JP2010069657A - 複合構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造が容易で、かつ金属部材と樹脂部材との接合部での密封性を長期にわたって維持できるようにする。
【解決手段】構造体1は、金属部材10と第二樹脂部材30とが第一樹脂部材20を介して接合されることによって、中空管状に構成されている。第一樹脂部材20は、半円管状に形成された金属部材10の横断面における開放側の両端部に、インサート成形によって形成されている。第二樹脂部材30は、金属部材10と対応するように半円管状に形成されており、その横断面における開放側の両端部が、それぞれ金属部材10に形成された第一樹脂部材20に溶着されることで接合され、これによって閉断面が形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属と樹脂とを接合した複合構造体に関し、特にその複合構造体の製造方法に関する。
金属部材および樹脂部材は、様々な工業製品に用いられている。これら金属部材および樹脂部材は、その用途および製造上の理由等に応じて使い分けられており、これらを複合した部品、ユニットおよび機器などの複合構造体も数多く存在している。
従来、この種の構造体として、例えば、特許文献1には、金属製のシェルと樹脂製の補強材とを、シェルに予め設けられた孔を貫通するアンカー部を補強材が有するように補強材をインサート成形することによって一体化した構造が開示されている。特許文献2には、樋状に形成された金属部材の開口部の内側を樹脂製の補強リブで補強した構造において、補強リブと一体成形された固定部に溝を設け、この溝に金属部材の開口端部を係合させた構造が開示されている。
特許文献1、2に開示された構造は、金属部材の補強を樹脂部材で行なうことによって、全体としての軽量化を図っている。
一方、液体やガスといった流体を取り扱う構造体や、防水性を必要とする構造体などにおいても、金属部材と樹脂部材とを複合させる場合がある。このような場合は、金属部材と樹脂部材とを両者間で密封して接合し、金属部材と樹脂部材との接合部から流体が漏れないようにする必要があり、そのために、通常は金属部材と樹脂部材との接合部にパッキン等のシール部材を介在させている。
特許第2931605号公報 特開2003−120896号公報
しかしながら、特許文献1、2に開示された技術は、軽量化を図りつつ補強を行なうような場合には有効であるものの、密封性が必要な中空構造体を得る場合には、金属部材と樹脂部材とを一体成形する金型に中空部を確保するための複雑な構成が必要であり、実用的でない。一方、金属部材と樹脂部材との接合部にシール部材を介在させた構造は、密封性が必要な中空構造体を簡単に構成することができる。しかし、シール部材は、ゴム部材で構成されることが多く、長期的な使用に伴って劣化する。そのため、使用中は定期的に点検し、シール部材を交換するなどの処置が必要となる。
本発明の目的は、製造が容易で、かつ金属部材と樹脂部材との接合部での密封性を長期にわたって維持できる複合構造体およびその製造方法を提供することである。
上記目的を達成するため本発明の複合構造体は、金属部材と樹脂部材とが接合されて形成される中空部を有する複合構造体であって、
接合端部を有する金属部材と、金属部材の接合端部にインサート成形によって形成された第一樹脂部材と、第一樹脂部材に溶着された第二樹脂部材と、を有し、第一樹脂部材を介して金属部材と第二樹脂部材とが接合されて中空部が形成されている。
本発明の複合構造体において、金属部材の接合端部は、中空部の外側に向かって張り出した張り出し部を有し、第一樹脂部材は前記張り出し部に形成されていることが好ましい。この場合、張り出し部はその厚み方向に貫通する貫通孔を有し、第一樹脂部材は貫通孔を貫通して形成されていてもよいし、また、第一樹脂部材は張り出し部を覆って形成されていてもよい。
さらに、本発明の複合構造体は、金属部材、第一樹脂部材および第二樹脂部材の組み合わせによって閉断面が形成されていてもよいし、金属部材および第二樹脂部材は管状の部材であり、これらの端部同士が接合されて構成されていてもよい。
本発明の複合構造体の製造方法は、金属部材と樹脂部材とが接合されて形成される中空部を有する複合構造体の製造方法であって、
接合端部を有する金属部材を用意する工程と、インサート成形によって、金属部材の接合端部に第一樹脂部材を形成する工程と、接合端部に形成された第一樹脂部材に、所望の形状に予め形成された第二樹脂部材を溶着し、中空部を形成する工程と、を有する。
