JP2004362784A - 酸化物超電導導体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化物超電導層の結晶配向性に優れた酸化物超電導導体を効率的に製造することが可能な酸化物超電導導体の製造方法、およびこれによって得られた酸化物超電導導体を提供する。
【解決手段】金属製の基材1上にイオンビームアシスト法により第一の多結晶薄膜2を形成する第一工程と、第一の多結晶薄膜2上にパルスレーザ蒸着法により第二の多結晶薄膜3を形成する第二工程と、第二の多結晶薄膜3上にパルスレーザ蒸着法により酸化物超電導層4を形成する第三工程とを有する酸化物超電導導体の製造方法を提供する。第一の多結晶薄膜2と第二の多結晶薄膜3とを略同一組成とする。第一の多結晶薄膜2の膜厚を2μm以下とする。
【選択図】 図1
【解決手段】金属製の基材1上にイオンビームアシスト法により第一の多結晶薄膜2を形成する第一工程と、第一の多結晶薄膜2上にパルスレーザ蒸着法により第二の多結晶薄膜3を形成する第二工程と、第二の多結晶薄膜3上にパルスレーザ蒸着法により酸化物超電導層4を形成する第三工程とを有する酸化物超電導導体の製造方法を提供する。第一の多結晶薄膜2と第二の多結晶薄膜3とを略同一組成とする。第一の多結晶薄膜2の膜厚を2μm以下とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物超電導導体に関し、特に、酸化物超電導層の結晶配向性に優れた酸化物超電導導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年になって発見された酸化物超電導体は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す、優れた超電導体である。
酸化物超電導体を、超電導体として実用化するためには、金属製のテープ基材(以下、「金属テープ基材」と略す。)上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成した酸化物超電導導体が用いられる。
【0003】
一般的に、金属テープ基材は多結晶質であり、その結晶構造が酸化物超電導体と大きく異なっている。そのため、金属テープ基材上に、結晶配向性の良好な酸化物超電導層を直に形成することは難しい。
そこで、ハステロイテープなどの金属テープ基材上に、中間層として結晶配向性に優れたGd2Zr2O7などの多結晶薄膜を形成した後、この多結晶薄膜上にY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成した酸化物超電導導体が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
多結晶薄膜は、その結晶があらかじめc軸配向し、a軸およびb軸においても配向するように、イオンビームアシスト(Ion Beam AssistedDeposition、IBAD)法により形成される。
【0005】
Y1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成するには、多結晶薄膜上に均質に薄膜を形成することができるパルスレーザ蒸着(Pulsed LaserDeposition、PLD)法などが用いられる。
このY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層は、その結晶のc軸、a軸およびb軸が多結晶薄膜の結晶に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化し、これにより結晶配向性の良好なものとなる。
【0006】
このように、酸化物超電導導体の作製において、多結晶薄膜の結晶配向性を制御し、この上に結晶配向性の良好なY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成することで、超電導体の特性(臨界電流(Ic)、臨界電流密度(Jc)など)を改善することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−96563号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、IBAD法による多結晶薄膜の形成においては、成膜速度が遅く、高配向の多結晶薄膜を形成するのに長時間を要する。そのため、IBAD法による多結晶薄膜の形成方法は、長尺の酸化物超電導導体を生産するには非効率的な方法である。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、酸化物超電導層の結晶配向性に優れた酸化物超電導導体を効率的に製造することが可能な酸化物超電導導体の製造方法、およびこれによって得られた酸化物超電導導体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、金属製の基材上にイオンビームアシスト法により第一の多結晶薄膜を形成する第一工程と、該第一の多結晶薄膜上にパルスレーザ蒸着法により第二の多結晶薄膜を形成する第二工程と、該第二の多結晶薄膜上にパルスレーザ蒸着法により酸化物超電導層を形成する第三工程と、を有する酸化物超電導導体の製造方法を提供する。
【0011】
