JPH10143836A - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体およびその製造方法

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JPH10143836A
JPH10143836A JP29259096A JP29259096A JPH10143836A JP H10143836 A JPH10143836 A JP H10143836A JP 29259096 A JP29259096 A JP 29259096A JP 29259096 A JP29259096 A JP 29259096A JP H10143836 A JPH10143836 A JP H10143836A
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recording medium
magnetic recording
layer
film
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JP29259096A
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Takeshi Matsuo
武士 松尾
Kazuhiko Sawada
和彦 澤田
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保護膜の強度を高く維持した上で、通常の使
用条件下のみならず、高温高湿度条件下においても優れ
たCSS耐久性を示す磁気記録媒体の提供。 【解決手段】 非磁性基板上に少なくとも強磁性金属薄
膜、保護膜、潤滑層が順次に形成されてなる磁性記録媒
体において、保護膜は、窒素を含有するカーボン膜であ
って、該保護膜中の窒素濃度が保護膜の厚さ方向に異な
り、基板側の層の窒素濃度よりも表面側の層の窒素濃度
が高く、かつ、該潤滑層は、パーフルオロポリエーテル
潤滑剤、及びこれに対して、重量比0.01〜1.0の
ポリフェノキシ−シクロトリフォスファゼン潤滑剤を含
有することを特徴とする磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体に係わり、
特に、通常の使用条件のみならず、高温高湿度条件下に
おいても優れた耐久性を示す薄膜磁気記録媒体に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】情報産業等で利用される高記録密度の磁
気記録媒体の代表的な例である薄膜型磁気記録媒体は、
通常、磁性金属またはその合金をメッキ、蒸着またはス
パッタリング法等によって非磁性基板上に披着して製造
される。実際の使用時においては磁気ヘッドと磁気記録
媒体とが高速で接触摺動するので、摩耗損傷を受けた
り、磁気特性の劣化を起こしたりする。
【0003】このような減少を緩和する方法として、磁
性層上に保護膜や潤滑層を設けることによって接触摺動
の際の静/動摩擦を極力低減させ、耐摩耗性を向上させ
ることが提案されている。
【0004】従来、保護膜としては、カーボン膜、水素
化カーボン膜等の炭素質膜、酸化物膜、窒化物膜及びホ
ウ化物膜等が利用されている。潤滑層としては、一般的
には、例えば液体潤滑剤であるパーフルオロポリエーテ
ル化合物が磁気ディスク表面に塗布され用いられてい
る。また、特表平6−504643号には、シクロフォ
スファゼン潤滑剤、特開平8−83423号にはパーフ
ルオロエーテル油及びシクロフォスファゼン潤滑剤を含
有する潤滑剤を使用した磁気記録媒体が記載されている
が、いずれも低浮上量ヘッドに対する耐久性の改良にお
いては十分ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】磁気記録媒体の実使用
時において、ディスク媒体は停止状態から急速に回転加
速され、これに伴い、浮上ヘッドスライダに浮力が与え
られてヘッドは浮上する。使用後に電源が切断される
と、ディスク媒体を回転させているモータが停止し、ヘ
ッドと媒体とが物理的に接触を起こす。このような動作
を繰り返し起こさせて耐久性を調べる試験をコンタクト
・スタート・ストップテスト(以下「CSSテスト」と
略す。)と呼ぶ。このCSSテストにおいて、従来の磁
気記録媒体では、CSSの回数を重ねるにつれて摩擦係
数が増加し、摩耗により媒体の表面に損傷を与えたり、
なんらかの原因でヘッドスライダに浮力が働かず、高速
回転中でも摺動し、ヘッド及び媒体が破壊するヘッドク
