JP2010069711A - 液体吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライバICの発する熱量によって、液体吐出ヘッドの液体流路内の液体および液体流路に流入する液体を温めて液体粘度を低くする。
【解決手段】インクジェットヘッド1には、ドライバIC51a〜51dが固定されている。第1推定部163は、印字期間内にヘッド1内に流入するインクがヘッド1から奪う熱量Q1を推定する。第2推定部164は、ドライバIC51a〜51dが吐出信号を個別電極に供給することによって、印字期間内にドライバIC51a〜51dが発する熱量Q2を推定する。振動制御部162は、ヘッド1内のインク温度が所定温度未満のときに、印字期間内の少なくとも1つの印字周期において、個別電極に対して、非吐出信号の代わりに振動信号を供給することで、ドライバIC51a〜51dが発する熱量が熱量Q1から熱量Q2を差し引いた熱量Q3を超えるように出力回路52を制御する。
【選択図】図9

Description

本発明は、液滴を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置に関する。
特許文献1には、流路ユニットと、流路ユニットの上面に固定されたアクチュエータユニット及びドライバICとを有するインクジェットヘッドを含むインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置においては、ドライバICに内蔵された温度センサが所定温度以下の温度を検知すると、制御部はドライバICが非吐出信号をアクチュエータユニットに供給するように、ドライバICを制御する。このとき、ドライバICの熱が、流路ユニットを介してアクチュエータユニットに伝達される。このため、アクチュエータユニットの環境温度が、それ自身の発熱とドライバICからの熱との相乗効果により上昇する。この結果、環境温度によるアクチュエータユニット内の活性部の変位量の変化に起因した印刷品質の悪化を抑制することができる。
特開2006−272909号公報
上記特許文献1に記載のインクジェット記録装置においては、主にアクチュエータユニットの環境温度を所定値以上に保つ制御が行われているが、低温のインクがインクジェットヘッドに流入した場合に、ドライバICを発熱させる制御を行っていない。このため、ヘッド内に流入した低温のインクによって、ヘッド内のインク温度が低下しインク粘度が増大する。このようにインク粘度が増大すると、インクに対する流路抵抗が大きくなってノズルからインクを吐出できない又は吐出量の減少する虞が生じる。
一方、粘度が増大したインクをノズルから常温時と同じ量だけ吐出させるために、インクに付与する吐出エネルギーを大きくすると、インク吐出に係る消費電力が大きくなる。また、インクジェットヘッドにヒータも設けてヘッド内のインク粘度の増大を抑制することは可能であるが、製造コストが増加する。
そこで、本発明の目的は、ドライバICの発する熱量によって、液体吐出ヘッドの液体流路内の液体および液体流路に流入する液体を温めて液体粘度を低くすることが可能な液体吐出装置を提供することである。
本発明の液体吐出装置は、液滴を吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口をそれぞれ一端とする複数の個別液体流路を含む液体流路と、前記個別液体流路の液体に前記吐出口から液滴を吐出させる吐出エネルギーを付与する複数のアクチュエータとを有し、駆動データにしたがって液滴が作る画素の有無によって記録媒体上に画像を形成する液体吐出ヘッドと、前記液体流路内の液体の第1液体温度を検出する第1温度センサと、前記液体流路に流入する液体の第2液体温度を検出する第2温度センサと、前記液体吐出ヘッドと熱的に結合して配置されているとともに、前記吐出口から液滴を吐出させる吐出信号、前記吐出口から液滴を吐出させないと共に当該吐出口近傍の液体を振動させない非吐出信号および前記吐出口から液滴を吐出させずに当該吐出口近傍の液体を振動させる振動信号を生成し且つ生成した信号を前記複数のアクチュエータに供給する信号生成回路を有するドライバICと、前記ドライバICを制御する制御部とを備えている。そして、前記制御部が、各印字周期において各吐出口から吐出される液滴量を示す前記駆動データを記憶する記憶手段と、所定期間内に前記液体流路に流入する液体が前記液体吐出ヘッドから奪う第1熱量を、記憶された前記駆動データに基づいて前記複数の吐出口から液滴が吐出されることによって前記液体流路に流入する液体量、前記第1及び前記第2液体温度から推定する第1推定手段と、前記信号生成回路が前記複数のアクチュエータに前記吐出信号を供給することによって前記ドライバICが前記所定期間内に発する第2熱量を、前記記憶された駆動データに基づいて推定する第2推定手段と、前記記憶された駆動データにしたがって各印字周期において各アクチュエータに前記吐出信号、前記非吐出信号及び前記振動信号のいずれかが供給されるように、前記信号生成回路に前記吐出信号、前記非吐出信号および前記振動信号を生成させる信号生成制御手段とを含み、前記信号生成制御手段は、前記第1液体温度が所定温度未満の場合に、前記所定期間内の少なくとも1つの印字周期において、少なくとも1つの前記アクチュエータに対して、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給することで前記第1熱量から前記第2熱量を差し引いた第3熱量を超えるように、前記信号生成回路を制御して前記ドライバICから発せられる熱量を増やす。ここでいう所定期間とは、ある一定の期間であればよく、記録媒体に対する印字期間、それ以上の期間、及び、それ未満であって1印字周期を超える期間をも含む。
これによると、液体流路内および液体流路に流入する液体の液体温度が低く液体の粘度が高くなっていても、ドライバICが第3熱量を超える熱量を発するように信号生成制御手段が信号生成回路を制御するので、ドライバICの発する熱量によって液体流路内および液体流路に流入する液体が所定温度に近づくように温められ、液体粘度が低くなる。そのため、吐出口から常温時と同じ量の液滴を吐出するための液体に対する吐出エネルギーを増加させる必要がなくなり、液体吐出に係る消費電力を維持することが可能となる。また、液体流路内および液体流路に流入する液体を加熱するためのヒータを別途設ける必要がなくなり、製造コストを低下させることが可能となる。また、発熱したドライバICを冷却するためのヒートシンクを設ける必要がなくなり、液体吐出ヘッドの構成を簡素化することができる。
本発明において、前記信号生成制御手段は、前記液体流路内の液体および前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体を前記所定温度以上に加熱するように、前記信号生成回路を制御することが好ましい。これにより、液体流路内および液体流路に流入する液体の温度を所定温度以上に加熱することが可能になって、液体に対する吐出エネルギーを確実に維持することが可能となる。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、1印字周期を単位として前記所定期間内に前記振動信号が供給される前記アクチュエータの延べ数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことが好ましい。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、前記非吐出信号の代わりに供給される前記振動信号に含まれるパルスの数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことが好ましい。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、前記振動信号の駆動電圧を高くすることで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことが好ましい。
これにより、第1液体温度と第2液体温度との差が大きいほど、ドライバICが発する熱量が大きくなって、液体流路内および液体流路に流入する液体を効果的に加熱することができる。
また、本発明において、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給しても、前記ドライバICから前記第3熱量を超える熱量を発することができないときには、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、前記印字周期を長くすることが好ましい。これにより、ドライバICが発する熱がヘッド全体に伝わりやすくなって、液体流路内および液体流路に流入する液体を効果的に加熱することができる。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記印字周期を単位として前記所定期間内に前記振動信号が供給される前記アクチュエータの延べ数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことが好ましい。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記非吐出信号の代わりに供給される前記振動信号に含まれるパルスの数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことが好ましい。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記振動信号の駆動電圧を高くすることで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことが好ましい。
