JP6546106B2 - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体および磁気記録再生装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体および磁気記録再生装置に関する。
磁気記録再生装置の記録密度を向上させるために、高記録密度に適した磁気記録媒体の開発が進められている。
従来から、磁気記録媒体として、非磁性基板上に記録層等を積層した後、記録層上にカーボン等の保護層を形成し、さらに保護層上に潤滑剤層を形成したものがある。保護層は、記録層に記録された情報を保護するとともに、磁気ヘッドの摺動性を高めるものである。しかし、記録層上に保護層を設けただけでは、磁気記録媒体の耐久性は十分に得られない。
このため、一般に、保護層の表面に潤滑剤を塗布して潤滑剤層を形成している。保護層上に潤滑剤層を設けることによって、磁気記録再生装置の磁気ヘッドと保護層とが接触することを防止できるとともに、磁気記録媒体上を摺動する磁気ヘッドの摩擦力を著しく低減させることができ、耐久性が向上される。
磁気記録媒体に使用される潤滑剤としては、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤や脂肪族炭化水素系潤滑剤などが提案されている。
例えば、特許文献1には、HOCH−CFO−(CO)−(CFO)−CHOHの構造をもつパーフロロアルキルポリエーテルの潤滑剤が開示されている。
また、特許文献2には、化学式
HO−CHCH(OH)−CHOCHCFO−(CFCFO)−(CFO)―CFCHOCH―CH(OH)CH−OH
〔式中、m、nは整数、数平均分子量は500〜5000である。〕
で表される含フッ素化合物よりなる潤滑剤が開示されている。
さらに、特許文献3には、−CFO−、−CFCFO−から選ばれたパーフルオロオキシアルキレン単位がランダムに分布した配列よりなり、さらに官能末端基Aを有する、式(1)及び(5)
A−OCHCFO(CFCFO)p(CFO)qCFCHO−A(1)
A−〔OCHCFO(CFCFO)p(CFO)qCFCHOH〕6−z(5)
[式中、Aは、特定の基であり、pおよびqは1〜30の実数、zは1〜5の整数である。]
で表されるホスファゼン化合物を含有する潤滑剤が開示されている。
また、特許文献4には、特定のホスファゼン化合物Aと、一般式(2)
HOCH−CFO−(CO)−(CFO)−CHOH・・・(2)
[式中、pは4〜60の範囲の整数、qは4〜60の範囲の整数である。]
に示す化合物Bまたは一般式(3)
HOCHCH(OH)−CHOCHCFO−(CO)−(CFO)−CFCHOCH−CH(OH)CHOH・・・(3)
[式中、rは4〜36の範囲の整数、sは4〜36の範囲の整数である。]
に示す化合物Bと、を含む潤滑剤が開示されている。このとき、化合物Bに対する化合物Aの質量比(A/B)または化合物Bに対する化合物Aの質量比(A/B)が、0.05〜0.3の範囲内である。
また、特許文献5には、式(1)
−CO−CHCH(OH)CHOCH−R−CH−O−R
(式中、Rは、H、炭素数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、又はアミド基である。Rは、−CFO(CFCFO)(CFO)CF−、または−CFCFO(CFCFCFO)CFCF−、または−CFCFCFO(CFCFCFCFO)CFCFCF−、である。x、yは、それぞれ0〜15の実数である。zは1〜15の実数である。nは0〜4の実数である。Rは、H、−CHCH(OH)CHOH、または−CHCH(OH)CHOCHCH(OH)CHOH、または−(CHOHである。mは2〜6の整数である。)
で表される化合物を含有する潤滑剤が開示されている。
特開昭62−66417号公報 特開平9−282642号公報 特開2002−275484号公報 特開2010−108583号公報 特開2013−163667号公報
ここで、磁気記録再生装置の磁気ヘッドの浮上量をより小さくして記録密度を向上させるため、潤滑剤層をより一層薄くすることが求められている。
しかしながら、潤滑剤層を薄くすると、潤滑剤層に隙間が形成されて潤滑剤層による磁気記録媒体の表面の被覆率が低下し、潤滑剤層の下層の一部が露出される場合があった。そして、潤滑剤層に隙間が形成されると、潤滑剤層の隙間から、潤滑剤層の下層に汚染物質を生成させる環境物質として、磁気記録再生装置の密閉用のゴムシールとして使われるシロキサン系シリコーンゴムからのアウトガスが侵入して、磁気記録媒体の表面が汚染されてしまう(例えば、特許文献4参照)。
