JP2008045221A - 酸化珪素膜で被覆された光触媒を含有する繊維処理剤 - Google Patents

酸化珪素膜で被覆された光触媒を含有する繊維処理剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い光触媒活性を示す光触媒を繊維に付与するための、光触媒含有繊維処理剤を提供すること
【解決手段】
光触媒活性を有する基体と、該基体を被覆する、実質的に細孔を有さない酸化珪素膜とを有し、アルカリ金属含有量1ppm以上、1000ppm以下である光触媒を繊維処理剤に含有させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光触媒を繊維表面に固定化して、光触媒の機能を備えた繊維を製造する際に用いる、光触媒含有繊維処理剤に関する。
従来技術として、繊維に、抗菌性、防汚性、消臭性といった機能を付与することが試みられてきた。例えば、蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させることにより得られる銀複合蛋白質とアミノ変性シリコンを含有することを特徴とする繊維処理用組成物(特許文献1を参照)、濡れた状態にある繊維製品に適用される防汚剤組成物であって、当該防汚剤組成物を適用後乾燥した繊維製品上に水溶性もしくは水分散性の皮膜を形成し得るポリマーを含有する防汚剤組成物(特許文献2を参照)、アミノ基を有する高分子物質と、酸基及び/又はその酸基が塩になった基を有する高分子物質を含有する消臭基剤が連続的又は不連続的に繊維表面に存在してなる消臭繊維(特許文献3を参照)、水に難溶性または不溶性で平均粒径0.005〜400μmの粒子状吸着剤を0.001〜5%含有し、臭気物質の吸着による消臭効果を繊維製品に付与する繊維製品処理剤(特許文献4を参照)などがある。
また、チタニア、酸化亜鉛などの金属化合物半導体は、そのバンド幅に相当するエネルギーを有する光を吸収する性質を示す。近年になって、光照射によって励起して発生する正孔と電子による高い反応性が着目され、前記金属化合物半導体を「光触媒」として、水質浄化、防汚、抗菌、脱臭、大気浄化などの環境浄化へ応用することが試みられており、前述の問題点に対する解決策として、繊維に光触媒を固定化して、上記の機能を付与することも提案されている(特許文献5を参照)。
しかしながら、光触媒を用いない材料は、下記の問題点のいずれかを有している。(a)その効果を生み出す物質を徐々に発散することで効果を示すために、効果が持続せず、有効期間に限界がある、(b)汚れにくい効果は示すものの、一旦汚れてしまうと、それを除去できない、(c)悪臭を臭わないように保持するだけであり、悪臭物質を消滅させるわけではない、(d)悪臭物質を保持できるが、保持可能な量に限界があり、限界量を保持すると効果が無くなる。
一方、従来の光触媒繊維の光触媒活性は、前記(a)から(d)の問題を解消しつつ、上記の機能を示すことはできているが、その光触媒活性は、いまだに不十分なものである。したがって、更に高い光触媒活性を有する光触媒繊維が要求されており、その製造に用いるための、高い光触媒活性を実現する光触媒含有繊維処理剤が求められている。
新規な光触媒として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを、気相で光触媒に供給してシリカ系被膜を形成することや、被覆しても光照射条件での殺菌活性が、もとの光触媒の活性よりも高まることが開示されている(特許文献6を参照)。また、アンモニアガス、アミン系ガスなどの塩基性ガスを選択的に除去する酸化チタン光触媒が記載されている(特許文献7を参照)。同文献記載の光触媒は、光触媒活性を有する酸化チタン粒子よりなるコアと、該コアを取り巻くシリカ水和物の被覆層を有している。この被覆層は、塩基性ガスを選択的に吸着し、これを酸化チタンコアの活性サイトへ効率的に供給することによって光触媒全体の塩基性ガス除去能力を高めるように機能するとされている。
しかしながら、特許文献6、7に記載されている光触媒では、有機物質に対する光分解性能も十分でなく、特許文献7に記載されている光触媒では塩基性ガス以外の有害なガスに対する吸着能力が不十分であった。これは、特許文献7に記載の方法で得られた光触媒の構造またはシリカ水和物の被膜層の機械的強度や耐久性が不十分であることによるものと考えられる。
特開2004−360147号公報 特開平9−273079号公報 特開2000−80569号公報 特開2004−285485号公報 特開2005−97773号公報 特開昭62−260717号公報 特開2002−159865号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い光触媒活性を示す光触媒を繊維に付与するための、光触媒含有繊維処理剤を提供することを課題としている。
そこで、発明者らは、先ず光触媒活性に優れる光触媒の開発に注力し、鋭意努力した結果、光触媒活性を有する基体と、該基体を被覆する実質的に細孔を有さない酸化珪素膜とを有し、アルカリ金属含有量1ppm以上、1000ppm以下である酸化珪素被覆光触媒が、光触媒活性に優れることを見出し(特願PCT/JP2006/302542号)、更に、この光触媒を繊維に固定化すると、光触媒活性に優れる光触媒繊維となることを見出すに至り、発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の光触媒含有繊維処理剤である。
(1)
光触媒を含む繊維処理剤であって、
該光触媒が、
光触媒活性を有する基体と、
該基体を被覆する、実質的に細孔を有さない酸化珪素膜とを有し、
該光触媒のアルカリ金属含有量が1ppm以上1000ppm以下である
ことを特徴とする光触媒含有繊維処理剤。
(2)
前記光触媒の平均粒子径が0.005〜10μmの範囲にある(1)に記載の光触媒含有繊維処理剤。
(3)
光触媒を繊維表面に固定化する結着剤を含む(1)または(2)に記載の光触媒含有繊維処理剤。
(4)
前記光触媒が、難分解性化合物に固定化された状態で含有されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の光触媒含有繊維処理剤。
本発明によれば、高い光触媒活性を示す光触媒を繊維に付与するための、光触媒含有繊維処理剤を提供することができる。
本発明の光触媒含有繊維処理剤は、前記(1)から(4)の光触媒繊維処理剤であり、
光触媒活性を有する基体と、該基体を被覆する、実質的に細孔を有さない酸化珪素膜とを有し、アルカリ金属含有量1ppm以上、1000ppm以下である光触媒(以下、適宜「酸化珪素被覆光触媒」と記載する)を含有することを特徴としている。
酸化珪素被覆光触媒とは、光触媒機能を有する基体の表面を酸化珪素からなる膜で被覆したものを意味する。したがって、酸化珪素の存在下で後から光触媒を形成して製造される、酸化珪素に光触媒を固定化したものや、酸化珪素と光触媒を同一容器中で並行して形成させた複合体は、含まれない。
酸化珪素膜が基体を被覆する態様は特に制限されず、基体の一部を被覆する態様、全部を被覆する態様のいずれも含むが、有機材が劣化しにくい点からは、基体の表面が酸化珪素からなる膜で一様に被覆されていることが好ましい。
ここで、酸化珪素膜とは、未焼成の膜および焼成後の膜いずれの形態でも良い。本発明においては、焼成後の酸化珪素の焼成膜が好ましい。
光触媒活性を有する基体(以下、適宜「基体」と略記する)としては、金属化合物光半導体を用いることができる。金属化合物光半導体としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステンおよびチタン酸ストロンチウムなどがあり、このうち、光触媒活性に優れており、無害かつ安定性にも優れる酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、例えば、非晶質、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等が挙げられる。このうち、光触媒活性に優れているアナターゼ型あるいはルチル型、または、これらの混合物がより好ましく、これらに非晶質が少量含まれていてもかまわない。
