JP2010091840A - 故障予兆報知システム、故障予兆報知方法および画像形成装置の保守方法 - Google Patents

故障予兆報知システム、故障予兆報知方法および画像形成装置の保守方法

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Abstract

【課題】ユーザーごとの個別事情に応じた適切な保守サービスの提供を容易にする。
【解決手段】情報取得部101が取得したプリンタ1の内部情報に基づいてプリンタが故障予兆状態であるか否かを判別部103で判別し、故障リスク演算部108は、故障予兆状態であると判別した後におけるプリンタの故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行い、その判定結果が報知される。これにより、その報知を受ける保守業者やユーザー等は、その時点でメンテナンスの緊急度がどの程度なのかを明確に把握することができる。
【選択図】図10

Description

本発明は、画像形成装置等の対象機器の内部情報に基づいてその対象機器が故障予兆状態であるか否かを判別するための故障予兆報知システム、故障予兆報知方法および画像形成装置の保守方法に関するものである。
電子写真方式による画像形成装置では、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させ可視像を形成する。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙等の記録材に転写された後、熱、圧力、溶剤気体等によって記録材に定着され、出力画像となる。このような画像形成装置では、一般に、作像を行うための一連の作像プロセスに関わる機器状態が、その使用状況によって徐々に変化する。そのため、一定の品質を持った画像を提供し続けるには、定期的に画像形成装置の機器状態をチェックし、そのチェック結果によっては部品交換や消耗品の補充を行うなどして、常に作像プロセスを正常に実行できるように維持メンテナンスを行う保守作業が必要となる。
画像形成装置の保守作業は、主に、定期的に実施される定期メンテナンスと、画像形成装置で何らかの故障や異常が発生した時のように不定期で実施される不定期メンテナンスとに大別できる。定期メンテナンスは、画像形成装置が使用不能な状態に至らないようにすることが目的であるため、各部品の予寿命に十分余裕を持った状態で部品の交換等を行う。よって、交換された部品の予寿命分は無駄となり、1台の画像形成装置を使い切るまでに要する交換部品の数は多くなりがちである。また、メンテナンス回数が多くなると、メンテナンスに費やされる時間が増加し、画像形成装置1台あたりの生産性の低下にもつながる。
近年、画像形成装置の状態をモニタリングし、その状態変化の情報を元に画像形成装置の故障発生を予測し、その予測結果に応じて不定期メンテナンスを実施するようなシステムが提案されている(特許文献1、2、3等)。このように画像形成装置の故障が事前に予測して不定期メンテナンスを定期メンテナンスに代えて行うことにより、定期メンテナンスで生じ得る部品予寿命の無駄や生産性の低下といった上述の不具合の軽減を図ることができる。よって、このようなシステムは、その社会的、経済的価値が多大であるばかりでなく、使用する資源の量を大幅に減量できるため、環境への影響をも大幅に軽減することができるという利点を有する。
特開2001−175328号公報 特開2007−328645号公報 特開平8−154161号公報
一般に、画像形成装置の状態は、出力画像の種類、出力枚数、出力時間間隔、使用環境等、個々の画像形成装置の使用状況によって大きく異なってくる。よって、個々の画像形成装置の状態を精度よく判別する上では、各画像形成装置の状態をそれぞれの画像形成装置の内部情報に基づいて個別に把握することが重要となる。従来から、画像形成装置の内部情報に基づいてその画像形成装置が故障の予兆を示す状態(故障予兆状態)であるか否かを判別するものが知られているが、従来の判別では、故障の予兆があるか否かという二値的な情報しか得ることができなかった。このような二値的な情報では、故障の予兆があるかないかしか把握できないので、ユーザーごとの個別事情に応じた適切な保守サービスを提供することが困難であるという問題があった。
例えば、ダウンタイムの発生を極力避けたいユーザーにとっての適切な保守サービスは、部品余寿命に多少の無駄が生じても余裕をもった保守作業を行うことである場合が多い。また、例えば、ダウンタイムの発生よりも部品寿命を使い切ることを優先するユーザーにとっての適切な保守サービスは、ダウンタイムの発生リスクを覚悟の上でなるべく部品寿命を使ってから保守作業を行うことである場合が多い。しかし、このようなユーザーごとの個別事情に応じた適切な保守サービスを提供するためには、現時点でメンテナンスを行う必要性の度合い(メンテナンスの緊急度)はどの程度なのか、言い換えると現時点で故障が発生する可能性(故障リスクの大きさ)はどの程度なのかを、把握することが重要となる。しかし、従来のような故障予兆があるか否かという二値的な情報からでは、そのような故障リスクの大きさを明確に把握することができなかった。そのため、従来は、ユーザーごとの個別事情に応じた適切な保守サービスを提供することが困難であった。
なお、このような問題は、画像形成装置に限らず、保守作業が行われるような機器であれば同様に生じ得るものである。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ユーザーごとの個別事情に応じた適切な保守サービスの提供を容易にする故障予兆報知システム、故障予兆報知方法および画像形成装置の保守方法を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、対象機器の内部情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段が取得した内部情報に基づいて該対象機器が故障予兆状態であるか否かを判別する判別手段とを備えた故障予兆報知システムにおいて、上記判別手段が故障予兆状態であると判別した後における上記対象機器が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定手段と、該故障リスク判定手段の判定結果を報知する報知手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の故障予兆報知システムにおいて、上記故障リスク判定手段が判別する故障リスクの大きさは、上記判別手段が故障予兆状態であると判別した後の所定期間内に上記対象機器が故障し得る確率を示すものであることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の故障予兆報知システムにおいて、上記判別手段が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点からの経過時間と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報を記憶するテーブル記憶手段と、上記判別手段が故障予兆状態であると判別した初期予兆時点からの経過時間を計測する計時手段とを有し、上記故障リスク判定手段は、上記初期予兆時点後における所定のタイミングで、上記テーブル記憶手段に記憶されたテーブル情報を参照して、上記計時手段の計測結果に対応する故障リスクの大きさを特定することにより、上記故障リスク判定処理を行うことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の故障予兆報知システムにおいて、上記故障リスク判定手段は、上記判別手段が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点後における上記判別手段の判別結果をも用いて上記故障リスクの大きさを特定することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、上記判別手段が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点後における上記対象機器の内部情報と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報を記憶するテーブル記憶手段を有し、上記故障リスク判定手段は、上記テーブル記憶手段に記憶されたテーブル情報を参照して、上記初期予兆時点後に上記情報取得手段が取得した内部情報に対応する故障リスクの大きさを特定することにより、上記故障リスク判定処理を行うことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の故障予兆報知システムにおいて、上記故障リスクの大きさを特定するために上記初期予兆時点後に上記情報取得手段が取得する内部情報として、経時変化する情報を用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、上記故障予兆状態に対応する故障についてのメンテナンスが実施されたとき、該メンテナンスの内容に応じて、上記テーブル記憶手段に記憶されているテーブル情報を更新するテーブル更新手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、上記テーブル記憶手段に記憶されているテーブル情報を更新するテーブル更新手段と、上記初期予兆時点後であって上記故障リスク判定手段が上記故障リスク判定処理を行う前に、上記テーブル記憶手段に記憶されたテーブル情報を一時的に記憶する一時記憶手段とを有し、上記故障リスク判定手段は、上記一時記憶手段に記憶されたテーブル情報を参照して上記故障リスク判定処理を行うことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1の故障予兆報知システムにおいて、上記故障リスク判定手段が判別する故障リスクの大きさは、上記判別手段が故障予兆状態であると判別した後に上記対象機器が故障し得る確率が所定確率に至る時期を示すものであることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、上記情報取得手段が取得する内部情報に基づいて、上記対象機器における所定の構成部品の使用耐用期間の終期を特定する使用耐用期間特定手段を有し、上記報知手段は、上記故障リスク判定手段の判定結果とともに、該使用耐用期間特定手段が特定した上記所定の構成部品の使用耐用期間の終期に関する情報を報知することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、対象機器の内部情報を取得する情報取得工程と、該情報取得工程で取得した内部情報に基づいて該対象機器が故障予兆状態であるか否かを判別する判別工程とを有する故障予兆報知方法において、上記判別工程で故障予兆状態であると判別された後における上記対象機器が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定工程と、該故障リスク判定工程での判定結果を報知する報知工程とを有することを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、画像形成装置の内部情報を取得する情報取得工程と、該情報取得工程で取得した内部情報に基づいて該画像形成装置が故障予兆状態であるか否かを判別する判別工程と、該判別工程での判別結果に基づいて、該故障予兆状態に対応する故障が発生しないように事前に処置するための処置工程とを有する画像形成装置の保守方法において、上記判別工程で故障予兆状態であると判別された後における上記画像形成装置が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定工程と、該故障リスク判定工程での判定結果を報知する報知工程とを有することを特徴とするものである。
本発明においては、対象機器が故障予兆状態であると判別された後における当該対象機器が故障し得る故障リスクの大きさが報知されるので、その報知を受ける保守業者やユーザー等は、その時点でメンテナンスの緊急度がどの程度なのかを明確に把握することができる。よって、この報知を例えば保守業者に対して行う場合には、ユーザーの個別事情に応じた適切なメンテナンス時期を判断することが容易となり、ユーザーごとの適切な保守サービスを提供することが容易となる。また、この報知を例えばユーザーに対して行う場合も、ユーザーが自己の事情に応じた適切なメンテナンス時期を判断することが容易となるので、ユーザーごとの適切な保守サービスを提供することが容易となる。
以上、本発明によれば、ユーザーごとの個別事情に応じた適切な保守サービスの提供が容易になるという優れた効果が奏される。
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンタを示す概略構成図である。
図2は、本プリンタのシステムコントローラ71の主要部を示すブロック図である。
本実施形態におけるプリンタ1は、本体筐体内に、給紙部10、中間転写ベルト21を備えた転写ユニット20、中間転写ベルト21に沿って配設されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色のトナー像形成手段たる画像形成部30Y,30M,30C,30Bkを備えている。また、定着部40及び中間転写ベルト21上のトナー像のトナー付着量を検知するための付着量検知部50等を備えている。これらの他に、画像形成装置をコントロールするシステムコントローラ71、図示しないが、プリンタ1の各部を制御する制御部やモータ及びモータにより駆動される各部に駆動源を伝達する駆動機構部等を備えている。
各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Bkについて説明する。なお、ここでは、Bk色の画像形成部30Bkについて説明するが、Y、M、Cの画像形成部30Y,30M,30Cも同様の構成をしている。
画像形成部30Bkは、感光体31Bkの周囲に、帯電部32Bk、露光部33Bk、現像部34Bk、一次転写部35Bk、クリーニング部36Bk等が配設されている。画像形成時には、通常運転信号がプリンタの上位制御装置より指示されると、感光体31Bkは、システムコントローラ71の制御下で図示しない駆動モータによって回転駆動される。また、図2に示すように、システムコントローラ71のCPUは感光体モータなどの駆動手段と帯電バイアスを始めとする各作像工程のバイアス出力を順次シーケンシャルに出力する。外部装置からのカラー画像信号は、システムコントローラ71の画像信号発生回路で色変換処理などの画像処理が施され、Bk色の画像信号が露光部33Bkへ出力される。露光部33Bkは、システムコントローラ71の露光駆動回路で、Bkの画像信号を光信号に変換し、この光信号に基づいて露光用レーザーダイオードが点滅しながら、感光体31Bkを走査して露光することで静電潜像を形成する。この感光体31Bk上の静電潜像は、現像部34Bkによって現像されてBkトナー像となり、転写部35Bkによって感光体31Bk上のBkトナー像が中間転写ベルト21上に転写される。感光体31Bkは、トナー像転写後にクリーニング部36Bkによって残留トナーがクリーニングされ、除電ランプ38Bkにより除電されて次の画像形成に備えられる。