これにより、液体流路に流入する液体が多いほど、ドライバICが発する熱量が大きくなって、液体流路内および液体流路に流入する液体を効果的に加熱することができる。
また、本発明において、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給しても、前記ドライバICから前記第3熱量を超える熱量を発することができないときには、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記印字周期を長くすることが好ましい。これにより、ドライバICが発する熱がヘッド全体に伝わりやすくなって、液体流路内および液体流路に流入する液体を効果的に加熱することができる。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、電源投入時において、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度が前記所定温度未満のときに、前記振動信号を複数の前記アクチュエータに供給することが好ましい。これにより、装置本体に電源が投入されたときであって第1液体温度が所定温度未満のときに、液体流路内の液体が加熱されるので、吐出不良が生じにくくなる。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記所定期間内において、前記信号生成回路を制御して、記録媒体に印字をしない非印字期間に複数の前記アクチュエータに前記振動信号を供給することが好ましい。これにより、非印字期間においてもドライバICを発熱させることが可能になるので、液体を効果的に加熱することができる。
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドの前記液体流路が、液体供給源からの液体を一時的に貯留するリザーバ流路と、前記リザーバ流路と前記個別液体流路とを繋ぐ共通液体流路とをさらに有しており、前記ドライバICが、前記液体吐出ヘッドの前記リザーバ流路の一部を画定する部材に熱的に結合されていることが好ましい。これにより、共通液体流路及び個別液体流路よりも上流にあるリザーバ流路内の液体を、リザーバ流路の一部を画定する部材を介して加熱することが可能となる。
また、このとき、前記液体吐出ヘッドが、前記リザーバ流路を含む第1流路部材と、前記複数の吐出口、前記複数の個別液体流路、前記共通液体流路および前記複数のアクチュエータを含む第2流路部材との積層体であって、前記第2流路部材は、前記第1流路部材に比べて熱容量が小さく、且つ前記第1流路部材を介して前記ドライバICと熱的に結合されていてもよい。これにより、ドライバICからの熱が熱容量の大きい第1流路部材によって拡散され、第2流路部材が第1流路部材との接合面から均一に加熱される。このため、第2流路部材は、ドライバICが直接、第2流路部材に熱的に結合されている場合に比べて、ドライバICの配置や発熱量の違いに基づく熱変動の影響を受けにくい。
また、このとき、前記リザーバ流路の一部を画定する部材が前記リザーバ流路とともに一方向に沿って長尺に延在しており、前記ドライバICが、前記リザーバ流路の一部を画定する部材に前記一方向に沿って複数設けられており、前記第1温度センサが、前記ドライバICに隣接して複数設けられていてもよい。これにより、リザーバ流路内の液体温度を精度良く検出することが可能となる。
また、このとき、前記信号生成制御手段は、複数の前記第1温度センサによって検出された液体温度に応じて、前記ドライバICが発する熱量を個別に制御していてもよい。これにより、液体を加熱するための複数のドライバICの駆動を必要最低限に抑えることが可能になる。
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドと熱的に結合して配置されているヒータをさらに備え、前記信号生成制御手段は、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給しても、前記ドライバICから前記第3熱量を超える熱量を発することができないときには、前記ヒータを駆動して前記ドライバICから発せられる熱量を補足することが好ましい。これにより、ドライバICの発熱だけでは足りない熱量をヒータで補うことができる。そのため、確実な液体の温度制御が可能になる。
また、このとき、複数の前記アクチュエータからそれぞれなる複数のアクチュエータユニットが、前記一方向に沿って配置され、前記アクチュエータユニットの配置に対応して、前記共通液体流路、前記ドライバIC、前記ヒータ及び前記第1温度センサがそれぞれ配置されていてもよい。これにより、アクチュエータユニットの配置に対応する共通液体流路毎に、きめ細かい液体の温度制御が可能になる。
また、本発明において、前記信号生成制御手段は、前記第1液体温度が前記所定温度以上の場合には、所定回数の前記印字周期に亘って前記非吐出信号が供給される前記アクチュエータに対して、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給することが好ましい。これにより、振動信号の供給により吐出口近傍の液体が撹拌されるので、液体の増粘による吐出不良を抑制することが可能となる。
本発明の液体吐出装置によると、液体流路内および液体流路に流入する液体の液体温度が低く液体の粘度が高くなっていても、ドライバICが第3熱量を超える熱量を発するように信号生成制御手段が信号生成回路を制御するので、ドライバICの発する熱量によって液体流路内および液体流路に流入する液体が所定温度に近づくように温められ、液体粘度が低くなる。そのため、吐出口から常温時と同じ量の液滴を吐出するための液体に対する吐出エネルギーを増加させる必要がなくなり、液体吐出に係る消費電力を維持することが可能となる。また、液体流路内および液体流路に流入する液体を加熱するためのヒータを別途設ける必要がなくなり、製造コストを低下させることが可能となる。また、発熱したドライバICを冷却するためのヒートシンクを設ける必要がなくなり、液体吐出ヘッドの構成を簡素化することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態のインクジェットプリンタの内部構成を示す概略図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ101は直方体形状の筐体101aを有しており、その内部には上から順に3つの空間A,B,Cに区分されている。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1、及び、搬送機構16が配置されている。空間Aの天井部は、排紙部15となっている。空間Bには、筐体101aに対して着脱可能な給紙ユニット101bが配置されており、空間Cには、筐体101aに対して着脱可能なインクタンクユニット101cが配置されている。また、筐体101a内には、インクジェットヘッド1及び搬送機構16の動作を制御する制御部100が設けられている。
インクジェットプリンタ101の内部には、給紙ユニット101bから排紙部15に向けて、図1に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙ユニット101bは、給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pを積層した状態で収納する。給紙ローラ12は、給紙トレイ11の最も上方にある用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pは、ガイド13a,13bによりガイドされ、且つ送りローラ対14によって挟持されつつ搬送機構16へと送られる。
搬送機構16は、図1に示すように、2つのベルトローラ6,7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6,7の間に架け渡されるように巻回されたエンドレスのベルトである。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されており、搬送ベルト8にテンションを付加している。プラテン18は、搬送ベルト8によって囲まれた領域内に配置されている。また、プラテン18は、インクジェットヘッド1と対向する位置において、搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸に搬送モータ19から駆動力が与えられることで、図1中時計回り方向に回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行することによって、図1中時計回り方向に回転する。
搬送ベルト8の外周面8aにはシリコーン処理が施されており、粘着性を有している。ベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット101bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。外周面8aに押さえ付けられた用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されながら用紙搬送方向(図1中右方であって副走査方向)へと搬送される。