基体として、金属化合物光半導体に1種以上の遷移金属を添加したもの、金属化合物光半導体に14族、15族、および/または16族の典型元素を1種以上添加したもの、2種以上の金属化合物からなる光半導体、2種以上の金属化合物光半導体の混合物も使用できる。
さらに、基体としては、金属化合物光半導体の粒子を用いることが好ましいが、また、基体の比表面積は、30m/g以上が好ましく、より好ましくは120〜400m/gであり、最も好ましくは120〜300m/gの金属化合物光半導体を含有するものが好ましい。基体の比表面積が上記範囲内にある場合、良好な触媒活性が維持され得る。
なお、基体が粒子として明確に認識できる場合、基体の比表面積は、一般的なBET法により算出することができる。そうでない場合、基体の比表面積は、X線回折分析とシェラー式による算出、あるいは電子顕微鏡を用いた一次粒子の観察から求まる一次粒子径を元にして、球形換算で「表面積」を算出し、かつ、X線や電子線の回折分析から結晶相を把握してその結晶相の真密度と前記球形換算から求まる体積とから「重量」を算出することによって、比表面積を求めることが可能である。
基体が粒子である場合、その一次粒子径は1nm以上50nm以下が好ましく、2nm以上30nm以下がより好ましい。基体の一次粒子径がこの範囲内にある場合、良好な触媒活性が維持され得る。
本発明において、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。これらのアルカリ金属は1種を含んでいてもよく、これらを2種以上含んでいても良い。このうち、ナトリウムおよび/またはカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
光触媒中のアルカリ金属含有量は、原子吸光光度計(AA)、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)、蛍光X線分析装置(XRF)等を用いて定量可能である。酸化珪素被覆光触媒中のアルカリ金属含有量は1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましい。1ppm以上であれば、光分解活性の向上効果が得られ、10ppm以上であれば、この光分解活性の向上効果が顕著となる。アルカリ金属を所定量含有することにより光分解活性が向上する理由については必ずしも明らかではないが、分解目的物の吸着率が向上することによるものと考えられる。一方、アルカリ金属含有量の上限については、1000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。1000ppm以下とすることにより、酸化珪素膜の溶出を抑制できる。また、500ppm以下とすることで、800℃をこえる温度領域における焼成処理での光触媒の焼結の発生を抑制でき、200ppm以下とすることで光触媒の焼結をさらに進行しにくくできる。
また、酸化珪素膜に含まれるアルカリ金属含有量は1ppm以上500ppm以下が好ましく、1ppm以上200ppm以下がより好ましい。
「実質的に細孔を有さない」とは、酸化珪素膜で被覆された光触媒を製造した際に原料として使用する光触媒活性を有する基体と、この光触媒活性を有する基体を用いて調製した酸化珪素膜で被覆された光触媒とについて、20〜500オングストロームの領域で細孔径分布を比較した場合に、酸化珪素膜に細孔が実質的に存在しないことを意味する。
具体的には、光触媒活性を有する基体、並びに、酸化珪素膜で被覆された光触媒の細孔径分布を、窒素吸着法等の細孔分布測定によって把握し、これらを比較することによって酸化珪素膜に細孔が実質的に存在しないか否かを判定できる。
窒素吸着法での把握方法をより具体的に述べると、以下の(1)〜(4)の手法によって酸化珪素膜の細孔の有無を判定することができる。ここでは、基体として、光触媒粒子を用いる例を挙げて説明する。
(1)光触媒粒子を、200℃で乾燥した後、脱着過程でのN吸着等温線を測定する。
(2)酸化珪素で被覆された光触媒の脱着過程でのN吸着等温線を測定する。
(3)BJH(Barrett−Joyner−Halenda)法で、前記二つのN吸着等温線を解析して、20〜500オングストロームの領域のlog微分細孔容積分布曲線を求める。
(4)二つのlog微分細孔容積分布曲線を比較し、酸化珪素膜で被覆された光触媒のlog微分細孔容積が、光触媒粒子のlog微分細孔容積よりも0.1ml/g以上大きい領域が存在しない場合には、酸化珪素膜に細孔が実質的にないと判定し、0.1ml/g以上大きい領域が存在する場合には、酸化珪素膜に細孔が有ると判定する。なお、0.1ml/g以上とするのは、窒素吸着法による細孔分布測定では、log微分細孔容積値で約0.1ml/g幅の測定誤差が生じることが多いためである。
20〜500オングストロームの範囲で2つのlog微分細孔容積分布曲線を比較すれば、酸化珪素膜の細孔の有無を実質的に判定することができる。
なお、二つのlog微分細孔容積分布曲線を比較し、10〜1000オングストロームの領域で酸化珪素で被覆された光触媒のlog微分細孔容積が、光触媒粒子のlog微分細孔容積よりも0.1ml/g以上大きい領域が存在しないことがより好ましい。
ここで、酸化珪素膜に細孔が存在する場合、光分解活性が向上し難い。この理由は必ずしも明らかではないが、細孔の存在によって酸化珪素膜での光の散乱や反射が起こりやすくなり、光触媒活性を有する基体に到達する紫外線の光量が減少し、光触媒励起による正孔と電子の生成量が減少することによるものと推察される。また、同じ酸化珪素量で被覆した場合、細孔有りのものは、細孔無しのものに比べ、細孔の容積の分だけ酸化珪素膜の厚さが増す結果、光触媒活性を有する基体と分解対象物である有機物との物理的距離が大きくなるため、充分な光分解活性が得られないものと推察される。
本発明に係る酸化珪素被覆光触媒の表面積1m当りの珪素担持量は、酸化珪素被覆光触媒が含有する珪素量と、酸化珪素被覆光触媒の表面積から算出される計算値である。酸化珪素被覆光触媒の表面積1m当りの珪素担持量は、その表面積1m当りの珪素担持量が0.10mg以上、2.0mg以下であり、好ましくは0.12mg以上、1.5mg以下、より好ましくは0.16mg以上、1.25mg以下、さらに好ましくは0.18mg以上、1.25mg以下である。0.10mg未満では、酸化珪素膜による光触媒活性向上効果が小さい。一方、2.0mgを超えると、酸化珪素被覆光触媒に占める基体の割合が低下しすぎるので、光触媒機能がほとんど向上しない。珪素担持量を上記範囲とすることで、酸化珪素膜による光触媒活性向上効果が顕著になる。
基体および酸化珪素被覆光触媒の表面積は、露点−195.8℃以下の乾燥ガス気流下、150℃で15分加熱処理した後に、窒素吸脱着によるBET法比表面積測定装置を用いて測定することができる。
本発明の酸化珪素被覆光触媒の製造方法は、水系媒体中に存在させた基体に珪酸塩を用いて酸化珪素膜を被覆する際、基体と珪酸塩の両方を含む混合液のpHを5以下に維持することを特徴とする。
上記製造方法において、水系媒体としては、水、あるいは水を主成分とし、脂肪族アルコール類、脂肪族エーテル類等のうち、水に溶解可能な有機溶媒を含む混合液が挙げられる。水系媒体を具体的に例示するとすれば、水、並びに、水とメチルアルコール、水とエチルアルコール、水とイソプロパノール等の混合液が挙げられる。これらの中では水が好ましい。また、これらの水および混合液は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。更に、水系媒体には、光触媒の分散性あるいは溶解性を向上させるために、脂肪族アルコール類、脂肪族エーテル類等のうち、水に溶解可能な有機溶媒、並びに脂肪族アミン類、脂肪族ポリエーテル類およびゼラチン類等の界面活性剤を混ぜることもできる。
珪酸塩としては、珪酸および/またはそのオリゴマーの塩を用い、2種以上を混合して用いても良い。ナトリウム塩およびカリウム塩は、工業的に入手容易である点から好ましく、溶解工程を省略できるので珪酸ナトリウム水溶液(JIS K1408“水ガラス”)がさらに好ましい。
