JP2007031641A - 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、発泡成形品及び食品包装体 - Google Patents

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、発泡成形品及び食品包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】 油分や色素の滲み出しを防止できる発泡成形品が得られ、発泡性にも優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、該粒子から得られた発泡成形品及びそれに食費等を包装した食品包装体の提供。
【解決手段】 ポリスチレン系樹脂種粒子の表面に、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成されたポリスチレン系樹脂外層が設けられ、これらに易揮発性発泡剤が含浸されてなり、該粒子を構成するポリスチレン系樹脂のゲル分率が10〜50質量%であり、テトラヒドロフランにより抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと粒子を2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比(Mw/Mw)が0.5〜0.8の範囲であり、且つ該Mwが15万〜40万の範囲である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【選択図】 なし

Description

本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造される発泡成形品及び該発泡成形品からなる容器に食品を包装した食品包装体に関する。
従来から、スチレン系樹脂粒子中に発泡剤を含浸させてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を製造し、この予備発泡粒子を成形機の成形型内に充填した上で加熱、発泡させて互いに融着一体化させて所望形状を有する発泡成形容器を製造していた。
上述のように、発泡成形容器は、予備発泡粒子自身の発泡圧力によって、予備発泡粒子が発泡してなる発泡粒子同士を熱融着一体化してなるものであるが、発泡粒子同士は、これら発泡粒子同士の接触部分において全面的に熱融着しているものではなく、部分的にしか熱融着一体化していない。
従って、発泡成形容器は、たとえ発泡粒子同士が良好な状態、即ち、発泡成形容器の断面において発泡粒子の表面同士が目視にて完全に熱融着一体化した状態であっても、発泡粒子同士の接触部分における非熱融着部分に起因する隙間が内外方向に連続することによって、目視では確認できないような微細な毛細管が発泡成形容器の内外面間に亘って貫通した状態に形成されている。
このことは、発泡成形容器内に界面活性剤を含有する染料水を入れて所定時間に亘って放置すると、発泡成形容器内の染料水が発泡粒子間にできた毛細管を通じて外部に滲み出てくる現象が生じることから確認することができる。
そして、このような発泡成形容器をコーヒーのような飲料用カップとして用いる場合には実用上において何ら支障は生じないものの、発泡成形容器内に油性食品類、例えば、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキン、マーガリンなどのサラダ油、油脂などを含有する食品を長期間に亘って保存しておくと、これら油性食品類に含有されていた油分が発泡成形容器に形成された毛細管を通じて外部に滲み出してくるといった問題点があった。
同様に、発泡成形容器内に、即席麺と共にカレー粉を含有するかやく類を収納して保存しておくと、カレー粉の黄色色素が発泡成形容器の毛細管を通じて発泡成形容器外面に滲み出し、商品価値が損なわれるといった問題点があった。
そこで、特許文献1には、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面が表皮層で被覆されており、この表皮層は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ステアリン酸亜鉛0.3〜0.6質量部と、重量平均分子量が100〜600であるポリエチレングリコールを20〜50質量%含有するポリエチレングリコール水溶液0.1〜0.4質量部とからなることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提案されている。
しかしながら、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡成形して得られた発泡成形品は、ある程度の油分滲み出し防止効果は見られるものの、成形体に油分の耐性が不足しているために、長期間の保管においては油分の滲み出し防止には不十分であった。
ポリスチレン系樹脂粒子において、ある程度の耐油性を付与するには、ポリスチレン系樹脂に架橋構造を持たせる方法が挙げられる。成形品からの油分の滲み出し防止を直接的な目的で行ってはいないが、従来よりポリスチレン系樹脂粒子に架橋構造を持たせる試みは行われている。
特許文献2には、ポリエチレン系樹脂と混合成形できる発泡性ポリスチレン系樹脂の製造を目的として、ジビニルベンゼン0.05〜1.0質量%とスチレンモノマー99.95〜99.0質量%からなる重合性モノマー混合物を、発泡性ポリスチレン粒子を懸濁させた水性媒体中に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が90〜50質量%、前記重合性モノマー混合物が10〜50重量%となるように徐々に添加し、重合触媒の存在下にて重合せしめることにより、発泡性ポリスチレンの表面にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を形成する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提案されている。
この方法は、表層部分に架橋構造を持たせることはできるが、発泡剤によりポリスチレン系樹脂が膨潤されており、ここに架橋剤を含むスチレンモノマーを含ませる際に、比較的粒子中心部までスチレンモノマーが浸透してしまい、粒子表層部より架橋度合は低いものの、粒子内部も架橋構造となる。
