JP2010076157A - サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 安価なガラス保護層を有し、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、印字性能と耐久性の優れたサーマルヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】通電することにより発熱する抵抗発熱体及び前記抵抗発熱体に接続された電極を絶縁基板上に形成する第1の工程と、前記抵抗発熱体及び電極の上に腐食防止層を形成する第2の工程と、前記抵抗発熱体をアニールする第3の工程と、前記抵抗発熱体の電気抵抗を調整する第4の工程と、前記腐食防止膜の上にガラスを主成分とする保護層を形成する第5の工程と、を備え、前記第4の工程の前に前記第3の工程を実施し、前記第3の工程の前に前記第2の工程を実施することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗発熱体と保護層を有するサーマルプリンタヘッド(サーマルヘッド)の製造方法に関する。
サーマルヘッドは、セラミックス等からなる絶縁基板上に、抵抗発熱体が電極と共に一組の回路をなすように形成され、それが複数個、略直線状に配置されている。また、少なくともその抵抗発熱体列を覆うように、絶縁材料からなる保護層が形成されている。そして、保護層の上面にインクリボンを介してプリント用紙を圧着させた状態で、または、保護層の上面に感熱紙を圧着させた状態で、抵抗発熱体にパルス電流を流して発熱させて、印刷を行う。
この保護層は、スパッタリングに代表される薄膜成膜法と、スクリーン印刷に代表される厚膜成膜法(塗布成膜法)により形成することができる。薄膜成膜法による保護層は耐熱性が高く、これを用いたサーマルヘッドは、印字性能及び耐久性に優れるが、製造コストが大きいという問題がある。そこで、低コストの塗布成膜法による保護層の実用化が期待される。塗布成膜法では、ガラスを主成分とするガラスペーストを塗布成膜し、その後焼成することによりガラス保護層を得る。さらに、ガラス保護層の焼成時に抵抗発熱体及び電極が腐食することを防止するために、抵抗発熱体及び電極と、ガラス保護膜の間に、酸化物などからなる腐食防止層を設けることもできる。
一方、サーマルヘッドの抵抗発熱体は、その印字ドット数に対応して複数設けられるが、これら複数の抵抗発熱体の電気抵抗にばらつきがあると、各抵抗発熱体における発熱量が異なり、結果として印字濃度むらの原因となる。これを解決するために、サーマルヘッドの抵抗発熱体の抵抗値を所定の値に調整することが行われる(特許文献1)。この方法は、各抵抗発熱体にパルス電圧を印加し、電気抵抗値を所定値まで変化させる方法である。一般に、この抵抗値調整(ビットトリミングとも言う)は、サーマルヘッドが完成した後、すなわち、保護層が形成された後に行われる。サーマルヘッドの保護層として、耐熱性の高い薄膜成膜による保護層を用いた場合は、この抵抗値調整を問題なく行うことができるが、上記の塗布成膜法によるガラス保護層を用いた場合は、この抵抗値調整中の抵抗発熱体の発熱により、ガラス保護層が溶解してしまうという問題があった。
一方、抵抗値調整を行った後に、塗布成膜法によってガラス保護層を形成する方法も考えられる。この場合、抵抗値調整により、抵抗発熱体の電気抵抗は所定の値に調整することができるが、その後のガラス保護層形成工程中における高温での焼成により、電気抵抗が変動してしまい、実用的な問題があった。
特開平4−8555号公報
本発明は、上記の事情に基づきなされたものであり、その目的は、安価なガラス保護層を有し、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、印字性能と耐久性の優れたサーマルヘッドの製造方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、通電することにより発熱する抵抗発熱体及び前記抵抗発熱体に接続された電極を絶縁基板上に形成する第1の工程と、前記抵抗発熱体及び電極の上に腐食防止層を形成する第2の工程と、前記抵抗発熱体をアニールする第3の工程と、前記抵抗発熱体の電気抵抗を調整する第4の工程と、前記腐食防止膜の上にガラスを主成分とする保護層を形成する第5の工程と、を備え、前記第4の工程の前に前記第3の工程を実施し、前記第3の工程の前に前記第2の工程を実施することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、通電することにより発熱する抵抗発熱体及び前記抵抗発熱体に接続された電極を絶縁基板上に形成する第1の工程と、前記抵抗発熱体及び電極の上に腐食防止層を形成する第2の工程と、前記抵抗発熱体をアニールする第3の工程と、前記抵抗発熱体の電気抵抗を調整する第4の工程と、前記腐食防止膜の上にガラスを主成分とする保護層を形成する第5の工程と、を備え、前記第4の工程の前に前記第3の工程を実施し、前記第3の工程を真空中または不活性ガス中で実施することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法が提供される。