上記本発明の複合構造体の製造方法において、好ましくは、金属部材を用意する工程は、接合端部に、中空部の外側に向かって張り出した張り出し部を形成することを含んでいる。この場合、第一樹脂部材を形成する工程は、張り出し部を覆って第一樹脂部材を形成することを含んでいてもよい。
本発明によれば、金属部材と樹脂部材との接合によって形成される中空部を有する構造において、インサート成形による金属部材と第一樹脂部材との接合、および溶着による第一樹脂部材と第二樹脂部材との接合を組み合わせることによって、中空構造を容易に製造することができる。しかも、パッキン等のシール部材を用いることなく、これらの部材の接合部が密封されるので、中空部の密封性をメンテナンスフリーで長期間にわたって維持できる。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明において、「密封」とは、部材同士の接合部からガスや液体が漏れない程度に部材同士が接合されることを意味し、構造体を構成する部材そのものがガスや液体を透過させないことを意味するものではない。
図1を参照すると、金属部材10と、2つの第一樹脂部材20と、第二樹脂部材30とを有する、本発明の一実施形態による構造体1の横断面図が示されている。図1に示すように、構造体1は、第一樹脂部材20を介して金属部材10と第二樹脂部材30とが接合されることよって、横断面が略円環状の閉断面とされ、かつ図面に垂直な長手方向に延びた中空部を有する円管状に形成されている。
金属部材10は、横断面が略半円形に形成された半円管状の部材であり、その横断面での開放側の両端部(接合端部)に、第一樹脂部材20が接合されている。第二樹脂部材30は、金属部材10と組み合わせられて中空円管状の構造体1を構成するように略半円形の横断面を有する半円管状の部材であり、その横断面での開放側の両端部(接合端部)において第一樹脂部材20に接合されている。金属部材10は、例えばプレス成形によって予め形成され、また、第二樹脂部材30は、例えば射出成形によって予め成形されている。
このように、金属部材10と第二樹脂部材30とが接合された構造体1とするために、本発明では、金属部材10と第二樹脂部材30との間に第一樹脂部材20を介在させている。そして、その第一樹脂部材20は、第二樹脂部材30と相溶性がある性質を有しており、インサート成形によって金属部材10と接合されるとともに、溶着によって第二樹脂部材30と接合される。これによって構造体1は、略円形の閉断面を有する中空管状に構成される。
第一樹脂部材20を介した金属部材10と第二樹脂部材30との接合に際しては、金属部材10と第一樹脂部材20とが確実に接合され、かつ第一樹脂部材20と第二樹脂部材30とが確実に接合されていることが重要である。そのため本形態では、好ましい構成として以下のような構成を有している。
金属部材10の接合端部には、張り出し部11が、金属部材10の全長にわたって一様に形成されている。張り出し部11は、構造体1の中空部の外側、言い換えると金属部材10の半径方向外側に向かって張り出して形成されている。
第一樹脂部材20は、金属部材10から容易に脱落しない程度に金属部材10に固定され、かつ、金属部材10の全長にわたって第二樹脂部材30の接合端部と対向する接合面21が形成されるようなサイズおよび形状で形成される。特に本形態では、第一樹脂部材20は、金属部材10の張り出し部11を、その長手方向両端面を除いて被覆する形状に形成されている。
第二樹脂部材30は、その接合端面に、第一樹脂部材20の接合面21と対向する接合面32を有する張り出し部31が一体に形成されており、第一樹脂部材20の接合面21と第二樹脂部材30の接合面32とが溶着によって接合されている。
次に、上述した構造体1の作製方法について説明する。
まず、プレス成形等により所望の形状に形成された金属部材10を用意する。本形態では、張り出し部11を有するように金属部材10が形成される。
次いで、用意した金属部材10をインサート成形用の金型にセットし、インサート成形によって金属部材10の張り出し部11に第一樹脂部材20を形成する。
第一樹脂部材20のインサート成形後、予め所望の形状に形成された第二樹脂部材30を第一樹脂部材20に溶着する。第二樹脂部材30の溶着は、張り出し部31の接合面32を第一樹脂部材20の接合面21に密着させて行なう。第一樹脂部材20と第二樹脂部材30との溶着には、例えばレーザ溶着、振動溶着など、任意の溶着技術を用いることができる。
