JP2010075898A - 光触媒、光触媒の製造方法、光触媒機能性組成物 - Google Patents

光触媒、光触媒の製造方法、光触媒機能性組成物 Download PDF

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Abstract


【課題】樹脂等に固定化させた場合に、樹脂等の変色を抑制することができる光触媒、光触媒の製造方法、光触媒機能性組成物を提供すること。
【解決手段】硫酸チタンあるいは、硫酸チタニルを原料として得られる二酸化チタンを有する基体を備え、比表面積が100m/g以上であり、S原子を含有し、S原子の含有量が0.25重量%以下である光触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、光触媒、光触媒の製造方法、光触媒機能性組成物に関する。
チタニア、酸化亜鉛などの金属酸化物半導体は、そのバンド幅に相当するエネルギーを有する光を吸収する性質を有している。近年になって、光照射によって励起された際に発生する正孔と電子による高い反応性が着目され、前記金属酸化物半導体を「光触媒」として、水質浄化、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌などの環境浄化へ応用することが試みられている。ここで、水質浄化、大気浄化、あるいは脱臭という機能は、水中、あるいは大気中の汚染物質や臭気物質を光触媒の酸化還元作用で分解する効果であり、具体的にはVOC、環境ホルモン類、窒素酸化物、アンモニア、アミン類、アルデヒド類、低級脂肪酸、硫化水素、メルカプタン類、などを分解し、浄化することを示している。防汚という機能は、油等の有機物を二酸化炭素と水にまで分解して汚れを消す効果を利用したものである。抗菌という機能は、光触媒の分解作用で細菌等を死滅あるいは休眠させることで、繁殖を抑制する効果である。
また、水質浄化、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の分解作用のみならず、光触媒に光照射することによって、光触媒表面の水に対する親和性が著しく向上することも知られており、セルフクリーニング材料や防曇材料としての応用も提案されている。
このように光触媒は、光を吸収することで種々の優れた機能を示すので、各種部材に光触媒を固定化させた複合材への応用展開が進められている。
特開平09−182782号公報 特許2945926号公報 特開平09−225321号公報 特許3484470号公報 特開昭62−260717号公報 特開2002−159865号公報
特許文献6等に示すように、光触媒として、酸化チタンを使用したものがある。このような光触媒を、複合材に使用する場合において、複合材が変色することがある。
本発明は、樹脂等の変色を抑制することができる光触媒、光触媒の製造方法、光触媒機能性組成物を提供するものである。
本発明者らが検討した結果、変色は、光触媒中の硫黄原子に依存するものであることがわかった。
光触媒の原料として、硫酸チタンや、硫酸チタニル等の硫黄原子を含むものを使用することがある。この場合、光触媒中に硫黄原子が多量に存在することとなり、複合材を変色させていたと考えられる。
本発明によれば、二酸化チタンを含む基体を有する光触媒であって、比表面積が100m/g以上であり、S原子を含有し、前記S原子の含有量が0.25重量%以下である光触媒が提供される。
また、本発明によれば、硫酸チタンあるいは、硫酸チタニルを原料として得られる二酸化チタンを有する基体を備え、比表面積が100m/g以上であり、S原子を含有し、前記S原子の含有量が0.25重量%以下である光触媒が提供される。
この発明によれば、S原子の含有量を0.25重量%以下としているため、光触媒を樹脂等に固定化(たとえば添加)して、複合材を構成しても、変色を抑制することができる。
一方で、光触媒は、S原子を含有しているため、光触媒活性を高め、触媒機能を効果的に発揮させることができる。
ここで、光触媒の原料として、硫黄を含まない化合物、たとえば、塩化チタン等を原料とすることも考えられる。しかしながら、この場合には、光触媒の比表面積を確保することが難しく、光触媒の機能を発揮させることが困難である。
これに対し、本発明では、光触媒の比表面積が100m/g以上であるため、触媒機能を効果的に発揮させることができる。
以上のような光触媒は、次のようにして得ることができる。
二酸化チタンを有する基体を含む光触媒を製造する工程と、前記光触媒のS原子含有量が0.25重量%以下となるようにS原子を除去する工程とを実施する。
さらに、本発明によれば、上述した光触媒を含有する光触媒機能性組成物も提供することができる。
また、本発明によれば、光触媒と、熱可塑性樹脂とを含む光触媒機能性組成物であって、S原子を含み、前記光触媒は、二酸化チタンを含む基体を有し、当該光触媒機能性組成物中のTi原子に対するS原子の重量比が0.5%以下である光触媒機能性組成物も提供することができる。
この光触媒機能性組成物は、Ti原子に対するS原子の重量比を0.5%以下としており、S原子の含有量が少なくなっている。これにより、光触媒機能性組成物の変色を抑制できる。
なお、Ti原子の含有量が10重量%以下であることが好ましい。
また、光触媒機能性組成物中の光触媒の比表面積が100m/g以上であることが好ましい。
本発明によれば、樹脂等に固定化させた場合に、樹脂等の変色を抑制することができる光触媒、光触媒の製造方法、光触媒機能性組成物が提供される。
(光触媒)
はじめに、光触媒の概要について説明する。
光触媒は、光触媒活性を有し、二酸化チタンを含む基体を有する光触媒である。光触媒の比表面積が100m/g以上である。また、光触媒は、S原子を含有し、前記S原子の含有量が0.25重量%以下である。
次に、本実施形態の光触媒について詳細に説明する。
