することが可能となっている。
プログラムメモリ70に格納された縫製プログラム70aは、上記縫製パターンデータ71aの各コマンドを順番に読み出して、コマンドに応じて制御対象を特定し、コマンド内の設定数値に基づいてミシンモータ2a、X軸モータ76a、Y軸モータ77a、中押さえモータ42、糸張子ソレノイド82aの動作制御を行い、縫製パターンデータ71aに基づく縫製を実行させるプログラムである。
例えば、上記図8の縫製パターンデータ71aの場合には、ペダルRの入力により縫製パターンデータにおける第一針目に関するデータである「中押さえ高さ」、「糸張力」、「縫い」のコマンド及びその設定値が読み込まれ、これらに基づいて、中押さえモータ42、糸張子ソレノイド82a、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが各々の設定値に応じた動作量で駆動が行われる。また、最初の「縫い」コマンドの読み込みによりミシンモータ2aの駆動が開始される。
そして、ミシンモータ2aの駆動開始以降は、エンコーダ2bのカウントにより主軸角度が監視され、所定の主軸角度で縫製パターンデータ71aにおける毎針のコマンドの読み込みが行われると共に、コマンド毎に定められた所定の主軸角度で制御対象の動作が実行される。
さらに、X軸モータ76a及びY軸モータ77aの保持枠111の位置決め制御については、枠移動開始から停止までの動作期間が主軸角度によって定められている。かかる動作期間は、X軸モータ76aとY軸モータ77aの各々について、動作量と動作期間との対応関係を示すテーブルが予めデータメモリ71内に記録されており、縫製時には、CPU73は、縫製パターンデータ71aから「縫い」コマンドの移動量を読み込むと、上記対応デーブルを参照して動作期間を読み出し、エンコーダ2bにより動作開始と終了のタイミングを計って各モータ76a,77aの制御を実行する。
枠位置ティーチングプログラム70bは、縫製パターンデータ71aにおける各針の「縫い」及び「中押さえ高さ」のコマンドに基づく動作の確認及びその設定値の修正を行うためのものである。この枠位置ティーチングプログラム70bに基づくティーチングの際には、ミシンモータ2aの駆動を行わずに縫製パターンデータ71aの各針毎のコマンドを、操作パネル74に設けられた図示しない前進キーと後退キーの入力に従って縫製順又は逆順に一針ずつ実行して再現する。このとき、一針毎の再現動作により設定値に修正の必要がある場合には、オペレータは、操作パネル74を通じてコマンドの種類を選択し、その設定値を増減キーにより修正する。かかる入力があると、CPU73は、修正が行われたコマンドについて新たな設定値で再現動作を行う動作制御を実行する。そして、確定が入力されると、修正内容に従って縫製パターンデータ71aの更新を行う。
なお、縫製パターンデータ71aに「縫い」、「中押さえ高さ」以外のコマンドが含まれている場合にはそれらについても同様に再現し、また修正することが可能である。
中押さえ高さティーチングプログラム70cは、縫製パターンデータ71aに対して「中押さえ高さ」のコマンド及び設定値の設定と被縫製物の硬さの記録を行うためのものである。前述した枠位置ティーチングプログラム70bの実行時にも中押さえ高さの設定を行うことは可能であるが、その場合はオペレータが決定した中押さえ高さを数値入力することで設定が行われることとなる。
一方、中押さえ高さティーチングプログラム70cの実行時には、後述する処理により、縫製パターンデータ71aに従って枠移動動作が再現される過程で各針落ち位置において実測された被縫製物の布厚から「布押さえ高さ」コマンド求められ、自動的にミシンにより縫製パターンデータ71a中に設定される。
図9は、ミシンモータ2は駆動させずに中押さえモータ42のみにより縫製時の上下動を模して上下動を再現する中押さえ29の高さ変化を示した線図(上図)及びその際の中押さえモータ42のトルク変化を示した線図(下図)である。図9のトルク変化を示す線図は0の位置を境に上側が中押さえ29を上方に移動させる回転方向のトルクの大きさを示し、下側が中押さえ29を下方に移動させる回転方向のトルクの大きさを示す。
