JP2010106201A - 樹脂組成物、樹脂成形品及び樹脂組成物の生成方法 - Google Patents

樹脂組成物、樹脂成形品及び樹脂組成物の生成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基礎材料となる樹脂材料に含有する光輝材の種類や含有量を最適化し、市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果及び物性を得るための樹脂組成物を提供する。
【解決手段】共重合体を含有する例えばAES樹脂等の樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmのアルミニウム光輝材等の光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させる。このようにして生成した樹脂組成物を用いて成形をすることにより、市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果及び物性を有する樹脂成形品を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂組成物、樹脂成形品及び樹脂組成物の生成方法に関し、特に基礎材料としての樹脂にアルミニウム光輝材等を含有させて、メタリック調の樹脂成形品を得るための技術に関する。
例えば自動車業界においては、自動車内装に対するユーザのニーズが多様化し、内装樹脂部品に対しメタリック調、木目調、ファブリック調等の加飾が施されるようになってきている。このような樹脂加飾部品の中でとりわけ市場要求の高いものの一つとして、光輝感のあるシルバーメタリック調の樹脂加飾部品がある。
従来、このようなシルバーメタリック調の樹脂加飾部品の多くは、光輝感を充分なものとするために、塗装により加飾されることが多かった。しかし、塗装工程で用いられる塗料には、そのままでは環境に影響を及ぼすおそれのある揮発性有機化合物(以下、VOC(volatile organic compounds))が含まれ、また作業工数自体も増加するという問題があった。
そこで、昨今では、予め着色材や光輝材料を混錬した着色樹脂材料を用いて成形することで、塗装工程を省くことがなされている。このような樹脂加飾部品の無塗装化は、塗料の使用量を削減し、VOCの放出あるいは発生を低減し、更には塗装工程廃止による省エネルギーや塗膜除去の必要性が無いため樹脂部品のリサイクル性を向上させるので、非常に有効である。
特許第4120701号公報 特開2007−83434号公報 特開2008−49652号公報
樹脂加飾部品の無塗装化は、白や黒等のいわゆるソリッド色を中心として汎用的に用いられている。しかしながら、シルバーメタリック調の着色樹脂材料についての無塗装化は、光輝感と外観品質とがトレードオフの関係にあり、つまり、光輝感を高めようとすると外観にウエルドラインやヒケ等の外観不具合が目立ち易くなり、外観不具合を抑えようとすると光輝感が損なわれることになるという関係があった。そのため、市場要求性を満たす商品性の高い光輝感と外観品質との両立に難しい点があり、汎用的に用いられる機会が必ずしも多いとは言い難かった。
係る問題における外観の不具合を解消する技術としては、金型や樹脂成形品の形状等に工夫を施すものが提案されている(特許文献1〜3を参照のこと)。
しかし、このような外観不具合を解消する技術があったとしても、やみくもに光輝材を含有させるのでは、市場要求を満たす商品性の高い光輝感等は得られない。
より具体的に説明すると、シルバーメタリック調を発現させるための着色樹脂材料には、一般にアルミニウム光輝材(顔料)を基礎材料としての樹脂(例えば、AES樹脂等)に含有させる。この場合、アルミニウム光輝材の平均粒子径が小さいほど、光輝感が増し、質感が高くなる、すなわち市場要求を満たす商品性の高い光輝感が得られるが、外観不具合が生じやすくなる。一方、アルミニウム光輝材の平均粒子径を大きくすれば外観不具合が目立ちにくくなるが、光輝感は損なわれ、市場要求を満たす商品性の高い光輝感が得られ難い。
また、光輝材料の含有率を高くすれば光輝感は高くなるが、多く入れすぎると材料物性が低下し、またコンパウンド(混合)が困難となる場合がある。
更に、シルバーメタリック調をはじめとする樹脂加飾部品において市場要求を満たす商品性の要素として、散乱光の干渉の抑制がある。散乱光の干渉とは、基礎材料としての樹脂に含有される物質の屈折率に起因するもので、屈折率の異なる複数の物質から反射される光が干渉することをいい、この干渉が多くでた場合には、見る角度によって色合が変わって見えてしまい、質感が良好でないものとされる。このような散乱光の干渉も、光輝材料の粒子径や含有率によって大きく変わるものである。
このように、光輝材の含有については複雑な諸事情があり、従来樹脂加飾部品において、市場要求を満たす商品性の高い光輝感、散乱光の干渉の抑制効果、市場要求を満たす充分な物性、更にはコスト的要求等を同時に満たすのが困難であった。なお、物性とは、引張強さや衝撃強さ等である。
