JPWO2013080915A1 - サーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 保護層の剥離の発生を低減することができるサーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】 サーマルヘッドX1は、基板7と、基板7上に設けられた電極と、電極に接続され、一部が発熱部9として機能する電気抵抗体15と、電極上および発熱部9上に設けられた保護層25と、を備え、保護層25は、珪素窒化物または珪素酸化物を含む第1層25Aと、第1層25A上に設けられ、タンタル酸化物および珪素酸窒化物を含む第2層25bと、を有する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、サーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタに関する。
従来、ファクシミリあるいはビデオプリンタ等の印画デバイスとして、種々のサーマルヘッドが提案されている。例えば、基板と、基板上に設けられた電極と、電極に接続され、一部が発熱部として機能する電気抵抗体と、電極上および発熱部上に設けられた保護層とを備えるサーマルヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、電極上および発熱部上にSiOからなる第1層が設けられ、かつ第1層上にTaからなる第2層が設けられた保護層が記載されている。
特開昭58−72477号公報
特許文献1に記載のサーマルヘッドでは、SiOからなる第1層上にTaからなる第2層が設けられている。そのため、第1層と第2層との熱膨張率の差に起因して、第2層が第1層から剥離する可能性があった。
本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドは、基板と、基板上に設けられた電極と、電極に接続され、一部が発熱部として機能する電気抵抗体と、電極上および発熱部上に設けられた保護層と、を備えている。また、保護層は、珪素窒化物または珪素酸化物を含む第1層と、第1層上に設けられ、タンタル酸化物および珪素酸窒化物を含む第2層とを有する。
本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタは、上記に記載のサーマルヘッドと、発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、発熱部上に記録媒体を押圧するプラテンローラとを備える。
本発明によれば、保護層に剥離が生じる可能性を低減することができる。
本発明のサーマルヘッドの一実施形態を示す平面図である。 図1のサーマルヘッドのI−I線断面図である。 図2に示す領域Qの拡大図である。 本発明のサーマルプリンタの一実施形態の概略構成を示す図である。 図2に示す領域Qにおいて、本発明のサーマルヘッドの他の実施形態を示す拡大図である。 図2に示す領域Qにおいて、本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示す拡大図である。 図2に示す領域Qにおいて、本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示す拡大図である。 図2に示す領域Qにおいて、本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示す拡大図である。
以下、本発明のサーマルヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1,2に示すように、本実施形態のサーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図1では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を一点鎖線で示す。
放熱体1は、板状に形成されており、平面視で長方形状を有している。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。また、放熱体1の上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。
ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7と、基板7上に設けられ、基板7の長手方向に沿って配列された複数の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7上に並べて配置された複数の駆動IC11とを備えている。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、下地部13aと隆起部13bとを有している。下地部13aは基板7の上面全体に形成されている。隆起部13bは複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状をなしており、印画する記録媒体を後述する保護層25に良好に押し当てるように機能する。
また、蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、焼成することで形成される。
図2に示すように、蓄熱層13の上面には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、蓄熱層13と、後述する共通電極17、個別電極19および接続電極21との間に介在している。図1に示すように、電気抵抗層15は、平面視して、これらの共通電極17、個別電極19および接続電極21と同形状の領域(以下、介在領域という)と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。なお、図1では、電気抵抗層15の介在領域は、共通電極17、個別電極19および接続電極21で隠れている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図1に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されて発熱部9を構成している。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1においては簡略化して記載しているが、例えば、600dpi〜2400dpi(dot per inch)の密度で配置されている。