水系媒体中に存在させた基体に珪酸塩を用いて酸化珪素膜を被覆する際には、水系媒体、基体、および珪酸塩を混合し、続けてこの混合液を熟成する。
具体的に示すと、
(i)基体を含む水系媒体と珪酸塩、
(ii)珪酸塩を含む水系媒体と基体、および
(iii)基体を含む水系媒体と珪酸塩を含む水系媒体、
の少なくともいずれか一組を混合する工程、並びにこの混合液を熟成する工程からなる被覆方法である。熟成する工程では、基体に対する酸化珪素膜の被覆が徐々に進むこととなる。
この際、基体および珪酸塩の両方を含む水系媒体のpHを5以下に維持することが必要であり、pH4以下の酸性領域とすることがより好ましい。基体の非存在下でpH5以下を維持した場合、珪酸、珪酸イオンおよび/またはこれらのオリゴマーから、珪酸化合物の縮合物が単独では析出しにくい。一方、基体の存在下でpH5以下を維持した場合、基体の表面が珪酸化合物の縮合触媒として作用し、酸化珪素膜が基体の表面にのみ速やかに生成される。すなわち、pHが5以下の酸性領域は、珪酸化合物を含む溶液を安定に存在させることができ、かつ、基体の表面に酸化珪素を膜状に形成可能な領域である。
pH11以上の塩基性領域においても、pH5以下の酸性領域と同様に珪酸、珪酸イオンおよび/またはこれらのオリゴマーを含む液を熟成した際に、珪酸化合物の縮合物は析出しにくい。また、用いた珪酸塩のうちの一部しか酸化珪素膜を形成しないので、好ましくない。また、pH6〜11の領域は、珪酸化合物の縮合物、すなわち、酸化珪素微粒子および/またはゲル等が生じやすいため、酸化珪素膜が多孔質となったり、基体の表面上で局所的に酸化珪素が形成されるので好ましくない。
水系媒体中にアルコール等の有機媒体が存在する場合には、水用のpH電極ではpHを正確に測定できないので、有機媒体を含む水溶液用のpH電極を用いて測定する。別途、有機媒体を同体積の水で置き換えてpHを測定することも可能である。
基体と珪酸塩の両方を含む混合液を、pH5以下に維持する方法としては、基体、珪酸塩、水系溶媒の混合および熟成を行う際、水系媒体のpHを常時測定し、適宜、酸および塩基を加えて調整する方法でも構わない。しかし、製造に用いる珪酸塩に含まれる塩基成分の総量を中和した上でpH5以下となるに十分な量の酸を予め水系媒体中に存在させておくことが簡便である。
酸は、どのような酸でも使用可能であるが、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸が好適に用いられる。酸は、1種のみを用いても、2種以上を混合して用いても良い。この中で塩酸、硝酸が好ましい。硫酸を使用する場合、光触媒中の硫黄含有量が多く残存すると、吸着効率が経時劣化することがある。光触媒中の硫黄含有量は、光触媒の全重量を基準として、0.5重量%以下が好ましく、0.4重量%以下がより好ましい。
塩基は、珪酸塩に含まれる塩基成分の総量を中和した上でpH5以下となるのに十分な量の酸を予め水系媒体中に存在させておく前述した方法を使用する場合には、特に別途用いる必要は無い。しかしながら、塩基を用いる場合は、どのような塩基でも使用可能である。なかでも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好適に用いられる。
混合溶液を熟成し、基体に対して酸化珪素膜を被覆する際の反応温度および反応時間等の反応条件は、目的とする酸化珪素被覆光触媒の生成に悪影響を与えない条件であれば特に限定されない。反応温度は10℃以上200℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましい。10℃未満であると、珪酸化合物の縮合が進行し難くなることにより、酸化珪素膜の生成が著しく遅延し、酸化珪素被覆光触媒の生産性の悪化を招くことがある。200℃より高温であると、珪酸化合物の縮合物、すなわち、酸化珪素微粒子および/またはゲル等が生じやすいため、酸化珪素膜が多孔質となったり、基体表面上で局所的に酸化珪素が形成されてしまうことがある。
熟成時間は、10分以上、500時間以下であることが好ましく、1時間以上、100時間以下であることがより好ましい。10分未満であると、酸化珪素膜による被覆が充分に進行せず、被膜による光分解活性の向上効果が充分に得られない場合がある。500時間より長時間であると、光触媒機能を有する基体は、酸化珪素膜により充分に被覆され、光分解機能も向上するが、酸化珪素被覆光触媒の生産性が悪化することがある。
また、混合液中に含まれる光触媒活性を有する基体の濃度は1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下であることがより好ましい。1重量%未満であると、酸化珪素被覆光触媒の生産性が悪くなり、50重量%より高濃度であると基体に対する酸化珪素膜の被覆が均一に進行せず、光分解活性の向上効果が充分に得られないことがある。混合液中に含まれる珪素の濃度は0.05重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。珪素濃度が0.05重量%未満であると、珪酸化合物の縮合が遅延し、基体に対する酸化珪素膜の被覆が充分でなくなることがある。珪素濃度が5重量%より高濃度であると、基体に対する酸化珪素膜の被覆が均一に進行しないことがある。
本発明の酸化珪素被覆光触媒の製造方法において、光触媒活性を有する基体および珪酸塩の使用量の比率は、前記基体の表面積1m当りの珪素原子として、0.01mg/m以上、0.50mg/m以下であることが好ましい。この範囲の比率で製造すれば、前記基体の表面に酸化珪素膜を形成する工程、すなわち、前記基体を含む水系媒体と珪酸塩、珪酸塩を含む水系媒体と前記基体、および前記基体を含む水系媒体と珪酸塩を含む水系媒体、の少なくともいずれか一組を混合し熟成する工程において、基体の表面に所望の酸化珪素膜を形成できると共に、基体の表面で縮合せずに未反応で残った、珪酸、珪酸イオン、および/またはこれらのオリゴマーの量を少なく抑えられるので、細孔を有する酸化珪素膜が形成されることが少ない。0.50mg/m以上、5.0mg/m以下の範囲では、比率が大きくなるほど、未反応物の量が増え、細孔を有する酸化珪素膜が形成されることがあるが、未反応物の縮合が進行して細孔が生じることに対して、処理時間を短くすることで回避することが可能である。
本発明の酸化珪素被覆光触媒の製造方法をより具体的に示すとすれば、例えば、
(工程a)基体を含む水系媒体と珪酸塩、珪酸塩を含む水系媒体と基体、および基体を含む水系媒体と珪酸塩を含む水系媒体、の少なくともいずれか一組を混合する工程、
(工程b)この混合液を熟成し、前記基体に対して酸化珪素膜を被覆する工程、
(工程c)混合液を中和せずに、酸化珪素被覆光触媒を水系媒体から分離および洗浄する工程、
(工程d)酸化珪素被覆光触媒を乾燥および/または焼成する工程、からなり、
かつ、工程a並びに工程bにおいて、前記基体および珪酸塩の両方を含む水系媒体のpHを5以下に維持する製造方法が挙げられる。
水系媒体から酸化珪素被覆光触媒を分離する際に、中和すると、洗浄工程でのアルカリ金属分の低減効率が悪くなる点、並びに水系媒体中に溶解したまま残った珪素化合物が縮合、ゲル化して多孔質シリカ膜が形成される点が問題となる。予め珪酸塩溶液を脱アルカリし、この脱アルカリした液を調製して製造に用いること、並びに光触媒機能を有する基体および珪酸塩の使用量の比率を小さくすること、によって上記の問題を回避あるいは極小化することも可能である。しかしながら、中和せずに酸化珪素被覆光触媒を水系媒体から分離すると、上記問題を回避でき、かつ製法が簡便なので好ましい。
酸化珪素被覆光触媒の混合液からの分離方法は特に限定されないが、例えば、自然濾過法、減圧濾過法、加圧濾過法、遠心分離法などの公知の方法が好適に利用できる。
酸化珪素被覆光触媒の洗浄方法は特に限定されないが、例えば、純水への再分散化とろ過の繰り返し、イオン交換処理による脱塩洗浄、などが好適に利用できる。また、酸化珪素被覆光触媒の用途によっては、洗浄工程を省略することも可能である。
酸化珪素被覆光触媒の乾燥方法は特に限定されないが、例えば、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、などが好適に利用できる。また、酸化珪素被覆光触媒の用途によっては、乾燥工程を省略することも可能である。
