JP2010052222A - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の少なくとも一方の面上に、ガスバリア層2と被膜層3を順次積層してなり、ガスバリア層2は酸化アルミニウムからなり、かつ、膜厚(厚さX)が0.005μm以上0.15μm以下であり、被膜層3は、フラッシュ蒸着法を用いて重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物を成膜し、紫外線または電子線を照射して硬化させてなり、かつ、膜厚(厚さY)が0.1μm以上20μm以下であり、ガスバリア層2の厚さXと被膜層3の厚さYとの関係が、下記式を満たすガスバリア性積層フィルム。0.002≦XY≦0.5
【選択図】図1
Description
通常のガスバリア性を有する包装材料としては、比較的ガスバリア性に優れている塩化ビニリデン樹脂フィルムまたは塩化ビニリデン樹脂をコーティングしたフィルムなどがよく用いられてきたが、これらの包装材料は、高度なガスバリア性が要求される包装に用いることはできない。従って高度なガスバリア性が要求される場合には、アルミニウムなどの金属箔をガスバリア層として積層した包装材料を用いざるを得なかった。
また近年、次世代のFPDとして期待される電子ペーパー、有機ELなどの開発が進むなかで、これらFPDのフレキシブル化を達成するため、ガラス基板をプラスチックフィルムに置き換えたいという要求が高まっている。ガラス基板は環境由来の酸素や水蒸気による内部素子の劣化を抑制するため必要とされるガスバリア性が備わっている。しかし、上述した包装材料用のガスバリアフィルムはそのバリアレベルには達しておらず、プラスチックフィルムが適用され得る電子ペーパー、有機ELなどでは、食品包材用バリアフィルムの100倍から1万倍のガスバリア性が必要とも言われている。
しかしながら、上記ドライコーティング法を用いたとしても、高いガスバリア性を目指すために緻密な膜を得ようとすると、高温プロセスが必要であったり、緻密であるために膜中の応力が大きくなる傾向がある。そのため、プラスチックフィルムの使用可能な温度範囲では緻密な膜を得ることが困難であったり、プラスチックフィルムと無機酸化物薄膜との熱膨張係数の差が大きいため密着不良やクラックが発生したりする問題が生じ、高いガスバリア性の発現は容易ではない。
特に本発明の目的は、上述した電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けとして、ガスバリア性が不十分である問題を解決するものであり、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れた、透明なガスバリア性積層フィルムを提供することにある。
前記ガスバリア層は酸化アルミニウムからなり、かつ、膜厚(厚さX)が0.005μm以上0.15μm以下であり、
前記被膜層は、フラッシュ蒸着法を用いて重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物を成膜し、紫外線または電子線を照射して硬化させてなり、かつ、膜厚(厚さY)が0.1μm以上20μm以下であり、
前記ガスバリア層の厚さXと前記被膜層の厚さYとの関係が、下記式を満たすことを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
0.002≦XY≦0.5 (式中、XおよびYの単位はμmである)
請求項2に記載の発明は、前記ガスバリア層が真空蒸着法により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記被膜層を形成する前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物が、モノアクリレート、ジアクリレートのうちの少なくとも1つを含有しており、前記モノアクリレートとジアクリレートを合わせた含有率が前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の50重量%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項5に記載の発明は、前記被膜層の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
これらの透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、透明なプラスチックフィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等などの添加剤を含有してもよい。さらに、透明なプラスチックフィルムにおいて、他の層を積層する側の表面には、密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
これらの透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の厚さは、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性や他の層を積層する場合の加工適性などを考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲、特に6〜30μmの範囲であることが好ましい。
真空蒸着法について以下に説明する。真空蒸着法とは真空中で物質を加熱蒸発させ、基材に付着させて薄膜を作製する方法である。化合物薄膜を作製したい場合は、雰囲気中に酸素や窒素、炭化水素などの反応性ガスを導入すれば化合物薄膜が作製可能となる。本発明においては蒸発物質としてアルミニウムを用い、反応性ガスとしては酸素を用いて酸化アルミニウム薄膜のガスバリア層2を作製することができる。なお、加熱方法としては、抵抗誘導加熱、高周波誘導加熱、電子線衝撃による加熱、アーク放電加熱などがあるが、いずれを使用してもよい。
0.002≦XY≦0.5(式中、XおよびYの単位はμmである)
硬化収縮率 = (硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度×100
未硬化のフラッシュ蒸着被膜層に紫外線を照射して硬化させる場合には、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物に光重合開始剤を混合する。具体的な光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アセトフェノン誘導体などを挙げることができる。これらの光重合開始剤を0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の割合で混合される。
すなわち、上記被膜層3が上述したガスバリア性向上機能を発揮し、かつ密着性も低下させないためには、酸化アルミニウム薄膜からなる上記ガスバリア層2の厚さX[μm](0.005≦X≦0.15)と上記被膜層3の厚さY[μm](0.1≦Y≦20)とが、不等式0.002≦XY≦0.5を満たすことが好ましく、さらに好ましくは、
0.004≦XY≦0.3である。
硬化収縮率が0.2%未満であると被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、ガスバリア層2を十分に引き締めることができないため、上記ガスバリア性向上機能が期待できない。また、硬化収縮率が10%を超えると被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力が過度に働き、ガスバリア層2との密着性が低下する可能性が高くなる。
