本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用及び効果について説明する。本発明に係る昇降便器は、便器と、便器の後方に設けられた排水配管と、便器の後方において便器を固定する可動フレームと、便器と可動フレームを昇降可能に支持する固定フレームと、可動フレームと固定フレームを収容する収容部と、を備え、収容部の便器側には可動フレームに取付けられる前面部が備わり、収容部の前面部には排水配管の便器側端部を便器と連結可能にすると共に、便器の昇降に応じて移動する貫通孔が形成され、かつ前面部は少なくとも排水配管より下方に便器の昇降と共に伸縮する伸縮部を備えている。
本発明に係る昇降便器がこのような構成を有することで、便器後方に設けられた収容部(以下、「キャビネット」とする)の前面であって便器の排水配管下方に伸縮式の目隠し構造を設けることができる。
これによって、便器が上昇することでキャビネットの便器底部とトイレ床面との間に生じる開口部を収容部の前面に備わった伸縮部(シャッター)が塞ぎ、トイレ床面にある物やゴミ、ホコリ等がキャビネット内に入り込むことはない。そのため、この開口部からキャビネット内の清掃を行なう必要がない。
また、従来のようにキャビネット内に入ったゴミやホコリで便器昇降装置の昇降駆動部に悪影響を与えることもない。
また、便器底部とトイレ床面との間に生じた外部から見難いキャビネットの開口部にトイレ床面に置いた物が入り込んで、それを探すのに手間取るようなことがなくなる。
また、便器底部とトイレ床面との間に子供が手を突っ込んだまま悪戯半分で便器を降下させたりしてその手を挟むような虞もない。
また、用足し後に便器が自動的に所定位置(ホームポジション)に戻る昇降便器であって、このホームポジションを昇降高さの下限位置に設定した場合に、用足し後の急な体調の不良により使用者がトイレ床面に倒れたりしても、従来のように足がキャビネットの開口部内に入り込んだまま便器がホームポジションに向かって下降することで足が挟まれてしまうようなことがない。
また、便器と一体化した目隠し板であって便器の下降時にトイレ床面よりも更に下方に下降する目隠し板を設ける必要がないので、トイレ床下の特別な施工工事を必要としない。
また、便器と共にキャビネット自体も昇降する従来型の昇降便器のようにキャビネットの天板上に載せた花瓶等が昇降時に落下する虞がない。
好ましくは、伸縮部が複数の板状部材の連結により構成されるシャッターであるのが良い。伸縮部をシャッター等の硬質の材料で構成することで、伸縮部に衝撃が加わった時でもキャビネットの内部を保護することができる。
また、好ましくは、本発明に係る昇降便器は、伸縮部は巻取り式のロールスクリーンであるのが良い。収容部の前面の伸縮部を一枚のスクリーンで構成することができるので、この部分に段差が生じることがなくなり、清掃性に優れる。
以下、本発明の一実施形態に係る昇降便器について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下、高さ、幅、内側、外側等の表現は昇降便器をトイレに設置した状態を基準として用いるものとする。
図1は、本発明の一実施形態に係る昇降便器1を示す斜視図である。また、図2は、図1に示した昇降便器1の便器20が下限位置にある状態を示す正面図である。また、図3は、図1に示した昇降便器1の便器20が上限位置にある状態を示す正面図である。
本発明の一実施形態に係る昇降便器1は、便器20と、便器20の後方に設けられた蛇腹状排水管(排水配管)30(図4参照)と、便器20を支持すると共に昇降させる便器昇降装置(以下、単に「昇降装置」とする)40(図10参照)と、昇降装置40を収容するキャビネット(収容部)50を備え、キャビネット50の前面には固定パネル200と昇降パネル300とシャッター100が備わっている。
昇降パネル300は、便器20の昇降に応じて移動すると共に、シャッター100の上部と協働して貫通孔を形成する切欠き302(図4及び図5参照)が備わっている。そして、このシャッター100の上部と昇降パネル300の切欠き302とで形成される貫通孔は、蛇腹状排水管30の便器側端部31(図4参照)を便器20に連結可能とするようになっている。
シャッター100は、トイレ床面に昇降便器1を設置した状態で便器20が上昇した際に生じる便器底部21とトイレ床面とに生じる間のキャビネット50の開口部を塞ぐ役目を果たしている。
キャビネット50は、両脇に縦長の小物収納部51を備えると共に、上部に天板52を備え、側部に側板53を備えている。そして、キャビネット50の前面の両側には小物収納部51に小物を出し入れする縦長の開閉扉55が備わっている。各開閉扉の間には上述したように昇降装置40の前面を覆う固定パネル200と昇降パネル300とシャッター100が備わっている。
