JP2010046816A - 二軸配向積層ポリエステルフィルム - Google Patents

二軸配向積層ポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】耐候性に優れ、フィルムの機械軸方向と光学軸の方向とが高精度で一致しており、その光学軸の方向がフィルム面内で一様である光学特性に優れた基材フィルムを提供する
【解決手段】下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルム。(1)フィルム長手方向に分子配向主軸を有する、(2)フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差が0.03以上、かつ0.10以下である、(3)波長380nmの光線透過率が20%以下である
【選択図】なし

Description

本発明は、幅方向における光学軸精度が良好で、優れた耐光性を有し、液晶表示装置に用いられる保護フィルムとして好適な二軸配向積層ポリエステルフィルムに関する。
光学用途、特に液晶表示装置の構成部材に用いられるフィルムには高い光学特性が要求される。例えば、偏光板や位相差板用の保護フィルムでは、キズ、異物などの欠点検査で行われるクロスニコル下の観察において、コントラストや明るさの変動を生じないこと、また、干渉色を生じない機能が求められる。また、偏光子と貼り合わせる偏光子用の保護フィルムとして用いられる場合は、偏光子との偏光ズレが生じないような高度な光学特性が求められる。
上記のような保護フィルムは基材フィルムに粘着剤層、易接着層、離型層などの機能層を設けて作製される。これら保護フィルムの基材には、強度機能やコストの観点から、二軸配向ポリエステルフィルムが広く用いられている。直鎖状のポリエステル高分子が配向した構造を有する二軸配向ポリエステルフィルムは、光学的に複屈折性を示す複屈折体である。よって、二軸配向ポリエステルフィルムは分子の配向方向に対して平行方向と垂直方向の直行する2本の光学軸を有する。そのため保護フィルムの基材が有する光学軸が偏光子、偏光板、あるいは位相差板の光学軸に対して傾斜した状態で積層(積層体)されると、クロスニコル下におかれた際に透過光や干渉色を呈し、視認性を阻害する要因となってしまう。更に、保護フィルムの基材が有する光学軸の方向がフィルム面内でばらついていると、前記積層体の場所によってコントラストや明るさ、干渉色の状態が変動し、視認性が著しく低下することとなる。また、偏光子保護フィルムの基材として偏光子と貼り合わせて使用する場合は、偏光子を紫外線から保護しうる耐候性が必要とされる。
従って、前記保護フィルムの基材である二軸配向ポリエステルフィルムには、優れた耐候性と、優れた光学軸精度、すなわち、フィルムの機械軸方向(長手方向・幅方向)と光学軸の方向とが高精度で一致していること、更に、その光学軸の軸方向がフィルム面内で一様であることが求められる。
しかしながら、縦方向−横方向に逐次的に延伸して作製される二軸配向ポリエステルフィルムは、分子配向主軸、即ち光学軸の向きがフィルム幅方向で分布しやすく、その延伸、熱処理工程で発生するボーイング現象により、フィルムの端部になる程、幅方向に対する光学軸の傾斜角が大きくなるという問題を有している。そのため、偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルムの基材としては、光学軸の傾斜が比較的小さい、フィルム幅方向の中央部付近から採取した製品しか用いることが出来なかった。そのため、基材フィルムの調達コスト、ひいては保護フィルムの供給コストの削減を進める上で、大きな問題となっている。
更に、近年の液晶ディスプレイの大画面化傾向に伴い、偏光子や偏光板、位相差板のサイズも大きくなり、保護フィルムも広幅化することが望まれている。保護フィルムが広幅化すると、前記の理由により、これまでの中央部付近よりもさらに広い領域からフィルムを採取する必要があり、ひとつの保護フィルム内でのフィルム幅方向における光学軸の傾斜角度のばらつき(変動)も大きくなってしまう。つまり、大型液晶表示装置用偏光子、偏光板、位相差板に貼り付けて使用される保護フィルムにおいては、幅方向に対してより広い領域でも光学軸が傾斜しない優れた光学軸精度が求められるようになってきている。
なお、上記問題の原因となるボーイング現象を軽減するため、これまでに、以下のような取り組みがなされている。例えば、一軸延伸したフィルムをテンターで横延伸し、ガラス転移温度以下に冷却し、次いでフィルムの両端把持をいったん解放して再度把持し、120〜240℃の温度領域において昇温させながら熱固定する方法(特許文献1を参照)、横延伸直後にフィルム温度をいったんガラス転移温度以下の温度まで下げて剛性を増し、熱処理室側のフィルムが延伸室に引き込まれることを防止する方法(特許文献2、3を参照)、横延伸完了後のフィルムの両端をテンターの把持手段で把持したまま該フィルムの中央付近の狭い部分のみをニップロールにより把持して、中央部を強制的に進行させる方法(特許文献4参照)、また、フィルムを二軸延伸後、フィルムの中央部より端部の温度が高くなるように加熱する方法(特許文献5,6を参照)、幅方向の延伸と熱固定の間にガラス転移温度(Tg)以下の温度で冷却し、次いで熱固定温度の最高温度で幅方向に再延伸を与える方法(特許文献7、8、9を参照)、熱固定領域中に、三角形、台形、弓形のいずれかの冷却領域を設ける方法(特許文献10、11を参照)、横延伸すると同時に長手方向弛緩処理を施す方法(特許文献12を参照)である。
特開昭57−87331号公報 特開平3−130127号公報 特開平3−216326号公報 特公昭63−24459号公報 特開昭62−183327号公報 特開昭62−183328号公報 特開2001−328159号公報 特開2002−172694号公報 特開2002−361737号公報 特開2004−18588号公報 特開2004−18784号公報 特開2004−358742号公報
しかしながら、これらの方法は何れも縦方向−横方向に逐次的に延伸することでフィルム幅方向に分子配向主軸を有する二軸延伸フィルムにおいて、ボーイングの発生を少しでも抑制しようとするアプローチである。縦方向−横方向に逐次的に延伸する場合、テンター投入前にフィルムの幅方向に引いた直線は、延伸、熱固定を経ることで、ボーイングにより弓状の曲線となる。この曲線具合の幾何学的な歪み具合(幾何学的なボーイング量)は曲線の弦と弧の最大距離量で表わされる。しかしながら、本明細書の実施例(比較例2、比較例3)にも示すように、幾何学的なボーイング量と、光学主軸の傾斜角度などで表わされる物性的なボーイング量とは、必ずしも比例的な関係に有るわけではなく、幾何学的なボーイング量の改善効果から光学軸の精度を予断することは避けなければならない。