ラッシュという現象を生ずるという問題がある。
【0006】また、最近では、高温高湿状態でCSSテ
ストを行い、その特性を評価することが行われている。
一般に、高温高湿状態のCSSは、通常の室温、常湿環
境でのCSSよりもヘッドや媒体に対する負荷が大き
く、例えば、ヘッドがディスク媒体にはりつく、いわゆ
る吸着状態が発生したり、摩耗の発生が通常の環境より
早いCSS回数で生じたりする。高温多湿環境での摩耗
を抑えるために潤滑膜を厚くすることが考えられるが、
この場合には、ヘッドとディクス媒体との間にメニスカ
スが形成され、吸着が発生しやすくなるという不具合が
ある。
【0007】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたものであり、通常の使用条件下のみならず、高温
高湿度条件下においても、摩擦係数の大幅な増加を防
ぎ、使用環境にかかわらず長年月の使用に耐える磁気記
録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者が鋭意検討した
結果、特定の保護膜と特定の潤滑剤を用いることによ
り、上述の目的を達成しうることを見いだし本発明に到
達した。すなわち、本発明の要旨は、非磁性基板上に強
磁性金属薄膜が形成されると共に、該強磁性金属薄膜上
に保護膜が形成されてなる磁性記録媒体において、該保
護膜は、窒素を含有するカーボン膜であり、かつ、該保
護膜中の窒素濃度が保護膜の厚さ方向に異なり、基板側
の層の窒素濃度よりも表面側の層の窒素濃度が高いこと
を特徴とし、かつ該潤滑層においてパーフルオロポリエ
ーテル潤滑剤に加えて、重量比0.01から1.0の間
の比率でポリフェノキシ−シクロトリフォスファゼン潤
滑剤が含まれる事を特徴とする磁気記録媒体に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、本発明の第一の特徴である
保護膜について説明する。現在、保護膜として一般に使
用されるのは、純粋なカーボン膜または水素化カーボン
膜である。この膜は、通常の環境下でのCSS耐久性に
は優れているが、高温高湿下では、その原因は不明であ
るが性能が落ちる。しかし、カーボン中に窒素を含有さ
せる、或いは、水素化カーボン中に窒素を含有させる
と、高温高湿下でのCSS耐久性が向上する。この原因
の詳細は明らかではないが、保護膜表面の窒素と潤滑層
との相互作用が強まることによるものと推定される。
【0010】しかしながら、保護膜の全膜厚に均等に窒
素を混合させた場合、CSS耐久性の向上に最も効果の
ある窒素濃度の範囲では、膜全体の強度が不足する。こ
れは窒素の濃度を増すに従って、膜の弾性率が低下する
ためと推定される。このため、かえってCSS耐久性が
低下する結果となる。
【0011】本発明においては、窒素化保護膜のCSS
耐久性を最も効率的に発揮させるべく、保護膜の表面側
の層のみに窒素を、そのCSS耐久性の向上に有効な範
囲内で存在させ、保護膜の基板側の層では、膜強度の低
下を引き起こす窒素濃度を少なく或いはゼロとする。こ
れにより、保護膜の強度を高く維持した上で、通常の使
用条件下のみならず、高温高湿度条件下においても優れ
たCSS耐久性を示す磁気記録媒体が提供される。
【0012】本発明の磁気記録媒体においては、CSS
耐久性の面から、保護膜の表面側の層の窒素濃度が4〜
30原子%であり、基板側の層の窒素濃度が0〜4原子
%であることが好ましい。また、膜特性の面から保護膜
の表面側の層の酸素濃度が5原子%以下であることが好
ましい。
【0013】本発明において、カーボン質保護膜中に窒
素を混入させる方法としては、保護膜をスパッタリング
により形成するに当り、スパッタガス(通常はArのよ
うな不活性ガスを用いる。)中に窒素ガス、一酸化窒素
ガス、二酸化窒素ガス、アンモニアガス等の窒素含有ガ
スを導入する方法、或いは、空気のような窒素ガス含有
の混合ガスを導入する方法が挙げられる。また、予め窒
素を含有させたカーボンターゲットを用いることもでき
る。これらのうち安価で毒性がなく、可燃性もない窒素
ガスを用いる方法が工業上有利である。
【0014】なお、窒素化カーボン膜の形成に当って
は、スパッタガス中に水素ガスや炭化水素ガスを同時に
混入させることにより、水素化かつ窒素化したカーボン
膜を形成することもできる。また、窒素ガス含有の混合
ガスとして空気を用いることで、窒素化かつ酸化したカ
ーボン膜を、更に水素ガスを混入することで窒素化、水
素化かつ酸化したカーボン膜を形成することができる。
【0015】これらの場合、スパッタガス中の空気の濃