なお、固定パネル200は昇降パネル300よりも便器側に備わり、昇降パネル300は、便器20の昇降に合わせて便器20と一体に昇降するようになっている。また、シャッター100は、昇降パネル300の下側とキャビネット50の底部との間に伸縮可能に配置され、便器20を上昇させても便器底部21とトイレ床面との間にキャビネット50の開口部が生じないようになっている(図2に示す状態から図3に示す状態への変化を参照)。
図4は、図1に示した昇降便器1から便器20を取り去った状態を示す斜視図である。図4から明らかなように、昇降パネル300の切欠き302からは便器取付け用のボルト435が2本突出すると共に、便器20の排水口に接続される側面視略L字型の蛇腹状排水管30が突出している。なお、蛇腹状排水管30の他方の端部には伸縮自在なテレスコタイプの排管(図示せず)が備わり、便器20がどのような高さにあろうとも便器内の汚物を床下の排水管(図示せず)に常に排水するようになっている。
図5は、図4に示した昇降便器1の天板52と小物収納部51を除いた状態を便器20と共に示す図である。図4とは異なり、天板52が昇降装置40から外されているため、昇降装置40の上部に配置された貯水タンク450(蓋は図示していない)を確認することができる。なお、貯水タンク450は、後述する可動フレーム430の上部に付けられ、可動フレーム430の昇降に合わせて昇降装置内を昇降するようになっている。
なお、図5は、便器20が上限位置に達した状態の昇降装置40を示しており、シャッター100が伸びて最も拡がっていると共に、昇降パネル300の一部が固定パネル200の裏側に進入している。なお、図5においては、上述の通り昇降装置両脇に仕切り板455のみを備えた状態を示し、小物収納部51を示していない。小物収納部51は、トイレットペーパーや便器洗浄用の洗剤、ブラシ、生理用品等を収容するためのものであるが、本発明においては必ずしも必須の構成要件ではない。
図6は、図5に示した固定パネル200の裏面を示す平面図である。図6から分かるように、固定パネル200の裏面上部には2つの固定パネル取付け用弾性板211,212が所定間隔隔ててビス等の締結具で取付けられると共に、中央部分にも2つの固定パネル取付け用弾性板213,214が上側の固定パネル取付け用弾性板211,212よりも狭い間隔でビス等の締結具により取付けられている。
昇降装置40は、図10に示すようにボルト締めで床面に固定する固定部425を備えた固定フレーム420と、固定フレーム420に昇降可能に支持された可動フレーム430とを備えている。そして、昇降装置40の両側面には、昇降便器1の小物収納部51から昇降装置40の昇降機構部に使用者の手が入らないようにする仕切り板455が取付けられている。
なお、図30に示すように、一方の仕切り板455の上部には下方に向かう縦長の切欠き455aが形成され、貯水タンク450に取り付けられた図示していない洗浄レバーとの干渉を避けるようになっている。また、一方の仕切り板455の前方部分には上方一部を残した幅狭の切欠き455bが形成され、便器20の上昇と共に、昇降パネル300が上昇した際に昇降パネル300と仕切り板455との干渉を避けるようになっている。また、他方の仕切り板456にも給水用配管との干渉を避ける切欠き456aが備わっている。
固定フレーム420には、ここでは詳細には説明しないが、可動フレーム430を昇降させるガイド部及び駆動モータ、便器20の昇降を制御する制御ボックスが備わっている。また、可動フレーム430の上部には上述の通り貯水タンク450等が備わっている。そして、可動フレーム430は、固定フレーム420のガイド部に沿って昇降可能に固定フレーム420に支持されており、可動フレーム430の前面には便器20の後方凹部22と図示しないナットを介して結合する2本のボルト435が突出している。
また、固定フレーム420には固定パネル200が取り外し可能に備わり、可動フレーム430には昇降パネル300が取り外し可能に備わると共に、可動フレーム下部にはシャッター100の上部が固定されている。
便器20は陶器でできており、便器上面にはここでは図示しない温水洗浄便座が設けられている。温水洗浄便座には、制御コントローラを内蔵した操作スイッチ部が備わり、使用者が用足し後に局所温水洗浄を行なうことができるようになっている。
トイレの側壁部又はカウンタ等には、ここでは図示しないが使用者のトイレ内での使用態様や好みに合わせて昇降便器1の便器自体を昇降させたり、便器不使用時の便器20の高さ(ホームポジション)を設定したりする便器昇降操作スイッチが備わっている。この便器昇降操作スイッチは、便器昇装置内部の制御ボックスに電気的に接触式又は非接触式で繋がっており、両者間で双方向通信又は片方向通信を可能としている。
