JP2007091532A - シリカガラスルツボ - Google Patents

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Abstract

【課題】原料融液が充填された高温下での変形や歪みが抑制され、かつ、ブラウンモールドの発生が抑制され、しかも、ルツボに起因する不純物汚染を招くことなく、シリコン等の半導体単結晶を歩留まりよく引上げるのに好適なシリカガラスルツボを提供する。
【解決手段】上方から直胴部、コーナー部および底部からなる有底容器状であり、その厚さ方向における外層が天然質シリカガラス、内層が合成シリカガラスからなるルツボにおいて、少なくとも前記直胴部における外層と内層の総厚さが6mm以上16mm以下、内層の厚さが総厚さの5%以上40%以下であり、かつ、前記内層におけるNa,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度も0.1ppm以下、前記外層におけるNa濃度が0.2ppm以下であり、ルツボ内表面から深さ0.5mm以下の領域において、直径20μm以上の気孔が20個/mm2以下となる構成とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、シリコン等の半導体単結晶引上げにおいて、原料を溶融するために好適に用いられるシリカガラスルツボに関する。
シリコン等の半導体単結晶は、主に、チョクラルスキー(CZ)法により製造されている。このCZ法によるシリコン単結晶の製造は、シリコン単結晶の種結晶を、多結晶シリコンを溶融したシリコン原料融液に着液させて、回転させながら徐々に引上げていき、シリコン単結晶インゴットを成長させることにより行われる。
上記のようなCZ法によるシリコン単結晶の引上げにおいて、原料を加熱溶融するための容器には、一般に、外層が水晶等の天然質原料を溶融ガラス化した天然質シリカガラス、内層が合成シリカガラスからなるシリカガラスルツボが用いられている。
前記シリカガラスルツボは、その中に多結晶シリコンを充填し、シリコンの融点(約1400℃)以上の温度に加熱されると、通常、該ルツボ内表面に、褐色のリング状のクリストバライト、いわゆるブラウンモールド(ブラウンリングとも言う。)が生成する。
このブラウンモールドは、加熱により徐々に拡大し、該内表面の荒れや剥離が生じ、その結果、シリコン原料融液中に前記剥離片が混入し、シリコン単結晶に転位が発生し、シリコン単結晶の歩留まりの低下を招いていた。
前記ブラウンモールド発生は、一般的には、シリカガラスルツボの内表面における不純物が原因であると考えられ、このため、該ルツボの内層が高純度の合成シリカガラスからなるシリカガラスルツボが使用されていた。
しかしながら、このようなルツボを用いた場合であっても、ブラウンモールドの発生は十分に抑制できていないのが現状である。
さらに、近年のシリコン単結晶の大口径化に伴い、用いられるルツボも大型化が進み、より高強度であることが求められ、また、シリコン単結晶の引上げに要する時間も長時間化し、その間、シリコン原料融液を充填されたシリカガラスルツボは、1400℃以上の高温下に曝されることから、より一層のルツボの強度向上が求められている。
上記課題に対しては、例えば、特許文献1に、ルツボ内層の内表面付近に、所定濃度のAlとOH基を導入することにより、内層と外層との剥離が抑制され、ルツボの変形も抑制されることが開示されている。
特開2005−231986号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、内層にAl等の金属を含むルツボは、これと接触するシリコン原料融液の不純物汚染を招くおそれがあり、高純度かつ高品質が求められるシリコン単結晶の引上げには、好ましい態様のルツボとは言い難いものであった。
したがって、シリコン等の半導体単結晶の引上げに用いられるルツボは、上記のように、耐熱強度に優れていることに加えて、ルツボ自体が不純物汚染源とならないような構成であることも求められる。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、原料融液が充填された高温下での変形や歪みが抑制され、かつ、ブラウンモールドの発生が抑制され、しかも、ルツボに起因する不純物汚染を招くことなく、シリコン等の半導体単結晶を歩留まりよく引上げるのに好適なシリカガラスルツボを提供することを目的とするものである。