以上のようにして、本形態の構造体1が作製される。
金属部材10を構成する金属の種類は特に制限されず、構造体1の用途、金属部材10に要求される性能等に応じて、鉄やアルミニウムなど種々の金属を用いることができる。
第一樹脂部材20および第二樹脂部材30に用いられる樹脂は、特に制限はなく、それぞれの部材に必要とされる特性や成形に応じて任意の樹脂を用いることができる。
第一樹脂部材20および第二樹脂部材30に用いる好ましい樹脂として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ABS樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合させて用いてもよい。単独で用いる場合に特に好ましい樹脂として、ポリアミド樹脂およびポリプロピレンが挙げられる。さらに、ポリアミド樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12のような脂肪族ポリアミドやポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミドのような半芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独あるいは2つ以上の共重合から成り立っていてもよい。ポリアミド樹脂の中で好ましいのは、ナイロン6、ナイロン66である。
ただし、第一樹脂部材20と第二樹脂部材30とは互いに溶着によって接合されるため、第一樹脂部材20に用いる樹脂と第二樹脂部材30に用いる樹脂との組み合わせは、相溶性を有する樹脂同士が組み合わせられていれば任意であり、異なる樹脂同士を組み合わせることもできるが、好ましくは、両者は同じ樹脂である。樹脂同士が互いに「相溶性を有する」とは、一方の樹脂と他方の樹脂との溶解度パラメータの差が小さい、具体的には、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下であり、両者の分子鎖が混ざり合うことが可能であることをいう。ここで溶解度パラメータ(Sp)値は、Fedorsの方法(R. F. Fedors, Poly. Eng. and Sci., 14(2), 147(1974)などの文献を参照)によりポリマーの骨格より算出される。
第一樹脂部材20および第二樹脂部材30は、ガラス繊維やカーボン繊維等で強化した繊維強化樹脂で構成することもでき、特に、ガラス繊維強化ナイロン6を好ましく用いることができる。繊維強化樹脂を用いる場合、第一樹脂部材20および第二樹脂部材30の両方を繊維強化樹脂で形成することもできるし、いずれか一方を繊維強化樹脂で形成することもできる。第一樹脂部材20および第二樹脂部材30の一方のみを繊維強化樹脂で形成する場合、第一樹脂部材20は繊維強化されていない樹脂で形成し、第二樹脂部材30は繊維強化樹脂で形成することが好ましい。こうすることにより、構造体1の製造時、あるいは構造体1の使用環境での温度変化に伴う金属部材10と第二樹脂部材30との熱膨張差を第一樹脂部材20で吸収することができる。
本形態の構造体1においては、金属部材10と第一樹脂部材20とはインサート成形によって互いに密着して接合され、かつ、第一樹脂部材20と第二樹脂部材30とは互いに溶着されて接合されている。よって、中空円管状に構成された構造体1の中空部の、金属部材10と第一樹脂部材20との接合部および第一樹脂部材20と第二樹脂部材30との接合部での密封性が確保される。そのため、本形態の構造体1は、内部にガスや液体といった流体を流通させるための部品やユニット、あるいは防水性を必要とする部品やユニット等に好適に用いることができる。しかも、この密封性を確保するのにパッキン等のシール部材は不要であるので、構造が簡単であるとともに、密封性をメンテナンスフリーで長期間にわたって維持することができる。
また、上述のように、金属部材に対する樹脂部材のインサート成形と、樹脂部材同士の溶着を組み合わせて構造体1を製造することによって、金属部材および樹脂部材の内面で規定された中空部を有する構造体1を極めて容易に製造することができる。これに対して、インサート成形のみによって、金属部材および樹脂部材の内面で中空部が規定された構造体を製造しようとした場合は、インサート成形用の金型に、中空部を形成するための構造が必要となり、金型構造自体が複雑になるばかりでなく、それに伴って成形工程も複雑になる。
