JP4848978B2 - ベルト式無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト式の無段変速機に関し、特に、回転軸間の動力伝達を遮断可能な無段変速機に関する。
ベルト式の無段変速機は、通常、入力軸と係合して一体に回転する入力側プーリと、出力側と係合して一体に回転する出力側プーリとを有しており、これら入力側及び出力側プーリにより形成されたV字状の溝にベルトが巻き掛けられている。ベルト式無段変速機は、入力側及び出力側プーリにおいて溝幅(以下、プーリ幅と記す)を変化させて、プーリに巻き掛けられたベルトの巻き付け径を変化させることで、変速比を変化させている。
ベルト式無段変速機の入力側プーリは、一般的に、入力軸に固定された固定シーブと、入力軸に係合しており、固定シーブに対して入力軸の軸方向に移動可能な可動シーブを有しており、油圧等により可動シーブを軸方向に移動させることで、プーリ幅を変化させている。出力側プーリは、入力側プーリと同様に、出力軸に固定された固定シーブと、出力軸に係合し、固定シーブに対して出力軸の軸方向に移動可能な可動シーブとを有しており、プーリ幅が変化可能に構成されている。入力側及び出力側プーリにおいて、それぞれのプーリ幅を変化させることで、ベルト式無段変速機は、変速比を変化させることが可能となっている。
このようなベルト式無段変速機を搭載した車両において、車両停止中には、原動機からの機械的動力を車輪に伝達させないことが望まれている。特に、原動機が内燃機関である場合、車両の発進と停止に即応して内燃機関の作動と非作動を切り替えることは困難であるため、原動機からの機械的動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構において、動力伝達を遮断する技術が求められている。例えば、下記の特許文献1に記載の技術では、動力伝達装置において、ベルト式無段変速機の外部に、動力伝達を遮断するためのクラッチ装置を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、下記の特許文献2には、ベルト式無段変速機の入力軸と出力軸の回転軸間において、動力伝達を遮断する技術が開示されている。このベルト式無段変速機では、入力軸(駆動回転軸)上に、ベアリングを介して正逆自在に回転可能なベルト乗上げローラを設けている。この無段変速機は、入力側プーリ(駆動プーリ)の可動シーブを固定シーブに対して最大に離隔させることで、可動シーブ及び固定シーブからベルトを離して入力側プーリとベルトとを非係合状態にすると共に、入力側プーリに巻き掛けられていたベルトをベルト乗上げローラに乗上げさせている。これにより、特許文献2の無段変速機は、入力軸(駆動回転軸)と出力軸との間における動力伝達を遮断している。
特公平6−67693号公報 特開2002−161956号公報
ところで、特許文献1に記載の技術では、ベルト式無段変速機の出力軸の外側に、別途、発進クラッチ装置が設けられているため、無段変速機を含めた動力伝達装置の寸法が大きくなってしまうという問題がある。また、このような発進クラッチ装置は、通常、油圧や電磁力により駆動されるものであるため、発進クラッチ装置において係合と非係合を切換えるごとに、発進クラッチ装置を駆動するためのエネルギが必要となる。
また、特許文献2に記載の技術では、入力側プーリとベルトとを係合状態にするため、可動シーブを移動させて、乗り上げローラ上にあるベルトを固定シーブとの間に挟み込むと、入力軸と共に回転している可動シーブ及び固定シーブが、静止しているベルトの側面(フランク面)に急に当接するため、ベルトの側面が磨耗してしまうという問題が生じる。ベルトの側面は、動力伝達時において、入力側及び出力側プーリと接する部位であるため、ベルト式無段変速機には、極力、ベルトの側面を損耗させないようにする必要がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、変速機の内部において動力伝達の遮断を可能にしつつ、ベルトの損耗を抑制可能なベルト式無段変速機を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る無段変速機は、2つの回転軸にそれぞれ係合している2つのプーリと、2つのプーリに巻き掛けられて、一方の回転軸からの機械的動力を他方の回転軸に伝達可能なベルトと、一方の回転軸を中心として正逆自在に回転可能に構成され、ベルトを当該回転軸側から支持可能な回動機構と、回転軸の回転を回動機構に伝達可能なクラッチ機構が設けられている無段変速機において、前記一方の回転軸に係合しているプーリが、前記一方の回転軸に固定された固定シーブと、前記一方の回転軸に係合しかつ軸方向に移動可能な可動シーブと、を備え、かつ、前記クラッチ機構が、前記可動シーブに設けられた押圧部材と、前記押圧部材と前記軸方向に相対しかつ前記回動機構と一体に回転可能であるとともに前記軸方向に移動可能な摩擦相手板と、前記摩擦相手板と前記軸方向に相対しかつ前記一方の回転軸と一体に回転可能であるとともに前記軸方向に移動可能で前記摩擦相手板と係合可能な摩擦板と、を備えているとともに、前記クラッチ機構が、前記固定シーブと前記可動シーブとの双方が前記ベルトの側面から離間しかつ前記押圧部材と前記摩擦相手板とが互いに離間しているとともに前記回転機構が前記ベルトを前記回転軸側から支持して前記一方の回転軸と前記ベルトとの間の動力伝達が遮断されている状態から、前記可動シーブが前記固定シーブに近づいて、前記可動シーブが前記ベルトの側面に接する前に、前記押圧部材と前記摩擦相手板とが互いに当接し、前記摩擦板と前記摩擦相手板とが係合して、前記一方の回転軸の回転が摩擦板と摩擦相手板を介して回動機構に伝達されることを特徴とする。