本発明に係るシリカガラスルツボは、上方から直胴部、コーナー部および底部からなる有底容器状であり、その厚さ方向における外層が天然質シリカガラス、内層が合成シリカガラスからなるルツボであって、少なくとも前記直胴部における外層と内層の総厚さが6mm以上16mm以下、内層の厚さが総厚さの5%以上40%以下であり、かつ、前記内層におけるNa,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度も0.1ppm以下、前記外層におけるNa濃度が0.2ppm以下であることを特徴とする。
上記のような構成からなるルツボによれば、単結晶引上げ過程におけるブラウンモールドの発生が抑制され、かつ、変形や歪みが抑制され、さらに、ルツボに起因する不純物汚染も防止されるため、単結晶製造における歩留まり向上を図ることができる。
前記シリカガラスルツボにおいては、内層のルツボ内表面から深さ0.5mm以下の領域において、直径20μm以上の気孔が20個/mm2以下であることが好ましい。
内表面に存在する気孔が上記のように制御されることにより、半導体単結晶引上げ過程において収容される原料融液の液面振動を抑制することができ、また、内層においてブラウンモールドが発生した場合であっても、ルツボ内表面から原料融液に溶出することを防止することができる。
上述のとおり、本発明に係るシリカガラスルツボは、単結晶引上げに長時間要する場合においても、ブラウンモールドの発生が抑制され、かつ、原料融液が充填された高温下においても、変形や歪みが抑制され、しかも、ルツボに起因する不純物汚染を招くことはない。
したがって、本発明に係るシリカガラスルツボは、耐熱強度および耐久性に優れており、シリコン等の半導体単結晶を歩留まりよく引上げるのに好適に用いることができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るシリカガラスルツボは、外層が天然質シリカガラスであり、内層が合成シリカガラスである複層構造からなるものである。
前記ルツボにおいては、外層と内層の総厚さは6mm以上16mm以下とする。
前記総厚さが6mm未満である場合、シリコン等の半導体単結晶の原料融液の容器として十分な耐熱強度が得られない。
一方、前記総厚さが16mmを超える場合は、ルツボ自体の重量が重くなり、単結晶製造効率が劣り、また、ルツボ内表面と外表面との温度差による歪みによる破損が生じやすくなる。
前記ルツボの総厚さは10mm程度であることが好ましい。
また、前記ルツボにおける内層の厚さは、総厚さの5%以上40%以下とする。
前記内層の厚さが5%未満である場合、半導体単結晶の引上げ過程で内表面が溶損し、外層を構成する天然質シリカガラスがルツボ内表面に露出し、ルツボ内の原料融液に不純物が混入したり、液面が振動する等の弊害により、無欠陥状態での単結晶引上げに支障をきたす。
一方、前記内層の厚さが40%を超える場合、外層の厚さが薄くなるため、ルツボの強度が不十分となり、半導体単結晶引上げ過程におけるルツボ側壁の倒れ込みを生じるおそれがある。また、ルツボの断熱性にも劣る。
前記ルツボの内層の厚さは、12%以上28%以下の範囲内であることが好ましい。
さらに、前記内層においては、Na,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度も0.1ppm以下とする。
半導体単結晶の原料融液と接触するルツボ内層側は、原料融液の汚染源となる不純物金属元素が少ないことが好ましいことから、内層を構成するシリカガラス中のNa,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度もできる限り少ないことが好ましく、0.1ppm以下であることが好ましい。
前記Na,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuの濃度が0.1ppmを超える場合は、上記のような原料融液の汚染により、高純度かつ高品質の半導体単結晶の歩留まり低下を招く。
また、前記外層におけるNa濃度は0.2ppm以下とする。
前記Na濃度が0.2ppmを超える場合は、半導体単結晶引上げ過程において、該ルツボが高温に曝されると、前記Naが内層側に拡散し、ルツボ内表面でのブラウンモールドの発生を招き、また、外層の強度が低下する。
また、前記シリカガラスルツボにおいては、内層のルツボ内表面から深さ0.5mm以下の領域において、直径20μm以上の気孔が20個/mm2以下であることが好ましい。
これによって、内層においてブラウンモールドが発生した場合であっても、原料融液側へのブラウンモールドを形成する結晶化したシリカが剥離し、面荒れを生じることによる単結晶化率の低下を抑制することができる。
このような気孔発生が低減化された内層のルツボ内表面は、内層を形成する合成シリカガラス原料の粒度およびアーク溶融温度を適宜調整することにより形成することができる。