本発明の一態様は、上記事情を鑑みてなされたものであり、潤滑剤層を薄くしても、磁気記録媒体の表面の汚染を効果的に防止することが可能な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
[1]非磁性基板上に、磁性層と保護層と潤滑剤層とが順次積層されており、前記保護層は、炭素または水素化炭素を含み、前記潤滑剤層は、前記保護層に接しており、前記保護層は、前記潤滑剤層との界面にNを含み、前記潤滑剤層は、一般式
−COCHCH(OH)CHOCH−R−CHOCHCH(OH)CHOC−R・・・(1)
(式中、Rは、メトキシ基であり、Rは、一般式
−CFO(CFCFO)(CFO)CF
(式中、x、yは、それぞれの整数である。)
で表される基である。)
で表される化合物Aと、一般式
HOCHCFCFO(CFCFCFO)CFCFCHOCHCH(OH)CHOH・・・(2)
(式中、mは整数である。)
で表される化合物Bとを含み、前記化合物Aおよび前記化合物Bの総質量に対する前記化合物Aの質量の比が0.05〜0.9の範囲内であり、前記化合物Bは、平均分子量が1000〜4000の範囲内であり、前記潤滑剤層は、平均厚みが0.5nm〜2nmの範囲内であることを特徴とする磁気記録媒体。
[2]前記化合物Aは、平均分子量が1000〜2500の範囲内であることを特徴とする[1]に記載の磁気記録媒体。
]前記保護層は、前記潤滑剤層との界面におけるNの含有量が50原子%〜90原子%の範囲内であることを特徴とする[1]または[2]に記載の磁気記録媒体。
][1]〜[]のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、磁気ヘッドと、を具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
本発明の一態様によれば、潤滑剤層を薄くしても、磁気記録媒体の表面の汚染を効果的に防止することが可能な磁気記録媒体を提供することができる。
本実施形態の磁気記録媒体の一例を示す断面模式図である。 本実施形態の磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(磁気記録媒体)
まず、本発明の実施形態である磁気記録媒体について説明する。
図1に、本実施形態の磁気記録媒体の一例を示す。
図1に示すように、磁気記録媒体11は、非磁性基板1上に、磁性層2と保護層3と潤滑剤層4とが順次積層されたものである。
なお、本実施形態においては、非磁性基板1と磁性層2との間に、密着層と軟磁性下地層とシード層と配向制御層とが順次積層されている場合を例に挙げて説明する。密着層、軟磁性下地層、シード層、配向制御層は、必要に応じて設けられるものであり、これらのうちの一部または全部は設けられていなくてもよい。
(非磁性基板)
非磁性基板1としては、AlまたはAl合金などの金属材料または合金材料からなる基体上に、NiP膜またはNiP合金膜が形成された基板などを用いることができる。
また、非磁性基板1としては、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコンカーバイド、カーボン、樹脂などの非金属材料からなる基板を用いてもよいし、この非金属材料からなる基体上にNiP膜またはNiP合金膜を形成した基板を用いてもよい。
(密着層)
密着層は、非磁性基板1と軟磁性下地層とを接して配置した場合における非磁性基板1の腐食の進行を防止するものである。
密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金などを適宜選択することができる。
密着層の厚みは、密着層を設けることによる効果が十分に得られるように、2nm以上であることが好ましい。
密着層は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。
(軟磁性下地層)
軟磁性下地層は、第1軟磁性層と、Ru膜(中間層)と、第2軟磁性層とが順次積層された構造を有していることが好ましい。すなわち、軟磁性下地層は、2層の軟磁性層の間に中間層を挟み込むことによって、中間層の上下の軟磁性層がアンチ・フェロ・カップリング(AFC)した構造を有していることが好ましい。軟磁性下地層がAFCした構造を有していることにより、外部からの磁界に対する耐性、並びに垂直磁気記録特有の問題であるWATE(Wide Area Tack Erasure)現象に対する耐性を高めることができる。
軟磁性下地層の厚みは、15〜80nmの範囲であることが好ましく、20〜50nmの範囲であることが更に好ましい。軟磁性下地層の厚みを15nm以上とすることで、磁気ヘッドからの磁束を十分に吸収することができ、書き込みが十分となり、記録再生特性を向上させることができる。一方、軟磁性下地層の厚みを80nm以下とすることで、生産性を向上させることができる。