また、図10(A)は図9の点a、図10(B)は図9の点b−c区間、図10(C)は図9の点cの各中押さえ高さにおける中押さえ高さ調節機構M4の動作状態を示した模式図である。なお、図10では各構成の重なりを避けるために便宜上、リンク20,22の屈曲方向と中押さえモータ42の配置を左右逆にしているが、以下の原理説明には何ら影響はない。
そして、中押さえ29の毎針ごとの下降動作の際には、中押さえ29による被縫製物への接触時の押圧を中押さえモータ42のトルク制御により上昇時よりも減少する高さ可変制御が行われ、高さ可変制御の実行中にエンコーダ81による中押さえ29の下降の停止が検出された場合に、当該停止を生じた時の中押さえ29の高さから被縫製物の厚さを求める厚さ取得処理が行われる。
さらに、上記高さ可変制御において被縫製物の厚さが求められると、縫製パターンデータ71aに対して、針数の順番に対応づけて、取得された被縫製物の厚さを記録する厚さ記録処理が行われる。
また、上記高さ可変制御において被縫製物の厚さが求められると、中押さえ29による被縫製物への接触圧が高まるように中押さえモータ42のトルク値を徐々に変更する押圧制御と、押圧制御の実行中にエンコーダ81により中押さえ29の下降が検出された場合に、当該下降時の中押さえモータ42のトルク値から求まる被縫製物の硬さを記録する硬さ取得処理が行われる。
このように、中押さえ高さティーチングプログラム70cを実行することにより、CPU73は、縫製制御手段、中押さえ高さ制御手段、厚さ取得処理手段、中押さえ押圧制御手段、硬さ取得処理手段、厚さ記録手段として機能することとなる。
上記各制御及び各処理についてさらに詳細に説明する。
上記縫製パターンデータ71aに基づく再現動作の際には、CPU73は、保持枠111に被縫製物をセットした状態で、ミシンモータ2aを駆動させないで、通常の縫製時よりも低速となる一定の設定速度で縫製パターンデータ71aに従って一針ずつ保持枠111の位置決め動作を行う。
そして、高さ可変制御では、図10に示すように、ミシンモータ2aの主軸角度が上死点近くの上停止位置(通常の縫製終了時における主軸停止位置)で固定され、保持枠111を移動させるX軸及びY軸モータ76a,77aの駆動開始後所定の経過タイミングで中押さえモータ42による中押さえ29の下降動作が開始される。
中押さえモータ42は、毎回の上下動における初期位置として中押さえ29をその可動範囲内で最も引き上げた位置(図9点a及び図10(A)の状態)から下降を開始し、厚みのある被縫製物でも上方から接することができるように上下動を実行する。
即ち、中押さえ29は、図11に示すように、押圧バネ30により常に下方に矢印Y1の押圧力で押圧されているため、屈曲状態にあるリンク20,22は真っ直ぐに伸びるようにバネ厚を受けることとなり、その結果、リンク部材20は矢印Y2のトルクを受け、角駒33は矢印Y3の方向に引っ張られ、案内部材34は矢印Y4の方向に回動力が付与され、移動リンク36矢印Y5の方向に引っ張られ、偏心カム38を介して中押さえモータ42の出力軸は矢印Y6の方向に負荷トルクT1が付与される。
一方、中押さえモータ42も中押さえ29を下降さえる方向に上昇時よりも小さい大きさの駆動トルクT2の出力を行うので、中押さえ29の下降時における被縫製物への押圧力は、押圧バネ30により押圧力と中押さえモータ42の下降方向の駆動トルクに起因する押圧力との合計となるが、それぞれの加圧力は十分に小さく設定されるため、過度の押圧は生じないようになっている。
厚さ取得処理は、毎針の再現動作ごとに行われる高さ可変制御において、中押さえ29の下降停止が検出されると実行される。
CPU73は、下降停止状態において、エンコーダ81の検出軸角度から中押さえ29から針板までの高さ(=被縫製物の厚さ)を求める。中押さえモータ29の軸角度と中押さえ29の高さは例えば予め各部材の設計値から算出する。また、事前の計測等により作成された軸角度−中押さえ高さの対応テーブルをデータメモリ71に用意し、これを参照することで取得しても良い。
厚さ記録処理では縫製パターンデータ71aに対して実測された被縫製物の厚さが記録されるので、中押さえ高さティーチングの開始時には、縫製パターンデータ71a中に既に記録されていた中押さえ高さコマンド及びその設定値のデータは予め全て削除される。