本実施形態の光触媒は、基体と、この基体を被覆する被覆膜を有する。
なお、光触媒は被覆膜を有しないものであってもよいが、被覆膜を有するものとすることで、光触媒を樹脂等に添加した際に、樹脂等の劣化を抑制することができる。
基体は、光触媒活性を有するものであり、金属化合物光半導体として二酸化チタンを含む。二酸化チタンとしては、例えば、非晶質、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等が挙げられる。このうち、光触媒活性に優れているアナターゼ型あるいはルチル型、または、これらの混合物がより好ましく、これらに非晶質が少量含まれていてもかまわない。
この基体は、硫酸チタンあるいは、硫酸チタニルを原料とするものであり、たとえば、石原産業株式会社製のSTシリーズ、STSシリーズ、MCシリーズ、テイカ株式会社製のMTシリーズ、チタン工業株式会社製のPCシリーズ、堺化学工業株式会社製のSSPシリーズ、CSBシリーズ等を使用することができる。
基体を被覆する被覆膜としては、特に限定されないが、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、等の金属酸化物、シリコーン類、等を用いることが可能である。光触媒機能の発現の観点から、二酸化珪素が望ましい。すなわち、二酸化珪素被覆光触媒が最も好適に用いることが出来る。
二酸化珪素被覆光触媒において、表面積1m当りの珪素担持量は、二酸化珪素被覆光触媒が含有する珪素量と、二酸化珪素被覆光触媒の表面積から算出される計算値である。二酸化珪素被覆光触媒の表面積1m当りの珪素担持量は、その表面積1m当りの珪素担持量が0.10mg以上、2.0mg以下であり、好ましくは0.12mg以上、1.5mg以下、より好ましくは0.16mg以上、1.25mg以下、さらに好ましくは0.2mg以上、1.25mg以下である。0.10mg未満では、二酸化珪素膜による光触媒活性向上効果が小さい。一方、2.0mgを超えると、二酸化珪素被覆光触媒に占める基体の割合が低下しすぎるので、光触媒機能がほとんど向上しない。珪素担持量を上記範囲とすることで、二酸化珪素膜による光触媒活性向上効果が顕著になる。
ここで、光触媒は、S原子を含有し、S原子の含有量が0.25重量%以下である。
S原子の含有量を0.25重量%以下としているため、光触媒を使用して、複合材を構成しても、変色を抑制することができる。また、光触媒は、S原子を含有しているため、触媒機能を効果的に発揮させることができる。
S原子の含有量は、0.15重量%以下、さらには、0.1重量%以下であることがより好ましく、0.06重量%以下であることがさらに、好ましい。
また、S原子の含有量は、以下の測定方法により検出可能な検出限界以上であることが好ましい。さらに、S原子の含有量は、0.001重量%以上であることが好ましい。このようにすることで、S原子を有することにより、光触媒活性を確実に高めることができ、光触媒機能と、樹脂等に添加した際の変色の抑制とのバランスに優れたものとすることができる。
S原子の含有量は、蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)を用いて定量する。
なお、光触媒中には、Ti原子が50重量%程度含まれるため、Ti原子に対するS原子の重量比は、0.5%以下となる。なかでも、0.002%以上、0.3%以下であることがより好ましく、0.005%以上、0.2%以下であることが最も好ましい。
Ti原子の含有量は、蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)を用いて定量する。
また、光触媒の比表面積は100m/g以上である。なかでも、150m/g以上、400m/g以下であることが好ましい。
比表面積を100m/g以上とすることで、触媒機能を効果的に発揮させることができる。
また、比表面積を400m/g以下とすることで、二酸化チタンの結晶化度を高くし、光触媒活性を充分に発現させることができる。
なお、光触媒としては、粒子状態であることが好ましい。光触媒が粒子として明確に認識できる場合、光触媒の比表面積は、一般的なBET法により算出することができる。そうでない場合、光触媒の比表面積は、X線回折分析とシェラー式による算出、あるいは電子顕微鏡を用いた一次粒子の観察から求まる一次粒子径を元にして、球形換算で「表面積」を算出し、かつ、X線や電子線の回折分析から結晶相を把握してその結晶相の真密度と前記球形換算から求まる体積とから「重量」を算出することによって、比表面積を求めることが可能である。
また、光触媒が粒子である場合、その一次粒子径は1nm以上50nm以下が好ましく、2nm以上30nm以下がより好ましい。光触媒の一次粒子径がこの範囲内にある場合、良好な光触媒活性が維持され得る。
さらに、光触媒に含有される水分含有量は、7重量%以下であることが好ましい。5重量%以下がさらに好ましく、4重量%以下が最も好ましい。水分含有量が7重量%を超えると、多量の水が二酸化珪素周辺に存在することにより、ガスに対する吸着性能が充分に発揮されず、同時に充分な光分解活性も得られない可能性がある。
次に、以上のような光触媒の製造方法について説明する。
ここでは、基体として、二酸化チタン、被覆膜として、二酸化珪素を使用した場合について説明する。なお、被覆膜として他の材料を使用する場合にも、同様の方法で製造することができる。
まず、硫酸チタン、硫酸チタニルの少なくともいずれか一方を原料として、基体となる二酸化チタンを製造する。硫酸チタン、硫酸チタニルの少なくともいずれか一方に水を加え、水酸化チタンを生成する。この水酸化チタンを加熱焼成することで、二酸化チタンを得ることができる。このように、硫酸チタン、硫酸チタニルの少なくともいずれか一方を原料とすることで、所望の比表面積を有する光触媒を確実に得ることが可能となる。