具体的には、特許文献1には、従来公知の製造方法に対し、幾何学的なボーイング量(弦と弧の最大距離)が半減したフィルムが開示されている。しかしながら、ボーイングを生じていることに変わりはない。また、光学軸の傾斜角度については、その改善効果は何ら、示唆も開示もされていない。
また、特許文献2には幾何学的なボーイング歪が2.58%まで低減されたフィルム、特許文献3には幾何学的なボーイング歪が2.66%まで低減されたフィルムが、それぞれ開示されている。しかし、これらの提案においてもボーイング現象は依然生じており、また、光学軸の傾斜角度についても何ら開示されていない。
また、特許文献4には、幾何学的なボーイング量が従来公知の方法に対して、約10分の1にまで低減されたフィルムが開示されている。しかし、光学軸の傾斜角度については、その改善効果は何ら示されていない。
また、特許文献5、6には、幾何学的なボーイングの形が台形状のフィルムが開示されている。しかし、光学軸の傾斜角度については、その改善効果は何ら、示唆も開示もされていない。
また、特許文献7には、幅950mmのフィルムにおいて、その両端部200mmずつを除いた領域の配向角が、フィルムの横方向に対して1.3度以下のフィルムが開示されている。しかしながら、フィルム幅方向の中央部付近で配向角が横方向に揃っていること自体は従来公知の事実であり、本提案には、何ら特別の効果は認められない。
また、特許文献7には、中央部からフィルム幅方向において2mの位置で、配向角が7度のフィルムが開示されている。本提案では、フィルムの全幅が開示されていないので、全幅にわたって、どの程度均一な配向角が得られているのかが不明である。
また、特許文献8には、フィルム幅方向の相対位置0.6における配向角が4度のフィルムが開示されている。しかしながら、前述のごとく、フィルムの中央部分で配向角が横方向に揃っていること自体は従来公知の事実である。
また、特許文献9には、フィルム幅方向の8割の領域において、配向角の最大値が4.6度のフィルムが開示されている。しかしながら、本提案のフィルムはフィルム幅方向の配向角分布において、5個の極値を有している。そのため、フィルムの幅方向で配向角が急激に変化するという問題を内在しており、問題の本質的な解決にはならない。
また、特許文献10、及び11には、フィルム幅方向8割位置までの最大配向角が5.1度、及び4度のフィルムが夫々開示されている。しかしながら、これらの方法においても、前記光学歪の問題を根本的に解決するには至っていない。
また、特許文献7、9、10、11、12では、二軸配向ポリエステルフィルムの幾何学的なボーイング量を抑制させる為には、長手方向の延伸倍率を幅方向の延伸倍率より小さくなるよう設定されている。これは、長手方向の延伸倍率を小さくすることで、フィルムに生じるボーイングによる歪を小さくする意図である。確かに、これによって幾何学的なボーイング量は抑制されるものの、上記のように光学軸精度の課題を本質的に解決するには至っていない。
さらに特許文献7の実施例には、横方向−縦方向に逐次的に延伸することでフィルムの長手方向に分子配向主軸を有する二軸延伸フィルムが開示されている。しかし、特許文献7は、ボーイングを低減する目的で、上記のように長手方向の延伸倍率を幅方向の延伸倍率以下に設定されている。このように単に配向主軸が長手方向にあるだけでは、光軸方向はボーイングの影響を受け易く、さらに、フィルムの光学軸は長手方向の分子配向の波うち(変動)の影響を強く受ける為、本明細書の実施例(比較例1)にも示すように、フィルム面内での光学軸方向がばらつき、その方向が一様にならない。
つまり、これら特許文献の方法は何れも、フィルムの幾何学的なボーイング量を少しでも抑制しようとするアプローチであって、偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルムにおける光学軸精度の問題を本質的に解決するに至っていない。
本発明の目的は、耐候性に優れ、フィルムの機械軸方向(長手方向・幅方向)と光学軸の方向とが高精度で一致しており、その光学軸の方向がフィルム面内で一様である偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルムの基材として好適な二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供することである。
また、上記の特性を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムを、低コストで、安定的に製造するための方法を提供することである。
そして、それらにより、大画面液晶ディスプレイの画質向上、及びその普及に資することを目的とするものである。
本発明者は、鋭意検討の結果、基材フィルムの分子配向を長手方向に高度に配向させることで、上記の課題を解決することを見いだした。すなわち、本発明の偏光子用、偏光板用または位相差板用保護用基材フィルム、及びその製造方法は、以下の構成からなる。
第1の発明は、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルムである。
(1)フィルム長手方向に分子配向主軸を有すること
(2)フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差が0.03以上、かつ0.10以下であること
(3)波長380nmの光線透過率が20%以下である
第2の発明は、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムの機械軸方向に対する光学主軸の最大傾斜角が5度以下であって、フィルム幅方向に30cm間隔で測定した光学主軸の傾斜角の変動が5度以下であることを特徴とする前記二軸配向積層ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムを基材とすることを特徴とする偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルムである。
第4の発明は、前記二軸配向積層ポリエステルフィルム製造方法であって、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムが、未延伸フィルムを幅方向に延伸した後、長手方向に延伸を行い、次いで熱処理を行って製造されることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルムの製造方法である。