本発明に係る無段変速機において、無段変速機は、自動車に搭載されるものとすることができ、2つの回転軸は、内燃機関からの機械的動力を受ける入力軸と、駆動輪に向けて機械的動力を出力する出力軸であるものとすることができる。
本発明に係る無段変速機において、回動機構及びクラッチ機構は、入力軸を中心に設けられているものとすることができる。
本発明に係る無段変速機において、各プーリは、回転軸に固定された固定シーブと、固定シーブに対して回転軸の軸方向に移動可能な可動シーブとを有するものであり、回動機構は、前記一方の回転軸に係合しているプーリの固定シーブと可動シーブの間に設けられ、クラッチ機構は、前記一方の回転軸に係合しているプーリの固定シーブ又は可動シーブと回動機構との間に設けられているものとすることができる。
本発明に係る無段変速機において、前記一方の回転軸に係合しているプーリの可動シーブ又は固定シーブには、クラッチ機構の少なくとも一部を収容可能に、回転軸を軸心とする筒状の凹部が設けられてものとすることができる。
本発明に係る無段変速機において、クラッチ機構は、前記一方の回転軸と一体に回転する前記摩擦板と、摩擦板を挟み込むよう配設され、摩擦板と係合することで前記一方の回転軸からの機械的動力を回動機構に伝達可能な前記摩擦相手板と、前記一方の回転軸に係合しているプーリ幅が所定の幅より小さくなると、摩擦板と摩擦相手板を係合させる前記押圧部材とを備え、前記押圧部材が摩擦板と摩擦相手板を係合させると、前記一方の回転軸の回転が摩擦板と摩擦相手板を介して回動機構に伝達されるものとすることができる。
本発明に係る無段変速機において、摩擦板及び摩擦相手板は、前記一方の回転軸に対し略直交して延びている板状部材であり、前記押圧部材は、前記一方の回転軸に係合しているプーリに設けられ、プーリ幅が変化するに従って回転軸の軸方向に移動して、摩擦板又は摩擦相手板を押圧すものとすることができる。
本発明に係る無段変速機において、前記一方の回転軸に係合しているプーリには、回動機構の少なくとも一部を収容可能に、前記一方の回転軸に係合しているプーリの中央から回転軸の軸方向を外側に延びる凹部が設けられており、押圧部材は、凹部の底部から回転軸の軸方向に突出して延びている部材であるものとすることができる。
本発明によれば、クラッチ機構が回転軸の回転を回動機構に伝達するので、回動機構により回転軸側からベルトが駆動されて、プーリとベルトは、ベルトが静止している場合に比べて、速度差が小さい状態で当接することができる。回動機構が回転軸とベルトとの間における動力伝達の遮断を可能にしつつ、回転しているプーリが静止しているベルトに当接することがないため、ベルトの損耗を抑制することができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
まず、本実施例に係る無段変速機が適用される自動車の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、自動車の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、自動車1には、駆動輪95を駆動するための原動機として、内燃機関5が設けられている。内燃機関5は、図示しない燃料噴射装置、点火装置、及びスロットル弁装置を備えており、これら装置は、図示しない車両用の電子制御装置(以下、ECUと記す)により制御される。これによりECUは、内燃機関5が発生する機械的動力を調整することが可能となっている。内燃機関5が発生した機械的動力は、クランク軸6から出力される。
また、自動車1には、内燃機関5がクランク軸6から出力した機械的動力を、変速機に伝達する動力伝達装置として、クランク軸6のトルク変動を低減させるダンパ7と、ダンパ7から伝達された回転の方向を切換えて自動車1の前後進を可能にする前後進切換機構9と、前後進切換機構9からの回転を変速してトルクを変化させるベルト式無段変速機20(以下、単に「CVT」と記す)が設けられている。内燃機関5のクランク軸6は、ダンパ7に結合されており、ダンパ7は、前後進切換機構9のサンギアに結合されている。
前後進切換機構9は、ダブルピニオン式(デュアルプラネタリ式)のプラネタリギアで構成されており、キャリアとサンギアを係合可能なフォワードクラッチ9cと、リングギアをハウジングに係合可能なリバースブレーキ9bを備えている。フォワードクラッチ9cを係合し、リバースブレーキ9bを解放することで、内燃機関5のクランク軸6からの機械的動力は、回転方向をそのままに、CVT20の入力軸22に伝達される。一方、フォワードクラッチ9cを解放し、リバースブレーキ9bを係合することで、クランク軸6からの機械的動力は、回転方向を逆向きに変え、且つ回転速度を減速してトルクを増大させて、CVT20の入力軸22に伝達される。このようにして、内燃機関5のクランク軸6から出力された機械的動力は、ダンパ7でトルク変動が低減され、前後進切換機構9を介して、CVT20の入力軸22に伝達される。なお、ダンパ7を、前後進切換機構9を介さずに、直接、CVT20の入力軸22に結合するものとしても良い。
CVT20は、入力軸22と係合して、入力軸22と一体に回転する入力側プーリ24と、出力軸33と係合して出力軸33と一体に回転する出力側プーリ35とを有している。入力側プーリ24及び出力側プーリ35は、それぞれV字形状の溝が形成されており、この溝に同じくV字形状をなすベルト60が巻き掛けられている。なお、本実施例に係るCVT20の詳細な構造については、後述する。
