JP2010120831A - サファイア単結晶育成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】育成されるサファイア単結晶内部に気泡が含まれ難いサファイア単結晶育成装置を提供すること。
【解決手段】サファイア原料が充填される坩堝1と、坩堝の外周面を加熱する円筒状本体部30を有するカーボン製ヒータ3と、カーボン製断熱材料により構成されかつ坩堝とカーボン製ヒータが収容されて坩堝が保温される断熱空間部6と、断熱空間部底面60に設けられた開口部に嵌入された絶縁筒8と、絶縁筒内に挿入されかつ先端側が上記カーボン製ヒータに接続されたカーボン製ヒータ電極3とを備え、上記サファイア原料融液10から回転引き上げ法によりサファイア単結晶を製造するサファイア単結晶育成装置であって、上記絶縁筒8の内径とカーボン製ヒータ電極3の外径について、絶縁筒とヒータ電極の間で放電が発生しない関係に設定されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、サファイア原料融液から回転引き上げ法によりサファイア単結晶を製造するサファイア単結晶育成装置に係り、特に、育成されたサファイア単結晶内部に気泡が含まれ難いサファイア単結晶育成装置の改良に関するものである。
光学材料を得るために用いられる基板としてサファイア基板がある。この基板はサファイア単結晶を基板形状に切断し、研磨して得ている。こうしたサファイア基板を得るためのサファイア単結晶を製造する主要な方法として、原料を坩堝内で融解し、その原料融液表面に種結晶を接触させて徐々に引き上げることにより単結晶を育成するチョクラルスキー法(Cz法)やカイロポーラス法(Kyropulous法)等が知られている。
これ等の方法によりサファイア単結晶を育成する際には、固化率(投入した原料重量に対する育成された単結晶の重量比)を大きくした方が経済的である。具体的には、坩堝内に投入した原料融液からできるだけ大口径かつ長尺の単結晶を育成することが重要となる。しかし、これ等の方法においては、例えば固化率が50%以上になると引き上げ軸から単結晶が脱離して、坩堝内に落下する現象が頻繁に発生する。これは融液中において、坩堝下方に向かって成長した結晶の凸形状部が坩堝底に固着し、種結晶に過負荷がかかった結果、種結晶が破断してしまうためである。そして、単結晶が引き上げ軸から脱離した時点で結晶育成は終了となってしまう。また、融液内に落下した単結晶は、再融解または取り出しのために冷却を行うと原料融液の凝固とともに坩堝内に固着され取り出すことが困難となる。このため、落下した単結晶から基板結晶や光学結晶を切り出すことが出来ず固化率の向上どころか単結晶そのものの生産効率が低下する。この問題を解消する方法として、特許文献1〜3には、坩堝周囲の断熱性強化および単結晶育成時の坩堝底部保温性強化によって固化率を向上させる方法が開示されている。
ところが、こうした方法で得られたサファイア単結晶は無色透明であるが、内部には多数の気泡を含む場合があるという新たな問題を生じた。こうした気泡を含むサファイア単結晶を用いてサファイア基板を製造すると、サファイア基板中に気泡が含まれることになるが、気泡を含むサファイア基板は商品とならないため、固化率が上昇しても製品の歩留まりは低下してしまうことになる。
そこで、本発明者は、種々の検討を重ねた結果、気泡は原料融液中に存在するガス成分が取り込まれたものと考えるに至った。ガス成分を育成中の単結晶に取り込ませないようにするために、融液の対流を強化するという手段がある。例えば、特許文献4に記載された低酸素濃度雰囲気下でサファイア単結晶を育成する方法である。
しかし、特許文献4に記載された方法により融液の対流を調整した場合、育成結晶中に取り込まれるガス成分は確かに減少するが、サファイア単結晶を引き上げ方法で得る際の特徴である坩堝下方への凸形状部の成長が助長されるという問題があり、上記固化率向上という観点からすれば、逆に固化率の悪化を招くことになる。
特許第2681114号公報(請求項1、第1図参照) 特許第2759105号公報(請求項1、第1図参照) 特許平3−29752号公報(特許請求の範囲参照) 特開平09−278592号公報(請求項1参照)
そこで、本発明者は融液中に存在するガス成分を減少させる新たな方法を開発するために、結晶中に取り込まれた気泡を構成するガス成分を調べたところ、そのほとんどが一酸化炭素ガスであることがわかった。
そして、融液中に一酸化炭素ガスが取り込まれるメカニズムについて、本発明者は以下のように推定した。
(1)高温、低酸素分圧下において、酸化アルミニウム原料融液が分解する。
Al(m)→AlO(g)+O(g)
(2)炉内で飛散したカーボンが原料融液と接触し、分解した酸化アルミニウムと反応することで一酸化炭素ガスを生成する。
AlO(g)+C(s)→CO(g)+2Al(g)
(3)一酸化炭素ガスは融液の対流によって結晶成長界面付近に運ばれ、結晶化の際に結晶中に取り込まれる。