次に、基体を被覆膜にて被覆する。
具体的に手順を示すと、
(i)基体を含む水系媒体と珪酸塩、
(ii)珪酸塩を含む水系媒体と基体、および
(iii)基体を含む水系媒体と珪酸塩を含む水系媒体、
の少なくともいずれか一組を混合する工程、並びにこの混合液を熟成する工程からなる被覆方法である。熟成する工程では、基体に対する二酸化珪素膜の被覆が徐々に進むこととなる。
ここで、上記製造方法において、水系媒体としては、水、あるいは水を主成分とし、脂肪族アルコール類、脂肪族エーテル類等のうち、水に溶解可能な有機溶媒を含む混合液が挙げられる。水系媒体を具体的に例示するとすれば、水、並びに、水とメチルアルコール、水とエチルアルコール、水とイソプロパノール等の混合液が挙げられる。これらの中では水が好ましい。また、水およびこれらの混合液は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。更に、水系媒体には、光触媒の分散性あるいは溶解性を向上させるために、脂肪族アルコール類、脂肪族エーテル類等のうち、水に溶解可能な有機溶媒、並びに脂肪族アミン類、脂肪族ポリエーテル類およびゼラチン類等の界面活性剤を混ぜることもできる。
珪酸塩としては、珪酸および/またはそのオリゴマーの塩を用い、2種以上を混合して用いても良い。ナトリウム塩およびカリウム塩は、工業的に入手容易である点から好ましく、溶解工程を省略できるので珪酸ナトリウム水溶液(JIS K1408"水ガラス")がさらに好ましい。
この際、基体および珪酸塩の両方を含む水系媒体のpHを5以下に維持することが必要であり、pH4以下の酸性領域とすることがより好ましい。基体の非存在下でpH5以下を維持した場合、珪酸、珪酸イオンおよび/またはこれらのオリゴマーから、珪酸化合物の縮合物が単独では析出しにくい。一方、基体の存在下でpH5以下を維持した場合、基体の表面が珪酸化合物の縮合触媒として作用し、二酸化珪素膜が基体の表面にのみ速やかに生成される。すなわち、pHが5以下の酸性領域は、珪酸化合物を含む溶液を安定に存在させることができ、かつ、基体の表面に二酸化珪素を膜状に形成可能な領域である。
pH11以上の塩基性領域においても、pH5以下の酸性領域と同様に珪酸、珪酸イオンおよび/またはこれらのオリゴマーを含む液を熟成した際に、珪酸化合物の縮合物は析出しにくい。また、用いた珪酸塩のうちの一部しか二酸化珪素膜を形成しないので、好ましくない。また、pH6〜11の領域は、珪酸化合物の縮合物、すなわち、二酸化珪素微粒子および/またはゲル等が生じやすいため、二酸化珪素膜が多孔質となったり、基体の表面上で局所的に二酸化珪素が形成されるので好ましくない。
水系媒体中にアルコール等の有機媒体が存在する場合には、水用のpH電極ではpHを正確に測定できないので、有機媒体を含む水溶液用のpH電極を用いて測定する。別途、有機媒体を同体積の水で置き換えてpHを測定することも可能である。
基体と珪酸塩の両方を含む混合液を、pH5以下に維持する方法としては、基体、珪酸塩、水系溶媒の混合および熟成を行う際、水系媒体のpHを常時測定し、適宜、酸および塩基を加えて調整する方法でも構わない。しかし、製造に用いる珪酸塩に含まれる塩基成分の総量を中和した上でpH5以下となるように十分な量の酸を予め水系媒体中に存在させた後、徐々に塩基を添加して所望のpHに調整することが簡便である。
酸は、どのような酸でも使用可能であるが、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸が好適に用いられる。酸は、1種のみを用いても、2種以上を混合して用いても良い。この中で塩酸、硝酸が好ましい。硫酸を使用する場合、光触媒中の硫黄含有量が多く残存すると、光触媒の吸着効率が経時劣化することがある。光触媒中の硫黄含有量は、光触媒の全重量を基準として、0.5重量%以下が好ましく、0.4重量%以下がより好ましい。
塩基は、前述した方法の様にpHを調整する場合に用いられる。塩基を用いる場合は、どのような塩基でも使用可能である。なかでも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好適に用いられる。
混合溶液を熟成し、基体に対して二酸化珪素膜を被覆する際の反応温度および反応時間等の反応条件は、目的とする二酸化珪素被覆光触媒の生成に悪影響を与えない条件であれば特に限定されない。反応温度は10℃以上200℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましい。
10℃未満であると、珪酸化合物の縮合が進行し難くなることにより、二酸化珪素膜の生成が著しく遅延し、二酸化珪素被覆光触媒の生産性の悪化を招くことがある。
200℃より高温であると、珪酸化合物の縮合物、すなわち、二酸化珪素微粒子および/またはゲル等が生じやすいため、二酸化珪素膜が多孔質となったり、基体表面上で局所的に二酸化珪素が形成されてしまうことがある。
熟成時間は、10分以上、500時間以下であることが好ましく、1時間以上、100時間以下であることがより好ましい。10分未満であると、二酸化珪素膜による被覆が充分に進行せず、被膜による光分解活性の向上効果が充分に得られない場合がある。500時間より長時間であると、光触媒機能を有する基体は、二酸化珪素膜により充分に被覆され、光分解機能も向上するが、二酸化珪素被覆光触媒の生産性が悪化することがある。
また、混合液中に含まれる光触媒活性を有する基体の濃度は1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下であることがより好ましい。1重量%未満であると、二酸化珪素被覆光触媒の生産性が悪くなり、50重量%より高濃度であると基体に対する二酸化珪素膜の被覆が均一に進行せず、光分解活性の向上効果が充分に得られないことがある。混合液中に含まれる珪素の濃度は0.05重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。珪素濃度が0.05重量%未満であると、珪酸化合物の縮合が遅延し、基体に対する二酸化珪素膜の被覆が充分でなくなることがある。珪素濃度が5重量%より高濃度であると、基体に対する二酸化珪素膜の被覆が均一に進行しないことがある。
