JP2010121204A - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成膜方法は、レーザ光Lをターゲット6の表面に照射して、このターゲット6の構成粒子6Aを叩き出し若しくは蒸発させ、この構成粒子6Aを帯状の基材上に堆積させることにより薄膜を形成する成膜方法であって、前記レーザ光Lが前記ターゲット6の表面に照射する位置を、前記基材の幅方向と同じ方向に振幅させ、前記基材を、転向部材に該基材の裏面が接しつつ長手方向に移動する状態として、前記構成粒子6Aの堆積領域内を通過させることにより、前記基材の表面上に前記構成粒子6Aを堆積させ、前記基材の表面上に薄膜を形成する。
【選択図】図3
Description
そこで、プルーム全体を有効利用することができるレーザ蒸着法による成膜方法として、基材をプルーム内を複数回通過させる方法等が提案されている。
このレーザ蒸着装置は、基材の上に多結晶中間薄膜が形成されたテープ状の薄膜積層体60を巻回し複数列とした状態で搬送する搬送装置(搬送手段)42と、この搬送装置42内に巻回により複数列とされた薄膜積層体60を支持する箱状の基板ホルダ(基台)43と、この基板ホルダ43内に複数列とした薄膜積層体60を加熱するための螺旋状のヒータ(加熱手段)と、薄膜積層体60と対向して配されたターゲット57と、ターゲット57にエキシマレーザ等のレーザ光Lを照射するレーザ光発光手段53とにより構成されている。
また、一般に蒸着膜の特性を上げるためには、構成粒子を広い範囲に均一に分配し、蒸着面積当たりの成膜レートを落としてやる必要がある。したがって、従来方式では蒸着面積が狭いため、低出力レーザで使用すれば、高特性を得られるが、高出力レーザを用いると特性が悪くなり、Ic〜300Aの線材を作製するのに、18m/hを要していた。また、レーン間での隙間の取りこぼしを生じるため、構成粒子の収率が下がり、これも成膜速度を低下させる要因となっていた。
また、本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、帯状の基材の幅方向において膜厚や特性が均一な薄膜を効率良く成膜することができ、構成粒子の収率及び生産性の向上を図ることが可能な成膜装置を提供することを第二の目的とする。
本発明の成膜方法は、前記帯状の基材として、前記転向部材の軸方向の長さに応じた広幅を有するものを用いることが好ましい。
本発明の成膜方法は、前記レーザ光を前記ターゲットの表面に対して40°以上、50°以下の入射角度で照射することがより好ましい。
本発明の成膜方法は、前記基材の表面上に前記構成粒子を堆積させ、前記基材の表面上に薄膜を形成する際の成膜レートを0.1μm/cm2・s以下とすることが好ましい。
本発明の成膜装置は、前記レーザ光発光手段が、前記レーザ光を前記ターゲットの表面に対して照射する入射角度を調整する手段を有することが好ましい。
本発明の成膜装置は、前記転向部材内に配された加熱手段を有することが好ましい。
本発明の成膜装置は、前記処理容器内において、前記転向部材を内在させる囲み部材を、さらに備えることが好ましい。
本発明の成膜方法によれば、基材の幅方向に対してレーザ光を振幅させるので、帯状の基材として、転向部材の軸方向の長さに応じた広幅を有するものを用いることにより、幅方向において膜厚や特性分布が均一な薄膜を、レーン間での蒸着粒子の取りこぼしを防いで構成粒子の収率を向上させて、優れた生産性で成膜することが可能となる。
本発明の成膜方法によれば、レーザ光をターゲットの表面に対して適正な入射角度で照射することにより、ターゲットから叩き出され若しくは蒸発される構成粒子を均一な状態・濃度で基材表面に堆積させることができるため、高特性膜を成膜することが可能となる。
本発明の成膜方法によれば、基材の表面上に薄膜を形成する際の成膜レートを0.1μm/cm2・s以下とすることにより、膜厚や特性分布が均一な薄膜を、長時間に亘って安定して形成することが可能となる。したがって、本発明によれば、高特性膜を優れた生産性で成膜することが可能となる。
本発明の成膜装置によれば、レーザ光をターゲットの表面に対して照射する入射角度を調整する手段を有することにより、レーザ光をターゲットの表面に対して適正な入射角度で照射することが可能となる。したがって、本発明によれば、高特性膜を成膜可能な成膜装置を提供することができる。
