JP2006233246A - 薄膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 長時間の連続成膜により長尺の酸化物超電導線材を製造する際に超電導特性の劣化を防いで高品質の長尺酸化物超電導線材を製造することができる製造装置の提供。
【解決手段】 長尺基材3を収容する処理容器と、長尺基材を巻回する巻回部材を複数個同軸的に配列してなる少なくとも一対の巻回部材群5と、これらの巻回部材群に巻回された長尺基材に近接して設けられたターゲットホルダと、該ターゲットホルダに保持されるターゲット9にレーザ光を照射するレーザ光発光手段とを備え、レーザ光をターゲットの表面に照射して生じた蒸着粒子を、巻回部材群に巻回されこれらの巻回部材群を周回することによって複数列が接近した状態で平行に並べられた長尺基材の表面に堆積させる装置において、巻回部材群に、それぞれの巻回部材の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材23が取り付けられたことを特徴とする薄膜形成装置。
【選択図】 図1
【解決手段】 長尺基材3を収容する処理容器と、長尺基材を巻回する巻回部材を複数個同軸的に配列してなる少なくとも一対の巻回部材群5と、これらの巻回部材群に巻回された長尺基材に近接して設けられたターゲットホルダと、該ターゲットホルダに保持されるターゲット9にレーザ光を照射するレーザ光発光手段とを備え、レーザ光をターゲットの表面に照射して生じた蒸着粒子を、巻回部材群に巻回されこれらの巻回部材群を周回することによって複数列が接近した状態で平行に並べられた長尺基材の表面に堆積させる装置において、巻回部材群に、それぞれの巻回部材の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材23が取り付けられたことを特徴とする薄膜形成装置。
【選択図】 図1
Description
本発明は、薄膜形成装置に関し、更に詳しくは、レーザ光をターゲットに照射して、このターゲットから叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子を基材上に堆積させることにより、酸化物超電導体薄膜等の薄膜を形成する際に好適に用いられ、特に、長尺基材を用いた酸化物超電導線材の生産性の効率化及び特性改善を図ることが可能な薄膜形成装置に関する。
酸化物超電導体を導電体として使用するためには、テープ状基材などの長尺基材上に、結晶配向性の良好な酸化物超電導体の薄膜を形成する必要があるが、一般には、金属テープ自体が多結晶体でその結晶構造も酸化物超電導体と大きく異なるために、金属テープ上に直接、結晶配向性の良好な酸化物超電導体の薄膜を形成させることは難しい。そこで、ハステロイテープなどの金属テープからなる基材の上に、結晶配向性に優れたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの多結晶中間薄膜を形成し、この多結晶中間薄膜上に、臨界温度が約90Kで、液体窒素(77K)での磁場特性がBi系の酸化物超電導体より優れ、安定性にも優れたY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導体の薄膜を成膜する試みが行なわれており、この酸化物超電導体の薄膜を成膜するには、レーザ蒸着法による薄膜の形成方法が採用されている。
ところで、従来のレーザ蒸着法による薄膜の形成方法では、レーザ光をターゲットの表面上の同一経路に沿って往復移動させることにより走査するため、長時間成膜を行うと、レーザ光に偏心が生じることとなり、その結果、ターゲットから叩き出された蒸着粒子の飛行する方向が偏ってしまい、蒸着粒子を多結晶中間薄膜上に均一に堆積させることができず、得られる薄膜の厚みや膜質や結晶配向性にバラツキが生じてしまい、臨界電流密度等の超電導特性が低下してしまう等の問題があった。そこで、本出願人は、長尺基材表面に蒸着粒子を均一に堆積させることができるレーザ蒸着法による薄膜の形成方法として、長尺基材(帯状の基材)を蒸着粒子の堆積領域内を複数回通過させて、この通過毎に前記長尺基材上に前記蒸着粒子を堆積させ、前記長尺基材上に複数層からなる薄膜を成膜する方法を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載された従来技術において、前記蒸着粒子の堆積領域内に長尺基材3を複数回通過させるために、図4〜図6に示すように、長尺基材3を巻回する巻回部材4を複数個、ロール受け軸21に同軸的に配列してなる一対の巻回部材群5,6を処理容器2内に対向配置し、これら一対の巻回部材群5,6に巻回された長尺基材3を周回させて複数列とし、これらにターゲット9から噴出した蒸着粒子の流れ(以下、プルーム20と記す。)を当てて複数列の長尺基材3の表面に蒸着粒子を堆積させて薄膜形成を行っている。この従来方法によれば、効率よく基材表面に複数層からなる薄膜を成膜することができる。