図7は、図5に示した昇降装置40の固定パネル200を取り外した状態で示す斜視図であり、これによって昇降パネル300の前面形状を理解することができる。図7から明らかなように、昇降装置40の固定フレーム420の最上部に備わった第1の横桟420aには、平面視角型U字状に折曲し両端部が第1の横桟420aにビス等の締結具で取付けられた固定パネル取付け部421,422が所定間隔隔てて備わっている。また、昇降装置40の固定フレーム420の上部に備わった第2の横桟420bにも、平面視角型U字状に折曲し両端部が第2の横桟420bにビス等の締結具で取付けられた固定パネル取付け部423,424が所定間隔隔てて備わっている。なお、固定パネル取付け部421,422,423,424と固定パネル200との具体的な取付けの仕方については後述する。
また、図7において昇降パネル300の上縁には昇降装置40の第2の横桟420bから前方に突出した固定パネル取付け部423,424との干渉を避けるための幅が広く浅い切欠き301が形成されている。なお、図7も便器20が上限位置にある昇降装置1を示している。
また、昇降パネル300の下縁には矩形状の切欠き302が形成されている。また、上述の通り切欠き302を介して便器取付け用のボルト435を突出させると共に、蛇腹状排水管30の便器20との接続部を突出させるようになっている。そして、切欠き302の上縁中央部302aは半円状に更に切欠かれ、給水パイプ26の開口部を露出させるようになっている。
図8は、図7に示した昇降パネル300を裏側から示す正面図である。図8の上部に形成された切欠き301の側縁近傍には、図10に示す上側の昇降パネル上側取付け部431,432の上端に係合する昇降パネル取付け用弾性板311,312が所定間隔を隔てて備わっている。また、昇降パネル300の下方の切欠き302の側縁近傍には、図10に示す下側の昇降パネル下側取付け部183,184に係合する昇降パネル取付け用弾性板313,314が所定間隔を隔てて備わっている。
図9は、図7に示した昇降装置の貯水タンク450を取り外した状態を示す斜視図である。
図10は、図7に示した昇降装置40の昇降パネル300を外して示す斜視図であり、前述した構造となっている。なお、図10も、便器20が上限位置に達した状態、即ち可動フレーム430が上限位置に達して可動フレーム430の下端に固定されたシャッター100が最も伸びた状態となっている。固定フレーム420には上述したようにここでは詳細に図示しないガイド部に沿って昇降する可動フレーム430が備わっている。可動フレーム430には前述した便器取付け用の2本のボルト435が可動フレーム430の前面に取付けられると共に、蛇腹状排水管30の便器側端部31が突出するようにブラケットを介して取付けられている。また、可動フレーム430の上部の横桟430aには上方に突出し上端が前方に向かって側面視L字状に折曲した昇降パネル上側取付け部431,432が備わっている。
図11は、図8に示した昇降パネル300の下側部分の固定状態をパネル裏側から示す斜視図である。また、図12は、図11に示した固定状態をより詳細に示す側面図である。可動フレーム430の下側には、可動フレーム430の下側の横桟430b(図31参照)に取付けられる横長の目隠し板180が取付けられる。目隠し板180は上縁の長手方向かなりの部分がキャビネット内方に所定幅で折り曲げられ、上面180aを形成している。そして、この上面180aの一部から昇降パネル取付け用弾性板313,314に係合する昇降パネル下側取付け部183,184が起立している。また、昇降パネル下側取付け部183,184の内側には、段部185,156(図13参照)を介してキャビネット前方に若干ずれて位置した排水管目隠し部187,188が起立している。
そして、昇降パネル300を上方から垂直下方にずらすことで、図11に示すように昇降パネル300の下端300dが目隠し板180の上面180aの一部に当接すると共に、図12に示すように下側の昇降パネル取付け用弾性板313(314)のテーパ部313b(314b)と昇降パネル300の裏面300bとの間に入り込んで下側の昇降パネル取付け用弾性板313(314)の弾性力を介して昇降パネル300を目隠し板180に取付けると共に、昇降パネル300の上側の昇降パネル取付け用弾性板311,312と昇降パネル300の裏面300bとで昇降パネル上側取付け部431,432を挟み込み、昇降パネル300が前後にずれないようにしている。この際、昇降パネル300がシャッターと面一になるように取付けることが好ましい。また、上述のように目隠し板180の昇降パネル下側取付け部183,184と排水配管目隠し部187,188との間に段部185,186が形成されているので、この段部185,186が昇降パネル300の下側切欠き302の側縁部を案内して、昇降パネル取付け用弾性板313,314と昇降パネル下側取付け部183,184とを幅方向に合致させて係合させることが可能である。なお、固定パネル200の固定パネル取付け用弾性板211〜214の固定パネル取付け部421〜424に対する取付け構造も上述した昇降パネル取付けの構造と同様である。
