JP2010096279A - 無段変速装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速機の作動時に変速アクチュエータにより消費されるエネルギを低減し、かつ変速機の容量を増大した場合でも、この変速機の容量増加に伴って、変速アクチュエータにより消費されるエネルギが増大することを抑制する。
【解決手段】段変速装置10では、推力スプリング20が、可動シーブ257をVベルト211の張力TFに対応する推力DFで軸線方向に沿って固定シーブ253側へ付勢し、プーリ溝262におけるVベルト211が圧接する巻掛領域の外径を、変速アクチュエータ100による変速動作に伴うプーリ溝16における巻掛領域の外径変化に追従するように可変すると共に、カウンタスプリング18が、可動シーブ207を推力スプリング20の推力DFに対応するカウンタ力CFで軸線方向に沿って固定シーブ203側へ付勢している。
【選択図】図6

Description

本本発明は、Vベルトがそれぞれ巻き掛けられる第1及び第2のプーリを有し、第1及び第2のプーリにおけるVベルトが圧接する巻掛領域の外径がそれぞれ可変とされた無段変速装置に関する。
Vベルトを用いた無段変速装置としては、例えば、特許文献1に記載されたもの(Vベルト式無段変速装置)が知られている。この特許文献1記載の無段変速装置は、ドライブプーリ、ドリブンプーリ及びこれらのプーリにそれぞれ巻き掛けられるVベルトを備えている。
上記ドライブプーリには、エンジンのクランクシャフトに連結されたドライブプーリ軸、ドライブプーリ軸に固定された固定シーブ、ドライブプーリ軸に軸方向に移動可能となるようにスプライン結合された可動シーブ及び、可動シーブを軸線方向に沿って駆動してドライブプーリ幅を変更する(Vベルトの接触半径を変更する)変速アクチュエータがそれぞれ設けられている。この変速アクチュエータは、電動モータ及び、この電動モータが発生した回転力が減速歯車列を介して伝達されるスライダ及び、ドライブプーリ軸の外周側に配置された軸状部材を備えている。ここで、スライダ及び軸状部材は、例えば、ボール螺子機構を構成している。
無段変速装置では、電動モータからの回転力によりドライブプーリ軸の外周側に配置された軸状部材にねじ結合されたスライダが回転すると、スライダが回転方向に対応する方向へ、回転量に対応する距離だけ軸線方向へ移動する。そして、スライダが軸線方向へ移動することより、可動シーブがスライダに追従するように軸線方向へ移動する。
一方、上記ドリブンプーリには、減速機等を介して車軸に連結されたドリブンプーリ軸、ドリブンプーリ軸に固定された固定シーブ、ドリブンプーリ軸に軸方向に移動可能となるようにスプライン結合された可動シーブ及び、可動シーブを常に固定シーブ側へ付勢する推力スプリングがそれぞれ設けられている。
特許文献1記載の無段変速装置では、変速アクチュエータにより可動シーブを軸線方向に沿って駆動し、ドライブプーリ幅を変更すると共に、ドライブプーリにおけるVベルトの接触半径を変化させると、このドライブプーリ幅の変化に追従するように、ドライブプーリにおける可動シーブが軸線方向に沿って移動し、ドリブンプーリ幅が変化すると共に、ドリブンプーリにおけるVベルトの接触半径も変化する。このとき、ドリブンプーリにおけるVベルトの接触半径は、ドライブプーリにおけるVベルトの接触半径の変化(増減)とは、反対方向に増加又は減少する。
ところで、特許文献1に記載されたような無段変速装置では、その構造上、ドリブンプーリにおける推力スプリングの付勢力がドリブンプーリの可動シーブ、Vベルト及びドライブプーリの可動シーブを介して常に変速アクチュエータに伝達される。このことから、変速動作を行う際には、変速アクチュエータは、少なくとも推力スプリングの付勢力に抗して、ドライブプーリの可動シーブを軸線方向へ駆動(進退)させる必要があり、変速アクチュエータの電動モータは、少なくとも推力スプリングの付勢力に対応する回転力(駆動トルク)を発生する必要があり、その駆動トルクの大きさに応じて電動モータの能力(定格)も設定される。
また特許文献1に記載されたような無段変速装置では、変速動作を行うことなく変速比を一定に保持する際にも、推力スプリングの付勢力に抗してドライブプーリの可動シーブを停止させておく必要があり、変速アクチュエータの電動モータにより推力スプリングの付勢力に対応する回転力(保持トルク)を発生させ、その保持トルクに応じた電流を電動モータに供給し続ける必要がある。
また、上記のような無段変速装置を備えた自動二輪車等の車両では、車両の走行中に運転者がメインスイッチを切ってしまったような場合には、エンジンが停止するとともに、ロー以外の変速比の状態で変速制御が中断されてしまうため、円滑な再発進が妨げられる。このような不都合を解消するため、例えば、特許文献2には、停止時に無段変速装置の変速比がローになっていない場合に、次回の始動操作時に無段変速装置の変速比を強制的にローに戻した後、エンジンを起動するように構成した自動二輪車が開示されている。
特開2001−65650号公報(段落〔0021〕、図4参照) 特許第2584618号公報
従って、特許文献1に記載されたような無段変速装置では、変速動作を行わない時にも、変速動作時と大きく異ならない電力が変速アクチュエータの電動モータにより消費されるため、変速機の作動時に無段変速装置が消費する電力量が大きなものになってしまう。
また、特許文献1に記載されたような無段変速装置では、伝達トルクが大きい場合、Vベルトを高張力状態で使用し、このVベルトの張力値に応じて推力スプリングの付勢力を大きくする必要があり、推力スプリングの付勢力の増加に従って、電動モータの定格を増大する必要がある。このため、無段変速機の伝達トルク(容量)が大きい場合、電動モータとして定格が大きいものを用いることが要求され、かつ変速動作時及び非変速時の何れの時にも、電動モータの消費電力が増大する。
また特許文献2に記載されたような車両では、再発進を行うための始動操作時に、無段変速装置の変速比をローに戻した後エンジンを起動させるため、始動操作に連動して無段変速装置の変速比が強制的にローに制御する機構が必要になるため、無段変速装置の構造が複雑になってしまう。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、変速機の作動時に変速アクチュエータにより消費されるエネルギを低減でき、かつ変速機の容量を増大した場合でも、この変速機の容量増加に伴って、変速アクチュエータにより消費されるエネルギが増大することを効果的に抑制できる無段変速機を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る無段変速装置は、第1のプーリ軸、第1のプーリ軸に固定された第1の固定シーブ、第1のプーリ軸により軸線方向に沿って移動可能に支持された第1の可動シーブを具備し、第1の固定シーブと第1の可動シーブとの間に第1のプーリ溝が形成される第1のプーリと、第2のプーリ軸、第2のプーリ軸に固定された第2の固定シーブ、第2のプーリ軸により軸線方向に沿って移動可能に支持された第2の可動シーブを具備し、第2の固定シーブと第2の可動シーブとの間に第2のプーリ溝が形成される第2のプーリと、一端側が前記第1のプーリ溝に巻掛けられると共に、他端側が前記第2のプーリ溝に巻掛けられる無端状のVベルトと、前記第1の可動シーブを軸線方向に沿って進退させて、前記第1のプーリ溝における前記Vベルトが圧接する第1の巻掛領域の外径を可変する変速アクチュエータと、前記第2の可動シーブを、前記Vベルトの張力に対応する推力で軸線方向に沿って前記第2の固定シーブ側へ付勢し、前記第2のプーリ溝における前記Vベルトが圧接する第2の巻掛領域の外径を、前記第1の巻掛領域の外径変化に追従するように可変する推力スプリングと、前記第1の可動シーブを、前記推力スプリングの推力に対応するカウンタ力で軸線方向に沿って前記第1の固定シーブ側へ付勢するカウンタスプリングと、を有することを特徴とする。
