JP2010126559A - 撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物、及び塗装品 - Google Patents

撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物、及び塗装品 Download PDF

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Abstract

【課題】金属、ガラス、セラミックなどの基材に適用した場合においても、長期間強い接着力を保持し、耐薬品性にも優れ、長期間、撥水・撥油性を持続する皮膜を形成するための樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物中に、水酸基を有するフッ素樹脂、下記の一般式(1)で表されるオルガノシラン、塩基性有機シラン化合物、及び、イソシアネート樹脂を含有する。
Figure 2010126559

(Rは炭素数1〜10の炭化水素基を表し、nは1以上の整数を示す)
【選択図】図1

Description

本発明は、撥水・撥油性の皮膜を形成するための樹脂組成物、及び撥水・撥油性の皮膜が形成された塗装品に関するものである。
近年、住宅の内装設備部材(キッチン、バス、トイレなど)を中心に、水垢や湯垢などの汚れが付着しにくく除去しやすいといった、表面に撥水・撥油機能を有する製品の要求が高くなってきている。通常、撥水・撥油機能は、材料の表面に撥水性及び撥油性に優れたコーティング材により皮膜を形成することにより得られるものである。撥水・撥油性皮膜とは、一般的に、水の接触角が90°以上で油(特にオレイン酸)の接触角が40°以上になる皮膜のことを言う。撥水・撥油性の皮膜の表面は、親水性の表面よりも結合力が弱く、水垢や油の付着力が低減されるため、軽い力で簡単に付着した汚れを除去できるなどのメリットがある。そのため、現在、このような撥水性及び撥油性に優れたコーティング材の開発が行われている。
撥水・撥油性の皮膜を形成する材料としては、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などが知られている。これらの樹脂は常温で塗膜を形成した後、加熱硬化することにより皮膜が形成されるものである。
フッ素樹脂としては、分子内にフルオロオレフィンなどの骨格を導入したものが一般的に使用されている。このような含フッ素共重合体は、硬化性官能基として一般的に水酸基を有するものであり、例えばフルオロオレフィンにヒドロアルキルビニルエーテル、また必要に応じてアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等を添加して、溶液中で重合することにより得られる。そして、得られた反応液は、そのまま、あるいは芳香族炭化水素類や塗料用シンナーにて希釈され、硬化型塗料用ベースとして用いられるのが一般的である。
フッ素樹脂を用いた樹脂組成物において、さらに基材に形成された皮膜の撥水・撥油性を高めるために、種々の試みがなされている。例えば、フッ素樹脂とアクリル樹脂とを用いた樹脂組成物(特許文献1)や、基材への密着性に優れたフッ素樹脂複合材(特許文献2)や、撥水・撥油性に優れたフッ素樹脂硬化性組成物(特許文献3)などが提案されている。
また、フッ素樹脂骨格にジメチルシリコン基などのシリコン基を付与することでより撥水・撥油性機能を高める試みもなされている。例えば、ラジカル重合性のポリシロキサンと、フロロアルキル基を有するラジカル重合性組成物とを共重合したグラフト重合体組成物により形成される、長期間に亘って優れた撥水・撥油性を示す皮膜が提案されている(特許文献4)。また、反応性シリコーンを用いてフッ素共重合により得た樹脂組成物により形成される、撥水・撥油性の維持にすぐれた皮膜が提案されている(特許文献5)。
しかしながら、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などの撥水性の樹脂材料は、一般的に親水性の樹脂材料よりも分子内の極性基の数が少なく、基材との結合力が低いため、ステンレスやアルミなどの基材に塗装しても密着性が劣り、単体で皮膜を形成すると簡単に剥離してしまうといった問題がある。特に、ステンレスなどの基材は表面に不動態膜を形成することで水酸基の数が他の材料よりも少なくなるため密着性が低くなる傾向にある。したがって、撥水・撥油性の樹脂組成物をこれらの金属などの基材に塗装する場合、プライマーなどの接着性に優れたコーティング材であらかじめ皮膜形成した後に、樹脂組成物の皮膜を形成して利用するケースが多く、皮膜の形成に手間が生じていた。
また、フライパンなどの金属基材に適用されているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などは、接着性や耐薬品性はあるものの、皮膜の表面の硬度が低く柔らかいため傷がつきやすく、また硬化反応させるための温度が数百度以上であるために、適用する箇所が限定されるといった問題があった。
特開昭63−199211号公報 特開平10−329280号公報 特開2002−309054号公報 特開2001−151831号公報 特開2004−115792号公報