二酸化珪素被覆光触媒の製造方法において、光触媒活性を有する基体および珪酸塩の使用量の比率は、前記基体の表面積1m当りの珪素原子として、0.01mg/m以上、0.50mg/m以下であることが好ましい。この範囲の比率で製造すれば、前記基体の表面に二酸化珪素膜を形成する工程、すなわち、前記基体を含む水系媒体と珪酸塩、珪酸塩を含む水系媒体と前記基体、および前記基体を含む水系媒体と珪酸塩を含む水系媒体、の少なくともいずれか一組を混合し熟成する工程において、基体の表面に所望の二酸化珪素膜を形成できると共に、基体の表面で縮合せずに未反応で残った、珪酸、珪酸イオン、および/またはこれらのオリゴマーの量を少なく抑えられる。これにより、二酸化珪素膜の細孔の発生を抑制することができる。
0.50mg/mより大きく、5.0mg/m以下の範囲では、比率が大きくなるほど、未反応物の量が増え、細孔を有する二酸化珪素膜が形成されることがあるが、未反応物の縮合が進行して細孔が生じることに対して、処理時間を短くすることで回避することが可能である。
本発明の二酸化珪素被覆光触媒の製造方法をより具体的に示す。例えば、
(工程a)基体を含む水系媒体と珪酸塩、珪酸塩を含む水系媒体と基体、および基体を含む水系媒体と珪酸塩を含む水系媒体、の少なくともいずれか一組を混合する工程、
(工程b)工程aで得られた混合液を熟成し、前記基体に対して二酸化珪素膜を被覆する工程、
(工程c)工程bで得られた混合液を中和せずに、二酸化珪素被覆光触媒を水系媒体から分離および洗浄する工程、
(工程d)二酸化珪素被覆光触媒を乾燥および/または焼成する工程、
からなり、かつ、工程a並びに工程bにおいて、前記基体および珪酸塩の両方を含む水系媒体のpHを5以下に維持する製造方法が挙げられる。
水系媒体から二酸化珪素被覆光触媒を分離する際に、中和すると、洗浄工程でのアルカリ金属分の低減効率が悪くなる点、並びに水系媒体中に溶解したまま残った珪素化合物が縮合、ゲル化して多孔質シリカ膜が形成される点が問題となる。予め珪酸塩溶液を脱アルカリし、この脱アルカリした液を調製して製造に用いること、並びに光触媒機能を有する基体および珪酸塩の使用量の比率を小さくすること、によって上記の問題を回避あるいは極小化することも可能である。しかしながら、中和せずに二酸化珪素被覆光触媒を水系媒体から分離すると、上記問題を回避でき、かつ製法が簡便なので好ましい。
光触媒の混合液からの分離方法は特に限定されないが、例えば、自然濾過法、減圧濾過法、加圧濾過法、遠心分離法などの公知の方法が好適に利用できる。
光触媒の洗浄方法は特に限定されないが、例えば、純水への再分散化とろ過の繰り返し、イオン交換処理による脱塩洗浄、などが好適に利用できる。また、光触媒の用途によっては、洗浄工程を省略することも可能である。
光触媒の乾燥方法は特に限定されないが、例えば、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、などが好適に利用できる。また、光触媒の用途によっては、乾燥工程を省略することも可能である。
次に、本実施形態では、光触媒に含まれるS原子を除去して、硫黄の量を制御することが必要となる。具体的には光触媒に含まれるS原子の濃度を0.25重量%以下、検出限界以上とする処理が必要となる。光触媒に含まれる硫黄の量を制御する方法としては、特に限定はされないが、(i)光触媒を塩基性溶液にて洗浄する、(ii)高温で焼成処理を施す、等が考えられる。(i)の操作、(ii)の操作のいずれか一方のみをおこなってもよく、また、2つの操作を行ってもよい。
光触媒を塩基性溶液にて洗浄する際に用いる塩基性溶液は、塩基性溶液であれば特に限定されないが、例えば以下のようなものが挙げられる。
アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、などが任意に適用可能である。
光触媒を高温で焼成処理を施す際には、500℃以上、1100℃以下であることが好ましく、600℃以上、900℃以下がより好ましい。500℃未満であると、硫黄が充分除去できない可能性がある。また、1100℃よりも高温であると、光触媒自体の比表面積が減少する可能性があり、光触媒機能を低下させることとなり好ましくない。
焼成に際しては、酸化性ガスあるいは無機ガスを流通させたり、系内を減圧しても良い。これらの方法を用いることにより、効率良く硫黄の除去が可能となる。
(光触媒機能性組成物)
次に、光触媒機能性組成物について説明する。
光触媒機能性組成物は、光触媒と、熱可塑性樹脂とを含む光触媒機能性組成物であって、S原子を含み、前記光触媒は、二酸化チタンを含む基体を有し、比表面積が100m/g以上であり、当該光触媒機能性組成物中のTi原子に対するS原子の重量比が0.5%以下である。
ここで、Ti原子は、基体の二酸化チタン由来の原子である。
また、二酸化チタンは、硫酸チタンあるいは、硫酸チタニルを原料として得られるものである。
この光触媒機能性組成物は、Ti原子に対するS原子の重量比を0.5%以下としており、S原子の含有量が少なくなっている。これにより、光触媒機能性組成物の変色を抑制できる。
また、触媒機能を発揮させる観点から、光触媒の比表面積は、100m/g以上であり、なかでも、比表面積が150m/g以上、400m/g以下であることが好ましい。
たとえば、光触媒機能性組成物は、上述した光触媒と、熱可塑性樹脂とを含むものとすることができる。
このような光触媒機能性組成物は、変色しにくいものとなる。