カップ麺の包装容器として通常用いているような粒子径が小さい樹脂粒子であると、より顕著に粒子内部まで架橋が進行する。このような粒子の発泡能力を維持するには、未反応分のスチレンモノマーなど溶剤となり得る成分がなければ、良好な発泡能力を有しない。しかしながら、溶剤成分を多く含んだものは、食品を内包する容器としては不向きである。
また、特許文献3には、カップ成形品の強度を向上させる目的で、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体で変性されたスチレン系重合体ビーズが提案されている。しかしながら、この方法では成形品の強度は向上するものの、粒子全体が比較的均一に架橋構造により変性されているため、発泡能力に乏しく、良好な外観の成形品を得るのに余分な加熱が必要となり、生産性を損なうものであった。
また、特許文献4では、スチレン系重合体種粒子を含む水性懸濁液にスチレン系単量体と重合開始剤とを連続的にまたは断続的に添加することにより、該スチレン系重合体種粒子に該スチレン系単量体を重合させて、スチレン系重合体粒子を得、該スチレン系重合体粒子に易揮発性発泡剤を含浸させる発泡性ポリスチレン系重合体粒子の製造方法であって、前記スチレン系重合体種粒子の量と目的とするスチレン系重合体粒子を得るために必要なスチレン系単量体の量との合計量を100質量部とするとき、該スチレン系重合体種粒子の量と添加したスチレン系単量体との合計が90質量部になったときから該スチレン系単量体の添加が終了し、重合反応が完結するまでの間に、該合計量100質量部に対して0.005〜0.02質量部の架橋剤を添加する発泡性ポリスチレン系重合体粒子の製法(シード重合法)が開示されている。
しかしながら、前記製造方法によって製造された発泡性ポリスチレン系重合体粒子は、該発泡性ポリスチレン系重合体粒子を用いて得られた発泡成形品の予備発泡粒子同士の間隙を塞ぐのには効果があるものの、上述したような、油分や黄色色素が発泡成形容器に形成された毛細管を通じて外部に滲み出してくるという問題点に対しては、油分への耐性が不足しているために十分な解決をもたらすものではなかった。
特開2005−8797号公報 特公昭48−44656号公報 特開昭62−181344号公報 特許第3474995号公報
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、発泡成形容器において油分や黄色色素の滲み出しが発生した場所では、発泡粒子の熱融着部分が波打って皺になっており、油分や黄色色素によって変質されている一方、油分や黄色色素の滲み出しが発生していない部分では、発泡粒子の熱融着部に波打ち現象は発生しておらず、ゆがみのない状態であり、油分や黄色色素によって変質されていないことを知見した。さらに、発泡成形容器において油分や黄色色素の滲み出しを防止するには、発泡成形品の耐油性、特に、発泡成形品の発泡粒子同士の熱融着部分の耐油性を向上させることが必要であることを見出した。
本発明は、食品などに含まれた油分やカレー粉などの色素を長期間に亘って内部に保存し、或いは界面活性剤などを含む液体を所定時間に亘って内部に収容した場合であっても外部に滲み出すことがない発泡成形品を得ることができ、且つ発泡性に優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、並びに該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造される発泡成形品及び該発泡成形品からなる容器に食品を包装した食品包装体を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、ポリスチレン系樹脂種粒子の表面に、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成されたポリスチレン系樹脂外層が設けられ、これらに易揮発性発泡剤が含浸されてなる発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
該粒子を構成するポリスチレン系樹脂のゲル分率が10〜50質量%であり、テトラヒドロフランにより抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと粒子を2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比(Mw/Mw)が0.5〜0.8の範囲であり、且つ該Mwが15万〜40万の範囲であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ゲル分率が20〜35質量%の範囲であることが好ましい。
また本発明は、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させた分散液を作製し80〜110℃に保持した後、この分散液中に、スチレン系単量体を前記種粒子100質量部に対して12〜100質量部、架橋性単量体を前記スチレン系単量体の質量に対して0.2〜1.0質量%、及び重合開始剤を含む単量体溶液を、前記種粒子と前記スチレン系単量体との合計100質量部に対し1時間当たり1〜18質量部の割合で供給し、前記種粒子上に架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させてなるポリスチレン系樹脂外層を成長させると共に、前記単量体溶液の供給後に易揮発性発泡剤を含浸させることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、単量体溶液を、前記種粒子と前記スチレン系単量体との合計100質量部に対し1時間あたり5〜16質量部の割合で供給することが好ましい。
また本発明は、本発明に係る前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子を発泡成形させて得られたことを特徴とする発泡成形品を提供する。
本発明に係る発泡成形品において、成形品表面の中心線平均粗さ(ただし、該中心線平均粗さはJIS B0601−1994に規定された中心線平均粗さである。)が0.1〜1.5μmの範囲であることが好ましい。