第1軟磁性層および第2軟磁性層は、CoFe合金膜であることが好ましい。第1軟磁性層および第2軟磁性層がCoFe合金膜である場合、高い飽和磁束密度Bs(1.4(T)以上)を実現することができる。
また、第1軟磁性層および第2軟磁性層に使用されるCoFe合金には、Zr、Ta、Nbのいずれかを添加することが好ましい。これにより、第1軟磁性層および第2軟磁性層の非晶質化が促進され、シード層の配向性を向上させることが可能になるとともに、磁気ヘッドの浮上量を低減することが可能となる。
軟磁性下地層は、スパッタリング法により形成することができる。
(シード層)
シード層は、その上に設けられる配向制御層および磁性層2の配向や結晶サイズを制御するためのものであり、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするとともに、磁性層2の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。
シード層は、NiW合金膜であることが好ましい。NiW合金膜に、必要に応じて、B、Mn、Ru、Pt、Mo、Taなどの他の元素を添加してもよい。
シード層の厚みは、2〜20nmの範囲であることが好ましい。シード層の厚みを2nm以上とすることで、シード層を設けたことによる効果が十分に得られる。一方、シード層の厚みを20nm以下とすることで、結晶サイズが小さくなる。
シード層は、スパッタリング法により形成することができる。
(配向制御層)
配向制御層は、磁性層2の配向が良好なものとなるように制御するものである。
配向制御層は、Ru膜又はRu合金膜であることが好ましい。
配向制御層の厚みは、5〜30nmの範囲であることが好ましい。配向制御層の厚みを30nm以下とすることで、磁気ヘッドと軟磁性下地層との間の距離が小さいものとなり、磁気ヘッドからの磁束を急峻にすることができる。また、配向制御層の厚みを5nm以上とすることで、磁性層2の配向を良好に制御できる。
配向制御層は、1層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。配向制御層が複数層からなるものである場合、全ての配向制御層が同じ材料からなるものであってもよいし、少なくとも一部が異なる材料からなるものであってもよい。
配向制御層は、スパッタリング法により形成することができる。
(磁性層)
磁性層2は、磁化容易軸が基板面に対して垂直方向に向いている。
磁性層2は、CoとPtを含むものであり、更にSNR特性を改善するために、酸化物や、Cr、B、Cu、Ta、Zrなどを含むものであってもよい。
磁性層2に含有される酸化物としては、SiO、SiO、Cr、CoO、Ta、TiOなどが挙げられる。
磁性層2は、1層からなるものであってもよいし、組成の異なる材料からなる複数層からなるものであってもよい。
例えば、磁性層2が第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層の3層からなる場合、第1磁性層は、Co、Cr、Ptを含み、さらに酸化物を含むグラニュラー構造であることが好ましい。第1磁性層に含有される酸化物としては、例えば、Cr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも、特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。また、第1磁性層は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物膜であることが好ましい。その中でも、特に、Cr−SiO膜、Cr−TiO膜、SiO−TiO膜などを好適に用いることができる。
第1磁性層は、Co、Cr、Pt、酸化物の他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。第1磁性層が上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
第2磁性層には、第1磁性層と同様の材料を用いることができる。
第2磁性層は、グラニュラー構造であることが好ましい。
また、第3磁性層は、Co、Cr、Ptを含み、酸化物を含まない非グラニュラー構造であることが好ましい。
第3磁性層は、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。第3磁性層がCo、Cr、Ptの他に上記元素を含むものであることにより、磁性粒子の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性を得ることができる。