本発明によれば、安価なガラス保護層を有した、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、印字性能と耐久性の優れたサーマルヘッドの製造方法が提供される。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。
図1に表したように、本発明の第1の実施形態の製造方法においては、抵抗発熱体及び電極を形成する第1の工程S1、抵抗発熱体及び電極上に腐食防止層を形成する第2の工程S2と、抵抗発熱体をアニールする第3の工程S3と、抵抗発熱体の電気抵抗を調整する第4の工程S4と、腐食防止膜の上にガラスを主成分とする保護層を形成する第5の工程S5とを備え、第4の工程S4の前に第3の工程S3が実施され、第3の工程S3の前に前記第2の工程S2が実施される。
これにより、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、安価なガラス保護層を有したサーマルヘッドが得られる。以下、第1の実施形態に係わる第1の実施例について詳細に説明する。
(第1の実施例)
図2及び図3は、本発明の第1の実施例により製造されるサーマルヘッドの構造を例示する部分断面図及び部分斜視図である。
図2に表したように、本実施例により製造されるサーマルヘッド1は、絶縁基板2を有している。絶縁基板2の材料としては、例えば、アルミナからなるアルミナセラミック基板が用いられる。絶縁基板2の上面には、例えば、水ガラスから形成されたガラス層3が設けられている。ガラス層3の上面の一部には、一方向に延びる蒲鉾状の凸部3aが形成されている。
また、ガラス層3上には、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが一組の回路となり、それが略直線上に複数個並ぶように設けられている。この抵抗発熱体は、例えば、Ta−SiOからなる薄膜で形成することができる。また、電極5aと5bは、例えば、Alを主成分とする材料で形成することができる。
さらに、ガラス層3、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bを覆うように、腐食防止層6及び保護層7が設けられている。これら腐食防止層6及び保護層7の形状は、ガラス層3の形状を反映しており、ガラス層3の凸部3aに対応する領域には、腐食防止層6の凸部6a及び保護層7の凸部7aが形成されている。腐食防止層6は、酸化物、窒素化物及びそれらの混合物から適切に選択された材料で形成することができる。また、保護層7は、ガラスフリットとバインダ及び溶剤からなるガラスペーストを塗布成膜した後、焼成することにより形成することができる。
また、図3に表したように、絶縁基板2上には、ドライバIC(回路素子)15が実装されており、このドライバIC15の端子には、電極5aにおける抵抗発熱体4に接続されていない側の端部が接続されている。例えば、4本の電極5aが1個のドライバIC15に接続されている。さらに、絶縁基板2におけるドライバIC15側の側方には、樹脂基板31が設けられており、絶縁基板2の上面及び下面とそれぞれ同一平面上にある。樹脂基板31上には、複数本の配線層32が形成されており、この配線層32がドライバIC15における電極5aが接続されていない端子に接続されている。
さらにまた、絶縁基板2及び樹脂基板31上には、ドライバIC15、並びに電極5a及び配線層32におけるドライバIC15との接続部分を覆うように、樹脂からなるエンキャップ33が設けられており、このエンキャップ33を覆うように、例えば、樹脂板が折り曲げられて成型されたICカバー34が設けられている。一方、絶縁基板2及び樹脂基板31の下面には、ヒートシンク35及びコネクタ36が連結されている。コネクタ36の端子は、配線層32に接続されている。
以上のように構成されたサーマルヘッド1の動作について、図2を参照しつつ説明する。
図2に示すように、保護層7の凸部7aの上方にローラ11が配置され、このローラ11と保護層7の凸部7aとの間にインクリボン12及びプリント用紙13が挟み込まれる。インクリボン12はプリント用紙13を介してローラ11により凸部7aに対して押圧される。ここで、ローラ11が回転すると、インクリボン12及びプリント用紙13はサーマルヘッド1に対して移動し、インクリボン12は凸部7aに対して摺動する。
この状態で、ドライバIC15が、コネクタ36を介して入力された信号に基づいて、選択的にパルス電流を、電極5a、抵抗発熱体4及び電極5bからなる経路に流すと、このパルス電流は、凸部7a直下の抵抗発熱体4内を流れ、抵抗発熱体4が発熱する。この熱が、腐食防止層6及び保護層7内を伝導してインクリボン12における凸部7aに対する接触部分に伝わり、インクリボン12中のインク成分がプリント用紙13に転写される。これにより、プリント用紙13にインク層14が形成され、印刷される。
以下、第1の実施例のサーマルヘッドの製造方法の詳細について説明する。
第1の実施例のサーマルヘッドの製造方法は、図1ですでに示したフローチャートの構成を有している。図4は、本発明の第1の実施例のサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