また本発明は、前記発泡成形品からなる容器内に、油性食品又は食用油脂と色素とを含む食品が包装されてなる食品包装体を提供する。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、構成樹脂のゲル分率が10〜50質量%であり、テトラヒドロフランにより抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと粒子を2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比(Mw/Mw)が0.5〜0.8の範囲であり、Mwが15万〜40万の範囲のものなので、発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子として十分な発泡性を維持しつつ、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡して得られる発泡成形品は、その発泡粒子同士の熱融着界面は架橋密度が高くて耐油性に優れている。従って、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡して得られた本発明の発泡成形品は、油分を含んだ食品やカレー粉などの色素を含む食品を長期間に亘って発泡成形品内に収納し、あるいは、界面活性剤を含む液体などを発泡成形品内に収納した場合でも、発泡粒子同士の熱融着界面が油分、色素あるいは界面活性剤などによって侵されるようなことがない。よって、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて油分や色素、界面活性剤を含んだ液体などが発泡成形品の外面に滲み出るという問題を防ぐことができる。
本発明の発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂種粒子の表面に、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成されたポリスチレン系樹脂外層が設けられ、これらに易揮発性発泡剤が含浸されてなり、該粒子を構成するポリスチレン系樹脂のゲル分率が10〜50質量%であり、テトラヒドロフランにより抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと粒子を2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比(Mw/Mw)が0.5〜0.8の範囲であり、且つ該Mwが15万〜40万の範囲であることを特徴とする。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の核となる種粒子部分を構成するポリスチレン系樹脂は、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられる。また、種粒子部分を構成するポリスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体とこのスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなどが挙げられる。
また、前記ポリスチレン系樹脂外層を構成するポリスチレン系樹脂は、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成される。前記架橋性単量体としては、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に架橋構造を付与することができるものであれば、特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ポリエチレングルコールジメタクリレートなどのアルキレングリコールジメタクリレートなどの多官能性単量体などが挙げられ、その中でもジビニルベンゼンが好ましい。また、樹脂外層を構成するポリスチレン系樹脂は、前記架橋性単量体と前記スチレン系単量体とこのスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなどが挙げられる。すなわち、前記ビニル単量体を、スチレン系単量体、架橋性単量体及び重合開始剤を含む単量体溶液に供給してもよい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のゲル分率は、10〜50質量%の範囲に限定され、20〜35質量%の範囲が好ましい。このゲル分率が10質量%よりも低いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形品の耐油性が低下して、油分や色素或いは界面活性剤などを含む液体が発泡成形品を通じて外部に滲み出す恐れがある。一方、ゲル分率が50質量%より高いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形時に長時間の加熱が必要となり生産性が低下する恐れがある。
なお、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のゲル分率は、下記の要綱で測定されたものをいう。
即ち、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を140℃のオーブンで1時間に亘って加熱し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中の発泡剤を除去して測定試料を作製し、この測定試料の質量Wを測定する。
次に、測定試料をトルエン100g中に浸漬させて140℃に20時間に亘って還流した後、80メッシュの金網を用いて濾過し、金網状の残渣をデシケータ内に供給して140℃で2時間に亘って−60cmHgで減圧乾燥後にデシケータで室温まで自然冷却し、乾燥残渣の質量Wを測定し、下記式より算出した。
ゲル分率(質量%)=100×W/W
また本発明において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のテトラヒドロフラン(THF)により抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと粒子を2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比(Mw/Mw)は、0.5〜0.8の範囲に限定される。
食品などに含まれた油分やカレー粉などの色素が外部に滲み出すのを防ぐには、耐油性を向上させる方法が望ましく、耐油性を向上させるには架橋構造とすることが好ましい。粒子の表層部の架橋密度を高めることで、耐油性を向上させ、粒子の中心部は架橋密度が低く、発泡能力を維持していることが理想的である。