度が高くなると形成されるカーボン膜中の酸素濃度も高
くなるが、膜中の酸素濃度が高くなりすぎると膜の特性
が劣化する。よって、スパッタガス中の空気濃度は、形
成されるカーボン膜の表面側の層の酸素濃度が7原子%
以下、好ましくは1〜5原子%となるように定めるのが
望ましい。
【0016】本発明においては、保護膜としてこのよう
な窒素化カーボン膜を形成するに当り、保護膜の厚さ方
向で窒素濃度が異なり、保護膜の表面側の層の窒素濃度
が、保護膜の基板側の層(磁性層上に直接保護膜を形成
する場合には、磁性層との界面側の層)の窒素濃度より
も高い窒素化カーボン膜を形成する。
【0017】このように窒素濃度を保護膜の表面側と基
板側とで変化させる方法としては、カーボン膜をスパッ
タリング法で形成するに当り、スパッタガスの雰囲気を
分離可能な2つ以上のチャンバーにそれぞれカーボンタ
ーゲットを設置し、各チャンバー内のスパッタガスの窒
素含有量を変え、窒素濃度の低いスパッタガス雰囲気で
スパッタした後、窒素濃度の高いスパッタガス雰囲気で
スパッタするように、基板を順次の次のチャンバーに移
動させる。
【0018】この場合、真空状態を破らない連続真空状
態で、低濃度窒素化カーボン膜と高濃度窒素化カーボン
膜とを積層形成することが2層間付着性を良好に保つ上
で好ましい。また、2つのチャンバー間の分離は完全で
なくとも良く、この場合には、窒素濃度が膜の厚さ方向
に連続的に変化する窒素化カーボン膜が形成される。
【0019】なお、チャンバー間を移動させる他、バル
ブの切り換えにより、一つのチャンバー内において、窒
素濃度の低いスパッタガスを送給した後、窒素濃度の高
いスパッタガスを送給することによっても、係る保護膜
を形成することができる。
【0020】このようにして形成される保護膜の表面側
の層の窒素濃度は、Auger電子分光装置による表面
窒素濃度の測定値で4〜30原子%の範囲、特に5〜2
0原子%の範囲であることが好ましい。この窒素濃度が
4原子%未満であると、窒素混入による耐久性改善の効
果が顕著ではなく、また、30原子%より多い場合は保
護膜が脆くなり、耐久性がかえって低下する。
【0021】一方、保護膜の基板側の層の窒素濃度は、
保護膜の強度の面から0〜4原子%であることが好まし
い。
【0022】本発明においては、特に、保護膜は、窒素
濃度0〜4原子%の窒素化カーボン膜を厚さ100〜2
00Åに形成した後、窒素濃度4〜30原子%の窒素化
カーボン膜を厚さ50〜150Åに形成し、合計で15
0〜300Å程度の保護膜を形成するのが好ましい。
【0023】また、上記の保護膜の表面には本発明の第
二の特徴である潤滑層を形成する。潤滑層としては、パ
ーフルオロポリエーテル潤滑剤に対して、重量比0.0
1から1.0、好ましくは重量比0.01〜0.5、特
に好ましくは重量比0.01〜0.3の間の比率でポリ
フェノキシ−シクロトリフォスファゼン潤滑剤が用いら
れる。
【0024】パーフルオロポリエーテル潤滑剤として
は、パーフルオロポリエーテル系分子骨格を有するもの
であれば特に限定されないが、例えば(CF2CF2O)m(CF2O)
n- 骨格、-(CF2CF2CF2O)p- 骨格、あるいは-(CF2CF(CF
3)O)q- 骨格等が挙げられる。(上記式中m,n,p,qは1以
上の整数を示す。通常m,n,p,qとしては5〜50程度の
ものが用いられる。)
【0025】これらの分子量としては、500以上が好
ましく、特に600〜8000程度のものが好適であ
る。また、パーフルオロポリエーテル系分子骨格に、更
に分岐鎖状または直鎖状の飽和または不飽和の高級脂肪
族炭化水素鎖、芳香族基やヘテロ原子を含む高級脂肪族
炭化水素鎖等が結合したものを用いることもできる。
【0026】ポリフェノキシ−シクロトリフォスファゼ
ン潤滑剤は、下記構造式を持つ化合物の中から選択され
る。
【0027】
【化3】
【0028】式中、OR1〜OR6は各々独立に、フッ化
フェノキシ基、パーフルオロアルキルフェノキシ基、も
しくはパーフルオロポリアルキルエーテルフェノキシ基
を示す。好ましくは、OR1〜OR6は各々独立に、フッ
化フェノキシ基あるいはパーフルオロアルキルフェノキ
シ基であり、特に好ましくは、フッ化フェノキシ基10
〜50モル%に対し、パーフルオロアルキルフェノキシ
基90〜10モル%の範囲から選ばれる。
【0029】なお、フッ化フェノキシ基、パーフルオロ
アルキルフェノキシ基、パーフルオロポリアルキルエー
テルフェノキシ基とは、それぞれ、フッ素基、パーフル
オロアルキル基、パーフルオロアルコキシル基によって
