JP2010090399A - 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、油分や色素を長期間に亘って内部に保存し或いは界面活性剤などを含む液体を所定時間に亘って内部に収納した場合にあっても外部に滲み出すことのない発泡成形品を得ることができる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液中にスチレン系単量体を供給、重合して得られたスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、スチレン系単量体及び上記スチレン系樹脂種粒子の総量が所定範囲になった時点に架橋性単量体を分散液中に供給し始め、スチレン系樹脂成長粒子中のスチレン系単量体の含有量を所定量に調整し、分散液中に供給される上記架橋性単量体の総量を所定範囲に限定することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
従来から、スチレン系樹脂粒子中に発泡剤を含浸させてなる発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を成形機の金型内に充填した上で加熱、発泡させて互いに融着一体化させて所望形状を有する発泡成形容器を製造していた。
上述のように、発泡成形容器は、予備発泡粒子自身の発泡圧力によって、予備発泡粒子が発泡してなる発泡粒子同士を熱融着一体化してなるものであるが、発泡粒子同士は、これら発泡粒子同士の対向部分において全面的に熱融着しているものではなく、部分的にしか熱融着一体化していない。
従って、発泡成形容器は、たとえ発泡粒子同士が良好な状態、即ち、発泡成形容器の断面において発泡粒子の表面同士が目視にて完全に熱融着一体化した状態であっても、発泡粒子同士の対向部分における非熱融着部分に起因する隙間が内外方向に連続することによって、目視では確認できないような微細な毛細管が発泡成形容器の内外面間に亘って貫通した状態に形成されている。
このことは、発泡成形容器内に界面活性剤を含有する染料水を入れて所定時間に亘って放置すると、発泡成形容器内の染料水が発泡粒子間にできた毛細管を通じて外部に滲み出してくる現象が生じ、この現象によって上記毛細管の存在を確認することができる。
そして、このような発泡成形容器をコーヒーのような飲料用コップとして用いる場合には実用上において何ら支障は生じないものの、発泡成形容器内に油性食品類、例えば、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、マーガリンなどのサラダ油、油脂などを含有する食品を長期間に亘って保存しておくと、これら油性食品類に含有されていた油分が発泡成形容器に形成された毛細管を通じて外部に滲み出してくるといった問題点があった。
同様に、発泡成形容器内に、即席麺と共にカレー粉を含有するかやく類を収納して保存しておくと、カレー粉の黄色色素が発泡成形容器の毛細管を通じて発泡成形容器外面に滲み出してきて商品価値が損なわれるといった問題点があった。
そこで、特許文献1には、スチレン系重合体種粒子を含む水性懸濁液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを連続的にまたは断続的に添加することにより、該スチレン系重合体種粒子に該スチレン系単量体を重合させて、スチレン系重合体粒子をえ、該スチレン系重合体粒子に易揮発性発泡剤を含浸させる発泡性スチレン系重合体粒子の製法であって、前記スチレン系重合体種粒子の量と目的とするスチレン系重合体粒子をうるために必要なスチレン系単量体の量との合計量を100重量部とするとき、該スチレン系重合体種粒子の量と添加したスチレン系単量体の量との合計量が90重量部になったときから該スチレン系単量体の添加が終了し重合反応が完結するまでの間に、該合計量100重量部に対して0.005〜0.02重量部の架橋剤を添加する発泡性スチレン系重合体粒子の製法(シード重合法)が開示されている。
しかしながら、上記製造方法によって製造された発泡性スチレン系重合体粒子は、該発泡性スチレン系重合体粒子を用いて得られた発泡成形品の外観性を向上させるのに有効な手段ではあるものの、上述したような、油分や黄色色素が発泡成形容器に形成された毛細管を通じて外部に滲み出してくるという問題点を充分に解決するものではなかった。
特許第3474995号公報
そこで、本発明者は、鋭意研究したところ、発泡成形容器において油分や黄色色素の滲み出しが発生した部分では、発泡粒子の熱融着部分が波打って皺になっており、油分や黄色色素によって変質されている一方、油分や黄色色素の滲み出しが発生していない部分では発泡粒子の熱融着部分に波打ち現象は発生しておらず歪みのない状態であり、油分や黄色色素によって変質されていないことを知見し、発泡成形容器において油分や黄色色素の滲み出しを防止するには、発泡成形品の耐油性、特に、発泡成形品の発泡粒子同士の熱融着部分の耐油性を向上させることが必要であることを見出した。
本発明は、食品などに含まれた油分やカレー粉などの色素を長期間に亘って内部に保存し或いは界面活性剤などを含む液体を所定時間に亘って内部に収納した場合にあっても外部に滲み出すことのない発泡成形品を得ることができ且つ発泡性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液中にスチレン系単量体を供給し、このスチレン系単量体をスチレン系種粒子に含浸させて重合させ、スチレン系樹脂種粒子を成長させてスチレン系樹脂粒子を製造した後或いはスチレン系樹脂種粒子の成長途上にて発泡剤を含浸させる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、上記分散液中に供給されたスチレン系単量体及び上記スチレン系樹脂種粒子の総量が、上記スチレン系樹脂種粒子及び上記スチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体の総量の60重量%以上で且つ90重量%未満に相当する量となった時点に架橋性単量体を上記分散液中に供給し始め、上記スチレン系単量体の上記分散液中への供給が完了するまで、上記架橋性単量体を上記分散液中に継続的に又は断続的に供給すると共に、上記分散液中に上記架橋性単量体の供給を開始した後における成長途上にあるスチレン系樹脂成長粒子中のスチレン系単量体の含有量が3〜15重量%となるように調整し、更に、上記分散液中に供給される上記架橋性単量体の総量は、上記分散液中に上記架橋性単量体の供給を開始した以降に上記分散液中に供給され且つ上記スチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体100重量部に対して0.25〜0.50重量部であることを特徴とする
