JP2010108583A - 磁気記録媒体及び磁気記録再生装置 - Google Patents
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Description
前記磁気記録媒体としては、磁気記録媒体用の基板上にスパッタリング法などにより記録層等を積層した後、前記記録層上にカーボン等の保護膜を形成し、更に前記保護膜上に液体の潤滑剤を塗布する構成が主流となっている。
前記潤滑剤層を設けることによって、磁気ヘッド(磁気ヘッドスライダ)が保護層と直接接触するのを防止することができるとともに、磁気記録媒体上を摺動する磁気ヘッド(磁気ヘッドスライダ)の摩擦力を著しく低減させることができる。
例えば、特許文献1には、HOCH2−CF2O−(C2F4O)p−(CF2O)q−CH2OH(p、qは整数。)の構造をもつパーフロロアルキルポリエーテルの潤滑剤を塗布した磁気記録媒体が開示されている。また、特許文献2には、HOCH2CH(OH)−CH2OCH2CF2O−(C2F4O)p−(CF2O)q―CF2CH2OCH2―CH(OH)CH2OH(p、qは整数。)の構造をもつパーフロロアルキルポリエーテル(テトラオール)の潤滑剤を塗布した磁気記録媒体が開示されている。さらに、特許文献3には、−CF2O−または−CF2CF2O−から選ばれたパーフルオロオキシアルキレン単位とホスファゼン化合物を有する磁気記録媒体用途の潤滑剤が開示されている。
前記磁気ヘッドに前記汚染物質が付着(転写)すると、前記磁気ヘッドの記録再生特性が低下するとともに、前記磁気ヘッドの浮上安定性が損なわれ、ひいては前記磁気ヘッドを破壊させる場合が発生する。そのため、磁気記録媒体製造の際には、このような汚染物質を除去する必要があった。
たとえば、前記ディップ法では、潤滑剤浸漬槽に入れた前記潤滑剤を含む溶液中に磁気記録媒体を浸漬した後、前記潤滑剤浸漬槽から磁気記録媒体を所定の速度で引き上げて磁気記録媒体表面に均一な膜厚の潤滑剤層を形成する。
しかし、前記潤滑剤層を薄くすると、前記潤滑剤層による磁気記録媒体の表面の被覆率が低下する。これにより、磁気記録媒体の表面の一部が露出される場合が発生する。このとき、汚染物質によって、その露出部分から磁気記録媒体の表面が汚染される場合が発生する。
つまり、前記潤滑剤層にホスファゼン化合物のように大きな分子構造を有する化合物を用いた場合には、前記潤滑剤層にイオン性の汚染物質が保護層(炭素膜)に侵入する隙間を生じさせ、その隙間から前記汚染物質が磁気記録媒体の表面を汚染するメカニズムを発見した。
すなわち、本発明は以下に関する。
(2) 上記一般式(1)におけるR2が、−(C2F4O)t−(CF2O)u−CH2OH(t、uは整数。)、または、−(C2F4O)t−(CF2O)u―CF2CH2OCH2―CH(OH)CH2OH(t、uは整数。)であることを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体。
(3) 上記一般式(1)における、xが4であり、R1がCF3であり、R2が−CH(OH)CH2OH末端基を有する置換基であることを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体。
(4) 上記一般式(2)に示す化合物B1の平均分子量が1000〜8000の範囲内または上記一般式(3)に示す化合物B2の平均分子量が1000〜5000の範囲内であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5) 前記潤滑剤層の平均膜厚が5Å以上13Å以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体を記録方向に駆動する媒体駆動部と、前記磁気記録媒体に情報の記録再生を行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上に移動するヘッド移動部と、前記磁気ヘッドからの記録再生信号の処理を行う記録再生信号処理部と、を具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
図1は、本発明の実施形態である磁気記録媒体の一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である磁気記録媒体11は、非磁性基板1上に、磁性層2、保護層3、潤滑剤層4と、がこの順序で積層されて概略構成されている。
