JP2004124255A - 多結晶薄膜の製造方法および酸化物超電導導体の製造方法 - Google Patents

多結晶薄膜の製造方法および酸化物超電導導体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な結晶配向性を備えたYbからなる多結晶薄膜の製造方法と、該多結晶薄膜の上に酸化物超電導層を設けてなる酸化物超電導導体の製造方法とを提供する。
【解決手段】本発明に係る多結晶薄膜の製造方法は、多結晶基材上に多結晶薄膜を堆積させる際に、多結晶基材の温度を150℃以上250℃以下の範囲に設定し、イオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上225eV以下の範囲に調整し、このイオンビームを多結晶基材の被成膜面の法線に対して50度以上60度以下の入射角度で照射する。この製造方法により、多結晶基材の被成膜面と平行な面に沿う多結晶薄膜の結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角が20度以下に抑えられた、結晶配向性の高い多結晶薄膜が安定して製造できる。
【選択図】   図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は結晶方位の整った希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜の製造方法と、該多結晶薄膜とその上に設けた酸化物超電導層からなる、超電導特性に優れた酸化物超電導導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年になって発見された酸化物超電導体は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す優れた超電導体であるが、現在、この種の酸化物超電導体を実用的な超電導体として使用するためには、種々の解決するべき問題点が存在している。その問題点の1つが、酸化物超電導体の臨界電流密度が低いという問題である。この酸化物超電導体の臨界電流密度が低いという問題は、酸化物超電導体の結晶自体に電気的な異方性が存在することが大きな原因となっており、特に酸化物超電導体はその結晶軸のa軸方向とb軸方向には電気を流し易いが、c軸方向には電気を流しにくいことが知られている。このような観点から酸化物超電導体を基材上に形成してこれを超電導導体として使用するためには、基材上に結晶配向性の良好な状態の酸化物超電導体を形成し、しかも電気を流そうとする方向に酸化物超電導体の結晶のa軸あるいはb軸を配向させ、その他の方向に酸化物超電導体のc軸を配向させる必要がある。
【0003】
そこで従来、金属テープなどの基材上に酸化物超電導体を形成する際には、スパッタ装置を用いて、予め基材上にMgOやSrTiO3 などの結晶配向性の良好な中間層を被覆してから、この中間層上に酸化物超電導層を形成することが行われている。ところが、これらの材料からなる単結晶基材上に形成された酸化物超電導層であれば例えば、臨界電流密度が数10万A/cm2 を有するのに対して、上記の中間層上に形成した酸化物超電導層では、臨界電流密度が1000〜10000A/cm2 程度と極めて低い値に留まるという問題点があった。これは、以下に説明する理由によるものと考えられる。
【0004】
図11は、金属テープなどの多結晶体の基材1上にスパッタ法で中間層2を形成し、この中間層2上に層上にスパッタ法で酸化物超電導層3を形成してなる酸化物超電導導体の断面構造を示すものである。図11に示す構造において、酸化物超電導層3は多結晶状態であり、多数の結晶粒4が無秩序に結合した状態となっている。これらの結晶粒4の1つ1つを個々に見ると各結晶粒4の結晶のc軸は基材1の表面に対して垂直に配向しているものの、a軸とb軸は無秩序な方向を向いているものと考えられる。
【0005】
このように酸化物超電導層を構成する個々の結晶粒が、結晶粒毎にa軸とb軸の向きが無秩序になると、結晶配向性の乱れた結晶粒界において超電導状態の量子的結合性が失われる結果、超電導特性、特に臨界電流密度の低下を引き起こすものと思われる。また、前記酸化物超電導体がa軸およびb軸に配向していない多結晶状態となるのは、その下に形成された中間層2がa軸およびb軸に配向していない多結晶状態であることに起因していると思われる。換言すれば、このような状態にある中間層2の上に酸化物超電導層を成膜した結果、中間層2の結晶に整合するように酸化物超電導層3が成長したためであると思われる。
【0006】
そこで本発明者らは先に、特殊な方法を用いて多結晶基材上に、予めa軸とb軸の配向性を良好にしたイットリア安定化ジルコニア(Y:Y、YSZと略記)の中間層を形成し、この中間層上に酸化物超電導層を成膜するならば、良好な臨界電流密度を発揮する酸化物超電導導体を製造可能なことを見出し、この技術に関し、特許文献1、特許文献2および特許文献3などにおいて特許出願を行っている。
【0007】
これらの特許出願に係る技術は、YSZからなる母材(ターゲットとも呼ぶ)をスパッタリングして多結晶基材上に所望の組成からなるYSZ膜を成膜する際に、この多結晶基材の被成膜面に対して斜め方向からAr+ などのイオンビームを同時に照射するイオンビームアシストを行うことで結晶配向性の悪いYSZの結晶を選択的に除去し、結晶配向性の良好なYSZの結晶を選択的に堆積させることができ、これにより結果的に配向性の優れたYSZの中間層を成膜することができる技術であった。
【0008】
上述したように、本発明者らが先に出願した技術によれば、a軸およびb軸が良好に配向したYSZの多結晶薄膜を得ることができ、この多結晶薄膜上に形成した酸化物超電導体は良好な臨界電流密度を発揮することを確認することができたので、本発明者らは更に別の材料から、より好ましい多結晶薄膜からなる中間層を製造する技術の研究に着手した。
【0009】
ここで図12は、本発明者らが最近において使用している酸化物超電導導体の一例の断面構造を示す。この例の酸化物超電導導体Dは、金属テープの基材5の上にYSZあるいはMgOからなる配向制御用の中間層6を先に説明した技術を用いて成膜し、次いでYからなる反応防止用の中間層7を形成し、その上に酸化物超電導層8を形成した4層構造のものである。
【0010】
このような4層構造を採用した理由は、YSZからなる中間層とYBaCu7−x(0<x<0.5)なる組成の酸化物超電導層との間で生じる拡散反応を防止するためである。すなわち、YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層を得るためには、スパッタ等の成膜法により目的の組成の酸化物超電導層を成膜した後、数100度に加熱する熱処理を行う必要があり、この熱処理時の加熱によって、YSZからなる中間層とYBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層との間で元素の拡散反応が進行し、超電導特性が劣化するおそれがあるが、これを防止するために上記4層構造は有効に寄与するものである。
【0011】