そして、上記厚さ取得処理により、毎針ごとの被縫製物の厚さが求められると、CPU73は、一つ前の針落ち位置での被縫製物の厚さと比較を行い、所定の定数A以上の差を生じた場合に限り、縫製パターンデータ71aの該当する針数について新たに中押さえ高さコマンド及びその設定値として求められた被縫製物の厚さが記録される。
ここで、上記定数Aの値は、操作パネル74により設定可能な閾値であり、設定によりデータメモリ71内に記憶される。
また、検出された被縫製物の厚さを縫製パターンデータ71aの記録する際には、補正値αの加算による補正が行われる。かかる補正値αは、操作パネル74により任意に設定可能な数値であり、データメモリ71内に記録されている。なお、この例では、補正値は加算する値としたが加減乗除のいずれを行う数値を補正値としても良い。
また、中押さえ29の下降停止時には、CPU73は、中押さえモータ42のトルクを変化させて中押さえ29による下方押圧力を徐々に高める押圧制御を実行する。即ち、被縫製物の上面で停止した状態の中押さえモータ42の下降側へのトルクを徐々に増加するように制御が行われる(図12(A)から(B)へ)。
上記押圧制御における中押さえモータ42のトルクの変動率は操作パネル74から設定することができ、設定値はデータメモリ71内に記憶される。従って、押圧制御ではデータメモリ71に記憶された変動率に応じて中押さえモータ42のトルクが変動させられる。かかる変動率は小さいほど精密に被縫製物の硬さを検出することができる。
また、被縫製物に凹みが発生したと判定するための中押さえ29の下降量についても同様に、操作パネル74から設定することができ、設定値はデータメモリ71内に記憶される。かかる下降量の設定値は、被縫製物を傷つけない範囲とすることが望ましい。
また、図11に示すように、中押さえモータ42により回動動作が付与される案内部材34は第3リンク20を介して第2リンク11と接続されており、当該第2リンク11は、その中間部で第1リンク8に支持され、他端部は引っ張りバネ16により上方に付勢されて規制部材19に圧接した状態にある(引っ張りバネ16は実際には取付部材13を介して第2リンク11と接続されているが、ここでは説明を分かり易くするために構造を簡略化しており、機能上の差異はない)。
かかる構造において、押圧制御で中押さえモータ42の下降方向の駆動トルクを徐々に大きくすると、被縫製物が過度に硬い素材の場合、厚さ変化を生じる前に引っ張りバネ16が撓み、第2リンク11の左端部が規制部材19から離間して硬さ検出が不能となる場合があり得る。従って、押圧制御における中押さえモータ42の駆動トルクは、引っ張りバネ16に抗して第2リンク11左端部が規制部材19から離間を生じない範囲を上限とすることが望ましい。
上記押圧制御において、エンコーダ81により中押さえ29の下降が検出されると、CPU73は、硬さ取得処理に移行する。硬さ取得処理では中押さえ29の下降を生じた時点での中押さえモータ42のトルク値を記憶し、当該トルク値から被縫製物の硬さを取得する。つまり、中押さえモータ42のトルク値は中押さえ29による被縫製物への押圧力と一定の対応関係にあり、被縫製物に凹みを生じさせる中押さえ29による被縫製物への押圧力と被縫製物の硬さとは一定の対応関係にあるため、事前の計測等により作成されたトルク値と被縫製物の硬さとの対応テーブルをデータメモリ71に用意し、これを参照することで被縫製物の硬さを取得することができる。
そして、硬さ取得処理で求められた被縫製物の硬さについては、縫製パターンデータ71aに記憶される。なお、記録される被縫製物の硬さについては、実際の硬さを数値化して記録する場合に限らず、硬さを特定可能な数値情報を記録すれば良い。例えば、下降を生じた時点での中押さえモータ42のトルク値そのものを記録しても良い。
なお、押圧制御及び硬さ取得処理については、毎針毎に行っても良いし、中押さえ高さの記録が行われた時の針数についてのみ行っても良いし、一つの被縫製物について一回のみ行っても良い。