上記酸化物超電導導体の製造方法において、前記第一の多結晶薄膜と前記第二の多結晶薄膜とを略同一組成とすることが好ましい。
【0012】
上記酸化物超電導導体の製造方法において、前記第一の多結晶薄膜の膜厚を2μm以下とすることが好ましい。
【0013】
本発明は、金属製の基材上に、第一の多結晶薄膜、第二の多結晶薄膜、および酸化物超電導層を順に積層して設けてなる酸化物超電導導体を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の酸化物超電導導体の一実施形態を示す模式図である。図1中、1は基材、2は第一の多結晶薄膜、3は第二の多結晶薄膜、4は酸化物超電導層を示している。
【0015】
基材1としては、例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイなどのニッケル合金などの金属材料からなる板材、線材、テープ材などの種々の形状のものを用いることができる。
【0016】
第一の多結晶薄膜2は、Gd2Zr2O7などの組成式で示される立方晶系の結晶構造を有する微細な結晶の集合体の結晶粒が、多数、相互に結晶粒界を介し接合一体化されてなり、各結晶粒の結晶軸のc軸は基材1の上面(被成膜面)に対して直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸同士およびb軸同士は、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。また、各結晶粒のa軸(あるいはb軸)同士は、それらのなす角度を30度以内にして接合一体化されている。
【0017】
第一の多結晶薄膜2を構成する複合酸化物としては、Gd2Zr2O7の他に、Sm2Zr2O7、La2Zr2O7、Ce2Zr2O7、Pr2Zr2O7、Gd2Hf2O7、Sm2Hf2O7、La2Hf2O7、Y2Zr2O7、Yb2Zr2O7、Tm2Zr2O7、Er2Zr2O7、Ho2Zr2O7、Dy2Zr2O7、Eu2Zr2O7、Nd2Zr2O7、Y2Zr2O7、Y2Hf2O7、Yb2Hf2O7、Tm2Hf2O7、Er2Hf2O7、Ho2Hf2O7、Dy2Hf2O7、Eu2Hf2O7、Nd2Hf2O7、Pr2Hf2O7、Ce2Hf2O7の組成の複合酸化物を適用することができる。
【0018】
第一の多結晶薄膜2の膜厚は、2μm以下であることが好ましく、0.5μm〜1.5μmであることがより好ましい。第一の多結晶薄膜2の膜厚が2μmを超えると、成膜に長時間を要するため、非効率的であり、結果として、製造コストが嵩む。
【0019】
第二の多結晶薄膜3は、第一の多結晶薄膜2上に、第一の多結晶薄膜2とほぼ同種の物質をエピタキシャル成長させてなるものである。すなわち、第二の多結晶薄膜3は、第一の多結晶薄膜2上と同一の材質からなり、Gd2Zr2O7などの組成式で示される立方晶系の結晶構造を有する微細な結晶の集合体の結晶粒が、多数、相互に結晶粒界を介し接合一体化されてなり、各結晶粒の結晶軸のc軸は第一の多結晶薄膜2の上面(被成膜面)に対してほぼ直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸同士およびb軸同士は、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。また、各結晶粒のa軸(あるいはb軸)同士は、それらのなす角度を30度以内にして接合一体化されている。
【0020】
第二の多結晶薄膜3の膜厚は特に限定されず、この上に形成される酸化物超電導層4の膜厚などに応じて適宜設定されるが、5μm以下であることが望ましく、0.5μm〜2μmであることがより望ましい。
【0021】
酸化物超電導層4は、その結晶粒のc軸は第二の多結晶薄膜3の上面に対して直角に配向され、その結晶粒のa軸およびb軸は、上述の第一の多結晶薄膜2と同様に、基材1の上面と平行な面に沿って面内配向し、結晶粒同士が形成する粒界傾角は30度以内となっている。
【0022】
酸化物超電導層4を構成する酸化物超電導体としては、Y1Ba2Cu3O7−x、Y2Ba4Cu8Ox、Y3Ba3Cu6Oxなる組成、あるいは(Bi,Pb)2Ca2Sr2Cu3Ox、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oxなる組成、あるいは、Tl2Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca3Cu4Oxなる組成などに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体が挙げられるが、これら以外の酸化物系の超電導体を用いてもよい。
【0023】
次に、図2および図3を用いて、この実施形態の酸化物超電導導体の製造方法について説明する。
図2は、上記第一の多結晶薄膜2を形成する装置の一例を示す模式図である。
この例の装置は、テープ状の基材1を支持するとともに所望の温度に加熱することができる基材ホルダ10と、基材ホルダ10の斜め上方に所定間隔をおいて対向配置された板状のターゲット20と、ターゲット20の斜め上方においてターゲット20の下面に対向して配置されたスパッタビーム照射装置22と、基材ホルダ10の側方に所定間隔をおいて対向され、かつ、ターゲット20と離間して配置されたイオンソース23とが真空排気可能な成膜処理容器25内に収容された概略構成となっている。