電気抵抗層15は、例えば、タンタル窒化物系(TaN系)、タンタル珪素酸化物系(TaSiO系)、タンタル珪素酸窒化物系(TaSiNO系)、タンタル珪素酸化物系(TiSiO系)、チタン珪素炭酸化物系(TiSiCO系)またはニオブ珪素酸化物系(NbSiO系)等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、共通電極17、複数の個別電極19および複数の接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、複数の発熱部9とFPC5とを接続するためのものである。図1に示すように、共通電極17は、主配線部17aと副配線部17bとリード部17cとを有している。主配線部17aは、基板7の一方の長辺に沿って延びている。副配線部17bは、基板7の一方の短辺および他方の短辺のそれぞれに沿って延び、一端部が主配線部17aに接続され、他端部がFPC5に接続されている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延び、先端部が各発熱部9に接続されている。そして、共通電極17は、副配線部17bの他端部がFPC5に接続されることにより、FPC5と各発熱部9との間を電気的に接続している。
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1,2に示すように、各個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、他端部が駆動IC11の配置領域に配置されるように、各発熱部9から駆動IC11の配置領域に向かって個別に帯状に延びている。そして、各個別電極19の他端部が駆動IC11に接続されることにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
なお、本実施形態では、上記のように共通電極17のリード部17cと個別電極19とが発熱部9に接続されており、リード部17cと個別電極19とが対向して配置されている。本実施形態では、このようにして、発熱部9に接続される電極が対になって形成されている。
複数の接続電極21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1,2に示すように、各接続電極21は、一端部が駆動IC11の配置領域に配置され、他端部が基板7の他方の長辺の近傍に配置されるように、帯状に延びている。そして、複数の接続電極21は、一端部が駆動IC11に接続されるとともに、他端部がFPC5に接続されることにより、駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。なお、各駆動IC11に接続された複数の接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
駆動IC11は、図1,2に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部と接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に複数のスイッチング素子を有している。
各駆動IC11は、各駆動IC11に接続された各個別電極19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子(不図示)が設けられている。そして、図2に示すように、各駆動IC11は、各スイッチング素子に接続された一方の接続端子11aが個別電極19に接続されており、各スイッチング素子に接続された他方の接続端子11bが接続電極21の上記のグランド電極配線に接続されている。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、同じ工程によって同時に形成することができる。
図1,2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。なお、図1では、説明の便宜上、保護層25の形成領域を一点鎖線で示し、これらの図示を省略している。図示例では、保護層25は、蓄熱層13の上面の左側の領域を覆うように設けられている。これにより、発熱部9、共通電極17の主配線部17a、副配線部17bの一部、リード部17cおよび個別電極19上に、保護層25が形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食あるいは、印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。
より詳細には、保護層25は、図3に示すように、発熱部9、共通電極17および個別電極19上に設けられた第1層25Aと、第1層25A上に設けられた第2層25Bとを備えている。
第1層25Aは、珪素酸化物(以下、SiNと称する場合がある)を含み、電気絶縁性を有する電気絶縁層である。第1層25Aは、図3に示すように、共通電極17および個別電極19の双方に接触しているが、電気絶縁性を有していることにより、共通電極17と個別電極19との短絡を防止している。
第1層25Aは、SiNを主成分としており、例えば、Nを57原子%以上含有するSiNで形成することができる。そして、第1層25Aの厚さは、例えば、0.5μm〜12μmとされている。なお、SiNを主成分とするとは、第1層25A中に含有されるSiおよびNの含有率をあわせて80原子%以上であることを示している。SiNは、珪素の窒化物であり、例えば、Siを例示することができる。なお、SiNは非化学量論的組成を有するものであり、Siに限定されるものではない。
