JP5253992B2 - ミシン - Google Patents
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Description
そして、中押さえの上下動ストロークは、被縫製物の厚さによっては干渉を生じる場合があるので縫製前に把握したいという要請がある。
しかしながら、このように複数の機械要素から上下動が付与される機構構造の場合、上下動ストロークを計算で求めるためには、各部品の設計寸法を全て把握しなければならないため、組み付け後に求めるのは困難である。
従って、主軸操作により中押さえを上死点位置と下死点位置とにそれぞれ固定し、それらの相互間距離を実測して中押さえの上下動ストロークを求めることが行われていた。このため、実測作業は全て作業者が手作業で行う必要があり、作業の繁雑さから負担となっていた。
本発明は、中押さえの上下動ストロークの把握を容易に行うことを、その目的とする。
なお、本実施形態では、ミシンとして電子サイクルミシンを例に説明する。
電子サイクルミシンは、縫製を行う被縫製物である布を保持する保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布に所定の縫製データ(縫製パターン)に基づく縫い目を形成するミシンである。
ここで、後述する縫い針108が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
図1、図2に示すように、ミシン本体101は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム102を備えている。このミシンフレーム102は、ミシン本体101の上部をなし前後方向に延びるミシンアーム部102aと、ミシン本体101の下部をなし、前後方向に延びるミシンベッド部102bと、ミシンアーム部102aとミシンベッド部102bとを連結する縦胴部102cとを有している。
このミシン本体101は、ミシンフレーム102内に動力伝達機構が配され、回動自在で前後方向に延びる主軸2(図4参照)及び図示しない下軸を有している。主軸2はミシンアーム部102aの内部に配され、下軸(図示省略)はミシンベッド部102bの内部に配されている。
主軸2の前端には、主軸2の回動によりZ軸方向に上下動する針棒108aが接続されており、その針棒108aの下端には、縫い針108が交換可能に設けられている。つまり、主軸2の回動により縫い針108はZ軸方向に上下動する。
かかる主軸2とミシンモータ2aと針棒108aと主軸2から針棒108aに上下動の駆動力を付与する図示しない伝達機構により針上下動機構が構成される。
なお、ミシンモータ2a、主軸2、針棒108a、縫い針108、下軸(図示省略)、釜(図示省略)等の接続構成は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
図1、図2に示すように、ミシンベッド部102b上には、針板110が配設されており、この針板110の上方に布保持部としての保持枠111及び縫い針108が配置されるようになっている。
保持枠111は、ミシンアーム部102aの前端部に配される取付部材113に取り付けられており、その取付部材113にはミシンベッド102b内に配置されたX軸モータ76a及びY軸モータ77aが駆動手段として連結されている(図7参照)。
保持枠111は、被縫製物である布地を保持し、X軸モータ76a及びY軸モータ77aの駆動に伴い、保持した布地を保持枠111ごと前後左右方向に移動するようになっている。そして、保持枠111の移動と、縫い針108や釜(図示省略)の動作が連動することにより、布地に所定の縫製パターンデータの縫い目データに基づく縫い目が形成される。
また、保持枠111は、布押さえ(図示省略)と下板(図示省略)とからなっており、取付部材113はミシンアーム102a内に配置された布押さえモータ79bの駆動により上下駆動が可能であり、布押さえ下降時に下板との間で布地を挟持し保持するようになっている。
そして、これら保持枠111、取付部材113、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが、縫い針と布地をX軸方向及びY軸方向に相対的に位置決めする位置決め手段として機能する。