磁性層2の厚みは、5〜25nmとすることが好ましい。磁性層2の厚みを5nm以上とすることで、十分な再生出力が得られ、熱揺らぎ特性も向上する。また、磁性層2の厚みを25nm以下とすることで、磁性層2中の磁性粒子の肥大化を抑制することができ、記録再生時におけるノイズが減少し、信号/ノイズ比(S/N比)や記録特性(OW)に代表される記録再生特性を向上させることができる。
また、磁性層2が複数層からなるものである場合、隣接する磁性層の間には、非磁性層を設けることが好ましい。磁性層2が第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層の3層からなる場合、第1磁性層と第2磁性層との間と、第2磁性層と第3磁性層との間に、非磁性層を設けることが好ましい。
磁性層間に非磁性層を適度な厚みで設けることで、個々の磁性層の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができ、S/N比をより向上させることができる。
磁性層の間に設けられる非磁性層は、例えば、Ru、Ru合金、CoCr合金、CoCrX1合金(X1は、Pt、Ta、Zr、Re,Ru、Cu、Nb、Ni、Mn、Ge、Si、O、N、W、Mo、Ti、V、Zr、Bの中から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表す。)などを好適に用いることができる。
また、磁性層の間に設けられる非磁性層としては、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含む合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiOなど、金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrNなど、金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiCなどをそれぞれ用いることができる。
磁性層の間に設けられる非磁性層の厚みは、0.1〜1nmとすることが好ましい。非磁性層の厚みを上記の範囲とすることで、S/N比をより向上させることができる。
非磁性層は、スパッタリング法により形成することができる。
また、磁性層2は、より高い記録密度を実現するために、磁化容易軸が基板面に対して垂直方向を向いた垂直磁気記録の磁性層であることが好ましいが、面内磁気記録の磁性層であってもよい。
磁性層2は、蒸着法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法など従来の公知のいかなる方法によって形成してもよいが、通常、スパッタリング法により形成される。
(保護層、潤滑剤層)
保護層3は、記録層2を保護するものである。保護層3は、一層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。保護層3は、炭素または水素化炭素を含むものであり、炭素を含むものであることが好ましい。
本実施形態では、保護層3に接して潤滑剤層4を設け、潤滑剤層4との界面における保護層3にNを含有させる。
保護層3の潤滑剤層4との界面におけるNの含有量は、50原子%〜90原子%の範囲内とすることが好ましい。このような構成とすることで、保護層3と潤滑剤層4とが高い結合力で結合されたものとなり、その結果、潤滑剤層4の厚みが薄くても高い被覆率で保護層3の表面が被覆された磁気記録媒体11となり、磁気記録媒体11の表面の汚染を効果的に防止することができる。
すなわち、潤滑剤層4は、一般式(1)で表される化合物Aと、一般式(2)で表される化合物Bとを含むが、本願の発明者の検討によると、化合物Aに含まれる六員環は、炭素原子と強固に結合し、化合物Bに含まれる水酸基は、Nと強固に結合することが明らかになった。よって、保護層3の潤滑剤層4との界面におけるNの含有量を上記特定の範囲内とすることで、特に、保護層3と潤滑剤層4とを高い結合力で結合され、もって潤滑剤層4の厚みを薄くしても高い被覆率で保護層3の表面を被覆することが可能となる。
保護層3の厚みは、1nm〜10nmの範囲内とすることが好ましい。保護層3の厚みを1nm以上とすることで、記録層2を保護する効果が十分となる。また、保護層3の厚みを10nm以下とすることで、磁気記録媒体11を備える磁気記録再生装置における磁気的スペーシングを十分に低減することができ、さらなる記録密度の向上に対応しうるものになるとともに、耐久性を向上させることができる。