第1層25Aは、SiNを主成分として形成されていることにより、第1層25AがOを含有しない構成となる。それにより、第1層25Aに接する各種電極および発熱部9が酸化する可能性を低減することができる。
また、第1層25Aは、珪素酸化物(以下、SiOと称する場合がある)を主成分として形成することもできる。SiOは珪素の酸化物であり、例えば、SiOを例示することができる。なお、SiOは非化学量論的組成を有するものであり、SiOに限定されるものではない。なお、第1層25Aは、SiNまたはSiO以外に1〜5原子%のAl等の添加元素を含有していてもよい。
第2層25Bは、第1層25A上に形成されており、発熱部9は、保護層25の第2層25Bを介して記録媒体と接触する構成となっている。そのため、第2層25Bは、第1層25Aとの密着性が要求される。また、第2層25Bは、記録媒体と接触するため耐摩耗性、硬度、およびすべり性も要求される。
耐摩耗性は、保護層25の記録媒体と接触することにより生じる摩耗に対する強さを示す。保護層25を構成する各層の密着性が低いと、保護層25を構成する各層が剥離してしまい、保護層25の耐摩耗性が低くなる可能性がある。硬度は、保護層25の機械的な硬さを示し、指標として、ビッカース硬度を例示することができる。すべり性は、記録媒体およびインクリボンの搬送しやすさを示し、すべり性が悪いと記録媒体およびインクリボンにしわが生じてしまう可能性がある。
第2層25Bは、タンタル酸化物(以下、TaOと称する場合がある)、および珪素酸窒化物(以下、SiONと称する場合がある)を含む層である。第2層25Bは、Taを17〜75体積%含有し、SiONを83〜25体積%含有することが好ましく、Taを25〜75体積%含有し、SiONを75〜25体積%含有することがさらに好ましい。
TaOは、タンタルの酸化物であり、例えば、Taを例示することができる。なお、TaOは非化学量論的組成を有するものであり、Taに限定されるものではない。以下、TaOはTaを用いて説明する。SiONは、珪素の酸窒化物であり、非化学量論的組成を有するものである。なお、第2層25Bは、TaOおよびSiON以外に他の金属元素を添加元素として含有していてもよい。添加元素としては、Ba、Ca、Cr、Mg、Mn、Mo、Nb、Sr、Ti、W、Y、Zn、Zrを例示することができる。
第2層25Bは、TaおよびSiONの混合層として設けられているため、第1層25Aと第2層25Bとの密着性を向上させることができ、第1層25Aと第2層25Bとが剥離する可能性を低減することができる。
さらに、SiONを83〜25体積%含有することから、保護膜25の耐摩耗性および硬度を向上させることができるとともに、Taを17〜75体積%含有することから、すべり性を向上させることができる。
なお、記録媒体に合わせてTaの含有量を増加させてもよい。例えば、滑りにくい記録媒体を用いる場合には、Taの含有量を増加させることにより、第2層25Bに含有されるTaの含有量を増加させることができ、第2層25Bのすべり性を向上させることができる。なお、滑りにくい記録媒体とは、例えば、昇華型インクリボン等を例示することができ、記録媒体の保護層25と接する面の摩擦係数が高い記録媒体である。
さらに、本実施形態では、第2層25Bを形成するTaの有する次の特性によって、サーマルヘッドX1での印画時に、耐摩耗性を向上させつつ、紙等の記録媒体が第2層25Bに引っ掛かりながら搬送される現象(いわゆるスティッキング)の発生を低減することができる。
つまり、スティッキングが発生する要因の一つとして、第2層25B上に紙粉等の異物が焦げ付くことで、焦げ付いた異物と記録媒体との間に大きな抵抗力が生じることが挙げられる。これに対し、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第2層25BがTaを含む材料層で形成されており、第2層25Bの表面が適度に摩耗することに伴って、第2層25Bの表面に焦げ付いた異物が、第2層25Bから離脱することとなる。そのため、焦げ付いた異物に起因するスティッキングの発生を低減することができる。そして、第2層25Bは耐摩耗性のあるSiONを含むことから、第2層25Bのすべり性を向上させつつ、耐摩耗性の向上した保護層25とすることができる。
これに加え、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第2層25Bが、純Taではなく、Taの酸化物であるTaによって形成されている。これにより、第2層25Bが純Taで形成されている場合に比べて、第2層25Bが化学的に安定した層となっているため、耐摩耗性を向上させることができる。したがって、本実施形態では、サーマルヘッドX1での印画時の耐摩耗性を向上させつつ、スティッキングの発生を低減することができる。
また、第2層25Bは、原子比でTaに対してOが2.02〜3.71であることが好ましく、原子比でTaに対してOが2.02〜3.0であることがさらに好ましい。原子比でTaに対してOが2.02〜3.71とするには、例えば、第2層25Bは、Taを17〜75体積%含有し、SiONを83〜25体積%含有すればよい。
第2層25Bは、原子比でTaに対してOが2.02〜3.71であることから、良好なすべり性を保持しつつ、耐摩耗性をさらに向上させることができる。つまり、インクリボンにしわが生じる可能性を低減しつつ、耐摩耗性が向上した耐用年数の長いサーマルヘッドX1とすることができる。
第2層25Bは、原子比でTaに対してOが2.02〜3.71であるため、原子比でTaに対してOの含有率が高く、第2層25Bに存在する膜応力が小さくなることとなる。それにより、第2層25Bの密着性が向上して、第1層25Aと第2層25Bとが剥離する可能性を低減することができる。そのため、保護層25の耐摩耗性を向上させることができる。