ここで、配向制御用の中間層6を構成するYSZの結晶は立方晶系の結晶構造を有するのに対し、YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層はペロブスカイト型と称される結晶構造を有する。いずれも面心立方構造の1種であり、近似する結晶格子を有するが、両者の結晶格子の格子間隔には5%程度の違いがある。例えば、YSZの立方格子の角部に位置する原子と立方格子の面の中央部に位置する原子との最隣接原子間距離は3.65Å(但し、10Å=1nm)、Ybの同様の最隣接原子間距離は3.69Å、YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層の同様の最隣接原子間距離は3.81Åである。Ybの最隣接原子間距離は、YSZとYBaCu7−xの中間の値を示すので、格子の大きさの差異を埋めるためにも有利であり、組成も近いので反応防止用の中間層としては有利であると考えている。
【0012】
ところが、図12に示すような4層構造では、必要な層の数が多くなり、製造工程が増加する問題がある。
そこで本発明者らは、多結晶基材5の上に直ちに配向性の良好な反応防止用の中間層7を形成する目的から、本発明者らが先に特許出願したイオンビームアシスト技術を適用して多結晶基材5上に、反応防止用の中間層7として、Y、Sc、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Pmのいずれかの組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する酸化物の結晶粒からなり多結晶基材5の被成膜面と平行な面に沿う前記結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角を30度以内にしてなる多結晶薄膜の形成を試みた。
【0013】
その結果、本発明者らが先に特許出願したイオンビームアシスト技術を用いることにより、多結晶基材5の上に直ちに、粒界傾角が30度以下の結晶配向性に優れたY等の希土類酸化物C型の結晶構造からなる多結晶薄膜が形成可能であることを見出し、この技術に関しては、特許文献4において特許出願を行っている。
【0014】
上記の明細書では、主にYからなる多結晶薄膜について詳細な報告がなされているが、他の希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜についてはその可能性が述べられるに留まっていた。ゆえに、上述した各種の希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜について、その結晶配向性に大きな影響を及ぼすと思われる作製条件を詳細に調査することが期待されていた。
【0015】
ところで、多結晶基材の上に各種の配向膜を形成する技術は、上述した酸化物超電導体の応用分野以外でも広く使われている。例えば光学薄膜の分野、光磁気ディスクの分野、配線基板の分野、高周波導波路や高周波フィルタ、空洞共振器などの分野であるが、いずれの技術においても基材上に膜質の安定した配向性の良好な多結晶薄膜を形成することが期待されている。即ち、多結晶薄膜の結晶配向性が良好であるならば、その上に形成される光学薄膜、磁性薄膜、配線用薄膜などを直接形成できるならば、なお好ましい。
【0016】
【特許文献1】
特願平4−293464号明細書
【特許文献2】
特願平8−214806号明細書
【特許文献3】
特願平8−272607号明細書
【特許文献4】
特願平11−295977号明細書
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが先に提供しているイオンビームアシスト法を応用し、多結晶基材の上に結晶配向性の良好な希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜を形成するべく研究を重ねた結果、完成されたもので、上述した希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜のうち、特にSm、Gd、Y、Ho、Er、Ybの6種類の組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜について、その作製条件のうち結晶配向性に大きな影響を及ぼすと思われる、多結晶薄膜を成膜する際に加えるアシスト用のイオンビームエネルギーと、多結晶薄膜が堆積される多結晶基材の温度とを変えて成膜することによって、上記6種類のうち良好な結晶配向性を有する材料を選定し、次いで、その選定した材料における好適な製造条件を明確にした多結晶薄膜の製造方法を提供することを第一の目的とする。
【0018】
また、イオンビームエネルギーと多結晶基材の温度とを明確にして形成された多結晶薄膜を備え、その多結晶薄膜上に結晶配向性に優れた酸化物超電導層を設けてなる酸化物超電導層を備えた酸化物超電導導体の製造方法を提供することを第二の目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る多結晶薄膜の製造方法は前記課題を解決するために、多結晶基材の被成膜面上に形成されたYbの組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する酸化物の結晶粒からなり、前記多結晶基材の被成膜面と平行な面に沿う前記結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角を30度以下にしてなる多結晶薄膜を製造する方法であり、前記多結晶薄膜の構成元素のターゲットから発生させた構成粒子を多結晶基材上に堆積させる際に、多結晶基材の温度を150℃以上、250℃以下の範囲に設定し、イオンソースが発生させるイオンビームとして、Kr+のイオンビーム、Xe+のイオンビームあるいはこれらの混合イオンビームを用い、前記イオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上、225eV以下の範囲に調整し、前記イオンビームを基材の被成膜面の法線に対して50度以上、60度以下の入射角度で照射しながら前記構成粒子を基材上に堆積させることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る酸化物超電導導体の製造方法は前記課題を解決するために、多結晶基材と、この多結晶基材の被成膜面上に形成されたYbの組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する酸化物の結晶粒からなり前記多結晶基材の被成膜面と平行な面に沿う前記結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角を30度以下にしてなる多結晶薄膜と、この多結晶薄膜上に形成された酸化物超電薄層とを具備してなる酸化物超電導導体を製造する方法であり、前記多結晶薄膜の構成元素のターゲットから発生させた構成粒子を多結晶基材上に堆積させる際に、多結晶基材の温度を150℃以上、250℃以下の範囲に設定し、イオンソースが発生させるイオンビームとして、Ar+ のイオンビーム、Kr+ のイオンビーム、Xe+ のイオンビームあるいはこれらの混合イオンビームを用い、前記イオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上、225eV以下の範囲に調整し、前記イオンビームを基材の被成膜面の法線に対して50度以上、60度以下の入射角度で照射しながら前記構成粒子を基材上に堆積させて多結晶薄膜を形成し、この後に多結晶薄膜上に酸化物超電導層を形成することを特徴とするものである。