同様にして、画像形成部30Y,30M,30Cは、感光体31Y,31M,31Cの周りに、帯電部、現像部、クリーニング部、除電ランプなどを備えている。そして、感光体31Y,31M,31CにY、M、Cトナー像を形成し、これらは中間転写ベルト21上で互いに重なり合うように1次転写される。
各色の画像形成部の下方には、転写手段たる転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21、従動ローラ22,23、駆動ローラ24などを備えている。複数の色のトナー像を担持する像担持体である中間転写ベルト21は、駆動ローラ24、従動ローラ22,23等に張り渡されている。中間転写ベルト21は、トナーの固着を避けるために極めて平滑性の高い材料が用いられている。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミドなど光沢を有する表面をもったベルト材料を好適に用いることができる。駆動ローラ24が、図2に示すシステムコントローラ71の制御下で図示しないモータ等の駆動機構により回転駆動されることにより、中間転写ベルト21は、図1中反時計方向に回転駆動される。各色の感光体31Y,31M,31C,31Bk上に形成されたY、M、C、Bkトナー像は、各色の1次転写ニップで中間転写ベルト21上で互いに重なり合うように1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上には4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
中間転写ベルト21における駆動ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写バイアスローラ61がベルトおもて面側から当接しており、これによって2次転写ニップ6が形成されている。この2次転写バイアスローラ61には、図2に示すうように、システムコントローラ71の制御下で、バイアス電源回路によって2次転写バイアスが印加されている。これにより、2次転写バイアスローラ61と接地された2次転写ニップ裏側ローラ24との間に2次転写電界が形成されている。中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って2次転写ニップに進入する。
給紙部10は、給紙カセット11内の記録紙(転写紙)12を、例えば、図示しない給紙コロ11aと分離部材11bにより1枚ずつ分離して図示しないレジストローラ対に送り出す。レジストローラ対が、給紙カセット11から送られてきた記録紙12のタイミング調整を行って、記録紙12を所定のタイミングで2次転写ニップ6に向けて送り出す。2次転写ニップ6では、中間転写ベルト21上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙12上に一括2次転写されて、記録紙12の白色と相まってフルカラー画像となる。
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙12は、定着部40に搬送される。定着部40は、フルカラー画像が形成された記録紙12を定着ローラ41と加圧ローラ42で加熱・加圧することにより、各色のトナーを記録紙12に定着させ、排紙ローラ対により図示しない排紙トレイ上に排出する。
付着量検知部50は、ブラック(Bk)の画像形成部30Bkの中間転写ベルト21の移動方向下流側に配設されており、図3に示すように、中間転写ベルト21の幅方向にそれぞれ一対配設された光学的検知手段たる光学センサ51,52を備えている。光学センサ51,52は、図4(a)、(b)に示すように発光ダイオードなどからなる発光素子151と、乱反射光を受光する第1受光素子152と、正反射光を受光する第2受光素子153とから構成されている。第1受光素子152及び第2受光素子153は、Siフォトトランジスタや、PD(フォトダイオード)などを用いる。各素子151,152,153は、プリント基板150上に実装されている。また、射出光路上に集光レンズ154が配置されており、発光素子151からの射出光は、集光レンズ154により屈折して、像担持体たる中間転写ベルト21の表面の照射目標に集光される。また、入射光路上にも、集光レンズ155,156が配置されている。中間転写ベルト21上の照射対象物であるトナーから反射した反射光を集光レンズ155,156で集光された光を受光素子152,153が受光する。プリント基板150は、システムコントローラ71に接続されている。発光素子151は、図2に示すシステムコントローラ71の光量調整回路によって調整された電圧が印加されている。また、システムコントローラ71は、第1、第2受光素子152,153からの出力信号をADコンバータでデジタル信号に変換処理する。
光学センサ51,52は、近赤外光および/または赤外光が検出可能なものを用いている。近赤外光および/または赤外光は、トナー像のトナー付着量が同じであれば、トナーの着色剤の影響を受けず、受光素子の出力値がほぼ同じ値を示す。具体的には、ピーク発光波長が840nm程度の波長の光を照射する光学素子を用い、ピーク分光感度が840nm程度の受光素子を用いることが例示される。また、例えば、発光素子を可視光から赤外光の領域までの光を照射する発光素子とし、受光素子を近赤外光または赤外光を受光する受光素子としてもよい。また、受光素子を可視光から赤外光までの領域の光を受光する受光素子とし、発光素子を近赤外光または赤外光を照射する発光素子としてもよい。光学センサをこのような構成にしても、近赤外光または赤外光を検出する光学センサとすることができる。なお、黒色トナーの着色剤として、低価格のカーボンブラックを用いた場合、カーボンは赤外領域でも強い吸光を示すため、図5に示すように、Y、M、C色に比べて付着量検知感度が低くなる。
画像形成装置においては、一般的に、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、各色の画像濃度を適正化するために現像バイアス、帯電バイアス、露光量などを調整するプロセス調整運転が行われている。電子写真方式の画像形成装置は経時劣化や環境変動で画像濃度が変動してしまう弱点があるので、上記プロセス調整運転を実行して画像濃度が安定するように制御している。
図6は、本実施形態におけるプロセス調整運転の制御フローを示すフローチャートである。
電源投入時あるいは所定枚数のプリント前後の時間を利用し、プロセス調整運転信号が上位制御装置よりシステムコントローラ71に指示され、プロセス調整運転がスタートする(図2参照)。プロセス調整運転がスタートすると、システムコントローラ71は、画像信号発生回路を画像ナシの状態とする(S201)。次に、システムコントローラ71のCPUは、図4(a)に示すように、中間転写ベルト21に光を照射して正反射光を第2受光素子153で受光する。そして、第2受光素子153の出力(受光信号)が予め決められた所定値になるように、光量調整回路で光学センサ51,52の発光素子151の発光強度Rを調整する(S202〜S204)。これは、図7に示すように、発光素子151の発光効率個体差、温度変動や経時変動により、第2受光素子153の出力値がばらつく。このため、第2受光素子153の出力値が、目標出力値となるように、発光素子151の発光強度Rを調整することで、精度良くトナー像濃度を計測することが可能となる。すなわち、S202〜S204は、光学センサ51,52で精度良くトナー像の付着量を計測するための光学センサ51,52の校正動作に相当する。