また、第2層25Bは、原子比でTaに対してSiが0.55〜8.18であることが好ましく、原子比でTaに対してSiが1.6〜5.0であることがさらに好ましい。それにより、第2層25B中のSiOおよびSiNの結合を増加させることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
また、原子比でTaに対してNが0.57〜8.61であることが好ましく、原子比でTaに対してNが0.57〜5.17であることがさらに好ましい。それにより、SiNの結合を増加させることができる。SiNの結合は結合力が高いため、耐摩耗性をさらに向上させることができる。また、SiNの結合が増加することから硬度を向上させることができる。
さらに、第2層25Bは、原子比でTaに対してNが0.57〜8.61であることにより、Taによるすべり性を維持しつつ、SiNの結合の存在により耐摩耗性を向上させることができる。
第2層25Bは、Siを13〜38原子%、Oを17〜49原子%、Nを14〜40原子%含有することが好ましく、Siを25〜35原子%、Oを21〜34原子%、Nを26〜37原子%含有することがさらに好ましい。第2層25Bを構成する元素が上記範囲にあることにより、第2層25Bと第1層25Aとの密着性を向上させることができる。また、第2層25Bの硬度を高くすることができる。また、第2層25Bの耐摩耗性を向上させることができる。また、第2層25Bのすべり性を向上させることができる。
なお、第2層25Bに含有されている各種元素の含有量は、例えばX線光電子分光法(XPS)解析にて確認することができる。
上記の第1層25A、および第2層25Bを有する保護層25は、例えば、次のように形成することができる。
まず、発熱部9、共通電極17および個別電極19上に第1層25Aを形成する。具体的には、SiNを主成分とする焼結体をスパッタリングターゲットとしてスパッタリングを行い、SiNを含む第1層25Aを形成する。SiOを含む第1層25Aを形成する場合SiOを主成分とする焼結体をスパッタリングターゲットとすればよい。
次に、第1層25A上に第2層25Bを形成する。具体的には、例えば、SiとSiOとが50:50の混合比で混合されたSiONの焼結体と、Taの焼結体とをスパッタリングターゲットとして、2つのスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、SiONおよびTaOを含む第2層25Bを形成する。なお、第2層25BにおけるSiONおよびTaOの含有率は、例えば、スパッタリングターゲットに印加するRF電圧の値を変化させることにより、制御することができる。例えば、SiONのスパッタリングターゲットに印加するRF電圧の値を大きくすることで、第2層25B中SiONの含有率を高くすることができる。なお、SiONおよびTaが所定の比率で混合された焼結体をスパッタリングターゲットとしてもよく、他の元素を添加物として添加したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行ってもよい。
以上のようにして、第1層25Aおよび第2層25Bを備える保護層25を形成することができる。なお、各層を形成する際に行うスパッタリングは、例えば、公知の高周波スパッタリング法、ノンバイアススパッタリング法あるいはバイアススパッタリング法を適宜用いることができる。
図1,2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、共通電極17、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。なお、図1では、説明の便宜上、被覆層27の形成領域を一点鎖線で示し、これらの図示を省略している。図示例では、被覆層27は、蓄熱層13の上面の保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。被覆層27は、共通電極17、個別電極19および接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。なお、被覆層27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2に示すように保護層25の端部に重なるようにして形成されている。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、被覆層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、図1,2に示すように、後述するFPC5を接続する共通電極17の副配線部17bおよび接続電極21の端部は、被覆層27から露出しており、FPC5が接続されるようになっている。
また、被覆層27は、駆動IC11を接続する個別電極19および接続電極21の端部を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、駆動IC11自体の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。
FPC5は、図1,2に示すように、基板7の長手方向に沿って延びており、上記のように共通電極17の副配線部17bおよび各接続電極21に接続されている。FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に複数のプリント配線5bが配線された周知のものであり、各プリント配線がコネクタ31を介して外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されている。図1,2に示すように、FPC5は、ヘッド基体3側の端部において、プリント配線5bが、導電性接合材料である半田材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電フィルム(ACF)等からなる接合材32(図2参照)によって、共通電極17の副配線部17bの端部および各接続電極21の端部に接続されている。