特開2004−263227号公報
しかしながら、前述した従来技術にあっては、長時間継続して成膜を行うと、プルーム20に近接して設けられている巻回部材群5のそれぞれの巻回部材4の外周部(鍔部)に、プルーム20中の蒸着粒子の一部が付着、堆積し、図7に示すように、その堆積物22によってそれぞれの巻回部材4の溝深さが増加してしまうために、蒸着粒子の成膜領域全体への広がりが阻害され、薄膜が均一且つ安定に成膜できなくなる問題がある。
特に、長尺基材3の表面に酸化物超電導体薄膜を成膜する場合、堆積物22の成長により巻回部材4の溝深さが増加すると、長尺基材3表面に酸化物超電導体薄膜が安定成長できなくなり、a軸配向などの超電導特性を劣化させる原因となる配向になってしまい、製造される酸化物超電導線材の超電導特性が成膜の途中から悪化してしまうという問題がある。
特に、長尺基材3の表面に酸化物超電導体薄膜を成膜する場合、堆積物22の成長により巻回部材4の溝深さが増加すると、長尺基材3表面に酸化物超電導体薄膜が安定成長できなくなり、a軸配向などの超電導特性を劣化させる原因となる配向になってしまい、製造される酸化物超電導線材の超電導特性が成膜の途中から悪化してしまうという問題がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされ、長時間の連続成膜により長尺の酸化物超電導線材を製造する際に超電導特性の劣化を防いで高品質の長尺酸化物超電導線材を製造することができる製造装置の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、長尺基材を収容する処理容器と、該処理容器内に配置され前記長尺基材を巻回する巻回部材を複数個同軸的に配列してなる少なくとも一対の巻回部材群と、これらの巻回部材群に巻回された長尺基材に近接して設けられたターゲットホルダと、該ターゲットホルダに保持されるターゲットにレーザ光を照射するレーザ光発光手段とを備え、前記レーザ光を前記ターゲットの表面に照射し、該ターゲットから叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子を、前記巻回部材群に巻回されこれらの巻回部材群を周回することによって複数列が接近した状態で平行に並べられた長尺基材の表面に堆積させる薄膜形成装置において、前記巻回部材群に、それぞれの巻回部材の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材が取り付けられたことを特徴とする薄膜形成装置を提供する。
本発明の薄膜形成装置において、前記ターゲットは、酸化物超電導体材料であり、前記薄膜は酸化物超電導体薄膜であることが好ましい。
本発明の薄膜形成装置は、巻回部材群に、それぞれの巻回部材の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材を取り付けた構成としたので、長時間連続して成膜を実行しても巻回部材の外周部に蒸着粒子が堆積されず、巻回部材の溝深さを一定に維持することができ、蒸着粒子を長尺基材の面方向にスムーズに拡散させて均一に堆積させることができ、長時間安定して成膜を行うことができる。
また、巻回部材の回転が堆積物を削ぎ落とす駆動力となるため、巻回部材群の適所に研磨部材を取り付けるだけでよく、特に大きな改造を必要とせずに従来の製造装置を改良することができる。
本発明の薄膜形成装置は、長尺基材の表面に酸化物超電導体薄膜を成膜する場合、一定の成膜環境下で酸化物超電導体薄膜を成長させることができるため、その結晶方位を揃え易い。そのため長時間の成膜によって高品質の長尺酸化物超電導線材を安定して製造することができる。
また、巻回部材の回転が堆積物を削ぎ落とす駆動力となるため、巻回部材群の適所に研磨部材を取り付けるだけでよく、特に大きな改造を必要とせずに従来の製造装置を改良することができる。