CVT20は、入力側プーリ24及び出力側プーリ35において溝幅(以下、プーリ幅と記す)を変化させることで、プーリに巻き掛けられたベルト60の巻き掛け径を変化させることが可能となっている。入力側プーリ24及び/又は出力側プーリ35においてベルト60の巻き掛け径を変化させることで、CVT20は、入力軸22の回転速度と出力軸33の回転速度の比率である変速比を変化させることができる。このようにして、CVT20は、内燃機関5からの機械的動力を、入力軸22で受けて、内部で変速比を連続的に変化させて、出力軸33から出力することが可能となっている。
また、自動車1には、CVT20が出力軸33から出力した機械的動力を、駆動輪95に伝達する動力伝達装置として、CVT20の出力軸33からの回転を減速してトルクを増大させる減速機構70と、減速機構70からの機械的動力を、左右の駆動軸90に分配して出力する差動装置80が設けられている。CVT20からの機械的動力は、減速機構70により回転速度を減速しトルクを増大させて、差動装置80に伝達され、差動装置80により左右の駆動軸90に分配されて駆動輪95を駆動する。
次に、本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)の構成について、図2を用いて説明する。図2は、CVTの全体構成を示す縦断面図である。なお、図2には、本発明に関連する要部のみを模式的に示している。
CVT20は、内燃機関5からの機械的動力を受ける回転軸である入力軸22と、入力軸22と同軸に設けられ同期回転する入力側プーリ24と、入力軸22に対して所定の間隔をあけて平行に設けられ、減速機構70に機械的動力を出力する回転軸である出力軸33と、出力軸33と同軸に設けられ同期回転する出力側プーリ35と、入力側プーリ24と出力側プーリ35に巻き掛けられて、入力軸22からの機械的動力を出力軸33に伝達するベルト60とを有している。
入力軸22は、原動機側すなわち内燃機関5のクランク軸6側にある前後進切換機構9のキャリアに結合されている、入力軸22は、内燃機関5のクランク軸6からの機械的動力を受けて、これを入力側プーリ24に伝達する。一方、出力軸33は、駆動輪95側、すなわち減速機構70に係合している。出力軸33は、出力側プーリ35から受けた機械的動力を、駆動輪95に向けて出力する。これら2つの回転軸、入力軸22と出力軸33には、それぞれ入力側プーリ24と出力側プーリ35が係合している。
入力側プーリ24は、入力軸22の軸方向Cに固定されている固定シーブ26と、入力軸22に係合しており、固定シーブ26に対して入力軸22の軸方向Cに移動可能な可動シーブとを有している。入力側プーリ24は、入力軸22に同軸となるよう設けられており、入力軸22と同期回転することとなる。
固定シーブ26には、可動シーブ28に対向して、ベルト60を支持する固定側プーリ面26aが形成されており、一方、可動シーブ28には、固定側プーリ面26aに対向して可動側プーリ面28aが形成されている。固定側プーリ面26aと可動側プーリ面28aは、入力軸22の径方向Rを内向きに向かうに従って軸方向Cの間隔が狭くなるように形成されている。つまり、固定側プーリ面26aと可動側プーリ面28aとの間には、略V字状の空間であるプーリ溝が形成されている。入力側プーリ24のプーリ溝にベルト60が巻き掛けられると、これら固定側プーリ面26aと可動側プーリ面28aが、後述するベルト60の側面(フランク面)66を挟持することで、ベルト60と摩擦係合することとなる。
可動シーブ28と入力軸22は、軸方向Cに延びるよう形成されたスプライン溝(図示せず)により係合している。これにより、可動シーブ28は、入力軸22と同期回転すると共に、入力軸22上を摺動することで軸方向Cに移動することが可能となっている。可動シーブ28は、図示しない油圧装置により駆動され、可動シーブ28の軸方向Cの位置、すなわち可動シーブ28の可動側プーリ面28aと、固定シーブ26の固定側プーリ面26aとの軸方向Cの間隔(以下、プーリ幅と記す)は、ECUにより制御される。このようにして、入力側プーリ24は、可動シーブ28を移動させることで、プーリ幅を変化可能に構成されている。入力側プーリ24は、プーリ幅を変化させることで、プーリに巻き掛けられたベルト60がなす径(以下、巻き掛け径と記す)を変化させることができる。
ベルト60は、断面が略台形をなす金属製の板状部材(エレメント)を、多数層状に重ね合わせて環状となるよう構成されている。ベルト60の両側の側面66(フランク面)、詳細には、固定側プーリ面26aと当接する面、及び可動側プーリ面28aと当接する面は、ベルト60の径方向を内側に向かうに従って、ベルト60の幅方向の間隔が小さくなるように構成されている。ベルト60の側面66は、固定側及び可動側プーリ面26a,28aに挟まれて、これら面から挟圧力を受けることとなる。これにより、ベルト60は、入力側及び出力側プーリ24,35と摩擦係合し、入力側プーリ24からの機械的動力を、後述する出力側プーリ35に伝達することが可能となる。
なお、以下の説明において、ベルト60のうち回転軸側(入力軸22側)の面を「背面」62と記す。本実施例のようにベルト60の断面形状が台形を呈している場合、台形形状の上底が、ベルト60の背面62となっている。
出力側プーリ35は、入力側プーリ24と同様に、出力軸33に固定されている固定シーブ26と、出力軸33に係合しており、固定シーブ26に対して軸方向に移動可能な可動シーブ28とを有している。出力側プーリ35の固定シーブ26と可動シーブ28も、それぞれ固定側プーリ面26aと可動側プーリ面28aが形成されており、上述のベルト60が出力側プーリ35に巻き掛けられると、これら固定側プーリ面26aと可動側プーリ面28aが、後述するベルト60の側面66を挟持することで、ベルト60と摩擦係合する。出力側プーリ35の可動シーブ28は、油圧装置により駆動され、プーリ幅がECUにより制御される。出力側プーリ35は、可動シーブ28を移動させることで、プーリ幅を変化可能に構成されており、ベルト60の巻き掛け径を変化させることができる。