FPC5と放熱体1との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板33が設けられている。補強板33は、FPC5の下面に両面テープあるいは接着剤等(不図示)によって接着されることにより、FPC5を補強するように機能している。また、補強板33が放熱体1の上面に両面テープあるいは接着剤等(不図示)によって接着されることにより、FPC5が放熱体1上に固定されている。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図4を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図4に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図4の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pとしてインクが転写される受像紙等を用いる場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧するためのものであり、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドXの発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給するためのものである。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給するためのものである。
本実施形態のサーマルプリンタZは、図4に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体をサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることで、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第2の実施形態>
図5を用いて第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。サーマルヘッドX2において、保護層25は、第1層25Aと第2層25Bとの間にSiONを含む密着層25Cを備えている。その他の点は第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1と同様であり、説明を省略する。
密着層25Cは、SiONにより形成されており、第1層25Aと第2層25Bとの密着性を高める機能を有している。密着層25CはSiONを主成分としており、Si、OおよびNをあわせて85原子%以上含有している。なお、Al等の添加元素を0.1〜5原子%含有していてもよい。
密着層25Cは、SiONの焼結体をスパッタリングのターゲットとしてスパッタリングすることにより形成することができる。密着層25Cの厚みは0.1〜0.5μmとすることができる。
サーマルヘッドX2において、保護層25は、第1層25Aと第2層25Bとの間に、SiONを含む密着層25Cが介在している。そのため、密着層25Cが、第1層25Aと第2層25Bとの間に介在しない場合に比べて、第1層25A上に位置する第2層25Bの密着性を向上させることができ、第2層25Bの剥離の発生を低減することができる。
それにより、本実施形態のように密着層25Cが第1層25Aと第2層25Bとの間に介在する場合の方が、介在しない場合に比べて、第1層25Aと第2層25Bとの間の結合エネルギーを向上させることができるため、第1層25A上への第2層25Bの密着性を向上させることができる。その結果、第2層25Bの剥離の発生を低減することができる。
上記の第1層25A、第2層25B、および密着層25Cを有する保護層25は、例えば、次のように形成することができる。
まず、発熱部9、共通電極17および個別電極19上に第1層25Aを形成する。次に、SiONを含む焼結体をスパッタリングターゲットとしてスパッタリングを行い密着層25Cを形成する。そして、密着層25C上に第2層25Bを形成することによりサーマルヘッドX2を作製することができる。特に第2層25Bを形成する際に、SiONおよびTaのスパッタリングターゲットを用いる場合には、密着層25C形成時は、SiONのスパッタリングターゲットのみにRF電圧を印加し、第2層25B形成時には、SiONおよびTaのスパッタリングターゲットにRF電圧を印加すればよい。
また、密着層25Cをタンタル窒化物(以下、TaNと称する場合がある)を主成分としてもよい。TaNは、タンタルの窒化物であり、例えば、Taを例示することができる。なお、TaNは非化学量論的組成を有するものであり、Taに限定されるものではない。
密着層25CをTaNにより形成した場合においても、第1層25A上に位置する第2層25Bの密着性を向上させることができ、第2層25Bの剥離の発生を低減することができる。特に、第1層25AをSiNにより形成し、第2層25BをTaOおよびSiONにより形成した場合、密着層25Cが第1層25Aを構成する元素と第2層25Bを構成する元素とを含有することとなり、密着性をさらに向上することができる。
なお、密着層25CをSiONおよびTaNを含む構成としてもよい。その場合においても同様の効果を奏することができる。
<第3の実施形態>
図6を用いて、第3の実施形態に係るサーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3において、保護層25は、第2層25B上に第3層25Dがさらに設けられている点で第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2と異なり、その他の点は同様である。