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、基礎材料となる樹脂材料に含有する光輝材の種類や含有量を最適化し、市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果及び物性、更にはコスト的要求を同時に満たし得る樹脂組成物等を提供することを目的とする。
本発明の樹脂組成物は、一又は複数種類の共重合体を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させてなることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、前記光輝材の平均粒子径を5μmとすることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、前記共重合体を含有する樹脂材料は、スチレン系共重合体であることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、前記共重合体を含有する樹脂材料は、AES樹脂、又はABS樹脂、又はASA樹脂であることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、前記光輝材は、アルミニウム光輝材であることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、当該樹脂組成物は、シルバーメタリック調の樹脂成形品を生成するために用いられることを特徴とする。
また、本発明の他の樹脂組成物は、屈折率の異なる2種類以上の物質を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材料を、1.8〜4.4重量部含有させてなることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、前記光輝材の平均粒子径を5μmとすることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、前記光輝材は、アルミニウム光輝材であることを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物の他の態様では、当該樹脂組成物は、シルバーメタリック調の樹脂成形品を生成するために用いられることを特徴とする。
また、本発明の樹脂成形品は、上記に記載の樹脂組成物から成形された樹脂成形品である。
また、本発明の樹脂組成物の生成方法は、一又は複数種類の共重合体を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させることを特徴とする。
また、本発明の他の樹脂組成物の生成方法は、屈折率の異なる2種類以上の物質を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させることを特徴とする。
本発明によれば、樹脂成形品において市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果及び物性、更にはコスト的要求を同時に満たし得るための樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、一又は複数種類の共重合体を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させてなる樹脂組成物、あるいは屈折率の異なる2種類以上の物質を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させてなる樹脂組成物、樹脂成形品等に係るものである。
本発明では、上記のようにして、基礎材料としての樹脂材料に光輝材を含有することで、樹脂成形品において良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果及び物性を得ることのできる樹脂組成物を生成できる。
すなわち、本発明は、図1に示す範囲Aのように、樹脂材料に光輝材を含有(添加)させるようにする。具体的には、光輝材の粒子径(平均粒子径)を1μm〜7μmとし、樹脂材料に対する含有率は、1.8〜4.4重量%とする。係る数値は、光輝感の低下、散乱光の干渉及び物性の低下等に関する諸要求を考慮し、鋭利研究の結果見出したものであるが、その詳細については後述の実施例において説明をする。
<基礎材料としての樹脂材料について>
本発明の実施の形態では、基礎材料としての樹脂材料に、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(以下、AES樹脂:テクノポリマー株式会社製)を用いた。なお、本発明に係る基礎材料としての樹脂材料はAES樹脂に限られるものではなく、スチレン系共重合体であるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリル酸メチル・スチレン共重合体(ASA樹脂)等を用いてもよい。あるいは、このようなスチレン系共重合体に、更にその他の種の樹脂を混合した樹脂材料を用いてもよく、このようなものの具体例としては、例えば樹脂アロイ材(ポリカーボネイト樹脂(PC)とABS樹脂とを混合させたもの)等が挙げられる。