また、ベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a,29bによりガイドされ、且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送され、筐体1a上部に形成された開口30から排紙部15へと排出される。
4つのインクジェットヘッド1は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応しており、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。また、4つのインクジェットヘッド1は、用紙Pの搬送方向Aに沿って並べて固定されている。つまり、このプリンタ101はライン式のプリンタである。
インクジェットヘッド1の底面は、インクを吐出する複数の吐出口108(図6及び図7参照)が形成された吐出面2aとなっている。搬送される用紙Pが4つのインクジェットヘッド1のすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面に向けて吐出口108から各色のインクが順に吐出される。これにより、用紙Pの上面、すなわち、印刷面に所望のカラー画像が形成される。
インクジェットヘッド1は、インクタンクユニット101c内のインクタンク(液体供給源)17とそれぞれ接続されている。すなわち、4つのインクタンク17には対応するヘッド1の色のインクが貯留されており、各インクタンク17からチューブ3(図2参照)を介してインクジェットヘッド1内のインク流路(液体流路)にインクが供給される。
次に、図2〜図4を参照しつつインクジェットヘッド1について詳細に説明する。図2は、図1に示すインクジェットヘッド1及びインクタンク17の概略斜視図である。図3は、図2に示すインクジェットヘッド1の断面図である。図4は、図2に示すインクジェットヘッド1の平面図である。図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド1は、ヘッド本体(第2流路部材)2と、ヘッド本体2の上面に固定されたリザーバユニット(第1流路部材)70とを有している。なお、4つのインクジェットヘッド1は、どれも同じ構成を有しているため、1つのインクジェットヘッド1について説明する。
リザーバユニット70は、図3に示すように、矩形平面形状の3枚の金属プレート71〜73が積層された主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。また、リザーバユニット70の内部には、ヘッド1のインク流路の一部を構成するインク流入流路71a、リザーバ流路74、及び、8個のインク流出流路73aが互いに連通するように形成されている。なお、図3においては、1つのインク流出流路73aのみが表れている。
インク流入流路71aには、チューブ3が接続されており、チューブ3を介してインクが流入する。なお、チューブ3の途中部位には、温度センサ(第2温度センサ)98が設けられている(図2及び図9参照)。温度センサ98は、インクジェットヘッド1の外部のインク(インクジェットヘッド1に流入するインク)の温度を検出し、制御部100にその検出信号を送信する。本実施形態では、温度センサ98がインクタンク17の出口近傍でチューブ3の温度を測定可能に配置されている。
リザーバ流路74は、インクタンク17から供給されたインクを一時的に貯溜する。リザーバ流路74(74a〜74d)は、図4に示すように、主走査方向に沿って長尺に延在しており、ヘッド1内に形成された流路のうち、最も大きい容積を有している。
プレート73の下面は、後述のFPC(フレキシブル基板)50との間に間隙が形成されるように、凹凸面となっている。プレート73は下面の凸部によって流路ユニット9(後述する)に固定され、リザーバ流路74は凸部内に形成されたインク流出流路73aによって流路ユニット9のインク供給口105b(後述)と連通している。これによって、インクタンク17からのインクは、インク流入流路71a、リザーバ流路74及びインク流出流路73aを順に通過し、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
リザーバユニット70には、図4に示すように、各側面70b,70cに2つずつ、合計4つのヒータ97a〜97dが固定されている。これら4つのヒータ97a〜97dは、図3に示すように、インク流出流路73aに対応して配置されている。ヒータ97a〜97dは、制御部100の制御により通電されることで発熱し、リザーバ流路74を主走査方向に4等分した部分流路74a〜74d内のインクを個別に加熱する。より具体的には、ヒータ97a〜97dは、リザーバ流路74のインク流出流路73a近傍のインクを主に加熱する。
また、リザーバユニット70には、各側面70b,70cに2つずつ、合計4つの温度センサ(第1温度センサ)99a〜99dが固定されている。これら4つの温度センサ99a〜99dは、副走査方向に関して、ヒータ97a〜97dとそれぞれ対向する位置に配置されており、4等分した部分流路74a〜74d内のインク温度を個別に検出する。これにより、リザーバ流路74内のインク温度を精度良く検出することが可能となる。そして、4つの温度センサ99a〜99dは、その検出信号を制御部100に送信する。
ヘッド本体2は、図3に示すように、流路ユニット9と4つのアクチュエータユニット21とが接着剤で接合されてなり、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。各アクチュエータユニット21の上面には、FPC50の一端が固定されており、FPC50がプレート73の下面の凹部による開口から外部に引き出されている。4つのFPC50には、図2及び図4に示すように、ドライバIC51a〜51dがそれぞれ実装されている。ドライバIC51a〜51dは、アクチュエータユニット21を駆動する信号(具体的には、後述する吐出信号、非吐出信号、振動信号)を生成し、個別電極135(図8参照)に連続的に出力する。これらFPC50の他端は、制御部100に電気的に接続されており、制御部100がドライバIC51を介してアクチュエータユニット21の駆動を制御する。
4つのドライバIC51a〜51dは、図2〜図4に示すように、リザーバユニット70の上面70aに固定されている。より具体的には、リザーバ流路74の一部を画定するプレート71に熱的に結合されている。また、4つのドライバIC51a〜51dは、上面70aの副走査方向の中央において、リザーバ流路74の部分流路74a〜74dにそれぞれ対向した状態で主走査方向に等間隔に並んで配置されている。図4に示すように、4つのドライバIC51a〜51dは、部分流路74a〜74d毎に対応する温度センサ99a〜99d及びヒータ97a〜97dとそれぞれ隣接して配置されている。この構成において、制御部100の制御により、ドライバIC51a〜51dが駆動されて発熱すると、その熱がプレート71を介して対応する部分流路74a〜74d内のインクを主に加熱する。このとき、後述するように、ドライバIC51a〜51dの熱がリザーバユニット70を介して流路ユニット9をも加熱する。
次に、図5〜図8を参照しつつ、ヘッド本体2についてさらに詳述する。図5は、ヘッド本体2の平面図である。図6は、図5の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。なお、図6では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方(流路ユニット9の内部)にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。図7は、図4に示すVII−VII線に沿った断面図である。図8は、アクチュエータユニット21の部分断面図である。
図5に示すように、ヘッド本体2は、4つのアクチュエータユニット21が、流路ユニット9の上面9aに固定されている。図7に示すように、流路ユニット9は、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、ドライバIC51から吐出信号が供給されることによって、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
図5に示すように、流路ユニット9は、主走査方向に延在した直方体形状となっている。流路ユニット9の上面9aには、リザーバユニット70のインク流出流路73aに対応して、計8個のインク供給口105bが開口している。これらインク供給口105bは、2つ1組で主走査方向に千鳥状に配置されている。流路ユニット9の内部には、図5及び図6に示すように、組毎にインク供給口105bと連通した4つのマニホールド流路105が形成されている。
4つのマニホールド流路105は、主走査方向に沿って並んで配置されており、鉛直方向に関して、部分流路74a〜74dと対向する位置に配置されている。そして、マニホールド流路105へは、主に対向する部分流路74a〜74dからインクが流れ込む。なお、4つのマニホールド流路105は、流路ユニット9においては互いに独立しているが、リザーバユニット70において互いに連通している。