また、このような光触媒機能性組成物は、変色防止の観点から、光触媒以外にS原子を含む化合物を実質的に含んでいないことが好ましい。実質的に含まないとは、S原子を含む化合物が意図的に添加された構成でないことをいい、製造過程等で不可避的に含まれるものは許容される。
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、実質的にS原子を含まないものであることが好ましい。このような樹脂を使用することで、光触媒機能性組成物が黄色く着色してしまったり、変色してしまったりすることを抑制できる。
ここで、S原子を実質的に含まないとは、S原子が意図的に添加された構成でないことをいい、製造過程等で不可避的に含まれるものは許容される。
熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、およびビニル化合物(共)重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
具体的には、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン樹脂、
ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル樹脂、
ポリアクリル酸メチル等のポリアクリル樹脂、
ポリスチレン、ポリエステルエ−テル、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリメチルペンテン、無水マレイン酸−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフテレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、
ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA,MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンポリプロピレン、PFA、ポリクロロフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリアリレート、熱可塑性ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリサルホン、ポリパラメチルスチレン、ポリアリルアミン、ポリビニルエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリメチルペンテン、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン
などが任意に利用可能である。
なかでも、加工性、汎用性の観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
光触媒機能性組成物中に含まれる光触媒の濃度は、0.01重量%以上、20重量%以下が好ましく、0.1重量%以上、5重量%以下がより好ましい。光触媒機能性組成物中に含まれる光触媒の濃度が0.01重量%未満であると光触媒機能を充分に発現しない可能性がある。一方、20重量%より大きいと、熱可塑性樹脂の劣化を招いたり、樹脂本来の物性を維持することが困難となる可能性がある。
また、光触媒中には、Ti原子が50重量%程度含まれることから、光触媒機能性組成物中に含まれるTi原子濃度は、10重量%以下であることが好ましい。
さらに、Ti原子に対するS原子の重量比は、0.5%以下、0.002%以上であることが好ましい。0.002%以上とすることで、光触媒活性を確実に高めることができる。
また、変色を確実に抑制する観点からTi原子に対するS原子の重量比は、0.3%以下であることがより好ましい。
また、光触媒機能性組成物を製造するに際しては、一旦、高濃度で光触媒を含有する光触媒機能性組成物を製造した上で、任意の熱可塑性樹脂と混合することも可能である。この方法は、光触媒と熱可塑性樹脂を混合する工程の負荷が減少する、より均一な混合が可能となる、等の利点がある。
光触媒機能性組成物の製造に際しては、光触媒と熱可塑性樹脂とを、任意の割合にて混合した後、溶融混練、続いて任意の形状に処理することにより、製造可能である。混合させる方法は一般に無機顔料を熱可塑性樹脂に含有させる公知の方法であれば特に限定されず、種々の方法をとることができる。例えば、次の手順によりペレット状の光触媒機能性組成物を製造することができる。
(1)ミル等の混合機中で熱可塑性樹脂を50℃以上400℃以下の温度をかけて一旦溶融させる。
(2)これに光触媒の粉末を添加し分散させ、混練する。
(3)(2)で生成した光触媒を含有する溶融状態の熱可塑性樹脂を、ストランドに成形した後、カッティングする。
光触媒機能性組成物は、具体的に次のような用途に用いることが可能である。但し、記載した用途は、適用可能な例であって、本発明を限定するものではない。
例えば、自動車のシート地、シートカバー、カーペット、ハンドル、ハンドルカバー、シフトノブ、ダッシュボード、電車のつり革、内張り、メーターパネル、内壁、床、天井、室内のフローリング等床材、畳、ブラインド、ロールスクリーン、家具、化粧板、浴室用部材、手すり、テーブルクロス、壁紙、壁材等の天井材、冷蔵庫、手乾燥器、パソコン、マウス、キーボード等の電化製品、めがね部材、人工観葉植物、医療用器具、照明器具の蛍光灯カバー、シーリング材の左官材料、カーテン、クロス、衣類、寝具、敷物、椅子張り、のれん、糸、布、ロープ、網等の繊維製品、上着、ズボン、シャツ、靴下等の衣類、シーツ、ふとん、毛布等の寝具類、カーテン、シートカバー、自動車および電車のランプカバー、自動二輪メーター、ヘルメットシールド、外装用サイジング材として適用することができる。