このようなCVT20は、ECUにより制御されて、入力側プーリ24と出力側プーリ35のプーリ幅を変化させることで、それぞれのプーリにおいてベルト60の巻き掛け径を変化させることが可能となっている。出力側プーリ35におけるベルト60の巻き掛け径Roと入力側プーリ24におけるベルト60の巻き掛け径Riとの比率(Ro/Ri)が、入力軸22の回転速度Niと出力軸33の回転速度Noの比率である変速比(Ni/No)となっている。
入力軸22の回転速度Niと出力軸33の回転速度Noの比率である変速比(Ni/No)を小さくする(ハイギアにする)場合、CVT20は、入力側プーリ24のプーリ幅を、出力側プーリ35のプーリ幅に比べて小さくすることで、入力側プーリ24におけるベルト60の巻き掛け径を出力側プーリ35における巻き掛け径に比べて大きくする。これにより、CVT20は、入力軸22で受けた機械的動力を、回転速度を増速しトルクを減少させて、出力軸33に伝達することが可能となっている。
一方、変速比(Ni/No)を大きくする(ローギアにする)場合、入力側のプーリ幅を、出力側のプーリ幅に比べて大きくすることで、入力側プーリ24のおけるベルト60の巻き掛け径を、出力側プーリ35におけるベルト60の巻き掛け径に比べて小さくする。これにより、CVT20は、入力軸22で受けた機械的動力を、回転速度を減速しトルクを増大させて、出力軸33に伝達することが可能となっている。
このような動力伝達装置を備える自動車1においては、車両の減速に応じてクランク軸6の回転速度が低下するため、車両を減速させて停止させる際に、内燃機関5が予期しないタイミングでストールしないよう、駆動輪95の回転速度を減速させると共にトルクを増大させる必要がある。CVT20は、変速比をなるべく大きくした状態、すなわち入力側プーリ24のプーリ幅を大きくした状態で、車両停止を迎えることとなる。このような車両停止中において、内燃機関5のアイドリング作動状態を保つことや、内燃機関5の作動と非作動を切換える、いわゆるアイドリングストップ動作を可能にするためには、内燃機関5のクランク軸6と駆動輪95との間における動力伝達を遮断する必要がある。
本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)には、その内部において動力伝達を遮断するための機構が設けられており、以下、図3−1を用いて説明する。図3−1は、CVTの入力側プーリの拡大断面図である。なお、図3−1において、入力側プーリは、プーリ幅が所定の幅より大きくなり、プーリ面から外れたベルトが、後述する回動部材により支持されている状態を示している。
CVT20の入力側プーリ24のうち固定シーブ26と可動シーブ28の間には、動力伝達を遮断するための機構として、入力軸22を中心に正逆自在に回転して、ベルト60を支持可能な回動機構40が設けられている。
回動機構40は、入力軸22と同軸に設けられている2つの玉軸受け44と、これら玉軸受け44の径方向外側に設けられた円筒状部材46から構成されている。入力軸22には、玉軸受け44の内側44aが接しており、玉軸受け44の外側44cには、円筒状部材46の内面46aが結合されている。これにより回動機構40の円筒状部材46は、入力軸22に対して正逆自在に回転することが可能となっている。
回動機構40は、プーリ幅が所定の幅より大きくなり、固定側及び可動側プーリ面26a,28aからベルト60が外れると、円筒状部材46の外面46cがベルト60を受けることとなる。このとき、円筒状部材46の外面46cは、ベルト60の背面62と接する。このように、回動機構40は、円筒状部材46の外面46cで、ベルト60の背面62を入力軸22側から支持することが可能となっている。
このように構成されたCVT20は、入力側プーリ24のプーリ幅を大きくすることで、入力側プーリ24における巻き掛け径を小さくし、プーリ幅を所定の幅よりも大きくすると、ベルト60の背面62を回動機構40の円筒状部材46に当接させると共に、ベルト60の側面66から固定シーブ26及び可動シーブ28を離間させることとなる。ベルト60は、入力軸22と一体に同期回転する入力側プーリ24から離れて、入力軸22に対し回転自在となっている回動機構40に巻き掛けられ、回動機構40により背面62から支持されて静止する。このようにして、CVT20は、入力軸22とベルト60を非係合状態にすることができ、CVT20の内部にある入力軸22とベルト60の間で動力伝達を遮断することができる。
これにより、本実施例に係る自動車1においては、動力伝達装置内にクラッチ装置やトルクコンバータを有していなくても、車両停止中に、駆動輪95と、これに係合するCVT20の出力軸33、出力側プーリ35、及びベルト60が静止しているにも拘らず、入力側プーリ24、CVT20の入力軸22、及び内燃機関5のクランク軸6が回転している状態(例えば、アイドリング状態)を作り出すことができ、車両停止中に内燃機関5の作動と非作動を切換えるアイドリングストップ動作を行うことができる。
このように、CVT20の内部において動力伝達が遮断されている状態から、再び、入力側プーリ24とベルト60を係合させて、入力軸22と出力軸33との間で動力伝達を行わせる場合、回動機構40に巻き掛けられて静止しているベルト60の側面66(フランク面)に、入力軸22と共に回転している入力側プーリ24を急に当接させると、ベルト60の側面66が磨耗してしまうという問題が生じる。ベルト60の側面66は、動力伝達時において、入力側プーリ24及び出力側プーリ35と接する部位であるため、ベルト60の側面66の損耗を極力抑制する必要がある。