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法で製造された発泡性スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられる。
又、上記スチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体を主成分とする、上記スチレン系単量体とこのスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなどが挙げられる。なお、上記スチレン系樹脂の重量平均分子量は、15万〜40万が好ましく、25万〜35万がより好ましい。
そして、発泡性スチレン系樹脂粒子のゲル分率は、低いと、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下して、油分や色素或いは界面活性剤などを含む液体が発泡成形品を通じて外部に滲み出す一方、高いと、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡成形時に長時間の加熱が必要となり生産効率が低下するので、10〜50重量%に限定され、20〜35重量%が好ましい。
なお、発泡性スチレン系樹脂粒子のゲル分率は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、発泡性スチレン系樹脂粒子を140℃のオーブンで1時間に亘って加熱し、発泡性スチレン系樹脂粒子中の発泡剤を除去して測定試料を作製し、この測定試料の重量W1 を測定する。
次に、測定試料をトルエン100g中に浸漬させて140℃で20時間に亘って還流した後、80メッシュの金網を用いて濾過し、金網上の残渣をデシケータ内に供給して140℃で2時間に亘って7.98×104 Paの減圧下にて減圧乾燥後にデシケータ内で室温まで自然冷却し、乾燥残渣の重量W2 を測定し、下記式により算出した。
ゲル分率(重量%)=100×W2 /W1
そして、発泡性スチレン系樹脂粒子を100℃の水に5分間浸漬して予備発泡させた時の嵩密度は、低いと、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が高すぎ、発泡成形品を得た後、発泡粒子が膨張しなくなるまで冷却するのに余分な時間を要する一方、高いと、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡成形時の加熱時間に長時間を要するので、0.025〜0.06g/cm3 に限定され、0.027〜0.04g/cm3 が好ましい。
ここで、本発明において、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩密度は下記要領で測定されたものをいう。即ち、予備発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3 をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定した。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3
=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
なお、発泡性スチレン系樹脂粒子を100℃の水に5分間浸漬して予備発泡させた時の嵩密度を測定する際の測定試料は下記の要領で作製されたものを用いる。先ず、発泡性スチレン系樹脂粒子を100℃の水に5分間浸漬して予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を80メッシュの金網を用いて水から分離した後、金網上にて40℃で20時間乾燥させたものを測定試料として用いる。
更に、発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子の表層部の気泡の平均気泡径は、小さいと、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて発泡成形品を成形する際に気泡が成形時の熱によって破れ、発泡成形品の外観が低下する一方、大きいと、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡成形品の光沢が損なわれるので、10〜70μmに限定され、20〜60μmが好ましい。なお、予備発泡粒子の嵩倍率とは、発泡性スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂の密度を上述の予備発泡粒子の嵩密度で除したものをいう。
加えて、発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子における表層部の気泡の平均気泡径と中央部の気泡の平均気泡径との比(以下「平均気泡径比」という)が下記式1を満たしている必要があり、下記式2を満たしていることが好ましい。
0.4≦(表層部の気泡の平均気泡径/中央部の気泡の平均気泡径)≦0.8・・・式10.6≦(表層部の気泡の平均気泡径/中央部の気泡の平均気泡径)≦0.8・・・式2
これは、上記平均気泡径比が小さいと、発泡性スチレン系樹脂粒子の表層部における発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着に必要な発泡圧を得ることができず、発泡粒子同士の熱融着が不充分となって、油分や色素或いは界面活性剤などを含む液体が発泡成形品を通じて滲み出す虞れがある一方、上記平均気泡径比が大きいと、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下して、油分や色素或いは界面活性剤などを含む液体が発泡成形品を通じて滲み出す虞れがあるからである。