続いて、本発明の要旨であるシャッター100の構造について詳細に説明する。図13は、図1乃至図5、図7、図9、図10に示したシャッター100の斜視図であり、目隠し板180をシャッター上部に備えた形で示している。また、図14は、図13に示したシャッター100を目隠し板180と共にシャッター裏側から示した斜視図である。また、図15は、図14に示したシャッター100の伸縮機構を拡大して示す斜視図である。また、図16は、図13乃至図15に示したシャッター100を可動フレーム430に取付けた後であって目隠し板180を可動フレーム430に取付ける前の状態を示す斜視図である。また、図17は、図7に示した昇降パネル300と目隠し板180及び図13乃至図15に示したシャッター100との結合関係をシャッター裏側から示した斜視図である。また、図18は、シャッター100のシャッター下側取付け部190をこれが取付けられる固定フレーム420の固定部425と共に示す斜視図である。
シャッター100は、図13乃至図15に示すように複数(本実施形態では5枚)の細長の遮蔽板110〜150を互いに幅方向に連結した形態を有しており、最上部の遮蔽板110の側面視でL字状に折曲した目隠し板180が上側に配置される関係となっている。また、シャッター100は、最下部のシャッター下側取付け部190にシャッター100を固定フレーム420に取付ける取付け片191を備えている。(図18参照)また、シャッター下側取付け部190には幅方向全体に亘って、前方に側面視L字型を掃除用具などが接触した際に不快な金属音が発生しないように起立板170(図13参照)が備わっている。この起立板170は不快な接触音が発生しない部材であれば、木材や樹脂材など材質は適宜選択してよい。
図14に示すように最上部の第1の遮蔽板110に一部が重なる目隠し板180は、上述したように上部がキャビネット内方に折れ曲がり細長の上面180aをなすと共に、上面180aのキャビネット内方端部にキャビネット内の蛇腹状排水管30の開口部が突出するのに充分な間隔を有する2つの起立部が突出している。
また、第1の遮蔽板110の上縁からはキャビネット内方に向かって側面視L字型のシャッター上側取付け部119が備わり、シャッター上側取付け部119の取付け孔119bを介してビスとの締結具で第1の遮蔽板110を可動フレーム430の下側の横桟430bに取付けるようになっている。また、第1の遮蔽板110のシャッター上側取付け部119の略中央には上縁を開口とする矩形状の切欠き119aが備わり、可動フレーム430の便器受け部439がこの部分から突出するようになっている。
目隠し板180の上面180aの起立部は、上述したように平面視で段部185,186が設けられ、段部185,186を挟んで外側の起立部が昇降パネルの裏側下端近傍に備わった昇降パネル取付け用弾性板313,314に係合する昇降パネル下側取付け部183,184を成すと共に、内側の起立部が排水管目隠し部187,188を成している。そして、段部185,186に昇降パネル300の下端の切欠き302の開口側縁部が係合するようになっている。また、上面180aにおける段部185,186の幅方向内側には昇降パネル300の下端が当接するようになっている。
シャッター100の下側のシャッター下側取付け部190は、図18に示すように側面視でL字状をなした細長の板材からなり、起立部190bの上端が第5の遮蔽板150と後述する構造で伸縮自在に連結するようになっている。また、シャッター下側取付け部190の底面部190aの両端には、シャッター100を固定フレーム420に取付けるための取付け片191が延在し、取付け片191の略中央に形成された取付け孔191aを介してシャッター下側取付け部190を固定フレーム420にビス等の締結具で取付けるようになっている。また、シャッター下側取付け部190の底面部190aの中央部には高さの低い幅広の起立部192が形成されている(図17参照)。起立部192は、固定フレーム下端部に当接されてシャッター100が幅方向に歪まないようにすると共に、シャッター下側取付け部190の剛性を維持する役目を果たしている。
本実施形態で5枚幅方向に並んで連結された遮蔽板110〜150は、図14及び図15に示すように可動フレーム430(図10参照)に取付けられる第1の遮蔽板110と、この第1の遮蔽板110に順次下方向に向かって連結される第2乃至第5の遮蔽板120〜150から構成されている。