また、各マニホールド流路105は、互いに平行に且つ主走査方向に延在するように分岐した4つの副マニホールド流路105aをそれぞれ有している。4つの副マニホールド流路105aは、図5及び図6に示すように、鉛直方向に関して、その全体が各アクチュエータユニット21と重なる位置に配置されている。このように、マニホールド流路105及び部分流路74a〜74dは、アクチュエータユニット21に対応して配置され、温度センサ99a〜99d及びヒータ97a〜97dが部分流路74a〜74dに対応して配置されている。つまり、アクチュエータユニット21の配置に対応して、マニホールド流路105、部分流路74a〜74d、温度センサ99a〜99d、及び、ヒータ97a〜97dがそれぞれ設けられている。
また、流路ユニット9は、リザーバユニット70よりもその熱容量が小さく、リザーバユニット70を介して4つのドライバIC51a〜51dと熱的に結合されている。これにより、ドライバIC51a〜51dからの熱が熱容量の大きいリザーバユニット70によって拡散され、流路ユニット9がリザーバユニット70との接合面から均一に加熱される。このため、流路ユニット9は、ドライバIC51a〜51dが直接固定(熱的に結合)されているときに比して、ドライバIC51a〜51dの配置や発熱量の違いに基づく熱変動の影響を受けにくい。また、流路ユニット9が加熱されることで、内部のインク流路のインクも加熱される。
本実施形態では、流路ユニット9の上面9aにおいて、複数の圧力室110が主走査方向に等間隔のマトリクス状に並んで16列の圧力室列を構成している。これら圧力室列は、副走査方向に互いに平行に配置されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、アクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側から短辺側に向かって次第に少なくなるように配置されている。吐出口108も、流路ユニット9の下面(吐出面2a)において、これと同様の配置がされている。
図7に示すように、流路ユニット9は、ステンレス鋼など金属材料からなる9枚のプレート122〜130から構成されている。これらプレート122〜130は、主走査方向に長尺な矩形状の平面を有する。
これらプレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、プレート122〜130に形成された貫通孔が連通する。これによって、流路ユニット9内に、ヘッド1のインク流路の一部を構成する、4つのマニホールド流路105(副マニホールド流路105a)及び副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る多数の個別インク流路132が形成される。
次に、流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。リザーバユニット70からインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、各マニホールド流路105において副マニホールド流路105aに分流される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介して吐出口108に至る。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図5に示すように、アクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有している。また、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料から形成され、図8に示すように、3枚の圧電シート141〜143から構成されている。圧電シート141の上面には、圧力室110に対向するようにして、複数の個別電極135が形成されている。個別電極135は、圧力室110に対向して配置された電極部と、圧力室110に対向する領域の外にまで引き出された延出部とを有している。そして、延出部上には、ランド136が形成されている。圧電シート141と圧電シート142との間には、シート全面を覆うように形成された共通電極134が介在している。なお、圧電シート141の上面には、個別電極用のランド136とは別に、共通電極用のランド136も形成されており、共通電極134が電気的に接続されている。
ランド136及びフレキシブル基板50の内部配線を介して、共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位に保持されている。一方、個別電極135は、ドライバIC51の出力回路52と電気的に接続されており、ドライバIC51から吐出信号、非吐出信号及び振動信号のいずれかが選択的に入力されるようになっている。このように、各アクチュエータユニット21には、個別電極135及び個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分を個別のアクチュエータとして、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれている。
ここで、吐出口108からインク滴を吐出させるためのアクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。圧電層141はその厚み方向に分極されており、個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電層141に対してその分極方向に電界を印加すると、圧電層141における電界印加部分が圧電効果により歪む活性部として働く。この活性部は、電界と分極の方向とが同じときには、厚み方向に伸長し面方向に収縮する。このときの伸長及び収縮に伴う変位量は、厚み方向より面方向の方が大きい。一方、圧力室110に近い下側2枚の圧電層142、143は、外部電界に対して自発的に変位しない非活性層である。
図8に示すように、圧電層143が圧力室110を区画するキャビティプレート122の上面に固定されているため、圧電層141における電界印加部分とその下方の圧電層142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電層141〜143全体が圧力室110に向かって凸になるようにユニモルフ変形する。これにより、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、圧力室110内に圧力波が発生する。そして、発生した圧力波が圧力室110から吐出口108まで伝播することによって吐出口108からインク滴が吐出される。
本実施形態においては、ドライバIC51a〜51dから一又は複数の電圧パルスを含む吐出信号を出力して、予め個別電極135にプラスの所定電位を付与しておき、吐出要求があるごとに一旦個別電極135にグランド電位を付与し、その後所定のタイミングにて再び前記所定電位を個別電極135に付与する。この場合、個別電極135がグランド電位になるタイミングで、圧力室110内に負の圧力波が発生する。負の圧力波は、圧力室110から個別インク流路132の両端に向かって伝搬し、副マニホールド流路105aの出口付近で正に反転して再び圧力室110に戻る。個別電極135に所定電位を付与するタイミングは、この反転した圧力波が圧力室110に戻った時点に相当する。つまり、圧力室110で生じた負圧によって、副マニホールド流路105aからインクが吸い出される。このインクが圧力室110に到達した時点で、個別電極135に所定電位を付与すると、圧力室110内のインクの圧力が上昇し、吐出口108からインク滴が吐出される。
個別電極135に付与される電圧パルスの幅は、後述するように、インクを媒体とした圧力波が副マニホールド流路105aの出口から吐出口108まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)である。吐出信号に含まれる電圧パルスの幅をこのようにすることで、個別インク流路132の両端で反射して正圧となった圧力波と、個別電極135を前記所定電位にしたタイミングに発生した正圧の圧力波とが圧力室110内で重ね合わされるため、電圧パルスの高さを低くしつつインク滴を吐出口108から吐出させることができる。
吐出口108からインク滴を吐出させないようにアクチュエータユニット21を駆動するには、吐出信号に含まれる電圧パルスよりも高さが基準値を超えて低い複数の電圧パルスを含む振動信号、及び/又は、パルス幅がALよりも基準値を超えて狭い若しくは広い複数の電圧パルスを含む振動信号を個別電極135に付与する。いずれの場合も、圧力室110内で発生する圧力波の振幅が、吐出に必要な閾値を超えて大きくならないために吐出口108からインク滴が吐出されず、インクメニスカスに微小な振動が発生する。このインクメニスカスの振動によって、吐出口108近傍のインクは撹拌されるので、乾燥に起因するインクの増粘が抑制される。そのため、インク吐出不良を抑制することができる。なお、本実施形態では、振動信号として、パルス幅がALよりも基準値を超えて狭い電圧パルスを含むものが用いられる。
次に、制御部100について図9を参照しつつ詳細に説明する。図9は、制御部100の機能ブロック図である。制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)と、その他のロジック回路とを有しており、これらが一体となって機能することにより以下に説明する機能部を構築している。なお、図9においては、4つのインクジェットヘッド1のうち1つのみを模式的に示している。