ここで、蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子の表層部及び中央部並びにこれらの気泡の平均気泡径は下記要領で定められる。即ち、発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させる。そして、この嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子をその重心を通る面で予備発泡粒子の重量が二等分されるように切断する。
そして、この嵩倍率10倍の予備発泡粒子の切断面全体を走査型電子顕微鏡を用いて倍率80〜100倍の走査型電子顕微鏡写真を得る。この走査型電子顕微鏡写真に写された予備発泡粒子の切断面全体を包囲する最小径の真円(外側円)を描く。
この外側円の中心を中心とし且つ該外側円の直径の1/3の半径を有する真円(中央円)を描き、この中央円内に存する予備発泡粒子部分を中央部とし、この中央部内に存在する気泡から任意に20個の気泡を抽出する。なお、対象となる気泡は、中央部内に気泡全体が包含されているものを対象とし、一部でも中央部外にはみ出している気泡は対象外とする。又、中央部内に存在する気泡数が20個未満である場合には中央部内に存在する全ての気泡を対象とする。
次に、この抽出した各気泡における最大弦長を測定し、各気泡の最大弦長の相加平均を中央部の気泡の平均気泡径とする。なお、気泡の最大弦長とは、一の気泡に注目した際、この気泡を構成する気泡壁内面の任意部分間を直線で結んだ時の最も長い直線(但し、一部でも気泡外を通過する直線(例えば、図1の点線状の直線)は除く)の長さRをいう(図1参照)。
一方、外側円の中心を中心とし且つ該外側円の直径の2/5の半径を有する真円(表層円)を描き、この表層円と上記外側円との間に存在する予備発泡粒子部分を表層部とし、この表層部内に存在する気泡から任意に20個の気泡を抽出する。なお、対象となる気泡は、表層部内に気泡全体が包含されているものを対象とし、一部でも表層部外にはみ出している気泡は対象外とする。又、表層部内に存在する気泡数が20個未満である場合には表層部内に存在する全ての気泡を対象とする。次に、この抽出した各気泡における最大弦長を測定し、各気泡の最大弦長の相加平均を中央部の気泡の平均気泡径とする。
次に、上記発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法について説明する。先ず、スチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液を作製する。このスチレン系樹脂種粒子の製造方法としては、汎用の方法が用いられ、例えば、上記スチレン系単量体に必要に応じてビニル単量体を加えた上で水中にて懸濁重合させてスチレン系樹脂種粒子を製造する方法、上記スチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して所定長さ毎に切断し、スチレン系樹脂種粒子を製造する方法などが挙げられる。
そして、上記スチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液中に上記スチレン系単量体を継続的に又は断続的に供給して重合開始剤の存在下にてシード重合させてスチレン系樹脂種粒子を種粒子として成長させてスチレン系樹脂粒子を製造する。なお、本発明において、スチレン系樹脂種粒子を種粒子として成長途上にある樹脂粒子を「スチレン系樹脂成長粒子」としている。又、スチレン系単量体と共にこのスチレン系単量体と共重合可能な上記ビニル単量体を分散液中に供給してもよい。
この時、上記分散液中に既に供給されたスチレン系単量体及び上記スチレン系樹脂種粒子の総量(以下「供給済み総量」という)が、上記スチレン系樹脂種粒子及び上記スチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体の総量(以下「供給必要総量」という)の60重量%以上で且つ90重量%未満に相当する量となった時点、好ましくは75〜85重量%に相当する量となった時点から架橋性単量体を上記分散液中に供給し始める。
これは、供給済み総量が供給必要総量の60重量%未満の時点で架橋性単量体を上記分散液中に供給し始めると、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の内部が必要以上に架橋され、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下する一方、供給済み総量が供給必要総量の90重量%以上の時点で架橋性単量体を上記分散液中に供給し始めると、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面部が必要以上に架橋されてしまい、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面部の発泡性が低下し、発泡粒子同士の熱融着が不充分となって良好な発泡成形品が得られないからである。
ここで、上記架橋性単量体としては、発泡性スチレン系樹脂粒子に架橋構造を付与することができるものであれば、特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジタクリレートなどのアルキレングリコールジメタクリレートなどの多官能性単量体などが挙げられ、ジビニルベンゼンが好ましい。
そして、上記架橋性単量体の分散液中への供給は、上述のタイミングで開始された後、分散液中へのスチレン系単量体の供給が完了するまで、継続的に又は断続的に行なわれる。具体的には、上記架橋性単量体の分散液中への供給は、上述のタイミングで開始された後、スチレン系単量体がさらに分散液中に供給されて供給済み総量が供給必要総量の90重量%以上となった以降も引き続き架橋性単量体を分散液中に継続的に又は断続的に供給する。
なお、供給済み総量が供給必要総量の90重量%以上となった以降も架橋性単量体が分散液中に供給されておれば、架橋性単量体の分散液中への供給の完了時点と、スチレン系単量体の分散液中への供給の完了時点とが合致しなくてもよく、架橋性単量体の分散液中への供給の完了時点が、スチレン系単量体の分散液中への供給の完了時点より早くてもよい。
このように、供給済み総量が供給必要総量の90重量%以上となった以降も架橋性単量体を分散液中に供給することによって、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面部における所定厚み部分を発泡に適したゲル分率(架橋度)とすることができる。