まず、図4(a)に示すように、第1の工程S1では、絶縁基板2上に、例えば、水ガラスを塗布し焼成して、一方向に延びる蒲鉾状の凸部3aを有するガラス層3を形成し、この後、スパッタリング法により、例えば、Ta−SiOからなり厚み0.05μmである抵抗発熱体層4を形成する。さらに、抵抗発熱体層4の上に、例えば、Alからなり厚み0.75μmである電極層を形成し、パターニングを行って、抵抗発熱体4、電極5a及び5bを形成する。抵抗発熱体4と電極5a及び5bは一組の回路を構成し、それが略直線状に複数個並ぶように設ける。
次に、図4(b)に示すように、第2の工程S2では、腐食防止層6を形成する。例えば、酸化アルミニウム(Al3)をスパッタ法により、200nmの厚さで成膜することによって得られる。
次に、図4(c)に示すように、第3の工程S3では、抵抗発熱体4をアニールする。例えば、大気中600℃30分間保持することにより行うことができる。
次に、図4(d)に示すように、第4の工程S4では、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路に電流を流すことにより、抵抗発熱体4の電気対抗値を所定の値に調整する。これは、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる複数の回路の電気抵抗をそれぞれ測定し、それぞれの電気抵抗に合わせた電流を抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなるそれぞれの回路に電流を流すことにより行われる。なお、図4(d)に示すように、この抵抗発熱体4の抵抗値調整工程の前に、フォトリソグラフィとエッチングにより、所定の場所にコンタクトホール10を予め設けておく。
次に、図4(e)に示すように、第5の工程S5では、腐食防止層6の上に、ガラス保護層7が所定の形状に形成される。例えば、B等を成分とする公知のガラスフリットや、エチルセルロースを主成分とする有機ビヒクル系のバインダ及びαテルピネオールを主成分とする溶剤からなるガラスペーストをスクリーン印刷法により所定形状に形成し、430℃で30分焼成することにより、膜厚8μmの保護層7を得ることができる。
以上説明した第1の実施例の製造方法によるサーマルヘッド1について、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗を測定した結果を以下、説明する。
図5は、第1の実施例によるサーマルヘッド1の電気抵抗の変化を表すグラフ図である。図5(a)は第4の工程(測定値調整工程)S4直後の抵抗値の測定結果を示す図であり、横軸は、複数のサーマルヘッドのビット番号を示し、縦軸は回路の抵抗値を示している。図5(a)に示すように、抵抗値は128ビットごとに周期的に変化しているが、全体としては一定の値となっている。ここで、抵抗値が周期的に変化している理由は以下である。すなわち、図5(a)に示された抵抗値は、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の測定用パッド間の抵抗を示している。一方、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路と、ICドライバまでの配線抵抗の合計が、一定となるように設計されており、その結果、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の測定用パッド間の抵抗は、128ビットごとに周期的に変化するように設計されている。
図5(b)は、第5の工程(保護層形成工程)S5の後の抵抗値の測定結果を示す図である。図5(a)及び(b)を比較するとわかるように、第1の実施例の製造方法によるサーマルヘッド1の、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗は、抵抗値調整工程S4の後と保護層形成工程S5の後でほとんど変化がなかった。これは、以下によるものである。すなわち、本発明の製造方法によるサーマルヘッド1においては、第4の工程(抵抗値調整工程)S4の前に第3の工程(アニール工程)S3を設けていることにより、第3の工程中に抵抗発熱体4の膜構造が安定化する。このため、抵抗発熱体4の膜構造は、その後の第5の工程(保護膜形成工程)S5の熱負荷によって変化することがない。このように、第1の実施例により、安価なガラス保護層で、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、印字性能と耐久性の優れたサーマルヘッドを得ることができた。
なお、第1の実施例において、第5の工程S5の保護層7形成中の熱負荷により抵抗発熱体4の膜の性質が変化することを抑制することを目的とし、第3の工程S3において抵抗発熱体4に予め熱履歴を与えている。従って、第3の工程(アニール工程)S3の温度は、実質的に、第5の工程(保護層形成工程)S5の温度に対して、実質的に、同等、または、それ以上の温度に設定される。また、それと同時に、第3の工程(アニール工程)S3の温度は、サーマルヘッドの構成部材の変形温度より低く設定される。第1の実施例の場合、第2の工程S2のアニール条件は600℃30分であり、第5の工程S5の保護層の焼成条件は430℃30分で、また、サーマルヘッドの構成部材中で一番耐熱性の低い部材が、電極材料Alであり、その融点が660℃である。このように、第3の工程S3の温度は、第5の工程S5の温度以上であり、かつ、サーマルヘッドの構成部材の変形温度より低く設定された。