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、金属、ガラス、セラミックなどの基材に適用した場合においても、長期間強い接着力を保持し、耐薬品性にも優れ、長期間、撥水・撥油性を持続する皮膜を形成するための樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物は、水酸基を有するフッ素樹脂、下記の一般式(1)で表されるオルガノシラン、塩基性有機シラン化合物、及び、イソシアネート樹脂を含有することを特徴とするものである。
Figure 2010126559
(Rは炭素数1〜10の炭化水素基を表し、nは1以上の整数を示す)
この発明によれば、撥水性の皮膜を形成することにより、親水性の汚れが付着しやすい、金属、ガラス、セラミックなどの材料を、親水性の汚れが付着しにくく、また親水性の汚れが付着したとしても除去しやすくすることができる。また、撥油性の皮膜を形成することにより、油や親油性の汚れが付着しても容易に除去することができるので、油汚れの付着しやすい用途への利用が可能となる。また、皮膜がフッ素樹脂により形成されているので耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。さらに、基材への接着性が優れているので、撥水性及び撥油性の機能を長期間維持することができる。
請求項2に係る撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物は、上記構成に加え、フッ素樹脂がジメチルシリコン基を有するものであることを特徴とするものである。
この発明によれば、フッ素樹脂のジメチルシリコン基が皮膜の表面に配向して、撥水性をさらに向上させると共に基材への接着性をより向上させることができる。
請求項3に係る撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物は、上記構成に加え、オルガノシランの含有量が、樹脂組成物中の固形分全量に対して1〜40重量%であることを特徴とするものである。
この発明によれば、基材への接着性をより向上させて、撥水性と撥油性をさらに長期間維持することができるので、親水性と親油性の汚れをさらに長期に付着しにくく除去しやすくすることができる。
請求項4に係る撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物は、上記構成に加え、塩基性有機シラン化合物の含有量が、樹脂組成物中の固形分全量に対して0.1〜30重量%であることを特徴とするものである。
この発明によれば、オルガノシランを十分に縮合させてシランのマトリックス構造を皮膜中で確実に形成することができるので、基材への接着性がよく撥水性と撥油性が高まった皮膜をさらに形成することができる。
請求項5に係る塗装品は、上記構成の撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物により基材の表面に皮膜を形成してなるものである。
この発明によれば、基材が親水性の汚れが付着しやすい材質であっても、親水性の汚れが付着しにくく、また親水性の汚れが付着したとしても除去しやすい皮膜が形成されるので、親水性の汚れに強い塗装品を得ることができる。また、撥水性の皮膜が形成されることにより、油や親油性の汚れが付着しても容易に除去することができるので、油汚れの付着しやすい用途への利用が可能となる。さらに、基材への接着性が優れた皮膜が形成されるので、撥水性及び撥油性の機能を長期間維持することができ、長期間、親水性及び親油性の汚れに強い塗装品を得ることができる。
請求項6に係る塗装品は、上記構成に加え、基材が、金属、ガラス、セラミックのいずれかであるものである。
この発明によれば、親水性の汚れが付着しやすい、金属、ガラス、セラミックなどの材料を、親水性の汚れが付着しにくく、また親水性の汚れが付着したとしても除去しやすくすることができるので、親水性の汚れの付着しやすい用途への利用がさらに可能となる。
本発明によれば、撥水性の皮膜を形成することにより、親水性の汚れが付着しやすい、金属、ガラス、セラミックなどの材料を、親水性の汚れが付着しにくく、また親水性の汚れが付着したとしても除去しやすくすることができるので、親水性の汚れが付着しやすい用途への利用が可能となる。また、撥水性の皮膜を形成することにより、油や親油性の汚れが付着しても容易に除去することができるので、油汚れの付着しやすい用途への利用も可能となる。さらに、この皮膜は基材への接着性が優れているので、撥水性及び撥油性の機能を長期間維持することができる。
本発明の撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物は、水酸基を有するフッ素樹脂、一般式(1)で表されるオルガノシラン、塩基性有機シラン化合物、及び、イソシアネート樹脂を含有するものである。
[フッ素樹脂]
フッ素樹脂は、主鎖の構成成分としてフロロオレフィン基(フルオロオレフィン基ともいう)などのフッ素基が導入された樹脂である。分子内に導入するフロロオレフィン基は、次の一般式(2)で表されるような構造のモノマーをラジカル重合することにより導入が可能になる。
Figure 2010126559
(式中、XはF又はHであり、YはH、Cl、F又はCFである)
フッ素基は、耐薬品性、耐候性、撥水性に優れており、ジメチルシリコン基との相互作用により、さらに長期的に撥水性が維持された優れた皮膜構造を形成することが可能になる。フッ素基が導入されていれば、例えば、ジメチルシリコン基が何らかの影響で脱落したとしても、主骨格にフッ素基が存在することで撥水性が持続されるものである。本発明においては、フッ素樹脂に水酸基が導入されており、さらにジメチルシリコン基が導入されていることが好ましい。それにより撥水性と密着性を向上することができる。