上記架橋性単量体の分散液中への供給は、架橋性単量体をスチレン系単量体とは別に分散液中に供給してもよいが、分散液中に未だ供給していない残余のスチレン系単量体の全量に、分散液中に供給される全ての架橋性単量体を溶解させ、この架橋性単量体を溶解させたスチレン系単量体を分散液中に供給するのが好ましい。
このように、架橋性単量体をスチレン系単量体中に溶解させた上で分散液中に供給すると、スチレン系樹脂種粒子を種粒子として成長途上にあるスチレン系樹脂成長粒子中における架橋性単量体とスチレン系単量体との割合をシード重合中、略一定に保持することができ、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子におけるゲル分率をその表面から所定厚みに亘って発泡に適し且つ略均一なものとすることができ、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性を確保しつつ、得られる発泡成形品の耐油性を優れたものとすることができる。
そして、スチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体の総量は、少ないと、一回のシード重合で重合させるスチレン系単量体の量が少なくなって不経済となる虞れがある一方、多いと、シード重合に要する時間が長くなって生産性が低下する虞れがあるので、スチレン系樹脂種粒子がスチレン系樹脂粒子中、10〜90重量%となるように調整することが好ましく、20〜80重量%となるように調整することがより好ましい。
更に、分散液中に供給される架橋性単量体の総量は、少ないと、発泡性スチレン系樹脂粒子のゲル分率が低くなって、得られる発泡成形品の耐油性が低下することがある一方、多いと、発泡性スチレン系樹脂粒子のゲル分率が高くなり過ぎて発泡性が低下することがあるので、分散液中に架橋性単量体の供給を開始した以降に該分散液中に供給され、且つスチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体100重量部に対して0.25〜0.50重量部に限定され、0.25〜0.45重量部が好ましい。
又、上記分散液中へ架橋性単量体の供給を開始した後におけるスチレン系樹脂成長粒子中のスチレン系単量体の含有量は、少ないと、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面部が必要以上に架橋されてしまって、発泡性スチレン系樹脂粒子の成形性が低下する一方、多いと、スチレン系単量体がスチレン系樹脂成長粒子内部に必要以上に含浸され、このスチレン系単量体のスチレン系樹脂成長粒子内部への含浸に伴って架橋性単量体もスチレン系樹脂成長粒子内部に含浸されてしまい、発泡性スチレン系樹脂粒子全体が架橋されて、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下するので、3〜15重量%となるように、好ましくは3〜12重量%となるように調整する必要がある。
なお、スチレン系樹脂成長粒子中のスチレン系単量体の含有量は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、スチレン系樹脂成長粒子を分散液中から取り出し、スチレン系樹脂成長粒子の表面に付着した水分をガーゼを用いて拭き取り除去する。
そして、スチレン系樹脂成長粒子を0.08g採取し、この採取したスチレン系樹脂成長粒子をトルエン25ミリリットル中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ミリリットル、5重量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1重量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して試料の滴定数(ミリリットル)とする。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素8.7g及び三塩化ヨウ素7.9gを溶解してなるものである。
一方、スチレン系樹脂成長粒子を溶解させることなく、トルエン25ミリリットル中に、ウイス試薬10ミリリットル、5重量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1重量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定してブランクの滴定数(ミリリットル)とする。
そして、スチレン系樹脂成長粒子中におけるスチレン系単量体量を下記式に基づいて算出することができる。
スチレン系樹脂成長粒子中におけるスチレン系単量体量(重量%)
=0.1322×(ブランクの滴定数−試料の滴定数)/試料の滴定数
又、上記スチレン系単量体をスチレン系樹脂種粒子中に含浸させてシード重合させる際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3、5トリメチルヘキサノエート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、単独で用いられても併用されてもよいが、10時間の半減期を得るための分解温度が50℃以上で且つ80℃未満の重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80℃以上で且つ120℃以下の重合開始剤とを併用することが好ましい。なお、重合開始剤の添加量としては、スチレン系単量体100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましい。
なお、上記分散液には、スチレン系種粒子及びこれを種粒子として成長中のスチレン系樹脂成長粒子の分散安定性を向上させるために、懸濁安定剤や安定助剤を添加してもよい。
上記懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難溶性無機化合物などが挙げられ、難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。
次に、上記シード重合によって得られたスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、或いは、上記シード重合の途上にてスチレン系樹脂成長粒子に発泡剤を含浸させて、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する。