第3層25Dは、第2層25Bの上面を覆うように設けられており、第3層25Dに生じた静電気を外部に除電する機能を有している。そのため、第3層25Dは、グランド電位に保持されている。このように、第3層25Dが除電機能を有しているため、サーマルヘッドX3の保護層25が静電気による静電破壊を生じる可能性を低減することができる。
第3層25Dは、例えば、Ta、またはタンタル珪素酸化物(以下、TaSiOと称する場合がある)を用いて形成することができる。第3層25Dの厚みは、0.01〜3μmとすることができ、第3層25Dとしては、比抵抗が10−2〜10−4Ω×cmであることが好ましい。比抵抗が10−2〜10−4Ω×cmであることから、第3層25Dに生じた静電気を効率よく外部へ流すことができ、静電気を除去することができる。
サーマルヘッドX3において、保護層25は、SiONを含む密着層25C上に、SiONとTaとを含む第2層25B、およびTaあるいはTaSiOを用いた第3層25Dが形成されているため、密着層25cと第3層25Dとの間に生じる熱応力が緩和されることとなり、保護層25の耐摩耗性を向上させることができる。つまり、第2層25Bが密着層25Cを構成するSiONと、第3層25Dを構成するTaとを含有するため、保護層25の密着性を向上させることができる。
第3層25Dの形成方法としては、まず、発熱部9、共通電極17および個別電極19上に、SiNを含む第1層25Aを形成する。次に、第1層25A上に密着層25cを形成する。具体的には、SiNとSiOとが50:50の混合比で混合された焼結体をスパッタリングターゲットとしてスパッタリングを行い、SiONを含む密着層25Cを形成する。
続いて、密着層25C上に第2層25Bを形成する。具体的には、上記の密着層25cを形成するSiONのスパッタリングを継続しつつ、Taの焼結体をスパッタリングターゲットとしてスパッタリングを行う。これにより、SiONとTaとの混合層である第2層25Bが形成される。
続いて、第2層25B上に第3層25Dを形成する。具体的には、上記の第2密着層25Dの形成工程で継続して行っていたSiONのスパッタリングを停止し、Taの焼結体をスパッタリングターゲットとするスパッタリングのみを継続して行い、Taを含む第3層25Dを形成する。
以上のようにして、第1層25A、密着層25C、第2層25Bおよび第3層25Dを有する保護層25を形成することができる。
なお、第2層25B上に第3層25Dを形成した後、ラッピング処理を行い発熱部9上に位置する第3層25Dを取り除いてもよい。ラッピング処理を行うことで、発熱部9上には第2層25Bが露出した状態となり、記録媒体と第2層25Bとが接触することとなる。この場合においても、保護層25の表面に生じた静電気は第3層25Dを介して外部へ除電される。
<第4の実施形態>
図7を用いて第4の実施形態に係るサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、サーマルヘッドX3の変形例であり、第3層25Dが、Taにより設けられており、第2層25B側に位置する部位と比べて、Taの含有率の多いTaリッチ領域25D2が第2層25Bと反対側に位置する部位に設けられている。
サーマルヘッドX4において、保護層25は、第3層25Dが、第2層25B側に位置する部位である第2層25B上に設けられた下層25D1と、第2層25Bと反対側に位置する部位であるTaの含有率の多いTaリッチ領域25D2により構成されている。
つまり、下層25D1に比べて、Taリッチ領域25D2はTaの含有率が多いこととなり、下層25D1に比べて、Taリッチ領域25D2は比抵抗が小さいこととなる。そのため、下層25D1に比べて、Taリッチ領域25D2は静電気が流れやすくなり、除電機能を高めることができる。
下層25D1の厚みは1〜3μm、Taリッチ領域25D2の厚みは0.1〜0.5μmが好ましい。Taリッチ領域25D2のTa含有率は、下層25D1のTa含有率よりも1.5〜3倍あることが好ましい。それにより、Taリッチ領域25D2の比抵抗を下層25D1の比抵抗よりも10倍近く低下させることができる。
また、第3層25Dの表面に向かうにつれてTaの含有量が多くなる構成としてもよい。このように、第3層25Dの表面に向かうにつれてTaの含有量が多くなる構成とすることにより、第3層25Dの表面に向かうにつれて比抵抗を小さくすることができ、第3層25Dの除電機能を高めることができる。
以下、サーマルヘッドX4の作製方法について説明する。
サーマルヘッドX1と同様の方法により、第1層25Aおよび第2層25Bを設けた後に、Taの焼結体であるスパッタリングターゲットを用いて第3層25Dをスパッタリングにより製膜する。
スパッタリングターゲットにRF電圧を印加して下層25D1を製膜する。そして、下層25D1を所望の厚みに製膜した後に、スパッタリングターゲットに印加するRF電圧を高めてTaリッチ領域25D2を形成する。なお、第2層25Bから連続的に製膜する場合、第2層25Bを形成した後に、SiONのスパッタリングターゲットにRF電圧を印加するのを停止し、TaのスパッタリングターゲットのみにRF電圧を印加し続ければよい。
また、第3層25Dの表面に向かうにつれてTaの含有量が多くなる第3層25Dの形成方法は、時間とともに印加するRF電圧を高めることにより、第3層25Dの表面に近づくにつれてTaの含有率を多くすることができ、Taリッチ領域25D2を形成することができる。
また、スパッタリング中に窒素ガスを供給して還元雰囲気にてスパッタリングを行うことによって、Taリッチ領域25D2の相対的にTaの含有率を増加させてもよい。
なお、第3層25DをTaSiOにより形成し、TaSiOにより形成された第3層25Dが、下層25D1に比べて、第2層25Bと反対側に位置する部位にTaの含有率の多いTaリッチ領域25D2を設けてもよい。その場合においても同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZを示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X5をサーマルプリンタZに用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X5を組み合わせてもよい。