ジメチルシリコン基は、フッ素樹脂の側鎖に結合されているのが好ましい。それにより、主鎖のフッ素樹脂に容易にジメチルシリコン基を導入することができると共に、皮膜形成過程においてフッ素樹脂を配向させて、接着性の高い皮膜を形成することができる。ジメチルシリコン基としては、下記の一般式(3)で表されるような構造を有するのが好ましい。
Figure 2010126559
(式中、nは2以上の整数、Xは主鎖のフッ素樹脂骨格を表す)
ジメチルシリコン基は、反応性シリコーンモノマーを用いることにより、主骨格への導入が可能になる。このジメチルシリコン基は、フッ素樹脂の主骨格にフリーの側鎖として結合しているため、樹脂組成物のマトリックスにおいてもフリーの状態となり、皮膜を形成する際に、分子の主骨格よりも表面に配向して、すべり抵抗が非常に低い皮膜表面の構造を形成することができ、耐磨耗性にも優れた、撥水・撥油性の皮膜表面を形成することができる。また、ジメチルシリコン基は、撥水性に優れており、水転落角(皮膜を形成した際に水が転がる最小の角度)を低くする傾向があり、このようなジメチルシリコン基が表面に配向すると、水がかかっても水切れがよくなる皮膜を形成することができる。また、ジメチルシリコン基が塗料中においてフッ素樹脂とは別の成分として単に添加されているのではなく、主骨格に導入されているために、磨耗などによっても容易に脱落せず、撥水性及び撥油性を長期間維持することができる。
ジメチルシリコン基を主骨格に導入する方法としては、種々の方法が考えられ、特に制限されるものではないが、反応性モノマーとして、次に示すような末端に不飽和基を有するジメチルシリコンを反応させることで導入することができる。以下にジメチルシリコンの例を示す。
・末端がメタクリレート基である片末端ジメチルシリコン。例えば下記のもの。
CH2=C(CH3)−COO−C3H6−Si(CH3)2−(O−Si(CH3)2)p−R2
(Rは、炭素数1〜6のアルキル基、pは1〜250の整数を示す)
・末端がアクリレート基である片末端ジメチルシリコン。例えば下記のもの。
CH2=CH−COO−C3H6−Si(CH3)2−(O−Si(CH3)2)q−R3
(Rは、炭素数1〜6のアルキル基、qは1〜250の整数を示す)
・両端にアクリレート基又はメタクリレート基を有する両末端ジメチルシリコン。例えば下記のもの。
R4−C3H6−Si(CH3)2−(O−Si(CH3)2)r−R4
(R4は、−OOC(CH3)C=CH2又は−OOCH=CH2、rは1〜250の整数を示す)
・エステル結合を有さないジメチルシリコン。例えば下記のもの。
CH2=CH−Si(CH3)2−(O−Si(CH3)2)s−R5
(Rは、炭素数1〜6のアルキル基又は−CH=CH2、sは1〜250の整数を示す)
これらのシリコーンモノマーを、ラジカル重合性フロロオレフィン化合物やアクリレート化合物、メタクリレート化合物などのラジカル共重合性単体などと共重合させることによりジメチルシリコン基をフッ素樹脂に導入することが可能となる。
フッ素樹脂中の水酸基は、イソシアネート樹脂と反応するための官能基である。フッ素樹脂中の水酸基は、水酸基含有ビニルエーテル基などを有するラジカル重合性単体(水酸基含有不飽和モノマー)を用いることにより導入が可能である。水酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸基含有アクリレート類を用いることができる。
水酸基含有アクリレート類としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、プラクセルFM1(ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート、ダイセル化学(株)製)、ポリエチレングリコールモノアクリレート又はモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート又はモノメタクリレートなどが挙げられる。
フッ素樹脂は、上記のような、フッ素含有モノマーと反応性シリコーンモノマーと水素基含有モノマーとを適宜に重合することにより得ることができるが、この重合には、さらに他の反応性の不飽和モノマーを加えて共重合させてもよい。
そのような反応性不飽和モノマーとしては特に限定されるものでないが、例えば、カルボン酸類やエステル基含有単量体、不飽和炭化水素系単量体、ニトリル系単量体、アクリルアミド系単量体などが挙げられる。具体的には、カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸などが例示される。また、エステル基含有単量体としては、アクリル酸又はメタクリル酸と、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ラウリルなどの各アルキル基がエステル結合したエステル基含有アクリル系単量体や、ビニルアルコールと、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸とがエステル結合したビニルアルコールエステル系単量体などが例示される。また、不飽和炭化水素系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ブタジエン、イソプレンなどが例示される。また、ニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが例示される。アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどが例示される。