本発明の薄膜形成装置は、長尺基材の表面に酸化物超電導体薄膜を成膜する場合、一定の成膜環境下で酸化物超電導体薄膜を成長させることができるため、その結晶方位を揃え易い。そのため長時間の成膜によって高品質の長尺酸化物超電導線材を安定して製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の薄膜形成装置の一実施形態を示す図であり、図1は薄膜形成装置の要部側面図、図2は図1中のA−A’部の断面図、図3は酸化物超電導線材の一例を示す断面図、図4は本発明の薄膜形成装置の第1実施形態を示す構成図である。なお、本実施形態では、図3に示すように、テープ形状の長尺基材3上に酸化物超電導体からなる超電導層33を形成してなる酸化物超電導線材30を製造する場合を例示している。
図1〜図4は、本発明の薄膜形成装置の一実施形態を示す図であり、図1は薄膜形成装置の要部側面図、図2は図1中のA−A’部の断面図、図3は酸化物超電導線材の一例を示す断面図、図4は本発明の薄膜形成装置の第1実施形態を示す構成図である。なお、本実施形態では、図3に示すように、テープ形状の長尺基材3上に酸化物超電導体からなる超電導層33を形成してなる酸化物超電導線材30を製造する場合を例示している。
本実施形態の薄膜形成装置1は、巻回部材群5に、それぞれの巻回部材4の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材23を取り付けたこと以外は、特許文献1に開示されている従来公知の薄膜形成装置と同様に構成することができる。図4に示す薄膜形成装置1は、長尺基材3を収容する処理容器2と、処理容器2内に配置され長尺基材3を巻回する巻回部材4を複数個、ロール受け軸21に同軸的に配列してなる一対の巻回部材群5,6と、これらの巻回部材群5,6に巻回された長尺基材3に近接して設けられたターゲットホルダ10と、ターゲットホルダ10に保持されるターゲット9にレーザ光12を照射するレーザ光発光手段11とを備え、レーザ光12をターゲット9の表面に照射し、ターゲット9から叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子を、巻回部材群5,6に巻回されこれらの巻回部材群5,6を周回することによって複数列が接近した状態で平行に並べられた長尺基材3の表面に堆積させるように構成されている。
前記処理容器2には、外部からレーザ光12を容器内に導入するための透明窓13と、容器内部を減圧状態に維持する真空排気装置15が接続された排気口14が設けられている。また、処理容器2内には、長尺基材3の送出リール7と、成膜を終えた酸化物超電導線材を巻き取るための巻取リール8が設けられている。長尺線材3は、送出リール7から引き出されて一対の巻回部材群5,6の間に巻回され、多数の巻回部材4を順次通過した後、巻取リール8に巻き取られるように設けられている。また、これらの巻回部材群5,6の間には、長尺基材3を成膜適温に加熱するためのヒータ内蔵基台19が配置されている。
処理容器2内に設けられたターゲットホルダ10は、ターゲット9の中心を軸として回転可能で且つ横移動(往復移動)可能に設けられている。このように、ターゲット9を回転可能且つ横移動可能に設けたことにより、長時間の成膜を継続して実施しても、ターゲット9の表面がほぼ均一に削られ、ターゲット9表面の形状乱れによってプルーム20の方向が変わる不具合を防止でき、長尺基材3の長手方向に均一な膜厚の超電導層33を形成することができる。
ターゲットホルダ10に取り付けられたターゲット9は、形成しようとする超電導層33と同等または近似した組成、あるいは、成膜中に逃避しやすい成分を多く含有させた複合酸化物の焼結体あるいは酸化物超電導体などの板体からなっている。従って、酸化物超電導体のターゲット9は、Y1Ba2Cu3Ox、Y2Ba4Cu8Ox、Y3Ba3Cu6Oxなる組成、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oxなる組成、あるいはTl2Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca3Cu4Oxなる組成などに代表される臨界温度の高い超電導層33と同一の組成か近似した組成のものを用いることが好ましい。