【0021】
多結晶基材上に形成されたYbなどの希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜は、その上に酸化物系の超電導層を設けた場合に、従来のYSZからなる多結晶薄膜よりも以下に述べる点で有利であると考えられる。
第一には、上層にあたるYBaCu7−x(0<x<0.5)なる組成の酸化物超電導層の最隣接原子間距離との差が、Ybの結晶の方がYSZの結晶に比べて小さいという点が挙げられる。ここで、最隣接原子間距離とは、面心立方格子の場合、面の中央に位置する原子と面のコーナー部分に位置する原子との間隔である。すなわち、最隣接原子間距離の21/2 倍(ルート2倍)が格子定数
を表す。
【0022】
具体的には、YSZの結晶において主体となるZrO2 の格子定数は5.14Å、最隣接原子間距離は3.63Åである。Ybの結晶においては格子定数は5.22Å、最隣接原子間距離は3.69Åである。これに対して、YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層において最隣接原子間距離は3.81Åである。
上記3つの膜の最隣接原子間距離の数字から明らかなように、Ybの結晶の方がYSZの結晶に比べて、YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層に近いことが分かる。したがって、YSZの多結晶薄膜よりもYbの多結晶薄膜の方が結晶の整合性の面では、有利であると考えられる。換言すれば、イオンビームアシスト法を実施して多結晶薄膜の原子を堆積させる際に、最隣接原子間距離が近いものの方が、原子の正規な堆積がなされ易いものと考えている。
【0023】
第二には、多結晶薄膜の粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値を小さく抑えることが可能になるという点が挙げられる。
本発明者らは、上記Ybが希土類酸化物C型の結晶構造からなるので、Ybの代わりにSm、Gd、Y、Ho、Erの5種類の組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する多結晶薄膜を同様に作製し、得られた各々の多結晶薄膜について、CuKα線を用いたθ−2θ法によるX線回折を行い、極点図を作成した。そして、この極点図から、各々の多結晶薄膜の粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値を求めた。その結果、上記6つの元素(Sm、Gd、Y、Ho、Er、Yb)の中では最も原子番号が大きく、格子エネルギー密度の大きなYb元素の酸化物である、Ybの結晶からなる多結晶薄膜の場合のみ、半値全幅(FWHM)の値を20度以下に抑えることができることが明らかとなった。
【0024】
特に、上記Ybの結晶からなる多結晶薄膜を多結晶基材上に堆積させる際には、多結晶基材の温度を150℃以上、250℃以下の範囲に設定し、かつ、アシスト用のイオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上、225eV以下の範囲に調整することによって、Ybの結晶からなる多結晶薄膜における半値全幅(FWHM)の値を20度以下に安定して保つことができるのでさらに好ましい。
【0025】
第三には、従来のYSZの多結晶薄膜とその上に設けたYBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層との界面において、製造時の加熱処理あるいは熱拡散に起因して発生するBaZrO3 を回避できるという点が挙げられる。
YSZに代えてYbの結晶からなる多結晶薄膜を用いた場合は、Ybの多結晶薄膜とYBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層との界面は、700〜800℃程度の加熱条件でも元素の拡散などが発生することなく安定した状態が維持できる。
【0026】
したがって、本発明に係るYbの結晶からなる多結晶薄膜を用い、その上にYBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層を設けてなる酸化物超電導導体の製造方法によれば、従来、製造時の熱処理によって受けていた影響を回避することができ、かつ、優れた超電導特性を備えた酸化物超電導導体を常に安定して形成することが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明に係る多結晶薄膜を基材上に形成した一実施形態を示すものであり、図1においてAはテープ状の多結晶基材、Bは多結晶基材Aの上面に形成された多結晶薄膜を示している。前記多結晶基材Aは、例えば板材、線材、テープ材など種々の形状のものを用いることができ、多結晶基材Aは、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ等のNi合金などの金属材料や合金、あるいは、各種ガラスや各種セラミックなどの材料からなるものである。
【0028】
この実施形態の多結晶薄膜Bは、等軸晶系の希土類酸化物C型の結晶構造を有するYbからなる微細な結晶粒20が、多数、相互に結晶粒界を介して接合一体化されてなり、各結晶粒20の結晶軸のc軸は基材Aの上面(被成膜面)に対して直角に向けられ、各結晶粒20の結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしは、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。また、各結晶粒20のc軸が多結晶基材Aの上面をなす被成膜面に対して直角に配向されている。そして、各結晶粒20のa軸(あるいはb軸)どうしは、それらのなす角度(図2に示す粒界傾角K)を30度以内、例えば25〜30度の範囲内にして接合一体化されている。
【0029】
前記Ybの結晶格子は、希土類酸化物C型に属するが、この希土類酸化物C型は立方晶系の蛍石構造から誘導されるもので、図3に示すような面心立方構造の単位格子が8個、縦横方向および奥行き方向に整列された場合に、Yの原子が構成する格子の間隙に侵入している酸素原子Oが1個のみ抜ける構造をとる。よってこのYbの格子が8つ重なった状態においてX線分析の分野では単位胞とみなすので単位胞としての格子定数は10.43であるが、単位格子としての格子の幅は5.22であり、最隣接原子間距離(最近接原子距離とも呼ぶ)は3.69Åとなる。
【0030】