図14に示すように、第1の遮蔽板110には、キャビネット内側に向かって折り曲げられ、かつその端部が上方に延在したシャッター上側取付け部119が形成されている。シャッター上側取付け部119の上縁の中央には幅広の切欠き119aが設けられ、可動フレーム430の便器当て部428と干渉しないようになっている。また、切欠き119aの両側には第1の遮蔽板110を可動フレーム430に取付けるための取付け孔119bが形成され、第1の遮蔽板110を可動フレーム430にビス等の締結具でしっかりと取付けるようになっている。
なお、以下に説明する連結ピン挿入孔の孔径は連結ピンの外径よりも若干大きく形成され、便器20が下降して遮蔽板同士が重なり合う際に遮蔽板同士の横方向のずれを最小限に押さえつつスムーズに重なるようになっている。
第1の遮蔽板110の上縁には第2の遮蔽板120との連結片111(112)がキャビネット内側に向かって所定間隔隔てて突出形成されている。そして、第1の遮蔽板110の連結片111(112)からは連結ピン115(116)が下方に向かって延在している。連結ピン115(116)の長さは、便器20が上限位置にあってシャッター100が伸びた状態で後述する第2の遮蔽板120の外側連結片123(124)のピン挿入孔123a(124a)に連結ピン115(116)の下端が挿入係合された状態を維持する程度の長さである。なお、以下に説明する各遮蔽板に備わる連結ピンの長さもこれと同様の作用を発揮する長さである。
第2の遮蔽板120の上縁には第1の遮蔽板110の連結ピン115(116)の下端と係合する位置に上述した外側連結片123(124)が所定間隔隔てて突出形成されると共に、外側連結片123(124)の内側に隣接して内側連結片121(122)がキャビネット内方に突出形成されている。第2の遮蔽板120の内側連結片121(122)からは下方に向かって第1の遮蔽板110の連結ピン115(116)と同等の連結ピン125(126)が延在し、第3の遮蔽板130の外側連結片133(134)のピン挿入孔133a(134a)に挿入係合されるようになっている。
第3の遮蔽板130の外側連結片133(134)の内側近傍にも第2の遮蔽板120との同等の内側連結片131(132)が突出形成され、第4の外側連結片143(144)のピン挿入孔143a(144a)に挿入係合する連結ピン135(136)が下方に向かって備わっている。
なお、シャッター下側取付け部190の上縁にも連結ピン155,156を挿入するためのピン挿入孔193a(194a)が形成された連結片193(194)が備わっている。
以下、第4及び第5の遮蔽板140,150も第2及び第3の遮蔽板120,130と同等の構成を有している。即ち、第1の遮蔽板110の連結片111(112)及び第2乃至第5の遮蔽板120〜150の内側連結片121(122)〜151(152)の間隔は上側から下側に向かって狭まるように形成され、各遮蔽板120〜150の外側連結片123(124)〜153(154)及びシャッター下側取付け部190の連結片193(194)の間隔も上側から下側に向かって狭まるように形成されている。そして、便器20が下降して遮蔽板同士が重なり合い、シャッター100が縮んだ状態になっても、各連結ピン同士が干渉しないようになっている。
続いて、シャッター100と固定パネル200及び昇降パネル300並びに便器20の昇降装置40への組み付け工程(以下、単に「工程」とする)について説明する。
まず、この工程を行なう前に排水用蛇腹管30や貯水タンク450が備わった昇降装置40を用意する。
昇降装置40はまず、床面に固定され、固定フレーム420のトイレ後壁結合部429をボルト等を介してトイレ後壁に取付けられる。その後、配管と接続され、貯水タンク450が取り付けられる。その後に仕切り板455を取り付ける。
続いて、第1の工程としてシャッター100を昇降装置40に組み付ける。この工程においては、シャッター100の第1の遮蔽板110を昇降装置40の可動フレーム430にネジ等の締結具を介して取付ける。これと同時にシャッターの第5の遮蔽板150の下側に連結されたシャッター下側取付け部190の両脇の取付け片191を固定フレーム420の下端部に位置合わせし、取付け片191に形成された取付け孔191aを介して図示しないネジ等の締結具で固定する(図18参照)。
これによって、可動フレーム430の昇降に応じて各遮蔽板の連結ピンの隣接する遮蔽板の連結片のピン挿入孔への挿入係合量が変化して各遮蔽板同士の重なり量が変化し、シャッター100を伸縮させる。即ち、便器取付け状態で便器20が下限位置にある場合は、図2に示すように遮蔽板110〜150が重なり合ってシャッター100が縮んだ状態となる。また、便器取付け状態で便器20が上限位置にある場合は、図3に示すように隣接する遮蔽板110〜150の重なり度合いが最小限となってシャッター100が伸びた状態となる。
続く工程として、目隠し板180を可動フレーム430に取付ける。この際、シャッター100の上縁が目隠し板180の下縁と重なり、目隠し板180の幅方向端部がシャッター100の幅方向端部と一致し、目隠し板180の切欠き182から可動フレーム430に備わった便器当て部428が露出するように位置合わせし、目隠し板180の上面180aに備わった取付け孔180bを介して可動フレーム430の横桟430bにビス等の締結具で取付ける。