このターゲット9にレーザ光12を照射するレーザ光発光手段11としては、ターゲット9から蒸着粒子を叩き出すことができるレーザ光12を発生するものであれば、Ar−F(193nm)、Kr−F(248nm)などのエキシマレーザ、YAGレーザ、CO2レーザなどのいずれのものを用いても良い。レーザ光発光手段11から照射されるレーザ光12は、反射ミラー16,18や集光レンズ17などの必要な光学系を経て、処理容器2に設けられた透明窓13を通して該容器内に入り、ターゲット9の表面に照射される。
レーザの照射出力の調整は、レーザ光発光手段11に電力を供給する増幅装置(図示略)の出力を調整することにより行うことができる。また、レーザの照射周波数は、1秒間当たりに間欠的に発振されるレーザのパルスの数を示すものであり、この調整は、レーザ光発光手段11に電力を一定の周波数をもって間欠的に供給するか、レーザ光12が通過する経路のどこかに、回転セクタ等の機械的シャッタを設け、この機械的シャッタを一定の周波数をもって作動させることにより、調整することができる。
一対の巻回部材群5,6は、多数の巻回部材4をロール受け軸21に同軸的に配列して構成されている。これらの巻回部材群5,6のうち、少なくとも一方の巻回部材群5には、図1及び図2に示すように、それぞれの巻回部材4の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材23を取り付けた構成になっている。本実施形態において、巻回部材4は円盤状をなすロールからなり、その外周部には長尺部材3が接するガイド溝24とその両側のガイド用の鍔部とを有している。
この巻回部材群5には、それぞれの巻回部材4の外周面のうちのプルーム20が当たらない領域に研磨部材23が取り付けられている。この研磨部材23は、巻回部材4の外周面に沿う曲面を有する砥石、巻回部材4の外周面に切削刃を隣接して設けた超硬合金製の切削工具などを用いることができる。この研磨部材23は、それぞれの巻回部材4の回転駆動によって、その外周部に堆積した蒸着粒子を削り落とすように構成されている。
この研磨部材23は、図2に示すように、その研磨面を巻回部材4の外周(図2の例示では鍔部の突端面)に極接近して設けることが望ましい。このような状態で研磨部材23を配置することによって、巻回部材4が回転する際に、その外周に蒸着粒子が僅かでも堆積されたならば、直ちに研磨部材23によって削り落とすことができ、それによって巻回部材4のガイド溝24の深さを常時一定に保つことができる。
次に、前述したように構成された本実施形態の薄膜形成装置1を用い、長尺基材3の表面に酸化物超電導体からなる超電導層33を成膜し、図3に示す断面構造を有する酸化物超電導線材30を製造する方法を説明する。
この長尺基材3は、ハステロイ等の金属テープ状の基材31上にイオンビームアシストスパッタリング法等によってGd2Zr2O7、CeO2、YSZなどからなる1層又は2層以上の多結晶中間薄膜32を形成してなるものである。
この基材31の構成材料としては、ステンレス鋼、銅、または、ハステロイなどのニッケル合金などの各種金属材料から適宜選択される長尺の金属テープを用いることができる。この基材31の厚みは、0.01〜0.5mm、好ましくは0.02〜0.15mmとされる。基材31の厚みが0.5mm以上では、後述する超電導層33の膜厚に比べて厚く、オーバーオール(酸化物超電導導体全断面積)あたりの臨界電流密度としては低下してしまう。一方、基材31の厚みが0.01mm未満では、基材31の強度が低下し、電導導層33の補強効果を消失してしまう。
多結晶中間薄膜32は、立方晶系の結晶構造を有する結晶の集合した微細な結晶粒が多数相互に結晶粒界を介して接合一体化されてなるものであり、各結晶粒の結晶軸のc軸は基材1の上面(成膜面)に対してほぼ直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしは、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。多結晶中間薄膜32の厚みは、0.1〜1.0μmとされる。多結晶中間薄膜32の厚みを1.0μmを超えて厚くしてももはや効果の増大は期待できず、経済的にも不利となる。一方、多結晶中間薄膜32の厚みが0.1μm未満であると、薄すぎて超電導層33を十分支持できない恐れがある。この多結晶中間薄膜32の構成材料としてはGd2Zr2O7、CeO2、YSZの他に、MgO、SrTiO3等を用いることができる。