上記メカニズムによると、炉内において飛散するカーボンと原料融液との接触を断つことこそが結晶中への気泡の取り込みを低減させることにつながると考えられる。
ここで、カーボンの飛散源としては、高温に晒されるカーボン製ヒータ自身やカーボン製ヒータ電極、あるいは坩堝を取り囲むカーボン製保温材等が考えられる。
そこで、結晶育成後の各部材の外観を観察したところ、カーボン製ヒータ電極が明らかにやせ細っていることが確認された。上記ヒータ電極の周囲には、他のカーボン製部材との接触を避けるために酸化アルミニウム製の絶縁筒が設けられ、上記ヒータ電極は、絶縁筒内に挿入されて配置されている。しかし、絶縁筒内に挿入されたヒータ電極と絶縁筒との距離が近すぎる場合、高温状態においてはヒータ電極−絶縁筒間において放電現象が発生し、ヒータ電極からカーボンが微粉末となって飛散し、原料融液を汚染してしまう。尚、上記放電現象は、カーボン製ヒータへの投入電力を下げることでその発生を抑えることができるが、反面、正常な結晶育成を行うことができなくなる問題があった。
そこで、本発明者は放電現象が発生しない条件について鋭意検討を行った結果、放電現象の発生がヒータ電極と絶縁筒との距離に関係することを見出し、更に、絶縁筒内径に対するヒータ電極外径の比をある範囲に調整した場合、上記カーボン製保温材による坩堝の保温機能に支障を来たすことなく、カーボンを飛散させる放電現象の発生が抑制されることを見出した。
すなわち、本発明の課題とするところは、正常なサファイア単結晶の育成を可能とし、かつ、ヒータ電極と絶縁筒との放電現象が防止されるサファイア単結晶育成装置を提供することにある。
すなわち、請求項1に係る発明は、
サファイア原料が充填される坩堝と、坩堝の外周面を加熱する円筒状本体部を有するカーボン製ヒータと、カーボン製の断熱材料により構成されかつ坩堝とカーボン製ヒータが収容されて上記坩堝が保温される断熱空間部と、断熱空間部底面に設けられた開口部に嵌入された絶縁筒と、絶縁筒内に挿入されかつ先端側が上記カーボン製ヒータに接続されたカーボン製ヒータ電極とを備え、上記サファイア原料の融液から回転引き上げ法によりサファイア単結晶を製造するサファイア単結晶育成装置において、
上記絶縁筒の内径とカーボン製ヒータ電極の外径について、絶縁筒とヒータ電極の間で放電が発生しない関係に設定されていることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るサファイア単結晶育成装置において、
上記絶縁筒の内径をa、ヒータ電極の外径をbとした場合、(b/a)が0.50以上0.75未満であることを特徴とするものである。
請求項1〜2記載の発明に係るサファイア単結晶育成装置によれば、
カーボン製ヒータ電極が挿入される絶縁筒の内径と上記カーボン製ヒータ電極の外径について、絶縁筒とヒータ電極との間で放電が発生しない関係に設定されているため、結晶育成中におけるカーボンの飛散に起因した原料融液中への一酸化炭素の取り込みが防止され、これにより気泡を含まない高品質なサファイア単結晶を得ることが可能となる。
従って、製品の歩留まりが向上して大きな経済効果を得ることができ、また、放電現象が防止されることによりヒータ電極および絶縁筒の損傷を低減できるため、サファイア単結晶の製造コストを大きく改善することが可能となる。
以下に本発明を実施するための最良の形態について図1および図2を基に説明する。
まず、本発明に係るサファイア単結晶育成装置は、図1に示すようにサファイア原料が充填される坩堝1と、坩堝1の外周面を加熱する円筒状本体部30を有するカーボン製ヒータ3と、カーボン製の断熱材料により構成されかつ坩堝1とカーボン製ヒータ3が少なくとも収容されて上記坩堝1が保温される断熱空間部6と、断熱空間部6の底面60に設けられた開口部に嵌入された絶縁筒8と、絶縁筒8内に挿入されかつ先端側が上記カーボン製ヒータ3に接続されて電力を供給するカーボン製の円柱状ヒータ電極5と、同じく上記底面60に設けられた開口部に嵌入された絶縁筒80内に挿入されかつ先端側がカーボン製の円盤状ボトムヒータ4に接続されて電力を供給するカーボン製の円柱状ボトムヒータ電極40と、同じく上記底面60の開口部と上記円盤状ボトムヒータ4の開口を貫通するように設けられて上記坩堝1を支持する支持軸2と、上記断熱空間部6の上面61に設けられた開口部に挿入されかつ先端に種結晶11が取り付けられる引き上げ軸9を備え、上記断熱空間部6は炉体7の内面に沿って設けられていると共に、坩堝1内の原料融液10から回転引き上げ法によりサファイア単結晶12が育成されるようになっている。
尚、本発明に係るサファイア単結晶育成装置は、当然のことながら図1に示された構造のものに限定されるものではない。例えば、図1のサファイア単結晶育成装置において、上記ヒータが、円筒状本体部30を有するカーボン製ヒータ3と別体の円盤状ボトムヒータ4とで構成されているが、上記円盤状ボトムヒータ4に代えて、断面略L字形状若しくはカップ型のカーボン製ヒータ3単体で構成してもよいし、上記円盤状ボトムヒータ4を省略して円筒状本体部30を有するカーボン製ヒータ3単体で構成してもよい。