上記請求項1に係る無段変速装置では、推力スプリングが、第2の可動シーブをVベルトの張力に対応する推力で軸線方向に沿って第2の固定シーブ側へ付勢し、第2のプーリ溝におけるVベルトが圧接する第2の巻掛領域の外径を、変速アクチュエータによる変速動作に伴う第1の巻掛領域の外径変化に追従するように可変すると共に、カウンタスプリングが、第1の可動シーブを推力スプリングの推力に対応するカウンタ力で軸線方向に沿って第1の固定シーブ側へ付勢する。
これにより、例えば、カウンタスプリングが発生するカウンタ力が“0”であると仮定した場合、推力スプリングの推力は、第2の可動シーブ及びVベルトを介し、軸線方向に沿った分力として第1の可動シーブに伝達され、第1の可動シーブを介して変速アクチュエータには推力スプリングの推力に対応する力(反力)が伝達される。従って、この場合には、変速アクチュエータは、変速動作を行う際には、推力に対応する反力を超える駆動力を第1の可動シーブに伝達しなければ、第1の可動シーブを目標となる変速比に対応する位置へ移動させることができず、また変速比を一定に保持する際には、推力スプリングの推力に対応する反力と略等しい駆動力を第1の可動シーブに伝達し続けなければ、第1の可動シーブを、その時点の変速比に対応する位置に停止させておくことができない。
それに対し、カウンタスプリングが発生するカウンタ力が“0”を越えている場合、推力スプリングの推力は、第2の可動シーブ及びVベルトを介して軸線方向に沿った分力として第1の可動シーブに伝達されるが、この第1の可動シーブには、推力に対応する分力とは反対方向のカウンタ力がカウンタスプリングにより作用していることから、変速アクチュエータには、推力に対応する分力とカウンタ力との差と等しい力(反力)が第1の可動シーブを介して伝達される。
従って、この場合には、変速アクチュエータは、変速動作を行う際には、推力に対応する分力とカウンタ力との差と等しい反力を超える駆動力を第1の可動シーブに伝達すれば、第1の可動シーブを目標とする変速比に対応する位置へ移動させることができ、また変速比を一定に保持する際には、推力に対応する分力とカウンタ力との差(反力)と等しい駆動力を第1の可動シーブに伝達し続ければ、第1の可動シーブを、その時点の変速比に対応する位置に停止させておくことができる。
この結果、請求項1に係る無段変速装置によれば、推力スプリングの推力の大きさに応じてカウンタスプリングのカウンタ力の大きさを適宜設定すれば、変速動作を行わない時に、変速アクチュエータが第1の可動シーブを停止させておくために消費する電力等のエネルギを低減できると共に、変速アクチュエータが第1の可動シーブを目標とする変速比に対応する位置へ移動させる際に、消費するエネルギも低減でき、また変速装置の容量を増大するために、推力スプリングの推力を大きいものにした場合でも、この推力の増加に従って変速アクチュエータにより消費される電力等のエネルギが増大することを効果的に抑制できる。
また本発明の請求項2に係る無段変速装置は、請求項1記載の無段変速装置において、前記カウンタスプリングは、前記第1のプーリ軸を支持する支持体と前記第1の可動シーブとの間に介装され、軸線方向に沿った復元力を前記カウンタ力として前記第1の可動シーブに伝達することを特徴とする。
また本発明の請求項3に係る無段変速装置は、請求項1記載の無段変速装置において、前記変速アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータの回転力を直線的な駆動力に変換する変換機構と、前記変換機構から出力された駆動力により揺動すると共に、該駆動力を前記第1の可動シーブに伝達して該第1の可動シーブを軸線方向に沿って進退させる揺動部材とを有することを特徴とする。
また本発明の請求項4に係る無段変速装置は、請求項3記載の無段変速装置において、前記カウンタスプリングは、前記揺動部材を支持する支持体と揺動部材との間に介装され、前記揺動部材を介して前記第1の可動シーブに前記カウンタ力を伝達することを特徴とする。
また本発明の請求項5に係る無段変速装置は、請求項3又は4記載の無段変速装置において、前記運動変換機構をボール螺子機構により構成したことを特徴とする。
また本発明の請求項6に係る無段変速装置は、請求項1乃至5の何れか1項記載の無段変速装置において、前記カウンタ力を、前記推力よりも小さく設定したことを特徴とする。
以上説明したように、本発明に係る無段変速装置によれば、変速機の作動時に変速アクチュエータにより消費されるエネルギを低減でき、かつ変速機の容量を増大した場合でも、この変速機の容量増加に伴って、変速アクチュエータにより消費されるエネルギが増大することを効果的に抑制できる。
次に、本発明の実施形態に係る無段変速装置について図面を参照して説明する。
(無段変速装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る無段変速装置における駆動側プーリ及び変速アクチュエータの軸線方向に沿った側面断面図である。図2は、図1に示される無段変速装置を、カバー部材を外した状態で矢印II方向に見た図であり、ギヤ歯を省略して示している。図3は、図1に示される無段変速装置を、カバー部材を外した状態で矢印III方向に見た図である。図4は、図1に示される無段変速装置を矢印IV方向に見た図であり、この図ではハウジングを省略している。図5は、本発明の実施形態に係る無段変速装置における従動側プーリの側面図である。
図1に示されるアクチュエータ100において、エンジンケース12に固定されるハウジング101は、中空のハウジング本体101Aと、その端面に対してボルト(図示省略)により組み付けられたカバー部材101Bとからなる。図2に示されるように、ハウジング本体101Aの内部には、モータ室101a及びねじ軸室101bが形成されている。モータ室101a内には、外部の制御装置(不図示)によって制御される電動モータ(ブレーキを有するサーボモータであると好ましい)102が固定されている。