成膜後に得られる酸化物超電導体からなる超電導層33は、Y1Ba2Cu3Ox、Y2Ba4Cu8Ox、Y3Ba3Cu6Oxなる組成、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oxなる組成、あるいはTl2Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca3Cu4Oxなる組成などに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体からなるものである。この超電導層33の厚みは、0.5〜5μm程度で、かつ均一な厚みとなっている。また、超電導層33の膜質は均一となっており、超電導層33の結晶のc軸とa軸とb軸も多結晶中間薄膜32の結晶に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化しており、結晶配向性が優れたものとなっている。
図4に示す薄膜形成装置1を用いて長尺基材3の上に超電導層33を成膜するには、送出リール20に巻回されている長尺基材3を引き出しながら、一対の巻回部材群5,6に順次巻回し、その後巻取リール8に巻き取り可能に固定する。これによって、一対の巻回部材群5,6に巻回された長尺基材3がこれらの巻回部材群5,6を周回し、プルーム20が当たる部分に長尺基材が複数列並んで移動するようになる。また、ターゲットホルダ10にターゲット9を取り付ける。その後、真空排気装置15を駆動し、処理容器2内を減圧する。この際、必要に応じて処理容器2内に酸素ガスを導入して容器内を酸素雰囲気としても良い。
次に、一対の巻回部材群5,6の間に設けられたヒータ内蔵基台19のヒータに通電し、これらの巻回部材群5,6に巻回された長尺基材3が所定の成膜適温になるように加熱しておく。
次に、送出リール7から長尺基材3を送り出しつつ、レーザ光発光手段11からレーザ光12を発生させ、透明窓13を通してレーザ光12を処理容器2内に導入し、ターゲット9に照射する。この時、レーザ光11の照射位置をターゲット9の表面上で移動させる走査を行いながらレーザ光12をターゲット9に照射してもよい。また、ターゲット9は、回転及び横方向に往復移動させている。このターゲット9の回転運動によりレーザ光12は円状の軌跡を描くので、ターゲット9表面は円状に削られ、また、前記往復運動によりレーザ光12はターゲット9の径方向に動くことで、ターゲット9の円周側から中心側にかけても削られるので、異なる場所のターゲット9の構成材料が叩き出されるか蒸発する。
ターゲット9から叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子は、その放射方向の断面積が拡大したプルーム20となり、一対の巻回部材群5,6に巻回され、多数の巻回部材4間を周回することによって複数列に並んで移動している長尺基材3の表面に付着、堆積される。これによって長尺基材3の表面に酸化物超電導体からなる超電導層33が成膜される。
このレーザ光12の照射エネルギーは200〜400mJの範囲であることが好ましい。レーザ光12の照射エネルギーが200mJ未満であると、ターゲット9に与える熱エネルギーが小さすぎてターゲット9の蒸着粒子を十分に叩き出し若しくは蒸発させることができず、超電導層33の成膜速度が低下してしまい効率的でないからであり、また、レーザ光12の出力が400mJを越えると、ターゲット9に与えるエネルギーが大きすぎてターゲット9に割れ等が生じる虞があるからである。
さらに、レーザ光12の照射周波数は10〜200Hzの範囲であることが好ましい。レーザ光12の照射周波数が10Hz未満であると、照射出力を400mJとしても、ターゲット9に与えるエネルギーが小さすぎて、ターゲット9の蒸着粒子を十分に叩き出すことができず、超電導層33の成膜速度が低下してしまい効率的でないからであり、また、レーザ光12の照射周波数が200Hzを越えると、照射出力を200mJとしても、ターゲット9に与えるエネルギーが大きすぎてターゲット9に割れ等が生じる虞があるからである。
このように、長尺基材3が巻回部材群5,6を周回する間に、長尺基材3はプルーム20と接する領域を複数回通過することになる。長尺基材3がプルーム20と接する領域を通過する毎に、酸化物超電導体からなる薄膜が順次成膜されるので、その結果、多結晶中間薄膜30上に各層の厚みが略一定となるような積層構造の超電導層33が成膜され、図3に示す酸化物超電導線材30が得られる。超電導層33の成膜後、得られた酸化物超電導線材30は、巻取リール8に巻き取られる。