本実施の形態に係るAES樹脂はスチレン系の3元共重合体である。共重合体は、構成要素であるモノマーそれぞれが固有の屈折率を持つ。このような性質は、上記ABS樹脂、ASA樹脂、樹脂アロイ材等にも共通する性質である。このように複数のモノマーが共重合してなる、換言すれば異なる屈折率を有する物質が複数含まれてなる樹脂材料においては、成形後の樹脂成形品において散乱光の干渉現象が生じる場合がある。本発明は解決する課題の一つに散乱光の抑制効果を向上させる目的があるため、基礎材料としての樹脂材料については散乱光の干渉現象が生じ易い物質を主な対象とする。
本実施の形態に係るAES樹脂は、着色前においては不透明で乳白色であり、成形しようとする樹脂成形品に応じて着色剤を用いることで、着色することが可能である。なお、本発明は、典型的にはシルバーメタリック調の樹脂加飾部品を成形するものとし、この場合は着色が不要であるが、本発明はゴールドメタリック調、所謂ガンメタリック調の樹脂加飾部品にも好適に適用可能である。この場合は、溶融状態において適宜無機顔料、有機顔料や染料を混入させて着色をする。
<光輝材について>
本実施の形態では、メタリック調を発現させるため、基礎材料としての樹脂材料に含有する光輝材に、アルミニウム光輝材(アルミペースト:東洋アルミニウム株式会社製)を用いた。アルミニウム光輝材の粒子径(平均粒子径)としては、上記の通り、1μm〜7μmに設定される。なお、メタリック調を発現させるための光輝材としてマイカ粉等を用いても構わない。
<樹脂組成物について>
図2は、上記のようなアルミニウム光輝材を、AES樹脂に含有させた状態、すなわち本実施の形態に係る樹脂組成物に含まれる物質を模式的に示した図である。図2に示すように当該樹脂組成物は、AES樹脂20においてアルミニウム光輝材21が点在するように含有される状態となる。AES樹脂20は、AS樹脂相及びエチレンプロピレンゴム相がグラフト重合(共重合)されてなる。
このような樹脂組成物を用いて射出成形等の成形を行うことで、シルバーメタリック調の樹脂加飾部品である樹脂成形品を成形することができ、上記のように樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させれば、市場要求を満たす充分な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果及び物性等を満たす樹脂組成物を生成できる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例として、AES樹脂100重量部に対して、粒子径5μmのアルミニウム光輝材を2重量部含有させて樹脂組成物を生成し、当該樹脂組成物から成形したシルバーメタリック調の樹脂成形品を挙げ、その光輝感、散乱光の干渉の抑制、及び物性について、比較例とともに説明する。
<FF性(フリップフロップ性)>
先ず、実施例に係る樹脂成形品のFF性(フリップフロップ性)について説明する。
FF性とは、見る角度によって明るさ、色合が変化して見える現象をいい、樹脂成形品の光輝感を評価できる指標となる。メタリック調は基本的には鏡面反射成分の強い仕上面を有するものであるため、角度が異なる光源それぞれの反射成分の明度を比較することで、メタリック調から発現される光輝感を評価できることになる。
本実施例では、次式(1)を用いてFF性を評価する指標(以下、FF値と呼ぶ)を求めて、光輝感の評価を行った。
FF値=ハイライト時の明度(25°)/シェード時の明度(75°)・・・(1)
式(1)における25°、75°のそれぞれの角度は、測定試料(樹脂成形品)が平面上に置かれたとして、その鉛直方向を基準(0°)とした場合の角度を示す。上述したようにメタリック調は基本的には鏡面反射成分の強い仕上面を有する。よって、ハイライト方向(25°)の光源に対する鏡面反射成分は強く、シェード方向(75°)は拡散反射光成分が弱いので、ハイライト時とシェード時の明度の比率であるFF値で光輝感の高さを評価できる。この評価では、FF値が高いほど、光輝感が高いと評価できる。
FF値を求めるための反射成分の明度の測定方法としては、所謂、変角測色測定法を使用し、式(1)におけるハイライト時の明度(25°)及びシェード時の明度(75°)を求めた。
図3は、変角測色測定法の測定原理を説明するための図である。図3に示すように変角測色測定法はこの例では、それぞれ配置角の異なる3つの光源(1〜3)を配して、光源に対する測定試料の反射成分の明度を、測定試料の鉛直方向に配された受光センサで測定することで行う。図3においては、光源1〜3の配置角はそれぞれ、測定試料の鉛直方向を基準として、25°、45°、75°となっている。なお、測定を行うための測定機器としては、コニカミノルタ社製の分光測色計(CM−512m3)を使用した。
FF値を求めた結果としては、本実施例に係る樹脂成形品のFF値は、2.14という数値が得られた。比較の一例としてのシルバーメタリック塗装をした成形品は、自動車内装用としては、一般にFF値2.0以上を要求される。したがって、本実施例に係る樹脂成形品はシルバーメタリック塗装と同等以上の光輝感を有する結果が得られた。