そして、このサファイア単結晶育成装置においては、図2に示すように絶縁筒8の内径をa、円柱状ヒータ電極5の外径をbとした場合、(b/a)が0.75未満に設定されており、これにより絶縁筒8とヒータ電極5との間の放電現象が回避されるため、気泡を含まない高品質なサファイア単結晶を得ることが可能となる。
更に、上記(b/a)が0.50以上に設定されており、絶縁筒8と円柱状ヒータ電極5間の隙間寸法が不必要に大きくなっていないため、上記断熱空間部6による坩堝の1保温機能に支障を来たすこともない。
以下に、本発明の実施例について比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれ等の実施例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
円筒状本体部30を有するカーボン製ヒータ3と別体の円盤状ボトムヒータ4とを備えた図1のサファイア単結晶育成装置において、上記カーボン製ヒータ3に接続される円柱状ヒータ電極5の直径bを40mm、このヒータ電極5が挿入される絶縁筒8の内径aを65mm(b/a=0.62)として断熱材を組み立てて断熱空間部6を構成した。
そして、坩堝1内に原料としておよそ23kgの高純度(6N)アルミナを投入し、かつ、円筒状本体部30を有するカーボン製ヒータ3と円盤状ボトムヒータ4を作動させて2050℃以上に加熱し、高純度アルミナ融液を生成した。
次いで、種結晶11としてサファイア単結晶を用い、原料融液10に接触させて引き上げながら、毎時0.10℃から0.30℃の範囲の速度で温度を降下させ、サファイア単結晶の育成を行った。
結晶育成終了後、単結晶育成装置よりサファイア単結晶を取り出し、基板状に切り出して外観検査を行ったところ、得られた基板の全てに気泡を含んでいないことがわかった。
[実施例2]
上記円柱状ヒータ電極5の直径bを47.5mm、上記絶縁筒8の内径aを65mm(b/a=0.73)として断熱材を組み立てて断熱空間部6を構成し、それ以外は実施例1と同様に行なった。
そして、育成したサファイア単結晶より切り出したところ、得られた基板の全てに気泡を含んでいないことがわかった。
[比較例1]
上記円柱状ヒータ電極5の直径bを48.8mm、上記絶縁筒8の内径aを65mm(b/a=0.75)として断熱材を組み立てて断熱空間部6を構成し、それ以外は実施例1と同様に行なった。
そして、育成したサファイア単結晶より切り出したところ、得られた基板には気泡を含んでいることがわかった。
[比較例2]
上記円柱状ヒータ電極5の直径bを50mm、上記絶縁筒8の内径aを65mm(b/a=0.77)として断熱材を組み立てて断熱空間部6を構成し、それ以外は実施例1と同様に行なった。
そして、育成したサファイア単結晶より切り出したところ、得られた基板には気泡を含んでいることがわかった。
本発明に係るサファイア単結晶育成装置によれば、結晶育成中におけるカーボンの飛散に起因した原料融液中への一酸化炭素の取り込みが防止され、これにより気泡を含まない高品質なサファイア単結晶を得ることが可能となるため、光学材料を得るための基板として利用される産業上の利用可能性を有している。
本発明に係るサファイア単結晶育成装置の概略構成を示す説明図。 上記サファイア単結晶育成装置に組み込まれる円柱状ヒータ電極と絶縁筒との関係を示す説明図。
符号の説明
1 坩堝
2 支持軸
3 カーボン製ヒータ
4 円盤状ボトムヒータ
5 円柱状ヒータ電極
6 断熱空間部
7 炉体
8 絶縁筒
9 引き上げ軸
10 原料融液
11 種結晶
12 サファイア単結晶
30 円筒状本体部
40 円柱状ボトムヒータ電極
60 断熱空間部6の底面
61 断熱空間部6の上面
80 絶縁筒
a 円柱状ヒータ電極の直径(外径)
b 絶縁筒の内径

Claims (2)

  1. サファイア原料が充填される坩堝と、坩堝の外周面を加熱する円筒状本体部を有するカーボン製ヒータと、カーボン製の断熱材料により構成されかつ坩堝とカーボン製ヒータが収容されて上記坩堝が保温される断熱空間部と、断熱空間部底面に設けられた開口部に嵌入された絶縁筒と、絶縁筒内に挿入されかつ先端側が上記カーボン製ヒータに接続されたカーボン製ヒータ電極とを備え、上記サファイア原料の融液から回転引き上げ法によりサファイア単結晶を製造するサファイア単結晶育成装置において、
    上記絶縁筒の内径とカーボン製ヒータ電極の外径について、絶縁筒とヒータ電極の間で放電が発生しない関係に設定されていることを特徴とするサファイア単結晶育成装置。
  2. 上記絶縁筒の内径をa、ヒータ電極の外径をbとした場合、(b/a)が0.50以上0.75未満であることを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶育成装置。
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