前記の重量平均分子量の比は、表層部の架橋密度が高くなっていることを知るための指標である。すなわち、表層部分の架橋密度が高ければ、粒子表層部分が一種の分子篩となり、粒子中心部から高分子量の樹脂はTHFで抽出されにくくなり、測定される分子量Mwは小さくなる。また、粒子中心部の架橋構造体が少ない場合、粒子を2分割すると、表層部分の分子篩を通らず、高分子量のものも抽出されるため、測定される分子量MwはMwより高くなる。すなわち、粒子のまま抽出された重量平均分子量と粒子を2分割して抽出された分子量の比により、粒子表層部と粒子内部との架橋密度の差がわかる。
重量平均分子量の比が0.8より大きいと、粒子表層部での架橋が効率よく行われておらず、耐油性を発揮するのに必要な架橋密度が無い状態または、粒子内部まで架橋が進行してしまい、十分な発泡能力が得られない様態となる。また、この比が0.5より小さいと、粒子表層部の架橋密度が高くなりすぎ、粒子内部の発泡能力を阻害するので、良好な外観の成形品が得られない。また、発泡能力が阻害され、成形品の粒子間隔が広くなることにより、却って油分の滲出が増加する。より好ましくは、0.55〜0.77の範囲である。
2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量Mwは、15万〜40万の範囲に限定される。15万より低いと、発泡成形品の強度が弱くなる。40万より高いと、発泡能力が低くなり良好な発泡成形品が得られない。Mwは、25万〜35万の範囲とすることが好ましい。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量は次のように測定される。
試料約30mgをTHF(テトラヒドロフラン)10mLに浸漬して24時間室温に保管する。非水系0.45μmクロマトディスクで濾過後、Waters社製 HPLC(Detector 484,Pump 510)を用いてポリスチレン換算分子量を測定した。その測定条件は、カラムが昭和電工社製 Shodex GPC K−806L(φ8.0×300mm)2本を用い、カラム温度(40℃)、移動相(THF)、移動相流量(1.2mL/min)、注入・ポンプ温度(室温)、検出(UV254nm)、注入量(50μL)、検量線用標準PS(昭和電工社製(Shodex)分子量1,030,000と東ソー社製分子量5,480,000と3,840,000と355,000と102,000と37,900と9,100と2,630と495)とした。
なお、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を2分割とする場合には、剃刀を用いて粒子のおよそ重心を通る面で切断して2分割とした。
次に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法について説明する。
先ず、ポリスチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液を作製する。このポリスチレン系樹脂種粒子の製造方法としては、汎用の方法が用いられ、例えば、前記質連係単量体に必要に応じてビニル単量体を加えた上で、水中にて懸濁重合させてポリスチレン系樹脂種粒子を製造する方法、前記スチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押し出して所定長さ毎に切断し、ポリスチレン系樹脂種粒子を製造する方法などが挙げられる。なお、前記ポリスチレン系樹脂種粒子の重量平均分子量は15万〜40万の範囲が好ましく、25万〜35万の範囲がより好ましい。
そして、前記ポリスチレン系樹脂種粒子を水中に分散させた分散液中に、スチレン系単量体、前述した架橋性単量体及び重合開始剤を含む単量体溶液を継続的に又は断続的に供給し、重合開始剤の存在下で単量体をシード重合させてポリスチレン系樹脂種粒子の表面にポリスチレン系樹脂外層を成長させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する。なお、ポリスチレン系樹脂種粒子を種粒子として成長途上にある樹脂粒子は「ポリスチレン系樹脂成長粒子」と称される場合がある。
このとき、架橋性単量体は、スチレン系単量体の一部若しくは全部に溶解して添加することが望ましい。架橋性単量体とスチレン系単量体を個別に添加すると、架橋構造にむらが生じる恐れがある。
スチレン系単量体の量は、ポリスチレン系樹脂種粒子100質量部に対して、12〜100質量部の範囲に限定される。スチレン系単量体が12質量部未満であると、出来上がった発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の架橋体比率が少なく、十分な耐油性が発揮されない。また、スチレン系単量体が100質量部を超えると、出来上がった発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の架橋体比率が多くなりすぎ、発泡能力を損ない、粒子同士の密着が弱くなり、却って内容物の滲み出しが多くなる、あるいは発泡成形品が得られない。
また、架橋性単量体の添加量は、添加するスチレン系単量体の質量に対して0.2〜1.0質量%の範囲に限定される。0.2質量%未満であると、架橋構造が不足し十分な耐油性が発揮されない。また1.0質量%を超えると架橋しすぎてしまい、発泡能力を損ない、成形品の発泡粒子間隙が広くなり、油分の滲み出しが多くなる、あるいは発泡成形品が得られない。
前記分散液中に前記単量体溶液を供給する際の分散液の保持温度は、80℃から110℃の範囲に限定される。80℃より低温だと、重合の速度が遅くなり、スチレン系単量体はポリスチレン系樹脂種粒子の内部までしみ込みやすくなり、効率よく表層部で架橋が行われない。また、110℃より高温では、添加したスチレン系単量体が、ポリスチレン系樹脂種粒子へ吸収される前に重合が進み、ポリスチレン系樹脂種粒子への吸収効率が悪くなり、生産効率が悪化する。
また、前記分散液中への前記単量体溶液の供給量は、前記ポリスチレン系樹脂種粒子と前記スチレン系単量体との合計100質量部に対して、1時間当たり1〜18質量部の割合で供給することに限定される。この供給量が1時間当たり1質量部より低いと、生産にかかる時間が長くなりすぎる。また、18質量部より多くするとスチレン系単量体がポリスチレン系樹脂種粒子の内部までしみ込みやすくなり、効率よく表層部で架橋が行われない。好ましくは1時間当たり5〜16質量部の範囲である。より好ましくは8.9〜12.6質量部の範囲である。