なお、操作パネル74は、液晶表示パネルとその液晶表示パネルの表示画面上に設けられたタッチパネルとを備えて構成されており、液晶表示パネルに表示される各種操作キー等をタッチ操作することにより、タッチパネルがタッチ指示された位置を検出し、検出した位置に応じた操作信号を後述する制御装置1000に出力するようになっている。
ミシンアーム102aには、縫い針108の上下動による布の浮き上がりを防止するために、針棒108aの上下動と連動して上下動し、縫い針108の周囲の布を下方に押圧する中押さえ29を有する中押さえ装置1(図3参照)が設けられている。なお、中押さえ装置1の本体はミシンアーム部102aの内部に配設されており、縫い針108は、中押さえ29の先端側に形成されている貫通孔に挿入されている。
図4に示すように、主軸2には偏心カム3が固定され、その偏心カム3には接続リンク4が連結されている。接続リンク4には揺動軸抱き5が連結され、揺動軸抱き5には揺動軸6の一端部が連結されている。
揺動軸6の他端部には、図5に示すように、中押さえの上下方向D1の移動量を調節する中押さえ調節腕7の基端部が固定されている。中押さえ調節腕7には溝カム7aが形成されている。この溝カム7aは弧状の長孔になっており、この溝カム7aの所望の位置で第1リンク8の一端部が調節ナット9と段ねじ10により軸支されている。第1リンク8の一端部の固定位置は揺動軸6の中心に対して接離移動調節可能であり、中心からの距離に比例して第1リンク8に付与する往復動作量を増減調節することができる。
なお、かかる機械的なストローク調節機構は、ミシンの出荷前段階で予め規定のストロークに設定するためのものであり、縫製の使用時に任意のストロークに調節するためのものではない。
実使用時におけるストローク調節は、後述するソフトウェアに基づく処理・制御により実施される。
第4リンク22の他端部には、リンク中継板25が段ねじ26により連結されている。リンク中継板25には中押さえ棒抱き27が固定されており、中押さえ棒抱き27には上下方向に延びる中押さえ棒28が保持されている。中押さえ棒28の下端部には、縫製時に布地を針板110側に押さえ付ける中押さえ29が取り付けられている。中押さえ棒28の上端部には押圧バネ30が設けられており、ボルト31及びナット32により中押さえ棒抱き27に取り付けられている。押圧バネ30は、中押さえ29が縫製時に縫い針108と同期して上下動を行う際に、中押さえ29を常時下方に押圧している。
そして、本実施形態では、第1リンク8、第2リンク11、第3リンク20、第4リンク22等により、中押さえ上下動機構M1が構成されている。
可変軸39の他端部は、図4に示すように、ベアリング40、かさ歯車41を介して中押さえモータ42に連結されている。つまり、中押さえモータ42の駆動が、可変軸39、偏心カム38、移動リンク36の順に伝達され、移動リンク36が案内部材34を移動させるようになっている。
中押さえモータ42は、正逆方向に回動自在であるとともに、その回動量及び駆動のタイミングが制御装置1000により制御可能となっている。
そして、中押さえモータ42、移動リンク36と案内部材34と角駒33等が、ミシンモータ2aによる中押さえ29の上下動の上死点位置と下死点位置の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構M4として機能する。
位置決めリンク13の一端部は、ミシン面部側に向かって略コ字状に折り返されており、折り返された先端部にはばね掛13aが形成されている。本実施形態における位置決めリンク13は、その一端のばね掛け13aが、当該位置決めリンク13の回動中心である段ねじ14付近まで折り返されており、回動中心からばね掛け13aまでの距離が短くなるように形成されている。ばね掛け13aには引っ張りばね16の一端(上端)が連結されており、引っ張りばね16の他端(下端)は、ミシンフレームに固定されているばね掛15に連結されている。