上記発泡剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系発泡剤が挙げられ、脂肪族炭化水素が好ましい。なお、発泡剤は単独で使用されても併用されてもよい。更に、上記発泡性スチレン系樹脂粒子には、チオジプロピオン酸エステル、チオジブチル酸エステル、エチレンビスステアリン酸アミドなどの気泡調整剤、紫外線吸収剤、増量剤、着色剤などの汎用の添加剤が添加されていてもよい。
又、発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、得られる発泡成形品の用途によって調整されるが、発泡成形品が発泡成形容器であって厚みが薄い場合には、0.2〜1mmが好ましい。
このようにして得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、予備発泡機で予備発泡されて予備発泡粒子とされ、得られた予備発泡粒子は発泡成形機の金型内に充填された上で加熱蒸気などの加熱媒体により発泡させられて発泡圧によって互いに熱融着一体化して所望形状を有する発泡成形品とされる。なお、予備発泡粒子の嵩密度は、0.015〜0.500g/cm3 が好ましい。
又、上記発泡成形品としては種々の形態のものが挙げられるが、コップ状、どんぶり状、トレー状、箱状などの発泡成形容器が本発明の作用、効果を効果的に奏する点で好ましく、この発泡成形容器内には、牛脂、大豆油、菜種油、しそ油、オリーブ油、ごま油、べに花油、コーン油などの植物油、ラード、即席麺、シチュー、マヨネーズ、ドレッシングソース、カレールー、バター、マーガリン、ホワイトソース、ヨーグルト類、アイスクリーム、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキンなどの油性食品や脂肪食品、界面活性剤を含む水溶液などを収納することができる。
そして、上記発泡成形品は、上述のように、所定の発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られたものであるので、発泡粒子同士がそれらの界面において強固に熱融着一体化していると共に、発泡粒子同士が熱融着している界面部分は架橋密度が高くて耐油性に優れている。
従って、油分を含んだ食品やカレー粉などの色素を含むものを長期間に亘って発泡成形品内に収納し、或いは、界面活性剤を含む液体などを発泡成形品内に収納した場合にあっても、発泡粒子同士の熱融着界面が油分、色素或いは界面活性剤などによっておかされるようなことはなく、よって、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて油分や色素、界面活性剤を含んだ液体などが発泡成形品の外面に滲み出るといった事態を略防止することができる。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂粒子をシード重合によって製造するにあたり、架橋性単量体の分散液中への供給を所定時期に開始すると共にスチレン系樹脂成長粒子中のスチレン系単量体の含有量を所定範囲内となるように調整するものであるから、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子は、その表面部のゲル分率が高い一方、内部のゲル分率が小さく、このゲル分率の低い内部に起因して優れた発泡性を有する。
更に、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形品において、その発泡粒子同士の熱融着部分は、発泡性スチレン系樹脂粒子におけるゲル分率の高い表面部に由来するものであることから、優れた耐油性を有しており、よって、発泡成形品内に油分を含んだ食品を長期間に亘って収納したり或いは界面活性剤を含んだ液体を収納した場合にあっても、発泡成形品の発泡粒子同士の熱融着部分が油分や界面活性剤によって変質したりすることはなく、発泡成形品内に収納した油分や界面活性剤を含んだ液体が外部に滲み出すといったことは殆どなく、発泡成形品を実用上、問題なく用いることができる。
そして、上記発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において、分散液中に供給していない残余のスチレン系単量体に架橋性単量体を溶解させ、この架橋性単量体を溶解させたスチレン系単量体を上記分散液中に供給する場合には、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子における表面部のゲル分率を発泡に適し且つ略均一なものとすることができ、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性を確保しつつ、得られる発泡成形品の耐油性を更に優れたものとすることができる。
発泡性スチレン系樹脂粒子が、ゲル分率が10〜50重量%であり且つ100℃の水に5分間浸漬して予備発泡させた時の嵩密度が0.025〜0.06g/cm3 であると共に、蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子において、その表層部の気泡の平均気泡径が10〜70μmであり且つ表層部の気泡の平均気泡径と中央部にある気泡の平均気泡径との比が所定範囲内にある場合、優れた発泡性を有し、この発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形品は、その優れた発泡性に起因した充分な発泡圧力によって発泡粒子同士が強固に熱融着一体化していると共に、発泡粒子同士の熱融着部分は、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面部が発泡してなるものであることから、その高いゲル分率に由来して優れた耐油性を発揮する。
従って、発泡成形品内に油分を含んだ食品を長期間に亘って収納したり或いは界面活性剤を含んだ液体を収納した場合にあっても、発泡成形品の発泡粒子同士の熱融着部分が油分や界面活性剤によって変質したりすることはなく、発泡成形品内に収納した油分や界面活性剤を含んだ液体が外部に滲み出すといったことは殆どなく、発泡成形品を実用上、問題なく用いることができる。