また、前記スチレン系単量体をポリスチレン系樹脂種粒子中に含浸させてシード重合させる際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いられても、併用されてもよいが、10時間の半減期を得るための分解温度が50℃以上で且つ80℃未満の重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80℃以上で且つ120℃以下の重合開始剤とを併用することが好ましい。なお、重合開始剤の添加量としては、スチレン系単量体100質量部に対して、0.01〜3質量部の範囲が好ましい。
なお、前記分散液中には、ポリスチレン系樹脂種粒子及びこれを種粒子として成長中のスチレン系樹脂成長粒子の分散安定性を向上させるために、懸濁安定剤や安定助剤を添加してもよい。
前記懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難溶性無機化合物が挙げられる。難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。
次に、前記シード重合によって得られたスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する。
前記発泡剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系発泡剤が挙げられ、その中でも脂肪族炭化水素が好ましい。なお、発泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、チオジプロピオン酸エステル、チオジブチル酸エステル、エチレンビスステアリン酸アミドなどの気泡調整剤、紫外線吸収剤、増量剤、着色剤などの汎用の添加剤が添加されていてもよい。
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、得られる発泡成形品の用途によって調整されるが、発泡成形品が発泡成形容器であって、厚みが薄い場合には、0.2〜1mmが好ましい。
このようにして得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、予備発泡機で予備発泡されて予備発泡粒子とされ、得られた予備発泡粒子は、発泡成形機の成形型内に充填された上で加熱蒸気などの加熱媒体により発泡させられて、発泡圧によって互いに熱融着一体化して所望形状を有する発泡成形品とされる。なお、予備発泡粒子の嵩密度は、0.015〜0.20g/cmの範囲が好ましいが、これに限定されない。
また、前記発泡成形品としては種々の形態のものが挙げられるが、カップ状、どんぶり状、トレー状、箱状などの発泡成形容器が本発明の作用、効果を効果的に奏する点で好ましい。
この発泡成形容器内には、大豆油、菜種油、しそ油、オリーブ油、ごま油、紅花油、コーン油などの植物油、ラード(豚脂)やヘッド(牛脂)などの動物脂、これらを含有する即席麺(かやくを含む)、シチュー、マヨネーズ、ドレッシングソース、カレールー、バター、マーガリン、ホワイトソース、ヨーグルト類、アイスクリーム、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキンなどの油性食品や脂肪食品、界面活性剤を含む水溶液などを収容することができる。
前記発泡成形品は、前述のように、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られたものなので、発泡性粒子同士がそれらの界面において強固に熱融着一体化しているとともに、発泡粒子同士は熱融着している界面部分は架橋密度が高くて耐油性に優れている。
従って、油分を含んだ食品やカレー粉などの色素を含む食品を長期間に亘って発泡成形品内に収納し、あるいは、界面活性剤を含む液体などを発泡成形品内に収納した場合でも、発泡粒子同士の熱融着界面が油分、色素あるいは界面活性剤などによって侵されるようなことがなく、よって、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて油分や色素、界面活性剤を含んだ液体などが発泡成形品の外面に滲み出るという問題を防ぐことができる。
また、本発明の発泡成形品は、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られたものなので、発泡性粒子同士がそれらの界面において強固に熱融着一体化し、成形品表面が極めて平滑になり、外観が美麗で、高級感を持たせることができる。本発明の好ましい実施形態において、発泡成形品の中心線平均粗さが(ただし、該中心線平均粗さはJIS B0601−1994に規定された中心線平均粗さである。)は0.1〜1.5μmの範囲、より好ましくは0.1〜1.0μmの範囲であることが望ましい。中心線平均粗さが1.5μmを超えると、粒子間隙が目立ち、美麗で高級感のある外観が得られ難い。また、中心線平均粗さを0.1μm未満にすることは、製造上実現不可能である。
本発明に係る食品包装体は、前記発泡成形品からなる発泡成形容器内に、油性食品又は食用油脂と色素とを含む食品が包装されてなるものである。発泡成形容器内に充填される食品の種類は、油脂を含むものであれば特に限定されないが、前述したような油脂を含んだ即席麺(かやくを含む)、シチュー、マヨネーズ、ドレッシングソース、カレールー、バター、マーガリン、ホワイトソース、ヨーグルト類、アイスクリーム、ドーナツ、ハンバーガー、フライドチキンなどの油性食品、又は食用油脂と色素とを含む食品が本発明の作用、効果を効果的に奏する点で好ましい。この食品包装体の包装形態は、特に限定されず、発泡成形品の形状に応じて適宜な包装形態を選択し得る。例えば、カップ状、どんぶり状、トレー状などの発泡成形容器を用いる場合には、その容器内に食品を充填し、開口部に蓋材をシールして密封し、さらに必要に応じて全体を合成樹脂フィルム等で包装する形態とすることができる。
本発明に係る食品包装体は、前記発泡成形品からなる発泡成形容器内に、油性食品又は食用油脂と色素とを含む食品が包装されてなるものなので、油分を含んだ食品やカレー粉などの色素を含む食品を長期間に亘って発泡成形容器内に収納しても、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて油分や色素、界面活性剤を含んだ液体などが発泡成形容器の外面に滲み出るという問題を防ぐことができる。