以下、本発明を実施例、比較例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[光触媒の調製]
光触媒を作製し、その性状を評価した。
はじめに光触媒の評価方法について説明する。
(i)珪素含有量
珪素含有量は、蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)を用いて定量した。
(ii)比表面積
比表面積はBET法比表面積測定装置により測定した。
以下、光触媒の製造例について説明する。
なお、以下の実施例1〜6、比較例1、2で使用した二酸化チタンは、硫酸チタンを原料として得られたものである。具体的には、硫酸チタンに水を加え、水酸化チタンを生成する。この水酸化チタンを加熱焼成して、二酸化チタンを得たものである。
(実施例1)
ガラスフラスコに、市販の二酸化チタン20.0gを秤取する。ガラスフラスコに0.5規定アンモニア水溶液180.0gを添加し、30分間、マグネチックスターラーにて攪拌する。攪拌後、溶液を減圧濾過する。0.5規定アンモニア水溶液による洗浄、減圧濾過を再度繰り返した後、得られたケーキを、120℃で3時間空気焼成し、光触媒1を得た。得られたケーキの比表面積は279.1m/gであった。
(実施例2)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液66.9gを加え、二酸化チタン24.5gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35重量%以上38重量%以下、JIS−K1408)10.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは2.3であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、700℃、6時間焼成処理を施し、光触媒2を得た。この光触媒2の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量4.5重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、120.5m/gであった。よって、光触媒2の表面積1m当りの珪素担持量は0.36mgであった。
(実施例3)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液80.1gを加え、二酸化チタン24.5gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35重量%以上38重量%以下、JIS−K1408)14.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは3.3であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を5回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、850℃、6時間焼成処理を施し、光触媒3を得た。この光触媒3の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量6.5重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、146.1m/gであった。よって、光触媒3の表面積1m当りの珪素担持量は0.44mgであった。
(実施例4)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液106.8gを加え、二酸化チタン24.5gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35重量%以上38重量%以下、JIS−K1408)19.6gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは3.6であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、875℃、6時間焼成処理を施し、光触媒4を得た。この光触媒4の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量7.9重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、137.8m/gであった。よって、光触媒4の表面積1m当りの珪素担持量は0.57mgであった。
(実施例5)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液66.9gを加え、光触媒1を分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35重量%以上38重量%以下、JIS−K1408)10.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは2.8であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、600℃、3時間焼成処理を施し、光触媒5を得た。この光触媒5の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量4.5重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、209.2m/gであった。よって、光触媒5の表面積1m当りの珪素担持量は0.21mgであった。