第5の発明は、前記二軸配向積層ポリエステルフィルム製造方法であって、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムが、未延伸フィルムを幅方向および長手方向に同時二軸延伸した後、さらに長手方向に延伸を行い、次いで熱処理を行って製造されることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルムの製造方法である。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは長手方向に高度に分子配向しており、長手方向の屈折率と幅方向の屈折率との差が特定範囲内に制御されているので、光学軸の方向が幾何学的なボーイングの影響を受けず、フィルムの機械軸に対する光学軸方向の変動幅が少ない。そのため、光学軸と機械軸とが高精度で一致している。
また、本発明の製造方法によれば、二軸配向積層ポリエステルフィルムの幅方向の取り位置によらず、上記の特性を安定して得ることが出来る。また、二軸配向積層ポリエステルフィルムは耐候性に優れ、偏光子などの機能色素を保護することが可能である。
本発明においてポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとジオールとを重縮合させて得ることのできる結晶性ポリエステルである。そして芳香族ジカルボン酸としては、代表的には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸が挙げられ、ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
上記のポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールを直接重縮合させて得られる他、芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルとグリコールをエステル交換反応させた後に重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる方法等によっても得られる。
かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。また、上記ポリエステルは、ホモポリエステルの他に、各種成分を共重合した共重合ポリエステルであってもよい。更に、ポリエステルと他の共重合体とのポリマーブレンドであってもよい。ブレンドできる他の共重合体としては、ポリオレフィや他種ポリエステル等が使用される。ホモポリマーとポリアルキレン共重合体ポリマー、特には、ポリエーテルエステル共重合とのブレンドまたは異なるポリアルキレングリコール共重合体ポリマー同士のブレンドが好適である。これらの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、不純物が少なく透明性、機械的性質、表面平滑性、耐溶剤性、耐スクラッチ性、非透湿性、コストなどの総合性能から最も好適に用いられる。
また、前記ポリエステルの固有粘度は、0.45から0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.45よりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70より大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘーズが4.0%以下であることが好ましくあり、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.0%以下である。ヘーズが4.0%以下の場合は、偏光子用保護フィルムとして使用する場合に高い輝度が得られ好適である。また、前記ヘーズの下限としては、0.6%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。前記ヘーズが0.6%未満の場合は、ハンドリングに必要な易滑性が低下する場合がある。また、極度に透明性が高くなると、欠点検査において問題とならないレベルの欠点が見える場合があるため、偏光板用あるいは位相差板用の保護フィルムに基材としては好ましくないことがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは波長380nmの透過率が20%以下であることが必要である。波長380nmの透過率は15%以下であることが好ましく、さらに5%以下であることが好ましい。前記透過率が20%以下であれば、偏光子などの光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。二軸配向ポリエステルフィルムの波長380nmの透過率を20%以下にするためには、例えば下記紫外線吸収剤の濃度、及び基材フィルムの厚みを適宜調節する。なお、本発明における透過率は、接着性改質基材フィルム光学積層フィルムの平面に対して垂直方法に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U−3500型)を用いて測定することができる。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、好ましくは3層以上の多層構造を有する。紫外線吸収剤を有する層をA層、これら以外の面をB層、C層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、B/A/B、B/A/C、B/A/C/B、あるいはB/A/C/A/B等の構成が考えられる。A〜C層の各層は、それぞれ、ポリエステル樹脂の構成は同じであっても良いし、異なっていても良いが、B/A/B構成(2種3層構成)とすることが好ましい。いずれにしても、中間層として紫外線吸収剤を含有する層を設けることが必要である。中間層に紫外線吸収剤を含有させることで、添加剤のブリードアウトを好適に防ぐことができ、添加剤のブリードアウトによる密着性の低下を抑制することができる。
A層、B層の2種3層構成において、B/A/Bの構成とする場合、層全体に対するA層の厚みの比が0.02〜0.20の範囲となるような層構成が好ましく、0.05〜0.15の範囲となるような層構成がさらに好ましい。下限値が0.02より低い場合には、紫外線吸収剤のブリードアウトが生じる場合がある。また上限値が0.20を超える場合は耐候性が低下する場合があるので好ましくない。
本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤としては例えば2−[2'−ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2´−ヒドロキシ−3´−tert−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,2´−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールなどが挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては例えば2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンなどが挙げられる。しかし、特にこれらに限定されるものではない。
