JP2010077505A - 鋼製タイロッドエンドおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸部2と第1取付部3と第2取付部4とを持つ鋼製タイロッドエンド1の軸部2に径方向断面積の小さい最小面積部26を設け、かつ、最小面積部26の鋼組織の90%以上をマルテンサイトまたは焼戻しマルテンサイトで構成する。最小面積部26の表面硬さおよび径方向断面の平均硬さを600Hv以下にし、第1取付部3の径方向断面の平均硬さおよび第2取付部4の径方向断面の平均硬さを300Hv以下にする。また、鋼製タイロッドエンド1の製造方法に、軸予定部のみを高周波にてオーステナイト化温度にまで加熱した後に水または冷却媒によって急冷する焼入れ工程を設ける。
【選択図】図1
Description
実施例1の鋼製タイロッドエンドは、上記(1)を備える。実施例1の鋼製タイロッドエンドの製造方法は、上記(2)を備える。実施例1の鋼製タイロッドエンドを模式的に表す説明図を図1に示す。
鋼材としてS48Cを用い、軸予定部と第1取付予定部と第2取付予定部とを持つタイロッドエンド中間体を、熱間鍛造によって成形した。タイロッドエンド中間体は、上述した実施例1の鋼製タイロッドエンドとほぼ同じ形状である。軸予定部は、実施例1の鋼製タイロッドエンドにおける軸部に対応する部分であり、第1取付予定部は実施例1の鋼製タイロッドエンドにおける第1取付部に対応する部分であり、第2取付予定部は実施例1の鋼製タイロッドエンドにおける第2取付部に対応する部分である。このとき、軸予定部に、その径方向断面積が第1端予定部の径方向断面積および第2端予定部の径方向断面積の80%以下になる部分(最小面積予定部)を形成した。
成形工程で得たタイロッドエンド中間体の軸予定部を高周波焼入れ処理を施した。詳しくは、円筒状かつストレート形状のコイルを軸予定部に取り付け、このコイルに通電することで、軸予定部のみを900℃にまで加熱し急冷(水冷)した。
焼き戻し工程は、焼入れ工程後のタイロッドエンド中間体を420℃で1時間炉加熱し、その後、25℃の水によって再度冷却することで実施した。
焼戻し工程後のタイロッドエンド中間体のなかで、第1取り付け予定部に切削加工を施して、ねじ穴を形成した。
実施例2の鋼製タイロッドエンドは、上記(1)を備える。
実施例3の鋼製タイロッドエンドは、上記(1)を備える。実施例3の鋼製タイロッドエンドの製造方法は、上記(2)を備える。
比較例1の鋼製タイロッドエンドは、実施例1の鋼製タイロッドエンドと同じ材料からなり、実施例1の鋼製タイロッドエンドとほぼ同形状である。
比較例2の鋼製タイロッドエンドは、実施例1の鋼製タイロッドエンドと同じ材料からなり、実施例1の鋼製タイロッドエンドと異なる形状をなす。詳しくは、比較例2の鋼製タイロッドエンドは、実施例1の鋼製タイロッドエンドと同形状の第1取付部および第2取付部を持つが、軸部の形状が実施例1の鋼製タイロッドエンドとは異なる。さらに詳しくは、比較例2の鋼製タイロッドエンドにおける極小面積部の径方向断面積(Dmin)は402mm2であり、第1端部の径方向断面積(D1)および第2端部の径方向断面積(D2)は415mm2である。極小面積部の径方向断面積は、第1端部の径方向断面積および第2端部の径方向断面積の96.9%である。したがって、比較例2の鋼製タイロッドエンドは最小面積部(すなわち、その径方向断面積が第1端部の径方向断面積および第2端部の径方向断面積の80%以下である部分、径方向332mm2以下の部分)を持たない。
比較例3の鋼製タイロッドエンドは、実施例1の鋼製タイロッドエンドと同じ材料からなり、実施例1の鋼製タイロッドエンドとほぼ同形状である。
比較例4の鋼製タイロッドエンドは、実施例1の鋼製タイロッドエンドと同じ材料からなり、実施例1の鋼製タイロッドエンドとほぼ同形状である。
比較例5の鋼製タイロッドエンドは、実施例1の鋼製タイロッドエンドと同じ材料からなり、比較例1の鋼製タイロッドエンドと同じ形状をなす。
実施例1〜3および比較例1〜5の鋼製タイロッドエンドについて、最小面積部の鋼組織においてマルテンサイトが占める割合(以下、マルテンサイト分率と呼ぶ)、硬さ、剛性、低温衝撃特性、座屈荷重、および機械加工性を評価した。評価試験の結果を表1に示す。各試験の詳細は以下の通りである。