また、図1〜3に示すサーマルヘッドX1では、蓄熱層13に隆起部13bが形成され、隆起部13b上に電気抵抗層15が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13に隆起部13bを形成せず、電気抵抗層15の発熱部9を、蓄熱層13の下地部13b上に配置してもよい。または、蓄熱層13を形成せず、基板7上に電気抵抗層15を配置してもよい。
また、図1〜3に示すサーマルヘッドX1では、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が形成されているが、共通電極17および個別電極19の双方が発熱部9(電気抵抗体)に接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すサーマルヘッドX5のように、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を構成してもよい。
また、保護層25として、第1層25Aおよび第2層25Bの少なくとも2層構造を有する保護層25を例示したがこれに限定されるものではない。例えば、第1層25Aおよび第2層25Bを交互に繰り返し積層した複数層の積層構造としてもよい。この場合、保護層25を構成する第1層25Aおよび第2層25Bの厚みを薄くして、保護層25全体として5〜15μmとすることが好ましい。それにより、発熱部9に生じた熱を正確に記録媒体に伝熱することができる。
本発明の実施形態に係るサーマルヘッドのすべり性、硬度、耐摩耗性および密着性を調査する目的で以下の実験を行なった。
共通電極、個別電極、および接続電極等の各種電極配線が形成された試料となる基板を複数準備する。そして、試料No.1〜20,22〜24となる基板にスパッタリングによりSiNの第1層を5μm製膜した。また、試料No.21となる基板にスパッタリングによりSiOの第1層を5μm製膜した。
次に、保護層を形成するために、表1に示す試料No.2〜9用のスパッタリングターゲットを作製した。スパッタリングターゲットは、SiONの粉末およびTaの粉末を表1に示す体積比の割合で混合した後に焼成して作製した。また、スパッタリングターゲットとは別に、JISR1610のビッカース硬さ試験方法用の焼結体をそれぞれ作製した。
比較例として、試料No.1用のスパッタリングターゲットとしてSiONの粉末を焼成して作製した。同様に、試料No.10用のスパッタリングターゲットとして、Taの粉末を焼成して作製した。
比較例として、試料No.11〜13用のスパッタリングターゲットとして、SiNの粉末およびTaの粉末を表2に示す体積比の割合で混合した後に焼成して作製した。
表3に示す原子比となるように、SiONの粉末およびTaの粉末を混合して焼成することにより、試料No.14〜20用のスパッタリングターゲットおよびJISR1610のビッカース硬さ試験方法用の焼結体をそれぞれ作製した。
なお、SiONは原子比でSi:O:Nが4:1:5のものを用いた。SiNは原子比でSi:Nが3:4のものを用いた。Taは原子比でTa:Oが2:5のものを用いた。
そして、試料No.1〜24用のスパッタリングターゲットをバッチ内に設置し、それぞれ試料となる第1層が5μm製膜された基板に第2層を10μm製膜した。なお、試料N0.21〜24は、試料N0.5と同じ第2層を10μm製膜した。また、試料N0.22〜24は、第1層を製膜して、表4で示す組成の密着層を0.5μm製膜した後に第2層を製膜した。試料No.24は、密着層をSiONとTaNとを50:50の体積比で混合した混合層とした。
次に、第2層が製膜された基板に駆動ICを搭載してサーマルヘッドを作製し、以下に示す走行試験を行った。
試料No.1〜20のサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタに、記録媒体として昇華型インクリボン(メディアサイズA6)を用いて、印字周期0.7ms/line、印加電圧0.18〜0.30W/dot、押し圧8〜11kg×F/headの条件で1万枚分走行させた。そして、走行させたサーマルプリンタからサーマルヘッドを取り出し、摩耗量を触針式表面形状測定器あるいは非接触の表面形状測定器、または、一般的に知られている表面粗さ計を用いて測定した。
摩耗量が3μm以下のものは耐摩耗性があると判別して表1〜3に○と記載し、摩耗量が3μm以上のものは、耐摩耗性がないと判別して表1〜3に×と記載した。また、走行試験後のサーマルヘッドの保護膜を、顕微鏡で目視により第1層と第2層とが剥離を生じているか確認を行った。そして、第1層と第2層との間で剥離が生じていないものは密着性があると判別して表1〜4に○と記載し、剥離が生じたものは密着性がないと判別して表1〜4に×と記載した。
また、同様の走行試験を5千枚分走行して、インクリボンにしわが生じたものは、すべり性がないものと判別して表1〜3に×と記載した。そして、すべり性を確認した後さらに走行試験を行い、のべ1万枚分の走行試験を行った。5千枚の時点ではインクリボンにしわが生じておらず、一万枚の時点でインクリボンにしわが生じたものは表1〜3に△と記載した。なお1万枚分の走行試験を行いインクリボンにしわが生じていないものは、すべり性があるものとして表1〜3に○と記載した。
また、各試料の焼結体を用いて、JISR1610の規格に従いビッカース硬度を測定した。その結果を表1〜3に示す。
Figure 2013080915
Figure 2013080915
Figure 2013080915
Figure 2013080915
表1に示すように本発明の範囲内である試料No.2〜9は、すべり性および耐摩耗性がよく、硬度も862Hv以上と高い値を示している。