【0024】
ターゲット20としては、目的とする組成の第一の多結晶薄膜2と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。具体的には、上述の第一の多結晶薄膜2を構成する複合酸化物と同一組成あるいは近似組成の複合酸化物が用いられる。特に、第一の多結晶薄膜2を形成した場合に飛散し易い元素を予め多めに含有するターゲットを用いることが望ましい。
【0025】
まず、基材1として、ハステロイなどからなるテープ状基材を用意する。
次いで、図2に示すような装置を用いて、IBAD法により、テープ状の基材1上に、膜厚2μm以下の第一の多結晶薄膜2を形成する。
基材1上に第一の多結晶薄膜2を形成するには、ターゲット20を用い、基材1を収納している成膜処理容器25内部を真空引きして減圧雰囲気とするとともに、基材送出ボビン11から基材ホルダ10に基材1を所定の速度で送り出し、さらにイオンソース23とスパッタビーム照射装置22を作動させる。
【0026】
スパッタビーム照射装置22からターゲット20に、所定の照射角度でイオンのビームを照射すると、ターゲット20の構成粒子が叩き出されて基材1上に飛来する。そして、基材ホルダ10上に送り出された基材1上にターゲット20から叩き出した構成粒子を堆積させると同時にイオンソース23からアシストイオンビームとして、例えば、Ar+イオンのイオンビーム、Kr+イオンのイオンビーム、Xe+イオンのイオンビーム、あるいは、Kr+イオンとXe+イオンの混合イオンビームを照射して、所望の厚みの第一の多結晶薄膜2を成膜し、成膜後の基材1を基材巻取ボビン12に巻き取る。
【0027】
また、第一の多結晶薄膜2の成膜の際、基材1を適切な温度に加熱し、イオンソース23から照射されるアシストイオンビームのエネルギーを適切な範囲内に設定することが望ましい。このように、基材1の温度およびアシストイオンビームのエネルギーを適切な範囲に設定することにより、第一の多結晶薄膜2を良好な配向性をもって成膜することができる。
【0028】
次いで、図3に示すようなレーザ蒸着装置を用いて、PLD法により、第一の多結晶薄膜2上に第二の多結晶薄膜3を形成する。
図3は、上記第二の多結晶薄膜3を形成するレーザ蒸着装置の一例を示す模式図である。
この例のレーザ蒸着装置は、処理容器30と、この処理容器30の内部の蒸着処理室31に設置されたターゲット32と、基材1を水平状態に設置できる基台33と、真空排気装置34と、レーザ発光装置35とから概略構成されている。
【0029】
レーザ発光装置35は、ターゲット32から構成粒子を叩き出すことができるものであれば、YAGレーザ、CO2レーザ、エキシマレーザなどのいずれのものを用いてもよい。
【0030】
ターゲット32としては、目的とする組成の第二の多結晶薄膜3と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。具体的には、上述の第二の多結晶薄膜3を構成する複合酸化物と同一組成あるいは近似組成の複合酸化物が用いられる。特に、第二の多結晶薄膜3を形成した場合に飛散し易い元素を予め多めに含有するターゲットを用いることが望ましい。
【0031】
第二の多結晶薄膜3を形成するには、まず、第一の多結晶薄膜2が形成された基材1を、このレーザ蒸着装置の基台33上に設置する。
次いで、蒸着処理室31内を真空ポンプで減圧する。ここで必要に応じて蒸着処理室31に酸素ガスを導入して蒸着処理室31を酸素雰囲気としてもよい。また、基台33に設けられた加熱ヒータを作動させて基材1を所定の温度に加熱する。
【0032】
次いで、レーザ発光装置35から発生させたレーザビームを、蒸着処理室31のターゲット32に集光照射する。これにより、ターゲット32の構成粒子がえぐり出されるか蒸発されて、その粒子が第一の多結晶薄膜2上に堆積し、第二の多結晶薄膜3が形成される。
この際、レーザビームの射出強度を200mJ〜400mJ程度、パルス周波数を10Hz〜300Hz程度、酸素圧力を0.1mTorr〜100mTorr程度、基材1の温度を600〜1000℃程度とし、基材1の線速1m/h〜10m/h程度として、基材1を移動させながら数回堆積する。
【0033】
ここで、構成粒子の堆積の際に、Gd2Zr2O7の第一の多結晶薄膜2が予めc軸配向し、a軸とb軸でも配向しているので、第一の多結晶薄膜2上に形成される第二の多結晶薄膜3の結晶のc軸とa軸とb軸も、第一の多結晶薄膜2に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化する。
【0034】
次いで、図3に示すようなレーザ蒸着装置を用いて、PLD法により、第二の多結晶薄膜3上に酸化物超電導層4を形成する。
酸化物超電導層4の形成においては、ターゲット32として、目的とする組成の酸化物超電導層4と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。具体的には、上述の酸化物超電導層4を構成する酸化物超電導体と同一組成あるいは近似組成の酸化物超電導体が用いられる。特に、酸化物超電導層4を形成した場合に飛散し易い元素を予め多めに含有するターゲットを用いることが望ましい。
【0035】
酸化物超電導層4を形成するには、まず、第一の多結晶薄膜2および第二の多結晶薄膜3が形成された基材1を、このレーザ蒸着装置の基台33上に設置する。