このYbの単位格子を後述する条件のイオンビームアシスト法により堆積させる際に重要となるのは、最近接原子距離の3.69Åであり、この値が YBaCu7−x なる組成の酸化物超電導層の最近接原子距離の3.81Åに近いことが望ましい。YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層に対する最近接原子距離の差異は、Ybの場合(最近接原子距離:3.69Å)約3%に留まるのに対して、YSZの場合(最近接原子距離:3.63Å)約5%にも達する。
このYb以外の希土類酸化物C型の例としては、表1に示すものが挙げられる。但し、表1には比較のためYbの数値も掲載した。
【0031】
【表1】
Figure 2004124255
【0032】
この度、表1のうち、番号3、5、8、9、10および11で示した6種類の酸化物からなる多結晶薄膜を作製し、各多結晶薄膜における粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値を調べた。その際、作製条件のうち2つの条件、すなわち、多結晶薄膜を多結晶基材上に堆積させるときの多結晶基材の温度と、アシスト用のイオンビームのイオンビームエネルギーと、を変化させて多結晶薄膜を形成した。
【0033】
表2には、上記6種類の酸化物からなる多結晶薄膜の半値全幅[度]と、その値が得られたときの2つの作製条件(多結晶基材の温度[℃]、イオンビームエネルギー[eV])とを合わせて示した。また、各酸化物の格子定数[C/nm]、格子エネルギー[E/kj・mol−1]および格子エネルギー密度[eV・nm−3] も掲載した。なお、表2の結果は、多結晶基材の温度は100℃〜500℃の範囲で、アシスト用のイオンビームとしてはAr+ イオンビームを用い、そのイオンビームエネルギーは150eV〜300eVの範囲で変化させて調べた結果である。
【0034】
【表2】
Figure 2004124255
【0035】
表2から、上記6つの元素(Sm、Gd、Y、Ho、Er、Yb)の中では最も原子番号が大きく、格子エネルギー密度の大きなYb元素の酸化物である、Ybの結晶からなる多結晶薄膜の場合のみ、半値全幅(FWHM)の値を20以下に抑えることができることが明らかとなった。
【0036】
以下では、表2の結果を得るために用いた本発明の実施形態に係る多結晶薄膜Bの製造方法およびこの製造に好適な装置について説明する。
図4は前述した多結晶薄膜Bを製造する装置の一例を示すものであり、この例の装置はスパッタ装置にイオンビームアシスト用のイオンソースを設けた構成となっている。
【0037】
この例の装置は、テープ状の多結晶基材Aを支持するとともに所望の温度に加熱することができる基材ホルダ23と、基材ホルダ23上にテープ状の多結晶基材Aを送り出すための基材送出ボビン24と、多結晶薄膜が形成されたテープ状の多結晶基材Aを巻き取るための基材巻取ボビン25と、前記基材ホルダ23の斜め上方に所定間隔をもって対向配置された板状のターゲット36と、このターゲット36の斜め上方においてターゲット36の下面に向けて配置されたスパッタビーム照射装置(スパッタ手段)38と、前記基材ホルダ23の側方に所定間隔をもって対向され、かつ、前記ターゲット36と離間して配置されたイオンソース39とが真空排気可能な成膜処理容器40内に収容された概略構成となっている。
【0038】
前記基材ホルダ23は、内部に加熱ヒーターを備え、基材ホルダ23の上に送り出されたテープ状の多結晶基材Aを必要に応じて所望の温度に加熱できるようになっている。この基材ホルダ23はピン等により支持体23aに回動自在に取り付けられており、傾斜角度を調整できるようになっている。このような基材ホルダ23は、成膜処理容器40内のイオンソース39から照射されるイオンビームの最適照射領域に配設されている。
【0039】
この例の多結晶薄膜の製造装置においては、前記基材送出ボビン24から基材ホルダ23上にテープ状の多結晶基材Aを連続的に送り出し、前記最適照射領域で多結晶薄膜が成膜された多結晶基材Aを基材巻取ボビン25で巻き取ることで多結晶基材Aの上に連続成膜することができるようになっている。この基材巻取ボビン25は、前記最適照射領域の外に配設されている。
【0040】
前記ターゲット36は、目的とする多結晶薄膜を形成するための母材であり、目的の組成の多結晶薄膜と同一組成あるいは近似組成としたものなどを用いる。ターゲット36として具体的は、Sm、Gd、Y、Ho、Er、Ybのいずれかの組成式で示される複合酸化物のターゲット、あるいは、これら個々の2つの構成元素のうち、膜とした場合に飛散し易い元素を予め多めに含有した組成のターゲットを用いる。このようなターゲット36は、ピン等により回動自在に保持されたターゲット支持体36aに取り付けられており、傾斜角度を調整できるようになっている。
【0041】
前記スパッタビーム照射装置38は、容器の内部に、蒸発源を収納し、蒸発源の近傍に引き出し電圧をかけるためのグリッドを備えて構成されている。そして、前記蒸発源から発生した原子または分子の一部をイオン化し、そのイオン化した粒子をグリッドで発生させた電界で制御してイオンビームとして照射する装置である。
【0042】
粒子をイオン化するためには直流放電方式、高周波励起方式、フィラメント式、クラスタイオンビーム方式などの種々のものが利用できる。フィラメント式はタングステン製のフィラメントに通電加熱して熱電子を発生させ、高真空中で蒸発粒子と衝突させてイオン化する方法である。また、クラスタイオンビーム方式は、原料を入れたるつぼの開口部に設けられたノズルから真空中に出てくる集合分子のクラスタを熱電子で衝撃してイオン化して放射するものである。
【0043】
この形態の多結晶薄膜の製造装置においては、図5(a)に示す構成の内部構造のイオンソース39を用いる。このイオンソース39は、筒状のイオン室45の内部にグリッド46とフィラメント47とArガス、Krガス、Xeガスなどの導入管48とを備えて構成され、イオン室45の先端のビーム口49からイオンをビーム状に略平行に放射できるものである。
【0044】
前記イオンソース39は、図4に示すようにその中心軸線Sを多結晶基材Aの上面(被成膜面)に対して入射角度θ(多結晶基材Aの成膜面(上面)の垂線(法線)Hと中心線Sとのなす角度)でもって傾斜させて対向されている。この入射角度θは50〜60度の範囲が好ましいが、より好ましくは55〜60度の範囲、最も好ましくは55度前後の角度である。
【0045】
従ってイオンソース39は多結晶基材Aの被成膜面の法線Hに対してある入射角度θでもってイオンビームを照射できるように配置されている。このようなイオンビームの入射角度は、本発明者らが先に特許出願している。なお、前記のイオンソースによって多結晶基材Aに照射するイオンビームは、Arガスのイオンビーム、Krガスのイオンビーム、Xeガスのイオンビーム、あるいは、これらArガスとKrガスの混合イオンビームを用いることができる。
【0046】
また、前記成膜処理容器40には、この容器40内を真空などの低圧状態にするためのロータリーポンプ51およびクライオポンプ52と、ガスボンベなどの雰囲気ガス供給源がそれぞれ接続されていて、成膜処理容器40の内部を真空などの低圧状態で、かつ、Arガスあるいはその他の不活性ガス雰囲気にすることができるようになっている。
【0047】