また、同様にして、被縫製物の硬さが求められると、CPU73は、被縫製物の位置決めを行うX軸モータ76a及びY軸モータ77aの動作期間に対して補正する処理を行う。つまり、被縫製物が硬くなると、縫い針の貫通動作が遅速化するため動作期間は短く設定する必要があるので、各モータ76a、77aの駆動開始と終了のそれぞれの主軸角度に対して補正値により増減する補正が行われる。被縫製物の硬さと補正値との関係は、予めデータメモリ71に用意された対応テーブルに記録されており、これを参照することで取得される。なお、縫製パターンデータ71aに上記補正値を記録しても良いし、実際に縫製する際に、縫製パターンデータ71aに記録された被縫製物の硬さから補正値を求め、各モータ76a、77aの駆動タイミングを決定する際に補正を行っても良い。
また、同様にして、被縫製物の硬さが求められると、CPU73は、ミシンモータ2aの設定トルクに対して係数を乗じて補正する処理を行う。つまり、被縫製物が硬くなると、縫い針の貫通力を高める必要があるので、ミシンモータ2aのトルク値を係数により増減する補正が行われる。被縫製物の硬さと上記係数との関係は、予めデータメモリ71に用意された対応テーブルに記録されており、これを参照することで取得される。なお、縫製パターンデータ71aに上記係数を記録しても良いし、実際に縫製する際に、縫製パターンデータ71aに記録された被縫製物の硬さから係数を求め、ミシンモータ2aの回転時にトルクに補正を行っても良い。
中押さえ高さティーチングプログラム70cの実行によりCPU73が行う制御及び処理について図13に示すフローチャートに基づいて説明する。
中押さえ高さティーチングは、操作パネル74から開始を入力することができ、入力を受けると、図13に示すように、CPU73は、まず、縫製パターンデータ71aの読み込みを開始する(ステップS1)。そして、縫製パターンデータ71a中の全ての中押さえ高さコマンド及びその設定値のデータを削除する(ステップS2)。
そして、保持枠111に被縫製物がセットされ、ペダルRから保持枠111の下降動作指示が入力されると、布押さえモータ79aを駆動させて保持枠111を下降させる(ステップS3)。
そして、布厚検知が開始される(ステップS6)。かかる布厚検知の内容は図14のフローチャートにより詳細に説明する。
次いで、中押さえモータ42に対して低電流としてトルクを抑えて中押さえ29の下降を開始する(ステップS32:高さ可変制御)。
そして、中押さえ29の下降中のエンコーダ81の出力を監視し、中押さえモータ42の出力軸の回転状態の変化(ここでは、回転状態→停止状態)の発生の有無を判定する(ステップS33)。
このように中押さえモータ42の回転状態の変化が検出されると、その際のエンコーダ81の検出角度から被縫製物の厚さを算出する(ステップS34:厚さ取得処理)。
一方、エンコーダ81が下降変化を検出した場合(ステップS36:YES)又は中押さえモータ42の通電電流値が最大電流値に達した場合(ステップS37:YES)には、被縫製物の硬さを算出する(ステップS38:硬さ取得処理)。なお、中押さえモータ42の通電電流を最大としても中押さえ29の下降変化が検出されなかった場合には、測定可能範囲以上の硬さであるとの特定が行われる。
そして、中押さえモータ42の駆動により最上位置まで中押さえ29が戻され、これにより、一針分の再現動作が完了する。上昇時の中押さえモータ42のトルクは、通常の縫いが行われる場合と同じように高い値に制御される。
比較の結果、検出布厚と現在布厚との差が予め設定された定数A以下の場合には、検出された布厚は縫製パターンデータ71aにおける該当針数の布厚として記録されず、針数が一つ進められて(ステップS11)、ステップS6に処理が戻され、次の針数における布厚検知が行われる。
また、ステップS7において、検出布厚と現在布厚との差が予め設定された定数Aよりも大きい場合には、一つ前の針落ち位置から布厚に変化があったものと見なされ、現在布厚が検出された布厚の値に更新される(ステップS8)。
そして、現在布厚(=検出布厚)が縫製パターンデータ71aの該当針数について書き込まれる処理が行われる(ステップS9:厚さ記録処理)。即ち、該当針数における縫いコマンドの前に中押さえ高さコマンドが生成され、その設定値に現在布厚に前述した補正値αを加算して補正した値が記録される。
また、同時に、縫製パターンデータ71aに対して現在の針数における被縫製物の硬さのデータが書き込まれる。