このような光学センサ51,52の校正動作が終わったら、図8に示すような、パターン画像60を中間転写ベルト21上における各光学センサ51,52に対向する位置に自動形成する(S205)。パターン画像60は、濃度レベルの異なる5個程度のパッチ画像60Sからなり、Bk色のパターン画像60Bk、M色のパターン画像60M、C色のパターン画像60C(図示せず)、Y色のパターン画像60Y(図示せず)が順次中間転写ベルト21に形成される。このパッチ画像60Sは、露光条件をそれぞれ変えて形成される。このとき帯電、現像バイアス条件は予め決められた特定値で実行される。この中間転写ベルト上のパターン画像を図4(b)に示すように光学センサ51,52で光学的に計測する(S206)。
次に、各色パターン画像の各パッチ画像60Sを検知して得られた乱反射光を受光する第1受光素子152の5点の受光信号を、先の図5に示すような付着量と受光素子の出力値との関係に基づき構築された付着量算出アルゴリズムを用いてトナー付着量(画像濃度)に変換処理する。これにより、各パッチ画像60Sのトナー付着量が検知される。この場合、近赤外および/または赤外光を用いた光学センサを用いているので、色によって第1受光素子152の出力値に差異がないため、付着量算出アルゴリズムを色毎に備える必要がなく、共通の付着量算出アルゴリズムを用いることができる。なお、黒色の着色剤として、カーボンブラックを用いた場合は、先の図5に示したように、Y、M、C色と、Bk色とで付着量に対する受光素子の出力値が異なるので、Y、M、C色用と、Bk用との2つの付着量算出アルゴリズムを用いる。
色毎に各パッチ画像60Sのトナー付着量を検知したら、各パッチ画像のトナー付着量と各パッチ画像を作成したときの各現像ポテンシャルとの関係から、図9に示すように、線形近似した現像ポテンシャル−トナー付着量直線を各色求める。この現像ポテンシャル−トナー付着量直線から傾きγ、切片x0を各色算出する(S207)。このように各色の傾きγ、切片x0を求めることで、先ほど述べた濃度変動要因(経時劣化・環境変動)によって直線の傾きγおよび切片x0が狙いの特性(図中点線)とずれていることが検出できる。傾きγのずれを補正するための露光光量補正パラメータPを傾きγから決定する。また、現像が開始される現像ポテンシャル(切片X0)のズレを補正するため補正パラメータQを切片x0から決定する(S208)。
露光光量補正パラメータPを露光信号に掛け合わせることで傾きγが主に補正され、現像バイアスに補正パラメータQを掛け合わせることで切片x0が主に補正されることで、狙いとする画像濃度を安定して得ることが可能となる。なお、上述では、露光光量と現像バイアスを補正しているが、帯電電位や転写電流など画像濃度に寄与するその他のプロセス制御値を補正しても良い。
以下、本発明の特徴部分である故障予兆報知システムについて、詳しく説明する。
本実施形態においては、上述したプロセス調整運転において取得されるプリンタの各種内部情報を用いて、そのプリンタが故障予兆状態であるか否かを判別し、その時点から所定期間(例えば10日間)以内に本プリンタの故障が発生する確率を、故障リスクの大きさとして報知する。報知を受けた者、例えば、保守業者やユーザーは、その時点でのプリンタの機器状態を故障リスクの大きさという定量的な情報で受け取ることができるので、その故障に対するメンテナンスの緊急度と、そのユーザーのプリンタ使用頻度や必要とする画像品質の重要度等の各ユーザー個別の状況とを考慮しながら、最適なメンテナンスの時期を判断することが容易となる。これにより、一定の画像品質を保てずにプリンタが使用できなくなるダウンタイムを大幅に削減できるため、プリンタの運転効率は飛躍的に向上し、また、画像の不具合により発生していた用紙等のサプライ資源の無駄を削減することができる。なお、内部情報は複数であることが望ましいが、単数であっても可能な場合がある。
図10は、本実施形態における故障予兆報知システムの機能ブロック図である。
本実施形態では、故障予兆報知システム全体をプリンタに内在させる場合を例に挙げて説明するが、故障予兆報知システムの一部又は全部を、当該プリンタ以外の装置に設ける構成としてもよいことは言うまでもない。
本実施形態における故障予兆報知システムは、主に、情報取得手段としての情報取得部101と、情報記憶部102と、判別手段としての判別部103と、テーブル記憶手段としてのテーブル記憶部104と、テーブル更新手段としてのテーブル更新部105と、一時記憶手段としての一時記憶部106と、計時手段としての計時部107と、故障リスク判定手段としての故障リスク演算部108と、報知手段としてのプリンタの情報表示部(ディスプレイ、操作パネル等)を用いた報知処理を行う報知処理部109とを有している。
情報取得部101は、対象機器であるプリンタ1の内部情報を取得するものであり、具体的なハードウェアは、取得対象の内部情報によって様々である。内部情報としては、等時間間隔もしくは不等時間間隔で得られる装置内部信号を用いることができる。本実施形態では、上述したプロセス調整運転時に取得する各種情報、具体的には、感光体31Y,31M,31C,31Bkの帯電電位、露光部33Y,33M,33C,33Bkの露光強度、各駆動部のモータ負荷、光学センサ51,52の検出結果(トナー付着量)、現像部34Y,34M,34C,34Bk内における現像剤中トナー濃度等の情報を、内部情報として用いる。また、例えば、プリンタの運転時間、出力枚数、トナー消費量、累積印字画素数等の、プリンタの運転に伴って累積的に増加する運転情報を、内部情報として用いることもできる。また、例えば、機内温度、機内湿度等の、プリンタの使用環境等により変動する環境情報を、内部情報として用いることもできる。なお、内部情報としては、取得した信号や情報そのものであっても、その信号や情報を加工したものであってもよい。
情報記憶部102は、予め決められた一定期間内に情報取得部101が取得した内部情報を記憶するものである。情報取得部101が取得した内部情報は、経時変化を分析できるように、取得時期が異なる複数の情報を記憶しておくことが望ましい。
判別部103は、情報記憶部102に記憶された内部情報に基づいてプリンタ1が故障予兆状態であるか否かを判別する判別処理を行う。本実施形態では、説明の簡略化のため、1種類の故障に対応する故障予兆状態について判別する場合について説明するが、複数種類の故障それぞれに対応する複数の故障予兆状態について判別するための複数の判別部を設けてもよい。なお、1つの判別部は、1つの判別器を用いて故障予兆状態であるか否かを判別するものであっても、互いに判別基準が異なる2以上の判別器を用いて故障予兆状態であるか否かを判別するものであってもよい。後者の場合、各判別器の判別結果の論理積や論理和を判別部103の判別結果として用いてもよいし、各判別器の判別結果の多数決の結果を判別部103の判別結果として用いてもよいし、各判別器の判別結果を場合分けして最終的な判別結果を得るようにしてもよい。2以上の判別器を用いて故障予兆状態であるか否かを判別する方が、1つの判別器を用いる場合に比べて、故障予兆を出した部品を特定しやすく、また判別精度の向上が期待できる。