酸化珪素被覆光触媒の焼成方法は特に限定されないが、例えば、減圧焼成、空気焼成、窒素焼成等が好適に利用できる。通常、焼成は200℃以上1200℃以下の温度で実施できるが、400℃以上1000℃以下が好ましく、400℃以上800℃以下がより好ましい。焼成温度が200℃未満であると、基体表面上に所望の酸化珪素の焼成膜が生成せず、不安定な構造となってしまう。さらに、多量の水が酸化珪素周辺に存在することにより、ガスに対する吸着性能が充分に発揮されず、同時に充分な光分解活性も得られない。焼成温度が1200℃より高温であると、酸化珪素被覆光触媒の焼結が進行し、充分な光分解活性が得られない。
酸化珪素被覆光触媒に含有される水分含有量は、7重量%以下であることが好ましい。5重量%以下がさらに好ましく、4重量%以下が最も好ましい。水分含有量が7重量%以上であると、多量の水が酸化珪素周辺に存在することにより、ガスに対する吸着性能が充分に発揮されず、同時に充分な光分解活性も得られない。
このようにして得られた酸化珪素被覆光触媒は、酢酸等の酸性ガス、アンモニア等の塩基性ガス、トルエン等の非極性ガスいずれも吸着でき、光触媒性能にも優れている。
上記のように、本発明の酸化珪素被覆光触媒の製造方法は、実質的に細孔を有さない酸化珪素膜を得るために、pHを低くするとともに、珪酸塩の濃度、基体の濃度、使用する酸性溶液、膜形成後の焼成温度、焼成時間等の条件を適宜選択することが重要となる。
前記酸化珪素被覆光触媒の平均粒子径は、0.005〜10μmの範囲が好ましい。粒子が大きすぎると繊維に付着させた際に剥離しやすくなるし、大きいと、光触媒繊維の肌触りが堅くてゴワゴワしてしまう。小さすぎると、繊維に付着させた際に光触媒機能が発現しにくくなる。よって、0.01〜5μmが更に好ましく、0.02〜1.5μmが特に好ましい。
結着剤とは、酸化珪素被覆光触媒を繊維に固定化する糊剤の役目を果たす材料であり、短期的に効果を示すものでも、長期間に渡って効果を示すもののどちらであっても構わないが、長期間に渡って糊材として効果を示すものが好ましい。短期的に効果を示すものとしては、繊維製品が洗濯等の洗浄処理を受けた場合には、洗浄剤等によって水に溶解されて繊維から除去されるものが挙げられ、具体的にはデンプン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル系樹脂などがある。長期間に渡って効果を示すものとしては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、アミノ系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂などが挙げられる。また、用途によっては、結着剤をふくまない繊維処理剤とすることも可能である。
また、結着剤は、溶液タイプでもエマルジョンタイプでも良いが、取扱い易さと価格の点で、水性エマルジョンタイプが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
結着剤の使用量は、結着剤の固形分に対する酸化珪素被覆光触媒量及び難分解性化合物の合計量に対して重量比で、0.05〜3倍程度、好ましくは0.1〜2倍程度、より好ましくは0.2〜1倍程度を用いることができ、この範囲で十分な結着硬化を発揮する。0.05倍よりも少ないと結着効果が極端に劣り、一方、3倍よりも多くしても結着効果はほとんど変わらず、逆に繊維や布地の柔軟な風合いが損なわれるため好ましくない。
本発明の繊維処理剤の溶媒は、前記酸化珪素被覆光触媒と前記結着剤とを分散可能な溶媒であれば、どのようなものであっても構わない。結着剤の種類によって、水、親水性有機溶媒、疎水性溶媒、あるいは超臨界流体のいずれか1種以上を用いることができる。溶媒は単一、あるいは二種以上からなる混合溶媒、のいずれであっても構わないが、沸点150℃以下の溶媒を主成分とすることが好ましい。高沸点のものを主成分とすると、繊維処理の工程の一つである乾燥工程において、生産性が悪くなる。具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、などの親水性有機溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、などの疎水性有機溶媒、並びに水が例示できる。なお、沸点が150℃を越える溶媒も、副成分として混合することも出来る。
前記溶媒には、光触媒と結着剤に限らず、任意の成膜性改良剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、顕色剤、結着剤硬化促進剤、吸着剤、あるいは安定剤等の公知の添加剤を加えても構わない。これらは、必ずしも該溶媒に溶解するものである必要はなく、固体状で溶媒中に分散するものであっても構わない。例えば、白色着色剤であり、紫外線遮蔽剤でもある、酸化チタン顔料粒子は、固体として添加され、溶媒に溶解せずに分散したままで使用する。
また、本発明の光触媒繊維処理剤は粉末として提供することも出来、溶媒を全く含まない構成とすることも可能である。ただしこの場合には、前記酸化珪素被覆光触媒に表面変性処理を施したり、分散剤と複合化したり、など、繊維処理時に速やかに処理液中へ分散できるように加工が必要となる。
繊維処理剤に含まれる光触媒は、光触媒粒子単独で繊維処理剤中に分散しても良いが、光触媒の分解作用で分解されにくい、難分解性化合物に担持して分散されても構わない。繊維処理剤を用いて繊維に施される光触媒含有被膜の膜の厚さに比べて、光触媒粒子の粒子径が小さいと、光触媒が該膜中に内包されてしまい、光触媒としての効果を供しにくい場合があるので、難分解性化合物に担持することによって該膜厚よりも大きくして、内包されにくくする狙いで、担持されるものである。従って、難分解性化合物の粒子径は、平均粒子径で1μm〜10μmの範囲が好ましい。平均粒子径1μm未満では、担体としての効果が期待しにくく、10μm以上では、繊維や布地の衣装性が悪くなるため、好ましくない。前記難分解性化合物は、ゼオライト、金属酸化物、膨潤性粘土鉱物、炭酸カルシウムあるいはフッ素樹脂から選ばれる任意の1種以上の化合物であり、このうち、膨潤性粘土鉱物は、繊維の柔軟性も改良できるので、好ましいものである。金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、膨潤性粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、バイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、サポナイト、スチーブンサイト等が例示できる。光触媒:難分解性化合物の配合比は重量比で、1:0.1〜4.0、好ましくは1:0.2〜2.0の範囲である。光触媒に対する難分解性化合物の重量比が0.1未満では、担体としての難分解性化合物の効果がなく、また4.0を越える場合は、光触媒含有量が相対的に低くなるため、光触媒機能が低下する傾向となる。
溶媒を用いる場合、本発明の光触媒含有繊維処理剤は、前記酸化珪素被覆光触媒及び難分解性化合物を、その合計量として、0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%含有する。含有率が少なすぎると光触媒の性能が充分に発現されない場合があり、一方、60重量%を超えると、前記酸化珪素被覆光触媒が凝集するといったように、安定性が悪くなったり、繊維処理剤を製造する際、液の比重が高くなりすぎて、攪拌力が高い特殊な攪拌機器を必要とするために、経済的に不利となる場合がある。
本発明の繊維処理剤の製造方法には、特に制限は無い。溶媒を含まない繊維処理剤の製法としては、乾式混合機等の物理攪拌装置に前記酸化珪素光触媒と各種添加剤を加えて、混合する方法や、一旦溶媒中で混合し、スプレードライヤー等で造粒する方法など例示できる。溶媒を含む繊維処理剤の製法としては、ボールミル、振動ミル、ビーズミルなどの湿式粉砕装置、あるいは超音波照射装置、ホモジナイザー、ディスパーなどの分散装置によって、前記光触媒の分散液を調製し、これに結着剤や各種添加剤を混合する方法、同様にして前記光触媒の分散液を調製し、別途結着剤や各種添加剤を溶媒に溶解あるいは分散し、両液を混合する方法などが挙げられる。