電動の電動モータ102の回転軸102aの端部には、金属製の駆動ギヤ103が圧入により取り付けられている。駆動ギヤ103に隣接して、図3に示されるように、歯数の大きな大ギヤ105aと、歯数の小さな小ギヤ105bとが樹脂より一体的に形成されており、これらの大ギヤ105a及び小ギヤ105bは、ハウジング本体101Aに植設された中間軸104(図2参照)により回転自在に支持されている。大ギヤ105aは、駆動ギヤ103に噛合しており、小ギヤ105bは樹脂製の従動ギヤ106に噛合している。駆動ギヤ103と、大ギヤ105aと、小ギヤ105bと、従動ギヤ106とは減速機構を構成している。
図1に示されるように、従動ギヤ106の内周にはスプライン雌溝が形成され、中空円筒状のナット部材107の外周に形成されたスプライン雄溝に係合して一体的に回転するように結合されている。但し、従動ギヤ106とナット部材107とは二面幅(平行な二面で周面をカットした構成)により相対回転を制限されていても良い。ナット部材107の外周には、玉軸受108の内輪が嵌合しており、かかる内輪は、ナット部材107の周溝に係合した止め輪119により軸線方向の相対変位が制限されている。一方、玉軸受108の外輪は、ハウジング本体101Aの端部の段部101dに嵌合しており、ビスBによりハウジング本体101Aに固定される軸受ホルダ109により抑えられている。ナット部材107の先端(図1で右端)外周は、ハウジング本体101Aの内周に対してブッシュ110により回転方向に摺動自在に支持されている。
ねじ軸111は、ナット部材107の内周側に挿通され、雄ねじ溝111cを有するねじ部111aと、それに連結された丸軸部111bとから一体的に形成されてなる。ナット部材107の内周面には、雄ねじ溝111cに対向して、雌ねじ溝107aが形成され、両ねじ溝111c、107aによって形成される螺旋状の空間(転走路)には、多数のボール112が転動自在に配置されている。ナット部材107は、玉軸受108を介して、ハウジング本体101Aに対する軸線方向変位が制限され、回転のみ可能となっている。一方、ねじ軸111は、アーム部301の先端部と係合することにより、ねじ軸室101b内において軸線方向に沿って相対移動可能だが、相対回転不能となっている。尚、ねじ軸111と、ナット部材107と、ボール112とはボールねじ機構を構成している。
ねじ部111aの近傍における丸軸部111bの外周には、環状のセンサカラー113が圧入により嵌合し、丸軸部111bの周溝に係合した止め輪114により軸線方向の相対変位が制限されている。又、丸軸部111bの先端は、ハウジング本体101Aの内周に対してブッシュ115により支持されており、またブッシュ115の外方に配置されたシール116により、ハウジング本体101Aに対して密封されている。ハウジング本体101Aから突出したねじ軸111の端部には、ドーナツ板状の押圧部材117(図1では下半分のみ断面で示される)が圧入により嵌合している。
ハウジング本体101Aは、側面(図1で上部)に長孔101eを形成している。長孔101eの外部を遮蔽するようにして、センサ118がハウジング本体101Aに取り付けられている。長孔101eを介して、センサ118側より円筒ピン状のセンサアーム118aが延在し、その先端をセンサカラー113に当接させている。センサアーム118aは、センサ118内部の回転式ポテンシオメータ(不図示)等に連結され一体的に回転する回転板118bに対して偏心した位置に植設されている(図4参照)。
図4において、ねじ軸111が軸線方向右方に変位すると、センサカラー113によってセンサアーム118aが押され、回転板118bが回転する。この回転量に応じて、ポテンシオメータが対応する信号を発生するので、外部の制御装置(不図示)は、センサ118が出力するこの信号に基づいて、ねじ軸111の軸線方向変位量を測定することができる。一方、センサ118内部に設けられた不図示のコイルスプリング等により、回転板118bは、常に図4で時計回りに付勢されているため、ねじ軸111が逆方向(図4で軸線方向左方)に変位した場合には、センサアーム118aもそれに追従することとなり、その回転量に応じて、ポテンシャルメータが対応する信号を発生することとなる。
次に、無段変速装置10における駆動側プーリ200について説明する。図1において、エンジン13のクランク軸14(図6参照)から回転力が入力する駆動側プーリ軸201は、エンジンケース12に対して、玉軸受202により回転自在に支持されている。駆動側プーリ軸201の外周には、その先端側から、雄ねじ部201aと、スプライン雄溝201bとが形成されている。
固定シーブ203は、図1で右側の端面が円錐面203aとなっており、内周にスプライン雌溝203bを有している。スプライン雄溝201bにスプライン雌溝203bを係合させることにより、駆動側プーリ軸201に固定シーブ203が取り付けられ、一体的に回転するようになっている。円筒状のスリーブ206が、駆動側プーリ軸201の外周に圧入され、その図1で右端はストッパ210に突き当てられている。固定シーブ203は、円筒状のスリーブ206の左端に突き当てられた状態で、ワッシャ204を挟んで、雄ねじ部201aに螺合するナット215により押圧され、駆動側プーリ軸201に対して固定されている。
スリーブ206の外周には、スプライン雄溝206aが形成されている。可動シーブ207は、中央筒部207aの左端がフランジ状に延在し、その左側の面が、固定シーブ203の円錐面203aと鏡像形状の円錐面207bとなっており、両者は半径方向外側にゆくに従って軸線方向に沿って離間している。中央筒部207aの内周にスプライン雌溝207cが形成されている。スプライン雄溝206aにスプライン雌溝207cを係合させることにより、スリーブ206に対して可動シーブ207が、軸線方向に移動可能であるが、一体的に回転するように取り付けられている。尚、スプライン係合の代わりにキー連結を用いても良い。
中央筒部207aの外周には、玉軸受208の内輪が圧入されている。玉軸受208の外輪は、軸受ホルダ209に嵌合している。軸受ホルダ209は、玉軸受208に嵌合した円筒部209aと、円筒部209aの図1で左端から半径方向外側に延在する外フランジ209bと、円筒部209aの図1で右端から半径方向内側に延在する内フランジ209cとを有する。玉軸受208の外輪は、内フランジ209cに突き当てられた状態である。固定シーブ203と可動シーブ207との間には、断面が台形状のVベルト211が配設されている。
駆動側プーリ200では、固定シーブ203の円錐面203aと可動シーブ207の円錐面207bとの間がプーリ溝16とされており、このプーリ溝16には、駆動側プーリ200及び後述する従動側プーリ251により長円状に張設されたVベルト211の一端側(本実施形態では、上端側)が外周側から巻き掛けられている。