第一樹脂部材20は金属部材10に対してインサート成形されたものであるので、金属部材10と第一樹脂部材20とは単に機械的に密着しているだけであり化学的に結合はしていない。つまり、第一樹脂部材20は金属部材10に機械的な構造で保持されているだけである。しかも、第一樹脂部材20は、金属部材10の長手方向両端面を除いて、金属部材10の長手方向に一様に形成された張り出し部11に形成されている。したがって、本形態の構造体1においては、金属部材10と第二樹脂部材30とを、構造体1の長手方向に沿って互いに逆向きにスライドさせれば、金属部材10を、残りの第一樹脂部材20および第二樹脂部材30から分離することができる。したがって、構造体1を廃棄する際に、金属と樹脂との分別を容易に行なうことができる。
さらに、構造体1は、その全体としての構成等に応じて、以下に述べるような固有の効果を奏する。例えば、構造体1が、従来は金属で構成されていた部品の一部を樹脂に置き換えたものである場合には、従来と比較して軽量化が図られる。また、構造体1が、金属製の半円管状の部材に樹脂部材を付加したものである場合には、金属製の半円管状の部材の開口部を樹脂部材によって補強することができる。このように樹脂部材で補強することにより、金属で補強する場合と比較して重量の増加を抑制することができる。
上述した実施形態では中空円管状の構造体1を示したが、構造体1の横断面形状は、これに限られるものではない。また、構造体1の周方向での金属部材10および第二樹脂部材30の長さの割合も、上述した実施形態に限られるものではない。これらは、高い寸法精度が必要とされる部分、導電性が必要とされる部分、あるいはバルブといった他の機械要素を組み込む必要のある部分は金属で構成し、他の部分は樹脂で構成するなど、構造体1の部分に応じて必要とされる機能に応じて、また、金属部材10を構成する金属、および第二樹脂部材30を構成する樹脂等に応じて適宜定めることができる。
横断面形状を変更した構造体の例を図2に示す。図2に示す形態では、構造体1は、横断面が四角形の中空管構造を有して構成されている。また、金属部材10は、略U字状の横断面を有しており、その開放側の両端部に張り出し部11aが形成されている。第二樹脂部材30は平板状の部材であり、金属部材10の張り出し部11aにインサート成形された第一樹脂部材20と接合され、これによって、構造体1は、略四角形の閉断面を有する中空管状とされる。
図2に示す構造体1も、図1に示す構造体1と同様にして作製することができる。すなわち、所望の形状に形成された金属部材10および第二樹脂部材30を予め用意しておき、用意した金属部材10に第一樹脂部材20をインサート成形によって接合し、その後、第一樹脂部材20と第二樹脂部材30とを溶着によって接合する。
なお、図1に示した形態では、金属部材10の張り出し部11は、金属部材10の半径方向外側に真っ直ぐ延びて形成されていた。この場合、金属部材10の半径方向外側に向かう力が第一樹脂部材20に働くと、第一樹脂部材20が張り出し部11から抜けてしまうことが考えられる。しかし、図2に示した形態では、張り出し部11aは、中間部で第二樹脂部材30側に屈曲した形状に形成され、このような形状の張り出し部11aを覆って第一樹脂部材20が形成されているので、第一樹脂部材20に上記のような力が働いても第一樹脂部材20が張り出し部11aから抜けることはない。ただし、このような形状であっても張り出し部11aが構造体1の長手方向に一様に形成されていれば、図1に示した形態と同様にして、構造体1を廃棄する際に金属と樹脂とを分別することができる。
金属部材10に形成される張り出し部11は本発明において必須の構成要素ではなく、第一樹脂部材20がインサート成形される接合端部に何の加工も施されていない金属部材10を用いてもよい。しかし、第二樹脂部材30との間で十分な接合強度を得るのに必要な大きさの接合面21を有する第一樹脂部材20を金属部材10の端部に確実に保持させるためには、張り出し部11が形成されていることが好ましい。
金属部材10と第一樹脂部材20との接合部の形態は、図1に示したものや図2に示した形態の他に、金属部材10と第一樹脂部材20との間で要求される接合強度や構造体1の廃棄時の分別性等を考慮して種々の形態を採用することができる。その幾つかの例を図3A〜図3Dに示す。