また、判別部103で採用し得る判別方法としては、公知の方法を広く用いることができる。例えば、重回帰やロジステック回帰に代表される多変量の線形判別分析(パラメトリック判別)、クラスタリングや分岐木分析を元にしての判別、ニューラルネットワーク、遺伝アルゴリズム、ブースティングを用いた学習的な非線形判別分析(ノンパラメトリック判別)等を、単独または組み合わせて利用することができるが、これに限定されるものではない。
テーブル記憶部104は、判別部103が故障予兆状態であると最初に判別する初期予兆時点からの経過時間と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報としての故障リスクテーブルを記憶するものである。このような故障リスクテーブルは、例えば、多数の同種のプリンタを実際に運転し、少なくとも判別部103が故障予兆状態であると最初に判別する初期予兆時点から実際に故障が発生した時点までの統計データを蓄積した知識データベースを用いて構築することができる。本実施形態における故障リスクテーブルは、知識データベースを元に作成された初期予兆時点からの経過日数と故障リスクとの関係を表した図13に示すグラフに基づいて作成されている。なお、故障リスクテーブルは、故障予兆状態を判別するための判別器の種類や、故障の種類などによって異なってくる場合があるので、複数種類の故障について故障リスクの大きさを求める場合には、判別器の種類や故障の種類ごとに故障リスクテーブルを用意することが望ましい。
テーブル更新部105は、所定のタイミングで、所定の情報に基づき、テーブル記憶部104に記憶されている故障リスクテーブルを更新するものである。本実施形態では、故障予兆状態に対応する故障についてのメンテナンスが実施されたタイミングで、そのメンテナンスの内容(処置情報)を上記知識データベースに追加し、追加後の知識データベースを用いて故障リスクテーブルを更新するが、これに限られるものではない。このように最新のメンテナンス処置情報を知識データベースに追加して故障リスクテーブルを更新することにより、後述する故障リスク判定処理の精度(確からしさ)を高めることができる。
一時記憶部106は、初期予兆時点後であって故障リスク演算部108が上記故障リスク判定処理を行う前に、テーブル記憶部104に記憶された故障リスクテーブルを一時的に記憶するものである。本実施形態において、後述する故障リスク演算部108は、一時記憶部106から故障リスクテーブルを読み出して故障リスク判定処理に用いる。テーブル記憶部104から故障リスクテーブルを読み出して故障リスク演算部108で用いるようにしてもよいが、故障リスク演算部108で故障リスクテーブルを用いている間に、その故障リスクテーブルがテーブル更新部105により更新されると、故障リスク判定処理を安定して行うことができないおそれがある。本実施形態のように一時記憶部106を設けることで、故障リスク判定処理を安定して行うことができる。
計時部107は、判別部103が故障予兆状態であると判別した初期予兆時点からの経過時間を計測するカウンター等により構成される。計時部107の経時結果(カウント値)は、故障リスク演算部108へ出力される。
故障リスク演算部108は、判別部103が故障予兆状態であると判別した後の所定期間(本実施形態では10日間とする。)内にプリンタ1が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う。本実施形態の故障リスク判定処理では、少なくとも、一時記憶部106に記憶されている故障リスクテーブルと、計時部107のカウント値(初期予兆時点からの経過時間)と、初期予兆時点以降に情報取得部101が取得した内部情報(運転情報)を用いる。なお、故障リスクテーブルは、上述したように、初期予兆時点から実際に故障が発生した時点までの統計データを元に構築されたものであるため、故障リスクテーブルと計時部107のカウント値とから故障リスクの大きさを判定することが可能である。しかし、この故障リスクテーブルは、一般化されたものであり、個々のプリンタの使用状況や使用環境等の個別状況が加味されていない。本実施形態のように初期予兆時点以降の内部情報(運転情報)をも加味して故障リスクの大きさを判定することにより、一般化された故障リスクの大きさを、判別対象のプリンタの使用状況や使用環境等の個別状況に応じて補正することが可能となる。よって、故障リスクの判定精度を高めることができる。なお、プリンタの使用状況や使用環境ごとに個別の故障リスクテーブルを用意すれば、同様に、故障リスクの判定精度を高めることも可能であるが、プリンタの使用状況や使用環境は多岐にわたるため、それぞれの使用状況や使用環境ごとの故障リスクテーブルを用意することは現実的ではない。
報知処理部109は、故障リスク演算部108が算出した故障リスクの大きさを報知手段としてのプリンタの操作パネルを用いて報知するための報知処理を行う。故障リスクの報知は、最終的に、本プリンタ1のユーザーや管理者、複数のプリンタ1を結ぶネットワークの管理者、情報管理の担当者、保守サービスの担当者やサービス管理者など、プリンタ1の保守サービスに関わる個人または機関等から選択される1以上の者に対して行われればよい。また、報知処理の内容としては、本プリンタ1の一般情報表示部(ディスプレイ、操作パネル等)への表示、本プリンタ1の特定情報表示部(アラームランプ、インジケータ等)の点灯や点滅等、本プリンタ1に直接的または間接的に接続された表示部(例えばコンピュータのモニタ)への表示、通信ネットワークやファクシミリ等による通信などが挙げられる。また、視覚的な報知手段に代えて又はこれに加えて、音等の聴覚的な報知手段を用いて報知を行うようにしてもよい。
報知する内容は、少なくとも故障リスク演算部108が算出した故障リスクの大きさに関する情報が含まれていればよいが、この他に、本プリンタおよび/または本プリンタを構成する所定の構成部品(構成要素)の使用耐用期間の終期に関する情報を含むことが好ましい。使用耐用期間の終期に関する情報は、取得した内部情報、特に運転情報を元にして容易に把握することができる。このような使用耐用期間の終期に関する情報を、故障リスクの大きさと共に報知することにより、プリンタ1の一般的な部品交換時期とそのプリンタ1が持つ故障リスクとを同時に視認することができるため、メンテナンス等の処置を行う必要がある部品や部位について、より正確に把握することが可能となる。その結果、メンテナンス作業の作業性が向上し、メンテナンスによる使用不能期間を低減することができる。
次に、本実施形態における故障予兆報知システムを用いた故障予兆報知方法について、詳しく説明する。
図11は、本実施形態における故障予兆報知方法の流れを示すフローチャートである。
故障予兆報知システムが内在したプリンタ1を導入してセッティングすると、まず、故障予兆報知システムの各種パラメータが初期化される(S1)。プリンタ1の運転が開始されると、その運転に伴い、故障予兆状態の判別を行うために必要なプリンタ1の内部情報が情報取得部101によって取得され(S2)、情報記憶部102に順次記憶される。判別部103は、所定のタイミング(例えばプロセス調整運転時又はその前後のタイミング)で、取得した内部情報に基づいて判別処理を行い(S3)、これによりプリンタ1が故障予兆状態であるか否かが判別される。これに引き続いて、過去に故障リスクテーブルを参照したことがあるかどうかが判断される(S4)。