(第1の比較例)
次に、第1の比較例について説明する。
図6は、第1の比較例のサーマルヘッドの製造方法のフローチャート図である。第1の比較例では、アニール工程S3がなく、腐食防止膜形成S2の後、抵抗値調整工程S4が実施される。この場合の抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗の測定結果を、図7に示す。図7は、第1の比較例のサーマルヘッド1の電気抵抗の変化を表すグラフ図である。図7(a)は、第4の工程(測定値調整工程)S4後の測定値、図7(b)は第5の工程(保護層形成工程)S5後の抵抗値を示す図である。図7(a)に示すように、第4の工程(抵抗値調整工程)S4の後の抵抗値は、全てのビット番号に渡って(128ビットごとの周期性を除いて)一定の値を示すのに対し、図7(b)に示すように、第5の工程(保護膜形成工程)S5後は、ばらつきが非常に大きくなった。このように抵抗値が変化したのは、第5の工程(保護膜形成工程)S5中の熱負荷によって、抵抗発熱体4の膜構造が変化したことにより、一旦調整され一定の値となった抵抗値が第5の工程S5の後に変化したことに起因している。
(第2の実施例)
次に本発明の第1の実施形態に係わる第2の実施例について説明する。第2の実施例では、第1の実施例に対して、腐食防止膜6を酸化アルミニウム(Al3)から酸化窒化シリコン(SiOxNy)(厚さ200nm)に変え、その他は第1の実施例と同様にしてサーマルヘッドを製作した。
図8は、第2の実施例のサーマルヘッド1の電気抵抗の変化を表すグラフ図である。図8(a)は第4の工程(測定値調整工程)S4後の測定値、図8(b)は第5の工程(保護層形成工程)S5後の抵抗値を示す図である。図8(a)及び(b)を比較するとわかるように、第2の実施例のサーマルヘッド1の抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の抵抗値は、抵抗値測定工程S4の後と保護層形成工程S5の後とで変化がほとんどなかった。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るサーマルヘッドの製造方法を説明する。
図9は、本発明の第2の実施の形態に係わるサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。図9に示すように、本発明の第2の実施形態のサーマルヘッドの製造方法は、抵抗発熱体及び電極を形成する第1の工程S1が実施され、抵抗発熱体4をアニールする第3の工程S3が実施され、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5b上に腐食防止層6を形成する第2の工程S2が実施され、抵抗発熱体4の電気抵抗を調整する第4の工程S4が実施され、腐食防止膜6の上にガラスを主成分とする保護層7を形成する第5の工程S5が実施される。すなわち、第4の工程S4の前に第3の工程S3が実施される。そして、第3の工程S3は、真空中または不活性ガス中で実施される。
(第3の実施例)
以下、本発明の第2の実施形態に係わる第3の実施例により、詳細に説明する。
図10は、第3の実施例のサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。
まず、図10(a)に示すように、第1の工程S1では、すでに述べた方法と同じように、絶縁基板2上に、ガラス層3、Ta−SiOからなる抵抗発熱体層4、Alからなる電極層5a、5bを形成する。
次に、図10(b)に示すように、第3の工程S3では、抵抗発熱体4を真空または不活性ガス中でアニールする。この実施例の場合、N中550℃30分間の高温に保持することにより行われた。
次に、図10(c)に示すように、第2の工程S2では、腐食防止層6を形成する。例えば、酸化窒化シリコン(SiOxNy)をスパッタ法により、200nmの厚さで成膜することによって得られる。
次に、図10(d)に示すように、第4の工程S4では、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路に電流を流すことにより、抵抗発熱体4の電気対抗値を所定の値に調整する。なお、所定の場所にコンタクトホールを予め設けておく。
次に、図10(e)に示すように、第5の工程S5では、腐食防止層6の上に、ガラス保護層7が所定の形状に形成される。ガラスペーストをスクリーン印刷法により所定形状に形成し、430℃30分焼成することにより、膜厚5μmのガラス保護層7を得ることができる。