図9に示すように、制御部100は、印刷データ記憶部151、波形記憶部152、信号生成制御部153、及び、搬送制御部154を有している。また、制御部100には、温度センサ98,99a〜99d及びヒータ97a〜97dが接続されている。
印刷データ記憶部151は、図示しないホストコンピュータから転送された印刷データを記憶するものである。印刷データには、用紙Pに形成すべき画像に関する画像データが含まれる。画像データは、画像の各ドットに対応する吐出口108から吐出される液量を示すドットデータの集合体であって、後述の印字制御部161がアクチュエータユニット21を駆動するための駆動データの形式を有している。つまり、駆動データは、各印字周期において各吐出口108から吐出されるインク量を示している。具体的には、駆動データは、各印字周期において各吐出口から吐出されるインク量が、4段階(小量、中量、大量、なし)のいずれであるかを示している。ここで、「小量」は後述する吐出波形W1に相当し、「中量」は後述する吐出波形W2に相当し、「大量」は後述する吐出波形W3に相当し、「なし」は後述する非吐出波形W4(すべて図10参照)に相当する。
波形記憶部152は、12の単位波形を記憶しており、これら12の単位波形を各ドライバIC51a〜51dの出力回路52にパラレルに出力する。本実施形態においては、吐出波形W1,W2,W3と、非吐出波形W4と、振動波形S1,S2とが用意されている(図10参照)。吐出波形W1〜W3は、吐出口108からインクを吐出させる吐出信号を生成するための単位波形である。非吐出波形W4は、吐出口108からインクを吐出させず且つ吐出口108近傍のインクを振動させない非吐出信号を生成するための単位波形である。振動波形S1,S2が、吐出口108からインクを吐出させず且つ吐出口108近傍のインクを振動させる振動信号を生成するための単位波形である。
これら6つの単位波形は、いずれも同じ時間的な長さ(1印字周期)を有しており、1印字周期が50μsec(駆動周波数20kHz)であるときに使用される。なお、1印字周期とは、副走査方向の印字解像度に対応する単位距離(最小ドット間隔)だけ用紙が搬送されるのに要する時間に相当する。
さらに、波形記憶部152には、1印字周期が100μsec(周波数10kHz)であるときに使用される、3つの吐出波形W1´,W2´,W3´、非吐出波形W4´、及び、2つの振動波形S1´,S2´が用意されている。なお、後者の単位波形は、前者の単位波形に前者の1印字周期と同じ長さのハイレベル期間が付加されることで、1印字周期の時間的長さが2倍になるだけなので、図10においては振動波形S1´だけを例示する。
吐出信号、非吐出信号及び振動信号は、上述した12個の単位波形をドライバIC51a〜51dの出力回路52で増幅したもので、ローレベルがグランド電位に、ハイレベルが正の第1所定電位(例えば24V)となっている。係る増幅は、印字周期毎に個別電極135毎に行われ、吐出選択信号及び振動選択信号(後述)に基づいて、12個の単位波形から1個の増幅対象波形が選択される。なお、本実施形態では、振動信号として、上述したものに加えて、振動波形S2、S2’を、ローレベルがグランド電位に、ハイレベルが第1所定電位よりも高い第2所定電位(例えば36V)となるように、ドライバIC51a〜51dの出力回路52で増幅したものも用いられる。
ここで、単位波形について説明する。図10は、出力回路52に出力される単位波形の模式図である。図10に示すように、吐出波形W1,W2,W3は、それぞれ1つ、2つ及び3つのパルスを含んでいる。吐出波形W1〜W3に含まれるパルス(ハイレベルからローレベルに遷移した後にハイレベルに戻るパルス)の幅はいずれもALに等しい。したがって、吐出信号を個別電極135に付与すると、圧力室110内で発生する圧力波の振幅が吐出に必要な閾値を超えて大きくなり、当該吐出口108からはインクが吐出される。このとき、これら吐出波形W1〜W3に含まれるパルス1つが、吐出口108から吐出されるインク滴1つに対応している。1回のインク吐出で吐出されるインク量は一定である。したがって、(吐出波形W1によって吐出されるインク量:小量)=1/2×(吐出波形W2によって吐出されるインク量:中量)=1/3×(吐出波形W3によって吐出されるインク量:大量)の関係がある。また、吐出波形W2,W3におけるパルス間距離は、ALに等しい。ここで、吐出信号が個別電極135に印加されると、対応する吐出口108からは吐出波形W1〜W3の応じた数のインク滴が吐出され、用紙上にはいずれも1つのドットが形成されることになる。
非吐出波形W4は、常にハイレベルを保っている。したがって、非吐出波形W4に基づいて生成された非吐出信号を個別電極135に付与しても、当該吐出口108からはインクが吐出されず、インクメニスカスに微小な振動が発生することもない。
また、振動波形S1,S2は、それぞれ5つ及び10のパルスを含んでいる。これら振動波形S1,S2に含まれるパルスの幅は、いずれもALの半分程度であり、上述した基準値以下となっている。したがって、振動波形S1,S2に基づいて生成された振動信号を個別電極135に付与しても、吐出口108に形成されたインクメニスカスは振動するが、インクは吐出されない。振動信号を個別電極135に付与したときに発生する熱量は、振動信号に含まれるパルス数に比例する。例えば、振動波形S1に基づいて生成された振動信号を個別電極135に付与したときに発生する熱量は、振動波形S2に基づいて生成された振動信号を付与したときに発生する熱量の半分である。また、振動信号を個別電極135に付与したときに発生する熱量は、振動信号に含まれるパルス高さの2乗に比例する。つまり、振動波形S2のハイレベルが第1所定電位となるように増幅した振動信号を個別電極135に付与したときに発生する熱量は、振動波形S2のハイレベルが第2所定電位となるように増幅した振動信号を付与したときに発生する熱量の1/2.25である。
信号生成制御部153は、印字制御部161、振動制御部162、及び、切換部165を含んでいる。印字制御部161は、記憶された駆動データに基づいて、吐出選択信号を出力回路52に出力する。吐出選択信号は、印字周期毎に出力され、各個別電極135に印加される信号の波形(W1〜W4)を指示する。出力回路52は、この吐出選択信号に基づいて、吐出波形W1〜W3及び非吐出波形W4から1つを選択し、その波形をハイレベルが第1所定電位となるように増幅した吐出信号及び非吐出信号として、各個別電極135に印加する。
振動制御部162は、プリンタ101の電源投入時において、温度センサ99a〜99dが検出したリザーバ流路74内の平均インク温度(4つの温度センサ99a〜99dにおける平均値)が所定温度未満のときに、振動選択信号を出力回路52に出力する。このとき、振動選択信号は、平均インク温度が閾値温度未満であれば振動波形S2を指示する信号となり、平均インク温度が閾値温度以上であれば振動波形S1を指示する信号となる。また、このとき、振動信号が供給される個別電極135の数は、検出したインク温度が低くなるほど、増やされる。出力回路52は、この振動選択信号に基づいて、2つの振動波形S1,S2のいずれかを選択し、その波形をハイレベルが第1所定電位となるように増幅した振動信号として、該当する個別電極135に供給する。
これにより、プリンタ101に電源が投入されたときであってインク温度が所定温度未満のときに、印字が行われる前に、ドライバIC51が発熱しリザーバユニット70が加熱される。そのため、リザーバ流路74内のインク、及び、リザーバユニット70を介して流路ユニット9のインク流路内のインクが加熱される。したがって、インクの吐出不良が生じにくくなる。また、検出したインク温度に応じて、選択される振動波形S1,S2が変更され且つ信号を供給する個別電極135の数が変更されるので、消費電力を抑制することが可能となる。
なお、このときの振動制御部162の制御は、ヘッド内のインクが所定温度以上になるようにプリンタ101の電源投入時から所定時間行われるが、この時間が経過するまでに、制御部100に印刷データが送られてきたときには、インクメニスカスの振動を強制的に終了する。一方、所定時間が経過後、制御部100に印刷データが送られてこないときには、印刷データが送られてくるまでの期間、上述の制御を定期的に繰り返し行ってもよい。これにより、インクの吐出不良がより生じにくくなる。
振動制御部162は、第1推定部163及び第2推定部164を含んでいる。第1推定部163は、印字期間(1つの用紙Pに対して印字を開始してから終了するまでの期間)において、記憶された駆動データに基づいて吐出口108からインクを吐出するインク量、すなわち、ヘッド1のインク流路(リザーバ流路74)に流入するインク量Vを予め算出する。また、第1推定部163は、この算出した流入インク量V、温度センサ98が検出したヘッド1に流入するインク温度T、及び、温度センサ99a〜99dが検出したリザーバ流路74内の平均インク温度Tから、印字期間内にヘッド1に流入するインクがインクジェットヘッド1から奪う熱量Qを予め推定する。
具体的には、まず下記の式(1)から、リザーバ流路74にインクが流入することで変化した後のヘッド温度T1´を求める。式(1)は、インク流入前後における熱のつり合いを表している。また、ここでは、温度によるインクの体積変化を無視している。
αTV+αT+βT=αT´(V+V)+βT´V2 ・・・・・(1)
ここで、α:インクの比熱容量(cal/k・cm)、β:リザーバユニット70(流路部分を除く固体部分のみ)の比熱容量、V:リザーバユニット70内のインク量(流入量と同量の排出分を除く)、V:リザーバユニット70(流路部分を除く固体部分のみ)の体積である。