本実施形態の薄膜形成装置1は、少なくとも1つの巻回部材群5に、それぞれの巻回部材4の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材23を取り付けた構成としたので、長時間連続して成膜を実行しても巻回部材4の外周部に蒸着粒子が堆積されず、巻回部材4のガイド溝24の深さを一定に維持することができ、蒸着粒子を長尺基材3の面方向にスムーズに拡散させて均一に堆積させることができ、長時間安定して成膜を行うことができる。
また、巻回部材4の回転運動が堆積物を削ぎ落とす駆動力となるため、巻回部材群5の適所に研磨部材23を取り付けるだけでよく、特に大きな改造を必要とせずに従来の製造装置を改良することができる。
本実施形態の薄膜形成装置1は、長尺基材3の表面に酸化物超電導体からなる超電導層3を成膜する場合、一定の成膜環境下で超電導層33を成長させることができるため、その結晶方位を揃え易い。そのため長時間の成膜によって長尺で高品質の酸化物超電導線材30を安定して製造することができる。
なお、前述した実施形態は本発明の例示に過ぎず、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、各種の変更や修正が可能である。
例えば、前述した実施形態では、薄膜として酸化物超電導体からなる超電導層33を成膜する装置を例示しているが、本発明の薄膜形成装置は、他のレーザ蒸着が可能な材料、例えば、各種のセラミックス材料や金属材料などの成膜用に適用することができる。
また、長尺基材3はテープ状に限定されず、断面円形の線材等であっても良い。
例えば、前述した実施形態では、薄膜として酸化物超電導体からなる超電導層33を成膜する装置を例示しているが、本発明の薄膜形成装置は、他のレーザ蒸着が可能な材料、例えば、各種のセラミックス材料や金属材料などの成膜用に適用することができる。
また、長尺基材3はテープ状に限定されず、断面円形の線材等であっても良い。
[比較例]
図4に示す薄膜形成装置における巻回部材群5,6に研磨部材23を取り付けない従来の薄膜形成装置を用い、テープ状の長尺基材の表面にY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜した。線速を10m/時間とし、約10時間の連続成膜で厚さ1μmのY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜し、全長100mの酸化物超電導線材を製造した。得られた酸化物超電導線材の臨界電流(Ic)は100m全長でIc=250Aであった。成膜開始時の該線材の臨界電流はIc=350Aと高かったものの、成膜後半から徐々に特性低下が見られ、成膜終了時の臨界電流はIc=250Aとなっていた。
このIc特性劣化の原因を調べるため、得られた酸化物超電導線材の超電導層をXRD分析した。その結果、成膜後半から徐々に特性低下が見られた部分の超電導層は、a軸配向粒子が成膜開始時のものよりも増加していることが判明した。
図4に示す薄膜形成装置における巻回部材群5,6に研磨部材23を取り付けない従来の薄膜形成装置を用い、テープ状の長尺基材の表面にY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜した。線速を10m/時間とし、約10時間の連続成膜で厚さ1μmのY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜し、全長100mの酸化物超電導線材を製造した。得られた酸化物超電導線材の臨界電流(Ic)は100m全長でIc=250Aであった。成膜開始時の該線材の臨界電流はIc=350Aと高かったものの、成膜後半から徐々に特性低下が見られ、成膜終了時の臨界電流はIc=250Aとなっていた。
このIc特性劣化の原因を調べるため、得られた酸化物超電導線材の超電導層をXRD分析した。その結果、成膜後半から徐々に特性低下が見られた部分の超電導層は、a軸配向粒子が成膜開始時のものよりも増加していることが判明した。
[実施例]
一方、図4に示す薄膜形成装置における巻回部材群5に研磨部材23として砥石を取り付け、本発明に係る薄膜形成装置を作製し、前記比較例と同様にしてテープ状の長尺基材の表面にY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜した。線速を10m/時間とし、約10時間の連続成膜で厚さ1μmのY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜し、全長100mの酸化物超電導線材を製造した。得られた酸化物超電導線材の臨界電流(Ic)は100m全長でIc=330Aであり、比較例よりも高特性の酸化物超電導線材を製造することができた。