樹脂組成物中のフッ素樹脂の含有量は適宜に設定し得るものであるが、通常、樹脂組成物中の固形分全量に対して20〜70重量%であることが好ましい。また、フッ素樹脂の分子量(Mw:重量平均分子量)は10000〜700000であることが好ましい。
[イソシアネート樹脂]
イソシアネート樹脂は硬化剤として用いられるものである。イソシアネート樹脂の材料となるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネートなどの有機ポリイソシアネート;前記有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水などの付加物;前記有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えばイソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2重以上を併用して使用することができる。このうち、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートが好適に用いられる。
イソシアネート化合物の含有量は、イソシアネート樹脂中のイソシアネート基(NCO)と、フッ素樹脂中の水酸基(OH)との比が、NCO/OHの当量比で、0.2〜2.0の範囲となる量であるのが好ましく、0.5〜1.5の範囲となる量であるのがより好ましい。イソシアネートの含有量がこの範囲よりも少ないと、塗膜が十分に硬化されないおそれがある。一方、イソシアネート樹脂の含有量がこの範囲よりも多いと、それ以上の硬化を得られない上に、相対的に他の成分の量が少なくなり、接着性や撥水・撥油性を阻害してしまうおそれがある。
また、イソシアネート化合物として、イソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートを用いることが好ましい。イソシアネート基がブロック剤で保護されていれば、溶剤としてアルコール系溶剤を用いた場合でも、水酸基への反応性が高いイソシアネート基がアルコール系溶剤中の水酸基と反応することを防ぐと共に、硬化時には、加熱によってブロック剤が解離して反応性のイソシアネート基を表出することができ、皮膜の硬化性を十分に確保することができる。特に、オルガノシランと塩基性有機シラン化合物とを用いる系では、溶剤としてこれらの化合物への溶解性が高いアルコール系溶剤が用いられる傾向があるので、このようなブロックイソシアネートは好ましく用いられる。ブロック剤としては、活性水素化合物を用いることができ、例えば、ケトオキシム誘導体、ラクタム誘導体などや、フェノール、活性メチレン、アルコール、メルカプタン、酸アミド、イミド、イミダゾール、尿素、カルバミン酸塩などの化合物やその誘導体などが挙げられる。それらのブロック剤の具体例としては、次のものが挙げられる。
ケトオキシム誘導体としては、メチルエチルケトンオキシム、ブタノンオキシム、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルアミルケトンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルヘキサノンオキシムなどが例示される。また、ラクタム誘導体としては、ε−カプロラクタム、δ−カプロラクタム、β−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどが例示される。
フェノール誘導体としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ノニルフェノール、イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、チモール、p−ニトロフェノール、p−ナフトール、p−クロロフェノール、p−tert−オクチルフェノールなどが例示される。また、活性メチレン誘導体としては、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジメチル、アセチルアセトンなどが例示される。
アルコール誘導体としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノールなどが例示される。また、メルカプタン誘導体としては、ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノールなどが例示される。
酸アミド誘導体としては、アセトアニリド、アセトアニシジド、酢酸アミド、アクリルアミド、ベンズアミドなどが例示される。また、イミド誘導体としては、コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどが例示される。
イミダゾール誘導体としては、2−フェニルイミダゾリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールなどが例示される。また、尿素誘導体としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素などが例示される。また、カルバミン酸塩誘導体としては、N−フェニルカルバミン酸フェニル、2−オキサゾリドンなどが例示される。