またVベルト211の他端側(本実施形態では、下端側)は、図5に示されるように、従動側プーリ250に巻き掛けられている。従動側プーリ250は、図6に示されるように、減速機32を介して車軸34に連結された従動側プーリ軸251、この従動側プーリ軸251の外周側にそれぞれ配置された固定シーブ253及び可動シーブ257並びに、可動シーブ257の軸線方向外側に取り付けられた遠心クラッチ機構252を備えている。固定シーブ253は、可動シーブ257に対して軸線方向に沿って基端側(図5では、左側)に配置されており、従動側プーリ軸251と一体となって回転する。固定シーブ253は、その軸線方向内側の端面が駆動側プーリ200の固定シーブ203の円錐面203aと同一形状を有する円錐面253aとされている。
可動シーブ257は、図6に示されるように、シーブ本体部255と、このシーブ本体部255の内周面に同軸的に取り付けられた玉軸受254を備えている。玉軸受254は、その外輪がシーブ本体部255の内周面に固定されると共に、内輪が従動側プーリ軸251の一部に設けられたスプライン部(図示省略)にスプライン結合されている。シーブ本体部255は、従動側プーリ軸251の外周側に軸線方向へスライド可能となるように嵌挿されている。これにより、可動シーブ257は、従動側プーリ軸251に対して相対的に回動可能とされると共に、軸線方向に沿って移動可能とされている。
遠心クラッチ機構252は、従動側プーリ軸251の外周側に配置された内輪ディスク258、この内輪ディスク258の外周側に配置された外輪ディスク259及び内輪ディスク258と外輪ディスク259との間に配置された摩擦部材260を備えている。内輪ディスク258は、従動側プーリ軸251に対して相対的に回動可能とされると共に、シーブ本体部255に一体となって回転するように固定されている。また外輪ディスク259は、内輪ディスク258に対して相対的に回転可能とされると共に、従動側プーリ軸251に一体となって回転するように固定されている。
遠心クラッチ機構252は発進用クラッチとして構成されており、内輪ディスク258が回転開始すると、遠心力により摩擦部材260が外周側へ移動し、内輪ディスク258を外輪ディスク59にトルク伝達可能となるように連結する。これにより、内輪ディスク258の回転が摩擦部材260及び外輪ディスク259を介して従動側プーリ軸251に伝達され、内輪ディスク258に対して僅かに遅れて従動側プーリ軸251が回転開始する。
図5に示されるように、従動側プーリ250では、固定シーブ253の円錐面253aと可動シーブ257の円錐面257aとの間がプーリ溝262とされており、このプーリ溝262には、Vベルト211の他端側(本実施形態では、下端側)が外周側から巻き掛けられている。
次に、変速アクチュエータ100におけるフォーク部材300について説明する。揺動部材であるフォーク部材300は、例えばアルミダイキャスト製であって、図1に示されるように、フォーク部材300には、略「く」字状のアーム部301が形成されている。アーム部301の中央近傍には、円形の孔301aが形成されている。フォーク部材300は、図1に示されるように、不図示のエンジンケースに植設されたシャフトSに対し、孔301aを挿通させることにより、シャフトSの軸線回りに揺動可能となっている。このとき、アーム部301の上端部は、アクチュエータ100の押圧部材117に先端面(右端面)に当接し、アーム部301の下端部は、駆動側プーリ200における軸受ホルダ209の外フランジ209bの軸線方向外側の端面(右端面)に当接している。
次に、無段変速装置10における駆動側プーリ200及び従動側プーリ250にそれぞれ配置されたカウンタスプリング18及び推力スプリング20について説明する。なお、本実施形態では、カウンタスプリング18及び推力スプリング20がそれぞれ円筒状のコイルスプリングによって構成され、軸線方向に圧縮された状態で使用されている。
図6に示されるように、従動側プーリ250におけるシーブ本体部255には、軸線方向外側に略円筒状に形成された円筒部255aが一体的に形成されており、この円筒部255aの外周側には、玉軸受254を介して環状の座受リング264が配置されている。座受リング264は、玉軸受254により円筒部255a(シーブ本体部255)に対して相対的に回動可能とされており、シーブ本体部255が回転している時でも、回転停止が可能になっている。また遠心クラッチ機構252における外輪ディスク259は、その軸線方向内側の端面が座受面259aとされている。
従動側プーリ250では、座受リング264と外輪ディスク259の座受面259aと間に推力スプリング20が圧縮状態とされて配置されている。このとき、推力スプリング20は、軸線方向一端側(図6では、左端側)の端面(座面)を座受面259aに圧接させると共に、他端側の座面を座受リング264の端面に圧接させている。
ここで、座受リング264には、外輪ディスク259側の一端面における内周側に軸線方向に沿って外輪ディスク259側へ突出する円柱状の係合部264aが一体的に形成されており、この係合部264aは、推力スプリング20の内周側に嵌挿されている。また座受面259aにも、推力スプリング20の座面形状に対応する凸状又は凹状の係合部(図示省略)が形成されており、この係合部は推力スプリング20の一端部(座巻部)に係合している。これにより、推力スプリング20の径方向に沿った移動が拘束され、推力スプリング20が従動側プーリ軸251と実質的に同軸となる位置に保持される。
圧縮状態とされた推力スプリング20は、可動シーブ257を所定の大きさ推力DFにより軸線方向に沿って固定シーブ253側へ付勢している。推力DFは、基本的にVベルト211の張力に対応する大きさに設定されており、従動側プーリ250における一対の円錐面253a、257aをそれぞれVベルト211の両側の側端面に推力DFに対応(バランス)する力で圧接させる。
図1に示されるように、駆動側プーリ軸201の外周側には、環状の座受リング266が同軸的に配置されており、この座受リング266はエンジンケース12の外側面に固定されている。また軸受ホルダ209における内フランジ209cの軸線方向外側の端面は座受面209dとされている。
駆動側プーリ200では、座受リング266と内フランジ209cの座受面209dとのと間にカウンタスプリング18が圧縮状態とされて配置されている。このとき、カウンタスプリング18は、軸線方向一端側(図1では、左端側)の端面(座面)を座受面209dに圧接させると共に、他端側の座面を座受リング266の端面に圧接させている。
ここで、座受リング266には、可動シーブ207側の端面の内周側に可動シーブ257側へ突出する円柱状の係合部266aが一体的に形成されており、この係合部266aは、カウンタスプリング18の内周側に嵌挿されている。また座受面209dにも、カウンタスプリング18の座面形状に対応する凸状又は凹状の係合部(図示省略)が形成されており、この係合部はカウンタスプリング18の一端部(座巻部)に係合している。これにより、カウンタスプリング18の径方向に沿った移動が拘束され、カウンタスプリング18が駆動側プーリ軸201と実質的に同軸となる位置に保持される。