なお、磁気的スペーシングとは、磁気ヘッドと磁性層4との間の距離のことを意味する。磁気的スペーシングを狭くする程、磁気記録再生装置の電磁変換特性を向上させることができる。
保護層3の成膜方法としては、カーボンターゲット材を用いるスパッタ法や、エチレンやトルエンなどの炭化水素原料を用いるCVD(化学蒸着法)法,IBD(イオンビーム蒸着)法などを用いることができる。
本実施形態で、保護層3にNを含有させる方法としては、公知の方法を用いることができるが、成膜時の炭素原料にNを含有させる方法、保護層3に窒素イオンを注入する方法を用いるのが好ましい。特に、保護層3の潤滑剤層4との界面のみを窒化させる方法としては、保護層3を炭素または水素化炭素で形成した後、その表面のみに窒素イオンを注入する方法や、保護層3の表面を窒素プラズマに暴露して窒化する方法を採用することが好ましい。
前述の方法においては、炭素原料に含有させるNの濃度、窒素イオンの注入量、窒素プラズマへの暴露時間、窒素プラズマ密度を制御することによって、保護層3の潤滑剤層4との界面におけるNの含有量を制御することができる。
潤滑剤層4は、図1に示すように、保護層3上に接して形成されたものであって、一般式(1)で表される化合物Aと、一般式(2)で表される化合物Bとを含む。
(化合物A)
一般式(1)において、Rの一般式
−CFO(CFCFO)(CFO)CF
で表される基のx、yの括弧内の構成単位は、この順に結合していてもよいし、逆の順に結合していてもよいし、ランダムに結合していてもよい。
化合物Aの平均分子量は、1000〜2500の範囲内であり、1300〜2100の範囲内であることが好ましい。化合物Aの平均分子量を1000以上とすることで、沸点を高め、潤滑剤層4としての安定性を高めることができる。また、化合物Aの平均分子量を2500以下とすることで、粘性を下げ、保護層3の表面への塗布性を高めることができる。
化合物Aの市販品としては、例えば、ART−2(s)(MORESCO社製)が挙げられる。ART−2(s)は、一般式(1)において、Rがメトキシ基、x、yがそれぞれ3〜7の範囲内である。
なお、平均分子量は、質量分析計で測定することができる。
(化合物B)
化合物Bの平均分子量は、1000〜4000の範囲内であり、1300〜2500の範囲内であることが好ましい。化合物Bの平均分子量を1000以上とすることで、沸点を高め、潤滑剤層4としての安定性を高めることができる。また、化合物Bの平均分子量を4000以下とすることで、粘性を下げ、保護層3の表面への塗布性を高めることができる。
化合物Bの市販品としては、例えば、D3OH(s)(MORESCO社製)が挙げられる。D3OH(s)は、一般式(2)において、平均分子量が1000〜4000の範囲内となるように、mが調整されている。
(質量比(A/(A+B)))
化合物Aおよび化合物Bの総質量に対する化合物Aの質量の比(以下、質量比(A/(A+B))という)は、0.05〜0.9の範囲内であり、0.1〜0.8の範囲内であることが好ましい。質量比(A/(A+B))が0.05未満であると、化合物Aが不足して、潤滑剤層4がアイランド状となりやすくなり、保護層3の被覆率が不十分になり、磁気記録媒体11の表面の汚染を効果的に防止することができない。また、質量比(A/(A+B))が0.9を超えると、化合物Bが不足して、潤滑剤層4が網目状となりやすくなり、保護層3の被覆率が不十分になり、磁気記録媒体11の表面の汚染を効果的に防止することができない。また、質量比(A/(A+B))を0.1〜0.8の範囲内とした場合、保護層3と潤滑剤層4との結合力がさらに高いものとなるため、汚染物質を生成させる環境物質が潤滑剤層4の隙間から侵入することをより効果的に防止することができる。
(潤滑剤層の平均厚み)
潤滑剤層4の平均厚みは、0.5nm(5Å)〜2nm(20Å)の範囲内であり、1nm〜1.9nmの範囲内であることが好ましい。潤滑剤層4の平均厚みが0.5nm未満であると、潤滑剤層4がアイランド状または網目状となり、保護層3の表面を高い被覆率で被覆することができず、磁気記録媒体11の表面の汚染を効果的に防止することができない。また、潤滑剤層4の平均厚みが2nmを超えると、磁気ヘッドの浮上量を十分小さくすることができず、磁気記録媒体11の記録密度を高くすることができない。
なお、化合物Aのみを用いて形成した平均厚みが2nm以下の潤滑剤層は、化合物Aが大きな環状骨格の分子構造を有するものであるため、網目状となり、保護層3の表面を十分に高い被覆率で被覆することができない。
また、化合物Bのみを用いて形成した平均厚みが2nm以下の潤滑剤層は、保護層3との結合力(濡れ性)が不十分であるため、アイランド状となり、保護層3の表面を十分に高い被覆率で被覆することはできない。