上記のような本発明に係るシリカガラスルツボは、例えば、以下のような製造方法により得ることができる。
まず、Na濃度を低減化させるために、純化処理として、例えば、塩素ガス雰囲気中、1000〜1200℃での熱処理を施したNa濃度が0.2ppm以下の天然質シリカ原料粉をルツボ形状に成型する。さらに、前記外層の内表面を覆うように、Na,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度も0.1ppm以下であり、平均粒径が150μm(最大粒径210μm)の合成シリカ原料粉を導入し、高清浄度の環境を維持する。
この中にアーク電極を挿入し、減圧アーク溶融によりガラス化することにより、外層が多数の気孔を含む見かけ上不透明な天然質シリカガラスであり、内層が透明な合成シリカガラスからなる本発明に係るシリカガラスルツボが得られる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
純化処理したNa濃度が0.15ppm以下の天然質シリカ原料粉をルツボ形状に成型し、さらに、前記外層の内表面を覆うように、Na,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度も0.05ppm以下であり、平均粒径が150μm(最大粒径210μm)の合成シリカ原料粉を導入し、高清浄度の環境を維持した。
この中にアーク電極を挿入し、減圧アーク溶融によりガラス化して、外層が厚さ8mmの多数の気孔を含む見かけ上不透明な天然質シリカガラスであり、内層が厚さ2mmの透明な合成シリカガラスからなるシリカガラスルツボを作製した。
得られたルツボについて分析したところ、内層のNa,K,Li,Ca,Fe,Cuのいずれの濃度も0.05ppm以下、Al,Tiの濃度はいずれも0.1ppm以下であり、外層のNa濃度は0.2ppm以下であった。
また、前記内層の内表面から深さ0.5mm以下の領域においては、直径20μm以上の気孔が20個/mm2以下であった。
上記方法により作製した10個の直径24インチのシリカガラスルツボを用いて、CZ法でシリコン単結晶の引上げを行った。
引上げ後のルツボ内表面に、ブラウンモールドの発生が、平均0.3個/cm2程度認められたものの、平均単結晶化率は98%と高かった。
[比較例1]
実施例1において、外層形成時に、Na濃度が1.2ppmの天然質シリカ原料粉を用い、また、減圧アーク溶融時における減圧の程度を低く調整し、それ以外については、実施例1と同様にして、シリカガラスルツボを作製した。
得られたルツボについて分析したところ、内層のNa,K,Li,Ca,Fe,Cuのいずれの濃度も0.05ppm以下、Al,Tiの濃度はいずれも0.1ppm以下であったが、外層のNa濃度は1.3ppmであった。
また、前記内層の内表面から深さ0.5mm以下の領域においては、直径20μm以上の気孔が20個/mm2以下であった。
得られたシリカガラスルツボを用いて、CZ法でシリコン単結晶の引上げを行った。
引上げ後のルツボ内表面には、ブラウンモールドが平均0.6個/cm2発生しており、平均単結晶化率は87%であった。
[比較例2]
比較例1において、合成シリカ原料粉として、平均粒径250μm(最大粒径400μm)のものを用い、それ以外については、比較例1と同様にして、内層のルツボ内表面から深さ0.5mm以下の領域において、直径20μm以上の気孔が35個/mm2であるシリカガラスルツボを作製した。
得られたシリカガラスルツボを用いて、CZ法でシリコン単結晶の引上げを行った。
引上げ後のルツボ内表面には、ブラウンモールドが平均0.7個/cm2発生しており、平均単結晶化率は82%であった。

Claims (2)

  1. 上方から直胴部、コーナー部および底部からなる有底容器状であり、その厚さ方向における外層が天然質シリカガラス、内層が合成シリカガラスからなるルツボであって、少なくとも前記直胴部における外層と内層の総厚さが6mm以上16mm以下、内層の厚さが総厚さの5%以上40%以下であり、かつ、前記内層におけるNa,K,Li,Ca,Al,Ti,Fe,Cuのいずれの濃度も0.1ppm以下、前記外層におけるNa濃度が0.2ppm以下であることを特徴とするシリカガラスルツボ。
  2. 前記内層のルツボ内表面から深さ0.5mm以下の領域において、直径20μm以上の気孔が20個/mm2以下であることを特徴とする請求項1記載のシリカガラスルツボ。
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