本発明の成膜装置1は、帯状の薄膜積層体34(基材)を収容する処理容器2と、処理容器2内において、薄膜積層体34(基材)の裏面と接して該基材の移動方向を変える転向部材11と、転向部材11に接した状態にある薄膜積層体34を、その長手方向に移動させる搬送手段10と、処理容器2内において、転向部材11に接した状態にある薄膜積層体34の表面に対向するように配されたターゲット6と、ターゲット6にレーザ光Lを照射するレーザ光発光手段5と、を少なくとも備える。レーザ光発光手段5は、レーザ光Lがターゲット6の表面に照射する位置を、薄膜積層体34(基材)の幅方向と同じ方向に振幅させる手段(不図示)を有する。また、レーザ光発光手段5は、レーザ光Lをターゲット6の表面に対して照射する入射角度θを調整する手段(不図示)を有することが好ましい。
本発明の成膜装置1は、さらに前記転向部材11内に配されたヒータ14(加熱手段)を具備している。図2では、ヒータ14(加熱手段)が転向部材11に配された例を示しているが、本発明の成膜装置1はこれに限定されず、成膜される基材表面を加熱することができれば、ヒータ14(加熱手段)は転向部材11の外部あるいは内外部の両方に配設されていても良い。
また、図2には、レーザ光発光手段5が処理容器2の内部にある構成例を示しているが、例えば処理容器2にレーザ光を透過する窓を設けることにより、レーザ光発光手段5を処理容器2の外部に配置してもよい。
なお、レーザ光発光手段5の振幅および入射角度θを調整する機構の他例として、レーザ光発光手段5に、上下又は左右に首振りするためのギアやモーターを備えた旋回機構や駆動機構も例示することができる。
搬送手段10は、薄膜積層体34(基材)の裏面と接して薄膜積層体34の移動方向を変える転向部材11と、転向部材11の一方側に設けられ薄膜積層体34を送り出すための送出手段12と、転向部材11の他方側に設けられ薄膜積層体34を巻き取るための巻取手段13と、を有する。
図2や図3に示すように、円柱状をなす転向部材11を用いた場合には、転向部材11、送出手段12及び巻取手段13を駆動手段(図示せず)により互いに同期して駆動させることにより、送出手段12から所定の速度で送り出された薄膜積層体34が転向部材11を周回し、巻取手段13に巻き取られるようになっている。
また、転向部材11の内部には薄膜積層体34を加熱するためのヒータ14(加熱手段)が内蔵されていることが好ましく、転向部材11に接する薄膜積層体34を所定の温度に保持するようになっている。ヒータ14としては、例えば通電式の加熱ヒータが挙げられる。
なお、転向部材11により薄膜積層体34を周回(ターン)させるとともに、転向部材11に内蔵されたヒータ14で薄膜積層体34を加熱するためには、転向部材11が必ずしも自転しなくてもよい。転向部材11が自転せず国定される構成とした場合には、円柱状に代えて、例えば半円柱状をなす転向部材11を用いても構わない。
その結果、帯状の薄膜積層体34上に形成された酸化物超電導体薄膜が、その長手方向に亘って安定した諸特性を有することが可能となる。
このターゲット6には、レーザ発光部を構成するエキシマレーザによりレーザ光Lが照射されるようになっている。
ターゲット6を、転向部材11に接した状態にある薄膜積層体34と対向するように配することで、従来のようにレーンによってレーザ光Lが遮られることがなく、後述するように薄膜積層体34の幅方向に対してレーザ光Lを振幅させることが可能になる。
この酸化物超電導体としては、Y1Ba2Cu3Oxに代表されるRE123系の酸化物超電導体等が好ましい。このターゲット6の形状としては、例えば、円板状、矩形状等のものが用いられる。
レーザ光発光手段5は、エキシマレーザ等のレーザ光Lを発光するレーザ発光部により構成され、レーザ発光部から発光したレーザ光Lを(囲み部材20の第一の窓21及び第2の窓22を介して)ターゲット6に照射するようになっている。
ここで、レーザ光Lを振幅させる手段(不図示)としては、例えばミラーを用い、その角度を変化させることによりレーザ光Lを振幅させる構成が挙げられる。
なお、上述したターゲットの「並進動作」は、レーザーの照射位置がライン状をなし、ターゲットが該ライン状のみ消耗し、ターゲットが局所的に掘れることにより、ターゲット寿命が短くなるという問題を解消することに寄与する。
本発明の成膜方法は、レーザ光Lをターゲット6の表面に照射して、このターゲット6の構成粒子6Aを叩き出し若しくは蒸発させ、この構成粒子6Aを帯状の薄膜積層体34(基材)上に堆積させることにより薄膜を形成する成膜方法であって、レーザ光Lがターゲット6の表面に照射する位置を、薄膜積層体34の幅方向と同じ方向(図3の矢印R方向)に振幅させ、薄膜積層体34を、転向部材11に薄膜積層体34の裏面が接しつつ長手方向に移動する状態として、構成粒子6Aの堆積領域内を通過させることにより、薄膜積層体34上に構成粒子6Aを堆積させ、薄膜積層体34上に薄膜を形成することを特徴とする。