なお、本発明の光触媒繊維処理剤の製造は、常温、常圧の条件で行うことができるが、必要に応じて、加圧下や減圧下、又は加熱下や冷却下で行っても構わない。溶媒に前記酸化珪素被覆光触媒を分散する時間にも特に制限は無く、通常30分から1時間である。1時間を越えて処理しても構わないが、過度に長時間処理すると、製造に時間を要するので、経済性が悪くなる。
本発明の光触媒含有繊維処理剤は、公知の繊維処理剤または光触媒繊維処理剤と同様に使用することができる。(a)繊維に噴霧して乾燥する方法、(b)繊維に噴霧して乾燥した後に、熱プレス等の加熱処理を施す方法、(c)処理剤を含む液に繊維を浸漬した後、圧搾して乾燥する方法、(d)同浸漬・圧搾した後に、加熱処理を施す方法、(e)洗濯の際に仕上剤として投入し、脱水後そのまま乾燥する方法、などが挙げられる。また、繊維工業における製品工程ラインの中、例えば染色・ソーピング工程や仕上げ工程等などで使用することも可能である。
本発明の光触媒含有繊維処理剤で処理できる繊維の材質としては、特に制限はなく、例えば、綿、カポック、亜麻、大麻、ラミー、ジュート、マニラ麻、サイザル麻、ヤシ、ビンロウジュ、海藻のような植物系のもの、羊毛、アルパカ、カシミア、モヘヤ、蚕糸、くも絹、貝絹のような動物系のもの、アセテートセルロース、エチルセルロース、塩化ゴムのような半合成物、アクリル、アセテート、アラミド、ノボロイド、ビスコースレーヨン、ポリアミド(ナイロン)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ青化ビニリデン、ポリフルオロエチレンのような合成物等が挙げられる。また、処理できる繊維の形態としては、原糸のみならず、織布や不織布などの原料布、衣料品、タオル、シーツ、カーテン、カーペット、マスク、シート表面生地、テント、などの加工品、といったいずれの繊維製品であっても構わない。
本発明の光触媒繊維処理剤で繊維を処理することによって、高い光触媒活性を示す酸化珪素被覆光触媒を、繊維に固定化することが出来る。そして、抗菌性、防汚性、消臭性、等の光触媒機能を繊維に付与することができる。
以下、本発明を実施例、比較例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[光触媒の調製]
光触媒を作製し、その性状を評価した。はじめに評価方法について説明する。
(i)アルカリ金属含有量
アルカリ金属含有量は、蛍光X線分析器(LAB CENTER XRE−1700、島津製作所)を用いて測定し、本測定で検出されたものに関して、原子吸光光度計(Z−5000,日立製作所)を用いて定量した。なお、検出されなかったアルカリ金属については、記載を省略した。
(ii)珪素含有量
珪素含有量は、蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)を用いて定量した。
(iii)比表面積
比表面積はBET法比表面積測定装置により測定した。
以下、光触媒の製造例について説明する。
なお、以下に示す光触媒は、光触媒27を除き、原料二酸化チタンを酸化珪素の焼成膜により被覆した構造を有するものである。すなわち、原料二酸化チタンの表面に酸化珪素前駆体膜を形成した後、焼成を行い、酸化珪素焼成膜を形成したものである。
(光触媒1)
ガラスフラスコに水200gと1N塩酸水溶液66.9gを加え、二酸化チタン(ST−01、石原産業株式会社、吸着水分量9重量%、BET法比表面積測定装置による比表面積300m/g)24.5gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと水ガラス1号(SiO含有量35〜38重量%、JIS−K1408)10.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは2.3であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、600℃、3時間焼成処理を施し、光触媒1を得た。この光触媒1のナトリウム含有量を原子吸光光度計(Z−5000,日立製作所)にて定量したところ、ナトリウム含有量は87ppmであった。また、この光触媒1の珪素含有量、硫黄含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量6.9重量%、硫黄含有量0.06重量%であった。比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ、212.8m/gであった。よって、光触媒1の表面積1m当りの珪素担持量は0.33mgであった。光触媒1の細孔分布を測定した結果を図1に示す。
(光触媒2)
二酸化チタンの量を82.1gとし、混合液CのpHが4.0となった以外は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒2を得た。この光触媒2は、ナトリウム含有量56ppm、珪素含有量2.4重量%、比表面積133.8m/gであった。よって、光触媒2の表面積1m当りの珪素担持量は0.18mgであった。
(光触媒3)
二酸化チタンの量を38.9gとし、混合液CのpHが2.8となった以外は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒3を得た。この光触媒3は、ナトリウム含有量85ppm、珪素含有量4.6重量%、比表面積194.9m/gであった。よって、光触媒3の表面積1m当りの珪素担持量は0.24mgであった。
(光触媒4)
二酸化チタンの量を12.2gとし、混合液CのpHが2.5となった以外は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒4を得た。この光触媒4は、ナトリウム含有量160ppm、珪素含有量9.6重量%、比表面積244.2m/gであった。よって、光触媒4の表面積1m当りの珪素担持量は0.39mgであった。
(光触媒5)
二酸化チタンとして、P25(日本アエロジル株式会社、アナターゼ:ルチル比が8:2の混合体、純度99.5%、BET法比表面積測定装置による比表面積50m/g)を75.0g使用したこと、珪酸ナトリウム水溶液を6.5g使用したこと、混合液CのpHが2.6となった以外は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒5を得た。この光触媒5は、ナトリウム含有量34ppm、珪素含有量1.4重量%、硫黄含有量は検出されず、比表面積61.1m/gであった。よって、光触媒5の表面積1m当りの珪素担持量は0.22mgであった。光触媒5の細孔分布を測定した結果を図2に示す。
(光触媒6)
二酸化チタンとして、PC−102(チタン工業株式会社、アナターゼ型、吸着水分量5%、BET法比表面積測定装置による比表面積137m/g)を70.5g使用したこと、混合液CのpHが3.8となったこと、そして混合液Cを16時間攪拌して熟成した他は、光触媒1と同様にして、光触媒6を得た。この光触媒6は、ナトリウム含有量12ppm、珪素含有量2.2重量%、硫黄含有量0.19重量%、比表面積127.8m/gであった。よって、光触媒6の表面積1m当りの珪素担持量は0.18mgであった。
(光触媒7)
二酸化チタンとして、AMT−100(テイカ株式会社、アナターゼ型、吸着水分量11%、BET法比表面積測定装置による比表面積290m/g)を25.0g使用したこと、混合液CのpHが2.4となった他は、光触媒6の製法と同様にして、光触媒7を得た。この光触媒7は、ナトリウム含有量17ppm、珪素含有量5.5重量%、硫黄含有量0.07重量%、比表面積207.2m/gであった。よって、光触媒7の表面積1m当りの珪素担持量は0.27mgであった。
(光触媒8)
二酸化チタンとして、TKP−101(テイカ株式会社、アナターゼ型、吸着水分量11%、BET法比表面積測定装置による比表面積300m/g)を25.0g使用したこと、混合液CのpHが2.1となった他は、光触媒6の製法と同様にして、光触媒8を得た。この光触媒8は、ナトリウム含有量50ppm、珪素含有量6.7重量%、硫黄含有量0.38重量%、比表面積194.2m/gであった。よって、光触媒8の表面積1m当りの珪素担持量は0.34mgであった。