圧縮状態とされたカウンタスプリング18は、可動シーブ207を所定の大きさカウンタ力CFにより軸線方向に沿って固定シーブ203側へ付勢している。カウンタ力CFは、推力スプリング20の推力DFに対応する大きさに設定されている。ここで、可動シーブ207は、常にVベルト211の張力TFを受け、その軸線方向に沿った分力F1により軸線方向外側へ付勢されている。このとき、カウンタ力CFは、軸線方向に沿って分力F1とは反対方向の力として可動シーブ207に作用する。このとき、カウンタスプリング18は、推力DFよりも若干小さいカウンタ力CFを可動シーブ207に作用させるように、そのばね定数の大きさが設定されている。
(無段変速装置の動作)
次に、無段変速装置10の動作について説明する。尚、ここでは説明を簡略化するために前進についてのみ説明し、後進については省略する。車両におけるECU(Engine Control Unit)等の制御装置は、車速、エンジン回転数、アクセル開度等に基づいて、最適な変速比を選択する。選択した選択比に基づいて、アクチュエータ100を駆動する。
尚、動力を伝達している間中、フォーク部材300には、Vベルト211からの分力F1とカウンタスプリング18のカウンタ力CFとの差と実質的に等しい力(反力RF)が可動シーブ207を介して作用する。このとき、(分力F1)>(カウンタ力CF)の関係になっているので、可動シーブ207からの反力RFによりフォーク部材300は常に反時計回りの方向に付勢される。
ここで、制御装置が減速を指示したときは、電動モータ102に所定の極性の電力が供給され、図2において、回転軸102aが所定の方向に回転する。回転軸102aの回転力は、駆動ギヤ103、大ギヤ105a、小ギヤ105b、従動ギヤ106を介してナット部材107に伝達されるので、ナット部材107の回転に応じてねじ軸111が、図1で右方へと変位する。ねじ軸111が右方に変位すると、押圧部材117も同方向に変位するので、それに当接しているアーム部301の上端が右方に押され、可動シーブ207からの反力RFに抗して、フォーク部材300は図1で時計回りに揺動する。
すると、アーム部301の下端が、軸受ホルダ209の外フランジ209bを左方へ押圧するので、軸受ホルダ209は玉軸受208を介して可動シーブ207を左方に付勢する。このとき、可動シーブ207は回転しているが、フォーク部材300は回転していない。しかしながら、軸受ホルダ209と可動シーブ207との間には、玉軸受208が存在するので、摩擦等が生じず、早期摩耗や動力伝達ロス等を抑制できる。このように軸受ホルダ209を介して付勢されることで、駆動側プーリ軸201と共に回転しているスリーブ206に沿って、可動シーブ207が固定シーブ203に接近するように変位する(プーリ溝16の幅を狭くする)ので、Vベルト211は、回転する円錐面203aと円錐面207bの間に挟持されながら、その半径方向外側へと移動する。すなわち、プーリ溝16におけるVベルト211が圧接する領域である巻掛領域が外周側へ変位し、この巻掛領域の外径が拡大する。
一方、Vベルト211により連結された、従動側プーリ250では、プーリ溝262における巻掛領域の外径が拡大すると、一時的にVベルト211の張力TFが増加すると共に、可動シーブ257に作用する張力TFの軸線方向に沿った分力F2(図5参照)も増大する。これにより、可動シーブ257が推力スプリング20の推力DFに抗して軸線方向外側へ移動し、プーリ溝262の幅が拡大するので、Vベルト211は、回転する円錐面253aと円錐面257bの間に挟持されながら、その半径方向内側へと移動する。すなわち、プーリ溝262におけるVベルト211が圧接する領域である巻掛領域が内周側へ変位し、この巻掛領域の外径が縮小する。
そして、プーリ溝262における巻掛領域の外径が縮小するに従って、Vベルト211から可動シーブ257に作用する分力F2が減少するので、可動シーブ257は、分力F2が推力DFと実質的に等しくなる位置まで軸線方向に沿って移動すると、移動停止してプーリ溝262が一定幅に保たれる。
無段変速装置10では、上記のように、駆動側プーリ200でプーリ溝16における巻掛領域の外径が増大し、従動側プーリ250ではプーリ溝262における巻掛領域の外径が縮小することにより、入力軸である駆動側プーリ軸201の回転速度に対して、出力軸である従動側プーリ軸251の回転速度が低下し、減速を実現できる。制御装置は、センサ118からの信号に基づいて、所定位置までねじ軸111が変位したことを検知して、モータへの駆動制御を停止する。これにより、可動シーブ207の位置が固定されるので、Vベルト211のプーリ半径が固定され、定速状態になる。
これに対し、制御装置が増速を指示したときは、電動モータ102に上述とは逆極性の電力が供給され、図2において、回転軸102aが逆方向に回転する。回転軸102aの回転力は、駆動ギヤ103、大ギヤ105a、小ギヤ105b、従動ギヤ106を介してナット部材107に伝達されるので、ナット部材107の回転に応じてねじ軸111が図1で左方へと変位する。ねじ軸111が左方に変位すると、押圧部材117も同方向に変位する。上述したように、フォーク部材300は、可動シーブ207からの反力RFにより反時計回りに付勢されているから、押圧部材117に当接しているアーム部301の上端は、それに追従して左方に変位し、よってフォーク部材300は図1で反時計回りに揺動する。
すると、アーム部301の下端が右方に変位することで、アーム部301の下端の変位に追従し、可動シーブ207は、フォーク部材300に制限される位置まで、Vベルト211からの分力F1により右方に変位する(プーリ溝16の幅を大きくする)。これによりVベルト211は、回転する円錐面203aと円錐面207bの間で挟持されながら、その半径方向内側へと移動する。すなわち、プーリ溝16におけるVベルト211が圧接する領域である巻掛領域が内周側へ変位し、この巻掛領域の外径が縮小する。
一方、Vベルト211により連結された、従動側プーリ250では、プーリ溝262における巻掛領域の外径が縮小すると、一時的にVベルト211の張力TFが減少すると共に、可動シーブ257に作用する張力TFの軸線方向に沿った分力F2(図5参照)も減少する。これにより、推力DFが分力F2よりも大きくなって、可動シーブ257が推力スプリング20の推力DFにより軸線方向内側へ移動し、プーリ溝262の幅が縮小するので、Vベルト211は、回転する円錐面253aと円錐面257bの間に挟持されながら、その半径方向外側へと移動する。すなわち、プーリ溝262におけるVベルト211が圧接する領域である巻掛領域が外周側へ変位し、この巻掛領域の外径が増大する。
そして、プーリ溝262における巻掛領域の増大が縮小するに従って、Vベルト211から可動シーブ257に作用する分力F2が増加するので、可動シーブ257は、分力F2が推力DFと実質的に等しくなる位置まで軸線方向に沿って移動すると、移動停止してプーリ溝262が一定幅に保たれる。
無段変速装置10では、上記のように、駆動側プーリ200でプーリ溝16における巻掛領域の外径が縮小し、従動側プーリ250ではプーリ溝262における巻掛領域の外径が増大することにより、入力軸である駆動側プーリ軸201の回転速度に対して、出力軸である従動側プーリ軸251の回転速度が上昇し、増速を実現できる。