上記S4において過去に参照したことがないと判断された場合には、上記S3の判別結果を照会する(S5)。そして、その照会結果が故障予兆状態を示していない場合には、正常な運転状態であるとして、その後も内部情報を取得しながらの運転が継続される。一方、その照会結果が故障予兆状態を示している場合には、テーブル記憶部104内の故障リスクテーブルを一時記憶部106へ読み出す(S6)。また、これと同時または前後して、上記S4での判断のために、故障リスクテーブルを参照した旨の履歴を付与する(S7)。その後、この時点における故障リスクの大きさを故障リスク演算部108により算出し(S8)、その算出結果が報知される(S9)。
上記S4において過去に参照したことがあると判断された場合には、現時点ですでに本プリンタ1は故障予兆状態であるので、この場合も、この時点における故障リスクの大きさを故障リスク演算部108により算出し(S8)、その算出結果が報知される(S9)。
故障リスクの報知に続いて、本プリンタ1の少なくとも故障予兆状態に関わる部品や部位に対して部品交換や修理等の処置が行われたかどうかを照会する(S10)。このような処置が行われていないと判断された場合には、更に、最初に故障予兆状態であると判別した初期予兆時点から予め決められた一定期間が経過したかどうかが照会される(S11)。一定期間が経過していないと判断された場合には、故障リスクを有する状態のまま、その後も内部情報を取得しながらの運転が継続される。一方、上記S10の照会で処置が行われたと判断された場合及び上記S11の照会で一定期間が経過していると判断された場合には、それぞれの情報を元にテーブル更新部105によりテーブル記憶部104内の故障リスクテーブルが更新される(S12)。また、この場合には、故障予兆報知システムの各種パラメータが初期化され(S1)、対象となる故障については初期状態からのプリンタ1の運転が再開される。
なお、本実施形態における故障予兆報知方法の各工程は時間的にタイミングを計りながらの同時処理(パラレル処理)を行ってもよく、また、各工程間で有限回の繰り返し処理が行われてもよい。また、内部情報の取得工程や状態判別工程などでは、順次段階的に樹枝状に場合分けをしながら各段階で新たに取得した内部情報を付加して状態判別を行うような方法を用いることもできる。
次に、本実施形態における故障リスク演算方法について、詳しく説明する。
図12は、上記S8におけるリスク演算方法の流れを示すフローチャートである。
本実施形態における故障リスク演算方法では、まず、本プリンタ1における運転情報(内部情報)を情報取得部101により取得する(S21)。そして、このS21で取得した運転情報と、計時部107のカウント値(初期予兆時点からの経過時間)とを用いて、一時記憶部106に記憶されている故障リスクテーブルを更新する(S22)。この更新工程では、上記S3の判別結果が連続的に故障予兆状態を示す場合には、上記S3の判別結果が断続的に故障予兆状態を示す場合や途中から故障予兆状態を示さなくなった場合よりも、より近い将来に故障し得る可能性が高まるように、故障リスクテーブルを更新するのが好ましい。これにより、このような更新を行う前の一般化された故障リスクテーブルに基づいて一旦はリスク報知がなされた後、その故障リスクを個々のプリンタの個別状況に応じて補正することができるようになり、より的確な時期にメンテナンス等の処置を行うための判断材料を提供することが可能となる。
上記S22で故障リスクテーブルを更新したら、続いて、更新した故障リスクテーブルを参照し(S23)、現時点から10日間内に故障が発生する確率を故障リスクの大きさとして算出する(S24)。
図13は、故障リスクテーブルを構築するための知識データベースを元に作成された初期予兆時点からの経過日数と故障リスクとの関係を表したグラフである。
故障リスクテーブルを構築するための知識データベースは、初期的には、多数の同種のプリンタ1についての初期予兆時点から実際に故障が発生した時点までの経過時間(日数)を蓄積したものである。図13に示すグラフは、100個の故障予兆事例について、初期予兆時点から実際に故障が発生した時点までの経過日数を元に作成したものである。すなわち、図13のグラフにおける縦軸の故障リスク(%)は、故障を予兆したプリンタの台数(100台)に対する、その初期予兆時点からの各経過日数までに実際に故障した台数の累積値の比率に相当する。今回の事例では、100事例中10事例については、初期予兆時点から30日以内に故障が発生しなかったため、30日以内に故障が発生する可能性(故障リスクの大きさ)の最大値は、(100−10)/100×100%=90%である。なお、初期の故障リスクテーブルは、できるだけ多くの事例から作成されることが好ましいが、上記S12で説明したように、故障予兆報知システムの運用中の事例を付加的に用いて故障リスクテーブルを更新することもできるため、初期の事例としては好ましくは50事例以上であればよく、100事例以上あればより好ましい初期の故障リスクテーブルを得ることができる。
図13に示すグラフに基づく故障リスクテーブルにおいては、最初に故障予兆状態と判別された初期予兆時点では、10日後までに故障が発生する可能性(故障リスクの大きさ)は42%となる。一方、初期予兆時点以降の時点における故障リスクの大きさを算出する場合、その最も簡単な算出方法としては、プリンタ1の運転日数が更新される毎に、図13に示すグラフの曲線をその経過日数分だけマイナス方向(図中左側)へシフトさせて、図14に示すようなグラフに基づく故障リスクテーブルを用いればよい。なお、図14に示すグラフは、初期予兆時点から5日間経過した時点のものである。この場合、初期予兆時点から5日間経過した時点における故障リスクの大きさ(その時点から10日間内に故障が発生する確率)は、62%に増加する。このように、通常、初期予兆時点からの経過時間が長くなればなるほど、故障リスクが大きくなる。
図15は、初期予兆時点から15日間が経過するまでの間における、初期予兆時点からの経過日数と上記S3の判別結果との関係の一例を示す故障状態判別プロフィールである。この例では、初期予兆時点(0日目)以降、2日目までは故障予兆状態であると判別されていたが、3日目から9日目までは、故障予兆状態ではないと判別され、10日目からは再度、故障予兆状態と判別されている。このような故障状態判別プロフィールは、プリンタ1の運転状況によって異なってくるため、知識データベースとして固定もしくは半固定されるものではない。本実施形態では、このような故障状態判別プロフィールも使用して故障リスク計算を行う。
図16は、図15に示した故障状態判別プロフィールをも使用して一時記憶部106に記憶されている故障リスクテーブルを更新した場合のグラフである。なお、図16に示すグラフは、初期予兆時点から5日間経過した時点のものである。本実施形態では、故障予兆状態であると判別された日数分は、上記と同様にグラフの曲線をマイナス方向へシフトさせるが、故障予兆状態でないと判別された日数分は、グラフの曲線をマイナス方向へシフトさせずに、グラフ横軸(日数軸)の縮尺を1日分縮める。この例においては、初期予兆時点から5日間経過した時点における故障リスクの大きさ(その時点から10日間内に故障が発生する確率)は、57%となる。この場合、故障予兆状態であると判別された日数分だけ単にグラフの曲線をマイナス方向へシフトさせた場合の図14に示す例に比べて、故障リスクが小さくなる。これは、図15に示すように3日目以降に当該プリンタ1が故障予兆状態ではないという判別結果が反映されたためである。