引っ張りばね16は、ばね掛13aが形成されている位置決めリンク13の一端部を下方に引き下げるように付勢する。すなわち、引っ張りばね16は、第2リンク11における第3リンク20との接続部位が反力を受けた場合に、中押さえ29による踏みつけの発生により上方への反力を受けた場合に、その接続部位を下方に引き下げるように付勢する。つまり、引っ張りばね16と位置決めリンク13とが、中押さえ29の下降動作阻害時に中押さえ上下動機構M1に対する過剰負荷回避用の逃げ動作を可能とすると共に逃げ動作の際に中押さえ29を針板110側に付勢する付勢機構M2として機能する。そして、引っ張りバネ16は過剰負荷回避用の押さえバネとして機能する。
なお、付勢機構M2は、位置決めリンク13が第2リンク11に連結されることによって中押さえ上下動機構M1に接続されている。
中押さえ昇降カム45は、その溝がカム部となっており、当該中押さえ昇降カム45の回動範囲の半分は、回動中心から溝までの距離がほぼ同一の円弧状に形成され(以下、維持部という)、残る半分は、回動中心から溝までの距離が、その維持部における回動中心から溝までの距離よりも大きく、かつ、滑らかに変化する形状(以下、変化部という)となっている。
この中押さえ昇降カム45は、中押さえ29を縫製終了後の退避位置に上昇させる中押さえ上げ部材46の一端部46aを上下に昇降させるものであり、当該中押さえ昇降カム45の溝の内部には、中押さえ上げ部材46の他端部に設けられた円筒状のコロ47が摺動自在に嵌合されている。そして、コロ47が中押さえ昇降カム45の維持部に沿って移動する際には、中押さえ上げ部材46の一端部46aは昇降しないが、コロ47が中押さえ昇降カム45の変化部に沿って移動する際には、中押さえ上げ部材46の一端部46aが昇降するようになっている。
このような溝カムである中押さえ昇降カム45の図示しない溝の内側にはコロ47を介して押さえ上げ部材46の他端部が係合しているので、中押さえ昇降カム45が回転を行わない限り中押さえ上げ部材46は揺動を行うことがなく、一定の状態を維持することが可能となっている。そして、中押さえ昇降カム45、中押さえ上げ部材46及びコロ47により、中押さえ退避機構M3が構成されている。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ上下動機構M1の動作について説明する。
ミシンモータ2aの駆動により主軸2を回転させて偏心カム3を回動させると、接続リンク4の先端は主軸2の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動し、接続リンク4に連結された揺動軸抱き5も同方向に揺動する。その揺動軸抱き5が揺動することにより、揺動軸6も揺動するため、第1リンク8の一端部が揺動支点となって第1リンク8の他端部が揺動軸6の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。第1リンク8の他端部の揺動に伴い、第2リンク11の他端部は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に揺動し、第2リンク11の他端部に連結された第3リンク20及び第4リンク22は、その直列方向(上下方向)D2に揺動する。第3リンク20及び第4リンク22の揺動に伴い、第4リンク22に連結された中押さえ棒28は上下方向D1に沿って下方に移動するため、中押さえ29が上下方向に移動する。また、主軸2の回転により縫い針108が上下動するので、その縫い針108の上下動と連動するように中押さえ29は上下動する。
なお、以下の説明では主軸2の角度が0°のときに縫い針108及び中押さえ29が上死点に位置し、主軸2の角度が180°のときに縫い針108及び中押さえ29が下死点に位置するものとする。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ高さ調節機構M4による中押さえ29の高さの調節動作について説明する。
中押さえモータ42の駆動は、かさ歯車41、ベアリング40を介して可動軸39に伝達され、可動軸39は回動を始める。可動軸39の回動により、偏心カム38も回動し、移動リンク36は、可動軸39の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。移動リンク36の揺動により、案内部材34は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3に揺動する。