(実施例6)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液66.9gを加え、光触媒1を分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35重量%以上38重量%以下、JIS−K1408)10.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは2.8であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、800℃、3時間焼成処理を施し、光触媒6を得た。この光触媒6の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量4.5重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、149.9m/gであった。よって、光触媒6の表面積1m当りの珪素担持量は0.30mgであった。
(比較例1)
市販の二酸化チタンを120℃、3時間乾燥し、光触媒7を得た。この光触媒7は、比表面積287.0m/gであった。
(比較例2)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液66.9gを加え、二酸化チタン24.5gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35重量%以上38重量%以下、JIS−K1408)10.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは2.3であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、600℃、3時間焼成処理を施し、光触媒8を得た。この光触媒8の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量4.7重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、185.1m/gであった。よって、光触媒8の表面積1m当りの珪素担持量は0.25mgであった。
<光触媒1〜8の評価>
[メチレンブルー光分解活性評価]
光触媒1〜8を、メチレンブルー水溶液に懸濁させた。その後、光照射を行い、液中のメチレンブルー濃度を分光分析で定量することにより、光分解活性を試験した。詳細な試験操作方法は、次のとおりである。
(光触媒懸濁液の調製)
あらかじめフッ素樹脂製攪拌子を入れた100ccポリエチレン製広口びんに、濃度40×10−6mol/Lのメチレンブルー水溶液を45g量りこんだ。次に、マグネチックスターラーによる攪拌下、10mgの光触媒を加えた。そして、5分間激しく攪拌した後に、液が飛び散らない程度に攪拌強度を調整し、攪拌を継続した。
(予備吸着処理)
光触媒を加え終わった瞬間を起点として、60分間、光照射せずに、攪拌し続けた。60分経過後、懸濁液を3.0cc採取し、光照射前サンプルとした。
(光分解処理)
予備吸着処理後の懸濁液を3.5cc抜き出し、あらかじめフッ素樹脂製攪拌子を入れた石英製標準分光セル(東ソー・クォーツ株式会社、外寸12.5×12.5×45mm、光路幅10mm、光路長10mm、容積4.5cc)に入れ、マグネチックスターラーで攪拌した。次に、分光セルの外部/横方向から光を5分間照射した。光照射は、光源装置SX−UI151XQ(ウシオ電機株式会社、150Wクセノンショートアークランプ)を光源として、純水を満たした石英製フィルター容器越しに行った。照射光量は、紫外線照度計UVD−365PD(ウシオ電機株式会社、試験波長365nm)で、5.0mW/cmであった。照射後、分光セル内の懸濁液を回収し、光照射後サンプルとした。
(メチレンブルーの定量)
オールプラスチックス製10ccシリンジにメンブレンフィルター(東洋濾紙株式会社、DISMIC−13HP)を装着した。これに、光照射前後のサンプル懸濁液をそれぞれ入れ、ピストンで押出して光触媒を除去した。その際、前半量のろ液は廃棄し、後半量のろ液を、可視光分析用セミマイクロ型ディスポセル(ポリスチレン製、光路幅4mm、光路長10mm、容積1.5cc)に採取した。そして、紫外可視分光分析装置(UV−2500、島津製作所)を使用して、波長680ナノメートルの吸光度を測定し、メチレンブルー濃度を算定した。
光照射前のメチレンブルー濃度に対する光照射後のメチレンブルー濃度を測定し、光分解活性としてのメチレンブルー除去率(%)を表1に示した。
[光触媒機能性組成物の作製]
光触媒1〜8それぞれを、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートと混合、溶融混錬し、光触媒機能性組成物1〜8を作製した。作製した光触媒機能性組成物の色相の変化を観察するとともに、光触媒機能性組成物中に含まれる硫黄とチタンの重量を測定した。
以下、光触媒機能性組成物の作成方法について説明する。
(光触媒機能性組成物1)
80℃にて減圧乾燥したチップ状のポリエチレンテレフタレートをガラス製容器に50g秤取し、さらに光触媒1を0.05g添加する。ガラス製容器内を真空排気、窒素供給の操作を3回繰り返し、ガラス製容器内を窒素置換する。微量窒素流通下、ガラス製容器内が300℃となるまで、40分かけて加熱する。300℃に達したら、ガラス製容器内をSUS製の攪拌翼で10分間攪拌し、光触媒とポリエチレンテレフタレートを充分に混合させる。この際、ポリエチレンテレフタレートは溶融状態となる。攪拌後、溶融状態の光触媒含有ポリエチレンテレフタレートを取り出し、水浴にて急冷する。急冷後のポリエチレンテレフタレートをチップ状に裁断し、光触媒機能性組成物1を得た。
(光触媒機能性組成物2〜8)
光触媒1の代わりに光触媒2〜8をそれぞれ用いる以外は、光触媒機能性組成物1の作製方法と同一の方法にて、光触媒機能性組成物2〜8を得た。
(光触媒中の硫黄とチタンの含有量、および光触媒機能性組成物中の硫黄とチタンの重量比)
(i)硫黄含有量