[オルガノシラン]
オルガノシランは、アルコシキド基や炭化水素基などの有機基がケイ素原子と結合したシラン化合物又はその加水分解重合物である。オルガノシランのモノマーとしては、基本構造として次のようなシラン化合物が知られている。
4官能シラン … Si−(OR)4
3官能シラン … X−Si−(OR)3
2官能シラン … X2−Si−(OR)2
1官能シラン … X3−Si−OR
(式中、X、Rは、1価の炭化水素基であり、同じでも異なっていてもよい)
上記のシラン化合物において、X、Rは、1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではないが、炭素数1〜8の1価の炭化水素基であるのが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ペプチル基、オクチル基等のアルキル基などが挙げられる。アルコキシ基中に含有されるアルキル基のうち、炭素数が3以上のものについては、n−プロピル基、n−ブチル基などのように直鎖状のものであってもよいし、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基などのように分岐を有するものであってもよい。
この中でも、4官能のシラン化合物を好適に用いることができ、本発明の樹脂組成物ではそのモノマー又は加水分解物が含有されている。3官能以下のシラン化合物は、分子内に疎水性の官能基(上記の構造式ではXに相当する部分)が存在するために4官能のシラン化合物に比べて接着性が劣る傾向がある。また、3官能以下のシラン化合物を用いると4官能のシラン化合物のときよりも皮膜の表面硬度が低下して表面を磨いた際に傷がつきやすくなるおそれがある。そのため、オルガノシランとして4官能のシラン化合物を含有するものである。ただし、本発明の効果を妨げない範囲で、3官能以下のシラン化合物が混在していてもよい。
オルガノシランとしては、4官能のシラン化合物を所定の分子量に重合させたものを用いるのが好ましい。このようなオルガノシランを含有することにより、接着性に強い皮膜を形成して、基材への密着性を向上させることができる。下記にオルガノシランの一般式(1)を示す。
Figure 2010126559
(Rは炭素数1〜10の炭化水素基を表し、nは1以上の整数を示す)
各Rは同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じものが入手しやすいので好ましい。オルガノシランはオルガノシリケートとも呼ばれ、Rの違いにより種々のオルガノシランが存在しており、Rがメチル基のメチルシリケート、Rがエチル基のエチルシリケート、Rがプロピル基のプロピルシリケート、Rがブチル基のブチルシリケートなどのシリケート類を用いることができる。一般的に、Rの種類により反応性が異なり、メチル基>エチル基>>プロピル基>ブチル基という順位の反応性であるといわれている。このうち、基材の水酸基との反応性がより高いものほど接着性がよく、Rがメチル基又はエチル基のオルガノシランを用いることが好ましい。
オルガノシランは、そのまま単独で用いてもよいし、触媒や水などを適時添加して末端のアルコキシシリル基を部分加水分解したものを用いてもよい。
オルガノシランの重合度は、一般式(1)においてn=2〜10であるのが好ましく、n=3〜7の範囲であるのがさらに好ましい。それにより、皮膜に十分な接着性を付与することが可能となる。オルガノシランの重合度がこの範囲より多くても少なくても接着性が悪くなるおそれがある。
オルガノシランの含有量は、樹脂組成物中の固形分全量に対して1〜40重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。皮膜の接着性はオルガノシランの添加量の増加とともに向上していく傾向があるが、オルガノシランの含有量がこの範囲になることにより皮膜に十分な接着性が得られるものである。オルガノシランの含有量がこの範囲に満たないと、接着性が十分でなくなるおそれがある。一方、オルガノシランの含有量がこの範囲を超えると耐アルカリ性が低下して耐薬品性の低下を招くおそれがある。
[塩基性有機シラン化合物]
塩基性有機シラン化合物は、オルガノシランのシラノール基の縮合に用いられる触媒である。オルガノシランのシラノール基の縮合には、一般的に、酸性触媒、塩基性触媒、ジブチル錫ジラウリレートなどの有機金属化合物が用いられるが、本発明においては、塩基性の有機シラン化合物を用いる。塩基性有機シラン化合物を用いることにより、オルガノシランのシラノール基を縮合し架橋させて接着性の高い皮膜を形成することができる。
塩基性有機シラン化合物としては、アミノ基(NH−)、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、及び含窒素複素環基のうちから選ばれる少なくとも1つの窒素原子含有基を有する有機シラン化合物を用いるのが好ましい。窒素原子含有基としては、例えば、モノ置換アミノ基として、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基、N−フェニルアミノ基などを挙げることができ、ジ置換アミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基、N,N−ジシクロヘキシルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基などを挙げることができる。