そして、上記発泡性スチレン系樹脂粒子において、ゲル分率が20〜35重量%である場合には、発泡性スチレン系樹脂粒子の優れた発泡性を維持しつつ、この発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形品は、その発泡粒子同士の熱融着界面においてさらに優れた耐油性を有している。
(実施例1)
攪拌装置を備えたステンレス製の100リットルのオートクレーブ内に、イオン交換水32000重量部、平均粒径が0.3〜0.5mmで且つ重量平均分子量が28万のポリスチレン種粒子20000重量部、ピロリン酸マグネシウム200重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8重量部を供給して攪拌し、分散液を作製した。
一方、イオン交換水6000重量部に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部及びピロリン酸マグネシウム10重量部を分散させた後、ベンゾイルパーオキサイド(10時間の半減期を得るための分解温度:74℃)70重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間の半減期を得るための分解温度:104℃)15重量部をスチレン5000重量部に溶解させたものをさらに加えて攪拌して乳濁させてスチレン乳濁液を作製した。
そして、上記分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に上記スチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液を85℃に保持しつつ、分散液中にスチレン5000重量部を40分間に亘って連続的に終始、同一滴下速度にて滴下してシード重合を行なった。
しかる後、上記分散液を引き続き85℃に保持しつつ、この分散液中に、ジビニルベンゼン25重量部をスチレン10000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を80分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下してシード重合を行なった。続いて、上記分散液を85℃に1時間に亘って保持した後、50分かけて125℃まで昇温し、分散液を125℃に2時間に亘って保持して重合を完了し、その後、上記分散液を90℃に冷却、保持した。なお、ジビニルベンゼンを分散液中に供給し始めてから20分間隔毎に、ポリスチレン種粒子を種粒子として成長途上にあるポリスチレン成長粒子中のスチレン含有量を測定した。又、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
一方、ジラウリルチオジプロピオネート10重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部をイオン交換水500重量部に供給して攪拌、分散させてなるものを上記分散液中に供給した。
しかる後、上記分散液が入っているオートクレーブ内にノルマルペンタン2240重量部及びイソペンタン560重量部を圧入して30分かけて115℃まで昇温して2時間に亘って保持した後に30℃に冷却して水を分離除去した上で乾燥させて、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、発泡性ポリスチレン粒子を水蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させて得られた予備発泡粒子の平均気泡径比を測定する際に撮影した走査型電子顕微鏡写真を図2に示した。
(実施例2)
実施例1と同様の要領で作製した分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に、実施例1と同様の要領で作製したスチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液を85℃に保持しつつ、分散液中にスチレン10000重量部を80分間に亘って終始、同一滴下速度にて連続的に滴下した。
しかる後、上記分散液を引き続き85℃に保持しつつ、上記分散液中に、ジビニルベンゼン15重量部をスチレン5000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を40分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下してシード重合を行なった。その後の要領は、実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
(実施例3)
実施例1と同様の要領で作製した分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に、実施例1と同様の要領で作製したスチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液を85℃に保持しつつ、ジビニルベンゼン40重量部をスチレン15000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を120分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下してシード重合を行なった。その後の要領は、実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
(実施例4)
攪拌装置を備えたステンレス製の100リットルのオートクレーブ内に、イオン交換水32000重量部、平均粒径が0.3〜0.5mmで且つ重量平均分子量が28万のポリスチレン種粒子32000重量部、ピロリン酸マグネシウム200重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8重量部を供給して攪拌して分散液を作製した。
一方、イオン交換水6000重量部に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部及びピロリン酸マグネシウム10重量部を分散させた後、ベンゾイルパーオキサイド28重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート15重量部をスチレン2000重量部に溶解させたものをさらに加えて攪拌して乳濁させてスチレン乳濁液を作製した。