さらに、前記成膜処理容器40には、この容器40内のイオンビームの電流密度を測定するための電流密度計測装置54と、前記容器40内の圧力を測定するための圧力計55が取り付けられている。なお、この例の多結晶薄膜の製造装置においては、基材ホルダ23をピン等により支持体23aに回動自在に取り付けることにより、多結晶基材Aがターゲット36やイオンソース39と向き合う傾斜角度を調整できるようにしたが、イオンソース39を設ける傾斜角度を調整して、多結晶基材Aに照射されるイオンビームの入射角度を調整できるようにしても良く、また、角度調整機構はこの例に限るものではなく、種々の構成のものを採用することができるのは勿論である。
【0048】
以下では、前記構成の装置を用いて、本発明に係るYbからなる多結晶薄膜Bを多結晶基材Aの上に製造する方法について説明する。
テープ状の多結晶基材Aの上に多結晶薄膜を形成するためには、Ybからなるターゲット36を用い、多結晶基材Aを収納している成膜処理容器40の内部を真空引きして減圧雰囲気とするとともに、基材送出ボビン24から基材ホルダ23に多結晶基材Aを所定の速度で送り出し、さらにイオンソース39とスパッタビーム照射装置38を作動させる。
【0049】
スパッタビーム照射装置38からターゲット36にイオンビームを照射すると、ターゲット36の構成粒子が叩き出されて多結晶基材A上に飛来する。そして、基材ホルダ23上に送り出された多結晶基材A上にターゲット36から叩き出した構成粒子を堆積させると同時にイオンソース39から、例えばAr+ イオンのイオンビーム、Kr+ イオンのイオンビーム、Xe+ イオンのイオンビーム、あるいはKr+ イオンとXe+ イオンの混合イオンビーム等を照射して、所望の厚みの多結晶薄膜を成膜し、成膜後のテープ状の多結晶基材Aを基材巻取ボビン25に巻き取る。
【0050】
ここでイオンビームを照射する際の入射角度θは、50度以上60度以下の範囲が好ましく、より好ましくは55度以上60度以下の範囲、最も好ましくは55度前後である。ここでθを90度とすると、Ybの多結晶薄膜はc軸が配向しなくなる。また、θを30度にすると、Ybの多結晶薄膜はc軸配向すらしなくなる。前述のような好ましい範囲の入射角度でイオンビーム照射するならばYbの多結晶薄膜の結晶のc軸が多結晶基材Aの被成膜面に対して立つようになる。このような入射角度でイオンビーム照射を行いながらスパッタリングを行うことで、多結晶基材A上に形成されたYbの多結晶薄膜は、その結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしが互いに同一方向を向いた状態となり、多結晶基材Aの上面(被成膜面)と平行な面に沿って面内配向する。
【0051】
また、本発明に係るYbからなる多結晶薄膜を成膜する際には、上述したアシスト用のイオンビームの照射角度以外に、多結晶基材Aの温度とアシスト用のイオンビームのイオンビームエネルギーを所定の範囲とする必要がある。
まず、イオンビームエネルギーを200eVに固定し、多結晶基材Aの温度を100℃から300℃の範囲で変えて、この多結晶基材A上にYbからなる多結晶薄膜を形成し、得られた多結晶薄膜の半値全幅(FWHM)を調べた結果について述べる。
【0052】
図9は、多結晶基材A上にYbからなる多結晶薄膜を形成する際の多結晶基材Aの温度と得られた多結晶薄膜の半値全幅との関係を示すグラフである。図9の結果から、多結晶薄膜の半値全幅の値は多結晶基材Aの温度に依存し、温度が低すぎても高すぎても半値全幅の値が増加する傾向があることが分かる。特に、多結晶基材Aの温度を150℃以上250℃以下の範囲とした多結晶基材A上に多結晶薄膜を形成しさえすれば、多結晶薄膜の半値全幅の値を20度以下に抑えることができので、良好な結晶配向を備えた多結晶薄膜が安定して作製可能であることが見出された。この範囲の中でも、175℃以上200℃以下の温度範囲がより好ましい。
【0053】
次に、多結晶基材Aの温度を200℃に固定し、イオンビームエネルギーを100eVから300eVの範囲で変えて、この多結晶基材A上にYbからなる多結晶薄膜を形成し、得られた多結晶薄膜の半値全幅(FWHM)を調べた結果について述べる。
【0054】
図10は、多結晶基材A上にYbからなる多結晶薄膜を形成する際のイオンビームエネルギーと得られた多結晶薄膜の半値全幅との関係を示すグラフである。図10の結果から、多結晶薄膜の半値全幅の値はイオンビームエネルギーに強く依存しており、半値全幅を20度以下にするためにはイオンビームエネルギーを特定範囲、すなわち175eVから225eVの範囲とすることが有効であり、この範囲の中でも特に200eV前後がより好ましい。イオンビームエネルギーを150eV以下とした場合には、イオンビームエネルギーの減少にともない多結晶薄膜の半値全幅は急増する。一方、イオンビームエネルギーを250以上とすると、今度はイオンビームエネルギーの増加にともない多結晶薄膜の半値全幅が増加する傾向が確認された。したがって、半値全幅が20度以下の良好な結晶配向性を備えた多結晶薄膜を形成するためには、175eVから225eVの範囲としたイオンビームエネルギーを用いることが望ましい。
【0055】
上記範囲とした温度およびイオンビームエネルギーでイオンアシスト法により多結晶基材A上に成膜することによって、初めて希土類酸化物C型のYbの多結晶薄膜Bを良好な配向性をもって成膜することができる。図1と図2に、前記の方法でYbの多結晶薄膜Bが堆積された多結晶基材Aを示す。なお、図1では結晶粒20が1層のみ形成された状態を示しているが、結晶粒20は多層構造でも差し支えないのは勿論である。
【0056】
なお、この多結晶薄膜Bの結晶配向性が整う要因として本発明者らは、以下のことを想定している。Ybの多結晶薄膜Bの結晶の単位格子は、図5(b)に示すように等軸晶系の面心立方晶系の希土類酸化物C型構造であり、この結晶格子においては、基板法線方向が<100>軸であり、他の<010>軸と<001>軸はいずれも図4(b)に示す方向となる。
【0057】
これらの方向に対し、基板法線に対して斜め方向から入射するイオンビームを考慮すると、図5(b)の原点Oに対して単位格子の対角線方向、すなわち、<111>軸に沿って入射する場合は54.7度の入射角度となる。ここで前記のように入射角度50〜60度の範囲で良好な結晶配向性を示すことはイオンビームの入射角度が前記54.7度と一致するかその前後になった場合、イオンチャンネリングが最も効果的に起こり、多結晶基材A上に堆積している結晶において、多結晶基材Aの上面で前記角度に一致する配置関係になって安定した原子のみが選択的に残り易くなり、その他の乱れた原子配列で不安定なものはイオンビームのスパッタ効果によりスパッタされて除去される結果、配向性の良好な原子の集合した結晶のみが選択的に残って堆積してゆくものと推定している。
【0058】
ただし、このイオンビームチャネリングに伴うイオンビームスパッタ効果は、形成しようとするYbの多結晶薄膜に対してAr+ イオンのイオンビーム、Kr+ イオンのイオンビーム、Xe+ イオンのイオンビームあるいは、これらのうちのAr+ とKr+ の混合イオンビームが効果的である。また、以上のような条件でYbの多結晶薄膜Bの成膜を行っても、成膜時の多結晶基材Aの温度とイオンビームアシスト時のイオンビームのエネルギーを前述の規定の範囲に設定しなければ、良好なイオンビームチャネリング効果が得られない。よって、前述のイオンビームアシスト角度と多結晶基材Aの温度とイオンビームエネルギーの3つの条件を全て規定の条件内に揃えて成膜する必要がある。