フィルムにハンドリング性(易滑性)を付与するために、フィルムに滑剤として粒子が添加させることが好ましい。ポリエステル樹脂に添加される無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等を代表的なものとして用いることができる。また、有機粒子としてはアクリル系、スチレン系、オレフィン系、イミド系粒子などを用いることができる。
前記無機粒子または有機粒子は、その平均粒径が0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上、8μm以下、最も好ましくは0.1μm以上、3μm以下の平均粒径のものを用いるのが良い。
粒子の平均粒径が0.01μmより小さい場合は、易滑性を奏するために添加量を多くする必要があり、ヘーズ値を必要範囲内に制御することが困難である。また、粒子の平均粒子径が10μmより大きい場合には、製膜工程中での添加粒子の脱落が著しく、工程を汚染するため好ましくない。
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は以下の方法により行う。粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れている2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
また、高い透明性が必要とされる場合は、フィルム内部に実質的に粒子を含有させないことも好ましい態様である。ここで、「実質的に粒子を含有しない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルム中には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤などを配合して用いても良い。
本発明者らは、光学軸精度とボーイングとの関係について鋭意検討を行った結果、フィルム長手方向に高度に分子配向させた二軸延伸フィルムでは、驚くべきことに、その幅方向における取り位置、及び幾何学的なボーイングの程度とは無関係に、光学軸がフィルムの機械軸(長手方向、幅方向)に高度で一致していることを見出し、本発明に到達したものである。すなわち、本発明の偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルムの基材として用いられる二軸配向ポリエステルフィルムは、(1)フィルム長手方向に分子配向主軸を有しており、(2)フィルム長手方向の屈折率(nx)とフィルム幅方向の屈折率(ny)との差が0.03以上、かつ0.10以下である、ことが重要である。
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムが上記特性を発揮する理由については以下のように考えている。
前述の通り縦方向−横方向に逐次的に延伸することで作製される二軸配向ポリエステルフィルムは後段に横方向(フィルム幅方向)に延伸がなされるので、分子配向が全体として幅方向に配向しやすくなり、フィルム幅方向の分子配向主軸を有することとなる。そのため、係る二軸配向ポリエステルでは、光学主軸の方向が幅方向に分布することになる。よって、横延伸により生じ、熱固定で増進されるボーイングは、幅方向における物性の歪を引き起こすので、幅方向に分布する光学主軸はボーイングの影響を受け易くなり、フィルム幅方向の端部になるほど光学主軸の歪が大きくなる。
一方、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム長手方向に高度に分子配向しているため、幅方向に歪が生じるボーイングの影響を受けにくい。しかし、ボーイングの影響は受け難くなるものの、単に長手方向に配向主軸を揃えただけでは、長手方向の分子配向の波うち(変動)の影響を強く受ける為、フィルム面内での光学軸方向が一様にならない。そこで、さらにフィルム長手方向の屈折率(nx)とフィルム幅方向の屈折率(ny)の屈折率差を、上記範囲内に制御することで、長手方向の分子配向の波うちを抑制し、光学軸の方向をフィルム面内に一様にするに至った。よって、本発明の、二軸配向ポリエステルフィルムの光学軸は幅方向における取り位置、及び幾何学的なボーイングの程度とは無関係に、フィルムの機械軸方向(長手方向、幅方向)に高度で一致する。なお、このようなフィルムの製造方法については後述する。
前記フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差が0.03未満の場合には、二軸配向ポリエステルフィルムの光学軸の傾斜が、幾何学的なボーイングの影響により大きくなるので好ましくない。さらに、上記屈折率差が0.03未満の場合は、長手方向の分子配向の波うち(変動)が大きくなり、フィルムの機械軸に対する光学主軸の傾斜角の変動が大きくなる。フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差は、0.04以上であることが好ましく、更には0.05以上であることが好ましい。
一方、前記フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差は、0.10以下であることが必要であり、より好ましくは0.09以下、更には0.08以下であることが好ましい。フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差が0.10より大きくなるとレターデーションの値が大きくなりすぎて、偏光下では白っぽくなり、異物、その他の検査が困難となる。さらに、フィルの配向方向に裂けが生じやすくなり、機械的強度が低下する。
前記特性を有する二軸配向ポリエステルフィルムは、以下の好ましい特性を有している。即ち、機械軸方向(長手方向、幅方向)に対する光学主軸の最大傾斜角が5度以内である。また、フィルム幅方向に30cm間隔で測定した光学主軸の傾斜角の変動が、5度以内である。
なお、前記最大傾斜角は4度以内がより好ましく、3度以内が更に好ましく、2度以内が最も好ましい。ここで、機械軸方向とはフィルムの長手方向(機械方向)と、幅方向と直行する2方向をいう。二軸配向ポリエステルの場合、光学軸は分子配向方向に平行な方向と垂直な方向の2方向の光学軸を有する。本発明では、光学軸は分子配向主軸がある長手方向にあり、幅方向にもうひとつの光学軸を有す。これらの光学軸の機械軸に対する最大傾斜角が5度を超える場合、クロスニコル下での欠点検査の際に透過光や干渉色を呈し、検査に支障をきたす。また、フィルム幅方向の任意の30cm間隔で測定した光学主軸の傾斜角の変動は、4度以内がより好ましく、3度以内が更に好ましく、2度以内が最も好ましい。また、光学主軸の傾斜角の変動が、フィルム幅30cmあたり5度を超えると、部分的に干渉色を生じたり、明暗の差が大きくなり、やはり検査に支障をきたす。