以下、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
[実施例1]
撹拌装置を備えたステンレス製の5Lのオートクレーブ内に、イオン交換水2.0L、平均粒子径が0.3mmで且つ重量平均分子量が28万のポリスチレン種粒子を1.5kg、ピロリン酸マグネシウムを20g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1g供給して1分当たり300回転で撹拌し、分散液を作製した。
架橋性単量体としてジビニルベンゼンを2.5g、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期が74℃)を2.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期が104℃)1.0gを500gのスチレン単量体に溶解して単量体溶液を作製した。
そして、前記分散液を85℃に保持し、反応器内を窒素ガスで置換した後に、該分散液中に、常温の前記単量体溶液を2時間で連続的に供給した。単量体溶液の供給量は、ポリスチレン種粒子とスチレン単量体との合計を100質量部とした時、1時間当たり12.6質量部の割合であった。その後、85℃でさらに1時間保持した後に、125℃まで昇温して1時間保持し、重合を完結させた。
その後、125℃に保持したまま、ノルマルペンタン110g、イソペンタン30gを供給して3時間に亘って保持した。その後、2時間かけて30℃まで冷却を行い、分散媒を除去、洗浄、乾燥を行い発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のゲル分率と分子量比を表1に示す。
[実施例2]
ポリスチレン種粒子を1.1kg、ジビニルベンゼンを4.5g、ベンゾイルパーオキサイド3.6g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを900gのスチレン単量体に溶解し単量体溶液を作製したこと、単量体溶液を3時間で供給し、単量体溶液の供給量を15.2質量部の割合としたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[実施例3]
ポリスチレン種粒子を1.65kg、ジビニルベンゼンを1.8g、ベンゾイルパーオキサイド1.4g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを350gのスチレン単量体に溶解し単量体溶液を作製したこと、単量体溶液を2時間で供給し、単量体溶液の供給量を8.9質量部の割合としたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[実施例4]
ポリスチレン種粒子を1.75kg、ジビニルベンゼンを2.5g、ベンゾイルパーオキサイド1.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを250gのスチレン単量体に溶解し単量体溶液を作製したこと、単量体溶液を1時間で供給し、単量体溶液の供給量を12.7質量部の割合としたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[実施例5]
80℃に保持した分散液中に単量体溶液を供給したこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[実施例6]
105℃に保持した分散液中に単量体溶液を供給したこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例1]
ジビニルベンゼンを用いないこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例2]
ジビニルベンゼンを0.5gとしたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例3]
ジビニルベンゼンを6gとし、単量体溶液の供給量を12.7質量部の割合としたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例4]
75℃に保持した分散液中に単量体溶液を供給したこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例5]
単量体溶液の供給を2時間とし、単量体溶液の供給量を22.7質量部の割合としたこと以外は、実施例2と同様の手順で行った。
[比較例6]
ポリスチレン種粒子を0.90kg、ジビニルベンゼンを5.5g、ベンゾイルパーオキサイド4.4g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを1100gのスチレン単量体に溶解し単量体溶液を作製したこと、単量体溶液を4時間で供給し、単量体溶液の供給量を13.9質量部の割合としたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例7]
ポリスチレン種粒子を1.9kg、ジビニルベンゼンを0.5g、ベンゾイルパーオキサイド0.4g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを100gのスチレン単量体に溶解し単量体溶液を作製したこと、単量体溶液を0.5時間で供給し、単量体溶液の供給量を10.2質量部の割合としたこと以外は、実施例1と同様の手順で行った。
[比較例8]
撹拌装置を備えたステンレス製の5Lのオートクレーブ内に、イオン交換水2.0L、平均粒子径が0.3mmで且つ重量平均分子量が28万のポリスチレン種粒子を1.1kg、ピロリン酸マグネシウムを20g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1g供給して1分当たり300回転で撹拌し、分散液を作製した。
そして、前記分散液を125℃に保持し、ノルマルペンタン110g、イソペンタン30gを供給して3時間に亘って保持した。その後、冷却を行い85℃に保持した。
ジビニルベンゼンを4.0g、ベンゾイルパーオキサイド3.6g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを900gのスチレン単量体に溶解して単量体溶液を作製した。