保護層3の表面が潤滑剤層4によって十分に高い被覆率で被覆されていない場合、磁気記録媒体11の表面に吸着したイオン性不純物などの汚染物質を生成させる環境物質を含む水が、潤滑剤層4の隙間を通り抜けて、潤滑剤層4の下層に侵入する。潤滑剤層の下層に侵入した環境物質は、潤滑剤層4の下層に存在する微少なイオン成分を凝集させてイオン性の汚染物質が生成する。そして、磁気記録媒体に情報を記録する際、又は、磁気記録媒体に記録されている情報を再生する際に、イオン性の汚染物質が磁気ヘッドに付着して、磁気ヘッドを破損したり、磁気記録再生装置の磁気記録再生特性を低下させたりする。
潤滑剤層4の隙間からの環境物質の侵入に起因する問題は、磁気記録媒体11を高温条件下に保持した場合、より顕著に現れる。
(潤滑剤層の形成方法)
潤滑剤層4は、例えば、非磁性基板1上に保護層3までの各層の形成された製造途中の磁気記録媒体を用意し、製造途中の磁気記録媒体の保護層3上に潤滑剤層形成用塗布液を塗布することにより形成する。
潤滑剤層形成用塗布液は、質量比(A/(A+B))が0.05〜0.9の範囲内となるように、化合物Aと化合物Bとを混合し、溶媒で希釈して塗布方法に適した粘度および濃度とすることにより得られる。
潤滑剤層形成用塗布液に用いられる溶媒としては、例えば、バートレルXF(三井デュポンフロロケミカル社製)等のフッ素系溶媒などが挙げられる。
潤滑剤層形成用塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ディップ法などが挙げられる。
ディップ法を用いる場合、例えば、ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑剤層形成用塗布液中に、保護層3までの各層が形成された非磁性基板1を浸漬し、その後、浸漬槽から非磁性基板1を所定の速度で引き上げることにより、潤滑剤層形成用塗布液を非磁性基板1の保護層3上の表面に塗布する方法を用いることができる。ディップ法を用いることで、潤滑剤層形成用塗布液を非磁性基板1の保護層3上の表面に均一に塗布することができ、保護層3上に均一な厚みの潤滑剤層4を形成することができる。
(磁気記録再生装置)
次に、本発明の実施形態である磁気記録再生装置について説明する。
図2に、本実施形態の磁気記録再生装置の一例を示す。
磁気記録再生装置101は、図1に示す磁気記録媒体11と、磁気記録媒体11を記録方向に駆動する媒体駆動部123と、磁気記録媒体11に情報を記録する記録部と、磁気記録媒体11に記録されている情報を再生する再生部からなる磁気ヘッド124と、磁気ヘッド124を磁気記録媒体11に対して相対運動させるヘッド移動部126と、入力された情報を処理して記録信号を記録部に送信し、再生部から受信した再生信号を処理して情報を出力する記録再生信号処理部128とを具備したものである。
磁気ヘッド124の素子部(再生部)をGMRヘッドあるいはTMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記録再生装置を実現することができる。
磁気記録再生装置101は、磁気記録媒体上に存在する汚染物質が少ない磁気記録媒体11を具備しているので、磁気記録媒体11上に存在する汚染物質が、磁気記録再生装置101の磁気ヘッド124に転写されて、記録再生特性が低下したり、浮上安定性が損なわれたりすることが防止されたものとなる。したがって、磁気記録再生装置101は、安定した記録再生特性を有するものとなる。
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜14、比較例1〜7)
洗浄済みの外径が2.5インチのガラス基板(HOYA社製)を、DCマグネトロンスパッタ装置C−3040(アネルバ社製)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度(1×10−5Pa)となるまで成膜チャンバ内を排気した。
その後、このガラス基板の上に、スパッタリング法により、Crターゲットを用いて、厚みが10nmの密着層を成膜した。
次いで、スパッタリング法により、密着層の上に、軟磁性下地層として、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20原子%、Zr含有量5原子%、Ta含有量5原子%、残部Co}ターゲットを用いて、100℃以下の基板温度で、厚みが25nmの第1軟磁性層を成膜した。さらに、その上に、厚みが0.7nmのRu膜(中間層)と、厚みが25nmのCo−20Fe−5Zr−5Ta膜(第2軟磁性層)とを成膜した。
次に、軟磁性下地層の上に、スパッタリング法により、Ni−6W{W含有量6原子%、残部Ni}ターゲットを用いて、厚みが5nmのシード層を成膜した。