【0059】
次に、図6と図7は本発明に係る酸化物超電導導体の一実施形態を示すものであり、本実施例の酸化物超電導導体22は、板状の多結晶基材Aと、この多結晶基材Aの上面に形成された多結晶薄膜Bと、多結晶薄膜Bの上面に形成された酸化物超電導層Cとからなっている。前記多結晶基材Aと多結晶薄膜Bは先の例において説明した材料と同等の材料から構成され、多結晶薄膜Bの結晶粒20は、図1と図2に示すように粒界傾角30度以内、好ましくは25〜30度になるように結晶配向されている。
【0060】
次に、酸化物超電導層Cは、Ybの多結晶薄膜Bの上面を被覆してなるものであり、その結晶粒21のc軸は多結晶薄膜Bの上面に対して直角に配向され、その結晶粒21のa軸とb軸は先に説明した多結晶薄膜Bと同様に基材上面と平行な面に沿って面内配向し、結晶粒21どうしが形成する粒界傾角K’は30度以内にされている。この酸化物超電導層を構成する酸化物超電導体としては、YBaCu7−x(0<x<0.5)、YBaCuなる組成、あるいは(Bi,Pb)CaSrCu10なる組成、あるいはTlBaCaCu10、TlBaCaCu、TlBaCaCu11 なる組成などに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体が好適に用いられるが、これらの例の他の酸化物系の超電導体を用いても良いのは勿論である。
【0061】
前記酸化物超電導層Cは、例えば、先に説明した多結晶薄膜B上にスパッタリングやレーザ蒸着法などの成膜法により形成され、この多結晶薄膜B上に積層される酸化物超電導層CもYbからなる多結晶薄膜Bの配向性に整合するように堆積するので、多結晶薄膜B上に形成された酸化物超電導層は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆ど無いので、多結晶基材Aの長さ方向に電気を流し易くなり、MgOやSrTiO3 の単結晶基材上に形成して得られる酸化物超電導層と同じ程度の十分に高い臨界電流密度が得られる。
【0062】
ところで、多結晶薄膜Bの構成材料としては、YSZよりもYbの方が好ましく、そのためYSZの多結晶薄膜上に酸化物超電導層を設けたものよりも、Ybの多結晶薄膜上に酸化物超電導層を設けたものの方が高温(700〜800℃)での熱処理に強く、しかも、YSZの多結晶薄膜上に設けた場合と同等の優れた臨界電流密度を示す。特に、膜厚が大きくなった場合に熱処理等の加熱処理を経ても臨界電流密度の低下割合が少なく、臨界電流の高い超電導導体を得ることができる。
【0063】
その理由は以下に説明することが起因していると考えられる。
第一には、先に記載した如く、YSZの多結晶薄膜よりも最隣接原子間距離の面で酸化物超電導層に近い最隣接原子間距離を有するYbの多結晶薄膜の方が結晶の整合性の面では有利である点が挙げられる。
【0064】
第二には、次に本発明者らの研究により、YSZの多結晶薄膜とYBaCu7−xからなる酸化物超電導体層との界面は製造時の加熱処理や熱処理時等の熱拡散によりBaZrO3 が生じやすいことが分かっているのに対して、Ybの多結晶薄膜とYBaCu7−xからなる酸化物超電導体層との界面は700〜800℃程度の加熱条件では安定なので、元素の相互拡散は殆ど生じることがない点が挙げられ、この面においてもYbの多結晶薄膜の方が有望である。
【0065】
第三には、YSZは温度によって立方晶から斜方晶への相転移が起こるが、Ybの場合は相転移が起こらないので有望である点が挙げられる。また、酸素原子との結合強度を考えても十分に成膜可能であり、装置に対する負担も少ないという特徴があるので好ましい。
【0066】
以下では、酸化物超電導層Cを形成する装置の一実施形態について説明する。図8は酸化物超電導層を真空蒸着法により形成する装置の一例を示すもので、図8はレーザ蒸着装置を示している。この例のレーザ蒸着装置60は処理容器61を有し、この処理容易61の内部の蒸着処理室62にテープ状の多結晶基材Aとターゲット63を設置できるようになっている。
【0067】
すなわち、蒸着処理室62の底部には基台64が設けられ、この基台64の上面に多結晶基材Aを水平状態で設置できるようになっているとともに、基台64の斜め上方に支持ホルダ66によって支持されたターゲット63が傾斜状態で設けられ、多結晶基材Aをドラム状のテープ送出装置65aから基台64上に送り出し、これをドラム状のテープ巻取装置65aに巻き取ることができるように構成されている。処理容器61は、排気孔67aを真空排気装置67に接続されて内部を所定の圧力に減圧できるようになっている。
【0068】
前記ターゲット63は、形成しようとする酸化物超電導層Cと同等または近似した組成、あるいは、成膜中に逃避しやすい成分を多く含有させた複合酸化物の焼結体あるいは酸化物超電導体などの板体からなっている。前記基台64は加熱ヒータを内蔵したもので、多結晶基材Aを所望の温度に加熱および保持できるようになっている。
【0069】
一方、処理容器61の側方には、レーザ発光装置68と第1反射鏡69と集光レンズ70と第2反射鏡71とが設けられ、レーザ発光装置68が発生させたレーザビームを処理容器61の側壁に取り付けられた透明窓72を介してターゲット63に集光照射できるようになっている。レーザ発光装置68はターゲット63から構成粒子を叩き出すことができるようになっている。レーザ発光装置68はターゲット63から構成粒子を叩き出すことができるものであれば、YAGレーザ、CO2 レーザ、エキシマレーザなどのいずれのものを用いても良い。
【0070】
次に、前記YSZからなる多結晶薄膜Bの上に、酸化物超電導層Cを形成する場合について説明する。前述したように多結晶基材A上にYbの多結晶薄膜Bを形成したならば、この多結晶薄膜B上に酸化物超電導層を形成する。酸化物超電導層を多結晶薄膜B上に形成する場合、この実施形態では図8に示すレーザ蒸着装置60を使用する。
多結晶薄膜Bが形成された多結晶基材Aを図8に示すレーザ蒸着装置60の基台64上に設置し、蒸着処理室62を真空ポンプで減圧する。ここで必要に応じて蒸着処理室62に酸素ガスを導入して蒸着処理室62を酸素雰囲気としても良い。また、基台64の加熱ヒータを作動させて多結晶基材Aを所望の温度に加熱する。
【0071】
次に、レーザ発光装置68から発生させたレーザビームを蒸着処理室62のターゲット63に集光照射する。これによりターゲット63の構成粒子が叩き出されるか蒸発されて、その粒子が多結晶薄膜B上に堆積する。ここで構成粒子の堆積の際に、Ybの多結晶薄膜Bが予め膜面と垂直方向にc軸が配向し、膜面と平行方向にa軸とb軸が配向しているので、多結晶薄膜B上に形成される酸化物超電導層Cの結晶のc軸とa軸とb軸も多結晶薄膜Bに整合するようにエピタキシャル成長して結晶化する。これによって、結晶配向性の良好な酸化物超電導層Cが得られる。
【0072】