光触媒機能性組成物を600℃、2時間焼成し、この焼成中に発生したガスを塩基性溶液中に捕集した。その後、塩基性溶液に含まれる硫黄原子をイオンクロマトグラフにて定量した。
(ii)チタン含有量
光触媒機能性組成物を600℃、2時間焼成し、焼成終了後、残存する固形物を捕集した。この固形物を酸溶液に完全に溶解させた後、酸溶液に含まれるチタン原子をICP質量分析装置を用いて定量した。
さらに、硫黄含有量、及びチタン含有量から硫黄とチタンの重量比(S/Ti)を算出した。
ここで、各光触媒機能性組成物中の樹脂には、S原子、Ti原子が含まれていないため、計測したS原子の含有量、Ti原子の含有量は、光触媒に由来するものであると考えられる。また、各光触媒機能性組成物中の樹脂には、S原子、Ti原子が含まれていないため、硫黄とチタンの重量比は、光触媒における硫黄とチタンの重量比、さらには、光触媒機能性組成物における硫黄とチタンの重量比となる。
また、ここで計測したS原子の含有量、Ti原子の含有量は、光触媒を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)を用いて測定した際の、S原子の含有量、Ti原子の含有量と略一致している。
結果を表1、2に示す。表1には、光触媒におけるS原子の含有量、Ti原子の含有量、S/Tiを示し、表2には、光触媒機能性組成物のS/Tiを示す。
さらに、各光触媒機能性組成物中のTi含有量を表2に示す。
(光触媒機能性組成物の色相比較)
光触媒機能性組成物の色相を目視にて評価した。ポリエチレンテレフタレートは色相悪化により、褐色、あるいは茶色に変色する。色相悪化が抑制された場合、ポリエチレンテレフタレートは無色透明、あるいは淡白色を維持することが可能となる。
色相を表2に示した。
○:黄変がほとんど観測されない。
△:わずかに黄変が観測される。
×:黄変する。
Figure 2010075898
Figure 2010075898
表1から実施例1〜6で得られた光触媒1〜6を使用した場合には、光分解活性が高いことがわかる。また、表2から、実施例1〜6で得られた光触媒1〜6を樹脂に添加した際には、樹脂の変色を抑制できることがわかる。
これに対し、比較例1,2で得られた光触媒7,8を樹脂に添加した場合には、樹脂の変色を抑制することが困難である。

Claims (17)

  1. 二酸化チタンを含む基体を有する光触媒であって、
    比表面積が100m/g以上であり、
    S原子を含有し、前記S原子の含有量が0.25重量%以下である光触媒。
  2. 請求項1に記載の光触媒において、
    前記S原子の含有量が、0.001重量%以上である光触媒。
  3. 請求項1または2に記載の光触媒において、
    Ti原子に対する前記S原子の重量比が0.5%以下である光触媒。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の光触媒において、
    前記基体と、
    前記基体を被覆する被覆膜とを備える光触媒。
  5. 請求項4に記載の光触媒において、
    前記被腹膜は、二酸化珪素膜である光触媒。
  6. 硫酸チタンあるいは、硫酸チタニルを原料として得られる二酸化チタンを有する基体を備え、
    比表面積が100m/g以上であり、
    S原子を含有し、前記S原子の含有量が0.25重量%以下である光触媒。
  7. 二酸化チタンを有する基体を含む光触媒を製造する工程と、
    前記光触媒のS原子含有量が0.25重量%以下となるように処理する工程とを含む光触媒の製造方法。
  8. 請求項7に記載の光触媒の製造方法において、
    硫酸チタンあるいは、硫酸チタニルを原料として前記基体を得る工程を含む光触媒の製造方法。
  9. 請求項7または8に記載の光触媒の製造方法において、
    S原子含有量が0.25重量%以下となるように処理する前記工程では、前記光触媒を500℃以上で焼成および/または塩基性水溶液で洗浄する光触媒の製造方法。
  10. 請求項7乃至9のいずれかに記載の光触媒の製造方法において、
    前記光触媒を製造する前記工程では、
    前記基体を被覆膜により被覆して光触媒を得る工程を含む光触媒の製造方法。
  11. 光触媒と、熱可塑性樹脂とを含む光触媒機能性組成物であって、
    前記光触媒は、請求項1乃至6のいずれかの光触媒である光触媒機能性組成物。
  12. 光触媒と、熱可塑性樹脂とを含む光触媒機能性組成物であって、
    S原子を含み、
    前記光触媒は、二酸化チタンを含む基体を有し、
    当該光触媒機能性組成物中のTi原子に対する前記S原子の重量比が0.5%以下である光触媒機能性組成物。
  13. 請求項12に記載の光触媒機能性組成物において、
    前記光触媒は、比表面積が100m/g以上である光触媒機能性組成物。
  14. 請求項12または13に記載の光触媒機能性組成物において、
    前記Ti原子の含有量が10重量%以下である光触媒機能性組成物。
  15. 請求項12乃至14のいずれかに記載の光触媒機能性組成物において、
    前記熱可塑性樹脂は、実質的にS原子を含まない樹脂である光触媒機能性組成物。
  16. 請求項15に記載の光触媒機能性組成物において、
    当該光触媒機能性組成物中の前記Ti原子に対する前記S原子の重量比が0.002%以上である光触媒機能性組成物。
  17. 請求項11乃至16のいずれかに記載の光触媒機能性組成物において、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、およびビニル化合物(共)重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む光触媒機能性組成物。
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