このとき、図6(a)、(b)に示すように、案内部材34の長孔34aで連結された第3リンク20と第4リンク22の連結部Pの段ねじ23(角駒33)は、そのねじ部分が長孔34aによって、第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3への移動が規制されているため(図6(a)参照)、揺動により伝達される力を逃がす場所が無くなり、段ねじ23(角駒33)は長孔34aに沿って上方に移動し、段ねじ23(角駒33)の案内部材34に追随した移動に伴って、直列に並んで連結されていた第3リンク20と第4リンク22同士がなす角度が変化し、中押さえリンク部材24は、略く字状になる(図6(b)参照)。中押さえリンク部材24が略く字状になると、中押さえ29は上下方向D1に沿って上方に移動する。これにより、中押さえ29の針板110からの中押さえ29の高さを調節することができる。
このように、中押さえ高さ調節機構M4は、中押さえモータ42を駆動源として、ミシンモータ(中押さえ上下動機構M1)による中押さえ29の上死点位置及び下死点位置を含む上下動ストローク全域について中押さえ上下動機構M1とは独立した動作により中押さえ29を上下方向に推移させることが可能となっている。
ここで図16は、中押さえ上下動機構M1の溝カム7aに対する第1リンク8の固定位置を調整して中押さえ上下移動量Vを3段階に変更した場合と、中押さえ高さ調節機構M4の中押さえモータ42を回転して、中押さえの下死点位置の高さh2を3段階に変更した場合を組合せて、9種類の中押さえ移動状態N1〜N9を説明する図である。
N1〜N3は前記中押さえ上下移動量VをV=0とし、N4〜N6は同V=0.5maxとし、N7〜N9は同V=maxとした場合であり、N1、N4、N7は中押さえの下死点位置h2をh2=0とし、N2、N5、N8はh2=0.5maxとし、N3、N6、N9はh2=maxに変化した場合を示す。
このとき、本願中押さえ機構は、溝カム7aに対する第1リンク8の位置(中押さえ上下移動量V)を固定した状態で、中押さえモータ42の回転角度を変更して下死点位置の高さh2を移動しても、中押さえ上下移動量Vは変化することなく常に一定である。このため、中押さえモータ42の回転角度を変更して下死点位置の高さh2を変更することは、上死点位置の高さh1も同時に同一高さ変更するように中押さえ機構が設計されている。
また、ミシン100は、図7に示すように、上述した各部、各部材の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置1000を備えている。そして、制御装置1000は、縫製プログラム70a,ストローク算出制御プログラム70b及びストローク可変制御プログラム70cが格納されたプログラムメモリ70と、縫製パターンデータ71a及び各種の設定情報(図示略)を記憶した記憶手段としてのデータメモリ71と、プログラムメモリ70内の各プログラム70a,70b,70cを実行するCPU73とを備えている。
また、操作パネル74は、中押さえ29の上下動ストロークの大きさを任意に設定する機能を有し、ストローク設定手段としても機能する。
なお、ミシンモータ2aには、例えば、サーボモータを適用することができる。
なお、X軸モータ76a及びY軸モータ77a、中押さえモータ42、布押さえモータ79aには、例えば、ステッピングモータを適用することができる。
そして、並び順に従って各種コマンドが実行されることで任意のパターン(模様)による縫いが実行される。
図8に示す縫製パターンデータにおいて、「縫い」のコマンドでは、保持枠111を移動させる際のX方向移動量、Y方向移動量のデータ(パラメータ)が第一設定値と第二設定値とに記録され、X軸モータ76aとY軸モータ77aの回転駆動量がこれらにより決定される。
また、「中押さえ高さ」のコマンドでは、中押さえモータ42により定められる中押さえ29の下死点高さが第一設定値に記録され、縫製時における中押さえモータ42の軸角度がこれにより決定される。
また、「糸切り」は糸切り装置(図示省略)を作動させるコマンド、「終了」はミシン100の布押さえモータ79aを駆動させて布を解放させるコマンドである。
なお、図8のX移動量、Y移動量、中押さえ高さの数値データにおける表記は10倍表記であり、例えば、「15」は、「1.5mm」を示している。