そして、上記分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に上記スチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液を85℃に保持しつつ、分散液中に、ジビニルベンゼン27重量部をスチレン6000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を60分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下してシード重合を行なった。その後の要領は、実施例1と同様にして、平均粒子径が400μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
(実施例5)
実施例1と同様の要領で分散液を作製する一方、ベンゾイルパーオキサイドを70重量部の代わりに90重量部としたこと以外は実施例1と同様の要領でスチレン乳濁液を作製した。
上記分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に上記スチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液中にスチレン10000重量部を90分間に亘って連続的に終始、同一滴下速度にて滴下すると共に、このスチレンの分散液内への供給中、分散液の温度を0.2℃/分の一定の昇温速度で昇温した。
しかる後、上記分散液中に、ジビニルベンゼン20重量部をスチレン5000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を30分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下すると共に、このスチレン溶液の分散液内への供給中、分散液の温度を0.2℃/分の一定の昇温速度で昇温してシード重合を行なった。その後の要領は、実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
(比較例1)
スチレン溶液の代わりに、スチレン10000重量部を分散液中に滴下したこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、スチレン溶液の代わりに分散液中にスチレンを滴下し始めてから40分経過時、及び、その後、20分間隔毎にポリスチレン種粒子を種粒子として成長途上にあるポリスチレン成長粒子中のスチレン含有量を測定した。又、発泡性ポリスチレン粒子を水蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させて得られた予備発泡粒子の平均気泡径比を測定する際に撮影した走査型電子顕微鏡写真を図3に示した。
(比較例2)
スチレン溶液として、ジビニルベンゼン7重量部をスチレン10000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例3)
スチレン溶液として、ジビニルベンゼン60重量部をスチレン10000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。
(比較例4)
実施例1と同様の要領で作製した分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に、実施例1と同様の要領で作製したスチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液を85℃に保持しつつ、この分散液中にスチレン12000重量部を100分間に亘って終始、同一滴下速度にて連続的に滴下した。
しかる後、上記分散液を引き続き85℃に保持しつつ、分散液中に、ジビニルベンゼン9重量部をスチレン3000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を20分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下してシード重合を行なった。その後の要領は、実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
(比較例5)
分散液を125℃に昇温する以前の分散液の温度を85℃の代わりに75℃としたこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径が450μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、発泡性ポリスチレン粒子を水蒸気によって嵩倍率10倍に予備発泡させて得られた予備発泡粒子の平均気泡径比を測定する際に撮影した走査型電子顕微鏡写真を図4に示した。
(比較例6)
ポリスチレン粒子を20000重量部の代わりに15000重量部用いて分散液を作製する一方、ベンゾイルパーオキサイドを70重量部の代わりに90重量部用いてスチレン乳濁液を作製した。
そして、上記分散液を85℃に加熱した上で該分散液中に上記スチレン乳濁液を供給し、上記分散液を85℃に40分間に亘って保持した直後に、この分散液を85℃に保持しつつ、該分散液中に、ジビニルベンゼン60重量部をスチレン20000重量部に溶解させてなるスチレン溶液を160分かけて終始、同一滴下速度で連続的に滴下してシード重合を行なった。続いて、上記分散液を85℃に1時間に亘って保持した後、50分かけて125℃まで昇温し、分散液を125℃に2時間に亘って保持して重合を完了し、その後、上記分散液を90℃に冷却、保持した。その後の要領は、実施例1と同様にして、平均粒子径が500μmの発泡性ポリスチレン粒子を得た。なお、分散液中に供給したスチレンは全てシード重合に用いられていた。
上記の如くして得られた発泡性ポリスチレン粒子のゲル分率及び100℃の水に5分間浸漬して予備発泡させた時の嵩密度(表1では単に「嵩密度」とした)、発泡性ポリスチレン粒子を嵩倍率10倍に予備発泡させた予備発泡粒子における表層部の気泡の平均気泡径(表1では「表層部平均気泡径」とした)、上記予備発泡粒子における表層部の気泡の平均気泡径と中央部の気泡の平均気泡径との比(表層部の気泡の平均気泡径/中央部の気泡の平均気泡径)(平均気泡径比)、並びに、発泡性ポリスチレン粒子の製造時におけるポリスチレン成長粒子中の最大スチレン単量体含有量(表1では「最大スチレン含有量」とした)、最小スチレン単量体含有量(表1では「最小スチレン含有量」とした)及びジビニルベンゼン供給開始時のポリスチレン成長粒子中のスチレン単量体含有量(表1では「開始時スチレン含有量」とした)を上述の要領で測定すると共に、油分滲出性及び界面活性剤滲出性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