続いて、昇降パネル300を上方から下方にずらして昇降パネル300を可動フレーム430に取付ける。この際、昇降パネル300の下側の昇降パネル取付け用弾性板313,314が目隠し板180の起立部の外側部分に位置する昇降パネル下側取付け部183,184にそれぞれ係合すると共に、可動フレーム430から上方に延在した昇降パネル上側取付け部431,432の上端に昇降パネル300の上側に備わった昇降パネル取付け用弾性板311,312が係合するように取付ける。これによって、可動フレーム430の昇降に伴って昇降パネル300が可動フレーム430と一体となって昇降するようになる。
続いて、固定フレーム420に固定パネル200を取付ける。この際、固定フレーム最上部の第1の横桟420aに備わった固定パネル取付け部421,422に固定パネル裏側の上側に備わった固定パネル取付け用弾性板211,212を係合させると共に、第1の横桟420aより若干下側に位置した第2の横桟420bに備わった固定パネル取付け部423,424に固定パネル200の下側に備わった固定パネル取付け用弾性板213,214を係合させる。
固定フレーム420の固定パネル取付け部421〜424は、可動フレーム430の昇降パネル下側取付け部183,184及び昇降パネル上側取付け部431,432よりも前方に突出しているので、固定パネル200を固定フレーム420の固定パネル取付け部421〜424に取付けることで、固定パネル200の下側一部が昇降パネル裏側の下方に位置するように、即ち昇降パネル300の上部が固定パネル200の下部裏側に一部入り込むように取付けられる。
続いて、仕切り板455の両側に小物収納部51、開閉扉55を取付ける。そして、昇降装置40及び小物収納部51、開閉扉55、側板53の上面に天板52を取付ける。以上の組み付け工程によって、昇降便器1のトイレへの設置を終える。
なお、上述したように固定パネル200は固定パネル取付け用弾性板211〜214を介して固定フレーム420の固定パネル取付け部421〜424に取り外し可能に取付けられ、昇降パネル300も昇降パネル取付け用弾性板311〜314を介して昇降パネル上側取付け部431,432及び昇降パネル下側取付け部183,184に取り外し可能に取付けられる。即ち、固定パネル200及び昇降パネル300を昇降装置40から簡単に取り外すことができ、昇降装置40の内部の点検や清掃を容易に行なうことができる。
続いて、以上のような構造を有する昇降便器1の作用について説明する。本実施形態に係る昇降便器1がこのような構成を有することで、便器後方に設けられたキャビネット50の前面であって、便器20の排水配管下方に伸縮式の目隠し構造を設けることができる。
これによって、便器20が上昇する際に便器底部21とトイレ床面との間に生じるキャビネット50の開口部をシャッター100が塞ぎ、トイレ床面にある物やゴミ、ホコリ等がキャビネット内に入り込むことがなくなる。そのため、このような開口部からキャビネット内の清掃を行なう必要がない。また、従来のようにキャビネット内に入ったゴミやホコリで昇降装置40の昇降駆動部に悪影響を与えることはない。また、便器底部21とトイレ床面との間に生じた外部から見難いキャビネットの開口部にトイレ床面に置いた物が入り込んで、それを探すのに手間取るようなことがなくなる。また、便器底部21とトイレ床面との間に子供が手を突っ込んだまま悪戯半分で便器を降下させたりしてその手を挟む虞もない。また、用足し後に便器が自動的に所定位置(ホームポジション)に戻る昇降便器であって、このホームポジションを昇降高さの下限位置に設定した場合に、用足し後の急な体調の不良により使用者がトイレ床面に倒れたりしても、従来のように足がキャビネットの開口部内に入り込んだまま便器がホームポジションに向かってこの足が挟まれてしまうようなことがない。また、便器と一体化して便器の下降時にトイレ床面よりも更に下方に下降する目隠し板を設ける必要がないので、トイレ床面の床下の特別な施工工事を必要としない。
なお、本発明の発明者は実際に試作品を作成し、上述の効果を確認した。具体的には、上述の実施形態に対応する試作品として、便器上限位置においてシャッター上端から床面までが247.5mmで、かつ便器下限位置においてシャッター上端から床面までが107.5mmとなった。また、上述の第2変形例に対応する試作品として、便器上限位置においてシャッター上端から床面までが301mmで、かつ便器下限位置においてシャッター上端から床面までが161mmとなった。
即ち、本発明によるこのような便器昇降ストロークの大きい昇降便器でも、シャッターでキャビネットの開口部を塞ぐことができた。そして、従来の昇降便器の構造では達成し得ない本発明の効果を確認することができた。