そして、前記分散液中に、前記単量体溶液を3時間で連続的に供給した。単量体溶液の供給量は15.1質量部の割合であった。その後、85℃でさらに1時間保持した後に、125℃まで昇温して1時間保持し、重合を完結させた。
その後、2時間かけて30℃まで冷却を行い、分散媒を除去、洗浄、乾燥を行い発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
前述した実施例1〜6、比較例1〜8においてそれぞれ作製した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、下記の評価方法及び評価基準によって油分滲み出し防止性、有機化合物量、予備発泡粒子の嵩密度及び成形品の中心線平均粗さを測定し、比較した。その結果を表1に示す。
<油分滲み出し防止性の評価>
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1.0kgにステアリン酸亜鉛(粉砕品、平均最大長20μm)3gを加え、高速流動型混合機内で2分間撹拌した。次に、ポリエチレングリコール1gを供給して、さらに2分間撹拌し、粒子表面にステアリン酸亜鉛を被覆した。その後冷暗所で3日間保管した。
しかる後、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡機に供給して、水蒸気を用いて嵩密度0.1g/cmに予備発泡させて、予備発泡粒子を得た。この予備発泡粒子を常温にて1日保管し、乾燥させた。
次に、前記予備発泡粒子を発泡成形機内の成形型内に供給、充填し、予備発泡粒子を0.2MPaの水蒸気を用いて6秒間に亘って加熱、発泡させて、内容積が450cmで且つ肉厚が2mmのカップ状の発泡成形容器を得た。なお、カップ状の発泡成形容器は、平面円形状の底面部の外周縁から一定高さの周壁部を斜め上方に向けて突設してなる形状とした。
得られた発泡成形容器内に、市販の即席麺(カレー味)に用いられている、カレー粉を含む調味料及びかやくを満杯になるまで供給した上で、発泡成形容器の周壁部外面の全面にコピー紙(NBSリコー社製 マイリサイクルペーパー100W)を接触させた状態で1重に巻く。コピー紙はあらかじめ周壁部外面の全面を覆える形状とサイズに切り出したものを用い、切り出したコピー紙の質量Wは予め測定しておく。その後、容器全体を延伸ポリプロピレンフィルムで包装し密閉する。次にこの包装容器を60℃に保たれたオーブン内に96時間入れる。その後、包装容器をオーブンから取り出し、フィルムの包装を解いて、巻いておいたコピー紙を容器から取り外す。コピー紙に容器内部から滲み出した油分によって変色した部分があればその部分を切り取る。切り取られて穴が開いた残りのコピー紙の質量Wを測定して、下記式より百分率を算出し、下記基準により油分滲み出し防止性を評価した。
油分滲み出し防止性(%)=100×(W−W)/W
◎・・・10%未満であり、油分滲み出し防止性に極めて優れる。
○・・・10%以上20%未満であり、油分滲み出し防止性に優れる。
×・・・20%以上であり、油分滲み出し防止性に劣る。
<有機化合物量>
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1.0gを精秤し、この精秤した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に0.1体積%のシクロペンタノールを含有するジメチルホルムアミド溶液1mLを標準液として加えた後、さらにジメチルホルムアミドを加えて25mLとして、この溶液を24時間置き、測定溶液を調製した。この測定溶液から不溶分を取り除き、1.8mLを230℃の試料気化室に供給してガスクロマトグラフから測定対象となる有機化合物を得、予め測定しておいた、測定対象となる有機化合物の検量線に基づいて、前記チャートから有機化合物量を算出する。なお、対象となる有機化合物は、スチレン系単量体、エチルベンゼン、トルエン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン及びキシレンである。これらの合計は、食品を包装する容器では極力少ないほうが良く、500ppm以下であることが好ましく、400ppm以下であることがより好ましい。
なお、スチレン系樹脂発泡成形品における有機化合物の含有量はガスクロマトグラフ(島津製作所社製 商品名「GC−14A」)を用いて下記測定条件にて測定することができる。
検出器:FID
カラム:ジーエルサイエンス社製(3mm径×2.5m)
液相:PEG−20M PT 25質量%
担体:Chromosorb W AW−DMCS
メッシュ:60/80
カラム温度:100℃
検出器温度:230℃
注入口温度:230℃
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:40mL/分
<予備発泡粒子の嵩密度>
測定試料は下記の要領で作製したものを用いる。先ず、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を100℃の水に5分間浸漬して、予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を80メッシュの金網を用いて湯から分離した後、金網上にて40℃で20時間乾燥させたものを用いる。その後、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。すなわち、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見かけ密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定した。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
<平均表面粗さ>
前記<油分滲み出し防止性の評価>における発泡成形容器の作製手順と同様にして、実施例1〜6、比較例1〜8の発泡成形容器を作製し、それぞれの中心線平均粗さを下記の通り測定した。中心線平均粗さは、東京精密社製の表面粗さ計ハンディーサーフE−35Aを使用して測定した。このハンディーサーフE−35Aは、サンプル表面の断面曲線を測定し、その結果から、JIS B0601−1994「表面粗さ−定義及び表示」に規定された方法に基づいて自動的に演算をして、中心線平均粗さを出力する機能を有するものである。なお、測定条件はいずれも、カップ状成形品の側面部を測定し、カットオフ値を0.8mm、測定長さをカットオフ値の5倍の4mmとした。