プログラムメモリ70に格納された縫製プログラム70aは、上記縫製パターンデータ71aの各コマンドを順番に読み出して、コマンドに応じて制御対象を特定し、コマンド内の設定数値に基づいてミシンモータ2a、X軸モータ76a、Y軸モータ77a、中押さえモータ42の動作制御を行い、縫製パターンデータ71aに基づく縫製を実行させるプログラムである。
例えば、上記図8の縫製パターンデータ71aの場合には、ペダルRの入力により縫製パターンデータにおける第一針目に関するデータである「中押さえ高さ」、「縫い」のコマンド及びその設定値が読み込まれ、これらに基づいて、中押さえモータ42、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが各々の設定値に応じた動作量で駆動が行われる。また、最初の「縫い」コマンドの読み込みによりミシンモータ2aの駆動が開始される。
そして、ミシンモータ2aの駆動開始以降は、エンコーダ2bのカウントにより主軸角度が監視され、所定の主軸角度で縫製パターンデータ71aにおける毎針のコマンドの読み込みが行われると共に、コマンド毎に定められた所定の主軸角度で制御対象の動作が実行される。
プログラムメモリ70に格納されたストローク取得制御プログラム70bは、非縫製時において、中押さえ上下動機構M1による中押さえ29の上下動ストローク(調節腕7の溝カム7aに対する第1リンク8の一端部の取付位置を調節して得られた調節後の上下動ストローク)を計測して取得するためのプログラムである。
かかるストローク取得制御プログラム70bによりCPU73が行う制御について図9〜図10に基づいて詳細に説明する。
図9(A)は中押さえ上下動機構M1による上下動ストロークにおいて中押さえ29を上死点位置とする主軸角度でミシンモータ2aを固定して中押さえ高さ調節機構M4を作動させた場合の動作状態を示した模式図、図9(B)は下死点位置でミシンモータ2aを固定して中押さえ高さ調節機構M4を作動させた場合の動作状態を示した模式図であり、図10は中押さえ高さ調節機構M4の押圧バネ30が中押さえモータ29にもたらすトルク負荷を説明するための模式図である。なお、図9では各構成の重なりを避けるために便宜上、リンク20,22の屈曲方向と中押さえモータ42の配置を左右逆にしているが、以下の原理説明には何ら影響はない。
そして、ミシンモータ2aの停止状態で中押さえモータ42のみを駆動させて中押さえ9を下降移動させ、当該中押さえ29が針板110の上面に当接した時の中押さえモータ42の動作量からミシンモータ2aによる中押さえ29の上死点位置の高さh1を算出する(図9(A)二点鎖線参照)。
かかる構造において、中押さえ29は、図10に示すように、押圧バネ30により常に下方に矢印Y1の押圧力で押圧されているため、屈曲状態にあるリンク20,22は真っ直ぐに伸びるようにバネ圧を受けることとなり、その結果、リンク部材20は矢印Y2のトルクを受け、角駒33は矢印Y3の方向に引っ張られ、案内部材34は矢印Y4の方向に回動力が付与され、移動リンク36矢印Y5の方向に引っ張られ、偏心カム38を介して中押さえモータ42の出力軸は矢印Y6の方向に負荷トルクT1が付与される。
一方、中押さえモータ42は、押圧バネ30に基づくトルクT1と同じ回転方向にトルクT2で駆動を行い、その際のトルクの合計が極力小さくなるように、トルクT2が設定されている。即ち、トルクT1+T2は、中押さえ29の下降による被縫製物への当接時に、当接による反力に抗しない大きさとなるように設定する(当接時には第2リンク11に連結された引っ張りばね16が伸びを生じて、中押さえモータ42のトルクT2と逆方向のトルクをモータ42の出力軸に付与することとなるが、少なくとも、この張りばね16に基づくトルクTrよりもトルクT1+T2が小さくなるようにT2は設定される(Tr>T1+T2))。これにより、針板110に中押さえ29が当接すると、中押さえ29は針板110により下降移動を妨げられるので、それまで回転状態にあった中押さえモータ42の出力軸の回転停止がエンコーダ81に検出されることとなる。かかる回転状態の変化を監視することで中押さえ29の針板110への当接を検出することを可能としている。