ここで、本実施例に係る樹脂成形品の光輝感の高さをより詳しく説明するため、アルミニウム光輝材の含有率(添加量)を一定とした粒子径の異なるもの及びアルミニウム光輝材を含有させなかったものと比較した結果を説明する。比較の対象とした試料は次の表1の通りである。
表1において、試料Aはアルミニウム光輝材を含有させなかった樹脂成形品である。試料Bは本実施例に係る樹脂成形品であり、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材を、2.0重量%含有させたものである。また試料C〜Gはそれぞれ、平均粒子径が20,30,40,60,90μmのアルミニウム光輝材を、2.0重量%含有させた場合の樹脂形成品である。これらのFF値の結果を図4に示す。なお、この比較は、試料Bの光輝感の高さを説明するためのものであるとともに、アルミニウム光輝材を同じ含有率とした場合に平均粒子径をどの範囲にすると高い光輝感、散乱光の抑制効果、充分な物性が得られるかを判定する意味も有する。
図4は、アルミニウム光輝材の平均粒子径とFF値との関係を示した図である。図4において、試料AのFF値は「A(添加無し)」に示すように、1.0程度(正確には1.08)であった。また、試料B〜GのFF値は、図中B〜Gのプロットに対応した値となった。
図4に示すように、アルミニウム光輝材を含有させた場合(試料B〜G)は、含有させない試料Aに比べてFF値が高い、すなわち光輝感が高いが、アルミニウム光輝材の平均粒子径が大きくなればなるほど、FF値は下がっていく結果となった。さらに、FF値が2.0以上、すなわち塗装した場合と同等以上の光輝感が得られたのは、本発明の実施例に係る試料Bのみであった。
このような結果より、粒子径の大きさにより光輝感が変わることがわかり、市場性要求を満たすような高い光輝感が得られる粒子径の範囲が判定された。つまり、塗装と同等以上の光輝感を得るためには、少なくとも20μmよりも小さい粒子径とすることが適当で、更にはFF値が2.0以上となることが必要となる。この範囲を更に厳格に定めるため本願出願人は、粒子径の異なる試料の試験結果から、図4上に示す近似曲線を求めた。そして、その結果、塗装したものと同等以上の光輝感が得られるアルミニウム光輝材の平均粒子径は7μm以下とすることが好適であることがわかった。
以上のFF性の評価により、AES樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の最適な粒子径が判明することに至った。すなわち、この結果を踏まえ、本願発明では、基礎材料としての樹脂材料に含有させる光輝材の粒子径は、1〜7μmが最適なものであることに至ることができた。なお、下限を1μmとしたのは、アルミニウム光輝材の現実的な粒子径(製造の容易性等)を鑑みて定めたものである。
<散乱光の干渉の抑制効果>
次に、本実施例に係る樹脂成形品の散乱光の干渉の抑制効果について説明する。
散乱光の干渉とは、屈折率の異なる複数の物質から反射される光が干渉することをいい、この干渉が多くでた場合には、見る角度によって色合が変わって見えてしまうことになる。
本実施例に係る樹脂成形品については目視評価した結果、角度によらず色合が同一と評価できた。比較のため、試料C〜Gについても目視評価したが、これらについては角度により異なる色合が発現されることが確認された。この目視評価結果を、上記で求めたFF値と対応させたものを、下記の表2に示す。
表2に示すように、目視評価の結果では、FF値が2.0よりも小さい試料C〜Gは全て散乱光の干渉が多く生じていると判定できた。この結果から、散乱光を充分に抑制するためにはFF値が2.0以上であることが必要とわかり、上述したFF値の評価と同様に、基礎材料としての樹脂材料に含有させる光輝材料の粒子径は、1〜7μmが最適なものと判定した。
更に本願出願人は、より厳密に散乱光の干渉が抑制されているかどうかを調べるため、試料B〜Gに対して、異なる角度の光源それぞれの反射成分の色味を抽出し、比較することで評価することとした。色味としては「a*(赤味・緑味)」を用い、「a*」の値の差を評価することで抑制効果を検証した。係る検証結果を図5に示す。なお、「a*」の差が小さいほど、角度に応じた色合の変化がない、つまり赤味・緑味間での干渉が小さいと評価できる。また、異なる角度はハイライト(25°)及びシェード(75°)とし、測定は、上述同様にコニカミノルタ社製の分光測色計(CM−512m3)を使用した。
図5において、横軸はアルミニウム光輝材の粒子径を示し、縦軸は「a*値」を示す。図5に示すように、粒子径が5μm(本実施例に係る試料B)は、他の粒子径のもの(試料C〜G)に比べて、ハイライト時の「a*値」とシェード時の「a*値」との差が極端に小さい。この結果から、散乱光の干渉を充分に抑制するためには5μmのアルミニウム顔料が最適であることが必要とわかり、上述したFF値の評価と同様に、基礎材料としての樹脂材料に含有させる光輝材料の粒子径は、1〜7μmが最適なものと確認できた。