続いて、本実施形態の第1及び第2変形例について説明する。なお、これらの変形例に関して上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
まず、上述の実施形態の第1変形例について説明する。図19は、本発明の一実施形態の第1変形例を示す斜視図である。また、図20は、図19に示した第1変形例のシャッター500を表側から示す斜視図である。また、図21は、図19に示した第1変形例のシャッター500を裏側から示す斜視図である。また、図22は、図21に示したシャッター500の伸縮機構を部分的に拡大して示す斜視図である。
この第1変形例は固定パネル800が上側固定パネル810と下側固定パネル820からなり、上側固定パネル810にはその下端部から便器20の取付け用のボルトや蛇腹状排水管30、給水パイプ26、可動フレーム430の便器受け部439との干渉を防ぐ矩形状の大きな切欠き811が備わっている。また、下側の固定パネルは、その上縁から半円状の大きな切欠き821が備わっている。そして、切欠き821の内側にシャッター500が備わっている。
シャッター500は、細長い遮蔽板510〜570を幅方向に連結させて構成している点では上述の実施形態と共通しているが、図20に示すように各遮蔽板自体の長さがシャッター上部から下部に向かって段階的に短くなっている点で上述の実施形態と異なっている。また、遮蔽板510の上部にはシャッター上部取付け用プレート580が備わり、このシャッター上部取付け用プレート580の上部には可動フレーム430から突出する蛇腹状排水管30との干渉を防ぐ幅広の切欠き581が形成されると共に、この切欠き581の下縁略中央に便器受け部439との干渉を防ぐ幅の狭い切欠き582が更に形成されている。そして、切欠き582の両脇に2つずつ取付け孔583が形成され、ビス等の締結具(図20において左側にのみ図示)を介してシャッター上部取付け用プレート580を可動フレーム430の横桟430bに取付けるようになっている。
遮蔽板510〜570は、上述したように長さの最も長い第1の遮蔽板510から長さの最も短い第7の遮蔽板570まで段階的に長さが変化している。また、遮蔽板510〜570の両端部近傍には各遮蔽板の幅方向を長手方向とするスリット511〜571がそれぞれ形成されている。
シャッター上部取付け用プレート580の裏側両端下部には、第1の遮蔽板510のスリット511と係合する係合部585が備わっている(図21では右側の係合部のみ図示)。この係合部585は、第1の遮蔽板510のスリット511に沿って移動可能となっており、係合部585がスリット511に沿ってスムーズに移動することで、シャッター上部取付け用プレート580と第1の遮蔽板510の重なり度合いを変えることができるようになっている。
また、第1の遮蔽板510の裏側には、スリット511の下端部の内側近傍であって第1の遮蔽板510の下縁近傍に第2の遮蔽板520のスリット521と係合する係合部512が備わっている(図21では右側の係合部のみ図示)。この係合部512は、第2の遮蔽板520のスリット521に沿って移動可能となっており、係合部512がスリット521に沿って移動することで、第1の遮蔽板510と第2の遮蔽板520の重なり度合いを変えることができるようになっている。
以下、第2の遮蔽板520乃至第6の遮蔽板560まで隣接する遮蔽板同士において同様の作用を発揮する係合部522〜562が備わり(図21では右側の係合部のみ図示)、この係合部522〜562が下側の遮蔽板のスリットに沿って移動可能となっている。即ち、係合部522〜562がスリット521〜571に沿って移動することで、上側の遮蔽板と下側の遮蔽板の重なり度合いを変えることができるようになっている。
上述した第1変形例がこのような構成を有することで、上述した実施形態の作用を有することに加えて、シャッター500の両端の部分を固定パネル800で隠すことができる。その結果、シャッター500の端部に備えたシャッター伸縮機構の部分を外部から見えないようにし、このシャッター伸縮機構の構造の見栄えを気にすることなくこの部分の設計の自由度を高めると共に、昇降便器2の外部からの美観を保つことができる。
続いて、本発明の一実施形態に係る第2変形例について説明する。図23は、本発明の一実施形態の第2変形例を示す斜視図である。また、図24は、図23の第2変形例において天板52及び小物収納部51、側板53、及び開閉扉55を取り去り、かつ便器20を取り外した状態を示す斜視図である。また、図25は、図24に示した第2変形例における昇降便器3の固定パネル900を取り外した状態を示す正面図である。また、図26は、図24に示した第2変形例における昇降便器3のシャッター600を示す斜視図である。また、図27は、図26に示したシャッター600の伸縮機構を拡大して示す斜視図である。