そこで、本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)には、プーリがベルトに接する前に、プーリに係合して回転軸(入力軸)の回転を回動機構に伝達するクラッチ機構が設けられており、図3−1及び図3−2を用いて説明する。図3−2は、CVTの入力側プーリの拡大断面図であり、可動シーブとクラッチ機構が係合している状態を示す図である。
図3−1に示すように、クラッチ機構50は、略円筒状を呈する湿式多板クラッチであり、入力側プーリ24の可動シーブ28と回動機構40との間に、入力軸22と軸心が一致するよう同心配置されている。可動シーブ28のうち固定シーブ26と対向する側には、入力軸22を中心とする略円柱状の凹部29が形成されている。凹部29は、入力側プーリ24の中央から入力軸22の軸方向Cの外側に延びるよう可動シーブ28に形成されている。可動シーブ28の凹部29には、クラッチ機構50のうち少なくもと一部が収容可能となっている。
クラッチ機構50は、入力軸22に設けられた摩擦板54と、摩擦板54を挟み込むように配設されて摩擦板54と係合可能な摩擦相手板58と、摩擦相手板58を保持すると共に摩擦相手板58が受けた機械的動力を回動機構40に伝達する保持部材56と、摩擦板54と摩擦相手板58を係合させる係合手段としての押圧部材55とを有している。
摩擦板54は、入力軸22に対して略直交して設けられている板状の部材であり、入力軸22を中心とする穴が形成された円板状の部材である。摩擦板54は、軸方向Cに延びるスプライン溝等により入力軸22と嵌め合わされている。摩擦板54は、入力軸22の軸方向Cにスライド可能であり、且つ入力軸22の周方向(回転方向)に係合している。つまり、摩擦板54は、入力軸22と同軸に且つ一体に回転することができ、入力軸22からの機械的動力を、後述する摩擦相手板58に伝達することが可能となっている。
保持部材56は、略円筒状の部材であり、回動機構40を構成する円筒状部材46の可動シーブ28側の端面から、入力軸22の軸方向Cに延びており、円筒状部材46と結合されている。保持部材56の内側には、摩擦板54をその両側から挟み込むように複数の摩擦相手板58が軸方向Cに配列されている。なお、保持部材56と回動機構40の円筒状部材46は、一体に構成されていても良い。
摩擦相手板58は、入力軸22に対して略直交して設けられている板状部材であり、入力軸22を中心とする穴が形成された円板状の部材である。摩擦板54は、摩擦板54と対向しており、摩擦板54との間に僅かな隙間をあけて軸方向Cに配列されている。摩擦相手板58と保持部材56は、軸方向Cに延びるスプライン溝等により嵌め合わされている。摩擦相手板58は、軸方向Cにスライド可能であり、且つ周方向(回転方向)には、入力軸22と係合している。このように構成された摩擦相手板58は、入力軸22の軸方向Cに圧縮力が作用すると、図3−2に示すように、摩擦板54を挟み込み、摩擦板54と係合することとなる。このようにして摩擦相手板58は、摩擦板54からの機械的動力を、保持部材56を介して回動機構40に伝達することが可能となっている。
押圧部材55は、図3−1に示すように、可動シーブ28の凹部29の底面29aから、入力軸22の軸方向Cに突出して設けられており、可動シーブ28側の摩擦相手板58と対向している。押圧部材55とこれに対向している摩擦相手板58と軸方向Cの距離は、可動側プーリ面28aとこれに対向するベルト60の側面66との距離に比べて大きくなるよう設定されている。つまり、押圧部材55は、可動シーブ28と共に入力軸22の軸方向Cに沿って固定シーブ26側に移動すると、図3−2に示すように、入力側プーリ24の可動側プーリ面28aがベルト60の側面66に接する前に、摩擦相手板58に当接して押圧することができる。プーリ押圧部材55により押圧された摩擦相手板58は、摩擦板54を挟み込むこととなる。このようにして、押圧部材55は、入力側プーリ24のプーリ幅が所定の幅より小さくなると、摩擦板54と摩擦相手板58とを係合させる係合手段として機能する。
以上のように構成されたクラッチ機構50は、可動シーブ28を軸方向Cに沿って固定シーブ26側に移動して、入力側プーリ24のプーリ幅が所定の幅より小さくなると、図3−2に示すように、可動シーブ28に設けられた押圧部材55が摩擦相手板58を押圧し、摩擦相手板58と摩擦板54を係合させる。これにより、クラッチ機構50は、入力軸22の回転を、これに係合している摩擦板54から摩擦相手板58及び保持部材56を介して、回動機構40の円筒状部材46に伝達する。円筒状部材46の外面46cとベルト60の背面62は接しており、入力軸22から回動機構40の円筒状部材46に伝達された回転は、背面62からベルト60に伝達される。なお、本実施例において、回動機構40及びクラッチ機構50は、入力軸22を中心に設けられているものとしたが、回動機構40及びクラッチ機構50は、出力軸33を中心に設けられるものとしても良い。
次に、本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)の制御を、内燃機関及び自動車の動作と併せて、図1〜図5を用いて説明する。図4は、CVTの全体構成を示す縦断面図であり、入力側プーリがベルトの側面と係合した状態を示す図である。図5は、アイドリングストップ状態から復帰して発進するまでの自動車及び無段変速機の動作を示すタイミングチャートである。なお、図4には、本発明に関連する要部のみを模式的に示している。