また、これよりも長い約50時間連続成膜実験においても、本発明に係る薄膜形成装置により、500m全長でIc=320Aの酸化物超電導線材を製造することができた。
一方、図4に示す薄膜形成装置における巻回部材群5に研磨部材23として砥石を取り付け、本発明に係る薄膜形成装置を作製し、前記比較例と同様にしてテープ状の長尺基材の表面にY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜した。線速を10m/時間とし、約10時間の連続成膜で厚さ1μmのY1Ba2Cu3Oxからなる超電導層を成膜し、全長100mの酸化物超電導線材を製造した。得られた酸化物超電導線材の臨界電流(Ic)は100m全長でIc=330Aであり、比較例よりも高特性の酸化物超電導線材を製造することができた。
また、これよりも長い約50時間連続成膜実験においても、本発明に係る薄膜形成装置により、500m全長でIc=320Aの酸化物超電導線材を製造することができた。
1…薄膜形成装置、2…処理容器、3…長尺基材、4…巻回部材、5,6…巻回部材群、7…送出リール、8…巻取リール、9…ターゲット、10…ターゲットホルダ、11…レーザ光発光手段、12…レーザ光、13…透明窓、14…排気口、15…真空排気装置、16,18…反射ミラー、17…集光レンズ、19…ヒータ内蔵基台、20…プルーム、21…ロール受け軸、22…堆積物、23…研磨部材、24…ガイド溝、30…酸化物超電導線材、31…基材、32…多結晶中間薄膜、33…超電導層(酸化物超電導体薄膜)。
Claims (2)
- 長尺基材を収容する処理容器と、該処理容器内に配置され前記長尺基材を巻回する巻回部材を複数個同軸的に配列してなる少なくとも一対の巻回部材群と、これらの巻回部材群に巻回された長尺基材に近接して設けられたターゲットホルダと、該ターゲットホルダに保持されるターゲットにレーザ光を照射するレーザ光発光手段とを備え、前記レーザ光を前記ターゲットの表面に照射し、該ターゲットから叩き出され若しくは蒸発した蒸着粒子を、前記巻回部材群に巻回されこれらの巻回部材群を周回することによって複数列が接近した状態で平行に並べられた長尺基材の表面に堆積させる薄膜形成装置において、
前記巻回部材群に、それぞれの巻回部材の外周部に堆積される蒸着粒子を削り落とす研磨部材が取り付けられたことを特徴とする薄膜形成装置。 - 前記ターゲットは、酸化物超電導体材料であり、前記薄膜は酸化物超電導体薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2005046719A JP2006233246A (ja) | 2005-02-23 | 2005-02-23 | 薄膜形成装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013504693A (ja) * | 2009-09-11 | 2013-02-07 | ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ | Oled基材上にパターン形成コーティングを形成するための装置および方法 |
JP2018502994A (ja) * | 2014-12-23 | 2018-02-01 | ピコデオン リミティド オサケユイチア | 回転ミラーと円形リングターゲットとを伴う灯台形スキャナ |
-
2005
- 2005-02-23 JP JP2005046719A patent/JP2006233246A/ja not_active Withdrawn
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US10927447B2 (en) | 2014-12-23 | 2021-02-23 | Pulsedeon Oy | Lighthouse scanner with a rotating mirror and a circular ring target |
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