特に、原子比でTaに対してOが2.02〜3.71である試料No.3〜7は、すべり性がすべて○であり、かつ耐摩耗性もすべて○という結果となり、摩耗量は1.2μm以下という結果となった。
さらに、原子比でTaに対してNが0.57〜8.62である試料No.3〜7は、硬度、耐摩耗性、および密着性がいずれも高く、あわせて走行試験において一万枚走行後においてもインクリボンにしわが生じておらず、すべり性の高い結果となった。
さらにまた、原子比でTaに対してOが2.02〜2.98であり、かつ原子比でTaに対してNが0.57〜5.17である試料No.5〜7において、サーマルプリンタを印字周期0.3ms/lineと高速作動させ、一万枚の走行試験を行った結果、いずれもすべり性が良好であり、かつ保護膜の摩耗量が0.6〜1.8μmと小さかった。
これに対して、比較例であるSiONからなる試料No.1は、耐摩耗性がよく、硬度も高い値を示しているが、すべり性が悪い結果となった。また、比較例であるTaからなる試料No.10は、すべり性が良い結果を示しているが、耐摩耗性が悪く硬度が低い結果となった。
また、表2に示すように、比較例であるSiNとTaとを含む試料No.11,12は、すべり性が悪い結果となった。また、比較例である試料No.11〜13は、第1層と第2層との間で剥離が生じていたため、密着性が×という結果となった。
さらにまた、表3に示すように、Siが13〜38原子%、Oが17〜49原子%、Nが14〜40原子%、Taが5〜24原子%含有されている試料No.14〜18は、硬度が880Hv以上あり、走行試験を一万枚終えた時点においても摩耗量が0.3μm以下であった。また、第1層と第2層との密着性もよく、すべり性も高い結果となった。
特に、Siが13〜35原子%、Oが21〜49原子%、Nが14〜37原子%、Taが7〜24原子%含有されている試料No.16〜18は、すべり性も良好であり、かつ摩耗量も少ない結果が得られた。
表4に示すように、第1層をSiOで形成した試料No.21においても、第1層と第2層とに剥離は見られず、密着性が○という結果になった。密着層をSiONで形成した試料No.22、密着層をTaNで形成した試料No.23、および密着層をSiONとTaNとにより形成した試料No.24においても、第1層と第2層とに剥離は見られず、密着性が○という結果になった。
X1〜X5 サーマルヘッド
Z サーマルプリンタ
1 放熱体
3 ヘッド基体
5 フレキシブルプリント配線板
7 基板
9 発熱部
11 駆動IC
17 共通電極
17a 主配線部
17b 副配線部
17c リード部
19 個別電極
21 接続電極
25 保護層
25A 第1層
25B 第2層
25C 密着層
25D 第3層
25D1 下層
25D2 Taリッチ領域
27 被覆層

Claims (10)

  1. 基板と、
    該基板上に設けられた電極と、
    該電極に接続され、一部が発熱部として機能する電気抵抗体と、
    前記電極上および前記発熱部上に設けられた保護層と、を備え、
    該保護層は、
    珪素窒化物または珪素酸化物を含む第1層と、
    該第1層上に設けられ、タンタル酸化物および珪素酸窒化物を含む第2層とを有することを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 前記第2層は、原子比でTaに対してOが2.02乃至3.71である、請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 前記第2層は、Siが13〜38原子%、Oが17〜49原子%、Nが14〜40原子%、およびTaが5〜24原子%含有されている、請求項1または2に記載のサーマルヘッド。
  4. 前記第2層は、原子比でTaに対してNが0.57乃至8.61である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
  5. 前記保護層は、前記第1層と前記第2層との間に、珪素酸窒化物を含む密着層をさらに有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
  6. 前記保護層は、前記第1層と前記第2層との間に、タンタル窒化物を含む密着層をさらに有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
  7. 前記保護層は、前記第2層上に、タンタル珪素酸化物を含む第3層をさらに有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
  8. 前記第3層は、前記第2層側に位置する部位と比べてTaの含有量の多いTaリッチ領域が、前記第2層とは反対側に位置する部位に設けられている、請求項7に記載のサーマルヘッド。
  9. 前記保護層は、前記第2層上に、タンタル酸化物を含む第3層をさらに有しており、
    該第3層は、前記第2層側に位置する部位と比べてTaの含有量の多いTaリッチ領域が、前記第2層とは反対側に位置する部位に設けられている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のサーマルヘッドと、前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、前記発熱部上に前記記録媒体を押圧するプラテンローラとを備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
JP2013547138A 2011-11-28 2012-11-26 サーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタ Active JP5864608B2 (ja)

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