図5に示すように、時点T1より以前の時点において、自動車1は、車両停止状態にあり、ECUは、アクセル操作量がゼロであることからアイドルストップフラグをON状態にして、内燃機関5を非作動状態に制御している。これにより内燃機関5のクランク軸6の回転速度(以下、機関回転速度と記す)は、ゼロとなっている。このとき、ECUは、ベルト係合フラグをOFF状態にしており、CVT20の入力側プーリ24のプーリ幅が最大となるよう制御している。これにより、CVT20は、図2及び図3−1に示すように、入力側プーリ24とベルト60は、非係合状態となっており、ベルト60は、回動機構40に巻き掛けられて、背面62から支持されている。
そして、時点T1において、自動車1の運転者によりアクセルペダル(図示せず)が操作されて、アクセル操作量がゼロより大きくなる。ECUは、アクセル操作量がゼロでないこと検出して、アイドルストップフラグをOFF状態にして、内燃機関5を始動して作動状態にすると共に、入力側プーリ24のプーリ幅を最大値から減少させていく。すなわち可動シーブ28を軸方向Cに沿って固定シーブ26側に移動させていく。
この時点T1からT2に向けて、内燃機関5の機関回転速度は上昇していくが、可動シーブ28に設けられた押圧部材55と、クラッチ機構50の摩擦相手板58は未だ当接しておらず、入力側プーリ24とベルト60の側面66も当接していない。CVT20の入力軸22とベルト60との間で動力伝達が完全に遮断されている。内燃機関5からの機械的動力により、入力軸22及び入力側プーリ24は回転しているが、ベルト60は、回動機構40により背面62から支持されており静止している。これにより、ベルト60と係合している出力側プーリ35、出力軸33と、これに係合している駆動輪95は静止している。
そして、図3−2に示すように、可動シーブ28の押圧部材55と摩擦相手板58が当接し、摩擦板54と摩擦相手板58が係合する。このとき、入力側プーリ24の固定側プーリ面26aと可動側プーリ面28aは、ベルト60の側面66に当接しておらず。CVT20の入力軸22が受けた機械的動力は、摩擦板54から摩擦相手板58を経て回動機構40に伝達される。このとき、摩擦板54と摩擦相手板58との間には、回転速度差(すべり)が生じており、摩擦板54からの機械的動力のうち一部は、熱として放散される。摩擦相手板58から保持部材56を介して回動機構40に伝達された機械的動力は、背面62からベルト60に伝達されて、ベルト60を駆動し始める。
そして、時点T2において、ECUは、ベルト係合フラグがON状態となり、図4に示すように、入力側プーリ24のプーリ幅を、固定側プーリ面26a及び可動側プーリ面28aが、それぞれベルト60の背面62に接するよう制御する。入力側プーリ24の固定側及び可動側プーリ面26a,28aがベルト60の側面66に接するとき、ベルト60を支持している回動機構40の円筒状部材46は、摩擦相手板58から受けた機械的動力により回転駆動されており、その回転速度は、入力側プーリ24の固定シーブ26及び可動シーブ28の回転速度と略同一となっている。つまり、回動機構40が支持しているベルト60の側面66と、入力側プーリ24の固定側及び可動側プーリ面26a,28aは、速度差が略ゼロの状態で当接することとなる。このようにして入力側プーリ24がベルト60の側面66に当接することで、ベルト60の側面66における損耗が抑制される。
そして、時点T2以降において、入力側プーリ24の固定シーブ26及び可動シーブ28がベルト60を側面66から挟み込むことにより、ベルト60の背面62は、回動機構40の円筒状部材46から離れる。内燃機関5からCVT20の入力軸22が受けた機械的動力は、固定側及び可動側プーリ面26a,28aからベルト60の側面66に伝達され、出力側プーリ35に係合している出力軸33を駆動する。ECUは、図5に示すように、アクセル操作量の増大に応じて内燃機関5の機関回転速度を上昇させると共に、入力側プーリ24のプーリ幅を小さくして変速比を小さくして、出力軸33の回転速度、即ち車両の速度を増速させていく。
以上に説明したように本実施例に係る無段変速機20(CVT)は、2つの回転軸である入力軸22と出力軸33にそれぞれ係合している入力側プーリ24と出力側プーリ35と、これら2つのプーリ24,35に巻き掛けられて、入力軸22からの機械的動力を出力軸33に伝達可能なベルト60と、入力軸22を中心に正逆自在に回転可能に構成され、ベルト60を入力軸22側から支持可能な回動機構40とを備え、プーリ幅が所定の幅より大きくなると、ベルト60が入力側プーリ24から離れて回動機構40により支持されることで、入力軸22と出力軸33間の動力伝達を遮断することができる。加えて、クラッチ機構50が回転軸である入力軸22の回転を回動機構40に伝達するので、回動機構40によりベルト60が入力軸22側から駆動されて、プーリ24とベルト60は、ベルト60が静止している場合に比べて、速度差が小さい状態で当接することができる。回動機構40が入力軸22とベルト60との間における動力伝達の遮断を可能にしつつ、回転しているプーリ24が静止しているベルト60に回転に当接することがないため、ベルト60の損耗を抑制することができる。
また、本実施例に係る無段変速機20は、入力側プーリ24がベルト60の側面66に接する前に、入力側プーリ24に係合して入力軸22の回転を回動機構40に伝達するクラッチ機構50が設けられているものとしたので、回動機構40によりベルト60が駆動され、プーリ24とベルト60の側面66を、速度差が略ゼロの状態で当接させることができる。これにより、ベルト60の側面66における損耗を抑制することができる。