なお、上述のようなトルクを低く設定する制御を行わず、中押さえモータ42のトルクフィードバックにおける電流の値を監視して、中押さえ29が針板110に当接することでフィードバック制御によるトルク上昇の発生を前記電流値から検出し、これにより中押さえ29による針板110への当接を検出しても良い。
そして、ミシンモータ2aの停止状態で中押さえモータ42のみを駆動させて中押さえ9を下降移動させ、当該中押さえ29が針板110の上面に当接した時の中押さえモータ42の動作量からミシンモータ2aによる中押さえ29の下死点位置の高さh2を算出する(図9(A)二点鎖線参照)。
即ち、前述した中押さえ29の上死点位置の高さh1を求めた場合と同じようにして中押さえ29下降による針板110への当接を検出すると、CPU73は、当接時の中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81から読み取り、中押さえモータ42による最上位置角度から検出角度までの回転角度量を算出する。そして、かかる回転角度量から中押さえ29の下降移動距離を算出する。当該下降移動距離が、ミシンモータ2a(主軸角度)が中押さえの下死点位置であって中押さえモータ42が最上位置角度である場合における中押さえ29の高さh2となる。
なお、前述したように、中押さえモータ42の軸角度変化と中押さえ29の上下方向移動量との対応関係は、主軸角度によって変化するため、この場合も、主軸角度が180°における中押さえモータ42の軸角度と中押さえ29の上下移動量との関係を示す第二の中押さえモータ特性テーブル71cをデータメモリ71内に予め用意する。CPU73は、当接時の中押さえモータ42の軸角度から第二の中押さえモータ特性テーブル71cに基づいて中押さえ29の下降移動量を取得する。
以上のように、ストローク取得制御プログラム70bを実行することにより、CPU73は「ストローク取得制御手段」として機能することとなる。
ストローク取得制御プログラム70bに基づいてCPU73が実行する処理について図11に示すフローチャートに基づいて説明する。
ストローク取得制御は、例えば、操作パネル74において実行ボタンが押下されることで開始される。まず、CPU73は、中押さえモータ42をその可動範囲内における最上位置となる軸角度まで駆動させる(ステップS1)。次いで、ミシンモータ2aを針棒が上死点位置となる主軸角度(0°)まで駆動させる(ステップS2:図9(A)実線状態)。
かかる状態から中押さえモータ42を下降方向に駆動させ(ステップS3)、1ステップの駆動が行われるとエンコーダ81の出力を読み、中押さえモータ42の軸角度が停止したか否かを判定する(ステップS4)。そして、停止を生じていない場合にはステップS3に処理を戻し、停止を生じた場合には(図9(A)二点鎖線状態)、その時点での中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81により読み取り、当該軸角度から第一の中押さえモータ特性テーブル71bを参照して中押さえ29の高さh1を算出する(ステップS5)。
そして、中押さえモータ42を下降方向に駆動させ(ステップS8)、1ステップの駆動が行われると、中押さえモータ42の軸角度が停止したか否かを判定し(ステップS9)、停止を生じていない場合にはステップS8に処理を戻し、停止を生じた場合には(図9(B)二点鎖線状態)、その時点での中押さえモータ42の軸角度をエンコーダ81により読み取り、当該軸角度から第二の中押さえモータ特性テーブル71cを参照して中押さえ29の高さh2を算出する(ステップS10)。
そして、針棒上死点位置における中押さえ29の高さh1から針棒下死点位置における中押さえ29の高さh2を減じてミシンモータ2aによる中押さえ29の上下動のストロークVの値を算出する(ステップS11)。
かかるストロークVの値はデータメモリ71内に記憶され、処理が終了する。
プログラムメモリ70に格納されたストローク可変制御プログラム70cは、縫製時において、縫い針と同期して行われる中押さえ29の上下動のストロークを任意の設定値とする動作制御を行うためのプログラムである。
かかるストローク可変制御プログラム70cによりCPU73が行う制御について図12及び図13に基づいて詳細に説明する。