そして、現在の針数が縫製パターンデータ71aの最終針か否かを判定し(ステップS10)、最終針ではない場合には、針数を一つ進めてステップS6に処理を戻し、最終針の場合には、中押さえ高さティーチングを終了する。
電子サイクルミシン100では、高さ可変制御により下降する中押さえ29が被縫製物に接触した時の押圧を回避し、厚さ取得処理により被縫製物の厚さを求めるので、被縫製物の押圧による傷などの発生を防止し、保護を図りつつ布厚検出を行うことが可能となる。
さらに、上記布厚検出は、縫製パターンデータに従って実行される毎針の被縫製物の位置決め動作に同期して行われるので、目視作業と試行錯誤を繰り返して適正な中押さえ高さを求める人為的な設定作業と異なり、容易且つ迅速に、被縫製物の厚さを考慮した縫製パターンデータを取得することが可能となる。
また、上記縫製パターンデータに従って実行される毎針の被縫製物の位置決め動作は、ミシンモータ2aを駆動させないで行うので、データ作成のために被縫製物を無駄にすることがない。
さらに、縫製パターンデータ71aに記録される被縫製物の厚さは補正することができるので、被縫製物の厚さ検出に対して影響のある各種条件の変化を考慮して個々に補正を行うことで、被縫製物の厚さをより正確に求めることが可能となる。
さらに、検出した被縫製物の硬さに応じて糸張力、被縫製物の位置決めの動作期間、ミシンモータ2aのトルクに補正を加えるので、被縫製物の硬さに応じて適正な縫いが行われ、縫い品質の向上を図ることが可能となる。また、専用の硬さ検出手段を針棒周囲に設ける必要がないので、厚さ検出の場合と同様に、針棒周囲のスペースを広く作業空間として確保することが可能となると共にミシンの針棒周囲に他の機構や部材を搭載する妨げとならない。
なお、上記被縫製物の厚さ及び硬さの検出は、ミシンモータ2aを停止させて行ったが、ミシンモータ2aを駆動させて、当該ミシンモータ2aを中押さえ29の上下動駆動源とした状態で被縫製物の厚さ及び硬さの検出を行っても良い。
その場合には、高さ可変制御の際には、中押さえ29はミシンモータ2aにより下降動作を行うので、中押さえモータ42の出力軸は下降変化を行うように推移させないで、一定の角度を維持するように停止状態を維持する。トルク値は、押圧バネ30の押圧力に対して釣り合いを取るように上方への駆動トルクを出力し、中押さえモータ42の出力軸に回転が生じないように制御する。
また、中押さえ29が被縫製物に接触したか否かの判定は、エンコーダ80が中押さえモータ42の出力軸の停止状態から回転状態への変化を検出したことにより行う。
また、中押さえ29の高さ(被縫製物の厚さ)の算出の際には、中押さえモータ42の検出角度だけでなく、中押さえ29が被縫製物に接触した時の主軸角度も考慮する必要がある。
さらに、硬さ検出の際には、被縫製物への接触の検出後、すぐに、ミシンモータ2aが回転している状態において、中押さえモータ42は一定角度を維持する保持トルク或いは下降移動側への駆動トルクを徐々に高める制御を行う。その際、トルクが不足している間は、中押さえモータ42は指令角度を維持することができず、出力軸は回転を続けるが、被縫製物の硬さにトルクが勝ると中押さえ29が中押さえモータ42に追従して下降を生じ、出力軸の回転は停止する。かかる回転停止時のトルク値を記録し、当該トルク値から被縫製物の硬さを算出する。
上記の点を考慮することで、ミシンモータ2aを駆動させた状態でも被縫製物の厚さ及び硬さの検出を行うことが可能である。
また、ティーチングの際に限らず、ミシンモータ2aを駆動させて実際に縫製を行いながらリアルタイムで被縫製物の厚さ及び硬さの検出を行っても良い。
2 主軸
2a ミシンモータ
2b エンコーダ(主軸角度検出手段)
16 引っ張りばね
20 第3リンク
22 第4リンク
29 中押さえ
30 押圧バネ
33 角駒(動作伝達部材)
34 案内部材(動作伝達部材)
42 中押さえモータ
70a 縫製プログラム
70b 中押さえ高さ制御プログラム
71a 縫製パターンデータ
73 CPU(縫製制御手段、中押さえ高さ制御手段、厚さ取得処理手段、厚さ記録手段、中押さえ押圧制御手段、硬さ取得処理手段)
74 操作パネル(区間設定手段)
76a X軸モータ(位置決めモータ)
77a Y軸モータ(位置決めモータ)
81 エンコーダ(モータ軸角度検出手段)
100 電子サイクルミシン
110 針板
1000 制御装置