以上説明した第3の実施例の製造方法によるサーマルヘッド1の抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗の測定したところ、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗は、抵抗値測定工程S4の後と保護層形成工程S5の後とで、ほとんど変化がなかった。これは、第3の実施例の製造方法において、第4の工程(抵抗値調整工程)S4の前に第3の工程(アニール工程)S3を設けていることにより、抵抗発熱体の膜構造は安定化するため、その後の第5の工程(保護膜形成工程)S5の熱負荷によって変化することがないためである。このように、第3の実施例によれば、安価なガラス保護層で、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、印字性能と耐久性の優れたサーマルヘッドを得ることができた。
なお、第3の実施例の場合、第3の工程S3において、抵抗発熱体4をN中でアニールする理由は以下である。第3の実施例では、腐食防止層6が形成される前にアニール工程を実施するので、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが露出された状態で高温でのアニール処理が行われる。このアニール中に抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが酸化、腐食しないようにするためにN中でアニールしている。このように、第2の工程(腐食防止層形成工程)S2より前に第3の工程(アニール工程)S3を実施する場合は、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが酸化、腐食しないように、第3の工程S3の雰囲気を真空または不活性ガス中で実施する。
また、第3の実施例においても、第3の工程(アニール工程)S3の温度は、第5の工程(保護層形成工程)S5の温度と、実質的に、同等、または、それ以上に設定される。また、それと同時に、第3の工程(アニール工程)S3の温度は、サーマルヘッドの構成部材の変形温度より低く設定される。
次に、本発明の第3の実施の形態に係るサーマルヘッドの製造方法を説明する。
図11は、本発明の第3の実施の形態に係わるサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。図11に示すように、本発明の第3の実施形態のサーマルヘッドの製造方法は、抵抗発熱体及び電極を形成する第1の工程S1が実施され、抵抗発熱体4をアニールする第3の工程S3が実施され、抵抗発熱体4の電気抵抗を調整する第4の工程S4が実施され、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5b上に腐食防止層6を形成する第2の工程S2が実施され、腐食防止膜6の上にガラスを主成分とする保護層7を形成する第5の工程S5が実施される。すなわち、第4の工程S4の前に第3の工程S3が実施される。そして、第3の工程S3は、真空中または不活性ガス中で実施される。
(第4の実施例)
以下、本発明の第3の実施形態に係わる第4の実施例により、詳細に説明する。
図12は、第4の実施例のサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。 まず、図12(a)に示すように、第1の工程S1では、すでに述べた方法と同じように、絶縁基板2上に、ガラス層3、Ta−SiOからなる抵抗発熱体層4、Alからなる電極層を形成する。
次に、図12(b)に示すように、第3の工程S3では、抵抗発熱体4をアニールする。この場合、N中550℃30分間の高温に保持することにより行う。
次に、図12(c)に示すように、第4の工程S4では、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路に電流を流すことにより、抵抗発熱体4の電気対抗値を所定の値に調整する。
次に、図12(d)に示すように、第2の工程S2では、腐食防止層6を形成する。例えば、SiOxNyをスパッタ法により、200nmの厚さで成膜することによって得られる。
次に、図12(e)に示すように、第5の工程S5では、腐食防止層6の上に、ガラス保護層7が所定の形状に形成される。ガラスペーストをスクリーン印刷法により、所定形状に形成し、430℃30分焼成することにより、膜厚5μmのガラス保護層7を得ることができる。なお、腐食防止層6には、外部駆動回路との接続のためにコンタクトホール10を設ける。
以上説明した第4の実施例の製造方法によるサーマルヘッド1も、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗は、抵抗値測定工程S4の後と保護層形成工程S5の後で、ほとんど変化が無かった。これは、第4の実施例の製造方法によるサーマルヘッドにおいては、抵抗値調整工程S4の前にアニール工程S3を設けていることにより、抵抗発熱体の膜構造が安定化するため、その後の保護膜形成工程S5の熱負荷によって変化することがないためである。このように、第4の実施例により、安価なガラス保護層で、抵抗発熱体の抵抗値調整工程に対応できる、印字性能と耐久性の優れたサーマルヘッドを得ることができた。