本発明の成膜方法によれば、基材の表面上に薄膜を形成する際の成膜レートを0.1μm/cm2・s以下とすることにより、膜厚や特性分布が均一な薄膜を、長時間に亘って安定して形成することが可能となる。したがって、本発明によれば、高特性膜を優れた生産性で成膜することが可能となる。
ハステロイからなる基材32上にGd2Zr2O7 (GZO)からなる多結晶中間薄膜33が形成された薄膜積層体34を、多結晶中間薄膜33側がターゲット6側になるように巻回部材11に巻回する。また、酸化物超電導体のターゲットとしてY1Ba2Cu3Oxからなる長方形状のターゲット6をセットする。
次いで、送出手段12、転向部材11及び巻取手段13を同時に駆動し、薄膜積層体34を送出手段12から巻取手段13に向けて所定の速度にて移動させる。同時に、転向部材11内のヒータ14を作動させて転向部材11上の薄膜積層体34を加熱し、所望の温度に保持する。
また、図3に示すように、レーザ光Lがターゲット6の表面に照射する位置を、入射角度θを維持したまま薄膜積層体34の幅方向と同じ方向(矢印R)に振幅させる。これにより幅方向において構成粒子6Aの濃度を均一にすることができる。
ここでは、薄膜積層体34が転向部材11を周回する間に、薄膜積層体34の表面上に酸化物超電導体からなる薄膜が成膜される。これにより、薄膜積層体34の表面上には、幅方向において膜厚や特性が均一となされた酸化物超電導体薄膜31が成膜される。
なお、図5においては、ターゲット6の上方に転向部材11があり、ターゲット6と転向部材11の側方からレーザ光Lを照射する例を示したが、転向部材11、ターゲット6、レーザ光発光手段5の上下関係は逆でもよく、転向部材11は水平配置でなくとも縦型配置でもよい。
複数のレーンを有する成膜装置では、従来では、レーンによってレーザ光が遮られるので、レーン数を多くすることができなかったが、本発明の成膜装置ではこの問題が解決され、多くのレーン数を取ることができる。
図2に示すような本発明の成膜装置と、図4に示したような従来の成膜装置を用いて、帯状の基材上にY−Ba−Cu−O系の酸化物超電導体薄膜を形成した。
基材としては、実施例と比較例のいずれも共通に、厚さ0.1mmのハステロイ(登録商標)テープ上に、IBAD法により、Gd2Zr2O7(GZO)からなる厚さ1μmの多結晶中間薄膜(中間層)を形成したものを用いた。
本発明の成膜装置を用いて形成した酸化物超電導体薄膜(実施例1〜実施例4)と、従来の成膜装置を用いて形成した酸化物超電導体薄膜(比較例1、比較例2)について、テープ幅、レーン数、プルーム収率、レーザ出力、作製速度、膜厚及び臨界電流密度(Jc)を表1にまとめて示す。なお、作製速度は、基材の搬送速度と同一である。
従来装置では、レーザ出力を上げると、作製速度は上がるものの、単位面積、単位時間当たりの蒸着粒子量が多くなることから、薄膜の表面が荒くなり、配向が乱れるため、却って特性(Jc)が低下してしまう。例えばレーザ出力が72Wの比較例1と180Wに出力を上げた比較例2とを比較すると、Jcが2.5[MA/cm2](比較例1)→1.5[MA/cm2] (比較例2)と大幅に低下してしまっている。
一方、本発明では、高出力レーザを用いた場合であっても、成膜エリアを広げることができることから、単位面積、単位時間当たりの蒸着粒子量が少なくなるため、Jcが2.5[MA/cm2] (実施例5)と高特性の薄膜を形成することができた。特に、実施例5の結果から、幅広テープ(170[mm])を用い、高出力のレーザ(180[W])で、高Jc(2.5[MA/cm2])が得られることが判明した。
また、構成粒子の収率も従来の57[%]から、本発明では幅広のテープを用いることができるため70[%](実施例2、4、5)と改善することができた。
以上により、本発明の成膜方法及び成膜装置を用いることにより、高特性の薄膜を形成することが可能となる。また、構成粒子の収率を著しく向上させることもできる。その結果、生産性の向上が図れることがわかった。
図2に示すような本発明の成膜装置を用い、レーザ光の照射をターゲット表面に対する入射角度を変化させて、帯状の基材(テープ幅10mm)上にY−Ba−Cu−O系の酸化物超電導体薄膜を形成した。なお、基材として、上記実施例1〜5と同じ構成のものを用いた。