Figure 2007031641
表1の結果から、ゲル分率が10〜50質量%の範囲にあり、分子量比(Mw/Mw)が0.5〜0.8の範囲にあり、かつMwが15万〜40万の範囲にある本発明に係る実施例1〜6の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、有機化合物量が400ppm未満で低く、嵩密度が0.029〜0.045g/cmと適度な発泡性を備えている。また、実施例1〜6の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡成形して得られる発泡成形品は、優れた油分滲み出し防止性を有していた。さらに、実施例1〜6から得られた発泡成形容器は中心線平均粗さが1.5μm以下と小さくなった。
一方、比較例1は、ゲル分率がゼロ%となり、かつ分子量比(Mw/Mw)が0.98と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例1から得られた発泡成形容器は油分滲み出し防止性が劣り、また中心線平均粗さが6.2μmと実施例1〜6と比べて粗く、粒子が目立つ外観になった。
比較例2は、分子量比(Mw/Mw)が0.91と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例2から得られた発泡成形容器は油分滲み出し防止性が劣っていた。
比較例3は、分子量比(Mw/Mw)が0.40と低く、本発明の範囲から外れた。この比較例3の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は発泡成形することができなかった。
比較例4は、分子量比(Mw/Mw)が0.87と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例4から得られた発泡成形容器は油分滲み出し防止性が劣り、また中心線平均粗さが6.1μmと実施例1〜6と比べて粗く、粒子が目立つ外観になった。
比較例5は、分子量比(Mw/Mw)が0.87と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例5から得られた発泡成形容器は油分滲み出し防止性が劣り、また中心線平均粗さが5.3μmと実施例1〜6と比べて粗く、粒子が目立つ外観になった。
比較例6は、ゲル分率が60%と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例6の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は発泡成形することができなかった。
比較例7は、ゲル分率が5%と低く、かつ分子量比(Mw/Mw)が0.94と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例7から得られた発泡成形容器は油分滲み出し防止性が劣り、また中心線平均粗さが2.3μmと実施例1〜6と比べて粗くなった。
比較例8は、分子量比(Mw/Mw)が0.87と高く、本発明の範囲から外れた。この比較例8から得られた発泡成形容器は油分滲み出し防止性が劣り、また中心線平均粗さが4.8μmと実施例1〜6と比べて粗く、粒子が目立つ外観になった。

Claims (7)

  1. ポリスチレン系樹脂種粒子の表面に、架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させて形成されたポリスチレン系樹脂外層が設けられ、これらに易揮発性発泡剤が含浸されてなる発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
    該粒子を構成するポリスチレン系樹脂のゲル分率が10〜50質量%であり、テトラヒドロフランにより抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと粒子を2分割して抽出されたポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比(Mw/Mw)が0.5〜0.8の範囲であり、且つ該Mwが15万〜40万の範囲であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
  2. ゲル分率が20〜35質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
  3. ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させた分散液を作製し80〜110℃に保持した後、この分散液中に、スチレン系単量体を前記種粒子100質量部に対して12〜100質量部、架橋性単量体を前記スチレン系単量体の質量に対して0.2〜1.0質量%、及び重合開始剤を含む単量体溶液を、前記種粒子と前記スチレン系単量体との合計100質量部に対し1時間当たり1〜18質量部の割合で供給し、前記種粒子上に架橋性単量体を含むスチレン系単量体を重合させてなるポリスチレン系樹脂外層を成長させると共に、前記単量体溶液の供給後に易揮発性発泡剤を含浸させることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 単量体溶液を、前記種粒子と前記スチレン系単量体との合計100質量部に対し1時間あたり5〜16質量部の割合で供給することを特徴とする請求項3に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子を発泡成形させて得られたことを特徴とする発泡成形品。
  6. 成形品表面の中心線平均粗さ(ただし、該中心線平均粗さはJIS B0601−1994に規定された中心線平均粗さである。)が0.1〜1.5μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の発泡成形品。
  7. 請求項5又は6に記載された発泡成形品からなる容器内に、油性食品又は食用油脂と色素とを含む食品が包装されてなる食品包装体。

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