図12はミシンモータ2aによる中押さえ29の算出ストローク(ストローク算出制御プログラム70bで取得されたストローク)よりも大きなストロークで上下動させるための原理説明のための概念図であり、図13は算出ストロークよりも小さなストロークで上下動させるための原理説明のための概念図である。各図において、L1はミシンモータ2aによる中押さえ29の算出ストローク、L2は中押さえモータ42による上下動変位、L3はミシンモータ2aと中押さえモータ42との協働による合成された上下動ストロークであり、縫製時には中押さえ29はこの合成された上下動ストロークで上下動を行う。
算出ストロークに比して設定ストロークの方が大きい場合には図12の線図L2の高さ変化を生じ、設定ストロークの方が小さい場合には、図13の線図L2の高さ変化を生じるように中押さえモータ42は制御される。
即ち、中押さえモータ42に対して、
Y=(−(b−a)/2)×sin(X−90°)+offset …(1)
となるように駆動制御が行われる。ここで、Yは中押さえモータ42により中押さえ29に付与される中押さえ29の上下動変位(針板上面高さを0とする)であり、Xは主軸角度、bは設定ストローク、aは算出ストローク、offsetは調整値である。
上式(1)では、sin(X−90°)に(−(b−a)/2)が乗じられているので、算出ストロークに比して設定ストロークの方が大きい場合には図12の線図L2の高さ変化を生じ、設定ストロークの方が小さい場合には、図13の線図L2の高さ変化を生じることとなる。
また、中押さえ29は、前述したように、縫製時には、主軸角度180°において、縫製パターンデータ71aに定める中押さえ高さコマンドに基づく下死点高さとなる軸角度に制御する必要がある。従って、設定下死点高さをcとすると、offset=((b−a)/2)+cに設定される。
ここで、前述したように、中押さえ29の高さと中押さえモータ42の軸角度との対応関係は、主軸角度の変化に影響されるので、主軸角度が所定角度変化するごとに上式(1)により中押さえモータ42の軸角度を算出する場合には、主軸角度の所定角度変化ごとの中押さえ29の高さと中押さえモータ42の軸角度との対応関係を示す中押さえモータ特性テーブルを用意して、それぞれのテーブルに基づいて中押さえモータ42の軸角度を算出することが望ましいが、少なくとも、主軸角度の0°と180°とにおいて中押さえ29が予定された高さとなれば足りるので、この制御装置1000では、中押さえモータ42の軸角度を算出する主軸角度間隔は微小角度としつつ、主軸角度270〜90°の範囲では前述した第一の中押さえモータ特性テーブル71bを参照し、主軸角度90〜270°の範囲では前述した第二の中押さえモータ特性テーブル71cを参照して中押さえモータ42の軸角度を求めている。
以上のように、ストローク可変制御プログラム70cを実行することにより、CPU73は「ストローク可変制御手段」として機能することとなる。
ストローク可変制御プログラム70bに基づいてCPU73が実行する処理について図14及び図15に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、図14に示すように、縫製開始前に、操作パネル74から入力された中押さえ29のストローク値が設定ストロークbとしてデータメモリ71に記憶される(ステップS21)。そして、CPU73は、既に求められた算出ストロークaを読み出して(ステップS22)、設定ストロークbから算出ストロークaを減算し、中押さえモータ42による中押さえ29のストロークであるb−aの値がデータメモリ71に記憶される(ステップS23)。
次いで、縫製パターンデータ71aによる縫製の終了か否かを判定し(ステップS35)、終了ではない場合にはステップS32に処理を戻し、縫製の終了の場合には、ステップS31に処理を戻して、次の縫製の開始のためのペダルRの入力待ちとなる。