<材料物性について>
次に、本実施例に係る樹脂成形品の材料物性について説明する。ここでは、アルミニウム光輝材の粒子径が材料物性に与える影響を検証した。具体的な物性としては引張強さ及びシャルピー衝撃強さ(常温)とし、上述した試料A〜Gについて物性試験を行った。下記の表3に試験結果を示し、図6、図7に試験結果を比較しやすいように図表化した図を示す。
図6、図7において、横軸はアルミニウム光輝材の粒子径を示し、縦軸は測定結果を示す。図6に示すようにアルミニウム光輝材の粒子径を変化させても、引張強さについては与える影響が小さく、物性値は粒子径によらず略等しいと判断できた。一方、図7に示すようにシャルピー衝撃強さに関しては、粒子径に応じてバラツキが見られ、粒子径が大きいほど衝撃強さが高い結果となった。しかし、粒子径が小さい場合であっても、光輝材の添加無しの試料Aの公差範囲(±2%以内)内とも確認できたため、物性において問題のない範囲である。
以上のように本発明の実施例1に係る、AES樹脂100重量部に対して、粒子径5μmのアルミニウム光輝材を2重量部含有させて生成した樹脂組成物により成形したシルバーメタリック調の樹脂成形品(試料B)は、FF値が塗装と同等以上の2.0以上であり、市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果を有していた。更に、材料物性についても市場要求を満たす結果が得られた。
更には、比較例との間で検証を行った結果、基礎材料としての樹脂材料に含有させる光輝材料の粒子径は、1〜7μmが最適なものと選定できた。
(実施例2)
実施例2では、本発明の実施例としてAES樹脂100重量部に対して、粒子径5μmのアルミニウム光輝材を4重量部含有させて樹脂組成物を生成し、当該樹脂組成物から成形したシルバーメタリック調の樹脂成形品を挙げ、その光輝感、散乱光の干渉の抑制、及び物性について、比較例とともに説明する。つまり、実施例に係るものとしてアルミニウム光輝材の粒子径を5μmとし含有率を4.0重量%としたものを挙げ、比較例としては、実施例1に係る試料B、アルミニウム光輝材の粒子径を5μmとし、含有率を0.5重量%、1.0重量%としたもの、アルミニウム光輝材を含有しないものを挙げて、本実施例の説明をする。比較の対象とした試料は次の表4の通りである。
表4において、試料Aは実施例1でも示したアルミニウム光輝材を含有させなかった樹脂成形品である。試料Bは実施例1に係る樹脂成形品であり、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材を、AES樹脂に2.0重量%含有させたものである。試料Hは、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材を、AES樹脂に0.5重量%含有させたものであり、試料Iは、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材を、AES樹脂に1.0重量%含有させたものである。試料Jは、本実施例に係る樹脂成形品であり、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材を、AES樹脂に4.0重量%含有させたものである。
なお、本実施例に係るものとその他のものとの比較は、試料Jの光輝感の高さを説明するためのものであるとともに、平均粒子径を同じ径(5μm)とした場合に、どの範囲の含有率にすると良好な光輝感、散乱光の抑制効果、充分な物性が得られるかを判定する意味もある。
<FF性(フリップフロップ性)>
図8は、アルミニウム光輝材の含有率とFF値との関係を示した図である。なお、FF性の評価手法は、上述した実施例1と同様である。
図8において、試料AのFF値は「A(添加無し)」に示すように、1.0程度(正確には1.08)である。また、試料B,H,I,JのFF値は、対応するプロットに示す値(それぞれ、B(2.14),H(1.59),I(1.76),J(2.19))となった。
図8に示すように、アルミニウム光輝材の含有率が2.0重量%以上のもの(試料B,J)は、FF値が2.0以上、すなわち塗装した場合と同等以上の光輝感が得られた結果となった。一方、含有率が2重量%よりも小さいものは、FF値が2.0以上を得ることができなかった。
また、図8に示すように、試料Bと試料JとのFF値を比較すると、差があまりない結果となった。この結果より、アルミニウム光輝材の含有率が2.0重量%以上の場合は、含有率を増加させても更なる光輝感の向上は見込めないことがわかった。
ここまでの結果を踏まえると、AES樹脂に対してのアルミニウム光輝材の含有率は、試験ベースで2.0重量%以上とすればよいことがわかった。
また、含有率を高くすればFF値の値は高くなるが、2.0重量%以上ではこれ以上高くしてもFF値に実質的な差がないことがわかった。一方で、アルミニウム光輝材の含有率が5.0重量%を超える場合には、材料物性の著しい低下や、コンパウンドが困難となる実情があり、含有率の増加はコスト面にも影響を及ぼす。これらの点を考慮すると、アルミニウム光輝材の含有率の上限は4.0重量%とすることが好ましい。