図3Aに示す例では、張り出し部11bの中間で屈曲する向きが図2に示す例と逆向きになっている。すなわち、張り出し部11bは、金属部材10の接合端部においてUターンする向きに屈曲している。この場合は、図2に示した張り出し部11aと同様の効果に加え、張り出し部11bを除いた金属部材10と第二樹脂部材30との間隔を、図2に示した例と比べて小さくすることができ、その結果として構造体1をよりコンパクトに構成できるという効果がある。
図3Bに示す例では、張り出し部11cは、その厚み方向に貫通し、かつ張り出し部11cの外側端面に開口する貫通孔12を有している。図3B1に、貫通孔12の形状をより明確に示すために、張り出し部11cを第二樹脂部材が接合される側から見た図を示す。このような貫通孔12を設けることにより、張り出し部11cを覆う第一樹脂部材20は、張り出し部11cの貫通孔12内に充填されて貫通孔12を貫通して形成される。貫通孔12を設けることによって、金属部材10と第一樹脂部材20とを金属部材10の長手方向に沿って互いに逆向きにスライドさせても両者を分離することはできなくなるが、第一樹脂部材20を金属部材10の外側に向けて(矢印A方向)引っ張ることにより、両者を分離することができるようになる。このような構成においては、第一樹脂部材20は貫通孔12にスナップフィットされた状態で張り出し部11cに保持されるので、貫通孔12の形状を適宜設計することにより、第一樹脂部材20を分離するのに必要な力を任意に調整することができる。
貫通孔12の数は、構造体の長さに応じて定めることができ、1つであってもよいし複数であってもよい。複数の貫通孔12を設ける場合は、その間隔は一定であってもよいし不規則であってもよいが、できるだけ張り出し部11cの長手方向に分散させて設けることが好ましい。
図3Cに示す例では、張り出し部11dは、その厚み方向のみに貫通する貫通孔13を有しており、第一樹脂部材20は、その貫通孔13内に充填されて貫通孔13を貫通して形成されている。この場合、貫通孔13内に充填された第一樹脂部材20の部分がアンカーとして機能し、金属部材10と第一樹脂部材20とを分離することはできなくなる。そのため、図3Cに示す構造は、金属部材10と第一樹脂部材20とのより強固な接合が必要であり、両者を分離する必要がない場合に採用される。
図3Dに示す例では、図3Cと同様の張り出し部11dを有している。ただし、第一樹脂部材20は、張り出し部11dの全体を覆うのではなく、金属部材10の第二樹脂部材(ここでは不図示)と接合される側の面のみを覆い、さらに貫通孔13を貫通して、張り出し部11dの反対側の面において貫通孔13から突出したその先端部が貫通孔13の開口サイズよりも大きくなるように形成されている。
図3Dに示す構成も、図3Cに示す構成と同様、貫通孔13を貫通する第一樹脂部材20の部分がアンカーとして機能するため、通常は、金属部材10と第一樹脂部材20とを分離することはできない。しかし、第一樹脂部材20は張り出し部11dの全体を覆っている訳ではないので、外部から衝撃力を加えるなどして第一樹脂部材20のアンカーの部分を破壊することができ、それによって金属部材10と第一樹脂部材20とを分離することができる。
上述した実施形態では、金属からなる部分と樹脂からなる部分とを有する閉断面が形成されるように、第一樹脂部材20を介して金属部材10と第二樹脂部材30とが接合された構造体1を示した。しかし、本発明は、金属部材と樹脂部材とが接合されて中空部が形成される構造であれば、金属部材と樹脂部材とはどのような形態で接合されていてもよい。
図4を参照すると、金属からなる中空管状の金属部材10と、樹脂からなる中空管状の第二樹脂部材30とが、第一樹脂部材20を介して軸方向に接合された、本発明による他の構造体1が示されている。なお、図4では、構造体1を横断面図ではなく縦断面図で示している。
金属部材10は、フランジ状に形成された張り出し部11をその接合端部に有している。第一樹脂部材20は、金属部材10の全周にわたって張り出し部11を覆って形成されている。第二樹脂部材30は、金属部材10と同様、フランジ状に形成された張り出し部31をその接合端部に有しており、この張り出し部31において、第二樹脂部材30は第一樹脂部材20と接合されている。