次いで、蒸着処理室31内を真空ポンプで減圧する。ここで必要に応じて蒸着処理室31に酸素ガスを導入して蒸着処理室31を酸素雰囲気としてもよい。また、基台33に設けられた加熱ヒータを作動させて基材1を所定の温度に加熱する。
【0036】
次いで、レーザ発光装置35から発生させたレーザビームを、蒸着処理室31のターゲット32に集光照射する。これにより、ターゲット32の構成粒子がえぐり出されるか蒸発されて、その粒子が第二の多結晶薄膜3上に堆積し、酸化物超電導層4が形成されて、酸化物超電導導体を得る。
【0037】
ここで、構成粒子の堆積の際に、Gd2Zr2O7の第二の多結晶薄膜3が予めc軸配向し、a軸とb軸でも配向しているので、第二の多結晶薄膜3上に形成される酸化物超電導層4の結晶のc軸とa軸とb軸も、第二の多結晶薄膜3に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化する。
【0038】
この実施形態では、IBAD法により、基板1上に第一の多結晶薄膜2を形成した後、第一の多結晶薄膜2上にPLD法により第二の多結晶薄膜3を形成するが、第一の多結晶薄膜2の成膜速度は数nm/min程度、第二の多結晶薄膜3の成膜速度は数100nm/min程度である。したがって、同じ膜厚の多結晶薄膜を形成する場合、IBAD法のみで形成するよりも、この実施形態のようにIBAD法およびPLD法を用いて形成した方が成膜に要する時間が短くなるため、結果として、酸化物超電導導体の製造コストを削減することができる。
【0039】
また、この実施形態では、IBAD法により、基板1上に厚み2μm以下の第一の多結晶薄膜2を形成し、PLD法により、第一の多結晶薄膜2上に第二の多結晶薄膜3を形成した後、PLD法により、第二の多結晶薄膜3上に酸化物超電導層4を設けることにより、IBAD法により形成された多結晶薄膜上に酸化物超電導層を設けた場合よりも、結晶配向性の良好な酸化物超電導層4を設けることができる。その結果として、臨界電流(Ic)、臨界電流密度(Jc)などの値が向上した酸化物超電導導体を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例)
ハステロイテープ基材上にIBAD法により形成した膜厚1μmのGd2Zr2O7の第一の多結晶薄膜上に、PLD法により膜厚1μmのGd2Zr2O7の第二の多結晶薄膜を形成した後、PLD法により膜厚1μmのY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成し、酸化物超電導導体を得た。
第二の多結晶薄膜の形成においては、エキシマレーザ−パルス光の射出強度を300mJ、パルス周波数を250Hz、酸素圧力を2mTorr、ハステロイテープ基材の温度を800℃とし、線速4.5m/hでハステロイテープ基材を移動させて、構成粒子を数回堆積させた。
得られた酸化物超電導導体の臨界電流密度(Jc)の値は、1.7MA/cm2であった。
【0042】
(比較例)
ハステロイテープ基材上にIBAD法により形成した膜厚2μmのGd2Zr2O7の多結晶薄膜上に、PLD法により膜厚1μmのよりY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成し、酸化物超電導導体を得た。
得られた酸化物超電導導体の臨界電流密度(Jc)の値は、1MA/cm2であった。
【0043】
実施例と比較例を比べると、実施例では超電導特性が改善されたことが分かった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属製の基材上にIBAD法により結晶配向した第一の多結晶薄膜を形成後、この第一の多結晶薄膜上に成膜速度の速いPLD法により第一の多結晶薄膜と略同一組成の粒子をホモエピタキシャル成長させて結晶化させ、第二の多結晶薄膜を形成するので、多結晶薄膜全体としての形成時間を短縮することができる。
また、結晶配向性の良好な酸化物超電導導体を製造することができるため、超電導特性に優れた長尺の酸化物超電導導体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化物超電導導体の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の酸化物超電導導体の製造方法における第一の多結晶膜を形成する装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の酸化物超電導導体の製造方法における第二の多結晶膜または酸化物超電導層を形成するレーザ蒸着装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・基材、2・・・第一の多結晶薄膜、3・・・第二の多結晶薄膜、4・・・酸化物超電導層、10・・・基材ホルダ、11・・・基材送出ボビン、12・・・基材巻取ボビン、20・・・ターゲット、22・・・スパッタビーム照射装置、23・・・イオンソース、25・・・成膜処理容器、30・・・処理容器、31・・・蒸着処理室、32・・・ターゲット、33・・・基台、34・・・真空排気装置、35・・・レーザ発光装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物超電導導体に関し、特に、酸化物超電導層の結晶配向性に優れた酸化物超電導導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年になって発見された酸化物超電導体は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す、優れた超電導体である。