塩基性有機シラン化合物の含有量は、樹脂組成物中の固形分全量に対して0.1〜30重量%であるのが好ましく、0.5〜10重量%であるのがより好ましい。それにより、オルガノシランを十分に縮合させてシランのマトリックスを皮膜中で確実に形成することができ、基材への接着性がよくて撥水性と撥油性とが高まった皮膜を形成することができる。塩基性有機シラン化合物の含有量がこの範囲より少ないとオルガノシランを十分に縮合させることができないおそれがある。一方、塩基性有機シラン化合物の含有量がこの範囲より多いと、触媒量が多くなり相対的にフッ素樹脂やイソシアネート樹脂の量が少なくなるので、十分な硬化皮膜が形成されなくなるおそれがある。
オルガノシランのシラノール基を縮合させる触媒として、上記の塩基性有機シラン化合物に加えて、一般的に用いられる、酸性触媒、塩基性触媒、ジブチル錫ジラウリレートなどの有機金属化合物を加えてもよい。酸性触媒としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸や、塩酸、硝酸、ハロゲン化シラン等の無機酸、酸性コロイダルシリカ、酸化チタニアゾル等の酸性ゾル状フィラーなどを用いることができる。これらの触媒は1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[溶剤]
撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物は、好ましくは溶剤により希釈されるものである。溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、親水性溶剤として、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、イソブタノールなどの低級脂肪酸アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコール誘導体;ジアセトンアルコールなどを挙げることができ、これらの溶剤を1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。このうち、アルコール系溶剤の使用は、オルガノシランや塩基性有機シラン化合物との親和性が高いので好ましい。
さらにこれらの親水性有機溶剤と併用して、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなどの親油性有機溶剤を、適宜、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。それにより、親油性の高い成分を溶解させることができる。
[塗装品]
本発明の塗装品は、上記の樹脂組成物により基材の表面に塗膜を形成し、硬化させることにより得ることができる。得られた塗装品は、上記樹脂組成物により、親水性の汚れが付着しにくく、また親水性の汚れが付着したとしても除去しやすい皮膜が形成されているので、親水性の汚れに強いものとなっている。また、撥水性の皮膜が形成されており、油や親油性の汚れが付着しても容易に除去することができるものである。さらに、基材への接着性に優れた皮膜が形成されているので、撥水性及び撥油性の機能を長期間維持することができ、長期間、親水性及び親油性の汚れに強い塗装品となっている。
基材としては、特に限定されるものではないが、表面に水酸基を保有する無機基材が好適に使用される。そのような無機基材は、表面の水酸基のために汚れが付着しやすく、又、付着した汚れが除去しにくい性質を有しているが、上記樹脂組成物により皮膜が形成されることで、基材の表面を撥水・撥油性を付与して、汚れがつきにくく汚れが除去しやすいものとすることができる。また、基材の表面に形成された有機皮膜の上に形成することも可能であり、その場合、有機皮膜が汚れの付着しやすい性質を有していたとしても、上記樹脂組成物でオーバーコートすることで汚れの付着しにくい表面に改質することが可能となる。
無機素材としては金属、ガラス、セラミックのいずれかであることが好ましい。これらの材質は、親水性の汚れが付着しやすいが、上記樹脂組成物により、密着性の高い撥水・撥油表面が形成されるため親水性の汚れの付着しやすい用途への利用がさらに可能となる。また、これらの材質は一般的に樹脂皮膜の接着性がよくないが、上記樹脂組成物により、接着性・密着性の優れた皮膜が得られるので、長期間、撥水・撥油性を維持することが可能となる。具体的には、金属としては、ステンレス、アルミ、亜鉛めっき鋼板、鉄などが例示され、セラミックとしてはタイルやホウロウなどが適用素材として例示される。
皮膜を形成するにあたっては、溶剤で希釈された樹脂組成物を基材に塗装した後、加熱して硬化させることにより行う。塗装は適宜の方法により行うことができ、その方法としては、特に限定されるものではないが、ロールコーターなどの塗布や、エアスプレーなどの噴きつけなどにより行うことができる。
樹脂組成物の硬化温度としては、120℃以上であれば十分に硬化させることができるので好ましいが、できるだけ高温で硬化することが好ましく、温度としては160℃以上、より好ましくは180℃以上である。高温で硬化すると、樹脂組成物中の成分と、基材表面の水酸基との反応が促進されて、強固な結合を得ることができ、皮膜の密着力を向上させることができる。しかしながら、硬化温度は250℃以下であるのが好ましい。これ以上の温度にしても密着性を促進することができないおそれがあり、熱により塗膜が黄変や分解を伴ったりして皮膜中の成分が劣化するおそれがある。