その後、シード層の上に、スパッタリング法により、第1の配向制御層として、スパッタ圧力を0.8Paとして、厚みが10nmのRu層を成膜した。次に、第1の配向制御層上に、スパッタリング法により、第2の配向制御層として、スパッタ圧力を1.5Paとして、厚みが10nmのRu層を成膜した。
続いて、第2の配向制御層の上に、スパッタリング法により、91(Co−15Cr−16Pt)−6(SiO)−3(TiO){(Cr含有量15原子%、Pt含有量16原子%、残部Coの合金)91mol%、SiO6mol%、TiO3mol%}膜(第1磁性層)を、スパッタ圧力を2Paとして、厚みが9nmになるように成膜した。
次に、第1磁性層の上に、スパッタリング法により、88(Co−30Cr)−12(TiO){(Cr含有量30原子%、残部Coの合金)88mol%、TiO12mol%}膜(非磁性層)を厚みが0.3nmになるように成膜した。
その後、非磁性層の上に、スパッタリング法により、92(Co−11Cr−18Pt)−5(SiO)−3(TiO){(Cr含有量11原子%、Pt含有量18原子%、残部Coの合金)92mol%、SiO5mol%、TiO3mol%}膜(第2磁性層)を、スパッタ圧力を2Paとして、厚みが6nmになるように成膜した。
その後、第2磁性層の上に、スパッタリング法により、Ru膜(非磁性層)を厚みが0.3nmになるように成膜した。
次いで、非磁性層の上に、スパッタリング法により、Co−20Cr−14Pt−3B{Cr含有量20原子%、Pt含有量14原子%、B含有量3原子%、残部Co}ターゲットを用いて、スパッタ圧力を0.6Paとして、第3磁性層を厚みが7nmになるように成膜した。
次いで、磁性層の表面に、イオンビーム蒸着法を用いて、水素化炭素膜を形成した。水素化炭素膜を成膜する際の原料ガスとして、ガス化したトルエンを用いた。成膜条件として、まず、成膜室に供給する原料ガスのガス流量を2.9SCCM、反応圧力を0.2Paとした。さらに、原料ガスの励起源であるカソード電力を225W(AC22.5V、10A)とした。そして、カソード電極と、それを覆うアノード電極の間の電圧を75V、電流を1650mA、イオンの加速電圧を200V、180mA、成膜時間を1.5秒とし、厚みが3.5nmになるように水素化炭素膜を成膜した。
水素化炭素膜を形成した後、原料ガスの供給を停止し、成膜室内を2秒間排気した。次いで、窒素ガスをガス流量2SCCM、反応圧力を5Paとし、成膜室内に供給した。そして、カソード電力を128W(AC16V、8A)とした。また、カソード電極とアノード電極の間の電圧を75V、電流を1000mA、イオンの加速電圧を200V、90mA、処理時間を1秒として、窒素ガスから形成した窒素イオンを、水素化炭素膜の表面に照射した。これにより、水素化炭素膜の表面を脱水素化、窒化処理し、保護層とした。
保護層の最表面(保護層の潤滑剤層との界面)の組成を二次イオン質量分析法(SIMS)で測定したところ、Nが80原子%、Cが20原子%であった(実施例1)。
なお、実施例2〜11、比較例1〜10においては、水素化炭素膜の表面を脱水素化、窒化処理する時間を調整することにより、保護層の最表面の組成を表1に示すように変化させた。
次に、以下に示すように、潤滑剤層形成用塗布液を調製した。
化合物Aとしては、平均分子量が1700のART−2(s)(MORESCO社製)を用い、化合物Bとしては、平均分子量が1700のD3OH(s)(MORESCO社製)を用いた(実施例1〜14、比較例7)。
その他に、表1に示すように、A2OH−2000(MORESCO社製)(表1においては、「A2OH」と略記する)、または、ADOH−2000(MORESCO社製)(表1においては「ADOH」と略記する)を用いた。A2OH、ADOHは、いずれも化合物Aには相当しないが、表1では、便宜的に化合物Aとして記載している。
A2OH−2000は、一般式
Figure 0006546106
において、xが5であり、RがCFであり、Rが、化学式
−OCHCFO(CFCFO)11(CFO)10CFCHOH
で表される基である化合物である。
また、ADOH−2000は、一般式(3)において、xが5であり、RがCFであり、Rが、化学式
−OCHCFO(CFCFO)11(CFO)10CFCHOCHCH(OH)CHOH
で表される基である化合物である。
そして、質量比(A/(A+B))を表1に示すように調整して、潤滑剤層形成用塗布液とした。
なお、実施例1〜14および比較例1〜7の潤滑剤層形成用塗布液の溶媒としては、いずれもバートレルXF(三井デュポンフロロケミカル社製)を用いた。また、実施例1〜14および比較例1〜7の潤滑剤層形成用塗布液中における潤滑剤の濃度は、いずれも0.3質量%とした。