(光触媒9)
混合液Cを16時間攪拌して熟成した他は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒9を得た。この光触媒9は、ナトリウム含有量180ppm、珪素含有量5.7重量%、比表面積246.2m/gであった。よって、光触媒9の表面積1m当りの珪素含有量は0.23mgであった。
(光触媒10)
500mLの水への再分散化および減圧ろ過を7回繰り返して洗浄した以外は、光触媒8の製法と同様にして、光触媒10を得た。この光触媒10は、ナトリウム含有量120ppm、珪素含有量5.7重量%、比表面積231.4m/gであった。よって、光触媒10の表面積1m当りの珪素担持量は0.25mgであった。
(光触媒11)
500mLの水への再分散化および減圧ろ過を1回行うことで洗浄した以外は、光触媒8の製法と同様にして、光触媒11を得た。この光触媒11は、ナトリウム含有量210ppm、珪素含有量5.7重量%、比表面積231.4m/gであった。よって、光触媒11の表面積1m当りの珪素担持量は0.24mgであった。
(光触媒12)
400℃、3時間焼成処理を施した他は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒12を得た。この光触媒12は、ナトリウム含有量93ppm、珪素含有量6.9重量%、比表面積255.5m/gであった。よって、光触媒12の表面積1m当りの珪素担持量は0.27mgであった。
(光触媒13)
800℃、3時間焼成処理を施した他は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒13を得た。この光触媒13は、ナトリウム含有量98ppm、珪素含有量6.9重量%、比表面積150.7m/gであった。よって、光触媒13の表面積1m当りの珪素担持量は0.46mgであった。
(光触媒14)
900℃、3時間焼成処理を施した他は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒14を得た。この光触媒14は、ナトリウム含有量96ppm、珪素含有量6.9重量%、比表面積108.2m/gであった。よって、光触媒14の表面積1m当りの珪素担持量は0.64mgであった。
(光触媒15)
1000℃、3時間焼成処理を施した他は、光触媒1の製法と同様にして、光触媒15を得た。この光触媒15は、ナトリウム含有量92ppm、珪素含有量6.9重量%、比表面積55.3m/gであった。よって、光触媒15の表面積1m当りの珪素担持量は1.25mgであった。光触媒15の細孔分布を測定した結果を図3に示す。
(光触媒16)
1規定塩酸水溶液の代わりに同量の1規定硝酸水溶液を用いたこと、混合液CのpHが3.2になったことの他は、光触媒9の製法と同様にして、光触媒16を得た。この光触媒16は、ナトリウム含有量480ppm、珪素含有量6.7重量%、比表面積207.4m/gであった。よって、光触媒16の表面積1m当りの珪素担持量は0.32mgであった。
(光触媒17)
1規定塩酸水溶液66.9gの代わりに1規定硝酸水溶液81.7gを用いたこと、異なる組成の珪酸ナトリウム水溶液(SiO含有量29.1重量%、NaO含有量9.5重量%、JIS K1408“水ガラス3号”)13.3gを用いたこと、の他は、光触媒9の製法と同様にして、光触媒17を得た。この光触媒17は、ナトリウム含有量150ppm、珪素含有量3.4重量%、比表面積210.5m/gであった。よって、光触媒17の表面積1m当りの珪素担持量は0.16mgであった。
(光触媒18)
焼成温度を600℃の代わりに200℃にしたこと、の他は、光触媒2の製法と同様にして、光触媒18を得た。この光触媒18は、ナトリウム含有量56ppm、珪素含有量2.4重量%、比表面積237.3m/gであった。よって、光触媒18の表面積1m当りの珪素担持量は0.10mgであった。
(光触媒19)
水ガラス3号の代わりにケイ酸カリウム溶液(和光純薬工業、SiO含有量28重量%)13.8gを用いたことの他は、光触媒17の製法と同様の方法で、光触媒19を得た。この光触媒19のナトリウム、カリウム含有量を原子吸光光度計(Z−5000,日立製作所)にて定量したところ、ナトリウム含有量は74ppm、カリウム含有量は90ppmであった。この結果、光触媒19は、その酸化珪素膜中にカリウムを含有していることが確認された。また、この光触媒19の珪素含有量を蛍光X線分析法(LAB CENTER XRE−1700,島津製作所)にて定量したところ、珪素含有量は4.9重量%であり、比表面積をBET法比表面積測定装置により測定したところ193.9m/gであった。よって、光触媒19の表面積1m当りの珪素担持量は0.25mgであった。光触媒19の細孔分布を測定した結果を図4に示す。
(光触媒20)
市販の二酸化チタン(石原産業株式会社、ST−01)を200℃、3時間乾燥し、光触媒20を得た。この光触媒20は、ナトリウム含有量1400ppm、比表面積214.3m/gであった。
(光触媒21)
市販の二酸化チタン(日本アエロジル株式会社、P25)を200℃、3時間乾燥し、光触媒21を得た。この光触媒21はアルカリ金属が検出されなかった。比表面積50.2m/gであった。
この結果、光触媒5は、その焼成酸化珪素膜中にナトリウムを、光触媒19はその焼成酸化珪素膜中にカリウムを含有していることが確認された。
ナトリウム含有量あるいは20〜500オングストロームの領域における、酸化珪素膜由来の細孔の有無による性能の差異を確認するために光触媒22〜26の調製を行った。
(光触媒22)
特許文献6(特開昭62−260717号)の実施例(製造例1)に則して、二酸化チタンとしてST−01(石原産業株式会社、吸着水分量9重量%、比表面積300m/g)を用いて実施し、光触媒22を得た。この光触媒22は、ナトリウム含有量1200ppm、珪素含有量5.8重量%、比表面積187.3m/gであった。よって、光触媒22の表面積1m当りの珪素担持量は0.31mgであった。光触媒22の細孔分布を測定した結果を図5に示す。
(光触媒23)
特許文献6(特開昭62−260717号)の実施例(製造例1)に則して、二酸化チタンとしてP25(日本アエロジル株式会社、純度99.5%、比表面積50.8m/g)を用いて実施し、光触媒23を得た。この光触媒23はアルカリ金属が検出されなかった。また、この光触媒23は、珪素含有量2.2重量%、比表面積38.7m/gであった。よって、光触媒23の表面積1m当りの珪素担持量は0.56mgであった。光触媒23の細孔分布を測定した結果を図6に示す。
(光触媒24)
ガラスフラスコに水250gと0.1N水酸化ナトリウム水溶液0.05gを加え、二酸化チタン(ST−01、石原産業株式会社、吸着水分量9重量%、比表面積300m/g)24.5gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水100gと珪酸ナトリウム水溶液(SiO含有量36.1重量%、NaO含有量17.7重量%、JIS K1408“水ガラス1号”)10.7gを加え、攪拌しB液とした。A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分で滴下し、混合液Cを得た。この時点における混合液CのpHは11.5であった。混合液Cを35℃に保持したまま3日間攪拌を継続した。この後、混合液Cを減圧ろ過し、得られた濾物を、500mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、室温で2日間放置した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、600℃、3時間焼成処理を施し、光触媒24を得た。この光触媒24は、ナトリウム含有量14000ppm、珪素含有量3.4重量%、比表面積126.1m/gであった。よって、光触媒24の表面積1m当りの珪素担持量は0.27mgであった。光触媒24の細孔分布を測定した結果を図7に示す。
(光触媒25)