(無段変速装置の作用)
次に、上記のように構成された本実施形態に係る無段変速装置10の作用について説明する。無段変速装置10では、推力スプリング20が、可動シーブ257をVベルト211の張力TFに対応する推力DFで軸線方向に沿って固定シーブ253側へ付勢し、プーリ溝262におけるVベルト211が圧接する巻掛領域の外径を、変速アクチュエータ100による変速動作に伴うプーリ溝16における巻掛領域の外径変化に追従するように可変すると共に、カウンタスプリング18が、可動シーブ207を推力スプリング20の推力DFに対応するカウンタ力CFで軸線方向に沿って固定シーブ203側へ付勢している。
これにより、例えば、カウンタスプリング18が発生するカウンタ力CFが“0”であると仮定した場合、推力スプリング20の推力DFは、可動シーブ257及びVベルト211を介し、軸線方向に沿った分力F1として可動シーブ207に伝達され、可動シーブ207を介して変速アクチュエータ100のフォーク部材300には推力DFに対応する力(反力RF)が伝達される。
従って、この場合には、変速アクチュエータ100は、変速動作を行う際には、推力DFに対応する反力RFを超える駆動力を可動シーブ207に伝達しなければ、可動シーブ207を目標となる変速比に対応する位置へ移動させることができず、また変速比を一定に保持する際には、推力DFに対応する反力RFと略等しい駆動力を可動シーブ207に伝達し続けなければ、可動シーブ207を、その時点の変速比に対応する位置に停止させておくことができない。
それに対し、カウンタスプリング18が発生するカウンタ力CFが“0”を越えている場合、推力スプリング20の推力DFは、可動シーブ257及びVベルト211を介して軸線方向に沿った分力F1として可動シーブ207に伝達されるが、可動シーブ207には、分力F1分力とは反対方向のカウンタ力CFがカウンタスプリング18により作用していることから、変速アクチュエータ100のフォーク部材300には、分力F1とカウンタ力CFとの差と等しい力(反力RF)が可動シーブ207を介して伝達される。
従って、この場合には、変速アクチュエータ100は、変速動作を行う際には、推力DFに対応する分力F1とカウンタ力CFとの差と等しい反力RFを超える駆動力を可動シーブ207に伝達すれば、可動シーブ207を目標とする変速比に対応する位置へ移動させることができ、また変速比を一定に保持する際には、推力DFに対応する分力F1とカウンタ力CFとの差(反力RF)と等しい駆動力を可動シーブ207に伝達し続ければ、可動シーブ207を、その時点の変速比に対応する位置に停止させておくことができる。
この結果、無段変速装置10によれば、推力スプリング20の推力DFに応じてカウンタスプリング18のカウンタ力CFの大きさを適宜設定すれば、変速動作を行わない時に、変速アクチュエータ100が可動シーブ207を停止させておくために電動モータ102が消費する電力を低減できると共に、変速アクチュエータ100が可動シーブ207を目標とする変速比に対応する位置へ移動させる際に、電動モータ102が消費する電力も低減でき、また無段変速装置10の容量を増大するために、推力スプリング20の推力DFを大きいものにした場合でも、この推力DFの増加に従って変速アクチュエータ100の電動モータ102により消費される電力が増大することを効果的に抑制できる。
また、本実施形態の無段変速装置10では、カウンタスプリングが駆動側プーリ軸201を支持する支持体であるエンジンケース12と可動シーブ207との間に介装され、その軸線方向に沿った復元力をカウンタ力CFとして可動シーブ207に伝達することにより、カウンタスプリング18の軸線方向に沿った復元力をカウンタ力CFとして直接的に可動シーブ207に伝達できるので、軸線方向に沿った反力RFの大きさに応じて設定されるカウンタ力CFの適正値を簡単に求めることが可能になり、カウンタスプリング18の設計作業を効率的に行うことができる。
また無段変速装置10では、変速アクチュエータ100が、電動モータ102と、電動モータ102の回転力を直線的な駆動力に変換するボールねじ機構(ねじ軸111、ナット部材107、ボール112)、このボールねじ機構から出力された駆動力により揺動すると共に、この駆動力を可動シーブ207に伝達して可動シーブ207を軸線方向に沿って進退させるフォーク部材300とを有する。
これにより、例えば、ボールねじ機構を可動シーブ207の外周側に配置し、ボールねじ機構が発生する駆動力を直接的に可動シーブ207に伝達する場合と比較し、ボールねじ機構におけるナット部材107及びねじ軸111をそれぞれ大幅に小型軽量化することができ、ナット部材107及びねじ軸111が作動する際の慣性力を低減できるので、変速アクチュエータ100による変速動作を高速で行えるようになり、制御に対する無段変速装置10の応答性を向上できる。
このとき、特に、変速アクチュエータ100における回転運動を直線運動に変換する変換機構としてボール螺子機構を用いたことにより、ねじ軸111とナット部材107との間の摩擦抵抗を効果的に低減できるので、変速アクチュエータ100による変速動作を円滑かつ高速に行うことができる。
さらに、フォーク部材300を介してボールねじ機構が発生した力を可動シーブ207に伝達することにより、Vベルト211の張力TFにより可動シーブ207に駆動側プーリ軸201に対する傾きが生じた場合でも、可動シーブ207の傾きに起因してねじ軸111に傾きが生じることもないので、ボールねじ機構の疲労寿命等の低下を抑制できる。
また無段変速装置10では、カウンタスプリング18のカウンタ力CFを推力スプリング20の推力DFよりも小さく設定したことにより、電動モータ102への電力供給が遮断されて無段変速装置10が作動状態から停止状態になった場合に、任意の位置にある可動シーブ257を推力DFにより固定シーブ253に最近接した位置へ移動させ、プーリ溝262におけるVベルト211の巻掛領域を最大径にすることができるので、外部から動力及びエネルギを供給することなく、任意の減速比に制御されていた無段変速装置10を最大減速比の状態に変化させることができる。
この結果、例えば、車両が高速で走行していた直後に、車両が停車すると同時に、電動モータ102への電力供給が遮断された場合にも、無段変速装置10を最大減速比(一般には、Lowの減速比)に自動的に復帰させることができるので、車両の停止後に、無段変速装置10を減速比が小さいままになって、再発進が困難になることを防止できる。また特許文献2に記載された車両のように、始動操作時に連動して無段変速装置の変速比をローに制御するような特別な機構を追加する必要もないので、装置の構造が複雑になることもない。
(無段変速装置の変形例)
次に、本発明の実施形態の変形例に係る無段変速装置について説明する。