このように撥水・撥油性の皮膜が形成された塗装品は、長期に水垢などの親水性の汚れが付着しにくく除去しやすい性質を有するため、親水性の汚れが付着しやすい製品への利用が可能になる。水垢などの成分はシリカやカルシウムが主成分であるが、ガラス、タイル、金属などの表面には多くの水酸基が存在するので、このような親水性の成分が付着して汚れ付きやすい。しかしながら、本発明によれば、撥水性が高い皮膜が得られるので、そのような親水性の汚れを効果的に防止又は除去することができる。適用製品としては、例えば、キッチン部材(ステンレス製シンク、カラン、排水口、網かごなど)、バス用品(金属パネル、床、鏡など)、トイレの便器(特にセラミック部分)、洗面台ガラスなどの水回り部材や、冷蔵庫、炊飯器の内面、照明などの家電製品、住宅やトンネルにおけるタイルやガラスなどの部材、自動車のガラスやホイールなどの部材などが挙げられ、これらを含む種々の製品に幅広く適用することができる。
また、皮膜の表面は撥油性を有しているので、親油性の汚れが付着しやすい製品にも利用することが可能であり、例えば、レンジフードなどにおける金属部材や、IHヒーターのガラス部や魚焼きグリルの金属部などのキッチン用部材、キッチンパネルなどのキッチンルーム部材、冷蔵庫、電子レンジ、照明などの家電製品などに適用することができる。
[皮膜構造の説明]
図1は、上記の樹脂組成物が塗装されて形成された皮膜(塗膜)の構造の一例を説明する模式図である。この皮膜は、ジメチルシリコン基と水酸基とを有するフッ素樹脂及びイソシアネート樹脂により硬化された樹脂マトリックスが、主成分として含んでいる構成となっている。しかしながら、フッ素樹脂とイソシアネート樹脂だけでは基材に対して高い接着力を得ることができない。そこで、さらにオルガノシランと塩基性有機シラン化合物とを添加する。それにより、接着性の高い皮膜を形成することができる。
図1に示すように、フッ素樹脂はオルガノシランや触媒、イソシアネートよりも表面張力が低いため表層に選択的に配向する傾向があり、表面で傾斜配向する構造となる。一方、表面張力が比較的高いオルガノシランや触媒は下層に配向する。ここで、オルガノシランは、空気中の湿気や塩基性の触媒の作用によりアルコキシ基が加水分解し、ステンレスやアルミなどの基材上の水酸基と強固な結合を形成する。また、オルガノシランのアルコキシシリル基は、触媒が併用されることにより、フッ素樹脂中の水酸基やイソシアネート樹脂中のイソシアネート基と反応して結合を形成する。したがって、これらの2つの反応によって、オルガノシランが樹脂主成分と基材との双方に結合されて、接着しにくい性質のフッ素樹脂を基材に確実に接着させて、皮膜の密着力を向上させることができると考えられる。図2は、このようなオルガノシランの反応を説明する図である。この図では、オルガノシランを介して基材と樹脂主成分とが結合する機構が説明されている。
次に本発明を実施例により説明する。なお、特に断りのない限り、%は重量%を、部は重量部を示す。
[実施例1〜7]
樹脂組成物の成分として次のものを使用した。
・フッ素樹脂:ジメチルシリコン基含有フッ素樹脂(富士化成工業株式会社製ZX−007C、水酸基価(OH価)60mgKOH/g、不揮発分(NV)45wt%)
・イソシアネート樹脂:ブロックイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製TPA−B80X);ブロック剤としてメチルケトオキシムを用いたヘキサメチレンジイソシアネート主体のブロックイソシアネート
・オルガノシラン:エチルシリケート40:4官能シリケート(多摩化学工業株式会社製);テトラエトキシシランの加水分解物、重合度5
塩基性有機シラン化合物:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン株式会社製TSL−8331)
溶剤:キシレン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール
表1に記載する配合量で、フッ素樹脂とイソシアネートと溶剤とを混合し、さらにオルガノシランと触媒とを添加して混合することにより、実施例1〜7の樹脂組成物を得た。なお、このときの樹脂固形分全量中のオルガノシラン(固形分)及び塩基性有機シラン化合物(固形分)の含有量(重量%)は、表1に記載する量比となった。
[比較例1〜3]
樹脂組成物の成分として実施例1と同じものを使用し、表1に記載する配合量で実施例1と同様の方法にて混合することにより、比較例1〜3の樹脂組成物を得た。
[比較例4]
触媒として、塩基性有機シラン化合物ではなく、ジブチル錫ジラウリレートを使用した。その他は、表1に示す配合量にて実施例1と同じ材料及び方法により、比較例4の樹脂組成物を得た。
[比較例5]
一般的なフッ素樹脂塗料を調製した。樹脂組成物材料として下記のものを用いた。その他は、表1に示す配合量にて実施例1と同じ方法により、比較例5の樹脂組成物を得た。
フッ素樹脂:大日本インキ株式会社製フルオネートK−704;ジメチルシリコン基は含有していない、NV60%、水酸基価48)
イソシアネート樹脂:日本ポリウレタン株式会社製コロネートHK;(ヘキサメチレンジイソシアネート主体のイソシアネート樹脂 NCO含有量:21.5%)
[比較例6]
一般的な撥水性シリコーン樹脂塗料を調製した。樹脂組成物材料として下記のものを用いた。その他は、表1に示す配合量にて、比較例6の樹脂組成物を得た。