酸化物超電導体を、超電導体として実用化するためには、金属製のテープ基材(以下、「金属テープ基材」と略す。)上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成した酸化物超電導導体が用いられる。
【0003】
一般的に、金属テープ基材は多結晶質であり、その結晶構造が酸化物超電導体と大きく異なっている。そのため、金属テープ基材上に、結晶配向性の良好な酸化物超電導層を直に形成することは難しい。
そこで、ハステロイテープなどの金属テープ基材上に、中間層として結晶配向性に優れたGd2Zr2O7などの多結晶薄膜を形成した後、この多結晶薄膜上にY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成した酸化物超電導導体が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
多結晶薄膜は、その結晶があらかじめc軸配向し、a軸およびb軸においても配向するように、イオンビームアシスト(Ion Beam AssistedDeposition、IBAD)法により形成される。
【0005】
Y1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成するには、多結晶薄膜上に均質に薄膜を形成することができるパルスレーザ蒸着(Pulsed LaserDeposition、PLD)法などが用いられる。
このY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層は、その結晶のc軸、a軸およびb軸が多結晶薄膜の結晶に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化し、これにより結晶配向性の良好なものとなる。
【0006】
このように、酸化物超電導導体の作製において、多結晶薄膜の結晶配向性を制御し、この上に結晶配向性の良好なY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成することで、超電導体の特性(臨界電流(Ic)、臨界電流密度(Jc)など)を改善することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−96563号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、IBAD法による多結晶薄膜の形成においては、成膜速度が遅く、高配向の多結晶薄膜を形成するのに長時間を要する。そのため、IBAD法による多結晶薄膜の形成方法は、長尺の酸化物超電導導体を生産するには非効率的な方法である。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、酸化物超電導層の結晶配向性に優れた酸化物超電導導体を効率的に製造することが可能な酸化物超電導導体の製造方法、およびこれによって得られた酸化物超電導導体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、金属製の基材上にイオンビームアシスト法により第一の多結晶薄膜を形成する第一工程と、該第一の多結晶薄膜上にパルスレーザ蒸着法により第二の多結晶薄膜を形成する第二工程と、該第二の多結晶薄膜上にパルスレーザ蒸着法により酸化物超電導層を形成する第三工程と、を有する酸化物超電導導体の製造方法を提供する。
【0011】
上記酸化物超電導導体の製造方法において、前記第一の多結晶薄膜と前記第二の多結晶薄膜とを略同一組成とすることが好ましい。
【0012】
上記酸化物超電導導体の製造方法において、前記第一の多結晶薄膜の膜厚を2μm以下とすることが好ましい。
【0013】
本発明は、金属製の基材上に、第一の多結晶薄膜、第二の多結晶薄膜、および酸化物超電導層を順に積層して設けてなる酸化物超電導導体を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の酸化物超電導導体の一実施形態を示す模式図である。図1中、1は基材、2は第一の多結晶薄膜、3は第二の多結晶薄膜、4は酸化物超電導層を示している。
【0015】
基材1としては、例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイなどのニッケル合金などの金属材料からなる板材、線材、テープ材などの種々の形状のものを用いることができる。
【0016】
第一の多結晶薄膜2は、Gd2Zr2O7などの組成式で示される立方晶系の結晶構造を有する微細な結晶の集合体の結晶粒が、多数、相互に結晶粒界を介し接合一体化されてなり、各結晶粒の結晶軸のc軸は基材1の上面(被成膜面)に対して直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸同士およびb軸同士は、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。また、各結晶粒のa軸(あるいはb軸)同士は、それらのなす角度を30度以内にして接合一体化されている。