図7には、本発明の実施形態の変形例1に係る無段変速装置が示されている。この変形例1に係る無段変速装置22が、図1に示される無段変速装置10と異なる点は、カウンタスプリング24がフォーク部材300とエンジンケース12との間に配置されており、このカウンタスプリング24がフォーク部材300を介して可動シーブ257にカウンタ力CFを作用させる点である。カウンタスプリング24は、その素線の一端部がエンジンケース12に連結固定されると共に、素線の他端部がフォーク部材300の上端部に連結固定されており、常に引張り変形した状態とされている。これにより、フォーク部材300はシャフトSを中心として常に時計方向へ付勢され、その下端部によりカウンタスプリング24の引張り力に対応するカウンタ力CFで可動シーブ207を固定シーブ203側へ押圧する。
上記のように構成された無段変速装置22でも、無段変速装置10の場合と同様に、推力スプリング20の推力DFの大きさに応じてカウンタスプリング18のカウンタ力CFの大きさを適宜設定すれば、変速動作を行わない時に、変速アクチュエータ100が可動シーブ207を停止させておくために電動モータ102が消費する電力を低減できると共に、変速アクチュエータ100が可動シーブ207を目標とする変速比に対応する位置へ移動させる際に、電動モータ102が消費する電力も低減でき、また無段変速装置10の容量を増大するために、推力スプリング20の推力DFを大きいものにした場合でも、この推力DFの増加に従って変速アクチュエータ100の電動モータ102により消費される電力が増大することを効果的に抑制できる。
また無段変速装置22では、カウンタスプリング24の引張り力が一定である場合でも、フォーク部材300における梃子比(シャフトSからカウンタスプリング24の連結点までの距離:シャフトSから固定シーブ203に対する押圧点までの距離)を変えれば、カウンタ力CFを簡単に変化(増減)させることができるので、カウンタスプリング24の引張り力(ばね定数)及びフォーク部材300における梃子比の一方又は双方を適宜調整すれば、カウンタ力CFを広い範囲で調整することが可能になる。
また無段変速装置22では、可動シーブ207とエンジンケース12との間のスペースが小さい場合にも、カウンタ力CFを発生するカウンタスプリング24を柔軟にレイアウトし、装置の余裕スペース内に容易に設置することが可能になる。
なお、変形例1に係る無段変速装置22では、コイルスプリングからなるカウンタスプリング24をフォーク部材300とエンジンケース12との間に引張り変形した状態で配置していたが、コイルスプリングからなるカウンタスプリングをフォーク部材300とエンジンケース12や変速機カバー等との間に圧縮変形した状態で配置し、このカウンタスプリングの復元力(圧縮力)によりフォーク部材300を時計方向へ付勢するようにしても良い。
また、カウンタスプリング24については、その素線の一端部をエンジンケース12に連結すると共に、素線の他端部をフォーク部材300におけるシャフトSに対して下端側に連結し、カウンタスプリング24の復元力(引張り力又は圧縮力)によりフォーク部材300を時計方向へ付勢するようにしても良い。
また無段変速装置22では、コイルスプリングに代えて、シングルトーションスプリング、ダブルトーションスプリング等の捩りコイルスプリングをカウンタスプリングとして用い、このカウンタスプリングをシャフトSの外周側に嵌挿すると共に、カウンタスプリングの素線の一端部及び他端部をそれぞれエンジンケース12及びフォーク部材300に連結し、カウンタスプリングの捩り方向に沿った復元力によりフォーク部材300を時計方向へ付勢するようにしても良い。
図8には、本発明の実施形態の変形例2に係る無段変速装置が示されている。この変形例2に係る無段変速装置26が、図1に示される無段変速装置10と異なる点は、変速アクチュエータ100が軸直角方向に沿って駆動側プーリ軸201及び従動側プーリ軸251の間に配置されている点である。無段変速装置26における他の部分の構成については、無段変速装置10と基本的に同一であるので、それらの説明については省略する。
そして、上記のように構成された無段変速装置26によれば、変速アクチュエータ100が軸直角方向に沿って駆動側プーリ軸201及び従動側プーリ軸251の間に配置されていることにより、無段変速装置10と比較し、無段変速装置26の軸直角方向に沿った全長を短縮できるので、装置の小型化を実現できる。
図9には、本発明の実施形態の変形例3に係る無段変速装置が示されている。この変形例3に係る無段変速装置28が、図1に示される無段変速装置10と異なる点は、図1に示されるが軸直角方向に沿って駆動側プーリ軸201及び従動側プーリ軸251の間に配置されている点及び、カウンタスプリング24がフォーク部材300とエンジンケース12との間に配置されており、このカウンタスプリング224がフォーク部材300を介して可動シーブ257にカウンタ力CFを作用させる点である。
カウンタスプリング24については、変形例1に係る無段変速装置22におけるカウンタスプリング24と基本的に同一の構成を有するものであるので、その説明を省略する。また変速アクチュエータ100についても、変形例2に係る無段変速装置26における変速アクチュエータ100と基本的に同一の構成を有するものであるので、その説明を省略する。
従って、上記のように構成された変形例3に係る無段変速装置28でも、無段変速装置10の場合と同様に、推力スプリング20の推力DFの大きさに応じてカウンタスプリング18のカウンタ力CFの大きさを適宜設定すれば、変速動作を行わない時に、変速アクチュエータ100が可動シーブ207を停止させておくために電動モータ102が消費する電力を低減できると共に、変速アクチュエータ100が可動シーブ207を目標とする変速比に対応する位置へ移動させる際に、電動モータ102が消費する電力も低減でき、また無段変速装置10の容量を増大するために、推力スプリング20の推力DFを大きいものにした場合でも、この推力DFの増加に従って変速アクチュエータ100の電動モータ102により消費される電力が増大することを効果的に抑制できる。
さらに無段変速装置28によれば、変速アクチュエータ100が軸直角方向に沿って駆動側プーリ軸201及び従動側プーリ軸251の間に配置されていることにより、無段変速装置10と比較し、無段変速装置28の軸直角方向に沿った全長を短縮できるので、装置の小型化を実現できる。
なお、以上説明した本実施形態に係る無段変速装置10、22、26、28では、駆動側プーリ200を本発明における第1のプーリとして構成すると共に、従動側プーリ250を本発明における第2のプーリとして構成し、変速アクチュエータ100により駆動側プーリ200における可動シーブ207を、変速比に応じて軸線方向に沿って進退させていたが、これとは逆に、駆動側プーリ200を本発明における第2のプーリとして構成すると共に、従動側プーリ250を本発明における第1のプーリとして構成し、変速アクチュエータ100により従動側プーリ250における可動シーブ257を、変速比に応じて軸線方向に沿って進退させるようにしても良い。