なお、第4の実施例の場合、すでに述べたように、第2の工程(腐食防止層形成工程)より前に第3の工程(アニール工程)を実施するので、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bが酸化、腐食しないように、第3の工程の雰囲気を真空または不活性ガス中とする。さらに、第2の工程(腐食防止膜形成工程)S2より前に第4の工程(抵抗値調整工程)S4を実施するので、抵抗値調整工程S4中に抵抗発熱体4が酸化・腐食し難いように、第4の工程の雰囲気を真空または不活性ガスとすることがより良い。
また、第3の実施例においても、第3の工程(アニール工程)S3の温度は、第5の工程(保護層形成工程)S5の温度と、実質的に、同等、または以上に設定される。また、それと同時に、第3の工程(アニール工程)S3の温度は、サーマルヘッドの構成部材の変形温度より低く設定される。
以上説明した第1ないし第3の実施形態において、腐食防止層6としては、例えば、酸化アルミニウム(Al3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)など各種のものを用いることができる。図13は、腐食防止層の材料と抵抗値変化の関係を示すグラフ図である。図13では、腐食防止層6としてAl、AlN、SiOxNyを用いた場合、及び、腐食防止層6が無い場合の、抵抗発熱体4並びに電極5a及び5bからなる回路の電気抵抗の保護層形成工程S5の前後の変化が示されている。この図は、腐食防止層6の効果をより分かりやすくみるために、第3の工程S3すなわちアニール工程が無い場合の結果を示している。図13の縦軸は、保護層形成工程(430℃30分)S5の前及び後の電気抵抗をそれぞれR1及びR2とした場合、抵抗値変化率=(R1−R1)/R1を示す。
保護膜形成の熱負荷により、抵抗発熱体4は、(1)保護層の酸素などとの反応による変化(抵抗値増大)、(2)保護層からの不純物の拡散(抵抗値増大)、及び(3)抵抗値発熱体層のアニールによる膜構造の変化(抵抗値減少)、による、複合された影響を受ける。
図13に表したように、腐食防止層6が無い場合は、抵抗値変化率は、正で、大きな値となっている。これは、(1)保護層の酸素などとの反応による変化(抵抗値増大)、または/同時に、(2)保護層からの不純物の拡散(抵抗値増大)の影響が大きく、抵抗発熱体4が劣化したことを示す。
一方、腐食防止膜6として、Al、AlN、SiOxNyを用いた場合は、抵抗値変化率は負の値となっている。これは、(1)保護層の酸素などとの反応による変化(抵抗値増大)と(2)保護層からの不純物の拡散(抵抗値増大)がほとんどなく、(3)抵抗値発熱体層のアニールによる膜構造の変化(抵抗値減少)の現象が主要となっていることを示唆している。腐食防止膜6として、Al、AlN、SiOxNyを用いた場合、安定した抵抗発熱体4が得られることを示している。中でも、SiOxNyを用いた場合は、抵抗値変化率は最も低く、好適な材料と言える。
なお、腐食防止層6としては、各種のものを用いることができる。例えば、すでに述べたAl、AlN、SiOxNyの他、SiO、ZrO、Ta、Si、SiAlOxNyなどの酸化物及び窒化物、並びにこれらの混合物から適切に選択される。また、腐食防止層の厚みは、0.01μm以上に設定することができる。また、その成膜は、スパッタリング法の他、CVD法や蒸着法など、各種の方法を用いることができる。
また、保護層7に用いられる塗布型のガラスペーストとしては、ガラスフリットとして、各種、公知のものが使用でき、酸化物、窒化物、酸化物塩など、または、これらの混合物を適宜選択して用いることができる。また、有機ビヒクルのバインダとしては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体や各種のアクリレート誘導体、またはこれらの混合物から適宜選択して用いることができる。また、溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル1,3−ヒドロキシペンチルイソブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトライソプロピルオルソチタネート、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエタノール、α−テルピネオール、イソプロピルアルコール、プロパノール、トルエン、シクロヘキサン、メチルエチルケトンなどの各種のアルコール系、グリコエーテル系、炭化水素系、ケトン、エステルなど各種の有機溶剤またはこれらの混合物から適宜選択される。
また、ガラスペースト中にフィラーを含んでいる場合、保護層7の耐摩耗性が向上する。また、フィラーを含まない場合は、保護層7の平坦性が向上する他、保護層7から抵抗発熱体4への不純物の拡散及びその不純物と抵抗発熱体4との反応を抑制する効果もある。
なお、本実施例で述べたコンタクトホール10は、フォトリソグラフィとエッチング技術によって形成することができる。このエッチングはRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングを用いても良いし、ウエットエッチングを用いても良い、また、エッチング法ではなく、リフトオフ法により形成しても良い。また、コンタクトホール10の形成は、第3の工程(アニール工程)S3の前でも後でもよく、適宜、製造工程の都合の良い条件にて行うことができる。