ガラスフラスコに水100gを入れ、二酸化チタン(P−25、日本アエロジル株式会社、純度99.5%、BET法比表面積測定装置による比表面積50.8m/g)10.0gを分散させて、A液とした。これに4規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に調整した。そして、液温75℃まで加熱し、75℃を維持したまま、珪酸ナトリウム水溶液(SiO含有量29.1重量%、NaO含有量9.5重量%、JIS K1408“水ガラス3号”)14.8gを加え、攪拌しB液とした。B液を90℃まで加熱し、90℃を維持したまま、1規定の硫酸水溶液を2ml/分の速度で滴下し、C液とした。硫酸水溶液の滴下に伴い、混合液のpHは10.5から少しずつ酸性側へ低下し、最終的にC液のpHは5となった。その後、C液を90℃に保持したまま1時間攪拌を継続して熟成した。次に、熟成後のC液を減圧ろ過し、得られた濾物を、250mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、120℃で3時間乾燥した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、600℃、3時間焼成処理を施し、光触媒25を得た。この光触媒25は、ナトリウム含有量2500ppm、珪素含有量13.0重量%、比表面積68.4m/gであった。よって、光触媒25の表面積1m当りの珪素担持量は1.90mgであった。
(光触媒26)
ガラスフラスコに水100gを入れ、二酸化チタン(ST−01、石原産業株式会社、吸着水分量9重量%、BET法比表面積測定装置による比表面積300m/g)4.2gを分散させて、A液とした。ビーカー内に水43gと珪酸ナトリウム水溶液(SiO含有量29.1重量%、NaO含有量9.5重量%、JIS K1408“水ガラス3号”)5.6gを加え、攪拌しB液とした。次に、A液を35℃に保持し、攪拌しているところに、B液を2ml/分の速度で滴下した。この時、混合液のpHが6〜8になるように、適宜1規定硝酸水溶液を滴下した。B液の滴下完了時における混合液のpHは7.0であった。その後、混合液を35℃に保持したまま16時間攪拌を継続して熟成した。この後、混合液を減圧ろ過し、得られた濾物を、250mLの水への再分散化、および減圧ろ過を4回繰り返して洗浄した後、120℃で3時間乾燥した。得られた固形物を乳鉢で粉砕した後、600℃、3時間焼成処理を施し、光触媒26を得た。この光触媒26は、ナトリウム含有量5900ppm、珪素含有量12.0重量%、比表面積258.3m/gであった。よって、光触媒26の表面積1m当りの珪素担持量は0.47mgであった。光触媒26の細孔分布を測定した結果を図8に示す。
(光触媒27)
シリカ水和物被膜との差異を確認するために特許文献7の実施例1を参考にして、硫酸チタニル水溶液を熱加水分解して結晶粒子径6nmのメタチタン酸スラリーを作成した。このメタチタン酸スラリー(TiO換算で100g/l)100mlを40℃に昇温し、SiOとして200g/lのケイ酸ナトリウム水溶液5ml(SiO/TiO重量比=0.1)を一定速度で10分を要して添加した。添加後、水酸化ナトリウムでpH4.0に調節し、40℃を維持しながら30分攪拌した。その後スラリーを濾過、水洗し、得られたケーキを110℃で12時間乾燥した後、サンプルミルを用いて粉砕し、光触媒27を得た。この光触媒27は、ナトリウム含有量210ppm、珪素含有量5.1重量%、比表面積140.0m/gであった。よって、光触媒27の表面積1m当りの珪素担持量は0.36mgであった。得られた光触媒27の特性をまとめて表1に示す。
<光触媒1〜27の評価>
[1.メチレンブルー光分解活性評価]
光触媒1〜27を、メチレンブルー水溶液に懸濁させた。その後、光照射を行い、液中のメチレンブルー濃度を分光分析で定量することにより、光分解活性を試験した。詳細な試験操作方法は、次のとおりである。
(光触媒懸濁液の調製)
あらかじめフッ素樹脂製攪拌子を入れた100ccポリエチレン製広口びんに、濃度40×10−6mol/Lのメチレンブルー水溶液を45g量りこんだ。次に、マグネチックスターラーによる攪拌下、10mgの光触媒を加えた。そして、5分間激しく攪拌した後に、液が飛び散らない程度に攪拌強度を調整し、攪拌を継続した。
(予備吸着処理)
光触媒を加え終わった瞬間を起点として、60分間、光照射せずに、攪拌し続けた。60分経過後、懸濁液を3.0cc採取し、光照射前サンプルとした。
(光分解処理)
予備吸着処理後の懸濁液を3.5cc抜き出し、あらかじめフッ素樹脂製攪拌子を入れた石英製標準分光セル(東ソー・クォーツ株式会社、外寸12.5×12.5×45mm、光路幅10mm、光路長10mm、容積4.5cc)に入れ、マグネチックスターラーで攪拌した。次に、分光セルの外部/横方向から光を5分間照射した。光照射は、光源装置SX−UI151XQ(ウシオ電機株式会社、150Wクセノンショートアークランプ)を光源として、純水を満たした石英製フィルター容器越しに行った。照射光量は、紫外線照度計UVD−365PD(ウシオ電機株式会社、試験波長365nm)で、5.0mW/cmであった。照射後、分光セル内の懸濁液を回収し、光照射後サンプルとした。
(メチレンブルーの定量)
オールプラスチックス製10ccシリンジにメンブレンフィルター(東洋濾紙株式会社、DISMIC−13HP)を装着した。これに、光照射前後のサンプル懸濁液をそれぞれ入れ、ピストンで押出して光触媒を除去した。その際、前半量のろ液は廃棄し、後半量のろ液を、可視光分析用セミマイクロ型ディスポセル(ポリスチレン製、光路幅4mm、光路長10mm、容積1.5cc)に採取した。そして、紫外可視分光分析装置(UV−2500、島津製作所)を使用して、波長680ナノメートルの吸光度を測定し、メチレンブルー濃度を算定した。
光分解活性は、光照射前のメチレンブルー濃度に対する光照射後のメチレンブルー濃度で評価した。光分解活性としてのメチレンブルー除去率を表1に示した。また、メチレンブルーの仕込濃度(光触媒を加える前のメチレンブルーの濃度)を基準として、光照射前のメチレンブルー濃度から、メチレンブルー吸着率を算出し、表1に併記した。
[2.細孔分布測定による酸化珪素膜由来の細孔有無の判定]
オートソーブ(カンタクローム社製)を使用し、液体窒素下(77K)における脱着過程での光触媒1〜27の窒素吸着等温線を測定した。
各光触媒の前処理として、100℃での真空脱気を行った。次に各光触媒の測定結果をBJH法で解析し、log微分細孔容積分布曲線を求めた。
次に、光触媒1〜27の酸化珪素膜由来の細孔の有無を判定した。具体的には、原料として使用した光触媒と、この光触媒を基体(ベース触媒)として用いて調製した、酸化珪素膜で被覆された光触媒のlog微分細孔容積分布曲線を比較して、酸化珪素膜由来の細孔の有無を判定した。
光触媒1〜27の20〜500オングストロームの領域における、酸化珪素膜由来の細孔の有無を表1に示す。
Figure 2008045221

光触媒1〜19は、良好な触媒活性を示すことが確認された。
[3.示差熱天秤分析]
酸化珪素被覆光触媒の水分含有量を調べるために、示差熱天秤分析(サーモプラスTG8120、リガク)を行った。流量50ml/分の空気気流中、室温から600℃まで、10℃/分で昇温し、その際の重量減少率を測定した。
各試料は乾燥あるいは焼成後の水分吸着の影響をできるだけ排除するため、乾燥あるいは焼成し冷却1h後に測定した。光触媒1、5、18、27の水分含有量を表2に示す。
Figure 2008045221
上記で得られた光触媒のうちの一部について、繊維処理剤を作製し、評価を行った。
光触媒1を15.0g、300mLポリエチレン製広口瓶に入れ、直径1mmのガラスビーズを150g、水150g、並びに、界面活性剤(Triton X−100、ユニオン・カーバイド社登録商標)0.5gを加え、密封した。これを振動ミルにセットし、1時間分散化処理を施した。処理後広口瓶を取り出し、ナイロン製メッシュシートでガラスビーズをろ別した。この溶液の光触媒1の平均粒子径を粒度分析計(Microtrac UPA−150、Leeds&Nothrop社製)で測定したところ、0.8μmであった。この溶液200gに結着剤としてアクリル系樹脂エマルジョン(三井化学社製、商品名 アルマテックスE373、固形分濃度:45%)10.0g添加し均一に混合して、繊維処理剤1を得た。