フレッセラD−A液、フレッセラD−B液:シリコーン樹脂塗料、パナソニック電工株式会社製、(A液:B液=1:3、混合後のNV20wt%;A液の溶剤:メタノール、トルエン、B液の溶剤:イソプロピルアルコール、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル)
[評価]
(皮膜の形成)
実施例及び比較例の樹脂組成物を、エアスプレーを用いて、基材に平均膜厚5μmになるように塗装し、180℃、30分で加熱硬化することにより皮膜を作成した。なお、基材は次のものを用いた。
基材:ステンレス;日本テストパネル株式会社製SUS304(厚み:1.0mm、サイズ:150×70mm)
(皮膜の物性評価)
(1)汚染除去性(初期)
上記の各皮膜に、地下水(蒸発残分中のシリカ濃度60重量%、大阪府門真市近郊にて採取)を数滴滴下し、60℃の乾燥機中で水分を蒸発させることにより、皮膜の表面に水垢を付着させた。この地下水の滴下及び乾燥の作業を繰り返して計8回行った。その後、付着した水垢を布で拭き取り、拭き取りやすさを次の基準にて判定し、水垢による汚染の除去性を評価した。
◎ … 完全に拭き取れる
○ … ほぼ完全に拭き取れる
△ … 約半分程度拭き取れる
× … ほとんど除去することができない
(2)汚染除去性(磨耗後)
上記の各皮膜を、磨耗試験装置(大同理科株式会社製 ウォッシャビリティ磨耗試験装置 )により、水を含ませたスポンジにて5000回往復して擦った。その後、上記(1)と同様の汚染除去試験を行い、次の基準にて判定し、磨耗後の汚染除去性を評価した。
◎ … 完全に拭き取れる
○ … ほぼ完全に拭き取れる
△ … 約半分程度拭き取れる
× … ほとんど除去することができない
(3)皮膜接着性(初期)
上記の各皮膜が形成された塗装品を、90℃の熱水に60時間浸漬した後、JISK−5400の方法に準拠してクロスカッターを用いて試験を行い、皮膜の密着性を次の基準にて判定し、評価した。
◎ … 100/100 (100升目中100%皮膜が残存)
○ … 80〜100/100 (100升目中80%以上皮膜が残存)
△ … 50〜80/100 (100升目中50%以上皮膜が残存)
× … 50/100未満 (100升目中皮膜の残存が50%未満)
(4)皮膜接着性(持続性)
上記の各皮膜が形成された塗装品を、水道水中に1ヶ月間浸漬した後、JISK−5400の方法に準拠してクロスカッターを用いて試験を行い、皮膜の密着性を次の基準にて判定し、評価した。
◎ … 100/100 (100升目中100%皮膜が残存)
○ … 80〜100/100 (100升目中80%以上皮膜が残存)
△ … 50〜80/100 (100升目中50%以上皮膜が残存)
× … 50/100未満 (100升目中皮膜の残存が50%未満)
(5)耐薬品性
1cm□に切断したキッチンペーパーを皮膜上に置きこのキッチンペーパー上に5重量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、時計皿を被せて水溶液が蒸発しないように静置した。翌日、キッチンペーパーを除去すると共に、前記同様に薬品を新たに滴下したキッチンペーパーを皮膜上に置き、時計皿を被せて静置した。この操作を7日間繰り返し、7日後の皮膜の外観を次の基準にて判定し、耐薬品性を評価した。
◎ … 外観の変化が全くない
○ … 滴下していた部分にわずかに変化の跡がある
△ … 滴下していた部分に枠状になって跡がある
× … 皮膜が剥離する
(結果)
表1のように、実施例1〜7の樹脂組成物で得た皮膜は、良好な撥水性・撥水維持性、接着性を示している。すなわち、接着が難しいとされているステンレスに対しても優れた接着性を示すことが確認された。これに対して、比較例1〜4の樹脂組成物で得た皮膜は、特に接着性が低下していることが確認された。また、比較例5及び6が示すように、一般的なフッ素樹脂や撥水性シリコーン樹脂で得られた皮膜では、耐汚染性や接着性を満足させることができないことが確認された。
Figure 2010126559
本発明の樹脂組成物により形成された皮膜の構造の一例を説明する模式図である。 オルガノシランの反応の機構の一例を説明する説明図である。

Claims (6)

  1. 水酸基を有するフッ素樹脂、下記の一般式(1)で表されるオルガノシラン、塩基性有機シラン化合物、及び、イソシアネート樹脂を含有することを特徴とする撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物。
    Figure 2010126559
    (Rは炭素数1〜10の炭化水素基を表し、nは1以上の整数を示す)
  2. フッ素樹脂がジメチルシリコン基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物。
  3. オルガノシランの含有量が、樹脂組成物中の固形分全量に対して1〜40重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物。
  4. 塩基性有機シラン化合物の含有量が、樹脂組成物中の固形分全量に対して0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水・撥油性皮膜形成用樹脂組成物により基材の表面に皮膜を形成してなる塗装品。
  6. 基材が、金属、ガラス、セラミックのいずれかである請求項5に記載の塗装品。
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