非磁性基板1としては、AlまたはAl合金などの金属または合金材料からなる基体上に、NiPまたはNiP合金からなる膜が形成されたものなどを用いることができる。また、非磁性基板1としては、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコンカーバイド、カーボン、樹脂などの非金属材料からなるものを用いてもよいし、この非金属材料からなる基体上にNiPまたはNiP合金の膜を形成したものを用いてもよい。
磁性層2は、主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましく、例えば、Co−Cr−Ta系、Co−Cr−Pt系、Co−Cr−Pt−Ta系、Co−Cr−Pt−B−Ta系合金等からなる層を用いることができる。
面内磁気記録の磁性層2としては、強磁性のCoCrPtTa磁性層を用いることができ、この場合、前記磁性層2と非磁性基板1との間に非磁性のCrMo下地層を設けることが好ましい。前記下地層は、単層であっても多層であってもよい。
磁性層2は、蒸着法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法など従来の公知のいかなる方法によって形成してもよいが、通常、スパッタ法により形成する。
保護層3としては、従来の公知の材料、例えば、カーボン、SiCの単体またはそれらを主成分とした材料を使用することができる。なお、本発明の実施形態で用いる潤滑剤層4は、特に、カーボンからなる保護層3に対して高い結合力と被覆率が得られるので、カーボンがより好ましい。
さらに、これらの方法を組み合わせて複数の層として構成しても良い。
潤滑剤層4は、上記一般式(1)に示す化合物Aと、上記一般式(2)に示す化合物B1または上記一般式(3)に示す化合物B2と、を含む構成とされている。
特に本願発明では、上記一般式(1)におけるR2を、−(C2F4O)t−(CF2O)u−CH2OH(t、uは整数。)、または、−(C2F4O)t−(CF2O)u―CF2CH2OCH2―CH(OH)CH2OH(t、uは整数。)とするのが好ましい。これらの置換基は従来から潤滑剤の置換基として使われているからである。
また、上記一般式(2)中、pは4〜60の範囲の整数、qは4〜60の範囲の整数である。さらに、上記一般式(3)中、rは4〜36の範囲の整数、sは4〜36の範囲の整数である。
上記一般式(1)に示す化合物Aは、ホスファゼン化合物であって、具体的には、X−1p(商品名、DowChemical社製)、MORESCO PHOSPHAROL A20H−2000(商品名、松村石油研究所(MORESCO)社製)、A20H−DD(商品名、松村石油研究所(MORESCO)社製)、またはこれらの関連物質を出発原料として合成、精製して得た反応生成物を挙げることができる。
化合物B1、化合物B2は、それぞれパーフルオロオキシアルキレン単位を有する化合物であり、化合物B1としては、例えば、Fomblin Z−DOL(商品名、Solvay Solexis社製)を挙げることができ、化合物B2としては、例えば、Fomblin Z−TETRAOL(商品名、Solvay Solexis社製)を挙げることができる。
化合物B1または化合物B2の平均分子量を上記範囲内とした場合には、化合物Aを保護層3に塗布した際に生ずる隙間を、化合物B1または化合物B2が埋めやすくなり、磁気記録媒体の内部に侵入する汚染物質を阻止しやすくなる。
また、潤滑剤層4が上記構成からなる場合には、潤滑剤層4の膜厚を薄くしても、アイランド状または網目状となることがなく、ほぼ均一の膜厚で潤滑剤層4を形成することができ、潤滑剤層4による保護層3の表面への被覆率を保持して、磁気記録媒体に対する
環境物質の影響を低減して、汚染物質の発生を抑制して、磁気記録媒体の耐汚染性を保持する。
化合物B1に対する化合物Aの質量比(A/B1)または化合物B2に対する化合物Aの質量比(A/B2)は、0.05〜0.3の範囲内とすることが好ましい。
質量比(A/B1)または質量比(A/B2)を上記範囲内とすることにより、化合物Aのホスファゼン骨格と、化合物B2のパーフルオロオキシアルキレン単位と、が形成する保護層3を構成する炭素原子への結合がより強められる。
潤滑剤層4の平均膜厚は、0.5nm(5Å)〜3nm(30Å)の範囲内であることが好ましく、5Å〜13Åの範囲内とすることがより好ましい。
潤滑剤層4の平均膜厚を上記範囲内にすることにより、潤滑剤層4をアイランド状または網目状に形成することなく、潤滑剤層4を均一の膜厚で形成して、潤滑剤層4による保護層3の表面への被覆率を保持することができる。これにより、磁気記録媒体の耐汚染性を保持することができる。