そして、下記の式(2)に算出したT´を代入してQを算出し、熱量Qが推定される。式(2)は流入したインクが獲得した熱量を表しており、この熱量はヘッド1が奪われた熱量に等しい。
=α(T´−T)×V ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
第2推定部164は、吐出信号を個別電極135に供給することによってドライバIC51a〜51dが印字期間内に発する合計熱量Q2を、記憶された駆動データに基づいて予め推定する。
振動制御部162は、プリンタ101に電源が投入された直後以外であっても、リザーバ流路74内の平均インク温度が所定温度未満であれば、振動選択信号を出力回路52に出力する。振動選択信号は、インク温度に応じて、振動波形(S1とS2)及びハイのレベル値(第1所定電位と第2所定電位)を指示する。このとき振動選択信号が入力される出力回路52は、非吐出信号が印加される少なくとも1つの個別電極135に対応している。出力回路52は、この振動選択信号に基づいて、振動波形S1,S2から1つを選択し、さらに指示された電位となるように増幅して個別電極135に印加する。個別電極135には、非吐出信号の代わりに振動信号が印加されることになる。
このとき、振動制御部162は、印字期間内において、個別電極135に振動信号を供給することで、熱量Q1から熱量Q2を差し引いた熱量Q3を超える熱量を4つのドライバIC51a〜51d全体で発することが可能な数の個別電極135に関して、振動選択信号を出力回路52に出力する。なお、本実施形態において熱量Q3を、ヘッド1内のインク及び流入するインクを所定温度以上に加熱することが可能な熱量としている。さらには、ヘッド1が外気及びヘッド1の取り付け部材に放出する熱量を加味して熱量Q3が求められる。
このように信号生成制御部153は、平均インク温度が所定温度以上の場合には、駆動データにしたがって印字周期毎に各個別電極135に供給される吐出信号及び非吐出信号のいずれかを指示する制御を行う。一方、平均インク温度が所定温度未満の場合には、信号生成制御部153は、平均インク温度が所定温度以上のときに印字期間内の少なくとも1印字周期に非吐出信号が供給される個別電極135の少なくとも1つに、少なくとも1印字周期において振動信号が供給されるという条件を満たしつつ、駆動データにしたがって印字周期毎に各個別電極135に供給される吐出信号、非吐出信号および振動信号を指示するような制御を行っている。
また、このとき、振動制御部162は、インク温度Tとインク温度Tとの温度差が大きいほど、出力回路52に対して、印字周期毎に振動信号が供給される個別電極135の延べ数を増やした振動選択信号を出力する。さらに、このとき、振動制御部162は、インク温度Tとインク温度Tとの温度差が第1所定値未満のときに、振動波形S1を出力回路52に選択させ、この温度差が第1所定値以上で第2所定値未満のときには、振動波形S2を選択させる。いずれの場合も、ハイレベルは第1所定電位である。さらに、振動制御部162は、インク温度T1とインク温度Tとの温度差が第2所定値以上のとき、振動波形S2を出力回路52に選択させる。このときのハイレベルは、第2所定電位である。これらの制御により、インク温度Tとインク温度Tとの温度差が大きくなるほどドライバIC51a〜51dが発する熱量が大きくなるので、ヘッド1内のインク及び流入するインクを効果的に加熱することができる。
また、振動制御部162は、印字期間内にヘッド内に流入するインク量が多いほど、上述の個別電極135の延べ数を増やすような振動選択信号を出力回路52に出力してもよい。
さらに、振動制御部162は、印字期間内にヘッド内に流入するインク量に基づく制御を行ってもよい。振動制御部162は、流入インク量が第1所定量未満のとき、振動波形S1を出力回路52に選択させ、このインク量が第1所定量以上で第2所定量未満のときに振動波形S2を選択させる。いずれの場合も、ハイレベルは第1所定電位としてもよい。さらに、振動制御部162は、流入インク量が第2所定量以上のときには、振動波形S2を出力回路52に選択させる。このときのハイレベルは第2所定電位としてもよい。これらの制御により、ヘッド内に流入するインク量が多くなるほどドライバIC51a〜51dが発する熱量が大きくなるので、上述と同様に、ヘッド1内のインク及び流入するインクを効果的に加熱することができる。
さらに、振動制御部162は、前述のように温度差に基づく制御に加えて、上述の流入インク量に基づく制御を行ってもよい。例えば、温度差に関する閾値として、第1所定値だけが設定されているとして説明する。温度差が第1所定値未満の場合、流入インク量に対する制御内容の違いは、上述の通りである。温度差が第1所定値以上の時、流入インク量が第1所定量未満であれば、振動制御部162は振動波形S2を出力回路52に選択させる。ハイレベルは、第1所定電位である。流入インク量が第1所定量以上で第2所定量未満であれば、振動制御部162は、振動波形S2を出力回路52に選択させるが、ハイレベルは第2所定電位とする。さらに、流入インク量が第2所定量以上であれば、振動制御部162は、新たな振動波形の設定が必要になるが、この新規振動波形を出力回路52に選択させる。ハイレベルは第2所定電位とする。このとき、新規振動波形は、振動波形S2よりも多数のパルスを含んでいる。あるいは、振動制御部162は、振動波形S2を出力回路52に選択させるが、ハイレベルは第2所定電位以上の電位としてもよい。
振動制御部162の出力回路52に対する制御内容は、温度差と流入インク量に関して、上記の水準の組合せに限定されるものではなく、水準数に合わせて振動波形に含まれるパルス数及びハイレベル値を設定すればよい。
また、振動制御部162は、所定期間内において、用紙Pに印字をしない非印字期間に、複数の個別電極135に関して、振動波形S1,S2のいずれかを出力回路52に選択させると共に、ハイレベルを第1所定電位又は第2所定電位とする。これにより、非印字期間においてもドライバIC51a〜51dを発熱させることが可能になるので、インクを効果的に加熱することができる。また、このとき、すべての個別電極135に対して振動波形が選択された形態で印加されるようにしてもよい。いずれも、吐出口108にインクメニスカスが振動することになり、非印字期間中に生じるインクの増粘を抑制することができる。
なお、ここでいう所定期間とは、1枚の用紙Pに対して印字する印字期間および複数の用紙に対して連続して印字する連続印字期間である。また、非印字期間とは、駆動データに基づく用紙Pの空白領域、及び、複数の用紙P間が、吐出口108と対向する領域を通過する期間に等しい。
また、このとき、振動制御部162は、4つの温度センサ99a〜99dによって検出されたインク温度に応じて、ドライバIC51a〜51dが発する熱量を個別に制御する。例えば、4つの温度センサ99a〜99dのうち、温度センサ99aが検出したインク温度が最も低い場合、振動制御部162は、ドライバIC51aが他の3つに比べて、1印字周期を単位として印字期間内の発熱量を多くする。例えば、振動制御部162は、振動信号を供給する個別電極135の延べ数が最も多くなるような振動選択信号をドライバIC51aの出力回路52に出力する。このとき、上述のように、温度差及び流入インク量の組合せに応じて、選択される振動信号(S1又はS2)及びそのハイレベル値(第1所定電位又は第2所定電位)の組合せが変更されるようにしてもよい。
これにより、温度の低いインクを効果的に加熱することが可能になる。そのため、比較的、温度の高いインクを加熱することになるドライバIC51b〜51dの駆動の無駄を抑えることが可能となる。この結果、ドライバIC51a〜51dの駆動を必要最低限に抑えることが可能になって、消費電力を低減させることができる。
また、アクチュエータユニット21の配置に対応して、マニホールド流路105、部分流路74a〜74d、温度センサ99a〜99d、及び、ヒータ97a〜97dがそれぞれ配置されている。アクチュエータユニット21が駆動され、吐出口108からインクが吐出されると、主に当該アクチュエータユニット21に対応する部分流路からマニホールド流路105にインクが流れ込む。そして、この部分流路内のインクは、対応するドライバIC51の発熱によって主に加熱される。温度センサ99は対応する部分流路内のインク温度を検出しており、検出されたインク温度に応じてドライバIC51a〜51dが発する熱量を個別に制御することは、マニホールド流路105毎のインクの温度制御も行っていることになる。これにより、アクチュエータユニット21に対応するマニホールド流路105毎に、きめ細かいインクの温度制御が可能になる。
また、振動制御部162は、リザーバ流路74内の平均インク温度が所定温度以上のときであっても、所定回数の印字周期に亘って非吐出信号が供給される個別電極135に対しては、非吐出信号に代えて振動信号を印加するようにしてもよい。つまり、振動制御部162は、非吐出波形W4に代えて振動波形S1,S2のいずれかを出力回路52に選択させる。このとき、ハイレベルは、温度差や流入インク量の組合せに応じて第1所定電位又は第2所定電位とする。これにより、当該個別電極135には非吐出信号が印加され続けるところ、振動信号が印加されるので、吐出口108近傍のインクが撹拌されることになり、インクの増粘による吐出不良を抑制することが可能となる。