以上、本実施形態に係るプリンタ1は、対象機器である画像形成装置としてのプリンタ1の内部情報を取得する情報取得手段としての情報取得部101と、情報取得部101が取得した内部情報に基づいてプリンタ1が故障予兆状態であるか否かを判別する判別手段としての判別部103とを備え、判別部103が故障予兆状態であると判別した後におけるプリンタ1が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定手段としての故障リスク演算部108と、故障リスク演算部108の判定結果を報知する報知手段とを有する故障予兆報知システムを内在している。これにより、その報知を受ける保守業者やユーザー等は、その時点でメンテナンスの緊急度がどの程度なのかを明確に把握することができる。よって、この報知を例えば保守業者に対して行う場合には、ユーザーの個別事情に応じた適切なメンテナンス時期を判断することが容易となり、ユーザーごとの適切な保守サービスを提供することが容易となる。また、この報知を例えばユーザーに対して行う場合も、ユーザーが自己の事情に応じた適切なメンテナンス時期を判断することが容易となるので、ユーザーごとの適切な保守サービスを提供することが容易となる。
また、本実施形態において、故障リスク演算部108が判別する故障リスクの大きさは、判別部103が故障予兆状態であると判別した後の所定期間(10日間)内にプリンタ1が故障し得る確率を示すものである。これにより、その報知を受ける保守業者やユーザー等がその時点でメンテナンスの緊急度がどの程度なのかを明確に把握することができる。
なお、故障リスク演算部108が判別する故障リスクの大きさは、判別部103が故障予兆状態であると判別した後にプリンタ1が故障し得る確率が所定確率に至る時期を示すものであってもよい。例えば、プリンタ1が故障し得る確率が90%に至る時期が現時点からあとどのくらい後なのかを報知する。図13に示したグラフで説明すれば、初期予兆時点においては、プリンタ1が故障し得る確率が90%に至る時期が30日後である旨を報知し、初期予兆時点から5日間経過後の時点においては25日後である旨を報知する。この場合でも、その報知を受ける保守業者やユーザー等がその時点でメンテナンスの緊急度がどの程度なのかを明確に把握することが可能である。
また、本実施形態においては、判別部103が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点からの経過時間と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報としての故障リスクテーブルを記憶するテーブル記憶手段としてのテーブル記憶部104と、初期予兆時点からの経過時間を計測する計時手段としての計時部107とを設け、故障リスク演算部108が、初期予兆時点後における所定のタイミングで、テーブル記憶部104に記憶された故障リスクテーブルを参照して、計時部107の計測結果に対応する故障リスクの大きさを特定することにより故障リスク判定処理を行う。これにより、故障リスクテーブルの精度を高めれば、報知される故障リスクの大きさの精度を高めることができる。
また、本実施形態では、故障リスク演算部108は、初期予兆時点後における判別部103の判別結果をも用いて故障リスクの大きさを特定している。具体的には、図16に示したように、初期予兆時点後に判別部103が故障予兆状態であると判別された日数分はグラフの曲線をマイナス方向へシフトさせるが、故障予兆状態でないと判別された日数分はグラフの曲線をマイナス方向へシフトさせずにグラフ横軸(日数軸)の縮尺を1日分縮めたものに対応する故障リスクテーブルに基づき、故障リスクの大きさを特定する。これにより、報知される故障リスクの大きさの精度を更に高めることができる。
また、本実施形態では、初期予兆時点後におけるプリンタ1の内部情報と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報である故障リスクテーブルを用い、故障リスク演算部108が、その故障リスクテーブルを参照して、初期予兆時点後に情報取得部101が取得した内部情報に対応する故障リスクの大きさを特定することにより故障リスク判定処理を行うようにしている。これにより、個々のプリンタの個別状況を考慮して故障リスクの大きさを判定できるので、より適切なメンテナンス等の保守サービスの提供が容易になる。
特に、本実施形態では、故障リスクの大きさを特定するために初期予兆時点後に上記情報取得部101が取得する内部情報として、経時変化する情報である運転情報を用いるので、個々のプリンタの個別状況を適切に把握して故障リスクの大きさに反映させることができる。
また、本実施形態では、故障予兆状態に対応する故障についてのメンテナンスが実施されたとき、そのメンテナンスの内容に応じてテーブル記憶部104に記憶されている故障リスクテーブルを更新するテーブル更新部105が設けられているため、最新の情報を加味した故障リスクテーブルを得ることができるので、故障リスクの確度を向上することができる。
また、本実施形態では、初期予兆時点後であって故障リスク演算部108が故障リスク判定処理を行う前に、テーブル記憶部104に記憶された故障リスクテーブルを一時的に記憶する一時記憶手段としての一時記憶部106を設け、故障リスク演算部108は、一時記憶部106に記憶された故障リスクテーブルを参照して故障リスク判定処理を行う。これにより、故障リスク演算部108で故障リスクテーブルを用いている間に、その故障リスクテーブルがテーブル更新部105により更新されても、故障リスク判定処理を安定して行うことができる。
また、上述したように、情報取得部101が取得する内部情報に基づいて、プリンタ1における所定の構成部品の使用耐用期間の終期を特定する使用耐用期間特定手段を設け、故障リスク演算部108の判定結果とともに、その使用耐用期間特定手段が特定した所定の構成部品の使用耐用期間の終期に関する情報を報知手段で報知するようにしてもよい。この場合、プリンタ1の一般的な部品交換時期とそのプリンタ1が持つ故障リスクとを同時に把握できるため、メンテナンス等の処置を行う必要がある部品や部位について、より正確に把握することが可能となる。その結果、メンテナンス作業の作業性が向上し、メンテナンスによる使用不能期間を低減することができる。
なお、本実施形態では、故障予兆報知システム全体を対象機器であるプリンタに内在させる場合を例に挙げて説明するが、故障予兆報知システムの一部又は全部を、対象機器以外の装置に設ける構成としてもよい。例えば、対象機器にはその内部情報を通信ネットワークを介して出力する手段を設ければ、故障予兆報知システムの全部を、対象機器と通信ネットワークを介して接続された管理装置に設けることが可能となる。また、例えば、情報取得部と情報記憶部と判別部とを対象機器側に設け、残りを管理装置側に設けてもよい。