また、潤滑剤層4の平均膜厚を上記範囲内にすることにより、磁気ヘッドの浮上量を十分小さくして、磁気記録媒体の記録密度を高くすることができる。
また、潤滑剤層4の平均膜厚を30Å超とした場合には、磁気ヘッドの浮上量を十分小さくすることができず、磁気記録媒体の記録密度を向上させることができない。
潤滑剤層は、潤滑剤層形成用溶液を調製した後、前記潤滑剤層形成用溶液を磁気記録媒体上に塗布して形成する。
まず、化合物B1に対する化合物Aの質量比(A/B1)または化合物B2に対する化合物Aの質量比(A/B2)が0.05〜0.3の範囲内となるように化合物Aと化合物B1または化合物B2とを混合して、潤滑剤層形成用溶液(塗布溶液)を調整する。
例えば、ディップ法では、ディップコート装置の潤滑剤浸漬槽に入れた前記潤滑剤層形成用溶液中に、保護層3までの各層を形成した非磁性基板1を浸漬した後、潤滑剤浸漬槽から非磁性基板1を所定の速度で引き上げて非磁性基板1の保護層3上の表面に均一な膜厚の潤滑剤層4を形成する。
次に、本発明の実施形態である磁気記録再生装置の一例について説明する。図2は、本発明の実施形態である磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
本発明の実施形態である磁気記録再生装置101は、本発明の実施形態である磁気記録媒体11と、これを記録方向に駆動する媒体駆動部123と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド124と、磁気ヘッド124を磁気記録媒体11に対して相対運動させるヘッド移動部126、磁気ヘッド124への信号入力と磁気ヘッド124からの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせた記録再生信号処理部128とを具備したものである。これらを組み合わせて、記録密度の高い磁気記録再生装置を構成することができる。
また、磁気ヘッド124の浮上量を0.005μm(5nm)〜0.020μm(20nm)と従来用いられているより低い高さで浮上させると、出力が向上して高いSNRが得られ、大容量で高信頼性の磁気記録再生装置とすることができる。
(実施例1)
まず、非磁性基板として、外径65mm、内径25mm、板厚1.27mmのアモルファスガラス基板(HOYA社製)を用意した。次に、この非磁性基板にテクスチャーを施して、十分に洗浄し乾燥した。次に、上記テクスチャーを施した非磁性基板をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社(日本)製、C3010)のチャンバ内にセットした後、前記チャンバ内の真空到達度が2×10−7Torr(2.7×10−5Pa)となるまで排気した。
まず、化合物AとしてA20H−DD(商品名、松村石油研究所(MORESCO)社製)を、化合物B2としてFomblin Z−TETRAOL(商品名、Solvay Solexis社製)を用い、化合物B2に対する化合物Aの質量比(A/B2)が0.1となるように、化合物Aと化合物B2とを混合して、潤滑剤層形成用溶液を調整した。
なお、潤滑剤層形成用溶液を溶解するための溶媒として、バートレルXF(商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)を用いた。また、潤滑剤層形成用溶液中における潤滑剤(化合物A及び化合物B2)の濃度はいずれも0.3質量%とした。
前記引き上げ速度を制御して、潤滑剤層の平均膜厚を15.5Å(実施例2)、12.5Å(実施例3)、10Å(実施例4)とした他は実施例1と同様にして、実施例2〜4の磁気記録媒体を作製した。
化合物Bに対する化合物Aの質量比(A/B2)を0.2とし、潤滑剤層の平均膜厚を10Åとした他は実施例1と同様にして、実施例5の磁気記録媒体を作製した。
潤滑剤に、A20H−DD(商品名、松村石油研究所(MORESCO)社製)のみを使用し、潤滑剤層の平均膜厚を19.5Å(比較例1)、15.5Å(比較例2)、12.5Å(比較例3)、10Å(比較例4)とした他は実施例1と同様にして、比較例1〜4の磁気記録媒体を作製した。
化合物B2に対する化合物Aの質量比(A/B2)を0(化合物B2のみ)とし、潤滑剤層の平均膜厚を10Åとした他は実施例1と同様にして、比較例5の磁気記録媒体を作製した。
化合物B2に対する化合物Aの質量比(A/B2)を0.5とし、潤滑剤層の平均膜厚を10Åとした他は実施例1と同様にして、比較例6の磁気記録媒体を作製した。