【0017】
第一の多結晶薄膜2を構成する複合酸化物としては、Gd2Zr2O7の他に、Sm2Zr2O7、La2Zr2O7、Ce2Zr2O7、Pr2Zr2O7、Gd2Hf2O7、Sm2Hf2O7、La2Hf2O7、Y2Zr2O7、Yb2Zr2O7、Tm2Zr2O7、Er2Zr2O7、Ho2Zr2O7、Dy2Zr2O7、Eu2Zr2O7、Nd2Zr2O7、Y2Zr2O7、Y2Hf2O7、Yb2Hf2O7、Tm2Hf2O7、Er2Hf2O7、Ho2Hf2O7、Dy2Hf2O7、Eu2Hf2O7、Nd2Hf2O7、Pr2Hf2O7、Ce2Hf2O7の組成の複合酸化物を適用することができる。
【0018】
第一の多結晶薄膜2の膜厚は、2μm以下であることが好ましく、0.5μm〜1.5μmであることがより好ましい。第一の多結晶薄膜2の膜厚が2μmを超えると、成膜に長時間を要するため、非効率的であり、結果として、製造コストが嵩む。
【0019】
第二の多結晶薄膜3は、第一の多結晶薄膜2上に、第一の多結晶薄膜2とほぼ同種の物質をエピタキシャル成長させてなるものである。すなわち、第二の多結晶薄膜3は、第一の多結晶薄膜2上と同一の材質からなり、Gd2Zr2O7などの組成式で示される立方晶系の結晶構造を有する微細な結晶の集合体の結晶粒が、多数、相互に結晶粒界を介し接合一体化されてなり、各結晶粒の結晶軸のc軸は第一の多結晶薄膜2の上面(被成膜面)に対してほぼ直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸同士およびb軸同士は、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。また、各結晶粒のa軸(あるいはb軸)同士は、それらのなす角度を30度以内にして接合一体化されている。
【0020】
第二の多結晶薄膜3の膜厚は特に限定されず、この上に形成される酸化物超電導層4の膜厚などに応じて適宜設定されるが、5μm以下であることが望ましく、0.5μm〜2μmであることがより望ましい。
【0021】
酸化物超電導層4は、その結晶粒のc軸は第二の多結晶薄膜3の上面に対して直角に配向され、その結晶粒のa軸およびb軸は、上述の第一の多結晶薄膜2と同様に、基材1の上面と平行な面に沿って面内配向し、結晶粒同士が形成する粒界傾角は30度以内となっている。
【0022】
酸化物超電導層4を構成する酸化物超電導体としては、Y1Ba2Cu3O7−x、Y2Ba4Cu8Ox、Y3Ba3Cu6Oxなる組成、あるいは(Bi,Pb)2Ca2Sr2Cu3Ox、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oxなる組成、あるいは、Tl2Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca3Cu4Oxなる組成などに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体が挙げられるが、これら以外の酸化物系の超電導体を用いてもよい。
【0023】
次に、図2および図3を用いて、この実施形態の酸化物超電導導体の製造方法について説明する。
図2は、上記第一の多結晶薄膜2を形成する装置の一例を示す模式図である。
この例の装置は、テープ状の基材1を支持するとともに所望の温度に加熱することができる基材ホルダ10と、基材ホルダ10の斜め上方に所定間隔をおいて対向配置された板状のターゲット20と、ターゲット20の斜め上方においてターゲット20の下面に対向して配置されたスパッタビーム照射装置22と、基材ホルダ10の側方に所定間隔をおいて対向され、かつ、ターゲット20と離間して配置されたイオンソース23とが真空排気可能な成膜処理容器25内に収容された概略構成となっている。
【0024】
ターゲット20としては、目的とする組成の第一の多結晶薄膜2と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。具体的には、上述の第一の多結晶薄膜2を構成する複合酸化物と同一組成あるいは近似組成の複合酸化物が用いられる。特に、第一の多結晶薄膜2を形成した場合に飛散し易い元素を予め多めに含有するターゲットを用いることが望ましい。
【0025】
まず、基材1として、ハステロイなどからなるテープ状基材を用意する。
次いで、図2に示すような装置を用いて、IBAD法により、テープ状の基材1上に、膜厚2μm以下の第一の多結晶薄膜2を形成する。
基材1上に第一の多結晶薄膜2を形成するには、ターゲット20を用い、基材1を収納している成膜処理容器25内部を真空引きして減圧雰囲気とするとともに、基材送出ボビン11から基材ホルダ10に基材1を所定の速度で送り出し、さらにイオンソース23とスパッタビーム照射装置22を作動させる。
【0026】
スパッタビーム照射装置22からターゲット20に、所定の照射角度でイオンのビームを照射すると、ターゲット20の構成粒子が叩き出されて基材1上に飛来する。そして、基材ホルダ10上に送り出された基材1上にターゲット20から叩き出した構成粒子を堆積させると同時にイオンソース23からアシストイオンビームとして、例えば、Ar+イオンのイオンビーム、Kr+イオンのイオンビーム、Xe+イオンのイオンビーム、あるいは、Kr+イオンとXe+イオンの混合イオンビームを照射して、所望の厚みの第一の多結晶薄膜2を成膜し、成膜後の基材1を基材巻取ボビン12に巻き取る。