1から5置換されたフェノキシ基を示す。フッ化フェノ
キシ基としては、p−フッ化フェノキシ基が好ましく、
パーフルオロアルキルフェノキシ基としてはm−パーフ
ルオロアルキルフェノキシ基が好ましい。
【0030】本発明に係わる特に望ましいポリフェノキ
シ−シクロトリホスファゼンとしては、ビス(4−フル
オロフェノキシ)−テトラキス(3−トリフルオロメチ
ルフェノキシ)シクロホスファゼンが挙げられる。
【0031】これらの潤滑剤の塗布は、通常、パーフル
オロポリエーテル潤滑剤とポリフェノキシ−シクロトリ
フォスファゼン潤滑剤とを溶解した溶液、あるいはそれ
ぞれの溶液に保護膜形成後の基板を浸漬することにより
行われるが、基板表面に該溶液をしみこませたテープ等
を荷重をかけて接触させて被膜を形成する方法、固体基
板上でパッドを回転させながら添着させる方法、または
スプレー法などを用いてもよい。
【0032】塗布液の濃度は、滑剤化合物の種類によ
り、また溶媒の種類により異なるが、通常、溶液中濃度
として0.1〜5g/リットルで用いられる。溶媒に関
しては、パーフルオロポリエーテル潤滑剤、及びポリフ
ェノキシ−シクロトリフォスファゼン潤滑剤の両方を容
易に溶解するハイドロフルオロカーボン系の溶媒を用い
ることができる。潤滑層の膜厚は通常10〜30Å程度
である。また、潤滑剤と保護膜の親和力をたかめるた
め、潤滑剤塗布後に40〜200℃程度の熱処理等を施
すことが望ましい。
【0033】なお、本発明における磁気記録媒体に用い
る非磁性基板としては特に制限はなく、通常、無電解め
っき法により形成したニッケル−リン層を設けたアルミ
ニウム合金板が用いられるが、その他、銅、チタン等の
金属基板、ガラス基板、セラミック基板、炭素質基板又
は樹脂基板を用いることもできる。
【0034】このような非磁性基板の表面には、下地層
として通常の場合、クロムをスパッタリングにより形成
する。このCr下地層の膜厚は通常50〜2000Åの
範囲とされる。
【0035】基板のCr下地層上に形成する強磁性金属
薄膜よりなる磁性層は、無電解めっき、スパッタリン
グ、蒸着等の方法によって形成される。この磁性層とし
ては、Co−P,Co−Ni−P,Co−Ni−Cr,
Co−Cr−Ta,Co−Ni−Pt,Co−Cr−P
t,Co−Cr−Pt−Ta系合金等の強磁性金属薄膜
が形成され、その膜厚は通常300〜700Å程度とさ
れる。
【0036】本発明の磁気記録媒体は、保護膜表面の窒
素と潤滑層の相互作用が強まることにより耐久性が改善
される。特には、高速摺動に対する耐久性に優れている
ため、ヘッドの低浮上化が可能である。また、常温常
湿、高温高湿条件下いずれにおいても優れた耐久性を有
する。また、潤滑層として、パーフルオロポリエーテル
潤滑剤にポリフェノキシ−シクロトリフォスファゼン潤
滑剤を含有させることにより、パーフルオロポリエーテ
ル潤滑剤の分解が抑制されるため、ヘッド汚れが抑制さ
れる。
【0037】
【実施例】次に、実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施
例によって限定されるものではない。 実施例1 表面の平均粗さが50〜60Åの直径3.5インチのア
ルミニウム合金製基板上に、スパッタリング法によりク
ロム下地層(厚さ400Å)、コバルト合金磁性層(厚
さ500Å)を形成し、次に保護膜として、水素化カー
ボン膜を150Åの厚さに形成し、引き続き隣接した別
チャンバー内で、水素化窒素化カーボン膜を50Åの厚
さに形成した。水素化カーボン膜は5μbarのスパッ
タ圧力で、Arガスに9体積%の水素ガスを混合させた
混合ガスをスパッタガスとして、カーボンターゲットを
用いてスパッタリングすることにより形成した。窒素化
水素化カーボンは同じく5μbarのスパッタ圧力で、
Arガスに9体積%の水素ガス及び10体積%の窒素ガ
スを混合させた混合ガスをスパッタガスとして、カーボ
ンターゲットを用いてスパッタリングすることにより形
成した。
【0038】パーフルオロポリエーテル(アウジモント
社製 FomblinZ DOL(商品名))を1.2
5g/リットルを含むジヒドロデカフルオロペンタン
(デュポン社製 Vertrel XF(商品名))溶
液と、ビス(4−フルオロフェノキシ)−テトラキス
(3−トリフルオロメチルフェノキシ)シクロホスファ
ゼン(ダウ・ケミカル社製 X−1P(商品名))を
0.25g/リットル含むジヒドロデカフルオロペンタ
ン(デュポン社製 Vertrel XF(商品名))
を等量混合した溶液を用意した(パーフルオロポリエー
テルに対するポリフェノキシホスファゼンの量0.