前記多結晶薄膜B上に形成された酸化物超電導層Cは、多結晶状態となるが、この酸化物超電導層Cの結晶粒の1つ1つにおいては、図6に示すように多結晶基材Aの厚さ方向に電流を流しにくいc軸が配向し、多結晶基材Aの長手方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。したがって、得られた酸化物超電導層は結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が少ないので、多結晶基材Aの面方向に電気を流し易く、臨界電流密度の優れたものが得られる。なお、さらに酸化物超電導層Cの結晶配向性や膜質を安定化するために、700〜800℃に必要時間加熱してから冷却する熱処理を施しておくことが好ましい。
【0073】
【実施例】
図4に示す構成の多結晶薄膜の製造装置を使用し、この製造装置の成膜処理容器内部をロータリーポンプおよびクライオポンプで真空引きして3.0×10−4Torr(4×10−2Pa)に減圧した。テープ状の基材としては、幅10mm、厚さ0.5mm、長さ100cmの表面を鏡面研磨したハステロイC276テープを使用した。また、ターゲットはYbからなるものを用い、スパッタ電圧は1000V、スパッタ電流は100mA、イオンソースから発生させるKr+ のイオンビームの入射角度は基材の被成膜面の法線に対して55度に設定した。その際、イオンビームの搬送距離は40cmに、イオンソースのアシスト電圧は150eVに、イオンソースの電流密度は100μA/cm2 に各々設定した。また、基材テープの温度は300℃に設定し、雰囲気中に1×10−4Torr(1.3×10−2Pa)の酸素を流しながら、基材上にターゲットの構成粒子を堆積させると同時に、アシスト用のイオンビームを照射して厚さ1.0μmの膜状のYbの多結晶薄膜を形成した。
【0074】
得られたYbの多結晶薄膜について、CuKα線を用いたθ−2θ法によるX線回折試験を行い、Ybの<200>方向を基にする極点図(不図示)を求めた。次いでこの極点図から、得られたYbの多結晶薄膜が良好な配向性を持っていることを確認するとともに、Ybからなる多結晶薄膜の粒界傾角は20度以下となる場合があることが分かった。
【0075】
そこで、Ybからなる多結晶薄膜の粒界傾角に影響を及ぼすであろう2つの成膜条件、すなわち、多結晶薄膜Bを作製する際の多結晶基材Aの温度と、多結晶薄膜Bを作製する際に照射するアシスト用のイオンビームエネルギーとを各々変化させて形成したYbからなる多結晶薄膜において、その粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値を調べた。
【0076】
図9は、多結晶基材Aの温度を100℃から300℃の範囲で変えて、この多結晶基材A上にYbからなる多結晶薄膜を形成し、得られた多結晶薄膜の半値全幅(FWHM)を調べた結果である。その際、イオンビームエネルギーは200eVに固定した。
【0077】
図9の結果から、以下の点が明らかとなった。
(1)Ybからなる多結晶薄膜の半値全幅の値は多結晶基材Aの温度に依存し、温度が低すぎても高すぎても半値全幅の値が増加する傾向がある。
(2)多結晶基板Aの温度を150℃以上250℃以下の範囲に保持しながら、この多結晶基板A上に多結晶薄膜Bを形成すれば、半値全幅の値が20度以下の優れた配向性を有する多結晶薄膜Bが安定して得られる。
(3)特に、多結晶基板Aの温度を175℃以上200℃以下の範囲とした場合には、半値全幅の値が19度以下となり、より一層その値を低く抑えることができるので、さらに望ましい。
【0078】
図10は、イオンビームエネルギーを100から300eVの範囲で変えて多結晶基材A上にYbからなる多結晶薄膜を形成し、得られた多結晶薄膜の半値全幅(FWHM)を調べた結果である。その際、多結晶基材Aの温度は200℃に固定した。
(4)多結晶薄膜の半値全幅の値はイオンビームエネルギーに強く依存しており、半値全幅を20度以下にするためにはイオンビームエネルギーを特定範囲、すなわち175eVから225eVの範囲とすることが有効である。
(5)中でも、イオンビームエネルギーが200eV前後とした場合に、多結晶薄膜の半値全幅の値を最も低くできる。
(6)イオンビームエネルギーを150eV以下に弱めて成膜した場合には、イオンビームエネルギーの減少にともない多結晶薄膜の半値全幅は急激に増加する。逆に、イオンビームエネルギーを250eV以上に強めて成膜した場合には、今度はイオンビームエネルギーの増加にともない多結晶薄膜の半値全幅が増加した。
【0079】
上記(1)〜(6)の実験結果から、粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値が20度以下と小さなYbからなる多結晶薄膜、すなわち、結晶配向性の良好なYbからなる多結晶薄膜を形成するためには、薄膜を形成する際の多結晶基板Aの温度を150℃以上250℃以下の範囲にするとともに、薄膜を形成する際のアシスト用のイオンビームエネルギーを175eVから225eVの範囲にすることが大切であることが明らかとなった。
【0080】
次に、図9および図10に示したYbからなる多結晶薄膜B上に、図8に示す構成のレーザ蒸着装置を用いて酸化物超電導層Cを形成した。その際、酸化物超電導層Cを形成する母材としては、YBaCu7−xなる組成の酸化物超電導体からなるターゲットを用いた。また、蒸着処理室の内部は1×10−6Torr(1.3×10−4Pa)に減圧し、Ybからなる多結晶薄膜Bを設けた多結晶基材Aの温度は室温として、この多結晶薄膜B上に酸化物超電導層Cをレーザ蒸着法にて形成した。ターゲット蒸発用のレーザとしては波長193nmのArFレーザを用いた。酸化物超電導層Cを形成した後、400℃で60分間、酸素雰囲気中において熱処理を行った。これにより、サイズが幅1.0cm、長さ100cmからなる酸化物超電導導体を得た。
【0081】
次いで、この酸化物超電導導体を液体窒素に浸漬し、4端子法にて酸化物超電導導体の中央部分の幅10mm、長さ10mmの部分について臨界電流密度Jc(A/cm2 )を求めた。表3は、得られた酸化物超電導導体に対し臨界電流密度Jcを測定した結果である。ここで、表3の横項目は多結晶薄膜Bを作製する際に照射するアシスト用のイオンビームエネルギーであり、表3の縦項目は多結晶薄膜Bを作製する際の多結晶基材Aの温度である。但し、表3には、多結晶基材Aの温度を400℃とした場合の結果も合わせて示した。
【0082】
【表3】
Figure 2004124255
【0083】
表3より、以下の点が明らかとなった。
(7)本発明に係る酸化物超電導導体は、400000(A/cm2 )を越える高い臨界電流密度Jcを有することから、優れた超電導特性を備えていることが確認された。
(8)特に、多結晶薄膜を形成する際の多結晶基板Aの温度を150℃以上250℃以下の範囲とし、薄膜を形成する際のアシスト用のイオンビームエネルギーを175eVから225eVの範囲として形成したYbからなる多結晶薄膜A上に酸化物超電導層Bを形成してなる酸化物超電導導体であれば、臨界電流密度Jcの値をその最大値の80%以内[360000(A/cm2 )以上]に抑えることが可能である。