実施例1の振動ミル分散化後の溶液200gにモンモリロナイト(アメリカンコロイド株式会社製:商品名「ポーラゲル」、平均粒子径=約5μm)15.0gを添加し、室温で1時間攪拌し、アクリル系樹脂エマルジョン(三井化学社製、商品名 アルマテックスE373、固形分濃度:45%)を10.0g添加し均一に混合して、繊維処理剤2を得た。
(比較例1)
光触媒20を使用する他は、実施例1と同様の操作を行い、繊維処理剤3を得た。実施例2と同様に分散処理後の光触媒20の粒子径を測定したところ0.8μmであった。
(比較例2)
比較例1で得られる、振動ミル分散化後の溶液200gを使用する他は実施例2と同様の操作を行い、繊維処理剤4を得た。
10cm×10cmの木綿の布を繊維処理剤1に浸漬した後、圧搾し直射日光の当たらない屋外で自然乾燥させた。布への光触媒処理量は、浸漬圧搾後の重量を調製して、光触媒として0.5g/mとした(布1)。
繊維処理剤2を使用する他は、実施例3と同様の操作を行い繊維処理剤2で処理した布2を得た。
(比較例3)
繊維処理剤3を使用する他は、実施例3と同様の操作を行い繊維処理剤3で処理した布3を得た。
(比較例4)
繊維処理剤4を使用する他は、実施例3と同様の操作を行い繊維処理剤4で処理した布4を得た。
(比較例5)
繊維処理剤で処理しない布を用意した(未処理布)。
[消臭性評価]
3リットルのテドラーバッグに繊維処理剤で処理した布1〜4および未処理の布を装入し、20ppmのアセトアルデヒドを含む調製ガス2リットルで置換後、ブラックライト(紫外線強度:1.0mW/cm)を6時間照射した後、アセトアルデヒドガスを検知管で測定した。結果を表3に示す。
[抗菌性評価]
繊維処理剤で処理した布1〜4および未処理の布をを、光の当らない室内にて、24時間大気中に放置し、その後、1時間日光に暴露した。その後、フードスタンプ(一般細菌用標準寒天培地、日水製薬株式会社製)を用いて各布上の生菌を採取し、培養後のコロニーを下記基準で判定し、抗菌性を評価した。結果を表3に示す。
○:コロニーなし
×:コロニー発生
Figure 2008045221

光触媒1のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒20)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒5のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒21)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒15のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒20)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒19のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒20)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒22のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒20)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒23のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒21)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒24のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒20)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。 光触媒26のlog微分細孔容積分布曲線(実線)と、この光触媒の基体に該当する酸化珪素膜を有しない光触媒(光触媒20)のlog微分細孔容積分布曲線(点線)とを示す図である。

Claims (16)

  1. 光触媒を含む繊維処理剤であって、
    該光触媒が、
    光触媒活性を有する基体と、
    該基体を被覆する、実質的に細孔を有さない酸化珪素膜とを有し、
    該光触媒のアルカリ金属含有量が1ppm以上1000ppm以下である
    ことを特徴とする光触媒含有繊維処理剤。
  2. 前記光触媒の平均粒子径が0.005〜10μmの範囲にある請求項1に記載の光触媒含有繊維処理剤
  3. 光触媒を繊維表面に固定化する結着剤を含む請求項1または2に記載の光触媒含有繊維処理剤
  4. 前記光触媒が、難分解性化合物に固定化された状態で含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤
  5. 前記酸化珪素膜が、酸化珪素の焼成膜であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の光触媒含繊維処理剤。
  6. 前記酸化珪素膜が、200℃以上1200℃以下の温度で焼成して得られる焼成膜であることを特徴とする、請求項5に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  7. 前記アルカリ金属含有量が10ppm以上1000ppm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光触媒含繊維処理剤。
  8. 窒素吸着法による20〜500オングストロームの領域の細孔径分布測定において、酸化珪素膜由来の細孔がないことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  9. 前記基体が、アナターゼ型、ルチル型、あるいはこれらの混合物を含む酸化チタンであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  10. 前記アルカリ金属が、ナトリウムおよび/またはカリウムであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  11. 前記光触媒の表面積1mあたりの珪素担持量が、0.10mg以上、2.0mg以下であることを特徴とする特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  12. 前記基体の比表面積が120m/g以上、400m/g以下であることを特徴とする請求項11に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  13. 硫黄元素の含有量が、光触媒の全体重量を基準として、0.5重量%以下であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  14. 前記酸化珪素膜にアルカリ金属が含まれることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  15. 前記酸化珪素膜に含まれるアルカリ金属の含有量が、光触媒の全体重量を基準として、1ppm以上200ppm以下であることを特徴とする、請求項14に記載の光触媒含有繊維処理剤。
  16. 請求項1から15のいずれか一項に記載の光触媒繊維処理剤を用いて、前記光触媒を固定化してなる光触媒含有繊維製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP5633371B2 (ja) * 2008-07-07 2014-12-03 旭硝子株式会社 コア−シェル粒子の製造方法
CN116440958A (zh) * 2023-04-26 2023-07-18 南京工程学院 一种蜘蛛丝负载硫化物空心纳米管复合材料及其制备方法和应用

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