更に、本願出願人はアルミニウム光輝材の含有率の最適な範囲を求めるべく、図8に示す試験結果を基に、近似曲線を求めた。そして、その結果、塗装したものと同等以上の光輝感が得られる含有率の下限値は、近似曲線がFF値2.0と交わる点である、1.8重量%とわかり、これを含有率の下限値とすることが最適であると判定した。この下限値は、実際にFF値の測定試験を行った試料Bの±10%の範囲内であり、この点を考慮すると含有率の上限値も実際にFF値の測定試験を行った試料Jの±10%とすることが妥当である。
以上のFF性の評価及び考察により、本発明では、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材の含有率の最適な範囲は、1.8〜4.4重量%が最適である判断するに至った。
<散乱光の干渉の抑制効果>
次に、本実施例に係る樹脂成形品の散乱光の干渉の抑制効果について説明する。
散乱光の干渉とは、屈折率の異なる複数の物質から反射される光が干渉することをいい、この干渉が多くでた場合には、見る角度によって色合が変わって見えてしまうことになる。
本実施例に係る樹脂成形品については目視評価した結果、角度によらず色合は同一と評価できた。比較のため、上記で示した試料H,Iについても目視評価したが、これらについては角度により異なる色合が発現されることが確認された。この目視評価結果を、上記で求めたFF値と対応させた表5を下記に示す。
更に本願出願人は、より厳密に散乱光の干渉が抑制されているかどうかを調べるため、試料B,H,I,Jに対して、異なる角度の光源それぞれの反射成分の色味を抽出し、比較することで評価を行った。色味としては「a*(赤味・緑味)」を用い、「a*」の値の差を評価することで抑制効果を検証した。係る検証結果を図9に示す。なお、実施例1で説明したのと同様に、「a*」の差が小さいほど、角度に応じた色合の変化がないと評価できる。また、異なる角度はハイライト(25°)及びシェード(75°)とし、測定は実施例1と同様である。
図9において、横軸はアルミニウム光輝材の含有率(添加量)を示し、縦軸は「a*値」を示す。図9に示すように、アルミニウム光輝材の含有率が2.0〜4.0重量%の間は、2.0重量%未満に比べて、ハイライト時の「a*値」とシャード時の「a*値」との差が極端に小さいことが分かった。この結果から、散乱光の干渉を充分に抑制するためにはアルミニウム顔料の添加量を2.0重量%以上であることが必要とわかり、また、平均粒子径5μmのアルミニウム光輝材の含有率の最適な範囲は、1.8〜4.4重量%が最適とあることが確認できた。
<材料物性について>
次に、本実施例に係る樹脂成形品の材料物性について説明する。ここでは、アルミニウム光輝材の含有率が材料物性に与える影響を検証した。具体的な、物性としては引張強さ及びシャルピー衝撃強さ(常温)とし、上述した試料H,I,Jについて物性試験を行った。下記の表6に測定結果を示し、図10、図11に測定結果を比較しやすいように図表化した図を示す。
図10、図11において、横軸はアルミニウム光輝材の含有率(添加量)を示し、縦軸は測定結果を示す。図10に示すようにアルミニウム光輝材の含有率が増加するにつれ、引張強さは低下していくことが分かった。しかし、含有率が4.0重量%である試料Jの具体的な値は48.4Mpaであり、アルミニウム光輝材の含有無しの材料Aの公差範囲(5%以内)内であり、物性において懸念される範囲ではない。一方、図11に示すようにシャルピー衝撃強さに関しては、含有率の変化によらず、物性値がほとんど変動しないという結果となった。
上記の物性試験の結果、試験ベースで含有率が4.0重量%までは、物性に懸念される範囲の変動がないことがわかり、図10に示す試験結果の傾きから、やはり含有率が5重量%を超える場合は、物性を懸念する必要があるとわかった。その結果、含有率が1.8重量%〜4.4%であれば物性に変化はなく、この範囲が最適な含有率と確認できた。
以上のように本発明の実施例2に係る、AES樹脂100重量部に対して、粒子径5μmのアルミニウム光輝材を4.0重量部含有させて生成した樹脂組成物により成形したシルバーメタリック調の樹脂成形品(試料J)は、FF値が塗装と同等以上の2.0以上であり、市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果を有していた。更に、材料物性についても市場要求を満たす結果が得られた。
更には、比較例との間で検証を行った結果、上記の光輝感等に加え、コスト面の要求をも満たすAES樹脂に対するアルミニウム光輝材の含有率は、1.8重量%〜4.4重量%が最適な含有率に至ることができた。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明した。本発明の実施の形態に係る樹脂組成物から成形された樹脂成形品は、実施例でも述べたように、市場要求を充分に満たす良好な光輝感、散乱光の干渉の抑制効果を有して、更には材料物性、コスト面の要求においても市場要求を満たす結果が得られた。ここで図12は、実施例1に係る樹脂成形品の写真、図13はシルバーメタリック塗装を施した成形品の写真、図14はアルミニウム光輝材を含有していない成形品の写真である。図12〜図14を比較してみてもわかるように、本発明に係る図12に示す樹脂成形品は、塗装を施したものと同等以上の光輝感を有することが分かる。