(9)したがって、粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値が20度以下と小さなYbからなる多結晶薄膜A上に酸化物超電導層Bを形成してなる酸化物超電導導体であれば、極めて高い臨界電流密度Jcの値を安定して実現できる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る多結晶薄膜の製造方法によれば、多結晶基材の被成膜面上に形成されたYbの組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する酸化物の結晶粒からなり、この多結晶基材の被成膜面と平行な面に沿う前記結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角を30度以下にしてなる多結晶薄膜を製造する方法を用いる場合、前記多結晶薄膜の構成元素のターゲットから発生させた構成粒子を多結晶基材上に堆積させる際に、多結晶基材の温度を150℃以上、250℃以下の範囲に設定し、イオンソースが発生させるイオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上、225eV以下の範囲に調整することによって、従来技術では多結晶基材上に良好な結晶配向性でもって直接に成膜することは不可能であったYbからなる多結晶薄膜を形成できる。
【0085】
特に、上記構成からなる多結晶薄膜の製造方法では、多結晶基材の温度を150℃以上250℃以下の範囲に設定し、イオンソースが発生させるイオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上225eV以下の範囲に調整したことにより、得られたYbからなる多結晶薄膜はその粒界傾角に相当する半値全幅(FWHM)の値を20度以下に抑えられるので、優れた結晶配向性を有する多結晶薄膜の提供に寄与する。
【0086】
また、上記構成からなる多結晶薄膜の製造方法であれば、多結晶基材上に直接、優れた結晶配向性を備えたYbからなる多結晶薄膜を得ることができるので、従来のように更にYSZ多結晶薄膜と積層する必要は無くなる。ゆえに、本発明は、従来必要とした多結晶基材上への2層以上の膜形成に要する製造工程を削減することができるので、本発明は工程の簡略化が図れるとともに、製造コストの抑制に貢献する。
【0087】
本発明に係る酸化物超電導導体の製造方法によれば、上述した構成からなる多結晶薄膜の製造方法によってYbからなる多結晶薄膜を形成し、この後に多結晶薄膜上に酸化物超電導層を形成することを特徴としているので、極めて良好な結晶配向性を有する多結晶薄膜上に酸化物超電導層を作製することが可能となり、400000(A/cm2 )を越える高い臨界電流密度Jcを有する酸化物超電導導体が安定して得られる。従って、上記構成からなる酸化物超電導導体の製造方法は、優れた超電導特性を備えた酸化物超電導導体の安定した提供に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多結晶薄膜の一例の一部を断面とした模式的な斜視図である。
【図2】図1に示す多結晶薄膜の結晶粒とその結晶軸方向およびその結晶の粒界傾角を示す拡大平面図である。
【図3】本発明に係るYbからなる多結晶薄膜の結晶格子を示す概念図である。
【図4】本発明に係る多結晶薄膜を製造する装置の一例を示す模式的な構成図である。
【図5】図5(a)は図4に示す装置を構成するイオンソースの一例を示す構成図であり、図5(b)はイオンビーム入射角度に関する説明図である。
【図6】図1に示す多結晶薄膜の上に形成された酸化物超電導層を示す模式的な構成図である。
【図7】図6に示す酸化物超電導層の結晶粒とその結晶軸方向およびその結晶の粒界傾角を示す拡大平面図である。
【図8】本発明に係る酸化物超電導層を製造する装置の一例を示す模式的な構成図である。
【図9】多結晶基材の温度と形成された多結晶薄膜の半値全幅との関係を示すグラフである。
【図10】イオンビームエネルギーと形成された多結晶薄膜の半値全幅との関係を示すグラフである。
【図11】従来の製造方法で作製された多結晶薄膜を示す模式的な構成図である。
【図12】従来の酸化物超電導導体の一例を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
A 多結晶基材、B 多結晶薄膜、C 酸化物超電導層、K、K’ 粒界傾角、θ 入射角度、20、21 結晶粒、22 酸化物超電導導体、36 ターゲット、39 イオンソース。

Claims (2)

  1. 多結晶基材の被成膜面上に形成されたYbの組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する酸化物の結晶粒からなり、前記多結晶基材の被成膜面と平行な面に沿う前記結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角を30度以下にしてなる多結晶薄膜を製造する方法であり、前記多結晶薄膜の構成元素のターゲットから発生させた構成粒子を多結晶基材上に堆積させる際に、多結晶基材の温度を150℃以上、250℃以下の範囲に設定し、イオンソースが発生させるイオンビームとして、Ar+ のイオンビーム、Kr+ のイオンビーム、Xe+ のイオンビームあるいはこれらの混合イオンビームを用い、前記イオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上、225eV以下の範囲に調整し、前記イオンビームを基材の被成膜面の法線に対して50度以上、60度以下の入射角度で照射しながら前記構成粒子を基材上に堆積させることを特徴とする多結晶薄膜の製造方法。
  2. 多結晶基材と、この多結晶基材の被成膜面上に形成されたYbの組成式で示される希土類酸化物C型の結晶構造を有する酸化物の結晶粒からなり前記多結晶基材の被成膜面と平行な面に沿う前記結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾角を30度以下にしてなる多結晶薄膜と、この多結晶薄膜上に形成された酸化物超電薄層とを具備してなる酸化物超電導導体を製造する方法であり、前記多結晶薄膜の構成元素のターゲットから発生させた構成粒子を多結晶基材上に堆積させる際に、多結晶基材の温度を150℃以上、250℃以下の範囲に設定し、イオンソースが発生させるイオンビームとして、Ar+ のイオンビーム、Kr+ のイオンビーム、Xe+ のイオンビームあるいはこれらの混合イオンビームを用い、前記イオンビームのイオンビームエネルギーを175eV以上、225eV以下の範囲に調整し、前記イオンビームを基材の被成膜面の法線に対して50度以上、60度以下の入射角度で照射しながら前記構成粒子を基材上に堆積させて多結晶薄膜を形成し、この後に多結晶薄膜上に酸化物超電導層を形成することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
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