なお、上述の具体例においては、サーマルヘッドをインクリボン方式のプリンタに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、インクリボンを用いない感熱式プリンタに適用してもよい。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、上述した各具体例に限定されるものではない。他の構造を持つサーマルヘッドの製造方法にも使うことができる。また、実施形態及び実施例の説明で述べられた各種の材料や・製造条件に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより、本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に含まれる。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたのも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に包含される。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明の第1の実施の形態に係わるサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。 本発明の第1の実施例により製造されるサーマルヘッドの構造を例示する部分断面図である。 本発明の第1の実施例により製造されるサーマルヘッドの構造を例示する部分斜視図である。 本発明の第1の実施例のサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。 本発明の第1の実施例のサーマルヘッドの抵抗値の変化を表すグラフ図である。 第1の比較例のサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。 第1の比較例のサーマルヘッドの抵抗値の変化を表すグラフ図である。 本発明の第2の実施例のサーマルヘッドの抵抗値の変化を表すグラフ図である。 本発明の第2の実施の形態に係るサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。 本発明の第3の実施例のサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係るサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャート図である。 本発明の第4の実施例のサーマルヘッドの製造工程の各段階における断面図である。 腐食防止層の材料と抵抗値変化の関係を示すグラフ図である。
符号の説明
1 サーマルヘッド(サーマルプリンタヘッド)
2 絶縁基板
3 ガラス層
4 抵抗発熱体
5、5a、5b 電極
6 腐食防止層
7 保護層

Claims (5)

  1. 通電することにより発熱する抵抗発熱体及び前記抵抗発熱体に接続された電極を絶縁基板上に形成する第1の工程と、
    前記抵抗発熱体及び電極の上に腐食防止層を形成する第2の工程と、
    前記抵抗発熱体をアニールする第3の工程と、
    前記抵抗発熱体の電気抵抗を調整する第4の工程と、
    前記腐食防止膜の上にガラスを主成分とする保護層を形成する第5の工程と、
    を備え、
    前記第4の工程の前に前記第3の工程を実施し、前記第3の工程の前に前記第2の工程を実施する
    ことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
  2. 通電することにより発熱する抵抗発熱体及び前記抵抗発熱体に接続された電極を絶縁基板上に形成する第1の工程と、
    前記抵抗発熱体及び電極の上に腐食防止層を形成する第2の工程と、
    前記抵抗発熱体をアニールする第3の工程と、
    前記抵抗発熱体の電気抵抗を調整する第4の工程と、
    前記腐食防止膜の上にガラスを主成分とする保護層を形成する第5の工程と、
    を備え、
    前記第4の工程の前に前記第3の工程を実施し、
    前記第3の工程を真空中または不活性ガス中で実施する
    ことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
  3. 前記第3の工程における最高温度は、前記第5の工程における最高温度以上である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルヘッドの製造方法。
  4. 前記腐食防止層は、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムのいずれかを主成分としてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のサーマルヘッドの製造方法。
  5. 前記保護膜は、ガラス中にフィラーを実質的に含有していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のサーマルヘッドの製造方法。
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