上述の実施形態の第2変形例に係る昇降便器3は、固定パネル900の形状とシャッター形状が上述の実施形態及びその第1変形例と異なっている。具体的には、固定パネル900は昇降装置40の前面を全体的に覆う大きさを有し、その下端部から深さの深い切欠き901が上方に向かって形成されている。この切欠き901は、昇降装置40の可動フレーム430に備わった便器取付け用のボルト435、蛇腹状排水管30、給水パイプ26、及び便器受け部439との干渉を避けるためのものである。
シャッター600は、図25及び図26に示すように第1変形例ほど上側の遮蔽板610から下側の遮蔽板640に向かって幅が狭くなっておらず、幅が僅かに段階的に狭くなるようになっている。
シャッター600は、図26に示すようにシャッター600の最上部に位置するシャッター上部取付板650と、このシャッター上部取付板650から幅方向に連結された第1乃至第4の遮蔽板610〜640からなる。そして、シャッター上部取付け板650の上縁には、上述の実施形態及びその第1変形例と同等の作用を発揮する切欠き651が形成されている。切欠き651の最も深さの深い部分の両側近傍にはシャッター上部取付け板650を可動フレーム430に取付ける取付け孔652が形成され、シャッター上部取付け板650をビス等の締結具(図26では左側のビスのみ図示)で可動フレーム430の横桟430bに取付けるようになっている。
また、第4の遮蔽板640の両端からはシャッター600を固定フレーム420の下端に取付けるシャッター下部取付け部645が備わり、シャッター下部取付け部645の端部に形成された取付け孔645aを介してシャッター600の下端をビス等の締結具で固定フレーム430の下端にしっかりと取付けるようになっている。
続いて、シャッター600の伸縮構造について図面に基づいて説明する。第1乃至第4の遮蔽板610〜640の両端部は、幅方向全体にわたって平面視で角型U字状に折り曲げられ、それぞれ折り曲げ部611〜641を形成している。そして、第1乃至第4の遮蔽板610〜640の両端の折り曲げ部の上部にはこれらの遮蔽板の上側に連結される遮蔽板の折り曲げ部の内幅よりも若干狭い幅を有する外側折り返し部612〜642が形成されている。
また、シャッター上部取付け板650及び第1乃至第3の遮蔽板610〜630の両端の折り曲げ部611〜631の下端には内側折り返し部653,613〜633が形成されて、この内側折り返し部613〜633は、第1乃至第3の遮蔽板の両端部折り曲げ部内におけるこれらの遮蔽板の下側に連結される遮蔽板の外側折り返し部の折り曲げ部の内幅よりも若干狭い幅を有している。
そして、遮蔽板610〜630の外側折り返し部がその上側に位置する遮蔽板及びシャッター上部取付け板の折り曲げ部内を摺動することでシャッター600を伸ばすことができ、遮蔽板の外側折り返し部がその上側に位置する遮蔽板又はシャッター上部取付け板の内側折り曲げ部653,613〜633に当接することでこの内側折り曲げ部がストッパとしての役目を果たし、シャッター600の伸び量を規制するようになっている。
上述した第2変形例に係る昇降便器3がこのような構成を有することで、上述した実施形態の作用を有することに加えて、シャッター600の両端の部分を固定パネル900で隠すことができる。その結果、シャッター600の端部に備えたシャッター伸縮機構の部分を外部から見えないようにし、このシャッター伸縮機構の構造の見栄えを気にすることなくこの部分の設計の自由度を高めると共に、昇降便器3の外部からの美観を保つことができる。
なお、上述の実施形態及びその変形例に係る昇降装置のシャッターに代わる構造として、図28に示すようなロールスクリーン70を用いても良い。この場合、ロールスクリーン70の上端部71を可動フレーム430の下側の横桟430bに固定すると共に、ロールスクリーン70の巻回部である下端部72を昇降装置40の固定フレーム420の下端部に回転可能に固定すれば良い。この際、ロールスクリーン70は、図示しないバネ材によって常に張力が作用して見栄え上綺麗に張った状態を保つようにするのが好ましい。
また、上述したロールスクリーン70の代わりに、図29に示すようなアコーディオンカーテン80を用いることも可能である。この場合、アコーディオンカーテン80の上端部81を可動フレーム430の下側の横桟430bに固定すると共に、下端部82を固定フレーム420の底部に取り付ければ良い。このようなアコーディオンカーテン80を用いることによって、この部分の清掃性を高めることができる。
なお、ここに示した各実施形態は本発明の一形態に過ぎない。昇降便器の構造や、施工手順、シャッター取付構造などは本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。