形成した酸化物超電導体薄膜について、レーザ入射角度、レーザ光のスポットサイズ、膜厚、臨界電流(Ic)、臨界電流密度(Jc)を表2に示す。なお、レーン数:7、基材の搬送速度(作製速度):20m/h、レーザ出力:180W(1パルスエネルギー約400mJ)として、成膜を行った。
以上により、本発明の成膜方法及び成膜装置を用いることにより、高特性の薄膜を形成することが可能となる。また、帯状で広幅の基材を用いることにより、構成粒子の収率を著しく向上させることもできる。その結果、優れた特性の薄膜を良好な生産性で成膜することが可能となる。
図2に示すような本発明の成膜装置を用い、蒸着エリアにおける単位時間、単位面積当たりの成膜レート(μ/cm2・s)を変化させて、帯状の基材(テープ幅10mm)上にY−Ba−Cu−O系の酸化物超電導体薄膜を形成した。なお、基材として、上記実施例1〜5と同じ構成のものを用いた。
形成した酸化物超電導体薄膜について、レーザ出力、レーザ走査、成膜レート、膜厚、臨界電流(Ic)、臨界電流密度(Jc)を表3に示す。ここで、表3におけるレーザ走査としては、1倍エリア=4cm2を表す。なお、レーン数:7、基材の搬送速度(作製速度):20m/h、レーザの1パルスエネルギー:約400mJとして、成膜を行った。また、比較例3、4として、図2に示すような成膜装置を用い、レーザ走査を行わない例を示した。
上述した実施例では、酸化物超電導体薄膜を形成する場合について、本発明の成膜方法及び成膜装置を適用した例を詳述したが、例えば、IBAD中間薄膜上にCeO2 中間層を形成し、次いで酸化物超電導体薄膜を形成する場合においては、本発明の成膜方法及び成膜装置をCeO2 中間層の形成にも使用することが可能である。
Claims (9)
- レーザ光をターゲットの表面に照射して、このターゲットの構成粒子を叩き出し若しくは蒸発させ、この構成粒子を帯状の基材上に堆積させることにより薄膜を形成する成膜方法であって、
前記レーザ光が前記ターゲットの表面に照射する位置を、前記基材の幅方向と同じ方向に振幅させ、
前記基材を、転向部材に該基材の裏面が接しつつ長手方向に移動する状態として、前記構成粒子の堆積領域内を通過させることにより、前記基材の表面上に前記構成粒子を堆積させ、前記基材の表面上に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。 - 前記帯状の基材として、前記転向部材の軸方向の長さに応じた広幅を有するものを用いることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
- 前記レーザ光を前記ターゲットの表面に対して40°以上、60°以下の入射角度で照射することを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
- 前記レーザ光を前記ターゲットの表面に対して40°以上、50°以下の入射角度で照射することを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
- 前記基材の表面上に前記構成粒子を堆積させ、前記基材の表面上に薄膜を形成する際の成膜レートを0.1μm/cm2・s以下とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の成膜方法。
- 帯状の基材を収容する処理容器と、
前記処理容器内において、前記基材の裏面と接して該基材の移動方向を変える転向部材と、
前記転向部材に接した状態にある基材を、その長手方向に移動させる搬送手段と、
前記処理容器内において、前記転向部材に接した状態にある基材の表面に対向するように配されたターゲットと、
前記ターゲットにレーザ光を照射するレーザ光発光手段と、
を少なくとも備え、
前記レーザ光発光手段は、前記レーザ光が前記ターゲットの表面に照射する位置を、前記基材の幅方向と同じ方向に振幅させる手段を有することを特徴とする成膜装置。 - 前記レーザ光発光手段は、前記レーザ光を前記ターゲットの表面に対して照射する入射角度を調整する手段を有することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
- 前記転向部材内に配された加熱手段を有することを特徴とする請求項6または7に記載の成膜装置。
- 前記処理容器内において、前記転向部材を内在させる囲み部材を、さらに備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の成膜装置。
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