実施形態に係るプリンタの一例を示す概略構成図である。 同プリンタのシステムコントローラの主要部を示すブロック図である。 同プリンタの中間転写ベルト上のパターン画像と光学センサの構成例を示す要部斜視図である。 (a)は、中間転写ベルト表面を光学センサで検知するときの様子を説明する図である。(b)は、光学センサで中間転写ベルト上のトナー像を検知するときの様子を説明する図である。 光学センサの出力値とトナー付着量との関係を示す図である。 プロセス調整運転の制御フロー図である。 光学センサの出力値と発光素子(LED)の出力値との関係を示す図である。 中間転写ベルト上に形成されたパターン画像を示す図である。 プロセス調整方法について説明するための図である。 実施形態における故障予兆報知システムの機能ブロック図である。 同故障予兆報知システムを用いた故障予兆報知方法の流れを示すフローチャートである。 リスク演算方法の流れを示すフローチャートである。 故障リスクテーブルを構築するための知識データベースを元に作成された初期予兆時点からの経過日数と故障リスクとの関係を表したグラフである。 初期予兆時点からの経過日数(5日間)分だけ図13のグラフの曲線をマイナス方向へシフトさせたグラフである。 初期予兆時点から15日間が経過するまでの間における、初期予兆時点からの経過日数と上記S3の判別結果との関係の一例を示す故障状態判別プロフィールである。 図15に示した故障状態判別プロフィールをも使用した場合のグラフである。
符号の説明
1 プリンタ
30Y,30M,30C,30Bk 画像形成部
101 情報取得部
102 情報記憶部
103 判別部
104 テーブル記憶部
105 テーブル更新部
106 一時記憶部
107 計時部
108 故障リスク演算部
109 報知処理部

Claims (12)

  1. 対象機器の内部情報を取得する情報取得手段と、
    該情報取得手段が取得した内部情報に基づいて該対象機器が故障予兆状態であるか否かを判別する判別手段とを備えた故障予兆報知システムにおいて、
    上記判別手段が故障予兆状態であると判別した後における上記対象機器が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定手段と、
    該故障リスク判定手段の判定結果を報知する報知手段とを有することを特徴とする故障予兆報知システム。
  2. 請求項1の故障予兆報知システムにおいて、
    上記故障リスク判定手段が判別する故障リスクの大きさは、上記判別手段が故障予兆状態であると判別した後の所定期間内に上記対象機器が故障し得る確率を示すものであることを特徴とする故障予兆報知システム。
  3. 請求項2の故障予兆報知システムにおいて、
    上記判別手段が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点からの経過時間と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報を記憶するテーブル記憶手段と、
    上記判別手段が故障予兆状態であると判別した初期予兆時点からの経過時間を計測する計時手段とを有し、
    上記故障リスク判定手段は、上記初期予兆時点後における所定のタイミングで、上記テーブル記憶手段に記憶されたテーブル情報を参照して、上記計時手段の計測結果に対応する故障リスクの大きさを特定することにより、上記故障リスク判定処理を行うことを特徴とする故障予兆報知システム。
  4. 請求項3の故障予兆報知システムにおいて、
    上記故障リスク判定手段は、上記判別手段が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点後における上記判別手段の判別結果をも用いて上記故障リスクの大きさを特定することを特徴とする故障予兆報知システム。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、
    上記判別手段が故障予兆状態であると最初に判別した初期予兆時点後における上記対象機器の内部情報と故障リスクの大きさとの対応関係を示すテーブル情報を記憶するテーブル記憶手段を有し、
    上記故障リスク判定手段は、上記テーブル記憶手段に記憶されたテーブル情報を参照して、上記初期予兆時点後に上記情報取得手段が取得した内部情報に対応する故障リスクの大きさを特定することにより、上記故障リスク判定処理を行うことを特徴とする故障予兆報知システム。
  6. 請求項5の故障予兆報知システムにおいて、
    上記故障リスクの大きさを特定するために上記初期予兆時点後に上記情報取得手段が取得する内部情報として、経時変化する情報を用いることを特徴とする故障予兆報知システム。
  7. 請求項3乃至6のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、
    上記故障予兆状態に対応する故障についてのメンテナンスが実施されたとき、該メンテナンスの内容に応じて、上記テーブル記憶手段に記憶されているテーブル情報を更新するテーブル更新手段を有することを特徴とする故障予兆報知システム。
  8. 請求項3乃至7のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、
    上記テーブル記憶手段に記憶されているテーブル情報を更新するテーブル更新手段と、
    上記初期予兆時点後であって上記故障リスク判定手段が上記故障リスク判定処理を行う前に、上記テーブル記憶手段に記憶されたテーブル情報を一時的に記憶する一時記憶手段とを有し、
    上記故障リスク判定手段は、上記一時記憶手段に記憶されたテーブル情報を参照して上記故障リスク判定処理を行うことを特徴とする故障予兆報知システム。
  9. 請求項1の故障予兆報知システムにおいて、
    上記故障リスク判定手段が判別する故障リスクの大きさは、上記判別手段が故障予兆状態であると判別した後に上記対象機器が故障し得る確率が所定確率に至る時期を示すものであることを特徴とする故障予兆報知システム。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の故障予兆報知システムにおいて、
    上記情報取得手段が取得する内部情報に基づいて、上記対象機器における所定の構成部品の使用耐用期間の終期を特定する使用耐用期間特定手段を有し、
    上記報知手段は、上記故障リスク判定手段の判定結果とともに、該使用耐用期間特定手段が特定した上記所定の構成部品の使用耐用期間の終期に関する情報を報知することを特徴とする故障予兆報知システム。
  11. 対象機器の内部情報を取得する情報取得工程と、
    該情報取得工程で取得した内部情報に基づいて該対象機器が故障予兆状態であるか否かを判別する判別工程とを有する故障予兆報知方法において、
    上記判別工程で故障予兆状態であると判別された後における上記対象機器が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定工程と、
    該故障リスク判定工程での判定結果を報知する報知工程とを有することを特徴とする故障予兆報知方法。
  12. 画像形成装置の内部情報を取得する情報取得工程と、
    該情報取得工程で取得した内部情報に基づいて該画像形成装置が故障予兆状態であるか否かを判別する判別工程と、
    該判別工程での判別結果に基づいて、該故障予兆状態に対応する故障が発生しないように事前に処置するための処置工程とを有する画像形成装置の保守方法において、
    上記判別工程で故障予兆状態であると判別された後における上記画像形成装置が故障し得る故障リスクの大きさを判定する故障リスク判定処理を行う故障リスク判定工程と、
    該故障リスク判定工程での判定結果を報知する報知工程とを有することを特徴とする画像形成装置の保守方法。
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