モノアクリレート、ジアクリレートおよびトリアクリレートには様々な種類があり、特に限定されないが、ガスバリア層との密着性が良好であって、効率良く未硬化のフラッシュ蒸着被膜層が形成でき、さらに衛生性に優れたものを選択することが好ましい。具体的には、モノアクリレートとしては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレートなどが挙げられる。ジアクリレートとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが挙げられる。トリアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。これらの比率は、たとえば、モノアクリレート/ジアクリレート/トリアクリレート=60/30/10(重量%)に設定することが望ましい。
以下の実施例1、2、3においては、図1に示したように、基材層1上に、ガスバリア層2と被膜層3とを順次積層したガスバリア性積層フィルムを作製した。
基材層1として厚さ12μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、巻取式真空成膜内に設置した。成膜方法は反応性ガスとして酸素を導入した真空蒸着法を使用し、加熱には電子線を用い、基材層1上に厚さ0.02μmの酸化アルミニウム薄膜からなるガスバリア層2を積層した。連続して、フラッシュ蒸着法により、ガスバリア層2上に2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(硬化収縮率:6.3%)からなる、厚さ0.5μmの未硬化のフラッシュ蒸着被膜層を積層した。フラッシュ蒸着被膜層に電子線を照射して硬化させ、被膜層3を形成した。こうして実施例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、酸化アルミニウム薄膜からなるガスバリア層2の厚さを0.1μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1と同様にして、基材層1上に酸化アルミニウム薄膜からなるガスバリア層2と被膜層3とを順次積層した後、DC電源を用い窒素とアルゴンとの1/1混合ガスをプラズマ化して、被膜層3の表面をプラズマ処理した。こうして実施例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1上に酸化アルミニウム薄膜からなるガスバリア層2のみを積層し、被膜層3は積層しなかった。こうして比較例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、酸化アルミニウム薄膜からなるガスバリア層2の厚さを0.1μm、被膜層3の厚さを10μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、酸化アルミニウム薄膜からなるガスバリア層2の厚さを0.01μm、被膜層3の厚さを0.1μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
次に、実施例1、2、3および比較例2、3のそれぞれの単体フィルムの被膜層3の表面および比較例1の単体フィルムのガスバリア層2の表面に、厚さ1.2μmの印刷層を積層した。以下、これらを印刷フィルムという。
次に、実施例1、2、3および比較例1、2、3のそれぞれの印刷フィルムの印刷層の表面に、5g/m2のポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmのポリプロピレンのヒートシール層を積層した。以下、これらを積層フィルムという。
1.酸素透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルムについて、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX−TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m2・24h・MPa)を測定した。
2.水蒸気透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・24h)を測定した。
3.ラミネート強度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の積層フィルムから15mm幅にスリットした試験片について、通常のテンシロン型万能試験機により、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
一方、被膜層が積層されていない比較例1のガスバリア性積層フィルムからなる印刷フィルムおよび積層フィルムは、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度が高くガスバリア性に劣っていた。
また、ガスバリア層2の厚さX[μm]、被膜層3の厚さY[μm]がXY>0.5となる比較例2のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、ガスバリア性はほぼ同等レベルであるが、積層フィルムのラミネート強度が著しく劣っていた。
さらにまた、ガスバリア層2の厚さX[μm]、被膜層3の厚さY[μm]がXY<0.002[μm2]となる比較例3のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、積層フィルムのラミネート強度は同等レベル以上であるが、単体フィルムの酸素透過度および水蒸気透過度、印刷フィルムおよび積層フィルムの酸素透過度が高く、ガスバリア性が著しく劣っていた。
2…ガスバリア層
3…被膜層
Claims (5)
- 透明なプラスチックフィルムからなる基材層の少なくとも一方の面上に、ガスバリア層と被膜層を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムにおいて、
前記ガスバリア層は酸化アルミニウムからなり、かつ、膜厚(厚さX)が0.005μm以上0.15μm以下であり、
前記被膜層は、フラッシュ蒸着法を用いて重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物を成膜し、紫外線または電子線を照射して硬化させてなり、かつ、膜厚(厚さY)が0.1μm以上20μm以下であり、
前記ガスバリア層の厚さXと前記被膜層の厚さYとの関係が、下記式を満たすことを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
0.002≦XY≦0.5 (式中、XおよびYの単位はμmである) - 前記ガスバリア層が真空蒸着法により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記被膜層を形成する前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物が、モノアクリレート、ジアクリレートのうちの少なくとも1つを含有しており、前記モノアクリレートとジアクリレートを合わせた含有率が前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の50重量%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記被膜層の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
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