また、前記二軸配向ポリエステルフィルムは、150℃×30分における熱収縮率が、長手方向、幅方向ともに3.0%以下であることが好ましい。上記熱収縮率が3.0%を超える場合には、加工時の加熱によりフィルムが大きく収縮し、平面性悪化、シワ、カール等が発生するので好ましくない。
また、本発明のフィルムの厚みは特に制限されるものではなく任意であるが、9〜300μmであることが好ましく、12〜50μmの範囲であることが最も好ましい。厚さが300μmをこえるとコスト面で問題があり、またリターデーションが大きくなり、クロスニコル化での視認性が低下しやすくなる。また、厚さが9μmに満たない場合は、機械的特性が低下し、偏光子用、偏光板用または位相差板用の保護フィルムとしての機能が果たせない。
上記の特性を有する二軸配向ポリエステルフィルムは以下の達成手段により得られるが、本発明の特徴を有する二軸配向ポリエステルフィルムであれば、下記方法以外により得られたとしても本発明の範囲に含まれる。
(1)延伸後段での縦延伸
本発明において二軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸を長手方向に配向させるには、延伸工程の後段において、縦延伸を施すことが好ましい。二軸延伸フィルムの分子配向は後段になされる延伸方向に強く影響を受ける傾向にあり、上記態様によりフィルムの配向主軸を長手方向に配向しやすくなる。
(2)長手方向の延伸倍率
前述したように、幾何学的なボーイングを抑制するという従来の技術思想では、長手方向の延伸倍率を低くすることが望ましいとされていた。しかし、本発明においては、二軸配向ポリエステルフィルムは長手方向の分子配向の変動を抑制するには、長手方向の延伸倍率を高くすることが望ましい。長手方向の延伸倍率を高くすることで、フィルムの配向主軸が長手方向に高度に配向することとなり、光学軸方向がフィルム面内で一様になる。上記特性の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するには、長手方向の延伸倍率は3.0〜6.0倍が好ましく、特に4.0.〜5.0倍が更に好ましい。また、幅方向の延伸倍率は2.0〜5.0倍が好ましく、2.5〜4.0倍が更に好ましい。長手方向と幅方向の延伸倍率は、長手方向の延伸倍率が幅方向の延伸倍率よりも1.0以上、好ましくは1.5以上大きくするのが望ましい。
(3)熱固定
ボーイングは横延伸により生じ、その後の熱固定により歪が増大、固定化される。よって、ボーイングを抑制するという点では、理想的には熱固定をしない、もしくは熱固定温度を低くすることが好ましい。しかしながら、本発明ではボーイングの影響がない為、連続した高温での熱セットが可能である。これにより高い熱寸法安定性を有する二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが可能となる。
以下、一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた場合の、具体的な製造方法について詳述する。
フィルムに紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用し得るが、例えば、予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリエステル原料とをブレンドしマスターバッチを作製しておき、基材フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリエステル原料を混合する方法などによって配合することができる。
この時マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5〜30重量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間で押し出すのが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し温度1分以下では紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加しても良い。
中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造の基材フィルムは、具体的には次のように作製することができる。外層用としてPETのペレット単独、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとPETのペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。
なお、発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去するため、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
次にフィルムの延伸工程の説明であるが、本発明に用いられる二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向に高度に配向させることを特徴とする。そのため、延伸方式としては未延伸フィルムをテンターを用いて幅方向に延伸した後、ロール群によりフィルムを加熱し、更に赤外線ヒーターなどを用いて長手方向に延伸した後、再びテンターに導き、熱固定を行う方式、つまりTD−MDの順に延伸を行う逐次二軸延伸法、または長手方向と幅方向の延伸を同一テンター内で行う同時二軸延伸法のいずれかの方法を採用することが好ましい。
はじめに前述のTD−MDの順に延伸を行う逐次二軸延伸の説明を行う。
まず、前記の未延伸シートを、テンター方式の延伸機によりテンターレールの幅を漸時広げることにより横方向に延伸し、一軸配向ポリエステルフィルムを得る。予熱ゾーンの温度は樹脂のガラス転移温度以上、130℃以下にするのが好ましい。予熱ゾーンは所定の予熱温度で規定される1又は2以上のゾーンよりなること好ましい。予熱後、続いて延伸されるが、延伸倍率は2.0〜5.0倍、特に2.5〜4.0倍が好ましい。延伸ゾーンの温度は、ポリエステルのガラス転移点Tg〜(Tg+50)℃の範囲である。延伸温度がTgより低い場合は、均一に延伸できず、厚み斑の原因となる。また、延伸温度が(Tg+50)℃より高い場合も、幅方向における厚みの均一性が悪くなるため好ましくない。延伸後、1または2つ以上のゾーンを使用し、徐々にフィルムを冷却し、(Tg−20)℃以下としてからクリップの把持を外し、次工程へ導く。