また、本実施例に係る無段変速機20は、自動車1に搭載されるものであり、2つの回転軸は、内燃機関5からの機械的動力を受ける入力軸22と、駆動輪95に向けて機械的動力を出力する出力軸33であるものとしたので、自動車1がクラッチ装置やトルクコンバータを備えていなくても、車両停止中において内燃機関5と駆動輪95との間を非係合状態にすることができ、車両停止中に、内燃機関5の作動と非作動を切換えるアイドリングストップ動作を、ベルト60の側面66における損耗を抑制しつつ実現することができる。
また、本実施例に係る無段変速機20において、回動機構40及びクラッチ機構50は、入力軸22を中心に設けられているものとしたので、ベルト式無段変速機20を備える自動車1は、通常、変速比が大きい状態、すなわち入力軸22に係合している入力側プーリ24のプーリ幅が大きい状態で車両停止する。このため、回動機構40を入力軸22に設けることで、車両を停止させる際に、入力側プーリ24のプーリ幅を僅かに大きくするだけで、動力伝達の遮断を行うことができ、再び入力側プーリ24とベルト60を係合させるときに、ベルト60の側面66が損耗することを抑制して係合させることができる。
また、本実施例に係る無段変速機20において、入力側プーリ24は、入力軸22に固定された固定シーブ26と、固定シーブ26に対して入力軸22の軸方向Cに移動可能な可動シーブ28とを有するものであり、回動機構40は、固定シーブ26と可動シーブ28の間に設けられ、クラッチ機構50は、可動シーブ28と回動機構40との間に設けられているものとしたので、入力側プーリ24のプーリ幅、すなわち固定シーブ26と可動シーブ28との間隔が所定の間隔より大きくなったときに、固定シーブ26及び可動シーブ28から外れたベルト60を回動機構40が良好に受けることができ、入力側プーリ24に係合して入力軸22の回転を回動機構40に伝達するクラッチ機構50という構成を容易に実現することができる。
また、本実施例に係る無段変速機20において、可動シーブ28には、クラッチ機構50の少なくとも一部を収容可能に、入力軸22を軸心とする筒状の凹部29が設けられているものとしたので、入力側プーリ24のプーリ幅を小さくしている時に、クラッチ機構50を凹部29に収容する。回転軸である入力軸22を中心として回動機構40及び回動クラッチ機構50が設けられた無段変速機20をコンパクトな構成で実現することができる。
また、本実施例に係る無段変速機20において、クラッチ機構50は、入力軸22と一体に回転する摩擦板54と、摩擦板54を挟み込むよう配設され、摩擦板54と係合することで入力軸22からの機械的動力を回動機構40に伝達可能な摩擦相手板58と、プーリ幅が所定の幅より小さくなると、摩擦板54と摩擦相手板58を係合させる係合手段(押圧部材55)とを備え、係合手段が摩擦板54と摩擦相手板58を係合させると、入力軸22の回転が摩擦板54と摩擦相手板58を介して回動機構40に伝達されるものとしたので、入力軸22の機械的動力を摩擦板54と摩擦相手板58との間で速度差(すべり)を生じさせて、摩擦相手板58から回動機構40に伝達することができる。入力軸22の機械的動力が、急激に、回動機構40からベルト60の背面62に伝達されることがないので、ベルト60の背面62の損耗をも極力抑制することができる。
また、本実施例に係る無段変速機20において、摩擦板54及び摩擦相手板58は、入力軸22に対し略直交して延びている板状部材であり、係合手段は、プーリ24に設けられ、プーリ幅が変化するに従って入力軸22の軸方向に移動し、摩擦板54又は摩擦相手板58を押圧する押圧部材55であるものとしたので、プーリ幅を変化させる入力軸22の軸方向の力を利用して、摩擦板54と摩擦相手板58を係合させることができる。係合手段を駆動するために、専用の油圧力や電磁力を発生させる装置を設ける必要がない。
また、本実施例に係る無段変速機20において、プーリ24には、回動機構40の少なくとも一部を収容可能に、プーリ24の中央から入力軸22の軸方向を外側に延びる凹部29が設けられており、押圧部材55は、凹部29の底面29aから入力軸22の軸方向Cに突出して延びている部材であるものとしたので、プーリ幅を小さくしたときに、凹部29が回動機構40を収容しつつ、押圧部材55が入力軸22に対して略直交して延びる摩擦板54と摩擦相手板58を係合させることができる。
なお、本実施例に係る無段変速機20において、摩擦板54と摩擦相手板58を係合させる係合手段として、プーリ幅が変化するに従って、入力軸22の軸方向Cに移動して摩擦相手板58を押圧する押圧部材55としたが、係合手段は、この態様に限定されるものではない。別途、油圧式のピストンを入力側プーリ24に設けて、ピストンを入力軸22の軸方向Cに駆動して摩擦板54と摩擦相手板58を係合する構成としても良い。
以上のように、本実施例に係る無段変速機は、原動機として内燃機関を備える自動車用のベルト式無段変速機に有用であり、特に、入力軸と内燃機関のクランク軸との間にクラッチ装置やトルクコンバータを備えておらず、出力軸が自動車の駆動輪に係合しているベルト式無段変速機に有用である。