図4に示す構造体1も、図1に示す構造体と同様に作製される。すなわち、金属部材10の張り出し部11に、インサート成形によって第一樹脂部材20を形成し、その後、第一樹脂部材20と、予め成形された第二樹脂部材30とを溶着によって接合する。よって、第一樹脂部材20および第二樹脂部材30には、互いに相溶性のある樹脂が用いられ、その具体的な例は前述したとおりである。また、金属部材10と第一樹脂部材20との接合部の形態についても、例えば図2および図3A〜3Dに示したような種々の形態が可能である。ただし、図4に示す構造体1は管状の金属部材10の全周にわたって第一樹脂部材20を設けるので、金属部材10と第一樹脂部材20とを分離する必要がある場合は、第一樹脂部材20を部分的に破壊する必要があるが、例えば図3Dに示す構造とされる。
上述した本発明の構造体は、金属部材と樹脂部材とが接合された種々の構造に適用可能であり、その用途は制限されない。その一例として、自動車用部品・ユニットを好ましく挙げることができ、具体的には、インテークマニホールドのような吸気系部品、ラジエターポンプのような冷却系部品、燃料ポンプのような燃料系部品、ECU(Engine Computer Unit)ハウジングのような制御系部品、オイルポンプのような潤滑油部品、シリンダーヘッドカバーのようなカバー類、トランスミッション部品などがある。
本発明の一実施形態による構造体の横断面図である。 本発明の他の実施形態による構造体の横断面図である。 本発明の構造体における、金属部材の端部と第一樹脂部材との接合部の一例を示す拡大斜視図である。 本発明の構造体における、金属部材の端部と第一樹脂部材との接合部の他の例を示す拡大斜視図である。 図3Bに示す張り出し部を第二樹脂部材が接合される側から見た図である。 本発明の構造体における、金属部材の端部と第一樹脂部材との接合部の他の例を示す拡大斜視図である。 本発明の構造体における、金属部材の端部と第一樹脂部材との接合部の他の例を示す拡大斜視図である。 金属部材と樹脂部材とを長手方向に接合した、本発明のさらに他の実施形態による構造体の縦断面図である。
符号の説明
1 構造体
10 金属部材
11、11a、11b、11c、11d 張り出し部
12、13 貫通孔
20 第一樹脂部材
30 第二樹脂部材
31 張り出し部

Claims (9)

  1. 金属部材と樹脂部材とが接合されて形成される中空部を有する複合構造体であって、
    接合端部を有する金属部材と、
    前記金属部材の接合端部にインサート成形によって形成された第一樹脂部材と、
    前記第一樹脂部材に溶着された第二樹脂部材と、を有し、
    前記第一樹脂部材を介して前記金属部材と前記第二樹脂部材とが接合されて前記中空部が形成される複合構造体。
  2. 前記金属部材の接合端部は、前記中空部の外側に向かって張り出した張り出し部を有し、前記第一樹脂部材は前記張り出し部に形成されている請求項1に記載の複合構造体。
  3. 前記張り出し部はその厚み方向に貫通する貫通孔を有し、前記第一樹脂部材は前記貫通孔を貫通して形成されている請求項2に記載の複合構造体。
  4. 前記第一樹脂部材は前記張り出し部を覆って形成されている請求項2または3に記載の複合構造体。
  5. 前記金属部材、前記第一樹脂部材および前記第二樹脂部材の組み合わせによって閉断面が形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の複合構造体。
  6. 前記金属部材および前記第二樹脂部材は管状の部材であり、これらの端部同士が接合されている請求項1から4のいずれか1項に記載の複合構造体。
  7. 金属部材と樹脂部材とが接合されて形成される中空部を有する複合構造体の製造方法であって、
    接合端部を有する金属部材を用意する工程と、
    インサート成形によって、前記金属部材の接合端部に第一樹脂部材を形成する工程と、
    前記接合端部に形成された前記第一樹脂部材に、所望の形状に予め形成された第二樹脂部材を溶着し、前記中空部を形成する工程と、
    を有する複合構造体の製造方法。
  8. 前記金属部材を用意する工程は、前記接合端部に、前記中空部の外側に向かって張り出した張り出し部を形成することを含む請求項7に記載の複合構造体の製造方法。
  9. 前記第一樹脂部材を形成する工程は、前記張り出し部を覆って前記第一樹脂部材を形成することを含む請求項8に記載の複合構造体の製造方法。
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