【0027】
また、第一の多結晶薄膜2の成膜の際、基材1を適切な温度に加熱し、イオンソース23から照射されるアシストイオンビームのエネルギーを適切な範囲内に設定することが望ましい。このように、基材1の温度およびアシストイオンビームのエネルギーを適切な範囲に設定することにより、第一の多結晶薄膜2を良好な配向性をもって成膜することができる。
【0028】
次いで、図3に示すようなレーザ蒸着装置を用いて、PLD法により、第一の多結晶薄膜2上に第二の多結晶薄膜3を形成する。
図3は、上記第二の多結晶薄膜3を形成するレーザ蒸着装置の一例を示す模式図である。
この例のレーザ蒸着装置は、処理容器30と、この処理容器30の内部の蒸着処理室31に設置されたターゲット32と、基材1を水平状態に設置できる基台33と、真空排気装置34と、レーザ発光装置35とから概略構成されている。
【0029】
レーザ発光装置35は、ターゲット32から構成粒子を叩き出すことができるものであれば、YAGレーザ、CO2レーザ、エキシマレーザなどのいずれのものを用いてもよい。
【0030】
ターゲット32としては、目的とする組成の第二の多結晶薄膜3と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。具体的には、上述の第二の多結晶薄膜3を構成する複合酸化物と同一組成あるいは近似組成の複合酸化物が用いられる。特に、第二の多結晶薄膜3を形成した場合に飛散し易い元素を予め多めに含有するターゲットを用いることが望ましい。
【0031】
第二の多結晶薄膜3を形成するには、まず、第一の多結晶薄膜2が形成された基材1を、このレーザ蒸着装置の基台33上に設置する。
次いで、蒸着処理室31内を真空ポンプで減圧する。ここで必要に応じて蒸着処理室31に酸素ガスを導入して蒸着処理室31を酸素雰囲気としてもよい。また、基台33に設けられた加熱ヒータを作動させて基材1を所定の温度に加熱する。
【0032】
次いで、レーザ発光装置35から発生させたレーザビームを、蒸着処理室31のターゲット32に集光照射する。これにより、ターゲット32の構成粒子がえぐり出されるか蒸発されて、その粒子が第一の多結晶薄膜2上に堆積し、第二の多結晶薄膜3が形成される。
この際、レーザビームの射出強度を200mJ〜400mJ程度、パルス周波数を10Hz〜300Hz程度、酸素圧力を0.1mTorr〜100mTorr程度、基材1の温度を600〜1000℃程度とし、基材1の線速1m/h〜10m/h程度として、基材1を移動させながら数回堆積する。
【0033】
ここで、構成粒子の堆積の際に、Gd2Zr2O7の第一の多結晶薄膜2が予めc軸配向し、a軸とb軸でも配向しているので、第一の多結晶薄膜2上に形成される第二の多結晶薄膜3の結晶のc軸とa軸とb軸も、第一の多結晶薄膜2に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化する。
【0034】
次いで、図3に示すようなレーザ蒸着装置を用いて、PLD法により、第二の多結晶薄膜3上に酸化物超電導層4を形成する。
酸化物超電導層4の形成においては、ターゲット32として、目的とする組成の酸化物超電導層4と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。具体的には、上述の酸化物超電導層4を構成する酸化物超電導体と同一組成あるいは近似組成の酸化物超電導体が用いられる。特に、酸化物超電導層4を形成した場合に飛散し易い元素を予め多めに含有するターゲットを用いることが望ましい。
【0035】
酸化物超電導層4を形成するには、まず、第一の多結晶薄膜2および第二の多結晶薄膜3が形成された基材1を、このレーザ蒸着装置の基台33上に設置する。
次いで、蒸着処理室31内を真空ポンプで減圧する。ここで必要に応じて蒸着処理室31に酸素ガスを導入して蒸着処理室31を酸素雰囲気としてもよい。また、基台33に設けられた加熱ヒータを作動させて基材1を所定の温度に加熱する。
【0036】
次いで、レーザ発光装置35から発生させたレーザビームを、蒸着処理室31のターゲット32に集光照射する。これにより、ターゲット32の構成粒子がえぐり出されるか蒸発されて、その粒子が第二の多結晶薄膜3上に堆積し、酸化物超電導層4が形成されて、酸化物超電導導体を得る。
【0037】
ここで、構成粒子の堆積の際に、Gd2Zr2O7の第二の多結晶薄膜3が予めc軸配向し、a軸とb軸でも配向しているので、第二の多結晶薄膜3上に形成される酸化物超電導層4の結晶のc軸とa軸とb軸も、第二の多結晶薄膜3に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化する。
【0038】
この実施形態では、IBAD法により、基板1上に第一の多結晶薄膜2を形成した後、第一の多結晶薄膜2上にPLD法により第二の多結晶薄膜3を形成するが、第一の多結晶薄膜2の成膜速度は数nm/min程度、第二の多結晶薄膜3の成膜速度は数100nm/min程度である。したがって、同じ膜厚の多結晶薄膜を形成する場合、IBAD法のみで形成するよりも、この実施形態のようにIBAD法およびPLD法を用いて形成した方が成膜に要する時間が短くなるため、結果として、酸化物超電導導体の製造コストを削減することができる。