なお、本発明は、メタリック塗装と同等以上の光輝感が必要とされる各種部品への適用が可能である。また、本発明の実施の形態及び実施例で説明したシルバーメタリック調に限らず、各種メタリック調に対応も可能である。また、本発明の実施の形態及び実施例では、自動車内装部品を想定した説明をしたが、自動二輪車における部品や、家庭用電気器具、AV機器、OA機器、化粧品、生活用品、事務用品等、幅広い分野における樹脂加飾部品において適用可能である。
本発明に係る樹脂組成物における、光輝材の粒子径の範囲及び含有率を説明するための図である。 本発明に係る樹脂組成物を模式的に示した図である。 変角測色測定法の測定原理を説明するための図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の粒子径とFF値との関係を示した図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の粒子径と色味を示す「a*」の値の差を検証した結果を示す図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の粒子径と引張強さとの関係を示した図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の粒子径とシャルピー衝撃強さとの関係を示した図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の含有率とFF値との関係を示した図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の含有率と色味を示す「a*値」との関係を示した図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の含有率と引張強さとの関係を示した図である。 基礎材料となる樹脂に含有させるアルミニウム光輝材の含有率とシャルピー衝撃強さとの関係を示した図である。 本発明の実施例1に係る樹脂成形品の写真である。 シルバーメタリック塗装を施した成形品の写真である。 アルミニウム光輝材を含有していない成形品の写真である。
符号の説明
20 AES樹脂相
21 アルミニウム光輝材

Claims (13)

  1. 一又は複数種類の共重合体を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させてなることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記光輝材の平均粒子径を5μmとすることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記共重合体を含有する樹脂材料は、スチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記共重合体を含有する樹脂材料は、AES樹脂、又はABS樹脂、又はASA樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記光輝材は、アルミニウム光輝材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 当該樹脂組成物は、シルバーメタリック調の樹脂成形品を生成するために用いられることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 屈折率の異なる2種類以上の物質を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材料を、1.8〜4.4重量部含有させてなることを特徴とする樹脂組成物。
  8. 前記光輝材の平均粒子径を5μmとすることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
  9. 前記光輝材は、アルミニウム光輝材であることを特徴とする請求項7又は8に記載の樹脂組成物。
  10. 当該樹脂組成物は、シルバーメタリック調の樹脂成形品を生成するために用いられることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から成形された樹脂成形品。
  12. 樹脂組成物の生成方法であって、
    一又は複数種類の共重合体を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させることを特徴とする樹脂組成物の生成方法。
  13. 樹脂組成物の生成方法であって、
    屈折率の異なる2種類以上の物質を含有する樹脂材料100重量部に対して、粒子径が1〜7μmの光輝材を、1.8〜4.4重量部含有させることを特徴とする樹脂組成物の生成方法。
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