又、表1には、ジビニルベンゼンを分散液中に供給し始めた時点における供給済み総量の供給必要総量に対する百分率(表1では「供給時期」とした)と、分散液中にジビニルベンゼンの供給を開始した以降に該分散液中に供給されたスチレン総量を100重量部に換算した時の上記分散液中に供給されたジビニルベンゼンの換算量(表1では「供給量」とした)を記載した。
(油分滲出性)
発泡性ポリスチレン粒子2000g及び表面処理剤としてステアリン酸亜鉛(粉砕品、平均最大長20μm)4gをスーパーミキサーに供給して2分間に亘って攪拌した。次に、スーパーミキサー内にポリエチレングリコール(重量平均分子量:300)0.8gを供給して5分間に亘って攪拌して、発泡性ポリスチレン粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びポリエチレングリコールを均一に付着させた。
しかる後、上記発泡性ポリスチレン粒子を予備発泡機に供給して水蒸気を用いて嵩密度0.1g/cm3 に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。この予備発泡粒子を常温にて1日放置して乾燥させた。
次に、上記予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に供給、充填し、予備発泡粒子を0.2MPaの水蒸気を用いて6秒間に亘って加熱、発泡させて、内容積量が450cm3 で且つ肉厚が2mmのカップ状の発泡成形容器を得た。なお、カップ状の発泡成形容器は、平面円形状の底面部の外周縁から一定高さの周壁部を上方における斜め外方に向かって突設してなるものであった。
そして、得られた発泡成形容器内に、即席麺に用いられている、カレー粉を含む調味料及びかやくを満杯になるまで供給した上で、発泡成形容器を延伸ポリプロピレンフィルムで全面的に被覆した。次に、上記発泡成形容器を60℃に保持されたオーブン内に48時間に亘って放置した。
次に、発泡成形容器の周壁部外面の全面を紙に写し取ると共に、発泡成形容器の周壁部外面に滲み出したカレー粉による黄色色素部分を上記紙に写し取り、写し取った発泡成形容器の周壁部外面全面に対応する部分の紙の重量W3 を測定する一方、写し取った黄色色素部分に対応する部分の紙の重量W4 を測定して下記式により百分率を算出し、下記基準により判断した。
油分滲出性(%)=100×W4 /W3
◎・・・10%未満
○・・・10%以上で且つ20%未満
×・・・20%以上
(界面活性剤滲出性)
先ず、水1リットル内にノニオン系界面活性剤(花王社製 商品名「花王エマルゲン810」)1.0g及び黒系着色剤(和光純薬社製 商品名「エリオクロムブラックT」)0.05gを均一に溶解、分散させて着色水を作製した。
そして、油分滲出性の測定時と同様の要領で作製した発泡成形容器内に上記着色水を満杯となるまで供給して発泡成形容器の周壁部外面に着色水が滲み出てくるのを目視観察し、発泡成形容器内に着色水を供給し終わってから発泡成形容器の周壁部外面に着色水が最初に滲み出してきたのを確認するまでの時間を測定し,下記基準により判断した。
◎・・・30分以上
○・・・20分以上で且つ30分未満
×・・・20分未満
気泡の最大弦長の一例を示した模式図である。 実施例1の発泡性ポリスチレン粒子を用いて得られた予備発泡粒子の切断面を写した倍率80倍の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1の発泡性ポリスチレン粒子を用いて得られた予備発泡粒子の切断面を写した倍率80倍の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例5の発泡性ポリスチレン粒子を用いて得られた予備発泡粒子の切断面を写した倍率100倍の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (2)

  1. スチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液中にスチレン系単量体を供給し、このスチレン系単量体をスチレン系種粒子に含浸させて重合させ、スチレン系樹脂種粒子を成長させてスチレン系樹脂粒子を製造した後或いはスチレン系樹脂種粒子の成長途上にて発泡剤を含浸させる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、上記分散液中に供給されたスチレン系単量体及び上記スチレン系樹脂種粒子の総量が、上記スチレン系樹脂種粒子及び上記スチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体の総量の60重量%以上で且つ90重量%未満に相当する量となった時点に架橋性単量体を上記分散液中に供給し始め、上記スチレン系単量体の上記分散液中への供給が完了するまで、上記架橋性単量体を上記分散液中に継続的に又は断続的に供給すると共に、上記分散液中に上記架橋性単量体の供給を開始した後における成長途上にあるスチレン系樹脂成長粒子中のスチレン系単量体の含有量が3〜15重量%となるように調整し、更に、上記分散液中に供給される上記架橋性単量体の総量は、上記分散液中に上記架橋性単量体の供給を開始した以降に上記分散液中に供給され且つ上記スチレン系樹脂粒子の製造に要するスチレン系単量体100重量部に対して0.25〜0.50重量部であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 分散液中に供給していない残余のスチレン系単量体に架橋性単量体を溶解させ、この架橋性単量体を溶解させたスチレン系単量体を上記分散液中に供給することを特徴とする請求項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
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