実施例1〜5および比較例1〜6の磁気記録媒体の耐環境性評価を実施した。この耐環境性評価は、高温環境下において環境物質による汚染を調べる評価手法の一つである。
まず、評価対象である磁気記録媒体を、温度85℃、湿度0%の高温環境下で、シロキサン系Siゴムの存在下に48時間保持した。
次に、前記磁気記録媒体の表面に存在するSiの量をtof−SIMS(time of flight−Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析測定して、高温環境下における環境物質であるSiイオンによる汚染の程度を評価した。
潤滑剤層の平均膜厚が同じ値の実施例と比較例とを比較すると、潤滑剤層の平均膜厚が13Åより厚い場合には、ほとんど変わらなかった。具体的には、図3に示すように、実施例1のSi量(任意値)と比較例1のSi量(任意値)はほとんど変わらず、実施例2のSi量(任意値)と比較例2のSi量(任意値)はほとんど変わらなかった。
しかし、潤滑剤層の平均膜厚が13Åより薄い場合には、実施例3のSi量(任意値)が比較例3のSi量(任意値)よりも低く、実施例4のSi量(任意値)が比較例4のSi量(任意値)よりも低かった。
図4に示すように、比較例5および比較例6に対して実施例4および実施例6のSi量(任意値)は低い値を示した。
以上の結果を表1にまとめた。実施例1〜5の磁気記録媒体は、高温環境下で環境物質による汚染の少ないことが明らかになった。
すなわち、ハードディスクドライブに内蔵される磁気記録媒体は高速で回転するため、その表面に塗布された潤滑剤層は遠心力により飛散し徐々にその膜厚が薄くなる(この現象をスピンアウトと呼ぶ場合がある)。これに加え、ハードディスクドライブの内部は高温になるため、潤滑剤が揮発して膜厚が徐々に薄くなる。
よって、ハードディスクドライブの出荷時には潤滑剤層の膜厚を16Åとした場合でも、その使用環境によって潤滑剤層の膜厚は徐々に薄くなり、そして膜厚が13Å以下となった時に、本願発明の磁気記録媒体の耐環境性が顕著に発現することになる。また、本実施例の評価には汚染物質としてSiを用いているが、磁気記録媒体への侵入性が高い金属イオンの場合は、潤滑剤層の膜厚が13Åより厚い場合においても、本願発明の効果が発現する。
2…磁性層。
3…保護層。
4…潤滑剤層。
11…磁気記録媒体。
101…磁気記録再生装置。
123…媒体駆動部。
124…磁気ヘッド。
126…ヘッド移動部。
128…記録再生信号処理部。
Claims (6)
- 非磁性基板上に、少なくとも磁性層と、保護層と、潤滑剤層と、をこの順序で有する磁気記録媒体であって、
前記潤滑剤層が、下記一般式(1)に示す化合物Aと、
下記一般式(2)に示す化合物B1または下記一般式(3)に示す化合物B2と、を含み、
化合物B1に対する化合物Aの質量比(A/B1)または化合物B2に対する化合物Aの質量比(A/B2)が、0.05〜0.3の範囲内であることを特徴とする磁気記録媒体。
- 上記一般式(1)におけるR2が、−(C2F4O)t−(CF2O)u−CH2OH(t、uは整数。)、または、−(C2F4O)t−(CF2O)u―CF2CH2OCH2―CH(OH)CH2OH(t、uは整数。)であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 上記一般式(1)における、xが4であり、R1がCF3であり、R2が−CH(OH)CH2OH末端基を有する置換基であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 上記一般式(2)に示す化合物B1の平均分子量が1000〜8000の範囲内または上記一般式(3)に示す化合物B2の平均分子量が1000〜5000の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記潤滑剤層の平均膜厚が5Å以上13Å以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体を記録方向に駆動する媒体駆動部と、
前記磁気記録媒体に情報の記録再生を行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上に移動するヘッド移動部と、
前記磁気ヘッドからの記録再生信号の処理を行う記録再生信号処理部と、
を具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
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