次に、ディップ法を用いて、以下に示す方法により、実施例1〜14および比較例1〜7の潤滑剤層形成用塗布液を、非磁性基板の保護層上にそれぞれ塗布した。
すなわち、ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑剤層形成用塗布液中に、保護層までの各層が形成された非磁性基板を浸漬し、その後、浸漬槽から非磁性基板を一定の速度で引き上げることにより、潤滑剤層形成用塗布液を非磁性基板の保護層上の表面に塗布した。潤滑剤層の平均厚みは、全て1.3nmとした。
その後、潤滑剤層形成用塗布液の塗布された表面を乾燥させることにより、潤滑剤層を形成し、実施例1〜14、比較例1〜7の磁気記録媒体を得た。
(磁気記録媒体の耐環境性)
実施例1〜14および比較例1〜7の磁気記録媒体の耐環境性を以下に示す方法により評価した。以下に示す耐環境性の評価方法は、高温環境下において、汚染物質を生成させる環境物質による磁気記録媒体の汚染を評価する手法の一つである。以下に示す耐環境性の評価では、高温環境下における汚染物質を生成させる環境物質として、Siイオンを用い、環境物質によって生成された磁気記録媒体を汚染する汚染物質の量として、Si吸着量を測定した。
具体的には、まず、評価対象である磁気記録媒体を、温度85℃、湿度0%の高温環境下で、シロキサン系シリコーンゴムの存在下に240時間保持した。
次に、磁気記録媒体の表面に存在するSi吸着量をSIMSを用いて分析測定して、高温環境下における環境物質であるSiイオンによる汚染の程度をSi吸着量として評価した。
なお、Si吸着量の評価は、比較例1の結果を1.00としたときの数値を用いて評価した。
表1に、磁気記録媒体の耐環境性の評価結果を示す。
Figure 0006546106
表1より、実施例1〜14の磁気記録媒体は、Si吸着量が少なく、高温環境下において、表面の汚染を効果的に防止できることが明らかになった。
これに対して、比較例1、2の磁気記録媒体は、化合物Aの代わりに、A2OH又はADOHを含み、化合物Bを含まない潤滑剤層が形成されているため、Si吸着量が多くなる。
比較例3、4の磁気記録媒体は、化合物A又は化合物Bのみを含む潤滑剤層が形成されているため、Si吸着量が多くなる。
比較例5、6の磁気記録媒体は、化合物Aの代わりに、A2OH又はADOHを含む潤滑剤層が形成されているため、Si吸着量が多くなる。
比較例7の磁気記録媒体は、保護層の表面にNを含まないため、Si吸着量が多くなる。
1 非磁性基板
2 磁性層
3 保護層
4 潤滑剤層
11 磁気記録媒体
101 磁気記録再生装置
123 媒体駆動部
124 磁気ヘッド
126 ヘッド移動部
128 記録再生信号処理部

Claims (4)

  1. 非磁性基板上に、磁性層と保護層と潤滑剤層とが順次積層されており、
    前記保護層は、炭素または水素化炭素を含み、
    前記潤滑剤層は、前記保護層に接しており、
    前記保護層は、前記潤滑剤層との界面にNを含み、
    前記潤滑剤層は、一般式
    −COCHCH(OH)CHOCH−R−CHOCHCH(OH)CHOC−R・・・(1)
    (式中、Rは、メトキシ基であり、Rは、一般式
    −CFO(CFCFO)(CFO)CF
    (式中、x、yは、それぞれの整数である。)
    で表される基である。)
    で表される化合物Aと、一般式
    HOCHCFCFO(CFCFCFO)CFCFCHOCHCH(OH)CHOH・・・(2)
    (式中、mは整数である。)
    で表される化合物Bとを含み、
    前記化合物Aおよび前記化合物Bの総質量に対する前記化合物Aの質量の比が0.05〜0.9の範囲内であり、
    前記化合物Bは、平均分子量が1000〜4000の範囲内であり、
    前記潤滑剤層は、平均厚みが0.5nm〜2nmの範囲内であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記化合物Aは、平均分子量が1000〜2500の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記保護層は、前記潤滑剤層との界面におけるNの含有量が50原子%〜90原子%の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、磁気ヘッドと、を具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
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