次に、ポリエステルのガラス転移点Tg以上の温度に加熱されたロール群からなるロール式延伸機で長手方向に延伸を行う。延伸倍率は長手方向に3.0〜6.0倍、特に4.0.〜5.0倍が更に好ましい。延伸を行う際、赤外線ヒーターなどを用いて補助加熱を行い、フィルム延伸温度を(Tg+10)〜(Tg+50)℃の範囲とする。(Tg+10)℃より低い場合は、破断を生じやすく、(Tg+50)より高い場合は、長手方向の配向が低くなり、本発明の目的を達するためには好ましくない。延伸後、冷却ロールにより、フィルムをTg以下に冷却した後、次工程へ導く。
続いて、フィルムを再びテンターに導き熱固定を行うが、熱固定ゾーンの温度は、(Tg+130)〜(Tm−10)℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは(Tg+140)〜(Tm−20)℃の範囲である。(Tmはポリエステルの融点を表わす。)熱固定ゾーンの温度が(Tg+130)℃より低い場合は、熱収縮率が高くなり、加工時のシワ、カールの原因となりうる。熱固定ゾーンの温度が(Tm−100)℃より高い場合は、結晶化が進み、トリマー工程、スリット工程で延伸方向に裂けやすくなり歩留りの低下するため好ましくない。また、必要に応じて長手方向、幅方向に弛緩処理を行うことができる。弛緩量は条件により異なるが、1〜10%程度である。また、熱固定後の工程については、TDクリップで把持されていたフィルム端部をカットし処理する工程、コロナ処理を施す工程、ロール間で弛緩処理を施す工程等を経て製品巻取り機にて巻き取られる。
次に同時二軸延伸についての説明を行う。
得られた未新延伸ポリエステルフィルムの両端部をクリップで把持し予熱ゾーンへ導く。予熱ゾーンの温度は樹脂のガラス転移温度以上、130℃以下にするのが好ましい。予熱ゾーンは所定の予熱温度で規定される1又は2以上のゾーンよりなるのが望ましい。
予熱後、続いて長手方向、幅方向に同時に延伸されるが、延伸倍率は長手方向に3.0〜6.0倍、特に4.0.〜5.0倍が更に好ましい。また、幅方向の延伸倍率は2.0〜5.0倍、2.5〜4.0倍が更に好ましい。長手方向と幅方向の延伸倍率は、長手方向の延伸倍率が幅方向の延伸倍率よりも1.0以上、好ましくは1.5以上大きくすることが望ましい。
延伸終了点においては、長手方向と幅方向の延伸が同時に終わるような設定か、もしくは長手方向の延伸が後に終わる設定が好ましい。後者にて、幅方向の延伸終了後、長手方向の延伸が、長手方向延伸倍率の全体の15%以上を行うことが好ましい。
延伸ゾーンの温度はTg〜(Tg+50)℃の範囲である。延伸温度がTgより低い場合は、均一に延伸できず、厚み斑の原因となる。また、延伸温度が(Tg+50)℃より高い場合も、幅方向における厚みの均一性が悪くなるため好ましくない。
フィルムの延伸後、連続してフィルムは熱固定されるが、その前に、フィルムの延伸ゾーンと熱固定ゾーンの間には、中間ゾーンを設けることが好ましい。中間ゾーンを設けることにより、延伸ゾーンと熱固定ゾーン間での熱交換を抑え、各ゾーンの温度精度を向上させることができる。
上記中間ゾーンは、非加熱とするか、あるいはポリエステルのTg−50℃〜Tg+60℃の範囲、より好ましいくはTg−40℃〜Tg+30℃の範囲で温度制御された熱風循環方式とするのが良い。熱風循環方式の中間ゾーンを採用する場合、循環風の温度がTg−50℃以下では、熱固定ゾーンでのフィルムの加熱に多く熱量が必要となるので好ましくない。逆にTg+60℃以上では、二軸延伸フィルムの光学軸精度が悪化する場合があるので好ましくない。中間ゾーンをフィルムが通過する時間は、好ましくは2〜20秒、より好ましくは4〜15秒である。2秒以下であるとフィルム温度が十分下がらず、また、20秒以上であると冷却に必要なゾーン長が長くなり、設備が大型化してしまう。また、中間ゾーンを設ける替りに、延伸と熱固定を別々のテンターで行い、フィルム温度を上記範囲内に調整しても良い。
熱固定ゾーンの温度は、好ましくは(Tg+130)〜(Tm−10)℃の範囲であり、より好ましくは、(Tg+140)〜(Tm−20)℃の範囲である。熱固定ゾーンの温度が(Tg+130)℃より低い場合は、熱収縮率が高くなり、加工時のシワ、カールの原因となる。熱固定ゾーンの温度が(Tm−10)℃より高い場合は、結晶化が進み、トリマー工程、スリット工程で延伸方向に裂けやすくなり歩留りの低下が問題となる。
また、必要に応じて長手方向、幅方向に弛緩処理を行うことができる。弛緩量は条件により異なるが、1〜10%程度が好ましい。
また、熱固定後の工程については、TDクリップで把持されていたフィルム端部をカットし処理する工程、コロナ処理を施す工程、ロール間で弛緩処理を施す工程等を経て製品巻取り機にて巻き取られる。
前記の方法で製造された二軸配向ポリエステルフィルムには、粘着剤層、離型層、帯電防止層、保護層等の当該フィルム上に形成される層との接着性、耐水性、耐薬品性等を改良する目的で、公知の方法で表面処理、すなわちコロナ放電処理(空気中、窒素中、炭酸ガス中など)や易接着処理を施してもよい。易接着処理は公知の各種の方法を用いることができ、延伸前、あるいは一軸延伸後に、各種易接着剤を塗布する方法などが好適に採用される。
次に実施例をあげて本説明をさらに説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)屈折率
JIS K 7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)を測定し、(nx−ny)により屈折率差を求めた。
(2)分子配向主軸の方向
上記屈折率測定において、nx>nyの場合は長手方向、nx≦nyの場合は幅方向と判断した。
(3)分子鎖主軸の配向角(θ)、光学主軸の傾斜角(ξ)
フィルム幅方向の距離について、後述の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製におけるテンター出口(実施例1〜4、比較例1では第2テンター出口)のフィルム幅において、端縁を0%とし、他の端縁を100%とする。上記フィルム幅の10%に相当する領域から90%に相当する領域(後述の離型フィルムの全幅に相当)について、幅方向に100mmピッチで連続してn個の100mm四方の正方形のフィルムサンプルを切り出した。該正方形のフィルムサンプルは長手方向、又は幅方向のいずれかの軸を基準に直角に切り出した。各フィルムサンプルについて、王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計を用いて、フィルム長手方向に対する分子鎖主軸の配向角(θi)、及び下記式によって定義される機械軸方向(長手方向、または幅方向のいずれか)に対する光学主軸の傾斜角(ξi)を測定した。なお、nは、フィルム全幅に0.8を乗じ、10mmで除した数値の小数点以下を切り上げた整数である。また、iはサンプル番号を表し、i=1〜nである。