各鋼製タイロッドエンドにおける極小面積部の径方向断面(表層)を光学顕微鏡下で観察し、極小面積部の径方向断面に存在する鋼組織全体を100面積%としたときにマルテンサイト組織が占める割合を測定した。極小面積部のマルテンサイト分率を最小面積部のマルテンサイト分率とみなした。
各鋼製タイロッドエンドにおける極小面積部の表面硬さおよび径方向断面の平均硬さ、第1取付部の径方向断面の平均硬さ、および、第2取付部の径方向断面の平均硬さをJIS Z 2244に記載されているビッカース硬さ試験法に基づいて測定した。極小面積部の表面硬さを最小面積部の表面硬さとみなした。極小面積部の径方向断面の平均硬さを最小面積部の平均硬さとみなした。第1取付部の径方向断面の平均硬さと第2取付部の径方向断面の平均硬さとの平均値を第1取付部および第2取付部の径方向断面の平均硬さとみなした。
各鋼製タイロッドエンドをそれぞれタイロッドに取り付けた状態で圧縮試験機に取り付け、各鋼製タイロッドエンドに対して軸線方向に荷重を加え、鋼製タイロッドエンドが座屈した時の荷重を測定した。
上記の方法で座屈荷重を測定した際に、鋼製タイロッドエンドに加わった軸線方向荷重と鋼製タイロッドエンドの軸線方向の変位量とを測定した。そして、測定した荷重と変位量との関係をグラフに表し、このグラフの傾きを鋼製タイロッドエンドの剛性として算出した。
各鋼製タイロッドエンドの最小面積部からJIS Z 2242に記載のUノッチ試験片(ノッチ深さ2mm)を作製し、各試験片について−40℃にてシャルピー衝撃試験を実施した。
各鋼製タイロッドエンドを複数個ずつ製造し、機械加工工程で第1取付部の切削加工に用いた工具の寿命に基づいて、各鋼製タイロッドエンドの機械加工性を評価した。詳しくは、鋼製タイロッドエンドを300個製造した時点で工具が破損していなかった場合を機械加工性が良い(評価○)と判断した。鋼製タイロッドエンドを300個製造する前に工具が破損した場合を機械加工性が悪い(評価×)と判断した。
21:第1端部 22:第2端部 26:最小面積部
Claims (4)
- 軸部と、該軸部の長手方向の一端部に連続する第1取付部と、該軸部の長手方向の他端部に連続する第2取付部と、を持ち、
該軸部のなかで、該第1取付部に連続する部分である第1端部と、該第2取付部に連続する部分である第2端部と、の間に位置する最小面積部の径方向断面積は、該第1端部の径方向断面積および該第2端部の径方向断面積の80%以下であり、
該最小面積部の鋼組織の90%以上はマルテンサイトまたは焼戻しマルテンサイトであり、
該最小面積部の表面硬さおよび径方向断面の平均硬さは600Hv以下であり、
該第1取付部の径方向断面の平均硬さおよび該第2取付部の径方向断面の平均硬さが300Hv以下であることを特徴とする鋼製タイロッドエンド。 - 前記最小面積部の径方向断面の平均硬さは、前記第1取付部の径方向断面の平均硬さおよび前記第2取付部の径方向断面の平均硬さよりも100Hv以上大きい請求項1に記載の鋼製タイロッドエンド。
- 鋼製タイロッドエンドを製造する方法であって、
軸予定部と、該軸予定部の長手方向の一端部に連続する第1取付予定部と、該軸予定部の長手方向の他端部に連続する第2取付予定部と、を持つタイロッドエンド中間体を成形する成形工程と、
該タイロッドエンド中間体の該軸予定部に高周波焼入れ処理を施した後に冷却する焼入れ工程と、
該第1取付部と該第2取付部との少なくとも一方を機械加工する機械加工工程と、を備え、
該成形工程において、該軸予定部のなかで、該第1取付予定部に連続する部分である第1端予定部と、該第2取付予定部に連続する部分である第2端予定部と、の間に、その径方向断面積が該第1端予定部の径方向断面積および該第2端予定部の径方向断面積の80%以下である最小面積予定部を形成し、
該焼入れ工程において、該軸予定部のみを高周波にてオーステナイト化温度にまで加熱した後に水または冷却媒によって急冷することを特徴とする鋼製タイロッドエンドの製造方法。 - 前記焼入れ工程後に、該軸予定部を再度加熱し冷却する焼戻し工程を備える請求項3に記載の鋼製タイロッドエンドの製造方法。
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