2)。そして、浸漬法により窒素化水素化カーボン膜上
に潤滑膜を形成した後、80℃で焼成処理を行い、膜厚
約23Åの均一な膜を形成した。
【0039】得られたディスクについて、保護膜中の窒
素量をオージェ電子分光法装置を用いて求めた。その結
果、保護膜表面にはカーボンと窒素のみが検出され、感
度を考慮して求めた窒素濃度は12原子%であった。そ
のまま、表面をArイオンでたたきながらエッチング
し、深さ方向のプロファイルを求めたところ、窒素原子
は磁性層界面では検出されなかった。
【0040】得られたディスクを用いてCSS試験を行
った。ヘッドには押し付け圧力9.5gのAl26・T
iCスライダーの薄膜ヘッドを用いた。ディスクを36
00rpmで3秒回転させた後、9秒間電源を切断する
計12秒をCSS1サイクルとした。試験環境は常温常
湿(25℃、40%)、及び高温高湿(32℃、80
%)で試験サイクルはCSS20,000回とし、CS
S20,000回後の摩擦係数を測定し、ヘッド汚れを
観察した。この条件でのヘッドの浮上速度は6m/s以
上である。結果を表1に示す。
【0041】実施例2 実施例1において、混合溶液中のパーフルオロポリエー
テルに対するポリフェノキシホスファゼンの量を0.1
とした以外は共通とした。CSS試験の結果を表1に示
す。
【0042】比較例1 実施例1と同様の窒素化水素化カーボン膜上に、実施例
1と同じパーフルオロポリエーテルを1リットルあたり
1.5g含有するパーフルオロオクタン(3M社製 P
F5080(商品名))溶液を用い、浸漬法により膜を
形成した後、80℃で焼成処理を行い、膜厚約23Åの
均一な膜を形成した。CSS試験の結果を表1に示す。
【0043】比較例2 保護膜を水素化カーボン膜のみ(厚さ200Å)で形成
した以外は実施例1と同様に潤滑剤の膜を形成した(膜
厚約23Å)。実施例1と同様オージェ電子分光装置を
用いて、保護膜表面の窒素量を求めたところ、窒素原子
は検出されなかった。CSS試験の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気記録
媒体によれば、厚み方向で濃度勾配を有する窒素化カー
ボン保護膜膜と、この保護膜上に設けたパーフルオロポ
リエーテルをポリフェノキシ−シクロホスファゼンを含
有する潤滑層を有することにより、高速摺動に対する耐
久性の改善、特に高温高湿の状況下でのCSS耐久性の
改善及びヘッド汚れ抑制が可能となる効果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C10N 40:18

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板上に少なくとも強磁性金属薄
    膜、保護膜、潤滑層が順次に形成されてなる磁性記録媒
    体において、該保護膜は、窒素を含有するカーボン膜で
    あって、該保護膜中の窒素濃度が保護膜の厚さ方向に異
    なり、基板側の層の窒素濃度よりも表面側の層の窒素濃
    度が高く、かつ、該潤滑層は、パーフルオロポリエーテ
    ル潤滑剤、及びこれに対して、重量比0.01〜1.0
    のポリフェノキシ−シクロトリフォスファゼン潤滑剤を
    含有することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 保護膜の表面側の層の窒素濃度が4〜3
    0原子%であり、基板側の層の窒素濃度が0〜4原子%
    であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒
    体。
  3. 【請求項3】 保護膜の表面側の層の酸素濃度が7原子
    %以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記
    録媒体。
  4. 【請求項4】 ポリフェノキシ−シクロトリフォスファ
    ゼン潤滑剤が、下記一般式で表されることを特徴とする
    請求項1〜3に記載の磁気記録媒体。 【化1】 (式中、OR1〜OR6は各々独立に、フッ化フェノキシ
    基、パーフルオロアルキルフェノキシ基、もしくはパー
    フルオロポリアルキルエーテルフェノキシ基を示す。)
  5. 【請求項5】 ポリフェノキシ−シクロトリフォスファ
    ゼン潤滑剤が、下記一般式で表されることを特徴とする
    請求項4に記載の磁気記録媒体。 【化2】 (式中、OR1〜OR6は各々独立に、フッ化フェノキシ
    基あるいはパーフルオロアルキルフェノキシ基を表し、
    フッ化フェノキシ基10〜50モル%に対し、パーフル
    オロアルキルフェノキシ基90〜10モル%の範囲から
    選ばれる。)
  6. 【請求項6】 潤滑層形成後に、40〜200℃におい
    て加熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに
    磁気記録媒体の製造方法。
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