|θ|≦45度のとき ξ=|θ|
|θ|>45度のとき ξ=|90度−|θ||
上記フィルムサンプルより測定した光学主軸の傾斜角の内、最大値を光学主軸の最大傾斜角(ξmax)とした。
また、上記配向角の測定において、連続して隣接する4点のフィルムサンプルの配向角(θi,θi+1,θi+2,θi+3)を比較し、その最大値と最小値の差(Δθi)を求めた。Δθ1〜Δθn−3のうち、その最大値を光学主軸の傾斜角の変動(Δθmax)として定義した。
(4)150℃における熱収縮率[HS150]
JIS C 2318−1997 5.3.4(寸法変化)に準拠し、長手方向(MD)、幅方向(TD)の寸法変化率(%)を測定した。
(5)ヘーズ
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠して測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。
(6)波長380nmにおける光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として波長300〜500nm領域の光線透過率を測定して、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
(7)偏光下での視認性
面光源バックライト(エス・エフ・シー社製透過光BOX A3−2)上に、偏光板を直交させ、クロスニコルの状態として設置する。その偏光板の間に、フィルムロールから切り出したフィルムをフィルムのスリット端部と偏光板の偏光軸が垂直または水平になるように挟みこみ、視認性を観察する。
◎:干渉色をほぼ生じない。斜めから見ても干渉色をほぼ生じない。部分的な着色斑がない。
○:若干干渉色は生じるが、着色斑は許容範囲内である。
△:干渉色は生じ、着色斑が若干生じる。
×:干渉色がきつく、部分的な着色斑がある。
(実施例1)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10重量部、粒子を含有しないPET樹脂ペレット(固有粘度が0.62dl/g)90重量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有マスターバッチ(A)を作製した。この時の押し出し温度は285℃であった。
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しない固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂ペレット90重量部と紫外線吸収剤含有マスターバッチ(A)10部とを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層B層用)に、平均粒径2.5μmのシリカ粒子を0.06質量%質量%を含有するポリエチレンテレフタレートのペレット(固有粘度が0.62dl/g)を押出機1(外層A層用)及び3(外層C層用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、A層、B層、C層の厚さの比は5:90:5となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
この未延伸フィルムをテンター延伸機(第1テンター)に導き、予熱ゾーンにて95℃で約6秒間予熱した後、100℃の延伸ゾーンで幅方向に延伸倍率3.2倍に延伸した。その後フィルムを50℃まで冷却した後、クリップの把持を開放した。続いて100℃に加熱されたロール群に導き、赤外線ヒーターを用いて延伸温度が115℃となるように調整し、長手方向に4.5倍延伸を行った。その後、冷却ロールでフィルムを40℃まで冷却した後、再びテンター(第2テンター)に導き、220℃で熱固定を行い、50℃まで冷却した後、クリップの把持を開放した。次いで、第2テンター出口幅のフィルム全幅の15%にあたる両端部をカットした後、ロール状に巻き取り、幅約1500mm、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
(実施例2)
実施例1において、長手方向の延伸倍率を4.7倍とした以外は同様の方法で、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、実施例1同様、フィルム全幅にわたって良好であった。
(比較例1)
実施例1において、幅方向の延伸倍率を3.7倍、長手方向の延伸倍率を3.5倍とした以外は同様の方法で、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、を得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、干渉色を発し、×であった。
(実施例3)
中間層用原料として粒子を含有しない固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂ペレット83重量部と紫外線吸収剤含有マスターバッチ(A)17部とし、A層、B層、C層の厚さの比は5:90:5のままで接着性改質ポリエステルフィルムの厚さを25μmとした以外は実施例1と同様の方法で、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、実施例1同様、フィルム全幅にわたって良好であった。
(比較例2)
実施例1と同様の方法で得た未延伸フィルムを、75℃に加熱されたロール群に導き、赤外線ヒーターを用いて延伸温度が95℃となるように調整し、長手方向に3.3倍に延伸した。次いでテンターに導き、120℃で幅方向に3.9倍に延伸し、引き続き220℃で熱固定を行い、フィルムを冷却した後、クリップの把持を開放し、テンター出口幅のフィルム全幅の15%にあたる両端部をカットした後、ロール状に巻き取り、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、フィルム中央部では良好な特性を示したものの、フィルム端部では著しい干渉色を呈し、使用に耐えなかった。
なお、本比較例の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造に際し、以下の方法により幾何学的なボーイング量を測定した。テンター導入前にフィルム幅方向に全幅に渡ってマジックインクで長手方向に直行する直線を引いた。係る直線を熱固定後に観察すると、ボーイングによりフィルム進行方向に対して凹状に弓なりした曲線となった。弓状になった該曲線と弦との最大距離を測定し、係る最大距離をフィルム全幅距離で除し、幾何学的なボーイング量を百分率で算出したところ、およそ15%であった。