M1 中押さえ上下動機構
M2 付勢機構
M3 中押さえ退避機構
M4 中押さえ高さ調節機構
Claims (6)
- ミシンモータにより縫い針を上下動させる針上下動機構と、
前記ミシンモータにより回転駆動される主軸の角度を検出する主軸角度検出手段と、
位置決めモータにより被縫製物に対して任意の位置に針落ちが行われるように前記縫い針に対して被縫製物を相対的に位置決めする位置決め機構と、
縫製時に被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえと、
前記ミシンモータから動力を得て、前記縫い針の上下動に同期して前記中押さえを上下動させる中押さえ上下動機構と、
中押さえモータの回転角度を任意の角度に変更することにより前記中押さえ上下動機構による前記中押さえの下死点高さを任意の高さに変更し、前記中押えモータに回転角度を維持する保持トルクを与えることにより前記中押さえ上下動機構による中押えの下死点高さを維持する中押さえ高さ調節機構と、
毎針ごとの前記縫い針に対する被縫製物の相対的位置を定める位置情報を含む縫製パターンデータに基づいて前記位置決めモータの動作制御を行う縫製制御手段とを備えるミシンにおいて、
前記中押さえモータの出力軸の角度を検出するモータ軸角度検出手段を備え、
被縫製物への接触時の押圧力で前記中押さえの下降が停止可能となるように前記中押さえモータのトルクを上昇時よりも減少する高さ可変制御を行う中押さえ高さ制御手段と、
前記高さ可変制御中は、前記中押さえが被縫製物に当接して下降を途中停止して前記中押さえモータの出力軸の角度変化を検出したときは、当該角度変化に対応した前記中押さえの高さから前記被縫製物の厚さを求める厚さ取得処理を行う厚さ取得処理手段と、
前記縫製パターンデータに対して、針数の順番に対応づけて、取得された前記被縫製物の厚さを記録する厚さ記録手段を備えることを特徴とするミシン。 - 前記縫製制御手段は、前記ミシンモータを停止させた状態で前記縫製パターンデータに基づく前記被縫製物の相対的な位置決め動作を行わせる確認動作制御をも実行し、
前記中押さえ高さ制御手段は、前記確認動作制御における前記被縫製物の相対的な位置決め動作に同期して、前記中押さえモータにより前記中押さえを下降させると共に前記高さ可変制御を行い、
前記厚さ取得処理手段は、前記確認動作制御における高さ可変制御の実行中に前記中押さえの下降の停止を生じた場合に前記厚さ取得処理を行い、
前記厚さ記録手段は、前記縫製パターンデータに対して、針数の順番に対応づけて、前記確認動作制御において取得された前記被縫製物の厚さを記録することを特徴とする請求項1記載のミシン。 - 前記厚さ記録手段は、一針前に取得された前記被縫製物の厚さと比較して所定値以上の変化がある場合にのみ前記縫製パターンデータに対する記録を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
- 前記厚さ記録手段は、前記厚さ取得処理手段により取得された前記被縫製物の厚さに対して予め定めた補正値による加減乗除のいずれかを行い補正することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。
- 前記高さ可変制御において前記被縫製物の厚さを求めた後に、前記中押さえによる前記被縫製物への接触圧が高まるように前記中押さえモータのトルク値を徐々に変更する押圧制御を行う中押さえ押圧制御手段と、
前記押圧制御の実行中に前記モータ軸角度検出手段により前記中押さえの下降が検出された場合に、当該下降時の前記中押さえモータのトルク値又は当該トルク値から求まる被縫製物の硬さを記録する硬さ取得処理手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシン。 - 前記硬さ取得処理手段は、取得された前記中押さえモータのトルク値又は被縫製物の硬さに基づいて、少なくとも、糸張力調整手段の設定糸張力、主軸一回転における前記位置決めモータの動作期間又は前記ミシンモータのトルクの少なくともいずれか一つの設定を補正することを特徴とする請求項5に記載のミシン。
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