また無段変速装置10、26では、それぞれカウンタスプリング18が、駆動側プーリ軸201等を介して可動シーブ207を支持する支持体であるエンジンケース12と可動シーブ207との間に配置されていたが、支持体についてはエンジンケース12に限定されるものではなく、カウンタスプリング18をエンジンケース12に取り付けられた変速機ケース30(図6参照)やエンジンケース12を支持する車体のフレーム等と可動シーブ207との間に配置しても良い。
また無段変速装置22、28では、それぞれカウンタスプリング24が、シャフトS等を介してフォーク部材200を支持する支持体であるエンジンケース12と可動シーブ207との間に配置されていたが、支持体についてはエンジンケース12に限定されるものではなく、カウンタスプリング24をエンジンケース12に取り付けられた変速機ケース30(図6参照)やエンジンケース12を支持する車体のフレーム等と可動シーブ207との間に配置しても良い。
本発明の実施形態に係る無段変速装置における駆動側プーリ及び変速アクチュエータの軸線方向に沿った側面断面図である。 図2は、図1に示される無段変速装置をカバー部材を外した状態で矢印II方向に見た正面図である。 図1に示される無段変速装置を、カバー部材を外した状態で矢印III方向に見た平面図である。 図1に示される無段変速装置を、ハウジングを省略した状態で矢印IV方向に見た底面図である。 本発明の実施形態に係る無段変速装置における従動側プーリの側面図である。 本発明の実施形態に係る無段変速装置の構成を模式的に示す側面断面図である。 本発明の実施形態の変形例1に係る無段変速装置の構成を模式的に示す側面断面図である。 本発明の実施形態の変形例2に係る無段変速装置の構成を模式的に示す側面断面図である。 本発明の実施形態の変形例3に係る無段変速装置の構成を模式的に示す側面断面図である。
符号の説明
10 無段変速装置
12 エンジンケース
13 エンジン
14 クランク軸
16 プーリ溝
18 カウンタスプリング
20 推力スプリング
22 無段変速装置
24 カウンタスプリング
26 無段変速装置
28 無段変速装置
30 変速機ケース
32 減速機
34 車軸
59 外輪ディスク
100 アクチュエータ
100 変速アクチュエータ
101 ハウジング
101A ハウジング本体
101B カバー部材
101a モータ室
101b 軸室
101d 段部
101e 長孔
102 電動モータ
102a 回転軸
103 駆動ギヤ
103、 駆動ギヤ
104 中間軸
105a 大ギヤ
105b 小ギヤ
106 従動ギヤ
107 ナット部材(変換機構、ボール螺子機構)
107a 雌ねじ溝
108 玉軸受
109 軸受ホルダ
110 ブッシュ
111 ねじ軸(変換機構、ボール螺子機構)
111a ねじ部
111b 丸軸部
111c 雄ねじ溝
112 ボール(変換機構、ボール螺子機構)
113 センサカラー
114 止め輪
115 ブッシュ
116 シール
117 押圧部材
118 センサ
118a センサアーム
118b 回転板
119 止め輪
200 フォーク部材
200 駆動側プーリ(第1のプーリ)
201 駆動側プーリ軸(第1のプーリ軸)
201a 雄ねじ部
201b スプライン雄溝
202 玉軸受
203 固定シーブ(第1の固定シーブ)
203a 円錐面
203b スプライン雌溝
204 ワッシャ
206 スリーブ
206a スプライン雄溝
207 可動シーブ(第1の可動シーブ)
207a 中央筒部
207b 円錐面
207c スプライン雌溝
208 玉軸受
209 軸受ホルダ
209a 円筒部
209b 外フランジ
209c 内フランジ
209d 座受面
210 ストッパ
211 ベルト
215 ナット
224 カウンタスプリング
250 従動側プーリ軸
251 従動側プーリ軸(第2のプーリ軸)
252 遠心クラッチ機構
253 固定シーブ(第2の固定シーブ)
253a 円錐面
254 玉軸受
255 シーブ本体部
255a 円筒部
257 可動シーブ(第2の可動シーブ)
257a 円錐面
257b 円錐面
258 内輪ディスク
259 外輪ディスク
259a 座受面
260 摩擦部材
262 プーリ溝
262 プーリ溝
264 座受リング
264a 係合部
266 座受リング
266a 係合部
300 フォーク部材
301 アーム部(揺動部材)
301a 孔
CF カウンタ力
DF 推力
F1 分力
F2 分力
RF 反力
S シャフト
TF 張力

Claims (6)

  1. 第1のプーリ軸、第1のプーリ軸に固定された第1の固定シーブ、第1のプーリ軸により軸線方向に沿って移動可能に支持された第1の可動シーブを具備し、第1の固定シーブと第1の可動シーブとの間に第1のプーリ溝が形成される第1のプーリと、
    第2のプーリ軸、第2のプーリ軸に固定された第2の固定シーブ、第2のプーリ軸により軸線方向に沿って移動可能に支持された第2の可動シーブを具備し、第2の固定シーブと第2の可動シーブとの間に第2のプーリ溝が形成される第2のプーリと、
    一端側が前記第1のプーリ溝に巻掛けられると共に、他端側が前記第2のプーリ溝に巻掛けられる無端状のVベルトと、
    前記第1の可動シーブを軸線方向に沿って進退させて、前記第1のプーリ溝における前記Vベルトが圧接する第1の巻掛領域の外径を可変する変速アクチュエータと、
    前記第2の可動シーブを、前記Vベルトの張力に対応する推力で軸線方向に沿って前記第2の固定シーブ側へ付勢し、前記第2のプーリ溝における前記Vベルトが圧接する第2の巻掛領域の外径を、前記第1の巻掛領域の外径変化に追従するように可変する推力スプリングと、
    前記第1の可動シーブを、前記推力スプリングの推力に対応するカウンタ力で軸線方向に沿って前記第1の固定シーブ側へ付勢するカウンタスプリングと、
    を有することを特徴とする無段変速装置。
  2. 前記カウンタスプリングは、前記第1のプーリ軸を支持する支持体と前記第1の可動シーブとの間に介装され、軸線方向に沿った復元力を前記カウンタ力として前記第1の可動シーブに伝達することを特徴とする請求項1記載の無段変速装置。
  3. 前記変速アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータの回転力を直線的な駆動力に変換する変換機構と、前記変換機構から出力された駆動力により揺動すると共に、該駆動力を前記第1の可動シーブに伝達して該第1の可動シーブを軸線方向に沿って進退させる揺動部材とを有することを特徴とする請求項1記載の無段変速装置。
  4. 前記カウンタスプリングは、前記揺動部材を支持する支持体と揺動部材との間に介装され、前記揺動部材を介して前記第1の可動シーブに前記カウンタ力を伝達することを特徴とする請求項3記載の無段変速装置。
  5. 前記変換機構をボール螺子機構により構成したことを特徴とする請求項3又は4記載の無段変速装置。
  6. 前記カウンタ力を、前記推力よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の無段変速装置。
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