本実施例に係る自動車の概略構成を示す模式図である。 本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)の全体構成を示す縦断面図である。 実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)の入力側プーリの拡大断面図であり、プーリ面から外れたベルトが回動部材により支持されている状態を示す図である。 本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)の入力側プーリの拡大断面図であり、可動シーブとクラッチ機構が係合している状態を示す図である。 本実施例に係るベルト式無段変速機(CVT)の全体構成を示す縦断面図であり、入力側プーリがベルトの側面と係合した状態を示す図である。 本実施例に係る自動車がアイドルストップ状態から復帰して発進するまでの自動車の動作を示すタイミングチャートである。
符号の説明
1 自動車
5 内燃機関(原動機)
6 クランク軸
7 ダンパ
9 前後進切換機構
20 ベルト式無段変速機(CVT)
22 入力軸
24 入力側プーリ
26 固定シーブ
26a 固定側プーリ面
28 可動シーブ
28a 可動側プーリ面
29 凹部
33 出力軸
35 出力側プーリ
40 回動機構
46 円筒状部材
50 クラッチ機構
54 摩擦板
55 押圧部材
56 保持部材
58 摩擦相手板
60 ベルト
62 背面(ベルト)
66 側面(ベルト)
70 減速機構
80 差動装置
90 駆動軸
95 駆動輪

Claims (8)

  1. 2つの回転軸にそれぞれ係合している2つのプーリと、
    2つのプーリに巻き掛けられて、一方の回転軸からの機械的動力を他方の回転軸に伝達可能なベルトと、
    一方の回転軸を中心として正逆自在に回転可能に構成され、ベルトを当該回転軸側から支持可能な回動機構と、
    回転軸の回転を回動機構に伝達可能なクラッチ機構が設けられている無段変速機において、
    前記一方の回転軸に係合しているプーリが、前記一方の回転軸に固定された固定シーブと、前記一方の回転軸に係合しかつ軸方向に移動可能な可動シーブと、を備え、かつ、
    前記クラッチ機構が、前記可動シーブに設けられた押圧部材と、前記押圧部材と前記軸方向に相対しかつ前記回動機構と一体に回転可能であるとともに前記軸方向に移動可能な摩擦相手板と、前記摩擦相手板と前記軸方向に相対しかつ前記一方の回転軸と一体に回転可能であるとともに前記軸方向に移動可能で前記摩擦相手板と係合可能な摩擦板と、を備えているとともに、
    前記クラッチ機構が、
    前記固定シーブと前記可動シーブとの双方が前記ベルトの側面から離間しかつ前記押圧部材と前記摩擦相手板とが互いに離間しているとともに前記回転機構が前記ベルトを前記回転軸側から支持して前記一方の回転軸と前記ベルトとの間の動力伝達が遮断されている状態から、前記可動シーブが前記固定シーブに近づいて、前記可動シーブが前記ベルトの側面に接する前に、前記押圧部材と前記摩擦相手板とが互いに当接し、前記摩擦板と前記摩擦相手板とが係合して、前記一方の回転軸の回転が摩擦板と摩擦相手板を介して回動機構に伝達されることを特徴とする無段変速機。
  2. 請求項に記載の無段変速機において、
    無段変速機は、自動車に搭載されるものであり、
    2つの回転軸は、内燃機関からの機械的動力を受ける入力軸と、駆動輪に向けて機械的動力を出力する出力軸であることを特徴とする無段変速機。
  3. 請求項に記載の無段変速機において、
    回動機構及びクラッチ機構は、入力軸を中心に設けられていることを特徴とする無段変速機。
  4. 請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の無段変速機において、
    各プーリは、回転軸に固定された固定シーブと、固定シーブに対して回転軸の軸方向に移動可能な可動シーブとを有するものであり、
    回動機構は、前記一方の回転軸に係合しているプーリの固定シーブと可動シーブの間に設けられ、
    クラッチ機構は、前記一方の回転軸に係合しているプーリの固定シーブ又は可動シーブと回動機構との間に設けられていることを特徴とする無段変速機。
  5. 請求項に記載の無段変速機において、
    前記一方の回転軸に係合しているプーリの可動シーブ又は固定シーブには、クラッチ機構の少なくとも一部を収容可能に、回転軸を軸心とする筒状の凹部が設けられていることを特徴とする無段変速機。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の無段変速機において、
    クラッチ機構は、
    前記一方の回転軸と一体に回転する前記摩擦板と、
    摩擦板を挟み込むよう配設され、摩擦板と係合することで前記一方の回転軸からの機械的動力を回動機構に伝達可能な前記摩擦相手板と、
    前記一方の回転軸に係合しているプーリ幅が所定の幅より小さくなると、摩擦板と摩擦相手板を係合させる前記押圧部材とを備え、
    前記押圧部材が摩擦板と摩擦相手板を係合させると、前記一方の回転軸の回転が摩擦板と摩擦相手板を介して回動機構に伝達されることを特徴とする無段変速機。
  7. 請求項に記載の無段変速機において、
    摩擦板及び摩擦相手板は、前記一方の回転軸に対し略直交して延びている板状部材であり、
    前記押圧部材は、前記一方の回転軸に係合しているプーリに設けられ、プーリ幅が変化するに従って回転軸の軸方向に移動して、摩擦板又は摩擦相手板を押圧することを特徴とする無段変速機。
  8. 請求項に記載の無段変速機において、
    前記一方の回転軸に係合しているプーリには、回動機構の少なくとも一部を収容可能に、前記一方の回転軸に係合しているプーリの中央から回転軸の軸方向を外側に延びる凹部が設けられており、
    押圧部材は、凹部の底部から回転軸の軸方向に突出して延びている部材であることを特徴とする無段変速機。
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