ミシン100の制御装置1000は、ストローク取得制御プログラム70bにより、ミシンモータ2aによる中押さえ29の上死点位置と下死点位置との各々において、中押さえモータ42によるその可動範囲における最上位置から中押さえ29を針板110に当接するまでの下降動作量を検出し、ミシンモータ2aによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量に基づく中押さえ高さの差からミシンモータ2aによる上下動のストロークaを算出するので、手作業による中押さえ29の高さ測定を不要とし、モータ制御によって中押さえ29の上下動ストロークを求めることが可能となるため、作業負担を飛躍的に軽減し、迅速にストロークを求めることが可能となる。また、ミシンの組み付け後のいつでもストロークを求めることが可能となる。
上記ミシン100では、設定ストロークを縫製開始前に一つのみ設定して縫製中は当該単一のストロークのみで動作を中押さえ29の上下動を行うこととしたが、設定ストロークは縫製パターンデータ71aに記憶させても良い。その場合、ストロークの変更を行う針数に対応させて記憶させ、さらには、複数の針数でそれぞれ個別にストローク設定を行うことにより、一連の縫製において、複数回のストロークの調節を行っても良い。
2 主軸
2a ミシンモータ
2b エンコーダ(主軸角度検出手段)
16 引っ張りばね
20 第3リンク
22 第4リンク
29 中押さえ
30 押圧バネ
33 角駒
34 案内部材
42 中押さえモータ
70a 縫製プログラム
70b ストローク取得制御プログラム
70c ストローク可変制御プログラム
73 CPU(ストローク取得制御手段、ストローク可変制御手段)
74 操作パネル(ストローク設定手段)
81 エンコーダ(モータ軸角度検出手段)
100 電子サイクルミシン
110 針板
1000 制御装置(縫製パターン設定手段、中押さえ高さ切替手段)
a 検出ストローク
b 算出ストローク
M1 中押さえ上下動機構
M2 付勢機構
M3 中押さえ退避機構
M4 中押さえ高さ調節機構
Claims (4)
- ミシンモータにより縫い針を上下動させる針上下動機構と、
前記ミシンモータにより回転駆動される主軸の角度を検出する主軸角度検出手段と、
縫製時に被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえと、
前記ミシンモータから動力を得て、前記縫い針の上下動に同期して前記中押さえに上下動させる中押さえ上下動機構と、
中押さえモータを駆動源として、前記ミシンモータによる中押さえの上下動の上死点位置と下死点位置の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構とを備えるミシンにおいて、
前記ミシンモータによる前記中押さえの上死点位置と下死点位置との各々において、前記中押さえモータによる中押さえの最上位置から針板に当接するまでの下降動作量を検出し、前記ミシンモータによる上死点位置と下死点位置とにおける各下降動作量の差から前記ミシンモータによる上下動のストロークを算出するストローク取得制御手段を備えることを特徴とするミシン。 - 前記中押さえの縫製時における上下動ストロークを設定するストローク設定手段と、
縫製時において、前記ミシンモータによる中押さえの上下動に同期して当該中押さえに上下動を生じるように前記中押さえモータを駆動すると共に、当該中押さえモータの上下動ストロークを前記ストローク設定手段による設定ストロークと前記ストローク取得制御手段により算出された算出ストロークの差と等しくなるように中押さえモータを制御して前記設定ストロークで中押さえを上下動させるストローク可変制御手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。 - 前記ストローク取得制御手段による前記中押さえの下降制御における針板への当接は、前記中押さえモータのフィードバック電流の変化から検出することを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
- 前記中押さえモータにその出力軸の角度を検出するモータ軸角度検出手段を備え、
前記ストローク取得制御手段による前記中押さえの下降制御における針板への当接は、前記中押さえモータの出力軸の回転状態の変化から検出することを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
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