切換部165は、振動信号をすべての個別電極135に供給すると仮定したときに、ドライバIC51a〜51d全体によって印字期間内に発せられる熱量が、熱量Q3を超えるか否かを予め判定する。この熱量が熱量Q3を超えるときは、切換部165は切り換えを行わない。つまり、印字制御部161が出力する吐出選択信号が指示する内容、及び、振動制御部162が出力する振動選択信号が指示する内容にしたがって各ドライバIC51a〜51dが駆動され、その具体的な動作は上述したとおりである。
そして、切換部165は、ドライバIC51a〜51d全体によって発せられる熱量が熱量Q3を超えないときには、印字制御部161が出力する吐出選択信号が指示する内容、及び、振動制御部162が出力する振動選択信号が指示する内容を切り換える。具体的には、吐出選択信号は、記憶された駆動データに基づいて、吐出波形W1’、W2’、W3’及び非吐出波形W4’のいずれかを出力回路52に選択させる。さらに、吐出選択信号は、記憶された駆動データに基づいて、非吐出信号W4’が供給される少なくとも1つの個別電極135について、振動波形S1’,S2’のいずれかを出力回路52に選択させる。なお、ハイレベルが第1所定電位及び第2所定電位のいずれとなるように振動波形を増幅するかは、当該熱量が熱量Q3を超えるときと同様とする。
さらに、切換部165は、搬送制御部154を制御して、後述の第1搬送速度から第2搬送速度に搬送モータ19の速度を切り換える。つまり、ドライバIC51a〜51d全体によって発せられる熱量が熱量Q3を超えないときのプリンタ動作は、印字周期が2倍(100μsec)となる以外は、当該熱量が熱量Q3を超えるときと同様である。
なお、本実施形態においては、印字周期が異なる振動波形が2種類しか用意されていないが、3種類以上用意されていてもよい。この変形例の場合は、切換部が、振動制御部を制御して、インク温度Tとインク温度Tとの温度差が大きいほど、印字周期の時間的長さが長くなる振動波形を出力回路52に選択させればよい。また、切換部が、印字期間内にヘッド内に流入するインク量が多いほど、印字周期の時間的長さが長くなる振動波形を出力回路52に選択させればよい。
このように、切換部165が印字周期の時間的長さが長くなるように切り換えることで、単位時間当たりにヘッド1に流入するインク量が少なくなり、その分、ドライバIC51a〜51dによって発せられる熱がヘッド1全体(主にリザーバユニット70)に伝わりやすくなっている。その結果、ヘッド1のインク流路内および流入するインクを効果的に加熱することができる。また、ヘッド内のインク温度を確実に上昇させることができる。
また、切換部165は、ドライバIC51a〜51d全体によって発せられる熱量が熱量Q3を超えないときに、4つのヒータ97a〜97dに通電して、ヘッド1に与えられる熱量を補足する。これにより、ドライバIC51a〜51dの発熱だけでは足りない熱量をヒータ97a〜97dで補うことができる。そのため、確実なインクの温度制御が可能となる。
搬送制御部154は、所定の搬送速度で用紙Pが搬送されるように、搬送モータ19を制御する。なお、所定の搬送速度には、1印字周期が50μsecに応じた第1搬送速度と、1印字周期が100μsecに応じた第2搬送速度との2種類がある。第2搬送速度は、第1搬送速度の1/2の速度である。搬送制御部154は、通常、第1搬送速度で用紙Pが搬送されるように、搬送モータ19を制御する。しかし、上述のように、切換部165によって切り換えられることで、搬送制御部154は、第2搬送速度で用紙Pが搬送されるように、搬送モータ19を制御する。
以上のように、本実施形態によるインクジェットプリンタ101によると、ヘッド1のインク流路内および当該インク流路に流入するインクのインク温度が低く、インク粘度が高くなっていても、ドライバIC51a〜51dが熱量Q3を超える熱量を発するように信号生成制御部153が制御するので、インク流路内および流入するインクが所定温度以上に温められ、インク粘度が低くなる。そのため、吐出口108から常温時と同じ量のインク滴を吐出するためのインクに対する吐出エネルギーを増加させる必要がなくなり、インク吐出に係る消費電力を維持することが可能となる。また、発熱したドライバIC51a〜51dを冷却するためのヒートシンクなどを設ける必要がなくなり、インクジェットヘッド1の構成を簡素化することができる。さらに、インクの粘度によってインク適量のばらつきがなくなり、画品質の維持に寄与する。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、熱量Q3を超える熱量は、単に熱量Q3を超えていればよく、ヘッド1内のインク及び流入するインクを所定温度未満に加熱する大きさであってもよい。また、振動信号は、印字期間内において、非吐出信号が供給される個別電極135にだけ供給されればよい。つまり、電源投入時や非印字期間において、振動信号が個別電極135に供給されていなくてもよい。
また、上述の実施形態においては、非吐出信号の代わりに複数種類の振動信号のいずれかが個別電極135に供給されるが、単に1種類の振動信号が個別電極135に供給されてもよい。つまり、振動制御部162が、振動波形S1よりもパルスの数が多い振動波形S2を選択させる振動選択信号を出力回路52に出力しなくてもよい。また、振動制御部162は、インク温度Tとインク温度Tとの温度差が大きいほど、及び、ヘッド内に流入するインク量が多いほど、振動信号を供給する個別電極135の延べ数を増加させなくてもよい。また、振動制御部162は、4つの温度センサ99a〜99dによって検出されたインク温度に応じて、ドライバIC51a〜51dが発する熱量を制御しなくてもよい。これらの場合、制御が簡易になる。
また、切換部165が設けられていなくてもよい。また、ドライバICは、インクジェットヘッドに1つだけ設けられていてもよい。また、ヒータ97a〜97dは、補助的なものであるため、特に設けられていなくてもよい。この場合、ヘッドのインク流路内および流入するインクを加熱するためのヒータが必要なくなり、製造コストを低下させることが可能となる。
また、リザーバユニットが設けられていなくてもよい。この場合、温度センサ99a〜99d、及び、ドライバIC51a〜51dは、流路ユニット9に設けられておればよい。このとき、温度センサ99a〜99d、及び、ドライバIC51a〜51dは、上述の部分流路74a〜74dに代えて4つのマニホールド流路105に対応して配置されておればよい。また、インクジェットヘッド1に、インク流路内のインク温度を検出する温度センサが1つだけ設けられていてもよい。
また、上述の実施形態では、流路ユニット9に供給されるインクを効果的に加熱するという観点から、ヒータ97a〜97dが、リザーバユニット70のインク流出流路73aに対向して配置されていたが、流路ユニット9に供給されるインクの温度をより正確に測定するという観点からは、温度センサ99a〜99dはインク流出流路73aに対向して配置されていてもよい。つまり、ヒータ97a〜97dと温度センサ99a〜99dとの位置関係が逆であってもよい。
また、マニホールド流路105がアクチュエータユニット21の配置に対応して分断されていたが、本発明に必須の構成ではない。すべてのマニホールド流路が、ヘッド1の長手方向に沿って互いに連通していてもよい。
また、上述した実施形態は、吐出口からインクを吐出するインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、本発明の適用可能対象はこのようなインクジェットプリンタに限られない。例えば、導電ペーストを吐出して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に吐出して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に吐出して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、液体吐出ヘッドを有する、種々の液体吐出装置に適用することができる。
本発明の一実施形態のインクジェットプリンタの内部構成を示す概略図である。 図1に示すインクジェットヘッド及びインクタンクの概略斜視図である。 図2に示すインクジェットヘッドの断面図である。 図2に示すインクジェットヘッドの平面図である。 ヘッド本体の平面図である。 図5の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。 図4に示すVII−VII線に沿った断面図である。 アクチュエータユニットの部分断面図である。 制御部の機能ブロック図である。 出力回路に出力される単位波形の模式図である。
符号の説明
1 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
2 ヘッド本体(第2流路部材)
2a 吐出面
17 インクタンク(インク供給源)
21 アクチュエータユニット
51a〜51d ドライバIC
52 出力回路(信号生成回路)
70 リザーバユニット(第1流路部材)
71 プレート(リザーバ流路の一部を画定する部材)
74 リザーバ流路
97a〜97d ヒータ
98 温度センサ(第2温度センサ)
99a〜99d 温度センサ(第1温度センサ)
100 制御部
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
105 マニホールド流路(共通液体流路)
108 吐出口
132 個別インク流路(個別液体流路)
151 印刷データ記憶部(記憶手段)