【0039】
また、この実施形態では、IBAD法により、基板1上に厚み2μm以下の第一の多結晶薄膜2を形成し、PLD法により、第一の多結晶薄膜2上に第二の多結晶薄膜3を形成した後、PLD法により、第二の多結晶薄膜3上に酸化物超電導層4を設けることにより、IBAD法により形成された多結晶薄膜上に酸化物超電導層を設けた場合よりも、結晶配向性の良好な酸化物超電導層4を設けることができる。その結果として、臨界電流(Ic)、臨界電流密度(Jc)などの値が向上した酸化物超電導導体を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例)
ハステロイテープ基材上にIBAD法により形成した膜厚1μmのGd2Zr2O7の第一の多結晶薄膜上に、PLD法により膜厚1μmのGd2Zr2O7の第二の多結晶薄膜を形成した後、PLD法により膜厚1μmのY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成し、酸化物超電導導体を得た。
第二の多結晶薄膜の形成においては、エキシマレーザ−パルス光の射出強度を300mJ、パルス周波数を250Hz、酸素圧力を2mTorr、ハステロイテープ基材の温度を800℃とし、線速4.5m/hでハステロイテープ基材を移動させて、構成粒子を数回堆積させた。
得られた酸化物超電導導体の臨界電流密度(Jc)の値は、1.7MA/cm2であった。
【0042】
(比較例)
ハステロイテープ基材上にIBAD法により形成した膜厚2μmのGd2Zr2O7の多結晶薄膜上に、PLD法により膜厚1μmのよりY1Ba2Cu3Ox系の酸化物超電導層を形成し、酸化物超電導導体を得た。
得られた酸化物超電導導体の臨界電流密度(Jc)の値は、1MA/cm2であった。
【0043】
実施例と比較例を比べると、実施例では超電導特性が改善されたことが分かった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属製の基材上にIBAD法により結晶配向した第一の多結晶薄膜を形成後、この第一の多結晶薄膜上に成膜速度の速いPLD法により第一の多結晶薄膜と略同一組成の粒子をホモエピタキシャル成長させて結晶化させ、第二の多結晶薄膜を形成するので、多結晶薄膜全体としての形成時間を短縮することができる。
また、結晶配向性の良好な酸化物超電導導体を製造することができるため、超電導特性に優れた長尺の酸化物超電導導体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化物超電導導体の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の酸化物超電導導体の製造方法における第一の多結晶膜を形成する装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の酸化物超電導導体の製造方法における第二の多結晶膜または酸化物超電導層を形成するレーザ蒸着装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・基材、2・・・第一の多結晶薄膜、3・・・第二の多結晶薄膜、4・・・酸化物超電導層、10・・・基材ホルダ、11・・・基材送出ボビン、12・・・基材巻取ボビン、20・・・ターゲット、22・・・スパッタビーム照射装置、23・・・イオンソース、25・・・成膜処理容器、30・・・処理容器、31・・・蒸着処理室、32・・・ターゲット、33・・・基台、34・・・真空排気装置、35・・・レーザ発光装置。
Claims (4)
- 金属製の基材上にイオンビームアシスト法により第一の多結晶薄膜を形成する第一工程と、該第一の多結晶薄膜上にパルスレーザ蒸着法により第二の多結晶薄膜を形成する第二工程と、該第二の多結晶薄膜上にパルスレーザ蒸着法により酸化物超電導層を形成する第三工程と、を有することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
- 前記第一の多結晶薄膜と前記第二の多結晶薄膜とを略同一組成とすることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体の製造方法。
- 前記第一の多結晶薄膜の膜厚を2μm以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導導体の製造方法。
- 金属製の基材上に、第一の多結晶薄膜、第二の多結晶薄膜、および酸化物超電導層を順に積層して設けてなることを特徴とする酸化物超電導導体。
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JP2003156017A JP2004362784A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | 酸化物超電導導体およびその製造方法 |
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- 2003-05-30 JP JP2003156017A patent/JP2004362784A/ja not_active Withdrawn
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