(比較例3)
実施例1と同様の方法で得た未延伸フィルムを、75℃に加熱されたロール群に導き、赤外線ヒーターを用いて延伸温度が95℃となるように調整し、長手方向に3.3倍に延伸した。次いでテンターに導き、120℃で幅方向に2.6倍に延伸し、更に220℃で幅方向に1.5倍延伸し、そのまま幅固定して熱固定した後、冷却して、クリップの把持を開放し、テンター出口幅のフィルム全幅の15%にあたる両端部をカットした後、ロール状に巻き取り、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、比較例2同様、フィルム中央部では良好な特性を示したものの、フィルム端部では著しい干渉色を呈し、使用に耐えないものであった。
なお、本比較例の製造においても、比較例2と同様の方法で幾何学的なボーイング量を測定した。その結果、ボーイング量はおよそ5%であり、比較例2のボーイング量との比較において著しい改善が認められた。しかしながら、表1に示した通り、光学主軸の最大傾斜角に対する改善効果は極めて軽微であり、幾何学的なボーイング量の改善程の歪の改善は認められなかった。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で未延伸フィルムを作製した後、テンター式同時二軸延伸機に導き、フィルムの両端をクリップで把持し、95℃で長手方向、及び幅方向に3.2倍ずつ同時二軸延伸した。引き続き120℃まで昇温しながら長手方向に1.4倍延伸した後、220℃で熱固定を行い、50℃まで冷却した後、クリップを開放した。次いで、テンター出口幅のフィルム全幅の15%にあたる両端部をカットした後、ロール状に巻き取り、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表2に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は◎であった。
(実施例5)
実施例1と同様の方法で作成した未延伸フィルムをテンター式同時二軸延伸機に導き、フィルムの両端をクリップで把持し、90℃で長手方向、及び幅方向に3.0倍ずつ同時二軸延伸した。引き続き115℃まで昇温しながら長手方向に1.67倍延伸した後、220℃で熱固定を行い、50℃まで冷却した後、クリップを開放した。次いで、テンター出口幅のフィルム全幅の15%にあたる両端部をカットした後、ロール状に巻き取り、厚み38μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表2に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、実施例5よりも更に優れており、極めて良好であった。
(比較例4)
実施例5と同様の方法で作成した未延伸フィルムをテンター式同時二軸延伸機に導き、フィルムの両端をクリップで把持し、95℃で長手方向、及び幅方向に3.2倍ずつ同時二軸延伸した。引き続き120℃まで昇温しながら長手方向に1.17倍延伸した後、220℃で熱固定を行い、50℃まで冷却した後、クリップを開放した。次いで、テンター出口幅のフィルム全幅の15%にあたる両端部をカットした後、ロール状に巻き取り、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表2に示した。
得られたフィルムの偏光下での視認性は、フィルム端部で著しい干渉色を呈し、実用に耐えないものであった。
なお、本比較例で得られたフィルムの屈折率差(フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向との屈折率との差)は0.02であり、実施例5の屈折率差(0.04)よりも僅かに低下したに過ぎなかったが、光学主軸の最大傾斜角は著しく悪化した。
得られた結果を、表1および表2に示す。なお、いずれの実施例、比較例においても熱収縮率については幅方向より長手方向の方が大きかった。
Figure 2010046816
Figure 2010046816
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルムの基材として好適に使用できる。特に、大型液晶表示装置の構成部材である偏光子、偏光板、位相差板の保護フィルムとして好適である。

Claims (5)

  1. 下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルム。
    (1)フィルム長手方向に分子配向主軸を有すること
    (2)フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率との差が0.03以上、かつ0.10以下であること
    (3)波長380nmの光線透過率が20%以下である
  2. 前記二軸配向積層ポリエステルフィルムの機械軸方向に対する光学主軸の最大傾斜角が5度以下であって、フィルム幅方向に30cm間隔で測定した光学主軸の傾斜角の変動が5度以下であることを特徴とする請求項1記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
  3. 請求項1または2に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルムを基材とすることを特徴とする偏光子用、偏光板用または位相差板用保護フィルム。
  4. 請求項1または2のいずれかに記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム製造方法であって、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムが、未延伸フィルムを幅方向に延伸した後、長手方向に延伸を行い、次いで熱処理を行って製造されることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
  5. 請求項1または2のいずれかに記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム製造方法であって、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムが、未延伸フィルムを幅方向および長手方向に同時二軸延伸した後、さらに長手方向に延伸を行い、次いで熱処理を行って製造されることを特徴とする二軸配向積層ポリエステルフィルムの製造方法。
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