153 信号生成制御部(信号生成制御手段)
163 第1推定部(第1推定手段)
164 第2推定部(第2推定手段)

Claims (19)

  1. 液滴を吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口をそれぞれ一端とする複数の個別液体流路を含む液体流路と、前記個別液体流路の液体に前記吐出口から液滴を吐出させる吐出エネルギーを付与する複数のアクチュエータとを有し、駆動データにしたがって液滴が作る画素の有無によって記録媒体上に画像を形成する液体吐出ヘッドと、
    前記液体流路内の液体の第1液体温度を検出する第1温度センサと、
    前記液体流路に流入する液体の第2液体温度を検出する第2温度センサと、
    前記液体吐出ヘッドと熱的に結合して配置されているとともに、前記吐出口から液滴を吐出させる吐出信号、前記吐出口から液滴を吐出させないと共に当該吐出口近傍の液体を振動させない非吐出信号および前記吐出口から液滴を吐出させずに当該吐出口近傍の液体を振動させる振動信号を生成し且つ生成した信号を前記複数のアクチュエータに供給する信号生成回路を有するドライバICと、
    前記ドライバICを制御する制御部とを備えており、
    前記制御部が、
    各印字周期において各吐出口から吐出される液滴量を示す前記駆動データを記憶する記憶手段と、
    所定期間内に前記液体流路に流入する液体が前記液体吐出ヘッドから奪う第1熱量を、記憶された前記駆動データに基づいて前記複数の吐出口から液滴が吐出されることによって前記液体流路に流入する液体量、前記第1及び前記第2液体温度から推定する第1推定手段と、
    前記信号生成回路が前記複数のアクチュエータに前記吐出信号を供給することによって前記ドライバICが前記所定期間内に発する第2熱量を、前記記憶された駆動データに基づいて推定する第2推定手段と、
    前記記憶された駆動データにしたがって各印字周期において各アクチュエータに前記吐出信号、前記非吐出信号及び前記振動信号のいずれかが供給されるように、前記信号生成回路に前記吐出信号、前記非吐出信号および前記振動信号を生成させる信号生成制御手段とを含み、
    前記信号生成制御手段は、前記第1液体温度が所定温度未満の場合に、前記所定期間内の少なくとも1つの印字周期において、少なくとも1つの前記アクチュエータに対して、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給することで前記第1熱量から前記第2熱量を差し引いた第3熱量を超えるように、前記信号生成回路を制御して前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記信号生成制御手段は、前記液体流路内の液体および前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体を前記所定温度以上に加熱するように、前記信号生成回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、1印字周期を単位として前記所定期間内に前記振動信号が供給される前記アクチュエータの延べ数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、前記非吐出信号の代わりに供給される前記振動信号に含まれるパルスの数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  5. 前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、前記振動信号の駆動電圧を高くすることで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  6. 前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給しても、前記ドライバICから前記第3熱量を超える熱量を発することができないときには、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度と前記第2液体温度との差が大きいほど、前記印字周期を長くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  7. 前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記印字周期を単位として前記所定期間内に前記振動信号が供給される前記アクチュエータの延べ数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  8. 前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記非吐出信号の代わりに供給される前記振動信号に含まれるパルスの数を増やすことで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  9. 前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記振動信号の駆動電圧を高くすることで、前記ドライバICから発せられる熱量を増やすことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  10. 前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給しても、前記ドライバICから前記第3熱量を超える熱量を発することができないときには、前記信号生成制御手段は、前記信号生成回路を制御して、前記所定期間内に前記液体流路に流入する液体が多いほど、前記印字周期を長くすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  11. 前記信号生成制御手段は、電源投入時において、前記信号生成回路を制御して、前記第1液体温度が前記所定温度未満のときに、前記振動信号を複数の前記アクチュエータに供給することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  12. 前記信号生成制御手段は、前記所定期間内において、前記信号生成回路を制御して、記録媒体に印字をしない非印字期間に複数の前記アクチュエータに前記振動信号を供給することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  13. 前記液体吐出ヘッドの前記液体流路が、
    液体供給源からの液体を一時的に貯留するリザーバ流路と、
    前記リザーバ流路と前記個別液体流路とを繋ぐ共通液体流路とをさらに有しており、
    前記ドライバICが、前記液体吐出ヘッドの前記リザーバ流路の一部を画定する部材に熱的に結合されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  14. 前記液体吐出ヘッドが、前記リザーバ流路を含む第1流路部材と、前記複数の吐出口、前記複数の個別液体流路、前記共通液体流路および前記複数のアクチュエータを含む第2流路部材との積層体であって、
    前記第2流路部材は、前記第1流路部材に比べて熱容量が小さく、且つ前記第1流路部材を介して前記ドライバICと熱的に結合されていることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
  15. 前記リザーバ流路の一部を画定する部材が前記リザーバ流路とともに一方向に沿って長尺に延在しており、
    前記ドライバICが、前記リザーバ流路の一部を画定する部材に前記一方向に沿って複数設けられており、
    前記第1温度センサが、前記ドライバICに隣接して複数設けられていることを特徴とする請求項13又は14に記載の液体吐出装置。
  16. 前記信号生成制御手段は、複数の前記第1温度センサによって検出された液体温度に応じて、前記ドライバICが発する熱量を個別に制御することを特徴とする請求項15に記載の液体吐出装置。
  17. 前記液体吐出ヘッドと熱的に結合して配置されているヒータをさらに備え、
    前記信号生成制御手段は、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給しても、前記ドライバICから前記第3熱量を超える熱量を発することができないときには、前記ヒータを駆動して前記ドライバICから発せられる熱量を補足することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  18. 複数の前記アクチュエータからそれぞれなる複数のアクチュエータユニットが、前記一方向に沿って配置され、前記アクチュエータユニットの配置に対応して、前記共通液体流路、前記ドライバIC、前記ヒータ及び前記第1温度センサがそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置。
  19. 前記信号生成制御手段は、前記第1液体温度が前記所定温度以上の場合には、所定回数の前記印字周期に亘って前記非吐出信号が供給される前記アクチュエータに対して、前記非吐出信号の代わりに前記振動信号を供給することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
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